(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ウレタン系化合物(A1)は、一分子中におけるアクリロイル基及びメタクリロイル基の総数が10〜15個であり、重量平均分子量が3000〜200000である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
前記ウレタン系化合物(A1)は、一分子中におけるアクリロイル基及びメタクリロイル基の総数が10〜15個であり、重量平均分子量が5000〜100000である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
基板上に、請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物又は請求項6に記載の感光性フィルムを積層して、感光性樹脂層を形成する積層工程と、前記感光性樹脂層の所定部分にマスクを通して活性光線を照射して露光部を光硬化する露光工程と、前記感光性樹脂層の前記露光部以外の部分を現像液を用いて除去する現像工程と、前記感光性樹脂層の前記露光部を熱硬化させて樹脂硬化物を形成する熱硬化工程とを有する、パターンの形成方法。
基板上に中空構造を形成するために設けられたリブパターン上に、請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物又は請求項6に記載の感光性フィルムを積層して、感光性樹脂層を形成する積層工程と、前記感光性樹脂層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化する露光工程と、前記感光性樹脂層の前記露光部を熱硬化させて樹脂硬化物を形成する熱硬化工程とを有する、中空構造の形成方法。
請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物又は請求項6に記載の感光性フィルムを用いて中空構造のリブ部及び/又は蓋部が形成されてなる中空構造を有する電子部品。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、場合により図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
また、本明細書の以下の記載において、例えば、「(メタ)アクリレート化合物」との標記は、「アクリレート化合物」、「メタクリレート化合物」の一方もしくは双方を意味する用語として、「(メタ)アクリロイル基」との標記は、「アクリロイル基」、「メタクリロイル基」の一方もしくは双方を意味する用語として使用する。また、他の類似用語についても、同様である。
また、本明細書において、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも1種を有するウレタン系化合物(A1)を含有する光重合性化合物(A)を「(A)成分」又は「光重合性化合物(A)」ということがあり、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも1種を有するウレタン系化合物(A1)を「(A1)成分」又は「ウレタン系化合物(A1)」ということがあり、(B)光重合開始剤を「(B)成分」ということがある。
本明細書において、リブ部とは、電子部品等の中空構造の側周壁を構成可能な枠体のことをいう。この枠体は、中空構造の側周壁を構成可能な形状であれば特に制限はなく、平面視の外形が、三角形、四角形、及び五角形以上の多角形であってもよく、真円、楕円等の円形であってもよい。また、上記枠体は、その一部が欠けているような枠体であってもよい。一部が欠けているような枠体としては、例えば、コの字型の形状、アルファベットのC型の形状などが挙げられる。また、リブパターンとは、フォトリソグラフィやスクリーン印刷などにより形成されたリブ部のパターンのことをいう。リブ部は、上記のフォトリソグラフィーやスクリーン印刷による有機化合物のパターニングだけでなく、セラミックやシリコンなどの無機物を加工して形成しても良い。
【0020】
また、蓋部は、上記リブ部によって形成された枠体の上面開口を塞ぐものであって、中空構造の天井部となるものである。
中空構造の蓋部の材料となる感光性樹脂は、露光によってパターン形成する際に、厚膜でも光透過性と微細パターン性に優れることが好ましい。また、当該感光性樹脂は、耐熱耐湿性の向上のために、樹脂硬化物の耐熱性が高く、低吸湿性及び低透湿性を有することが好ましい。前述のように、従来からリソグラフィ技術で使用されていたような感光性エポキシ樹脂又は感光性ポリイミド樹脂では、この要求に応えることは難しい。
このような課題に対して、本発明者らは、鋭意検討の結果、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも1種を有するウレタン系化合物(A1)を含有する感光性樹脂組成物を用いれば、上記各要求に応えることができることを見出した。
すなわち、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも1種を有し、かつ主鎖にウレタン結合を有するウレタン系化合物が、光重合反応性が高く、厚膜形成性及びパターン形成性といった感光特性に優れることを見出した。また、本発明者らは、この(A1)成分の分子中に、樹脂硬化物の耐熱性向上に寄与する化学構造、具体的には弾性率の向上及び低吸湿率化に寄与する化学構造を導入することが容易であることを見出した。さらに本発明者らは、(A1)成分の一分子中におけるアクリロイル基及びメタクリロイル基の総数、及び重量平均分子量を所定の範囲とすることが、耐熱性・剛性と現像性を両立できるウレタン系化合物の樹脂構造を決める上で、より好ましいことを見出した。
本発明の感光性樹脂組成物は、このようなウレタン系化合物(A1)を含有する光重合性化合物(A)を含有するため、低粘度の材料として選択幅が広くなり、蓋部を形成する際に塗布、貼付をする感光性樹脂組成物の粘度を任意に調整することが容易である。塗布する感光性樹脂組成物の低粘度化は溶剤を用いても可能であるが、少なくともこの光重合性化合物(A)を使用する場合、硬化後の樹脂組成物の特性や信頼性に悪影響を与える場合がある溶剤の量を低減することができる。
そして、本発明は、以上の知見に基づき、以下詳述する本発明の感光性樹脂組成物を提供する。以下、本発明の感光性樹脂組成物、感光性フィルム、パターンの形成方法、中空構造の形成方法、及び電子部品に関して、この順に説明する。
【0021】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも1種を有するウレタン系化合物(A1)を含有する光重合性化合物(A)と、光重合開始剤(B)とを含有するものである。
【0022】
<(A)成分>
本発明において、(A)成分は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも1種を有するウレタン系化合物(A1)を含有する。また、この(A)成分は、(A1)成分以外の光重合性化合物(A2)を含有してもよい。
以下に、先ず(A1)成分について説明し、次いで(A1)成分以外の重合性化合物(A2)(以下、「(A2)成分」ということがある)について説明する。
【0023】
((A1)成分)
本発明において、上記のアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも1種を有するウレタン系化合物(A1)としては、水酸基を有する(メタ)アクリレートとイソシアネート基を有する化合物との反応物が挙げられ、該イソシアネート基を有する化合物としては、一分子中に1〜3つのイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。また、上記水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、1分子中に水酸基を1つ有し、(メタ)アクリロイル基を1〜5個有する化合物が挙げられる。
【0024】
例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレートと、一分子中に1〜3つのイソシアネート基を有する化合物との反応物としては、例えば下記一般式(1−1)で表されるものが挙げられる。
【化1】
【0025】
式(1−1)中、R
1は1〜5個の(メタ)アクリロイル基を有する1価の有機基を示し、R
2は脂肪族、脂環式、もしくは芳香族骨格を有する1価の有機基を示す。例えば、式(1)においてR
1は、上記1分子中に水酸基を1つ有し、(メタ)アクリロイル基を1〜5個有する化合物から水酸基を除いた残基である。また、R
2は例えば、1分子中に1つのイソシアネート基を有する化合物から、そのイソシアネート基を除いた残基となる。
【0026】
ウレタン系化合物(A1)は、重合後の耐熱性、低吸湿性、強靭性を良好に保ち、かつ、現像液に用いられる溶剤への溶解性を高めて高い解像度を得るために、脂肪族骨格、脂環式骨格を有することが好ましい。
ウレタン系化合物(A1)は、脂肪族骨格、脂環式骨格を導入するために、後述するように、脂肪族骨格、脂環式骨格を有するイソシアネートを使用してもよいし、ウレタン系化合物(A1)に脂肪族骨格、脂環式骨格を有するジオール化合物を用いてもよい。
【0027】
ウレタン系化合物(A1)にジオール化合物を用いる場合、ジオール化合物とジイソシアネートの重付加物の末端イソシアネート基に、水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させた反応物が使用されるのが好ましく、下式一般式(1−2)で表される化合物が好ましい。或いは、水酸基を有する(メタ)アクリレートと、ジイソシアネートの三量体であるイソシアヌル型トリイソシアネートとを反応させた反応物として、例えば下記一般式(1−3)で表される化合物が挙げられる。
また、ウレタン系化合物(A1)には、エチレンオキシド(EO)又はプロピレンオキシド(PO)変性ウレタンジ(メタ)アクリレートなども用いることができる。
【0029】
式(1−2)、(1−3)中、R
1は1〜5個の(メタ)アクリロイル基を有する1価の有機基を示し、R
2は脂肪族、脂環式、もしくは芳香族骨格を有する2価の有機基を示す。R
3は炭素数2〜30の有機基、好ましくは炭素数2〜20の飽和炭化水素基であって、より具体的には直鎖、分岐若しくは環状アルキレン基、又は環状アルキレン基と直鎖及び/又は分岐アルキレン基との組み合わせを示す。nは5〜20の整数である。なお、各式において、破線で示した部位は、他の原子との結合部位を示す。
式(1−2)、(1−3)において、R
1は、例えば、上記1分子中に水酸基を1つ有し、(メタ)アクリロイル基を1〜5個有する化合物から水酸基を除いた残基である。また、R
2としては、例えばジイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いた残基である。また、R
3としては、例えば、ジオール化合物から2つの水酸基を除いた残基である。
【0030】
本発明において、上記した1分子中に水酸基を1つ有し、(メタ)アクリロイル基を1〜5個有する化合物としては、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル化トリメチロールプロパントリアクリレート、グリシドール−ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。また、これらの中では、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0031】
また、本発明に使用されるイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環族骨格を有するジイソシアネート;ベンゼンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族骨格を有するジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4,−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族骨格を有するジイソシアネート;これらジイソシアネートをそれぞれ2量体、3量体にしたものが挙げられ、3量体の場合にはイソシアヌル型のトリイソシアネートとして用いることができる。また、フェニルイソシアネート等のモノイソシアネートも挙げられる。
本発明では、上記した一分子中に1〜3つのイソシアネート基を有する化合物は、これらそのものであってもよいし、これらイソシアネートとジオール化合物との重付加物等、これらイソシアネートから誘導される化合物であってもよい。
【0032】
本発明で使用されるジオール化合物としては、例えば式(2)で表されるジオールが挙げられる。
HO−R−OH (2)
[式(2)において、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を表す]
【0033】
式(2)における炭化水素基は、好ましくは飽和炭化水素基であって、例えば、直鎖、分岐若しくは環状アルキレン基、又は環状アルキレン基と直鎖及び/又は分岐アルキレン基との組み合わせなどが挙げられる。
直鎖状のアルキレン基を有するジオールとしては、下記一般式(3−1)で表されるジオールが好ましい。
HO-(CH
2)
n-OH (n=2〜12) (3-1)
一般式(3−1)で表されるジオールとしては、具体的には、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12―ドデカンジオール等が挙げられる。
【0034】
また、分岐アルキレン基を有するジオールとしては、例えば、オクタデカンジオール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコールなどを用いることもできる。中でも、重合後のガラス転移点(Tg)を高くし、また長鎖のアルキル基を持たせて耐水性を高めるために、オクタデカンジオールが好ましく、例えば、式(3−11)で表される1,2−オクタデカンジオール、式(3−12)で表される1,4−オクタデカンジオール、式(3−13)で表される1,10−オクタデカンジオール、式(3−14)で表される1,12−オクタデカンジオールが好ましく用いられる。
【0036】
環状アルキレン基を有するジオールとしては特には制限されないが、例えば、水酸基同士を回転運動しにくくし、重合後のTgを高めるために、下記式(3−21)で表される1,4−シクロヘキサンジメタノール、下記式(3−22)で表される1,4−シクロヘキサンジオール、下記式(3−23)で表される1,3−シクロヘキサンジオールなどを好ましく用いることができる。また、耐湿性を良好にする観点から、式(3−24)で表される水素化ビスフェノールA等も好適に使用される。
【0038】
また、ジオール化合物としては、多官能基を持たせ剛直性を更に向上させるために、例えば2つの水酸基と2つの(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を有するジオール化合物を用いてもよい。具体的には、下記一般式(3−3)の化合物が挙げられる。
本発明において、ジオール化合物は、単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0039】
【化5】
なお、一般式(3−3)において、R
21は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基のいずれかである。R
22は、2価の有機基を示し、例えば、炭素数1〜15の直鎖若しくは分岐アルキレン基、又は置換基を有してもよい脂環基を含む炭素数1〜20の基、より具体的には環状アルキレン基と直鎖及び/又は分岐アルキレン基との組み合わせ等が挙げられる。また、一般式(3−3)で示されるジオール化合物は、具体的には下記一般式(3−31)で表されるジオールが好ましい。
【0041】
上記一般式(3−3)で示されるジオール化合物が使用される場合、例えばウレタン系化合物(A1)としては、以下の一般式(3−4)のものが挙げられる。
【化7】
【0042】
一般式(3−4)において、R
1及びR
2は、それぞれ独立に2価の有機基を示し、例えば、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐アルキレン基、又は、置換基を有してもよい脂環基を含む炭素数1〜20の基、より具体的には環状アルキレン基と直鎖及び/又は分岐アルキレン基との組み合わせ等が挙げられる。nは1以上の整数であり、例えば1〜5である。特に透明性、耐水性、耐湿性を向上させる観点から、一般式(3−4)においてR
2は下記の構造で表される2価の基であることが好ましい。
【化8】
【0043】
また、上記水酸基を有する(メタ)アクリレートとイソシアネート基を有する化合物との反応物の代表的な例としては、下式(4)〜(8)の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化9】
[なお、式中、nは5〜20の整数を表す。]
【0044】
【化10】
[なお、式中、nは5〜20の整数を表す。]
【0045】
【化11】
[なお、式中、nは5〜20の整数を表す。]
【0046】
【化12】
[なお、式中、nは5〜20の整数を表す。]
【0047】
【化13】
[なお、式中、nは5〜20の整数を表す。]
【0048】
本発明においては、上記(A1)成分は、官能基であるアクリロイル基及びメタクリロイル基の総数(以下単に「官能基数」ということがある)が一分子中に10〜15個の範囲にあるものを含むことが好ましい。
官能基数が一分子中に10個以上ある(A1)成分を含むと、弾性率を高め、高温高圧のトランスファーモールドに対する樹脂の耐久性を高めることができ、中空構造の蓋部等に好適な光硬化性樹脂組成物を提供することができる。
また、弾性率、及びトランスファーモールドに対する樹脂の耐久性をより高めるために、(A1)成分は、官能基数が一分子中に12〜15個の範囲にあるものを含むことがより好ましく、官能基数が一分子中に15個のものを含むことが最も好ましい。
また、官能基数が15個以下であると、樹脂の耐熱性と剛性が高まることに加え、樹脂の脆弱化が防止され、更にリブ部との接着性が向上して信頼性が向上する。さらに、この官能基数が15個以下であると、重量平均分子量を小さくしてウレタン化合物(A1)の粘度を低く抑えることができるため、感光性樹脂組成物の塗工が容易になる。加えて、この官能基数が15個以下であると、塗布後の感光性樹脂組成物において光照射を行った場合に、官能基が多過ぎて表面部分だけが急速に光硬化することがなく、内部まで光硬化が十分に進行するため、解像度が向上して所望のパターン形成ができる。また、アクリロイル基又はメタクリロイル基の数を上記したように少なくすることで、光硬化及び/又は熱硬化後でも未反応のアクリロイル基及びメタクリロイル基が残存しにくくなり、樹脂の物性や特性が変動しにくくなる。
【0049】
本発明において、官能基数が一分子中に10〜15個の範囲にある(A1)成分は、重量平均分子量(Mw)が3000〜200000であることが好ましい。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法によって、テトラヒドロフラン又はトルエン等の展開溶媒を用いて測定することができる。他の成分の重量平均分子量も同様にして測定することができる。
上記重量平均分子量が3000以上であると、基板やフィルム上に塗布した塗布液がだれてしまうことが防止され、塗工性が向上する。また、光硬化時におけるウレタン化合物の体積収縮が小さいために、厚膜の形成を行うことができ、また、硬化収縮による樹脂の応力が抑制されて信頼性が向上する。また、トランスファーモールドへの耐久性の点でも、中空保持性の悪化に対する懸念がなくなる。また、重量平均分子量が200000以下であると、感光性樹脂組成物塗布液の粘度が低くなるため塗工性が向上する。また、粘度を下げるための溶媒の含有量が少なくて済むために厚膜形成が容易であるだけではなく、現像液溶解性が向上するので解像度も良くなる。本発明において、より塗布性と解像度を向上させると共に、光硬化後の感光性樹脂組成物の物性や特性を安定化させるため、上記重量平均分子量は4000〜150000の範囲にすることがより好ましい。さらに、現像性や相溶性の観点から、5000〜100000の範囲にすることが特に好ましい。
また、本発明では、官能基数12〜15個の範囲にある(A1)成分が、上記した数値範囲の重量平均分子量であることにより、耐熱性、剛性、及び現像性の全てを良好にすることができる。
【0050】
本発明において、(A1)成分(ウレタン系化合物(A1))は、塗工性、パターン形成性及び硬化後の樹脂の物性や特性に応じて、ウレタン系化合物(A1)以外の光重合性化合物(A2)と混合して使用することができる。
本発明では、ウレタン系化合物(A1)が感光性樹脂組成物の物性や特性を向上させるために必須の成分であり、ウレタン系化合物(A1)の含有量は、樹脂硬化物の物性や特性に応じて決められるが、感光性樹脂組成物中における固形分全量(即ち溶剤を除いた成分量)を基準として60質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80重量%以上である。該ウレタン系化合物(A1)の含有量が60質量%以上であると、該ウレタン系化合物(A1)の配合による樹脂硬化物の物性や特性が向上する。また、該ウレタン系化合物(A1)の含有量が70質量%以上であると、塗工性、パターン形成性及び硬化後の樹脂の物性や特性において、本発明の効果を奏するために必要なすべての特性を同時に満たすことができる。さらに、該ウレタン系化合物(A1)の含有量が80質量%以上において、過酷なトランスファーモールド条件下でも中空部が潰れることなく、デバイス機能を保持できるとともに、高温高湿環境下でも長時間に亘って優れた耐湿熱信頼性を発現する中空構造の電子部品を得ることができる。
また、本発明では、官能基数10〜15個の範囲にある(A1)成分は、成分(A)(固形分基準)全量中に、好ましく30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上含まれ、これにより、上記した弾性率や耐久性を適切に高めることができる。
【0051】
また、本発明に係る(A)成分は、弾性率や耐久性をさらに高めるために、官能基数12〜15個の範囲にある(A1)成分を、成分(A)(固形分基準)全量中、20質量%以上含むことが好ましく、35重量%以上含むことがより好ましく、40質量%以上含むことがさらに好ましい。一方で、官能基数12〜15個の範囲にある(A1)成分は、光解像度をより良好にするために、成分(A)(固形分基準)全量中、65重量%以下であることが好ましく、55重量%以下であることがより好ましい。
【0052】
上記化合物の市販品としては、一般式(4)で表される化合物として例えば、UN−952(官能基数:10、Mw:6500〜11000)が、一般式(6)で表される化合物としてUN−904(官能基数:10、Mw:4900)が、一般式(7)で表される化合物を含むものとしてUN−905(官能基数:15、Mw:40000〜200000)が挙げられる。また、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、ウレタン結合を有するアクリレート化合物(アクリロイル基を有する化合物)を含む市販品として、例えば、UN−333(官能基数:2、Mw:5000)、UN−1255(官能基数:2、Mw:8000)、UN−2600(官能基数:2、Mw:2500)、UN−6200(官能基数:2、Mw:6500)、UN−3320HA(官能基数:6、Mw:1500)、UN−3320HC(官能基数:6、Mw:1500)、UN−9000PEP(官能基数:2、Mw:5000)、UN−9200A(官能基数:2、Mw:15000)、UN−3320HS(官能基数:15、Mw:4900)、UN−6301(官能基数:2、Mw:33000)(以上はいずれも商品名、根上工業株式会社製)、TMCH−5R(商品名、日立化成工業株式会社製)、KRM8452(官能基数=10、Mw=1200)、EBECRYL8405(ウレタンアクリレート/1,6−ヘキサンジオールジアクリレート=80/20の付加反応物、官能基数=4、Mw=2700)(以上はいずれも商品名、ダイセル・サイテック株式会社製)等も挙げられる。
また、ウレタン結合を有するメタクリレート化合物(メタクリロイル基を有する化合物)を含む市販品としては、例えば、UN−6060PTM(官能基数:2、Mw:6000、商品名、根上工業株式会社製)、JTX−0309(商品名、日立化成工業株式会社製)、UA−21(商品名、新中村化学工業株式会社製)等が挙げられる。なお、以上の記載において、括弧内の官能基数及びMwは、それぞれウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物の官能基数及びMwである。
【0053】
((A1)成分以外の光重合性化合物(A2))
本発明において、(A1)成分と併用してもよい(A1)成分以外の光重合性化合物(A2)としては、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する重合性化合物が挙げられる。少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、アミド結合及び2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物、1分子中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物、グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体に対してエチレン性不飽和基が導入された化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用される。
【0054】
〔多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物〕
上記多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2〜14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2〜14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2〜14でありプロピレン基の数が2〜14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(EO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(PO)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して使用される。
【0055】
〔アミド結合及び2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物〕
上記アミド結合及び2個以上のエチレン性不飽和基を有する重合性化合物としては、解像度と接着性の観点から、下記一般式(9)で表される化合物が好ましい。
【0057】
一般式(9)中、R
31、R
32及びR
33は各々独立に、2価の有機基を示し、R
34は水素原子又はメチル基を示し、R
35及びR
36は各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。
2価の有機基としては、フェニレン基、ピリジレン基、炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、炭素数1〜10の脂環構造含有基等が挙げられる。また、これらの基は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、アリール基等の置換基で置換されていてもよい。
【0058】
上記一般式(9)で表される重合性化合物は、オキサゾリン基含有化合物とカルボキシル基含有化合物及び/又はフェノール性水酸基含有化合物とを反応させて得られる、アミド結合を有するジ(メタ)アクリレートであることが好ましい。この化合物を用いることにより、高弾性高耐熱性の樹脂硬化物が得やすくなる。
【0059】
かかる一般式(9)で表される重合性化合物は、例えば、下記一般式(10)で表されるビスオキサゾリンと、1分子中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物と、(メタ)アクリル酸とを反応させることにより得ることができる。
【0061】
一般式(10)中、Y
4は2価の有機基を示すが、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいピリジレン基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の脂環構造含有基であることが好ましい。中でも、フェニレン、ピリジレンは耐熱性向上、アルキレンは耐湿性向上に寄与するため好ましい。
また、R
45及びR
46は各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を示す。
【0062】
上記一般式(10)で表されるビスオキサゾリンとしては、例えば、2,2'−(1,3−フェニレン)ビス−2−オキサゾリン、2,6−ビス(4−イソプロピル−2−オキサゾリン−2−イル)ピリジン、2−2'−イソプロピリデンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2−2'−イソプロピリデンビス(4−ターシャリーブチル−2−オキサゾリン)等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
〔1分子中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物〕
上記1分子中にフェノール性水酸基を2つ有する化合物としては、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシジメチルナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)エーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらの中でも特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンが好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
フェノール性水酸基含有化合物及び/又はカルボキシル基含有化合物とオキサゾリン基含有化合物との反応は、反応温度50〜200℃で行うことが好ましい。反応温度が50℃以上であると反応が十分に速くなり、反応温度が200℃以下であると副反応を十分に抑えることができる。なお、必要に応じて、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性有機溶剤中で反応を行ってもよい。
【0065】
〔グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物〕
上記グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸と、を反応させて得られるエポキシアクリレート化合物などが挙げられる。また、上記エポキシアクリレート化合物のOH基に、テトラヒドロフタル酸無水物等の酸無水物を反応させて得られる酸変性エポキシアクリレート化合物を用いることもできる。このような酸変性エポキシアクリレート化合物としては、例えば、下記一般式(11)で表されるEA−6340(新中村化学製、商品名)が商業的に入手可能である。
【0066】
【化16】
一般式(11)中、mとnとの比は、100/0〜0/100である。
【0067】
<光重合開始剤(B)>
上記(A)成分と共に含有される光重合開始剤(B)としては、活性光線により遊離ラジカルを生成するものであれば特に制限はなく、例えば、芳香族ケトン、アシルフォスフィンオキサイド、オキシムエステル類、キノン類、ベンゾインエーテル化合物、ベンジル誘導体、2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、アクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物が挙げられる。
【0068】
芳香族ケトンとしては、例えば、ベンゾフェノン、N,N'−テトラメチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン(すなわちミヒラーケトン)、N,N'−テトラエチル−4,4'−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オンが挙げられる。
【0069】
アシルフォスフィンオキサイドとしては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキシドが挙げられる。
【0070】
オキシムエステル類としては、例えば、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]が挙げられる。
【0071】
キノン類としては、例えば、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノンが挙げられる。
【0072】
ベンゾインエーテル化合物としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテルが挙げられる。
【0073】
ベンジル誘導体としては、例えば、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタールが挙げられる。
【0074】
2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体としては、例えば、2−(2−クロロフェニル)−1−〔2−(2−クロロフェニル)−4,5−ジフェニル−1,3−ジアゾール−2−イル〕−4,5−ジフェニルイミダゾール等の2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。
【0075】
アクリジン誘導体としては、例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9'−アクリジニル)ヘプタンが挙げられる。
【0076】
光重合開始剤(B)は、常法によって合成してもよく、市販のものを入手してもよい。入手可能な光重合開始剤(B)としては、例えば、イルガキュア(IRGACURE)−369、イルガキュア−907、イルガキュア−651、イルガキュア−819、(以上、いずれもBASF社製、商品名)、オキシムエステル結合を有する化合物等が挙げられる。
【0077】
上述した光重合開始剤(B)の中でも、特に光硬化性の向上や高感度化の観点から、オキシムエステル結合を有する化合物が好ましい。オキシムエステル結合を有する化合物としてより具体的には、下記式(12)で示される1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)(商品名:OXE−01、BASF社製)、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン1−(O−アセチルオキシム)(商品名:OXE−02、BASF社製)、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−[O−(エトキシカルボニル)オキシム](商品名:Quantacure−PDO、日本化薬株式会社製)等が挙げられる。
【0079】
上記光重合開始剤(B)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記光重合開始剤(B)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、0.1〜20質量%であることが好ましい。光重合開始剤(B)の含有量を0.1〜20質量%とすることで、感光性樹脂組成物の感度を向上させ、レジスト形状の悪化を防ぐことができる。この観点から、光重合開始剤(B)の含有量は、0.5〜10質量%であることがより好ましく、1〜5質量%であることが特に好ましい。同様の観点から、光重合開始剤(B)の含有量は、光重合性化合物(A)100質量部に対しては、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、更に好ましくは1〜5質量部である。
【0080】
<無機フィラー(C)>
本発明の感光性樹脂組成物は、光重合性化合物(A)と光重合開始剤(B)の他に、さらに無機フィラー(C)(以下、「(C)成分」ということがある)を含有させることができる。
本発明の感光性樹脂組成物に、無機フィラーを含有させることにより、さらに高い弾性率を発揮させるだけではなく、低熱膨張化や吸湿率低減に優れた樹脂硬化物を得ることが容易となり、より厳しい高温高圧モールド条件においても、高い中空構造保持性や高い信頼性を達成することが可能となる。
無機フィラーとしては、体積平均粒子径10nm〜50μmの範囲にあるシリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、セラミック微粉、タルク、マイカ、窒化ホウ素、カオリン、又は硫酸バリウム等を好適に使用することができる。粒子径が10nm以上であると、感光性樹脂組成物中の無機フィラーの凝集が起こり難いため、均一分散が容易になり、微細パターン形成性が大幅に向上し、加えて硬化物の物性や特性のバラツキが小さくなる。また、粒子径が50μm以下であると、無機フィラーによる照射光の散乱が小さくなるため、厚膜形成性や微細パターン形成性が向上する。
ここで、無機フィラーの体積平均粒子径は、レーザー回折粒度分布計(例えば、日機装製、商品名:マイクロトラックMT3000)により、MV値(Mean Volume Diamete:体積平均値)として求めることができる。
【0081】
無機フィラー(C)の形状は、球状、破砕状、針状又は板状のいずれも使用することができ、粒子径に応じて所望の形状を選ぶことができる。例えば、体積平均粒子径が10nm〜1μmの範囲で、球状又は球形に近い形状を有する小粒子径の無機フィラーは、感光性樹脂組成物の弾性率を高めるだけではなく、硬化物の機械的強度を向上させることができると共に、硬化前の感光性樹脂組成物にチクソ性を付与してその塗布性を向上させるという効果を有する。そのため、小粒子径の無機フィラーは、光透過性や光吸収性に悪影響を与えないで、本発明の感光性樹脂組成物の物性や特性をわずかでも向上したいときに使用される。また、体積平均粒子径が1μm〜50μmの範囲にある大粒子径の無機フィラーは、感光性樹脂組成物の弾性率を大幅に高めることができるため、中空構造の形状維持性に対して大きな効果を発揮する。さらに、形状として板状を有する無機フィラーは、感光性樹脂組成物の硬化物の吸湿率や透湿率を大幅に低減でき、また、トランスファーモールドの高温高圧に対しても十分な耐久性を発現できる。このように、中空構造の蓋部用に適用する本発明の感光性樹脂組成物においては、形状として板状を有する大粒子径の無機フィラーを含有させることが好適である。
【0082】
本発明において、無機フィラーの含有量は、本発明の感光性樹脂組成物を中空構造デバイスの蓋部の材料として適用する場合には、樹脂硬化物の物性と厚膜形成性や微細パターン形成性等の感光特性とのバランスによって決めることができる。本発明の蓋部形成用感光性樹脂組成物にフィラーを用いる場合では、無機フィラーの含有量を0.5〜60質量%に設定することが好ましく、2〜50質量%であることがより好ましく、5〜40質量%であることが特に好ましい。
【0083】
<増感剤(D)>
また、本発明の感光性樹脂組成物には、さらに増感剤(D)(以下、「(D)成分」ということがある)を添加することができる。増感剤(D)としては、例えば、ピラゾリン類、アントラセン類、クマリン類、キサントン類、オキサゾール類、ベンゾオキサゾール類、チアゾール類、ベンゾチアゾール類、トリアゾール類、スチルベン類、トリアジン類、チオフェン類、ナフタルイミド類などが挙げられる。これらの増感剤(D)は、1種を単独で又は2種以上を混合して使用される。
上記増感剤(D)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として0.1〜1質量%であることが好ましい。増感剤(D)の含有量が上記範囲であると、感光性樹脂組成物の感度が向上し、溶剤との相溶性が良好となる。
【0084】
<耐熱性高分子(E)>
また、上述の感光性樹脂組成物には、さらに耐熱性高分子(E)(以下、「(E)成分」ということがある)を添加することができる。耐熱性高分子(E)としては、例えば、耐熱性の高い、ポリイミド、ポリオキサゾール及びそれらの前駆体、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック樹脂、ポリアミドイミド、ポリアミドなどが加工性の点から好ましい。これらは1種又は2種以上を混合して使用される。
上記耐熱性高分子(E)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として、1〜50質量%であることが好ましい。耐熱性高分子(E)の含有量が上記範囲内であると、感光性樹脂組成物の耐熱性や樹脂強度が良好であり、また現像性も良好である。
【0085】
<熱架橋材(F)>
また、上述の感光性樹脂組成物には、さらに熱架橋材(F)(以下、「(F)成分」ということがある)を添加することができる。熱架橋材(F)としては、例えば、エポキシ樹脂、α位がメチロール基、アルコキシメチル基で置換されたフェノール樹脂、N位がメチロール基及び/又はアルコキシメチル基で置換されたメラミン樹脂、尿素樹脂等が硬化後樹脂強度の点から好ましい。これらは1種又は2種以上を混合して使用される。
上記熱架橋材(F)の含有量は、感光性樹脂組成物の固形分全量を基準として1〜20質量%であることが好ましい。熱架橋材(F)の含有量が上記範囲であると、感光性樹脂組成物の耐熱性や樹脂強度が良好であり、現像性も良好である。
【0086】
<熱ラジカル発生剤(H)>
また、上述の感光性樹脂組成物は、さらに熱ラジカル発生剤(H)(以下、「(H)成分」ということがある)を添加することができる。熱ラジカル発生剤(H)としては、例えば、t−ブチルクミルパーオキサイド(パーブチルC)、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート(パーヘキサV)、ジクミルパーオキサイド(パークミルD)、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサン(パーヘキサHC)などの過酸化物が挙げられる。
上記熱ラジカル発生剤(H)の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.2〜20質量部がより好ましく、0.5〜10質量部がさらに好ましい。
【0087】
<溶媒>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、上述した光重合性化合物(A)及び(B)光重合開始剤、必要に応じて無機フィラー(C)、並びにその他の材料、例えば増感剤(D)、耐熱性高分子(E)、熱架橋材(F)、熱ラジカル発生剤(H)を溶媒とともに混合することにより得ることができる。
このときに用いられる溶媒としては特に制限されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどを主成分とする極性溶媒や、γ−ブチロラクトンなどの溶媒が挙げられる。これらの溶媒は1種を単独で又は2種以上の混合物として用いられる。
【0088】
<接着助剤>
また、感光性樹脂組成物には、必要に応じて、基板やリブ部との接着性を向上させるために、接着助剤を添加してもよい。接着助剤としては、例えば、γ−グリシドキシシラン、アミノシラン、γ−ウレイドシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
これらの接着助剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
接着助剤の含有量は、感光性樹脂組成物と基板との接着性を向上させる観点から、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.4〜3質量部である。
【0089】
[感光性フィルム]
本発明の感光性フィルムは、前述の感光性樹脂組成物をフィルム状に成形してなるものである。
当該感光性フィルムの形態には特に制限はない。
例えば、本発明の感光性樹脂組成物を、必要に応じて上記溶媒に溶解した後、ポリエチレンテレフタレートなどの有機フィルムからなる支持フィルム上に、公知の種々の方法により塗布し、乾燥して溶剤を除去することにより感光性樹脂層を形成して、2層の感光性フィルム(ドライフィルムレジスト)とすることができる。
また、形成した感光性樹脂層上に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を保護フィルムとしてその上に積層した3層の感光性フィルムとしても良い。
また、感光性樹脂層に自己支持性があれば、支持フィルムを剥がして1層の感光性フィルムとすることも可能である。
また、本発明の感光性樹脂組成物を加熱溶融させ、押出し成型機などを用いてシート状に成型することができる。
【0090】
本発明の感光性フィルムは、中空構造の蓋部として使用する場合は、後で述べるように、支持フィルムを光照射による光重合後に剥がして使用しても良いし、そのまま感光性樹脂組成物と共に蓋部の材料として使用することもできる。本発明では、前記の支持フィルムの代わりに、透明又は半透明の耐熱性プラスチック(熱可塑性のエンジニアリングプラスチック又は3次元網目構造を有する熱硬化性樹脂等)、ガラス、セラミック等を支持材として用いることができる。これらの耐熱性プラスチック、ガラス又はセラミックとして、薄膜又は薄板状のものを使用することによって、前記の支持フィルムと同様に、感光性樹脂組成物を積層した積層体をフィルム又は薄板とすることができる。また、これらの耐熱性プラスチック、ガラス又はセラミックは、蓋部の形状維持性や剛性を向上させると共に補強する機能を有する。
【0091】
感光性フィルムの厚みに特に制限はなく、用途に応じて適宜設定することができる。
例えば、支持フィルム又は支持用薄板を用いる場合、支持フィルム又は支持用薄板の厚みは、10μm〜3mmが好ましい。前記の支持フィルム又は支持用薄板は、中空構造デバイスの形状と厚さ及び製造の点からそれらの厚さが適宜決められるため、使用できる範囲は広くなっている。
感光性樹脂層の厚みは、1〜500μmが好ましく、保護フィルムは10〜200μmが好ましい。
【0092】
[パターンの形成方法]
次に、本実施形態のパターン形成方法について説明する。
本実施形態のパターン形成方法は、基板上に中空構造を形成するために設けられたリブパターン上に、本発明の感光性樹脂組成物又は感光性フィルムを積層して、感光性樹脂層を形成する積層工程と、前記感光性樹脂層の所定部分にマスクを通して活性光線を照射して露光部を光硬化する露光工程と、前記感光性樹脂層の前記露光部以外の部分を現像液を用いて除去する現像工程と、前記感光性樹脂層の前記露光部を熱硬化させて樹脂硬化物を形成する熱硬化工程とを有する。これらの工程を経て、リブパターン上に中空構造の蓋部を作るための所望のパターンを形成することができる。
以下、各工程について説明する。
【0093】
(積層工程)
上記積層工程においては、基板上に中空構造を形成するために設けられたリブパターン上に、上述の感光性フィルムを貼り合わせて積層することにより、感光性樹脂膜を形成する。
支持基板としては、例えば、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO
2、SiO
2等)、窒化ケイ素、セラミック圧電基板等が挙げられ、リブパターンとしてはガラス、半導体、金属酸化物絶縁体、セラミックなどの無機物や、感光性樹脂、印刷ペーストなどの有機化合物が挙げられる。
また上記方法以外にも、基板上に中空構造を形成するために設けられたリブパターン上に、耐モールド性を持たない汎用の感光性フィルムもしくは非感光性フィルムを貼り合わせて積層し、必要に応じて露光工程、現像工程、熱硬化工程を経てから、さらにその上に、本発明の感光性樹脂組成物又は感光性フィルムを積層することで、蓋部として2層の感光性樹脂膜を有する中空構造を形成することもできる。
感光性樹脂組成物の塗布方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、浸漬塗布、ロールコーティング等の方法が挙げられるが、これらに限定されない。感光性フィルムの場合は、ロールラミネーター、真空ラミネーター等を用いて積層することができる。
【0094】
基板上に感光性樹脂組成物の塗布する場合、乾燥後の被膜(感光性樹脂層)の膜厚は、塗布手段、感光性樹脂組成物の固形分濃度及び粘度等によって適宜設定できるが、通常、1〜500μmであり、解像度を良好とする観点から、好適には1〜300μmである。
乾燥後の被膜の膜厚が1〜300μmになるようにするためには、上述の感光性樹脂組成物を溶剤で溶解させ、粘度を0.5〜20Pa・sに調節することが好ましく、1〜10Pa・sに調節することがより好ましい。また、感光性樹脂組成物の固形分濃度は、20〜80質量%にすることが好ましく、30〜70質量%にすることがより好ましい。得られる被膜の膜厚が、特に300μm以下であると、解像度が良好である。感光性フィルムを使用する場合は、感光性樹脂層の膜厚を予め上記の膜厚となるように形成しておくことができる。
【0095】
その後、ホットプレート、オーブンなどを用いて60〜120℃の範囲で1分〜1時間乾燥することにより、支持基板上に感光性樹脂膜を形成することができる。
【0096】
(露光工程)
次の露光工程では、前記感光性樹脂層の所定部分にマスクを通して活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる。
ここで、露光に用いられる活性光線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられる。これらの中でも特に、紫外線、可視光線が好ましい。
【0097】
(現像工程)
次の現像工程では、感光性樹脂層の露光部以外の部分(未露光部)を、現像液を用いて除去する。現像液としては、有機溶剤を用いることができる。
現像液として用いる有機溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、エタノール、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートのような有機溶剤を使用することができる。
これらの中でも、現像速度の点から、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを用いることが好ましい。
【0098】
また、現像後、必要に応じて、水や、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールや、n-ブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルアセテート等でリンスすることが好ましい。
【0099】
(熱硬化工程)
さらに、現像工程の後、感光性樹脂層の露光部を熱硬化させて樹脂硬化物を形成する熱硬化工程を行う。
現像後の熱硬化(キュア)は、温度を選択して段階的に昇温しながら1〜2時間実施することが好ましい。熱硬化は、120〜240℃で行うことが好ましい。加熱温度を段階的に昇温する場合、例えば、120℃、160℃で各10〜50分(好ましくは約30分間)熱処理した後、220℃で30〜100分(好ましくは約60分間)熱処理を行うことが好ましい。
上述した形成方法により形成される樹脂硬化物からなる蓋部パターンは、十分な膜厚を有しており、トランスファーモールドによる中空潰れを十分に抑制できる。
【0100】
(中空構造の形成方法)
次に、本発明の中空構造の形成方法について説明する。
本発明の中空構造の形成方法は、基板上に中空構造を形成するために設けられたリブパターン上に、前述の感光性樹脂組成物又は感光性フィルムを積層して、感光性樹脂層を形成する積層工程と、前記感光性樹脂層の所定部分に活性光線を照射して露光部を光硬化する露光工程と、前記感光性樹脂層の前記露光部を熱硬化させて樹脂硬化物を形成する熱硬化工程とを有する。また、前記露光工程の後かつ前記熱硬化工程の前に、前記感光性樹脂層の前記露光部以外の部分を除去する除去工程を有していてもよい。
【0101】
前記感光性樹脂組成物を予め感光性フィルムとしたものを、上述のパターン上部に貼り付け積層してから、露光工程、感光性樹脂層の露光部以外の部分を除去する必要があるときは現像工程(除去工程)、熱硬化工程を経て中空構造を形成することができる。
本発明の感光性樹脂組成物又は感光性フィルムを蓋部として適用する時は、必ずしも現像工程を経る必要はない。しかしながら、蓋部の形状を制御したい場合、複数の中空構造デバイスを同時に一括で製造したい場合、及び個片の中空デバイスの蓋部に相当する大きさだけをマスクを通して露光した後、その周辺の未露光部分を現像することによって個片に分割する場合等の際には、露光工程においてはマスクを通じて活性光線を照射して露光部を光硬化せしめる露光工程を経た後、前記感光性樹脂層の前記露光部以外の部分を上述の現像液を用いて除去する現像工程を経ることが好ましい。
なお、本発明の中空構造の形成方法における、積層工程、露光工程、除去工程、及び熱硬化工程は、上述のパターン形成方法と同様に行うことが可能である。
【0102】
蓋部を形成するための感光性樹脂層の膜厚は、5〜500μmが好ましく、10〜400μmがより好ましい。
硬化工程を経て形成される蓋部の最終的な膜厚(感光性樹脂層、基板となるフィルム又は薄板の厚みの合計)は、10μm〜3mmが好ましく、20μm〜2mmがより好ましい。本発明の感光性樹脂組成物を用いれば、蓋部の厚さが10μmであっても形状を維持することができ、モールド時の高温高圧条件下での変形も抑え得る。一方、蓋部の厚みが3mm以下であれば、中空構造のデバイスが厚過ぎたり、露光時の光透過性が低下するために製造上生じうる問題を回避することができる。
前記の蓋部の厚さは、本発明の感光性樹脂組成物又は感光性フィルムの厚さだけでなく、上記で述べたように、支持用のフィルム又は薄板をそのまま蓋部として残すことによって、所望の厚さに調整することができる。
【0103】
以上のように、本発明の中空構造の形成方法によれば、フォトリソグラフィーによりリブパターン上からフィルム状に形成した感光性樹脂組成物の硬化物を蓋部として封止することにより、中空構造を形成することができる。
また、この中空構造の空間内は周囲の感光性樹脂組成物により防湿され、且つ、高温においても中空部が保持されるため、SAWフィルタ、CMOS・CCDセンサー、MEMS等の中空構造を必要とする電子部品に適用可能であり、電子部品の小型化、低背化、高機能化に有用である。本発明の感光性樹脂組成物は、高信頼性を達成できるという点で特にSAWフィルタの中空構造の蓋部形成用として適している。
【0104】
[電子部品]
本発明の電子部品は、前述の感光性樹脂組成物又は感光性フィルムを用いて、中空構造の蓋部が形成されてなる中空構造を有するものである。
次に、本発明の電子部品の一例として、SAWフィルタ(表面弾性波フィルタ)について説明する。
<SAWフィルタ及びその製造方法>
上記SAWフィルタ及びその製造方法について説明する。
図1(a)〜(c)は、本発明のSAWフィルタ100及びその製造方法の好適な一実施形態を示す工程図である。
【0105】
まず、
図1(b)に示すように、櫛形電極20が形成された基板10上にリブ部30を形成する。形成方法としては、フォトリソグラフィーやスクリーン印刷が挙げられる。
図1(a)は、フォトリソグラフィーによってリブ部30を形成する例を示す。具体的には、リブ部用感光性樹脂層32を形成した後に、ネガマスク60を介して露光した後、現像し、必要に応じて熱硬化することによりリブ部30を形成する。
リブ部30の膜厚は、通常1〜500μm、好ましくは1〜300μmとなるように、形成される。
【0106】
次に、
図1(c)に示すように、リブ部30上に蓋部40を設けて中空構造を形成する。ここで、蓋部40は、例えば、予め本発明の感光性樹脂組成物を成膜してフィルム化したものや予め感光性フィルムとして成形したものを用いて作製することができる。
【0107】
具体的には、まず、リブ部30が形成された基板10上に本発明の感光性樹脂組成物を予め感光性フィルムとしたものを積層する。積層方法は、前記リブパターンの形成方法で記載した方法と同様の方法を用いることができる。
リブ部30上に蓋部用感光性フィルムを積層した後、必要に応じて所望のパターンを有するネガマスク(不図示)を介して、蓋部用感光性フィルムの所定部分に活性光線を照射し、露光部を光硬化する。ここで、露光に用いられる活性光線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などが挙げられる。これらの中でも特に、紫外線、可視光線が好ましい。
次に、蓋部用感光性樹脂層の露光部以外の部分(未露光部)を有機溶剤系の現像液を用いて除去することによりパターンを形成した後、蓋部用感光性フィルムの露光部を熱硬化させ、樹脂硬化物からなる蓋部40を形成する。
【0108】
本発明の感光性樹脂組成物又は感光性フィルムを用いて中空構造の蓋部の形成を行った後、電極20と蓋部40の表面に配線されている導体との電気的接続を行うためにメッキを形成し、かつ金属ボールの搭載等を行うことによって得られたSAWフィルタを
図2に示す。
図2に示すSAWフィルタは、本願発明の形状維持性及び耐熱性と剛性に優れる感光性樹脂組成物又は感光性フィルムを適用することによって、はんだボール搭載時の高温リフロー条件でも、中空構造デバイスの特性に影響を及ぼすような変形は起こすことはない。
【0109】
上記基板10としては、例えば、タンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板、ガリウム砒素基板等の圧電性基板が用いられる。上記櫛形電極20の材質としては、例えば、アルミニウム等が用いられる。上記基板の内部と表面に形成される配線の材質としては銅、アルミなどの金属導体やセラミック基板の場合は、金、銀、白金又はパラジウム等の金属導体が用いられる。また、上記金属ボールは、例えば、スズ−銀−銅や鉛−スズ等のはんだ材、金又は表面を金属導体で被覆した樹脂ボール等が用いられる。
【0110】
図2に示すSAWフィルタの製造方法を
図3に示す。
図3には、UV露光のみで本発明の蓋部を形成する方法及びUV露光とレーザー穴開けの両者を用いて本発明の蓋部を形成する方法を示している。レーザー穴開けは、蓋部の内部に導体を成形するために使用される。
【0111】
図3において、まず、UV露光のみで蓋部を形成する方法を説明する。
図3(a)〜(b)の工程を経て、
図1に示したものと同じ方法によって、基板10上のアルミ櫛形電極20と電気的に接続している配線用導体81上に中空空間を形成するための、リブ部30を形成する。ここで、リブ部30の内部には、内部導体を形成するための穴35が形成されている。その後、支持フィルム上に積層された本発明の感光性樹脂組成物又は感光性フィルムから形成された蓋部用感光性樹脂層41を前記のリブ部30上に塗布又は積層して、マスクを通してUV露光を行う(
図3の(c))。前記のマスクは、内部導体を形成するための穴35の径に相当する部分だけが光を透過しないように遮蔽されているため、それ以外の箇所が光硬化した蓋部40を形成する。蓋部40の未露光部分は、先に形成された内部導体を形成するための穴35と完全に貫通させるために、現像を行った後、デスミア処理等を行う(
図3の(d))。さらに、メッキ法等によって、リブ部及び蓋部の内部に形成された穴35の内部に、内部導体80を形成すると共に、蓋部の表面に配線を形成する(
図3の(e))。本発明では、リブ部及び蓋部の内部に形成された穴35の内部には、メッキ法だけではなく、金属ペースト又は金属粉体を含有する樹脂ペーストを用いて導体充填法によって内部導体80を形成することができる。これらの工程を経て、基板10上のアルミ櫛形電極20に配線されている導体81は、蓋部の表面に形成された配線用導体81と電気的な接続が行われる。最後に、蓋部の表面にリフロー等によって金属ボール70を搭載して、本発明の中空構造を有する電子部品であるSAWフィルタを得る(
図3の(f))。
【0112】
次に、
図3において、UV露光とレーザー穴開けの両者を用いて本発明の蓋部を形成する方法を説明する。基本的に、蓋部の形成方法はUV露光のみの場合と同じであるが、内部導体を形成するための穴35を前記蓋部の内部に形成する際に、UV露光ではなく、レーザーによる穴開け方法を適用する点で異なる。すなわち、
図3の(c)において、感光性フィルムを用いて、蓋部用感光性樹脂層41を前記のリブ部30上に積層した後、
図3の(d)の工程において、レーザーによって蓋部の内部に内部導体を形成するための穴35を形成する。レーザーによる穴開け方法は、UV露光とは異なりマスクによる露光や現像を必要としないために、任意のパターンを自由に且つ短時間で形成する場合に適用することができる。レーザーとしては、YAGレーザー、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー等の公知のものを使用することができる。本発明におけるSAWフィルタの製造方法は
図3に示すものに限定されない。
UV露光又はレーザー照射は、リブ部の厚さ、リブ部の内部に形成される内部導体の形状及び蓋部表面配線パターンの形状に応じて、どちらかを適宜選択して使用することができる。
【0113】
図3においては、蓋部の表面に一層の表面配線層が形成されているSAWフィルタの製造方法を示したが、本発明では前記蓋部に相当する部分に2層以上の配線層を有することもできる。
図4は、蓋部に相当する部分に2層の配線層を有するSAWフィルタの配線形成方法を示す。
図3の(a)〜(e)に示すものと同じ方法でSAWフィルタの蓋部40の表面に配線用導体81を形成した後、本発明の感光性フィルムを積層し蓋部用感光性樹脂層41を形成した後(
図4の(a))、外部接続用電極の径に相当する箇所が遮光されたマスク60を用いて紫外線露光を行い(
図4の(b))、溶剤現像によって蓋部40の最上層に外部接続用電極用の穴を形成する(
図4の(c))。次に、メッキ法によって外部接続用電極を穴内部に形成した後、最後に、蓋部の表面にリフロー等によって金属ボール70を搭載して、本発明の中空構造を有する電子部品であるSAWフィルタを得る(
図4の(d))。その際に、金属ボールは、外部電極用電極の酸化防止金属膜(Ni、Au等)を介して直接搭載するが(
図4の(d)の左図)、フォトレジスト等を用いて蓋部の表面に配線層を再度形成した後、金属ボールを搭載する方法を採用しても良い(
図4の(d)の右図)。
【0114】
以上の工程を経て、SAWフィルタの中空構造作製を完了する。
上記のように作製されたSAWフィルタは、
図5に示すように封止材により封止される場合は一般的に以下の工程で行うが、これに限定されるものではない。
(1)SAWフィルタ100を成形金型にセットする。
(2)成形機のポットに固形状の封止材タブレットをセットする。
(3)金型温度150〜180℃の条件で封止材を溶融し、圧力をかけて金型に流し込む(モールド)。
(4)30〜120秒間加圧して封止材が熱硬化後に金型を開き、成形品を取り出すことで、SAWフィルタの封止が完了する。
通常、封止材90による封止は、金属ボール70が搭載される前に行われ、封止後に、基板の封止された面の反対面に金属ボール70がリフローによって搭載される。しかし、金属ボール70が搭載された後に、封止材90による封止が行われても良い。
図5には、封止材90で封止された1個のSAWフィルタ100が示されているが、本発明のSAWフィルタは、一つの基板上に形成した多数個のAWフィルタを封止材で封止後、個片に切断することによっても得ることができる。
【0115】
図6の(a)〜(j)は、一つの基板上に形成した多数個のSAWフィルタを一括で樹脂封止した後、ダイシング(切断)して個片に分離して得られるSAWフィルタの製造方法を示す。まず、一つの基板10に、アルミ櫛形電極20及び配線用導体81を有する多数個のSAWフィルタを作製した後、リブ部用感光性樹脂層32からリブ部30を作製し、次いで、本発明の感光性樹脂組成物又は感光性フィルムを用いて蓋部用感光性樹脂層41を形成し、その樹脂層41から蓋部40を形成する(
図6の(a)〜(e))。
この製造方法では、外部接続用電極と電気的接続を行うための配線用導体81が、アルミ櫛形電極20の両外側に配置されている。次に、外部接続用電極を形成するために、フォトレジスト50を基板全面に塗布して、外部接続用電極の径に相当する箇所が遮光されたマスクを用いて紫外線露光を行い、現像を行って外部接続用電極形成のためのフォトレジスト開口部51を設ける(
図6の(f))。続いて、メッキ法又は導体充填法によって外部接続用電極82を形成した後、フォトレジスト剥離液でフォトレジスト50を除去する(
図6の(g))。さらに、基板や蓋部の表面に存在するフォトレジス残渣を完全に取り除く洗浄工程を採用しても良い。その後、樹脂封止材90を用いてトランンスファモールド法で中空構造部を一括に封止して(
図6の(h))、リフローによって金属ボール70を搭載した後(
図6の(i))、ダイシング(切断)等の方法によって個片に分けてSAWフィルタ100を得る (
図6の(j))。本発明は、金属ボール70の搭載を、基板のダイシング工程後の個片パッケージの状態で行っても良い。
【0116】
この際に、蓋部40は、金型温度150〜180℃でのモールド耐性が要求される。すなわち、蓋部40を感光性樹脂組成物で作製した場合、蓋部40は150〜180℃の温度で変形しないことが望ましく、そのような特性を得るためには、蓋部40を形成するための本発明の感光性樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、150℃以上であることが好ましく、165℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることが更に好ましい。
トランスファーモールドは、コンプレッションモールドや液状封止材モールドに比べ、封止圧力が非常に高いが、近年、電子部品の実装密度の上昇や配線微細化の影響により、より狭い隙間へ封止樹脂を流入する必要があるため、更なる高圧が必要とされている。このため、中空構造を保持するために、これまで以上に高い剛性が必要とされる。
更に、SAWフィルタの更なる小型化、高機能化、多バンド化要求に応えるため、チップの小サイズ化傾向と並行して、リブ部狭幅化や中空サイズの大型化が進められており、トランスファーモールドによる中空潰れの懸念はますます強くなっている。これらのトランスファーモールドにおいて十分な耐久性を発現するために、蓋部40を形成するための本発明の感光性樹脂組成物の硬化物の180℃における弾性率は、1.8GPa以上であることが好ましく、2.0GPa以上であることがより好ましく、2.2GPa以上であることが特に好ましい。180℃における弾性率の上限は特に限定されないが、実用的な観点からは10GPa以下である。
【0117】
以上のように、本発明によれば、SAWフィルタ製造工程において、蓋部としてフィルム状に形成した感光性樹脂組成物の硬化物でアルミ櫛型電極部を封止することにより、中空構造を形成することができる。また、この中空構造の空間内は周囲の樹脂組成物により防湿されるため、アルミ電極の腐食を抑制することができる。また、この樹脂組成物は高い弾性率を有するため、封止樹脂モールド時の温度と圧力においても中空構造を維持できる。
【0118】
なお、以上の説明では、蓋部40や蓋部40のパターンを形成するための蓋部用感光性樹脂層のみが、本発明の感光性樹脂組成物から形成される例を示したが、リブ部30やリブパターンを形成するためのリブ部用の感光性樹脂層も、本発明の感光性樹脂組成物によって形成され、上記パターン形成方法等と同様の方法により、リブやリブパターンが形成されてもよい。
【実施例】
【0119】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の記載において、Mwはウレタン系化合物の重量平均分子量を意味し、テトラヒドロフランを溶媒として用いてGPC法によって求めたものである。
【0120】
[製造例1 光重合性化合物(A1−1)の製造]
温度計、撹拌装置の付いた反応容器に、乾燥空気中、イソホロンジイソシアネートを44.5g、シクロヘキサノンを64.8g、ジブチル錫ジラウレート0.2gの溶解液に、1,4−シクロヘキサンジメタノール14.4gを25℃で撹拌しながら1時間かけて滴下し、さらに60℃で1時間反応させた。次いで、東亞合成製M−403(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート60質量%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量%からなる)92.2gを加え、赤外分光分析でイソシアネートの吸収が消失するまで反応を行い、上記式(8)で表されるウレタンアクリレートと、多官能アクリレートとの混合溶液を得た。得られた溶液の固形分は70質量%であった。全固形分中、76質量%が上記式(8)で示す10官能ウレタンアクリレートであり、24質量%がジペンタエリスリトールヘキサアクリレートであった。
[実施例1〜
4、6〜8及び比較例1〜
6]
アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも1種を有するウレタン系化合物(A1)を含有する光重合性化合物(A)、光重合開始剤(B)を、それぞれ下記表1〜表2に示した配合割合(質量部)で混合し、実施例1〜
4、6〜8及び比較例1〜
6の感光性樹脂組成物の溶液を得た。得られた溶液について、後述する評価を行った。その結果を表3に示す。
なお、表1〜2中の各成分の数字は固形分の質量部を示している。また、表1〜2中の各成分は、以下に示すものであり、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも1種を有するウレタン系化合物(A1)(表中では「ウレタン(メタ)アクリレート」と表記する)は官能基すなわちエチレン性不飽和基の数と重量平均分子量を合わせて示した。重量平均分子量(Mw)は、溶媒としてテトラヒドロフランを用いてGPC法によって求めた。GPC法の詳細は次のとおりである。
装置名:東ソー製 HLC-8320GPC
カラム:Gelpack R-420、R-430、R-440(3本つなぎ)
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1ml/分
標準物質:ポリスチレン
【0121】
<原料成分>
((A1)成分)
(A1)成分(ウレタン(メタ)アクリレート)として、UN−904、UN−952、UN−905、UN−3320HC、UN−3320HS(以下、商品名、根上工業株式会社製)、上記製造例1で得た光重合性化合物(A1−1)を使用した。
なお、UN−905は、式(7)で示すウレタンアクリレート75質量%と、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを主成分とする多官能(メタ)アクリレート(多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物)25質量%からなるものである。
また、UN−3320HSは、官能基数が15であるウレタンアクリレート45質量%と、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを主成分とする多官能(メタ)アクリレート(多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物)55質量%からなるものである。
【0122】
((A2)成分)
少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する光重合性化合物(表中では「他(メタ)アクリレート」と表記する)として、次の化合物を使用した。
FA−7220M(商品名、式(9)で表されるアミド結合含有メタクリレート、日立化成工業株式会社製)
EA−6340(商品名、テトラヒドロ無水フタル酸変性ビニル基含有フェノール型エポキシアクリレート、中村化学工業株式会社製)
EA−7420(商品名、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、中村化学工業株式会社製)
A−DPH(商品名、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、新中村化学工業株式会社製)
【0123】
((B)成分)
(B)成分としては、次のものを使用した。
OXE−01(商品名、1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−2−(O−ベンゾイルオキシム)、BASF社製)
カチオン重合開始剤(ジフェニル〔4−(フェニルチオ)フェニル〕スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート)
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
<解像度の評価>
図7に示すように、実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、シリコン基板11上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、90℃のホットプレートで5分間乾燥し、乾燥後の膜厚20μmの感光性樹脂層52を形成し、試験基板を作製した。この感光性樹脂層52を形成した試験基板について、ホール径100μmφの開口パターンを有するネガマスクを介して、ウシオ電機株式会社製のプロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM)を用いて露光量100mJ/cm
2で感光性樹脂層52の露光を行った。この試験基板を、有機溶剤系現像液であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに2分間浸漬して現像を行った。現像後のレジストパターンをn−ブチルアセテートで洗浄し、乾燥後に観察を行い、下記の基準に基づいて耐溶剤性を評価した。本試験の結果を表3に示す。
A:
図7(a)に示すように、感光性樹脂層52にホール径100μmφが開口しており、開口部は矩形であり現像後の残渣もない。
B:
図7(b)に示すように、感光性樹脂層52にホール径100μmφが開口しているが、開口部がテーパー形状であり、スソ引き有り開口となっている。
C:
図7(c)に示すように、ホール径100μmφが開口しておらず、ビア埋まりとなっている。
【0127】
<中空構造保持性>
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、シリコン基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、90℃のホットプレートで5分間乾燥し、乾燥後の膜厚20μmの感光性樹脂層を形成し、試験基板を作製した。この感光性樹脂層を形成した試験基板について、格子サイズ1mm角の開口パターンを有するネガマスクを介して、ウシオ電機株式会社製のプロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM)を用いて露光量100mJ/cm
2で感光性樹脂層の露光を行った。この試験基板を現像、硬化して、格子状に開口したリブ部にあたる硬化膜パターンを得た。
【0128】
また、厚さ50μmのポリエチレンフタレートフィルムからなる支持フィルムの上に、感光性樹脂組成物からなる膜厚が20μmの感光性フィルムを作製した。この感光性フィルムを上記の硬化膜パターンに貼り付け、中空構造を形成した。
【0129】
次いで、ウシオ電機株式会社製のプロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM)を用いて、露光量100mJ/cm
2で上記の感光性フィルムの露光を行った。この試験基板を120℃で30分、160℃で30分、220℃で60分硬化した後、上記の支持フィルムを剥離して、硬化後の格子パターンを切断した断面を顕微鏡で観察し、下記の基準に基づいて中空構造保持性を評価した。その結果を表6及び表7に示す。
A:中空部が保持できており、フィルム硬化膜が全くダレ落ちていない。
B:中空部は保持できているが、少しでもフィルムにダレが見られる。
C:フィルムがダレ落ちてしまい、中空部が潰れている。
【0130】
<180℃弾性率の測定>
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、シリコン基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、90℃のホットプレートで5分間乾燥し、乾燥後の膜厚20μmの感光性樹脂層を形成し、試験基板を作製した。この感光性樹脂層を形成した試験基板について、ウシオ電機株式会社製のプロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM)を用いて、露光量100mJ/cm
2で感光性樹脂層の露光を行い、光硬化させた。この感光性樹脂層を、120℃で30分間、160℃で30分、220℃で60分加熱して硬化させた。得られた感光性樹脂組成物の硬化膜をシリコン基板から剥離し、剥離した硬化膜の180℃における弾性率を粘弾性試験器(TA instruments社製、商品名:RSA−III)により測定した。なお、測定は、次の条件で行った。これらの結果を表6及び表7に示す。
試験モード:引張り
試験温度:室温(25℃)〜300℃
昇温速度:5℃/min
試験周波数:1Hz
チャック間距離:20mm
【0131】
<耐湿熱性(耐PCT)の評価>
実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の溶液を、シリコン基板上にスピンコーターを用いて均一に塗布し、90℃のホットプレートで5分間乾燥し、乾燥後の膜厚20μmの感光性樹脂層を形成し、試験基板を作製した。この感光性樹脂層を形成した試験基板について、ウシオ電機株式会社製のプロキシミティー露光機(商品名:UX−1000SM)を用いて露光量100mJ/cm
2で感光性樹脂層の露光を行い、光硬化させた。その後、感光性樹脂層を、120℃で30分間、160℃で30分、220℃で60分加熱して硬化させた。この試験基板を、121℃、100%RH(相対湿度)、2気圧の条件下に100時間放置した後、硬化膜の外観を目視にて評価した。評価基準は以下の通りである。その結果を、耐PCT性として表6及び表7に示す。
A:硬化膜に濁り、剥離、膨れ、クラックが見られない。
B:硬化膜に若干の濁り、剥離、膨れ、クラックの、どれか一つでも見られる。
C:硬化膜に濁り、剥離、膨れ、クラックの、どれか一つでも見られる。
【0132】
【表3】
【0133】
表3に示すように、総ての実施例の感光性組成物は、各特性の評価がB以上(A又はB)となり、優れた効果を奏することが分かる(実施例1〜
4、6〜8)。その中でも、一分子中におけるアクリロイル基及びメタクリロイル基の総数が10〜15個であり、重量平均分子量が3000〜200000である(A1)成分を含有する光重合性化合物(A)と光重合開始剤(B)とを含有する感光性樹脂組成物は、各特性の評価がB以上(A又はB)となり、優れた効果を奏することが分かる(実施例1〜
4、6〜8)。
【0134】
また、実施例の感光性樹脂組成物は、180℃の弾性率が1.8GPa以上と高弾性率となり、中空構造保持性がよいことが分かる。
【0135】
また、(A)成分として、ウレタン系化合物(A1)を含有しない感光性樹脂組成物は、すべての特性を同時に満たすことができず、中空構造の蓋部を形成するための材料として適しておらず、比較例1では、中空構造保持性が悪くなった。比較例2〜5は、中空構造保持性は維持できるものの、180℃弾性率又は耐PCT性が大幅に低下した。これは、ウレタン系化合物を含まない(メタ)アクリレート樹脂では、高温加熱又は高温高湿という過酷な環境下において、樹脂の靭性が低下して亀裂進展が起こるとともに、界面接着性の低下が顕著であるためであると考えられる。
【0136】
本発明において、ウレタン系化合物(A1)の官能基数が15個である場合は、光露光方法を調整する必要がある。
比較例6は官能基数が多いため
、実施例と同じ露光量(100mJ/cm
2)では本発明の効果を奏するような解像度を得ることは難しく、解像度がやや劣っている。これは、感光基数が多く感光性樹脂組成物の塗布膜表面の光硬化が速くなって、いわゆる表面カワ張り状態によって光解像度が低下するのを避けるために行った。このように、ウレタン系化合物(A1)の官能基数が15の場合は、所望の解像度を得るために、材料だけではなく、製造条件を最適化する工程が必要となる。また、ウレタン系化合物(A1)の官能基数が15よりも多くなると、解像度の低下だけではなく、接着性の低下や未反応官能基の残存による特性変動が顕著になる。そのため、本発明において、ウレタン系化合物(A1)の官能基数は15以下とするのがより好ましい。
さらに、本実施例では、官能基数が15個のウレタン系化合物(A)を含む場合、その配合量を調整することで、解像度を良好に保ちつつも、弾性率を顕著に向上させることが可能になり、蓋部に極めて好適な感光性樹脂組成物を提供できた。
【0137】
以上のように、本発明において、ウレタン系化合物(A1)、好ましくは、一分子中におけるアクリロイル基及びメタクリロイル基の総数が10〜15個であり、重量平均分子量が3000〜200000であるウレタン系化合物(A1)を含有する光重合性化合物(A)と光重合開始剤(B)とを含有する感光性樹脂組成物、並びにそれを用いた感光性フィルムは、耐湿熱性に優れ、硬化物が高い弾性率を有し、中空構造保持性にも優れるため、中空構造デバイス用の蓋部として好適に使用できる。また、前記の中空構造保持性は、半導体封止材による高温、高圧のトランスファーモールドモールドを行う場合でも十分に維持される。
【0138】
本発明によれば、作業性と信頼性に優れる感光性樹脂組成物、並びにそれを用いた感光性フィルムを蓋部の形成方法及び中空構造の形成方法に適用することによって、低コストで、且つ高信頼性の中空構造を有する電子部品、具体的にはSAWフィルタを作製することができる。