特許第6115133号(P6115133)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6115133ペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115133
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】ペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20170410BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20170410BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20170410BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20170410BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C08L27/06
   C08F2/44 B
   C08L71/02
   C08K5/42
   C08K5/10
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-287910(P2012-287910)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129471(P2014-129471A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】磯田 茂紀
(72)【発明者】
【氏名】松本 洋二
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−096947(JP,A)
【文献】 特開2005−162980(JP,A)
【文献】 特開平10−139834(JP,A)
【文献】 特開平09−143326(JP,A)
【文献】 特開平07−228614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08F 2/44
C08K 3/00−13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[I]で表される化合物及び該化合物の残基を10〜5000ppm含有し、かつ、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルの群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸エステルを500〜10000ppm含有し、さらに、アルキル硫酸エステル塩を1500〜10000ppm含有することを特徴とするペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【化1】
[式中、Rは炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、Rは水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、Rは水素又はプロペニル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは1〜200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示す。]
【請求項2】
平均重合度が1100〜1500であることを特徴とする請求項1に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【請求項3】
一般式[I]で表される化合物及び該化合物の残基を500〜5000ppm含有し、かつ、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルの群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸エステルを1000〜4000ppm含有し、さらに、アルキル硫酸エステル塩を2000〜7000ppm含有し、平均重合度が1100〜1400であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂。
【請求項4】
塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれと共重合可能なビニル単量体100重量部に対して、下記一般式[I]で表される化合物0.001〜0.5重量部及びアルキル硫酸エステル塩0.15〜1.0重量部を添加して水性媒体中で重合するペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法であって、さらに、塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれと共重合可能なビニル単量体100重量部に対して、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルの群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸エステル0.05〜1重量部を添加することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【化2】
[式中、Rは炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、Rは水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、Rは水素又はプロペニル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは1〜200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示す。]
【請求項5】
一般式[I]で表される化合物を重合転化率85%以下の間に添加することを特徴とする請求項4に記載のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、壁紙に用いた際に、ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れるペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、一般に可塑剤、充填剤、安定剤又はその他の配合剤などと共に混練することにより、ペースト塩ビゾル(以下、特に断りのない限り、ゾルはペースト塩ビゾルを示す)を調製し、該ゾルを使用し種々の成形加工法により壁紙、タイルカーペット、手袋、自動車用アンダーコートなどの様々な成形加工品に用いられている。
【0003】
このうち、壁紙はゾルを基材上にナイフコーター、ロールコーター、グラビア印刷機、ロータリースクリーン印刷機により塗布し、これを発泡させることで得られる。製品の意匠上の要求としてツヤ消し性が高いことが好まれるため、製造工程においてツヤ消し性を示すインクなどにより表面処理を行われる。しかし、ロータリースクリーン印刷機を用いた場合など塗布面が必ずしも一様ではないために、ツヤ消し性を付与する表面処理を行いにくい場合がある。そのような場合には、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂自体にツヤ消し性付与が求められる。その方法として、粒子径の大きなブレンド樹脂を併用する方法(特許文献1参照)、重合度の高い架橋ブレンド樹脂を使用する方法(特許文献2参照)がある。
【0004】
しかし、これらの場合、必要なレジンは2種以上となり、作業性が劣る。また、ブレンド樹脂を用いた場合は、発泡倍率の低下、発泡表面平滑性の低下、コーティングの際の筋引き現象、スクリーン目詰りが発生する場合がある。また、架橋樹脂を用いた場合には、発泡倍率の低下、発泡表面平滑性の低下が発生する場合がある。
【0005】
これらの点から、他の樹脂を併用しないペースト加工用塩化ビニル系樹脂が提案(特許文献3参照)されている。
【0006】
しかし、更なるツヤ消し性や加工性の向上が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06−340836号公報
【特許文献2】特開平07−11036号公報
【特許文献3】特開2000−204211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、単独で用いてもツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定の組成のペースト加工用塩化ビニル系樹脂が、ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、所定の一般式で表される化合物及び該化合物の残基を10〜5000ppm含有し、かつ、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルの群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸エステルを500〜10000ppm含有し、さらに、アルキル硫酸エステル塩を1500〜10000ppm含有するペースト加工用塩化ビニル系樹脂及びその製造方法に関するものである。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、下記一般式[I]で表される化合物を10〜5,000ppm含有するものである。
【0012】
【化1】
【0013】
[式中、Rは炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、Rは水素又は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基若しくはアラルキル基を示し、Rは水素又はプロペニル基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは1〜200の整数を示し、Mはアルカリ金属、アンモニウムイオン又はアルカノールアミン残基を示す。]
上記一般式[I]で表される化合物としては、例えば、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル,プロピレンオキシド10モルランダム付加体硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルプロペニルフェノールブチレンオキシド4モル,エチレンオキシド30モルブロック付加体硫酸エステルナトリウム塩等が挙げられる。
【0014】
上記一般式[I]で表される化合物の含有量が10ppm未満の場合はツヤ消し性が悪化したり、ゾル粘度が高くなり、5,000ppmを超える場合は得られる発泡体の色相が悪化する。ツヤ消し性、ゾル粘度、発泡体の色相をより優れたものにするため、上記一般式[I]で表される化合物の含有量は500〜4,000ppmが好ましい。
【0015】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルの群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸エステルを500〜10,000ppm含有するものである。
【0016】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート等が挙げられ、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ソルビタンモノラウレートエチレンオキシド6モル付加体、ソルビタンモノラウレートエチレンオキシド20モル付加体)、ソルビタンモノステアレートエチレンオキシド6モル付加体、ソルビタンモノステアレートエチレンオキシド20モル付加体、ソルビタントリオレエートエチレンオキシド20モル付加体等が挙げられ、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタンモノラウレートアルキレンオキシド付加体、ソルビタンモノステアレートアルキレンオキシド付加体、ソルビタントリオレエートアルキレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0017】
ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルの群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸エステルの含有量が500ppm未満の場合はツヤ消し性が悪化したり、ゾル粘度が高くなる。10,000ppmを超える場合はツヤ消し性が悪化したり、発泡体の色相が悪化する。ツヤ消し性、ゾル粘度、発泡体の色相をより優れたものにするため、該脂肪酸エステルの含有量は1,000〜4,000ppmが好ましい。
【0018】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、アルキル硫酸エステル塩を1,500〜10,000ppm含有するものである。
【0019】
アルキル硫酸エステル塩としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウムなどのアルキル硫酸エステル塩類等が挙げられる。
【0020】
アルキル硫酸エステル塩の含有量が1,500ppm未満の場合は重合が不安定となり安定してレジンが得られない。10,000ppmを超える場合はツヤ消し性が悪化したり、ゾル粘度が高くなる。より優れたツヤ消し性、ゾル粘度とするためには、アルキル硫酸エステル塩の含有量は2,000〜7,000ppmが好ましい。
【0021】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、上記した1)一般式[I]で表される化合物、2)ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルの群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸エステル、3)アルキル硫酸エステル塩以外に、他の界面活性剤(一般式[I]で表される化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルの群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸エステル、アルキル硫酸エステル塩以外の界面活性剤を示す。以下同じ)を含有しても良い。他の界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸塩類、ラウリン酸アンモニウム、ラウリン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、半硬化牛脂脂肪酸カリウムなどの脂肪酸塩類、ポリエキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類などのノニオン性界面活性剤等の従来より使用されているものを挙げることができる。
【0022】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、目的の効果が得られれば、いかなるものでも良いが、ツヤ消し性と発泡倍率をより向上させるため、平均重合度1,100〜1,500の範囲内にあることが好ましく、1,200〜1,400の範囲内がさらに好ましい。
【0023】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の平均粒子径は特に限定するものではないが、適切なゾル粘度、発泡倍率、セル構造とするため、0.8〜2.0μmが好ましく、1.0〜1.5μmの範囲内であることがさらに好ましい。さらに、本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の平均粒子径は、適切な発泡倍率とするため、0.45μm以下の粒子量が3.0〜30.0重量%であることが好ましく、6.0〜20.0重量%であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、本発明の目的を奏する限り、他に、後述の連鎖移動剤、脂肪族高級アルコール、緩衝剤、水溶性開始剤、還元剤等を含有してもよい。
【0025】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造方法としては、例えば、塩化ビニル単量体又は塩化ビニル単量体とこれと共重合可能なビニル単量体(以下、塩化ビニル系単量体と略記する)100重量部に対して、一般式[I]で表される化合物0.001〜0.5重量部及びアルキル硫酸エステル塩0.15〜1.0重量部を添加して水性媒体中で重合し、さらに、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルの群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸エステル0.05〜1重量部を添加すること等があげられる。
【0026】
一般式[I]で表される化合物の使用量は、塩化ビニル系単量体100重量部に対して0.001〜0.5重量部(=10〜5,000ppm)である。一般式[I]で表される化合物が0.001重量部未満の場合、ツヤ消し性が悪化したり、ゾルの粘度が高くなるため好ましくない。一般式[I]で表される化合物が0.5重量部を超えた場合、発泡体の色相が悪化するため好ましくない。ゾルの粘度特性、ツヤ消し性、セル構造、発泡色相を両立する点で、一般式[I]で表される化合物の使用量は0.01〜0.4重量部(=100〜4,000ppm)が好ましく、0.05〜0.3重量部(=500〜3,000ppm)がさらに好ましい。
【0027】
一般式[I]で表される化合物の添加方法は、重合前に一括で仕込む方法、重合中に連続で仕込む方法、重合途中に一括で仕込む方法などいずれでも良いが、ツヤ消し性、粘度の点から、重合前に一括で仕込む方法、重合中に連続で仕込む方法が好ましい。ツヤ消し性、粘度の点から、重合開始から重合転化率85%以下の間に添加することがさらに好ましい。
【0028】
ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルの群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸エステルの使用量は、塩化ビニル系単量体100重量部に対して0.05〜1重量部(=500〜10,000ppm)であり、好ましくは0.1〜0.4重量部(=1,000〜4,000ppm)である。0.05重量部未満の場合、ツヤ消し性が悪化したり、ゾルの粘度が高くなるため好ましくなく、1重量部を超えた場合、ツヤ消し性が悪化したり、発泡体の色相が悪化するため好ましくない。
【0029】
脂肪酸エステルの添加方法は、重合前に一括で仕込む方法、重合中に連続で仕込む方法、重合途中に一括で仕込む方法、重合後または乾燥前に一括で仕込む方法などいずれでも良いが、重合の安定性の点から、重合後または乾燥前に一括で仕込む方法が好ましい。
【0030】
アルキル硫酸エステル塩の使用量は、塩化ビニル系単量体100重量部に対して0.15〜1.0重量部(=1,500〜10,000ppm)であり、好ましくは0.2〜0.7重量部(=2,000〜7,000ppm)である。0.15重量部未満の場合、重合が不安定になるため好ましくない。1.0重量部を超えた場合、ツヤ消し性が悪化したり、ゾルの粘度が高くなるため好ましくない。
【0031】
アルキル硫酸エステル塩の添加方法は、重合前に一括で仕込む方法、重合中に連続で仕込む方法、重合途中に一括で仕込む方法、重合後または乾燥前に一括で仕込む方法などいずれでも良いが、ツヤ消し性、粘度、重合の安定性の点から、重合中に連続で仕込む方法が好ましい。ツヤ消し性、粘度、重合の安定性の点から、重合開始から重合転化率85%以下の間に添加することがさらに好ましい。
【0032】
重合の方法としては、例えば、塩化ビニル系単量体、界面活性剤、油溶性重合開始剤、必要に応じて脂肪族高級アルコール等の乳化補助剤を脱イオン水に添加しホモジナイザー等で混合分散した後、緩やかな攪拌下で重合を行うミクロ懸濁重合法;ミクロ懸濁重合法で得られた油溶性重合開始剤を含む種粒子(シード)を用いて行うシードミクロ懸濁重合法;塩化ビニル系単量体を脱イオン水、界面活性剤、水溶性重合開始剤とともに緩やかな攪拌下で重合を行う乳化重合法で得られた粒子をシードとして用いて乳化重合を行うシード乳化重合法等があげられ、これらの重合により製造されたペースト加工用塩化ビニル樹脂ラテックスを噴霧乾燥し、必要に応じて粉砕することにより本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得ることができる。
【0033】
以下に、好ましい重合の方法を具体的に説明するがこれに限定されるものではない。
【0034】
すなわち、塩化ビニル系単量体を、脱イオン水、一般式[I]で表される化合物、アルキル硫酸エステル塩、油溶性開始剤を含む種粒子、緩衝剤、必要に応じて油溶性開始剤を含まない種粒子、他の界面活性剤、連鎖移動剤、水溶性開始剤、還元剤、脂肪族高級アルコールの存在下で、緩やかに攪拌しながら重合器内の温度を上げて重合反応を開始し、所定の転化率に達するまで重合を行うシードミクロ懸濁重合法等が挙げられる。この際の重合温度としては、40〜70℃であることが好ましい。
【0035】
油溶性開始剤を含む種粒子、油溶性開始剤を含まない種粒子は後述の方法により調製することができる。
【0036】
界面活性剤としては、前述の1)一般式[I]で表される化合物、2)ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルの群から選ばれる少なくとも一種の脂肪酸エステル、3)アルキル硫酸エステル塩と、必要に応じて他の界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
連鎖移動剤、脂肪族高級アルコール、緩衝剤、水溶性開始剤、還元剤は後述のものを使用することができ、単独又は2種類以上を混合しても用いることができる。
【0038】
ここで、塩化ビニル系単量体とは、塩化ビニル単量体単独又は塩化ビニルを主体としこれと共重合し得る単量体との混合物を挙げることができ、混合物の場合、塩化ビニル単量体が80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。塩化ビニルと共重合し得る単量体としては、例えば、エチレン、プロピレンなどのオレフィン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−N,N−ヂメチルアミノエチルなどの不飽和モノカルボン酸エステル;アクリルアミド、メタクリルアミドなどの不飽和アミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル;マレイン酸、フマール酸などの不飽和ジカルボン酸;これらのエステル及びこれらの無水物、N−置換マレイミド類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル;塩化ビニリデンなどのビニリデン化合物等を挙げることができる。
【0039】
油溶性開始剤を含む種粒子は、例えば、以下のようなミクロ懸濁重合法で調整することが可能である。まず、塩化ビニル系単量体、塩化ビニル系単量体に可溶な重合開始剤、界面活性剤、純水、緩衝剤、脂肪族高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、塩素化パラフィンなどの分散剤の存在下、又は連鎖移動剤を加えてプレミックスし、ホモジナイザーにより均質化処理して油滴の調整を行う。この際のホモジナイザーとしては、例えば、コロイドミル、振動攪拌機、二段式高圧ポンプ等を用いることができる。そして、均質化処理をした液を重合器に送り、緩やかに攪拌しながら重合器内の温度を上げて重合反応を開始し、所定の転化率に達するまで重合を行うことにより開始剤等を含有する種粒子を調整することが可能である。この際の重合温度としては、30〜50℃であることが好ましい。得られる開始剤等を含有する種粒子の粒子径は、安定に重合が可能で、播種微細懸濁重合に用いた際に目的の粒子径分布が得られるのであればどのようなものでも良いが、通常0.4〜0.7μmである。塩化ビニル系単量体に可溶な重合開始剤としては、10時間半減期温度30〜70℃のジアシルパーオキサイドが好ましく、そのような重合開始剤としては、例えば、イソブチリルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイドなどが挙げられる。
【0040】
油溶性開始剤を含まない種粒子は、例えば、以下のような乳化重合法で調整することが可能である。脱イオン水、界面活性剤、水溶性重合開始剤などを仕込み、重合器内の脱気あるいは窒素などの不活性気体による置換を行い、塩化ビニル系単量体を仕込み、攪拌して塩化ビニル系単量体を可溶化した界面活性剤ミセル相を形成しつつ、重合器内の温度を上げて重合を進める。その際には反応速度や粒子径の制御のために開始剤、還元剤、界面活性剤、粒径制御剤などを重合反応前若しくは重合反応中に添加することもできる。また、重合温度は40〜70℃の範囲が好ましい。得られる油溶性開始剤を含まない種粒子の粒子径は、安定に重合が可能で、播種微細懸濁重合に用いた際に目的の粒子径分布が得られるのであればどのようなものでも良いが、通常0.1〜0.4μmである。水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの水溶性過酸化物;これらの過酸化物又はクメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシドなどのヒドロパーオキシドに、酸性亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、アスコルビン酸、第一鉄イオンのエチレンヂアミン四酢酸ナトリウム錯塩、ピロリン酸第一鉄などの還元剤を組み合せたレドックス系開始剤;2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩などの水溶性アゾ化合物等を挙げることができる。
【0041】
粒径制御剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどのアルカリ金属硫酸塩などを後述する乳化剤と組み合せたもの等があげられる。
【0042】
連鎖移動剤としては、例えば、トリクロルエチレン、四塩化炭素などのハロゲン系炭化水素、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、アセトン、n−ブチルアルデヒドなどのアルデヒド類等があげられ、重合度を調整できるものであればいかなるものを用いてもよい。
【0043】
脂肪族高級アルコールとしては、特に制限はないが、通常炭素数8〜18の脂肪族高級アルコールが使用される。これは、単独で使用しても、異なる炭素数の脂肪族高級アルコールを混合して使用しても差し支えない。
【0044】
高級脂肪酸としては、特に制限はないが、通常炭素数8〜18の脂肪族高級脂肪酸が使用される。これは、単独で使用しても、異なる炭素数の脂肪族高級脂肪酸を混合して使用しても差し支えない。
【0045】
高級脂肪酸エステルとしては、特に制限はないが、通常炭素数8〜18の脂肪族高級脂肪酸エステルが使用される。これは、単独で使用しても、異なる炭素数の脂肪族高級脂肪酸エステルを混合して使用しても差し支えない。
【0046】
緩衝剤としては、例えば、リン酸一もしくは二水素アルカリ金属塩、フタル酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等があげられる。
【0047】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂の製造に用いる乾燥機は一般的に使用されているものでよく、例えば、噴霧乾燥機等が挙げられる(具体例としては、「SPRAY DAYING HANDBOOK」(K.Masters著、3版、1979年、George godwin Limitedより出版)の121頁第4.10図に記載されている各種の噴霧乾燥機)。乾燥用空気入口温度、乾燥用空気出口温度に特に制限はないが、乾燥用空気入口温度は80〜200℃、乾燥用空気出口温度は45〜65℃が一般的に用いられる。乾燥用空気入口温度は100〜170℃、乾燥用空気出口温度は45〜55℃が更に好ましい。乾燥後に得られたペースト加工用塩化ビニル樹脂は、ペースト加工用塩化ビニル樹脂ラテックスを構成する粒子の集合体であり、通常10〜100μmの顆粒状である。乾燥出口温度が55℃を超える場合には、得られた顆粒状ペースト加工用塩化ビニル樹脂を粉砕した方が可塑剤への分散の点から好ましく、乾燥出口温度が55℃以下の場合には、顆粒状のままでも粉砕して使用してもどちらでも良い。
【0048】
粉砕処理するための機器には特に制限はなく、一般的なペースト塩ビを製造する際に使用されるものでよく、例えば、粉砕機等が挙げられる(具体例としては、「粉体工学便覧」(粉体工学会編、初版、1986年、日刊工業新聞社より出版)の503〜505頁第1.10表に記載されている各種の粉砕機)。この中でも、粉砕効率、処理量、顆粒の品質の点から高速回転式粉砕機が好ましい。
【0049】
顆粒状のまま使用する場合には、ペースト塩ビゾル中の粗大粒子を低減するために、乾燥後に得られたペースト加工用塩化ビニル樹脂に対して篩による粗粒除去を行うことが好ましい。篩としては一般的に使用されているものでよく、例えば、振動篩、超音波振動篩、三次元振動篩、網面固定式風力分級機等が挙げられ、これらを単独で、又は目開きの異なる複数を組み合せて使用することができる。
【0050】
尚、ペースト加工用塩化ビニル樹脂をゾルにした際の粗粒量が少ない方が良く、本発明のペースト加工用塩化ビニル樹脂は、例えば、以下に示す実施例に記載した配合におけるゾル化に際して、粗粒量が3%以下と少なく、好ましい。
【0051】
また、本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを噴霧乾燥する前にラテックス中の粗粒を除去しても良い。粗粒を除去する装置としては、例えば、湿式振動篩、湿式遠心分離機、液体サイクロン等の一般的に使用されるものを使用することができるが、粗粒除去効率、処理量の点から湿式振動篩が好ましい。
【0052】
さらに、乾燥効率を上げるために本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを濃縮してから噴霧乾燥しても良い。濃縮装置としては、限外ろ過膜、真空蒸発器、薄膜式蒸発器蒸発などの公知のものを単独で或は複数を組み合わせて使用することができる。
【0053】
本発明のペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを噴霧乾燥する前に液状粘結剤を添加することもできる。ここで、液状粘結剤とは得られる顆粒の可塑剤への分散性を向上させるもので、多価アルコール及び/又は多価アルコールのエーテル化合物が挙げられる。例えば、エチレングリコール、エチレングリコールジベンジルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエチレングリコールジエーテル系化合物、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のモノエーテル系化合物等が挙げられる。
【0054】
また、効果を阻害しない範囲で以下に示す非イオン性界面活性剤を用いることができる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリグリセリン高級脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤が挙げられる。添加方法は、重合前に一括で仕込む方法、重合中に連続で仕込む方法、重合途中に一括で仕込む方法などいずれでも良いが、重合の安定性の点から、重合後または乾燥前に一括で仕込む方法が好ましい。
【0055】
本発明により得られるペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、壁紙に用いた際に、ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、かつ粘度特性が優れたものである。
【発明の効果】
【0056】
本発明により得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れるという特性を有するものであることから、その工業的価値はきわめて高いものであり、特に壁紙用途に優れたものである。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、それらの内容は本発明の範囲を特に制限するものではない。
【0058】
以下に実施例より得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂の評価方法を示す。
【0059】
<平均粒子径>
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名LA−920)を使用し、屈折率1.16の条件にて2回測定し、その平均値を平均粒子径とした。
【0060】
<小粒子量>
平均粒子径と同様な方法で粒子径分布を測定し、0.45μm以下の粒子の体積分率の和を小粒子量とした。
【0061】
<ゾルの調製>
ペースト加工用塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、ジオクチルフタレート(株式会社ジェイプラス製)50重量部、炭酸カルシウム(BF−200 備北粉化工業株式会社製)50重量部、酸化チタン粉末(R−650 堺化学工業株式会社製)15重量部、アゾジカルボンアミド(AZH−25 大塚化学株式会社製)2重量部、液状安定剤(FL110 株式会社ADEKA製)3.0重量部、希釈剤(エクソールD40 エクソンモービル有限会社製)12重量部を配合し、T.K.ホモディスパー20型(特殊機化工業製)を用い、2000rpmで3分間混練し、ゾルを調製した。
【0062】
<低せん断粘度>
調製したゾルを、23℃で2時間放置した後、B8H型粘度計(ローターNo.5、20rpm、東京計器製)用い測定した。
【0063】
<発泡体作製>
上述の方法で作製したゾルを裏打紙(日本製紙製一般紙)へナイフコーターを用いて0.15mmの厚みで塗布し、熱風式オーブンLTF型(マチス社製)にて180℃、10秒間加熱し半ゲル状の原反を作製した。この原反を室温まで冷却した後、熱風式オーブンLTF型(マチス社製)にて210℃、40秒の条件で加熱して発泡体を得た。
【0064】
<ツヤ消し性>
上述の方法で作製した発泡体表面を目視で観察し、ツヤ消し性を評価した。ツヤ消し性の評価基準を以下に示す。
【0065】
◎:表面に対して垂直方向、水平方向からの観察でもツヤがない
○:表面に対して垂直方向からの観察でツヤがない、水平方向からの観察でややツヤがある
△:表面に対して垂直方向からの観察でややツヤがある、水平方向からの観察でツヤがある
×:表面に対して垂直方向、水平方向からの観察でもツヤがある
<光沢度>
上述の方法で作製した発泡体の表面を光沢度計(VG2000、日本電色製)を用い、入射角/受光角15度及び60度の条件での光沢度を測定した。小さい値であるほどツヤが消えている状態であることを示す。
【0066】
入射角/受光角15度では、0.8まで、入射角/受光角60度では、0.5までが合格レベルである。
【0067】
<セル構造>
上述の方法で作製した発泡体を切断し、発泡体の断面を観察し、セル構造を評価した。セル構造の評価基準を以下に示す。
【0068】
○:緻密である
×:部分的に大きなセルがある
<発泡倍率>
上述の方法で作製した発泡体の裏打紙を含まない厚さを、原反の裏打紙を含まない厚さで除して算出した。製品へのボリューム感付与のため、3.0以上が好ましい。
【0069】
合成例1(油溶性開始剤を含む種粒子の製造例)
1mオートクレーブ中に脱イオン水360kg、塩化ビニル単量体300kg、過酸化ラウロイル10kg、及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30kg、ドデシルメルカプタン1.5kgを仕込み、この重合液を2時間ホモジナイザーを用いて循環し、均質化処理後、温度を45℃に上げて重合を進めた。圧力が低下した後、未反応の塩化ビニル単量体を回収し、平均粒径0.60μm、固形分含有率39重量%の種粒子ラテックス(以下、種粒子Aと略記する)を得た。
【0070】
合成例2(油溶性開始剤を含む種粒子の製造例)
1mオートクレーブ中に脱イオン水360kg、塩化ビニル単量体300kg、過酸化ラウロイル5.7kg、及び15重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30kgを仕込み、この重合液を3時間ホモジナイザーを用いて循環し、均質化処理後、温度を45℃に上げて重合を進めた。圧力が低下した後、未反応の塩化ビニル単量体を回収し、平均粒径0.55μm、固形分含有率39重量%の種粒子ラテックス(以下、種粒子Bと略記する)を得た。
【0071】
合成例3(油溶性開始剤を含まない種粒子の製造例)
1mオートクレーブ中に脱イオン水400kg、塩化ビニル単量体350kg、16重量%ラウリン酸カリウム水溶液2kg及び16重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液5kg、2重量%過硫酸カリウム水溶液7kgを仕込み、温度を54℃に上げて重合を進めた。そして、圧力が低下した後、未反応塩化ビニル単量体を回収し、平均粒径0.13μm、固形分含有率42重量%の種粒子ラテックス(以下、種粒子Cと略記する)を得た。
【0072】
実施例1
2.5Lオートクレーブ中に脱イオン水500g、塩化ビニル単量体800g、5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液16g(単量体100重量部に対して0.1重量部)、種粒子Aを75g、種粒子Cを140g、0.1重量%硫酸銅水溶液4gを仕込み、この反応混合物の温度を52℃に上げて重合を開始するとともに、0.05重量%アスコルビン酸水溶液100gを全重合時間を通じて連続的に添加した。更に、重合開始してから重合終了までの間、5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液80g(単量体100重量部に対して0.5重量部)、5重量%ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液(第一工業製薬製:アクアロンHS−10)16g(単量体100重量部に対して0.1重量部)を連続的に添加した。重合圧が54℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.35MPa降下した時に重合を停止し、未反応の塩化ビニル単量体を回収したのち、10重量%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート水溶液(花王株式会社製:レオドールTW−L120)を16g(単量体100重量部に対して0.2重量部)添加し、塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。得られた塩化ビニル系樹脂ラテックスを、回転円盤式噴霧乾燥機(L8型 大川原化工機製)を用い回転数を12,000rpm、乾燥入口温度110℃、乾燥出口温度50℃で乾燥することによりペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0073】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を表1に示す。ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れるものであった。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例2
5重量%ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液(第一工業製薬製:アクアロンHS−10)の添加量を1.6g(単量体100重量部に対して0.01重量部)としたこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0076】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表1に示す。ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れるものであった。
【0077】
実施例3
5重量%ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液(第一工業製薬製:アクアロンHS−10)の添加量を80g(単量体100重量部に対して0.5重量部)としたこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0078】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表1に示す。ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れるものであった。
【0079】
実施例4
10重量%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート水溶液(花王株式会社製:レオドールTW−L120)の添加量を4g(単量体100重量部に対して0.05重量部)としたこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0080】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表1に示す。ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れるものであった。
【0081】
実施例5
10重量%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート水溶液(花王株式会社製:レオドールTW−L120)の添加量を40g(単量体100重量部に対して0.5重量部)としたこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0082】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表1に示す。ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れるものであった。
【0083】
実施例6
重合開始してから添加する、5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液の添加量を16g(単量体100重量部に対して0.1重量部)としたこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0084】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表1に示す。ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れるものであった。
【0085】
実施例7
重合開始してから添加する5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液の添加量を112g(単量体100重量部に対して0.7重量部)としたこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0086】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表1に示す。ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れるものであった。
【0087】
実施例8
種粒子Aの添加量を50g、種粒子Cの添加量を95gとしたこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0088】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表1に示す。ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れるものであった。
【0089】
実施例9
種粒子Aの代わりに種粒子Bを90g、種粒子Cの添加量を190gとしたこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0090】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表1に示す。ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れるものであった。
【0091】
実施例10
反応混合物の温度を59℃に上げて重合を開始し、重合圧が59℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.40MPa降下した時に重合を停止したこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0092】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表1に示す。ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れるものであった。
【0093】
実施例11
反応混合物の温度を49℃に上げて重合を開始し、重合圧が49℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧から0.33MPa降下した時に重合を停止したこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0094】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表1に示す。ツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れるものであった。
【0095】
比較例1
10重量%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート水溶液(花王株式会社製:レオドールTW−L120)に代えて10重量%ポリオキシアルキレンラウリルエーテル水溶液(三洋化成製:エマルミンHL100)を16g(単量体100重量部に対して0.2重量部)添加したこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0096】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表2に示す。ツヤ消し性が悪いものであった。
【0097】
【表2】
【0098】
比較例2
重合開始してから添加する5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液に代えて5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液の添加量を80g(単量体100重量部に対して0.5重量部)としたこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0099】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表2に示す。ツヤ消し性が悪いものであった。
【0100】
比較例3
重合開始してから添加する5重量%ラウリル硫酸ナトリウムに代えて5重量%ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム水溶液(第一工業製薬製:ネオハイテノールS−70)の添加量を80g(単量体100重量部に対して0.5重量部)としたこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0101】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表2に示す。ツヤ消し性が悪いものであった。
【0102】
比較例4
重合開始してから添加する5重量%ラウリル硫酸ナトリウムに代えて5重量%ラウリン酸カリウム水溶液の添加量を80g(単量体100重量部に対して0.5重量部)としたこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0103】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表2に示す。ツヤ消し性が悪いものであった。
【0104】
比較例5
5重量%ノニルプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体硫酸エステルアンモニウム塩水溶液(第一工業製薬製:アクアロンHS−10)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0105】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表2に示す。粘度が高く、ツヤ消し性が悪いものであった。
【0106】
比較例6
10重量%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート水溶液(花王株式会社製:レオドールTW−L120)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0107】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表2に示す。ツヤ消し性が悪いものであった。
【0108】
比較例7
10重量%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート水溶液(花王株式会社製:レオドールTW−L120)の添加量を96g(単量体100重量部に対して1.2重量部)としたこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0109】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表2に示す。ツヤ消し性が悪いものであった。
【0110】
比較例8
重合開始してから添加する5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。重合中に凝集したため塩化ビニル系樹脂ラテックスは得られなかった。
【0111】
比較例9
重合開始してから添加する5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液の添加量を192g(単量体100重量部に対して1.2重量部)としたこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0112】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表2に示す。ツヤ消し性が悪いものであった。
【0113】
比較例10
重合開始してから添加する5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液に代えて5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を80g(単量体100重量部に対して0.5重量部)添加し、10重量%ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート水溶液(花王株式会社製:レオドールTW−L120)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行い、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂ラテックスを得た。これを実施例1と同様の方法により乾燥し、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂を得た。
【0114】
得られたペースト加工用塩化ビニル系樹脂を用いてゾルを作製し、物性を評価した。その結果を合わせて表2に示す。ツヤ消し性が悪いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明が提供する単独で用いてもツヤ消し性や発泡倍率に優れ、セル構造が緻密で、粘度特性が優れたペースト加工用塩化ビニル系樹脂は、壁紙用の新規なペースト加工用塩化ビニル系樹脂として利用される可能性を有する。