(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115259
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】光学素子モジュール及びその光軸調整方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/01 20060101AFI20170410BHJP
G02B 6/26 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
G02F1/01 F
G02B6/26
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-75297(P2013-75297)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-199364(P2014-199364A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝知
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 稔
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 志展
【審査官】
佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−211971(JP,A)
【文献】
再公表特許第03/005106(JP,A1)
【文献】
特開2003−266188(JP,A)
【文献】
特開2003−167160(JP,A)
【文献】
特開平03−216606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00−1/125,1/21−7/00
G02B 6/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の光変調部から出射する2つの変調光の偏波面を直交させて合波させる偏波合成手段と、該偏波合成手段を通過した光波を光ファイバに集光するコリメート手段とを備えた光学素子モジュールの光軸調整方法において、
該第1及び第2の光変調部と該偏波合成手段とを収納する筐体と、
該コリメータ手段を内蔵するレンズ保持手段と、
該光ファイバの端部を保持する光ファイバ保持手段であり、該光ファイバを保持している部分の一部が肉薄となるよう設定されている光ファイバ保持手段とを備え、
該筐体と該レンズ保持手段との接合部、及び該レンズ保持手段と該光ファイバ保持手段との接合部において、各接合部は接合面が平面構造となっており、両者を接合するため、当該接合部の周囲の120度間隔で3点を同時にレーザー溶接を行う接合工程と、
該筐体と該レンズ保持手段との接合部、該レンズ保持手段と該光ファイバ保持手段との接合部、又は該光ファイバ保持手段の肉薄部のいずれかに、当該部分の周囲の一部に光軸調整のための応力を印加し、該応力が圧縮応力となっている点にレーザー溶接を行って光軸を調整する調整工程により、
該光ファイバに入射する2つの変調光の光強度を調整することを特徴とする光学素子モジュールの光軸調整方法。
【請求項2】
第1及び第2の光変調部から出射する2つの変調光を偏波面を直交させて合波させる偏波合成手段と、該偏波合成手段を通過した光波を光ファイバに集光するコリメート手段とを備えた光学素子モジュールにおいて、
該第1及び第2の光変調部と該偏波合成手段とを収納する筐体と、
該コリメータ手段を内蔵するレンズ保持手段と、
該光ファイバの端部を保持する光ファイバ保持手段であり、該光ファイバを保持している部分の一部が肉薄となるよう設定されている光ファイバ保持手段とを備え、
該筐体と該レンズ保持手段との接合部、及び該レンズ保持手段と該光ファイバ保持手段との接合部において、各接合部は接合面が平面構造となっており、両者を接合するため、当該接合部の周囲には、レーザー溶接した箇所の数が、120度間隔で3点のレーザー溶接した箇所を1組として、少なくとも1組以上存在し、
さらに、該光ファイバに入射する2つの変調光の光強度を調整するため、該筐体と該レンズ保持手段との接合部、該レンズ保持手段と該光ファイバ保持手段との接合部、又は該光ファイバ保持手段の肉薄部のいずれかに、当該部分の周囲の一部に、前記レーザー溶接した箇所以外に他のレーザー溶接した箇所があることを特徴とする光学素子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学素子モジュール及びその光軸調整方法に関し、特に、複数の光学素子がレーザー溶接接合されて形成される光学素子モジュール及びその光軸調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野や光計測分野においては、光変調器等の光学素子を有し、複数の光学素子から構成される光学素子モジュールが多用されている。この光学素子モジュールは、複数の光学素子同士を溶接接合することにより製造するが、その製造の際の光学素子の配置位置調整には高い精度が要求されることから、光軸ずれが生じてしまうことも多い。
【0003】
また光学素子モジュールを構成する各光学素子は、それぞれ筐体に収納されたり保持部材に保持されており、筐体や保持部材同士が溶接接合されて組み立てられることが多いが、保持部材は通常、金属で形成されており、溶接の際に加えられる熱によって熱収縮を起こし、変形してしまう。
【0004】
すると、光軸ずれが起きないように調整しながら組み立てたとしても、溶接接合の際にモジュールが熱変形して光軸ずれが発生し、光学特性の劣化が生じ問題がある。
【0005】
上記の問題に対して特許文献1では、湾曲面を有する光部品と当節面を有する光部品を互いに当接させ、2つの光部品間における光損失をモニタしながら当接部に応力を加え、光損失が最小となる箇所にYAGレーザーを照射して光学特性の劣化を補正している。
【0006】
しかしながら特許文献1における当接部とは、当接面と湾曲面とが接する線状の部分であり、即ち両者の接触は線接触である。この線接触の部分にレーザーを照射して溶接固定するため、不安定な状態での固定となりモジュールとしての信頼性に欠けるものとなってしまう。
【0007】
そして、修正のために溶接して熱収縮した箇所の反対側の部分には強い応力が発生してしまい、しかもモジュール全体の固定後にもこの応力は残留応力として残り、この残留応力が徐々に解放されることで経時的にモジュールが変形し、光学特性の劣化につながってしまう。
【0008】
さらに、溶接部分は線接触部分であり非常に狭い領域であるため、溶接時にYAGレーザーがモジュールを突き抜けてしまい、スプラッシュ(飛沫)が発生してしまう恐れがある。スプラッシュが発生しないように溶接しようとした場合には、十分な溶接深さが得られず、強度を確保できない。しかも、線接触の状態で溶接固定されているため、少しのレーザー照射によってもモジュールの変形量が大きくなってしまう。ゆえに修正難度も高くなり、生産性の低下につながる。
【0009】
また特許文献2では、モジュールを伝播する光波の偏波を調整するために、偏光ビームスプリッター(PBS)等の、複数の空間光学系の部品を配置している。このように内部部品点数が多くなると、モジュール全体が大型化しやすい。モジュール全体が大きくなればなるほど、上記の問題は顕著になる。さらに、特許文献2のように光波を分岐させる構造を有するモジュールにおいては、分岐光波の光強度差を補正する位置に調整するためにモジュールの光損失が拡大してしまうという問題がある。
【0010】
特に、2つの光変調部から出射した2つの光波を偏波面が直交するように偏波合成する場合には、複数の光学部品が介在するため、合波した2つの光波に光強度差が発生し易く、光軸調整だけでなく、光強度の調整も行う必要があり、光学部品の調整作業が、より煩雑化する。また、これらの光強度の調整を光学部品の調整に頼らず、特許文献3に挙げられるような駆動電圧の振幅制御により行う方法も存在するが、この場合駆動信号側の制御が複雑化するため、光学素子モジュールと駆動装置を含んだ光変調装置全体の大型化は避けられなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3938490号公報
【特許文献2】特開2012−203282号公報
【特許文献3】特開2008−171634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題を解決し、光軸ずれの修正を容易にかつ精度良く行うことができ、また修正作業中に生産性の低下や光学特性の劣化の生じない、信頼性の高い光学素子モジュールの光軸調整方法を提供することである。特に、2つの変調光を偏波合成する場合の光軸調整と光強度調整とを同時行うことが可能な光学素子モジュール及びその光軸調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の光学素子モジュール及びその光軸調整方法は以下の技術的特徴を有する。
(1) 第1及び第2の光変調部から出射する2つの変調光の偏波面を直交させて合波させる偏波合成手段と、該偏波合成手段を通過した光波を光ファイバに集光するコリメート手段とを備えた光学素子モジュールの光軸調整方法において、該第1及び第2の光変調部と該偏波合成手段とを収納する筐体と、該コリメータ手段を内蔵するレンズ保持手段と、該光ファイバの端部を保持する光ファイバ保持手段であり、該光ファイバを保持している部分の一部が肉薄となるよう設定されている光ファイバ保持手段とを備え、該筐体と該レンズ保持手段との接合部、及び該レンズ保持手段と該光ファイバ保持手段との接合部において、各接合部は接合面が平面構造となっており、両者を接合するため、
当該接合部の周囲の120度間隔で3点を同時にレーザー溶接を行う接合工程と、
該筐体と該レンズ保持手段との接合部、該レンズ保持手段と該光ファイバ保持手段との接合部、又は該光ファイバ保持手段の肉薄部のいずれかに、当該部分の周囲の一部に光軸調整のための応力を印加し、該応力が圧縮応力となっている点にレーザー溶接を行って光軸を調整する調整工程により、該光ファイバに入射する2つの変調光の光強度を調整することを特徴とする光学素子モジュールの光軸調整方法である。
【0016】
(4) 第1及び第2の光変調部から出射する2つの変調光を偏波面を直交させて合波させる偏波合成手段と、該偏波合成手段を通過した光波を光ファイバに集光するコリメート手段とを備えた光学素子モジュールにおいて、該第1及び第2の光変調部と該偏波合成手段とを収納する筐体と、該コリメータ手段を内蔵するレンズ保持手段と、該光ファイバの端部を保持する光ファイバ保持手段であり、該光ファイバを保持している部分の一部が肉薄となるよう設定されている光ファイバ保持手段とを備え、該筐体と該レンズ保持手段との接合部、及び該レンズ保持手段と該光ファイバ保持手段との接合部において、各接合部は接合面が平面構造となっており、両者を接合するため、当該接合部の周囲
には、レーザー溶接した箇所の数が、120度間隔で3点のレーザー溶接した箇所を1組として、少なくとも
1組以上
存在し、さらに、該光ファイバに入射する2つの変調光の光強度を調整するため、該筐体と該レンズ保持手段との接合部、該レンズ保持手段と該光ファイバ保持手段との接合部、又は該光ファイバ保持手段の肉薄部のいずれかに、当該部分の周囲の一部に、前記レーザー溶接した箇所以外に他のレーザー溶接した箇所があることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、第1及び第2の光変調部から出射する2つの変調光の偏波面を直交させて合波させる偏波合成手段と、該偏波合成手段を通過した光波を光ファイバに集光するコリメート手段とを備えた光学素子モジュールの光軸調整方法において、該第1及び第2の光変調部と該偏波合成手段とを収納する筐体と、該コリメータ手段を内蔵するレンズ保持手段と、該光ファイバの端部を保持する光ファイバ保持手段であり、該光ファイバを保持している部分の一部が肉薄となるよう設定されている光ファイバ保持手段とを備え、該筐体と該レンズ保持手段との接合部、及び該レンズ保持手段と該光ファイバ保持手段との接合部において、各接合部は接合面が平面構造となっており、両者を接合するため、当該接合部の周囲の少なくとも2つ以上の点で同時にレーザー溶接を行う接合工程と、該筐体と該レンズ保持手段との接合部、該レンズ保持手段と該光ファイバ保持手段との接合部、又は該光ファイバ保持手段の肉薄部のいずれかで、当該部分の周囲にレーザー溶接を行って光軸を調整する調整工程により、該光ファイバに入射する2つの変調光の光強度を調整することを特徴とする光学素子モジュールの光軸調整方法であるため、この接合面の平面構造により、従来のように、スプラッシュによる歩留まり低下や、レーザー溶接によるズレの発生が抑制され、容易に、かつ精度良く光学素子モジュールの光軸を調整することができる。しかも、平面構造で接触しているため、残留応力による経時的な変形も抑制され、光学特性の劣化を防止することが可能となる。
【0018】
しかも、当該接合部の周囲の少なくとも2つ以上の点で同時にレーザー溶接を行うため、レーザー溶接による位置ズレが発生し難い。特に、当該接合部の周囲の120度間隔で3点を同時にレーザー溶接を行う場合には、レーザー溶接で発生する応力が互いに干渉し合い、結果として位置ズレがより発生し難くなっている。
【0019】
また、光軸の微調整に際しては、筐体とレンズ保持手段との接合部、レンズ保持手段と光ファイバ保持手段との接合部、又は光ファイバ保持手段の肉薄部のいずれかで、当該部分の周囲にレーザー溶接を行うことで、より高精度な調整が可能となる。特に、当該部分の周囲の一部に光軸調整のための応力を印加し、該応力が圧縮応力となっている点にレーザー溶接を行うことで、応力を付加した状態に各部品の形状を維持させることが可能となる。
【0020】
しかも、これらの光軸調整を行う際に、光ファイバに入射する2つの変調光の光強度を調整しながら、光軸調整を行うため、各変調光の光強度調整を別途行う必要が無く、組み立て・調整作業を簡便に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の光軸調整方法を適用する光学素子モジュールの一実施例について説明する概略図である。
【
図2】本発明の光軸調整方法を適用する光学素子モジュールにおいて、各部材間を溶接する接合工程について説明する図である。
【
図3】発明の光軸調整方法を適用する光学素子モジュールにおいて、光軸を調整する調整工程について説明する図である。
【
図4】2つの変調部から出力される光波を偏波合成する光学素子モジュールの例を説明する図である。
【
図5】2つの光波の光強度分布を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の光学素子モジュール及びその光軸調整方法について好適例を用いて詳細に説明する。
図1は、光軸調整を行う部分を中心に示した図である。
光学素子1から出力された光波は、レンズ等のコリメータ手段3により光ファイバ8に導入される。光学素子モジュールは、さらに、光学素子1を収納する筐体2と、コリメータ手段3を内蔵するレンズ保持手段4と、光ファイバ8の端部を保持する光ファイバ保持手段であり、該光ファイバを保持している部分の一部(符号7で示す部分)が肉薄となるよう設定されている光ファイバ保持手段6とを備えている。
【0023】
本発明の第1の特徴は、筐体2とレンズ保持手段4との接合部
10、及びレンズ保持手段4と光ファイバ保持手段6との接合部11とにおいて、各接合部(10,11)は接合面が平面構造となっている。
【0024】
本発明において、「接合面が平面構造」であることの意味は、互いに接触している接合面が、一定以上の面積を有する状態で接触していることを意味し、レーザー溶接した際に、モジュールを突き抜けてスプラッシュが発生しない程度の接触面積が確保されていることを意味している。
【0025】
「接合面が平面構造」であるため、光軸調整のためのレーザーを照射しても、レーザー照射方向に対してモジュールの十分な肉厚が確保されているため、溶接部が熱収縮を起こして変形したり、スプラッシュが発生したりすることがない。また、各部材が十分な接触面積を確保しているため、レーザー溶接で発生した応力により、経時的に形状が変化することも抑制される。
【0026】
次に、筐体2とレンズ保持手段4との接合部10、及びレンズ保持手段4と光ファイバ保持手段6との接合部11を、レーザー溶接により接合する接合工程を説明する。同時に照射するレーザーは、2つ以上とすることで、レーザー溶接で発生する応力が、互いに干渉して打ち消し合うように働き、結果として、接合部材の位置ズレを抑制するよう構成している。
【0027】
図2は、
図1の接合部10や11を光軸方向に眺めた図であり、3つの点を同時にレーザー溶接する例を説明している。
図2のように、3つの溶接点を120度の間隔で配置することで、レーザー溶接で発生した応力が互いに干渉し、接合部全体に均一に加わるように構成されている。レーザー溶接する点が2点や4点以上の場合でも、溶接個所を中心Oに対して対象となるように溶接する点を配置することで、接合部材の位置ズレを抑制することが可能である。
【0028】
レーザー溶接に際しては、複数台のYAGレーザーを用いたり、一つのYAGレーザー光を分岐して使用するなど、任意の形態が利用可能である。また、レーザー溶接する場所を多くする場合には、
図2に符号Aで示す3点(それぞれ周方向に等間隔に離れている)を同時に照射・溶接し、続いてYAGレーザーの照射部材と光学素子モジュールの位置を相対的にずらし、符号Bで示す3点を照射・溶接し、さらに、同様に調整し符号Cで示す3点を照射・溶接する。またこの溶接作業の間には光学素子モジュールの出射光をモニタし、光損失が最小になるように光学素子モジュールの光軸を調整しながら溶接を行うことが好ましい。
【0029】
接合工程では、筐体2とレンズ保持手段4との接合部
10、及びレンズ保持手段4と光ファイバ保持手段6との接合部11を、レーザー溶接により接合する場合を中心に説明したが、光ファイバ8と光ファイバ保持手段6とが完全に接合されていない場合には、光ファイバ保持手段6の肉薄部7に上述したように3点のYAGレーザー照射を行って固定することが可能である。このような場合には、モニタしながらアライメント調整を行い、最初に肉薄部7を接合し、次に、接合部10、最後に接合部11を順次溶接することで、調整をより効率的に行うことができる。
【0030】
次に、光軸を微調整する調整工程について説明する。調整工程では、筐体2とレンズ保持手段4との接合部10、レンズ保持手段4と光ファイバ保持手段6との接合部11、又は光ファイバ保持手段6の肉薄部7のいずれかで、当該部分の周囲にレーザー溶接を行って光軸を調整する。
【0031】
図3は、筐体2とレンズ保持手段4との接合部10、レンズ保持手段4と光ファイバ保持手段6との接合部11、又は光ファイバ保持手段6の肉薄部7を、後軸方向から見た断面図である。調整工程では、これらの接合部(10,11)や肉薄部(7)のいずれかで、当該部分の周囲の一部に押圧力Fを印加して光軸を調整する。この押圧力により接合部等に応力が印加されるが、該応力が圧縮応力となっている点である、押圧力Fを印加した点と反対側の部分にレーザーLを照射して溶接を行う。これにより、応力のバランスが取れ、押圧力Fを解除しても形状を維持することが可能となる。
【0032】
調整工程では、透過損失を最小限にするように、光軸の微調整を何度も行うことも可能である。そのためには、各部分に複数回のレーザー溶接を行う場合もある。
【0033】
次に、筐体2に入れる光学素子として、第1及び第2の光変調部から出射する2つの変調光を偏波面を直交させて合波させる偏波合成手段を備えたものについて説明する。
図4に示すように、内蔵される光学素子として、例えば、同一基板上に並列したマッハツェンダー型導波路を2つ備え、2つの変調部を備えている。光ファイバ25で入射した光波を2つに分岐し、各変調部に導入する。各変調部から出射した光波L1及びL2は、偏波合成手段で一つの光波として出力される。
【0034】
偏波合成手段としては、偏波面を90°回転させる半波長板などの偏波回転部22と、直交する偏波面を有する2つの光波(L1,L2)とを合波する偏光ビームスプリッター(PBS)23などで構成される。偏波合成する部分は、複屈折材料を用いて合波することも可能である。
【0035】
変調部を備えた光学素子21や偏波合成手段(22,23)は、筐体2内に収容されて、配置固定されている。本発明の光学素子モジュールの光軸調整方法の特徴は、この2つの変調部から出射する2つの光波の光強度を調整しながら光軸調整も行うことである。
【0036】
偏波合成手段を出射した光波を、コリメータ手段3を用いて光ファイバ8に導入する光学系や保持手段、並びにその光軸調整方法については、
図1乃至3で説明したとおりであり、
図4の実施例にも同様に利用することが可能である。
【0037】
光軸調整で光強度調整を行うことができる原理について、
図5を参照しながら説明する。2つの変調部から出射した光波(L1,L2)は、偏波合成手段の結合損や位置調整の関係から、
図5(a)に示すように、若干光軸がずれて合波している。光ファイバに入射する位置において、2つの光波の光軸は完全に一致していない。この2つの合波光の光強度を、一点鎖線Xで示した部分の空間強度分布で見ると、
図5(b)のように、一方のピークが他方より大きくなって現れる。2つの光波のピーク位置(各光波の光軸)P
0,S
0は互いにずれているが、共に同じ強度となる位置もあり、このような位置に光ファイバの光軸を合わせることで、合波された2つの光強度をほぼ同じすることが可能となる。当然、光強度比を1:2や1:3など、等しくならない状態を実現することも可能である。
【0038】
偏波合成手段から出射する2つの光波の光軸がずれる原因は、変調部、偏波回転部、偏光ビームスプリッター(PBS)などの光学部品(偏波回転部の前後にコリメータレンズを配置する場合もある。)の位置関係が、正規の光軸からずれているためである。本発明は、このような位置ズレが発生している場合に、特に、好適に2つの光波の光強度を調整することができる。当然、コリメータ手段や光ファイバの位置を調整するのと同様に、筐体側の光学部品の位置を調整することで、2つの光波の光強度が変化することは言うまでもない。
【0039】
光軸調整に際しては、2つの光波(L1,L2)を切り替えて出射させ、個別に光強度をモニタして光軸を設定することも可能であるが、モニタ光を偏波分離し、2つの受光素子で同時に検出して、光強度比率が所定の条件を満たすように、光軸調整を行うことも可能である。
【0040】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した内容に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、光軸ずれの修正を容易にかつ精度良く行うことができ、また修正作業中に生産性の低下や光学特性の劣化の生じない、信頼性の高い光学素子モジュールの光軸調整方法を提供することができる。特に、2つの変調光を偏波合成する場合の光軸調整と光強度調整とを同時行うことが可能な光学素子モジュールの光軸調整方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
1 光学素子
2 筐体
3 レンズ
4 レンズ保持手段
5 光ファイバ保持パイプ
6 光ファイバ保持手段
7 肉薄部
8 光ファイバ
10,11 接合部
21 光学素子
22 偏波回転部
23 偏波合成部
25 入力用光ファイバ