特許第6115303号(P6115303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6115303隣接基としてカルボニル基を有するフェノール化合物およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115303
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】隣接基としてカルボニル基を有するフェノール化合物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C07C 49/84 20060101AFI20170410BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20170410BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20170410BHJP
   C09K 19/10 20060101ALI20170410BHJP
   C09K 19/14 20060101ALI20170410BHJP
   C09K 19/54 20060101ALI20170410BHJP
   C09K 19/38 20060101ALI20170410BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20170410BHJP
   C09K 19/34 20060101ALN20170410BHJP
【FI】
   C07C49/84 ECSP
   C09K19/30
   C09K19/12
   C09K19/10
   C09K19/14
   C09K19/54 B
   C09K19/54 Z
   C09K19/38
   C09K19/54 C
   G02F1/13 500
   !C09K19/34
【請求項の数】11
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2013-103872(P2013-103872)
(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公開番号】特開2013-256497(P2013-256497A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-114318(P2012-114318)
(32)【優先日】2012年5月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真由美
(72)【発明者】
【氏名】笹田 康幸
【審査官】 伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−518356(JP,A)
【文献】 特表2009−532337(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00149242(EP,A1)
【文献】 特開平09−052860(JP,A)
【文献】 特開2005−035986(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0209274(US,A1)
【文献】 特表2008−534463(JP,A)
【文献】 特表2008−533177(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/044796(WO,A2)
【文献】 特表2012−505907(JP,A)
【文献】 特開2007−217288(JP,A)
【文献】 特開2012−001502(JP,A)
【文献】 特開平09−169976(JP,A)
【文献】 CUBE, R. V. et al.,3-(2-Ethoxy-4-{4-[3-hydroxy-2-methyl-4-(3-methylbutanoyl)-phenoxy]butoxy}phenyl)propanoic acid: a brain penetrant allosteric potentiator at the metabortropic glutamate receptor 2 (mGluR2),Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2005年,Vol. 15, No. 9,pp. 2389-2393
【文献】 AHLUWALIA, V. K. et al.,A Convenient Synthesis of Psoralen Derivatives Oxygenated in the Pyrone Ring: 4-Methoxypsoralen and 3,4-Dimethoxypsoralen (Halkendin),Australian Journal of Chemistry,1979年,Vol. 32, No. 6,pp. 1361-1367
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C09K
G02F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。
【化1】
[式(1)において、
1およびR2は、独立して、炭素数1〜10のアルキルであり、前記アルキルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられてもよく;
環A1および環A2は、独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、1,4−シクロへキシレンを構成する少なくとも1つの−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、1,4−シクロへキシレンを構成する少なくとも1つの
【化2】

【化3】
で置き換えられてもよく、1,4−シクロへキシレンを構成する少なくとも1つの−CH2−は−O−または−CO−で置き換えられてもよく、これらの環に直接結合する少なくとも1つの水素はハロゲン、−CF3、−CHF2または−CH2Fで置き換えられてもよく;
1は、単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−または−OCO−であり;
Yは、フッ素、塩素、−CF3、−CHF2または−CH2Fであり;
m、nおよびpは、独立して、0、1または2であり、
m+nは、0、1または2である。]
【請求項2】
式(1)において、
1およびR2が、独立して、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキルまたは炭素数2〜9のアルケニルオキシであり;
環A1および環A2が、独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンである;
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(1)において、Yがフッ素である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式(1)において、m=n=1である、請求項2または3に記載の化合物。
【請求項5】
式(1)において、m=0かつn=1である、請求項2または3に記載の化合物。
【請求項6】
式(1)において、m=n=p=0である、請求項2または3に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物の、液晶組成物の含有成分としての使用。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1種含有する液晶組成物。
【請求項9】
光学活性化合物および重合可能な化合物から選択される少なくとも1種をさらに含有する請求項8に記載の液晶組成物。
【請求項10】
酸化防止剤および紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種をさらに含有する請求項8または9に記載の液晶組成物。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の液晶組成物を含む液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、隣接基としてカルボニル基を有し、負の誘電率異方性の値(Δε)を有する液晶性化合物、この化合物を含有する液晶組成物、およびこの液晶組成物を含む液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、パソコンおよびテレビ等のディスプレイに広く利用されている。この素子は、液晶性化合物の光学異方性および誘電率異方性等を利用する。液晶表示素子の動作モードとしては、例えば、PC(phase change)モード、TN(twisted nematic)モード、STN(super twisted nematic)モード、BTN(bistable twisted nematic)モード、ECB(electrically controlled birefringence)モード、OCB(opticallycompensated bend)モード、IPS(in-plane switching)モード、VA(vertical alignment)モードおよびPSA(Polymer sustained alignment)等のモードが知られている。
【0003】
これらのうち、ECBモード、IPSモードおよびVAモード等は、液晶分子の垂直配向を利用した動作モードである。特にIPSモードおよびVAモードは、TNモードおよびSTNモード等の動作モードの欠点である視野角の狭さを改善できることが知られている。
【0004】
IPSモードおよびVAモードで動作する液晶表示素子では、負の誘電率異方性を有する液晶組成物が主に用いられる。素子の特性をさらに向上させるには、この液晶組成物に含まれる液晶性化合物が、下記の(1)〜(8)で示す物性を有することが好ましい。
(1)熱・光等に対する高い安定性。
(2)高い透明点。
(3)液晶相の低い下限温度。
(4)小さな粘度(η)。
(5)適切な光学異方性の値(Δn)。
(6)大きな負の誘電率異方性の値(Δε)。
(7)適切な弾性定数(K33:ベンド弾性定数)。
(8)他の液晶性化合物との優れた相溶性。
【0005】
液晶性化合物の物性が素子の特性に及ぼす効果は、次のとおりである。
(1)のように、熱・光等に対する高い安定性を有する化合物は、素子の電圧保持率を大きくする。これによって、素子の寿命が長くなる。(2)のように、高い透明点を有する化合物は、素子の使用可能な温度範囲を広げる。(3)のように、ネマチック相またはスメクチック相等の液晶相の低い下限温度、特にネマチック相の低い下限温度を有する化合物も、素子の使用可能な温度範囲を広げる。(4)のように、小さな粘度を有する化合物は、素子の応答時間を短くする。
【0006】
(5)のように、適切な光学異方性を有する化合物は、素子のコントラストを向上させる。素子の設計に応じて、大きな光学異方性または小さな光学異方性、すなわち適切な光学異方性を有する化合物が必要である。素子のセルギャップを小さくすることにより応答時間を短くする場合には、大きな光学異方性を有する化合物が適している。(6)のように、大きな負の誘電率異方性を有する化合物は、素子のしきい値電圧を下げる。これによって、素子の消費電力が小さくなる。
【0007】
(7)に関しては、大きな弾性定数を有する化合物は、素子の応答時間を短くし;小さな弾性定数を有する化合物は、素子のしきい値電圧を下げる。したがって、向上させたい特性に応じて適切な弾性定数が必要になる。
【0008】
(8)のように、他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する化合物が好ましい。これは、異なった物性を有する液晶性化合物を混合して、液晶組成物の物性を調節するからである。
【0009】
これまでに、大きな誘電率異方性を有する液晶性化合物が種々合成されてきた。これは、(i)従来の化合物にはない優れた物性が新規な化合物には期待されるからであり、また(ii)液晶組成物を調製する際に必要な上述した物性のうち任意の2つの物性の間の適切なバランスが新規な化合物には期待されるからである。
【0010】
例えば特許文献1に開示があるように、分子内に、フェノール部位と、このフェノール部位のベンゼン環炭素に結合したカルボニル基とを有するフェノール化合物については、これまで報告例がある。しかしながら、これらは負の誘電率異方性の値が比較的小さな化合物に限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−217288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、誘電率異方性の値(Δε)が負に大きい液晶性化合物、この化合物を含有する液晶組成物、およびこの液晶組成物を含む液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、下記構造を有する液晶性化合物が負に大きな誘電率異方性の値(Δε)を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、式(1)で表される化合物に関する。
【化1】
[式(1)において、R1およびR2は、独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルであり、前記アルキルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;環A1および環A2は、独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、1,4−シクロへキシレンを構成する少なくとも1つの−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、1,4−シクロへキシレンを構成する少なくとも1つの
【化2】

【化3】
で置き換えられてもよく、1,4−シクロへキシレンを構成する少なくとも1つの−CH2−は−O−または−CO−で置き換えられてもよく、これらの環に直接結合する少なくとも1つの水素はハロゲン、−CF3、−CF2Hまたは−CH2Fで置き換えられてもよく;
1は、単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−または−OCO−であり;Yは、ハロゲン、−CF3、−CF2Hまたは−CH2Fであり;m、nおよびpは、独立して、0、1または2であり、m+nは、0、1または2である。]
【0015】
式(1)において、R1およびR2は、独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキルまたは炭素数2〜9のアルケニルオキシであり、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;環A1および環A2は、独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであることが好ましい。
【0016】
式(1)において、Yはフッ素であることが好ましい。また、式(1)において、m=n=1であるか、m=0かつn=1であるか、またはm=n=p=0であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、式(1)で表される化合物の、液晶組成物の含有成分としての使用に関する。また、本発明は、式(1)で表される化合物を少なくとも1種含有する液晶組成物に関し、前記液晶組成物は、光学活性化合物および重合可能な化合物から選択される少なくとも1種をさらに含有することが好ましく、また、酸化防止剤および紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種をさらに含有することが好ましい。また、本発明は、上記液晶組成物を含む液晶表示素子に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、誘電率異方性の値(Δε)が負に大きい液晶性化合物、この化合物を含有する液晶組成物、およびこの液晶組成物を含む液晶表示素子が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の誘電率異方性の値(Δε)が負に大きい液晶性化合物、この化合物を含有する液晶組成物、およびこの液晶組成物を含む液晶表示素子について、具体例を示しながら詳細に説明する。
【0020】
本明細書における用語の使い方は、次のとおりである。
「液晶性化合物」は、ネマチック相またはスメクチック相等の液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。
「液晶表示素子」は、液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。
「液晶表示素子」を、「表示素子」または「素子」と略すことがある。
【0021】
「透明点」は、液晶性化合物そのものを試料として測定される物性値であって、液晶性化合物における液晶相(例:ネマチック相、スメクチック相)−等方相の相転移温度である。
【0022】
「液晶相の下限温度」は、液晶性化合物そのものを試料として測定される物性値であって、液晶性化合物における結晶相−液晶相(例:ネマチック相、スメクチック相)の相転移温度である。
【0023】
「ネマチック相の上限温度」は、液晶組成物におけるネマチック相−等方相の相転移温度、または液晶性化合物と母液晶との混合物の測定値から外挿法により算出される(当該液晶性化合物における)ネマチック相−等方相の相転移温度であり、「上限温度」と略すことがある。
【0024】
「ネマチック相の下限温度」は、液晶組成物におけるネマチック相−結晶相もしくはネマチック相−スメクチック相の相転移温度、または液晶性化合物と母液晶との混合物の測定値から外挿法により算出される(当該液晶性化合物における)ネマチック相−結晶相もしくはネマチック相−スメクチック相の相転移温度であり、「下限温度」と略すことがある。
【0025】
式(i)で表される化合物(iは式番号を示す。)を、「化合物(i)」と略すことがある。式(1)の説明において、環A1〜環A2を総称して単に「環A」ということがある。各式の説明において、六角形で囲まれたA1、B1およびC1等の記号は、それぞれ環A1、環B1および環C1等に対応する。
各式の説明において「ハロゲン」は、好ましくはフッ素または塩素である。
【0026】
各式の説明において「少なくとも1つの“A”は“B”で置き換えられてもよい」の表現は、“A”が1つのとき、“A”の位置は任意であり、“A”の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できることを意味する。
【0027】
例えば、「少なくとも1つの“A”が、“B”、“C”または“D”で置き換えられてもよい」という表現は、任意の“A”が“B”で置き換えられる場合、任意の“A”が“C”で置き換えられる場合、および任意の“A”が“D”で置き換えられる場合、さらに複数の“A”が“B”、“C”および“D”の少なくとも2つで置き換えられる場合を含む。
【0028】
具体的には、「少なくとも1つの−CH2−が−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH22−が−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキル」には、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルケニルおよびアルケニルオキシアルキルが含まれる。
【0029】
なお、本発明の液晶性化合物では、化合物の安定性を考慮して、アルキル等における連続する2つの−CH2−が−O−で置き換えられて、−O−O−等の基になることは好ましくない。また、アルキル等における末端のメチル部分(−CH2−H)の−CH2−が−O−で置き換えられて、−O−Hになることも好ましくない。
【0030】
式(1)の説明において、2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価の基を意味する。すなわち、2−フルオロ−1,4−フェニレンの向きはいずれでもよい。
【0031】
【化4】
【0032】
例えば、環A1が2−フルオロ−1,4−フェニレンの場合、式(1)は下記(a),(b)のいずれであってもよい。このルールは、式(1)中の環A1〜環A2や、後述する式(2)〜(7)中の環B1〜環B4、式(8)〜(10)中の環C1〜環C3の説明において、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル等の左右非対称の二価の基にも適用される。
【0033】
【化5】
【0034】
1.液晶性化合物
1−1.液晶性化合物の構造
本発明の液晶性化合物は、式(1)で表される。
【0035】
【化6】
【0036】
以下、式(1)中の末端基R1およびR2、環A1および環A2、結合基Z1、ベンゼン環上の置換基Y、ならびに繰返し数m、nおよびpについて説明する。物性に大きな差異がないので、化合物(1)は、2H(重水素)および13C等の同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。
【0037】
〈末端基R1およびR2
式(1)において、R1およびR2は、独立して、水素、ハロゲンまたは炭素数1〜10のアルキルである。前記アルキルにおいて、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。以下、前記アルキルにおいてこれらの置き換えがなされた基を「置換アルキル」ともいう。
【0038】
置換アルキルとしては、例えば、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルケニルおよびアルケニルオキシアルキル、ならびにアルキルおよび本段落例示の基が有する少なくとも1つの水素をハロゲンで置き換えた基(ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルコキシ、ハロゲン化アルコキシアルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化アルケニルオキシ、ハロゲン化アルコキシアルケニル、ハロゲン化アルケニルオキシアルキル)が挙げられる。
【0039】
アルキルの炭素数は、通常1〜10であり、好ましくは1〜5である。アルキルの具体例としては、−CH3、−C25、−C37、−C49、−C511、−C613および−C715が挙げられ、−CH3、−C25、−C37、−C49および−C511が好ましい。
【0040】
アルコキシの炭素数は、通常1〜9であり、好ましくは1〜5である。アルコキシの具体例として、−OCH3、−OC25、−OC37、−OC49、−OC511および−OC613が挙げられ、−OCH3、−OC25、−OC37、−OC49および−OC511が好ましい。
【0041】
アルコキシアルキルの炭素数は、通常2〜9であり、好ましくは2〜5である。アルコキシアルキルの具体例としては、−CH2OCH3、−CH2OC25、−CH2OC37、−(CH22OCH3、−(CH22OC25、−(CH22OC37、−(CH23OCH3、−(CH24OCH3および−(CH25OCH3が挙げられ、−CH2OCH3、−(CH22OCH3および−(CH23OCH3が好ましい。
【0042】
アルケニルの炭素数は、通常2〜10であり、好ましくは2〜7である。アルケニルの具体例としては、−CH=CH2、−CH=CHCH3、−CH2CH=CH2、−CH=CHC25、−CH2CH=CHCH3、−(CH22CH=CH2、−CH=CHC37、−CH2CH=CHC25、−(CH22CH=CHCH3、−(CH23CH=CH2、−CH=CHC49、−CH2CH=CHC37、−(CH22CH=CHC25、−(CH23CH=CHCH3、−(CH22CH=CHC37、−(CH23CH=CHC25および−(CH23CH=CHC37が挙げられ、−CH2CH=CH2、−CH2CH=CHCH3、−(CH22CH=CH2、−CH2CH=CHC25、−(CH22CH=CHCH3、−(CH23CH=CH2、−(CH23CH=CHCH3、−(CH22CH=CHC37、−(CH23CH=CHC25、−(CH23CH=CHC37が好ましい。
【0043】
アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH3、−CH=CHC25、−CH=CHC37、−CH=CHC49、−(CH22CH=CH2、−(CH22CH=CHCH3および−(CH22CH=CHC25等の奇数位に二重結合を有するアルケニルにおいては、トランス配置が好ましい。−CH2CH=CH2、−CH2CH=CHCH3、−CH2CH=CHC25、−CH2CH=CHC37および−(CH23CH=CH2等の偶数位に二重結合を有するアルケニルにおいては、シス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、液晶相の広い温度範囲、小さな粘度、および大きな弾性定数(K33:ベンド弾性定数)を有する。
【0044】
アルケニルオキシの炭素数は、通常2〜9であり、好ましくは2〜5である。アルケニルオキシの具体例としては、−OCH2CH=CH2、−OCH2CH=CHCH3、および−OCH2CH=CHC25が挙げられる。
【0045】
1やR2として列挙されるアルキルおよび置換アルキルは、直鎖または分岐鎖の基であり、シクロヘキシル等の環状基を含まない。アルキルおよび置換アルキルは、分岐鎖よりも直鎖の方が好ましい。
【0046】
1またはR2が直鎖であるときは、化合物(1)は液晶相の温度範囲が広く、そして粘度が小さい。R1またはR2が分岐鎖であるときは、化合物(1)は他の液晶性化合物との相溶性が向上する。R1が光学活性基である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を液晶組成物に添加することによって、液晶表示素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(reverse twisted domain)を防止することができる。R1が光学活性基でない化合物は、液晶組成物の成分として有用である。
【0047】
1およびR2は、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、またはこれらの基において少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられた基であることが好ましく;独立して、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルまたはアルケニルであることがより好ましく;独立して、アルキル、アルコキシまたはアルケニルであることがさらに好ましく;独立して、−CH3、−C25、−C37、−OCH3、−OC25、−OC37、−OC49、−(CH22CH=CH2、−(CH22CH=CHCH3および−(CH22CH=CHC37が特に好ましい。
【0048】
1およびR2は、同一ではないことが好ましい。R1およびR2が同一でなければ、化合物(1)が液晶相を発現しやすく、液晶組成物に対する化合物(1)の溶解性が高くなる傾向にある。また、R1およびR2のいずれか一方が水素以外の基であることが好ましく、R1およびR2の双方が水素以外の基であることがより好ましい。
【0049】
〈環A1および環A2
式(1)において、環A1および環A2は、独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンである。1,4−シクロへキシレンを構成する少なくとも1つの−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、1,4−シクロへキシレンを構成する少なくとも1つの
【化7】

【化8】
で置き換えられてもよく、1,4−シクロへキシレンを構成する少なくとも1つの−CH2−は−O−または−CO−で置き換えられてもよく、これらの環に直接結合する少なくとも1つの水素はハロゲン、−CF3、−CF2Hまたは−CH2Fで置き換えられてもよい。
【0050】
1,4−シクロへキシレンにおいて、少なくとも1つの−(CH22−が−CH=CH−で置き換えられた環、少なくとも1つの
【化9】

【化10】
で置き換えられた基、および少なくとも1の−CH2−が−O−または−CO−で置き換えられた環としては、例えば、式(11−1)〜式(11−8)で表される環が挙げられる。これらの中でも、式(11−1)、式(11−2)、式(11−7)または式(11−8)で表される環が好ましい。
【0051】
【化11】
【0052】
上記環において、少なくとも1つの水素がハロゲン、−CF3、−CF2Hまたは−CH2Fで置き換えられた環としては、例えば、式(12−1)〜(12−18)で表される環が挙げられる。これらの中でも、式(12−1)、式(12−2)、式(12−3)、式(12−10)、式(12−11)、式(12−12)、式(12−13)、式(12−14)または式(12−15)で表される環が好ましく、式(12−1)、式(12−2)または式(12−3)で表される環がより好ましい。
【0053】
【化12】
【0054】
環A1および環A2は、独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであることが好ましく;独立して、1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであることがより好ましい。1,4−シクロへキシレンには、シスおよびトランスの立体配置が存在する。高い上限温度の観点から、トランス配置が好ましい。
【0055】
環A1および環A2の少なくとも1つが1,4−シクロヘキシレンであるときは、化合物(1)は粘度が小さい。この化合物を添加することにより、液晶組成物の粘度を小さくすることができる。
【0056】
環A1および環A2の少なくとも1つが1,4−フェニレンであるときは、化合物(1)は光学異方性が大きくなる傾向にある。この化合物を添加することにより、液晶組成物の光学異方性を大きくすることができる。
【0057】
環A1および環A2の少なくとも1つが2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであるときは、化合物(1)は誘電率異方性が負に大きい。この化合物を添加することにより、液晶組成物の誘電率異方性を負に大きくすることができる。
【0058】
〈ベンゼン環上の置換基Y〉
式(1)において、Yは、ハロゲン、−CF3、−CF2Hまたは−CH2Fである。Yは、双極子モーメントの観点から、好ましくはフッ素、−CF3、または−CF2Hであり、分子の短軸方向への広がりを小さくする観点から、特に好ましくはフッ素である。
【0059】
〈結合基Z1
式(1)において、Z1は、単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−または−OCO−である。
【0060】
1が単結合である化合物は、粘度が小さいので好ましい。Z1が−(CH22−、−CF2O−または−OCF2−である化合物は、粘度が小さいので好ましい。Z1が−CH2O−または−OCH2−である化合物は、誘電率異方性が負に大きいので好ましい。Z1が−COO−または−OCO−である化合物は、上限温度が高いので好ましい。
【0061】
1は、化合物(1)の安定性を考慮すると、単結合、−(CH22−、−CH2O−または−OCH2−が好ましく、単結合または−(CH22−がさらに好ましく、単結合が特に好ましい。
【0062】
〈繰返し数m、nおよびp〉
式(1)において、m、nおよびpは、独立して、0、1または2であり、mおよびnの和(m+n)は、0、1または2である。mおよびnの和が0であるときは、化合物(1)は粘度が小さい。mおよびnの和が2であるときは、化合物(1)は上限温度が高い。pが0であるときは、化合物(1)は粘度が小さい。pが2であるときは、化合物(1)は透明点が高い傾向にある。
【0063】
1−2.液晶性化合物の好適例
本発明の化合物(1)としては、式(1−1)で表される化合物(式(1)中、m=n=1)、式(1−2)で表される化合物(式(1)中、m=0かつn=1)、式(1−3)で表される化合物(式(1)中、m=n=p=0)がより好ましい。
【0064】
【化13】
【0065】
式(1−1)〜式(1−3)において、R1およびR2は、独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル、炭素数2〜10のアルケニル、炭素数1〜9のアルコキシ、炭素数2〜9のアルコキシアルキルまたは炭素数2〜9のアルケニルオキシであり、これらの基において少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;環A1および環A2は、独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレンまたは2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;Z1、Yおよびpは、式(1)中の同一記号と同義である。これらのR1、R2、環A1、環A2、Z1、Yおよびpのさらに好ましい態様は、「1−1.液晶性化合物の構造」の各欄にて示したとおりである。
【0066】
1−3.液晶性化合物の物性
本発明の化合物(1)は、分子内に、フェノール部位と、このフェノール部位のベンゼン環炭素に結合したカルボニル基と、分子短軸方向を向いたフェノール性水酸基および極性基Yとを同時に有する。ここで、カルボニル基は前記フェノール部位の2位のベンゼン環炭素に結合しているので、このカルボニル基の酸素原子とフェノール性水酸基の水素原子とで分子内水素結合が形成され、その結果、カルボニル基とフェノール性水酸基および極性基Yとは同一の分子単軸方向を向いている。化合物(1)は、このような構造を有するため、大きな負の誘電率異方性、適切な光学異方性および適切な弾性定数K33を有する。
【0067】
また、本発明の化合物(1)は、液晶性化合物として必要な一般的物性、具体的には、熱・光に対する高い安定性、高い透明点・上限温度、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有し、優れた物性バランスを有する液晶性化合物である。
【0068】
本発明の化合物(1)を含有する液晶組成物は、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな負の誘電率異方性、および適切な弾性定数を有する。この液晶組成物は、液晶表示素子が通常使用される条件下で安定である。また、低温でこの液晶組成物を保管しても、本発明の化合物(1)が結晶またはスメクチック相として析出することはない。したがって、本発明の化合物(1)は、液晶組成物の含有成分として、特にIPSモード、VAモードまたはPSAモード等の動作モードの液晶表示素子に用いる液晶組成物の含有成分として好ましく使用することができる。
【0069】
1−4.液晶性化合物の合成
本発明の化合物(1)の合成法について説明する。化合物(1)は、有機合成化学の方法を適切に組み合わせることにより合成することができる。出発物質に目的の末端基R1およびR2、環A1および環A2、ならびに結合基Z1等を導入する方法は、「オーガニックシンセシス」(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、「オーガニック・リアクションズ」(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、「コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス」(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、「新実験化学講座」(丸善)等の成書に記載されている。
【0070】
1−4−1.結合基Z1等の生成
本発明の化合物(1)中の結合基Z1等を生成する方法の例は、以下のスキームに示す。このスキームにおいて、MSG1またはMSG2は、少なくとも1つの環を有する一価の有機基である。複数のMSG1またはMSG2が表す一価の有機基は、同一であってもよく、異なってもよい。化合物(1A)〜(1E)は、本発明の化合物(1)に相当する。
【0071】
【化14】
【0072】
(1)−(CH22−の生成
有機ハロゲン化合物(a1)を、n−ブチルリチウムまたはマグネシウムと反応させて得られた中間体を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のホルムアミドと反応させて、アルデヒド(a2)を得る。アルデヒド(a2)と、ホスホニウム塩(a3)をカリウムt−ブトキシド等の塩基で処理して得られるリンイリドとを反応させて、二重結合を有する化合物(a4)を得る。化合物(a4)を炭素担持パラジウム(Pd/C)等の触媒の存在下で水素化することにより、−(CH22−を有する化合物(1A)を合成する。
【0073】
(2)単結合の生成
有機ハロゲン化合物(a1)とn−ブチルリチウムまたはマグネシウムとを反応させて、リチウム塩またはグリニャール試薬を調製する。このリチウム塩またはグリニャール試薬と、ホウ酸トリメチル等のホウ酸エステルとを反応させ、塩酸等の酸の存在下で加水分解することにより、ジヒドロキシボラン(a5)を得る。ジヒドロキシボラン(a5)と有機ハロゲン化合物(a6)とを、炭酸塩水溶液中、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh34)触媒の存在下で反応させることにより、化合物(1B)を合成する。
【0074】
次の方法も利用できる。有機ハロゲン化合物(a6)にn−ブチルリチウムを反応させ、さらに塩化亜鉛を反応させる。得られた中間体と有機ハロゲン化合物(a1)とを、ビストリフェニルホスフィンジクロロパラジウム(PdCl2(PPh32)触媒の存在下で反応させることにより、化合物(1B)を合成する。
【0075】
(3)−CH2O−または−OCH2−の生成
ジヒドロキシボラン(a5)を過酸化水素等の酸化剤により酸化し、水酸基含有化合物(a7)を得る。別途、アルデヒド(a2)を水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤で還元してアルコール(a8)を得る。アルコール(a8)を臭化水素酸等でハロゲン化してハロゲン化物(a9)を得る。ハロゲン化物(a9)と先に得られた水酸基含有化合物(a7)とを、炭酸カリウム等の存在下で反応させることにより、−CH2O−を有する化合物(1C)を合成する。この方法によって−OCH2−を有する化合物も合成することができる。
【0076】
(4)−COO−または−OCO−の生成
有機ハロゲン化合物(a6)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(a10)を得る。カルボン酸(a10)と水酸基含有化合物(a11)とを、DCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)およびDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて、−COO−を有する化合物(1D)を合成する。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成することができる。
【0077】
(5)−CF2O−または−OCF2−の生成
化合物(1D)をローソン試薬等の硫黄化剤で処理して化合物(a12)を得る。化合物(a12)をフッ化水素ピリジン錯体およびNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化して、−CF2O−を有する化合物(1E)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1E)は、化合物(a12)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成することができる。W.H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。この方法によって−OCF2−を有する化合物を合成することもできる。Peer. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480.に記載の方法によって、これらの結合基を生成させることも可能である。
【0078】
1−4−2.合成スキーム
本発明の化合物(1)の合成方法の例を、以下のスキームに示す。
【0079】
【化15】
上記スキーム中、R1、環A1、環A2、Z1、Y、m、nおよびpは、式(1)中の同一記号と同義であり;R2はアルコキシである。
【0080】
本発明の化合物(1)の合成方法は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド溶媒中、炭酸カリウムおよびテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)触媒の存在下、室温でヨウ化アルキルによりフェノール(b1)を処理してエーテル化し、化合物(b2)を得る工程;テトラヒドロフラン溶媒中、−70℃以下の低温でs−ブチルリチウムにより化合物(b2)を処理した後、トリメトキシホウ素を加え、室温まで昇温し、酢酸および過酸化水素により処理して、フェノール(b3)を得る工程;テトラヒドロフラン溶媒中、0℃から室温で水素化ナトリウムおよびクロロメチルメチルエーテルを用いてフェノール(b3)の水酸基を保護し、化合物(b4)を得る工程;テトラヒドロフラン溶媒中、−70℃以下の低温でs−ブチルリチウムにより化合物(b4)を処理した後、アルデヒド(b5)を反応させて、アルコール(b6)を得る工程;ジクロロメタン溶媒中、室温でデスマーチンペルヨージナン(DMP)によりアルコール(b6)を酸化して、ケトン(b7)を得る工程;2N−塩酸を用いてケトン(b7)のフェノール性水酸基の保護基を外すことによって、本発明の化合物(1)を得る工程;を有する。
【0081】
式(1)においてR2がアルコキシ以外の他の基である場合や、その他の場合等についても、有機合成化学の方法を適切に組み合わせることにより合成することができる。
【0082】
2.液晶組成物
本発明の液晶組成物は、本発明の化合物(1)を成分Aとして含有する。本発明の液晶組成物は、化合物(1)を1種のみ含有してもよく、化合物(1)を2種以上含有してもよい。また、本発明の液晶組成物は、液晶性化合物の成分として2種以上の化合物(1)のみ含有してもよく、液晶性化合物の成分として化合物(1)と本明細書中に記載しなかった種々の液晶性化合物とを含有してもよい。
【0083】
本発明の液晶組成物は、液晶組成物の全質量に対して、成分Aを1〜99質量%の割合で含有することが好ましく、成分Aの含有量は、さらに好ましくは3〜60質量%であり、特に好ましくは5〜20質量%である。成分Aの含有量が前記範囲にあると、液晶組成物の優良な特性(例:液晶相の温度範囲、誘電率異方性の値、光学異方性の値、粘度)を発現させる点で好ましい。
【0084】
本発明の液晶組成物は、成分Bおよび成分Cから選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。成分Bは、後述する式(2)〜(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物である。成分Cは、後述する式(8)〜(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0085】
本発明の液晶組成物は、用途に応じて、光学活性化合物および重合可能な化合物の群から選択される少なくとも1種をさらに含有してもよく、酸化防止剤および紫外線吸収剤の群から選択される少なくとも1種をさらに含有してもよい。
【0086】
2−1.成分B(化合物(2)〜(7))
本発明の液晶組成物は、式(2)〜(7)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物(成分B)を含有してもよい。成分Bは、負の誘電率異方性を有し、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンのように、ラテラル位が2つのハロゲンで置き換えられたベンゼン環を有する。
【0087】
成分Bを添加することにより、液晶組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。成分Bは、主としてIPSモード、VAモードまたはPSAモード用途等の液晶組成物を調製する場合に用いられる。
【0088】
【化16】
【0089】
式(2)〜(7)において、各記号の意味は以下のとおりである。
3およびR4は、独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、前記アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよい。
【0090】
環B1、環B2、環B3および環B4は、独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロ−2,6−ナフタレンであり、前記1,4−フェニレンにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0091】
2、Z3、Z4およびZ5は、独立して、−(CH22−、−COO−、−CH2O−、−OCF2−、−OCF2(CH22−または単結合である。
1およびL2は、独立して、フッ素または塩素である。
q、r、s、t、uおよびvは、独立して0または1である。
r、s、tおよびuの和は、1または2である。
【0092】
化合物(2)は、二環化合物であるので、主として粘度、誘電率異方性または光学異方性の調整の効果がある。化合物(3)および化合物(4)は、三環化合物であるので、上限温度を高くする、誘電率異方性を大きくする、または光学的異方性を大きくする等の効果がある。化合物(5)〜(7)は、誘電率異方性を大きくする等の効果がある。
【0093】
成分Bの含有量を増加させると、液晶組成物の誘電率異方性が大きくなるが、粘度が大きくなるので、液晶組成物の誘電率異方性の要求を充たす限り、その含有量を少なくすることが好ましい。しかしながら、成分Bの誘電率異方性の絶対値は5程度である。したがって、充分な電圧駆動をさせるには、成分Bの含有量は、液晶組成物の全質量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50〜95質量%である。この場合、成分Aの含有量は、液晶組成物の全質量に対して、2〜40質量%であることが好ましい。成分Bの含有量が前記範囲にある液晶組成物は、IPSモード、VAモードまたはPSAモード用途等の液晶組成物として好ましい。
【0094】
一方、成分Bを誘電率異方性の値が正の液晶組成物に混合する場合は、その含有量は、液晶組成物の全質量に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0095】
2−2.成分C(化合物(8)〜(10))
本発明の液晶組成物は、式(8)〜(10)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物(成分C)を含有してもよい。成分Cは、2つの末端基がアルキル等であり、誘電率異方性の絶対値が小さいので、中性に近い化合物である。成分Cを用いることにより、しきい値電圧、液晶相の温度範囲、誘電率異方性の値、光学異方性の値、および粘度等を調整することができる。
【0096】
【化17】
【0097】
式(8)〜(10)において、各記号の意味は以下のとおりである。
5およびR6は、独立して、炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり、前記アルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CH2−は−O−で置き換えられてもよい。
【0098】
環C1、環C2および環C3は、独立して、1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0099】
6およびZ7は、独立して、−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−または単結合である。
【0100】
化合物(8)は、主として粘度または光学異方性を調整する効果がある。化合物(9)および化合物(10)は、上限温度を高くする等のネマチック相の温度範囲を広げる効果、または光学異方性を調整する効果がある。
【0101】
成分Cの含有量を増加させると、液晶組成物の粘度が小さくなるが、液晶組成物の誘電率異方性が小さくなるので、液晶組成物の誘電率異方性の要求を充たす限り、その含有量を多くすることが好ましい。
【0102】
例えばIPSモード、VAモードまたはPSAモード用途等の液晶組成物を調製する場合、成分Cの含有量は、液晶組成物の全質量に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。この場合、成分Aの含有量は、液晶組成物の全質量に対して、1〜40質量%であることが好ましい。
【0103】
2−3.成分B〜成分Cの具体例の例示
成分Bのうち、式(2)〜(7)で表される化合物の好適例として、それぞれ式(2−1)〜(2−6)、式(3−1)〜(3−15)、式(4−1)、式(5−1)〜(5−3)、式(6−1)〜(6−11)、および式(7−1)〜(7−10)で表される化合物が挙げられる。
【0104】
【化18】
【0105】
【化19】
式中、R3およびR4は、式(2)〜(7)中の同一記号と同義である。
【0106】
成分Cのうち、式(8)〜(10)で表される化合物の好適例として、それぞれ式(8−1)〜(8−11)、式(9−1)〜(9−19)、および式(10−1)〜(10−6)で表される化合物が挙げられる。
【0107】
【化20】
【0108】
【化21】
式中、R5およびR6は、式(8)〜(10)中の同一記号と同義である。
【0109】
2−4.光学活性化合物
本発明の液晶組成物は、光学活性化合物を1種または2種以上含有してもよい。光学活性化合物として、公知のキラルド−プ剤が挙げられる。このキラルド−プ剤は、液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ等の効果を有する。キラルド−プ剤としては、例えば、式(Op−1)〜(Op−13)で表される光学活性化合物が挙げられる。
【0110】
【化22】
【0111】
本発明の液晶組成物に光学活性化合物を添加することにより、らせんのピッチを調整することができる。らせんのピッチは、TFTモードおよびTNモード用途の液晶組成物であれば40〜200μmの範囲に調整することが好ましく;STNモード用途の液晶組成物であれば6〜20μmの範囲に調整することが好ましく;BTNモード用途の液晶組成物であれば1.5〜4μmの範囲に調整することが好ましい。また、ピッチの温度依存性を調整する目的で、2種以上の光学活性化合物を添加してもよい。
【0112】
2−5.重合可能な化合物
本発明の液晶組成物は、重合可能な化合物(ただし、上述した成分A〜成分Cに該当する化合物を除く。)を1種または2種以上添加して、PSAモード用途の液晶組成物として使用することもできる。また、重合可能な化合物を添加する場合、重合開始剤を用いることが好ましい。これらの場合、重合可能な化合物の含有量は、液晶組成物の全質量に対して、0.1〜2質量%であることが好ましい。
【0113】
重合可能な化合物としては、例えば、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル化合物、オキシラン環含有化合物、オキセタン環含有化合物、ビニルケトン化合物等の重合可能な基を有する化合物が挙げられる。重合可能な化合物は、好ましくは光重合開始剤等の適切な重合開始剤の存在下で、UV照射等により重合する。
【0114】
重合のための適切な条件、重合開始剤の適切な種類および適切な量は、当業者には既知であり、各文献に記載されている。例えば光重合開始剤であるIrgacure 651(登録商標;BASF)、Irgacure 184(登録商標;BASF)、またはDarocure 1173(登録商標;BASF)が、ラジカル重合に対して適切である。
【0115】
2−6.酸化防止剤および紫外線吸収剤
本発明の液晶組成物は、酸化防止剤および紫外線吸収剤の群から選択される少なくとも1種をさらに含有してもよい。酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効な成分である。酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−アルキルフェノール等のフェノール系酸化防止剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効な成分である。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体が挙げられ、立体障害のあるアミン等の光安定剤もまた好ましい。
【0116】
2−7.その他の成分
本発明の液晶組成物は、メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系等の二色性色素などの染料を添加して、GH(guest host)モード用途の液晶組成物として使用することもできる。
【0117】
2−8.液晶組成物の調製方法およびその特性
本発明の液晶組成物を調製する場合、例えば、成分Aの誘電率異方性の値を考慮して各種成分を選択することができる。本発明の液晶組成物は、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、大きな負の誘電率異方性、適切な光学異方性、および適切な弾性定数を有する。ここで「適切な」とは、本発明の液晶組成物を含む液晶表示素子の動作モードに応じて、例えば、光学異方性および弾性定数の好適範囲が適宜決定されることを意味する。
【0118】
本発明では、含有成分の種類および割合を適切に調整することによって、上限温度が70℃以上であり、かつ下限温度が−10℃以下である液晶組成物、すなわちネマチック相の温度範囲が広い液晶組成物を調製することができる。したがって、この液晶組成物を含む液晶表示素子は、広い温度範囲で使用することができる。
【0119】
本発明では、含有成分の種類および割合を適切に調整することによって、光学異方性の値が0.10〜0.13の範囲または0.05〜0.18の範囲にある液晶組成物を調製することができる。
【0120】
同様にして、誘電率異方性の値が通常−5.0〜−2.0の範囲、好ましくは−4.5〜−2.5の範囲にある液晶組成物を調製することができる。この範囲の誘電率異方性を有する液晶組成物は、IPSモード、VAモードまたはPSAモードで動作する液晶表示素子に好適に使用することができる。
【0121】
液晶組成物の調製は、公知の方法、例えば必要な成分を高温度下で溶解させる方法等により、一般に調製される。また、用途に応じて当業者によく知られている添加物(例:光学活性化合物、重合可能な化合物、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料)を添加して、各種モード用途の液晶組成物を調製することができる。添加物は当業者によく知られており、上述した化合物の他、各種文献に詳細に記載されている。
【0122】
3.液晶表示素子
本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、および長い寿命を有する。
【0123】
本発明の液晶組成物は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、IPSモード、VAモード、PSAモード等の動作モードを有し、アクティブマトリックス(AM方式)で駆動する液晶表示素子に使用できる。また、本発明の液晶組成物は、PCモード、TNモード、STNモード、OCBモード、IPSモード、VAモード等の動作モードを有し、パッシブマトリクス(PM)方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。これらのAM方式およびPM方式の素子は、反射型、透過型および半透過型のいずれのタイプにも適用することができる。
【0124】
本発明の液晶組成物は、負の誘電率異方性を有するので、IPSモード、VAモードまたはPSAモード等の動作モードを有し、AM方式で駆動する液晶表示素子に好ましく用いることができ、VAモードを有し、AM方式で駆動する液晶表示素子に特に好ましく用いることができる。
【0125】
本発明の液晶組成物は、ネマチック液晶をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子、液晶中に三次元網目状高分子を形成して作製したポリマ−分散型液晶表示素子(PDLCD)、ポリマーネットワーク液晶表示素子(PNLCD)にも用いることができる。
【0126】
TNモードおよびVAモード等で動作する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して垂直である。一方、IPSモード等で動作する液晶表示素子においては、電場の方向は、液晶層に対して平行である。VAモードで動作する液晶表示素子の構造は、K. Ohmuro, S. Kataoka, T. Sasaki and Y. Koike, SID ’97 Digest of Technical Papers, 28, 845 (1997) に報告されている。IPSモードで動作する液晶表示素子の構造は、国際公開第91/10936号パンフレットに報告されている。
【実施例】
【0127】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。以下の実施例等の記載において、特に言及しない限り、「%」は「質量%」を示す。
物性の測定方法は、以下のとおりである。
【0128】
〔NMR分析〕
測定装置として、DRX−500(ブルカーバイオスピン(株)製)を用いた。1H−NMRの測定は、試料をCDCl3等の重水素化溶媒に溶解させ、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F−NMRの測定は、CFCl3を内部標準として用い、積算回数24回の条件で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロード、ddはダブルダブレットであることを意味する。
【0129】
〔液晶性化合物等の物性値の測定試料〕
液晶性化合物そのものを試料として用いて、液晶性化合物についての(1)相構造および(2)相転移温度を測定した。液晶性化合物を母液晶と混合して調製された組成物を試料として用いて、この組成物について、(3)低温相溶性、(4)(5)ネマチック相の上限温度および下限温度、(6)(7)粘度、(8)光学異方性、(9)誘電率異方性、(10)弾性定数、(11)しきい値電圧、(12)(13)電圧保持率等の物性値を測定した。
【0130】
液晶性化合物を母液晶と混合して調製された組成物を試料として用いる後者の場合には、以下の方法で測定を行った。まず、得られた液晶性化合物15%と母液晶85%とを混合して試料を調製した。得られた試料の測定値から、下記式に示す外挿法に従って外挿値を計算し、この外挿値を得られた液晶性化合物の物性値として記載した。ただし、液晶性化合物と母液晶との混合割合が前記場合であっても、25℃でスメクチック相であるとき、または25℃で結晶が析出するときは、液晶性化合物と母液晶との混合割合(液晶性化合物:母液晶)を10%:90%、5%:95%、3%:97%、1%:99%の順に変更していき、25℃でスメクチック相でなくなったときの組成、または25℃で結晶が析出しなくなったときの組成で、試料の物性値を測定し、下記式に従って外挿値を求めて、これを液晶性化合物の物性値とした。なお、特に断りのない限り、液晶性化合物と母液晶との混合割合は、15%:85%である。
【0131】
【数1】
【0132】
母液晶として、以下の母液晶Aを測定に用いた。
【化23】
【0133】
上記5つの化合物を混合し、ネマチック相を有する母液晶Aを調製した。ネマチック相を有する母液晶Aの物性(測定方法は以下に記載した。)は、以下のとおりであった:上限温度(TNI)=74.6℃、誘電率異方性の値(Δε)=−1.3、光学異方性の値(Δn)=0.087.なお、これらの物性値を測定する試料としては、母液晶Aそのものを用いた。
【0134】
〔液晶性化合物等の物性値の測定方法〕
物性の測定は、後述する方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association;以下「JEITA」ともいう。)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521A)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、TFTを取り付けなかった。
【0135】
(1)相構造
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料(液晶性化合物)を置き、3℃/分の速度で加熱しながら相状態およびその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0136】
(2)相転移温度(℃)
パーキンエルマー社製走査熱量計DSC−7システムまたはDiamond DSCシステムを用いて、3℃/分速度で昇降温し、試料(液晶性化合物)の相変化に伴う、吸熱ピークまたは発熱ピークの開始点を外挿により求め、相転移温度を決定した。
【0137】
結晶はCと表した。結晶の種類区別がつく場合は、それぞれC1またはC2と表した。また、スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相またはスメクチックF相の区別がつく場合は、それぞれSA、SB、SCまたはSFと表した。等方性液体(アイソトロピック)はIと表した。相転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への相転移温度が50.0℃であり、ネマチック相から等方性液体への相転移温度が100.0℃であることを示す。他の表記も同様である。相転移温度の単位は、全て℃である。
【0138】
(3)低温相溶性
液晶性化合物の混合割合が、20%、15%、10%、5%、3%および1%となるように母液晶Aと液晶性化合物とを混合した試料を調製し、試料をガラス瓶に入れた。このガラス瓶を、−10℃または−20℃のフリーザー中に一定期間保管した後、結晶(またはスメクチック相)が析出しているかどうかを観察した。
【0139】
(4)ネマチック相の上限温度(TNIまたはNI;℃)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料(液晶組成物、または液晶性化合物と母液晶との混合物)を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。試料が液晶性化合物と母液晶Aとの混合物であるときは、上限温度をTNIの記号で示した。試料が液晶性化合物と成分B等との混合物であるときは、上限温度をNIの記号で示した。液晶性化合物についてのTNIは上述の外挿法により算出される外挿値であり、液晶組成物についてのTNIおよびNIは混合物そのものの測定値である。
【0140】
(5)ネマチック相の下限温度(TC;℃)
ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃および−40℃のフリーザー中に10日間保管した後、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを≦−20℃と記載した。
【0141】
(6)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s)
粘度(バルク粘度)は、E型回転粘度計を用いて測定した。
【0142】
(7)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
粘度(回転粘度)の測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に30V〜50Vの範囲で1V毎に段階的に電圧を印加した。0.2秒の無印加の後、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)との条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)とを測定した。これらの測定値とM. Imai et al.の論文、40頁の計算式(8)とから、回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性の値は、下記〈誘電率異方性の値(Δε;25℃で測定)〉で測定した値を用いた。
【0143】
(8)光学異方性の値(Δn;25℃で測定)
光学異方性の値(Δn)の測定は、25℃の温度下で、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングした後、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は、偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は、偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の(Δn)は、Δn=n‖−n⊥の式から計算した。
【0144】
(9)誘電率異方性の値(Δε;25℃で測定)
誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥の式から計算した。
誘電率(ε‖およびε⊥)は、次のように測定した。
【0145】
1)誘電率(ε‖)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させた後、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
【0146】
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0147】
(10)弾性定数(K11およびK33;25℃で測定;pN)
弾性定数の測定には、EC−1型弾性定数測定器((株)東陽テクニカ製)を用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである垂直配向素子に試料を入れた。この素子に20V〜0Vの電圧を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。静電容量(C)および印加電圧(V)の値を、「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)および式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.100)から弾性定数の値を得た。
【0148】
(11)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
しきい値電圧(Vth)の測定には、LCD5100型輝度計(大塚電子(株)製)を用いた。光源はハロゲンランプである。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)を、0V〜20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は、透過率が10%になったときの電圧である。
【0149】
(12)電圧保持率(VHR−1;25℃で測定;%)
電圧保持率(VHR−1)の測定に用いたTN素子は、ポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子に試料を入れた後、紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒の間測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0150】
(13)電圧保持率(VHR−2;80℃で測定;%)
電圧保持率(VHR−2)の測定に用いたTN素子は、ポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmである。この素子に試料を入れた後、紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒の間測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積である。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率である。
【0151】
〔液晶性化合物の合成〕
[実施例1]化合物(No.81)の合成
【0152】
【化24】
【0153】
〈第1工程〉
反応器へo−フルオロフェノール(s1)(50g,446mmol)、炭酸カリウム(123.3g,892mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)(7.2g,22.3mmol)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(250ml)を入れた。ヨウ化エチル(139.1g,892mmol)を室温でゆっくりと滴下し、次に室温にて5時間攪拌した。反応混合物を飽和食塩水に注ぎ込み、ヘキサンで抽出した。一緒にした有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣を減圧蒸留(2670Pa)にて精製して、化合物(s2)(52.3g,373mmol;83モル%)を得た。
【0154】
〈第2工程〉
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s2)(20g,142.7mmol)とTHF(300ml)を入れて、−70℃以下に冷却した。そこへ、sec−ブチルリチウム(1.08M;n−ヘキサン/シクロヘキサン溶液;165ml,178.3mmol)を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに1時間攪拌した。ホウ酸トリメチル(21.05ml,178.3mmol)のTHF(50ml)溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ3時間攪拌した。そこへ、酢酸(12.25ml,214.0mmol)を20℃から25℃の温度範囲で滴下した。30分後、過酸化水素(30%水溶液、32.3g,285.4mmol)を25℃から35℃の温度範囲で滴下し、さらに10時間攪拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、亜硫酸ナトリウム水溶液、水、および飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、化合物(s3)(22.0g,141.0mol;99モル%)を得た。化合物(s3)は精製せずに次の反応に用いた。
【0155】
〈第3工程〉
反応器へ水素化ナトリウム(60%,6.77g,169.2mol))およびTHF(220ml)を入れ、氷冷した。化合物(s3)(22.0g,141.0mol)のTHF(30ml)溶液を0℃から10℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ1時間攪拌した。再び氷冷したのち、クロロメチルメチルエーテル(MOMCl)(13.6g,169.2mol)を0℃から10℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ3時間攪拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込み、10分間攪拌したのち酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:酢酸エチル=20:1)で精製したのち、減圧蒸留(530Pa)することによって、化合物(s4)(17.7g,88.6mmol;62モル%)を得た。
【0156】
〈第4工程〉
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s4)(5g,25.0mmol)とTHF(75ml)を入れて、−70℃以下に冷却した。そこへ、sec−ブチルリチウム(1.08M;n−ヘキサン/シクロヘキサン溶液;27.8ml,30.0mmol)を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに1時間攪拌した。化合物(s5)(6.26g,25.0mmol)のTHF(20ml)溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、−70℃以下で3時間攪拌した。反応混合物を氷水に注ぎ込んだのち30分間攪拌し、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水および飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:酢酸エチル=4:1)で精製し、化合物(s6)(8.8g,19.5mmol;78モル%)を得た。
【0157】
〈第5工程〉
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s6)(4.5g,9.99mmol)および塩化メチレン(45ml)を入れた。この溶液を0℃に冷却し、デスマーチンペルヨージナン(DMP;5.1g,12.0mmol)を3回に分けて加えた。室温に戻しながらさらに2時間攪拌した。反応混合物を飽和重曹水へ注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、亜硫酸ナトリウム水溶液、水、および飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:酢酸エチル=9:1)で精製して、化合物(s7)(1.61g,3.6mmol;36モル%)を得た。
【0158】
〈第6工程〉
反応器へ化合物(s7)(1.61g,3.6mmol)、2N−塩酸(2.15ml,4.3mmol)、およびエタノール(30ml)を入れた。この混合物を加熱還流下1時間半攪拌した。25℃まで冷却後、この反応混合物へ水を加え、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:酢酸エチル=20:1)で精製したのち、再結晶(溶媒;ヘプタン)することによって、化合物(No.81)(17.7g,88.6mmol;62モル%)を得た。
【0159】
1H−NMR(δppm;CDCl3):12.72(s,1H,phenol),7.48(dd,1H),6.48(dd,1H),4.19(q,2H),2.74(d,2H),1.85−1.66(m,9H),1.48(t,2H),1.31−0.91(m,16H),0.86(t,3H).
【0160】
得られた化合物(No.81)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 137.2 I.
【0161】
[実施例2]化合物(No.83)の合成
【化25】
【0162】
〈第1工程〉
化合物(s4)(2.93g,14.7mmol)および化合物(s8)(4.5g,14.7mmol)を出発原料とし、sec−ブチルリチウム(1.06M;n−ヘキサン/シクロヘキサン溶液;16.6ml,17.6mmol)を反応剤として用い、実施例1の第4工程に準じて反応操作を行なうことで、化合物(s9)(5.64g,11.1mmol)を得た。化合物(s8)からの収率は76モル%であった。
【0163】
〈第2工程〉
化合物(s9)(5.64g,11.1mmol)を出発原料とし、デスマーチンペルヨージナン(DMP;5.65g,13.3mmol)を反応剤として用い、実施例1の第5工程に準じて反応操作を行なうことで、化合物(s10)(4.3g,8.5mmol)を得た。化合物(s9)からの収率は77モル%であった。
【0164】
〈第3工程〉
化合物(s10)(4.3g,8.5mmol)を出発原料とし、2N−塩酸(5.1ml,10.2mmol)を反応剤として用い、実施例1の第6工程に準じて反応操作を行なうことで、化合物(No.83)(2.2g,4.77mmol)を得た。化合物(s10)からの収率は56モル%であった。
【0165】
1H−NMR(δppm;CDCl3):12.73(s,1H,phenol),7.47(dd,1H),6.48(dd,1H),4.20(q,2H),2.74(d,2H),1.86−1.68(m,9H),1.48(t,2H),1.32−0.91(m,24H),0.87(t,3H).
【0166】
得られた化合物(No.83)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 129.0 (N 122.0) I.
【0167】
[実施例3]化合物(No.121)の合成
【化26】
【0168】
〈第1工程〉
化合物(s4)(1.8g,9.0mmol)および化合物(s11)(2.5g,9.0mmol)を出発原料とし、sec−ブチルリチウム(1.06M;n−ヘキサン/シクロヘキサン溶液;10.2ml,10.8mmol)を反応剤として用い、実施例1の第4工程に準じて反応操作を行なうことで、化合物(s12)(2.57g,5.37mmol)を得た。化合物(s11)からの収率は60モル%であった。
【0169】
〈第2工程〉
化合物(s12)(2.57g,5.37mmol)を出発原料とし、デスマーチンペルヨージナン(DMP;2.7g,6.4mmol)を反応剤として用い、実施例1の第5工程に準じて反応操作を行なうことで、化合物(s13)(2.25g,4.7mmol)を得た。化合物(s12)からの収率は88モル%であった。
【0170】
〈第3工程〉
化合物(s13)(2.25g,4.7mmol)を出発原料とし、2N−塩酸(2.8ml,5.6mmol)を反応剤として用い、実施例1の第6工程に準じて反応操作を行なうことで、化合物(No.121)(1.5g,3.5mmol)を得た。化合物(s13)からの収率は74モル%であった。
【0171】
1H−NMR(δppm;CDCl3):12.70(s,1H,phenol),7.46(dd,1H),6.48(dd,1H),4.18(q,2H),2.91(d,2H),1.85−1.66(m,9H),1.46(t,2H),1.31−0.91(m,20H),0.87(t,3H).
【0172】
得られた化合物(No.121)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 99.3 C 147.8 N 158.7 I.
【0173】
[実施例4]化合物(No.21)の合成
【化27】
【0174】
〈第1工程〉
化合物(s4)(3.0g,15.0mmol)および化合物(s14)(2.5g,15.0mmol)を出発原料とし、sec−ブチルリチウム(1.08M;n−ヘキサン/シクロヘキサン溶液;16.7ml,18.0mmol)を反応剤として用い、実施例1の第4工程に準じて反応操作を行なうことで、化合物(s15)(3.4g,9.2mmol)を得た。化合物(s14)からの収率は61モル%であった。
【0175】
〈第2工程〉
化合物(s15)(3.1g,8.4mmol)を出発原料とし、デスマーチンペルヨージナン(DMP;4.3g,10.1mmol)を反応剤として用い、実施例1の第5工程に準じて反応操作を行なうことで、化合物(s16)(2.9g,7.9mmol)を得た。化合物(s15)からの収率は94モル%であった。
【0176】
〈第3工程〉
化合物(s16)(2.8g,7.6mmol)を出発原料とし、2N−塩酸(4.6ml,9.2mmol)を反応剤として用い、実施例1の第6工程に準じて反応操作を行なうことで、化合物(No.21)(1.9g,5.9mmol)を得た。化合物(s16)からの収率は78モル%であった。
【0177】
1H−NMR(δppm;CDCl3):12.72(s,1H,phenol),7.49(dd,1H),6.48(dd,1H),4.19(q,2H),2.75(d,2H),1.84−1.65(m,5H),1.47(t,2H),1.33−0.91(m,10H),0.87(t,3H).
【0178】
得られた化合物(No.21)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 107.4 I.
【0179】
[実施例5]化合物(No.3)の合成
【化28】
【0180】
〈第1工程〉
化合物(s4)(7.5g,37.5mmol)およびバレルアルデヒド(s17)(3.87g,45mmol)を出発原料とし、sec−ブチルリチウム(1.06M;n−ヘキサン/シクロヘキサン溶液;42.4ml,45mmol)を反応剤として用い、実施例1の第4工程に準じて反応操作を行なうことで、化合物(s18)(8.7g,30.4mmol)を得た。化合物(s17)からの収率は81モル%であった。
【0181】
〈第2工程〉
化合物(s18)(8.2g,28.6mmol)を出発原料とし、デスマーチンペルヨージナン(DMP;14.6g,34.4mmol)を反応剤として用い、実施例1の第5工程に準じて反応操作を行なうことで、化合物(s19)(6.0g,21.2mmol)を得た。化合物(s18)からの収率は74モル%であった。
【0182】
〈第3工程〉
化合物(s19)(6.0g,21.2mmol)を出発原料とし、2N−塩酸(12.7ml,25.4mmol)を反応剤として用い、実施例1の第6工程に準じて反応操作を行なうことで、化合物(No.3)(3.5g,14.6mmol)を得た。化合物(s19)からの収率は69モル%であった。
【0183】
1H−NMR(δppm;CDCl3):12.75(s,1H),7.50(dd,1H),6.50(dd,1H),4.20(q,2H),2.91(t,2H),1.71(quintet,2H),1.48(t,2H),1.42(sextet,2H),0.96(t,3H).
【0184】
得られた化合物(No.3)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 47.0 C 48.7 I.
【0185】
実施例1〜5に示した手法により、対応した出発原料を用いて、以下の実施例6〜10に記載のとおり様々な化合物を合成し、それが目的とする化合物であることを確認した。
【0186】
[実施例6]化合物(No.6)
【化29】
【0187】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、化合物(No.6)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。
【0188】
1H−NMR(δppm;CDCl3):12.76(s,1H),7.50(dd,1H),6.51(dd,1H),4.19(q,2H),2.91(t,2H),1.71(quintet,2H),1.48(t,2H),1.46−1.42(m,6H),0.97(t,3H).
【0189】
得られた化合物(No.6)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 53.6 I.
【0190】
[実施例7]化合物(No.127)
【化30】
【0191】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、化合物(No.127)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。
【0192】
1H−NMR(δppm;CDCl3):12.57(s,1H),7.40(dd,1H),7.13−7.10(m,4H),6.45(dd,1H),4.16(q,2H),2.91(t,2H),2.67(t,2H),2.43(tt,1H),2.05(quintet,2H),1.89−1.83(m,4H),1.46(t,4H),1.43−0.99(m,8H),0.89(t,3H).
【0193】
得られた化合物(No.127)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 117.7 I.
【0194】
[実施例8]化合物(No.131)
【化31】
【0195】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、化合物(No.131)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。
【0196】
1H−NMR(δppm;CDCl3):12.51(s,1H),7.44(dd,1H),6.88−6.87(m,2H),6.48(dd,1H),4.19(q,2H),2.95(t,3H),2.79(tt,1H),2.73(t,2H),2.05(quintet,2H),1.85(d,4H),1.49−1.02(m,11H),0.89(t,3H).
【0197】
得られた化合物(No.131)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 99.0 I.
【0198】
[実施例9]化合物(No.141)
【化32】
【0199】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、化合物(No.141)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。
【0200】
1H−NMR(δppm;CDCl3):12.58(s,1H),7.50(dd,1H),7.40(dd,1H),7.25−7.22(m,4H),6.44(dd,1H),4.15(q,2H),2.93(t,2H),2.74(t,2H),2.63(t,2H),2.09(quintet,2H),1.64(quintet,2H),1.45(t,2H),1.39−1.31(m,4H),0.89(t,3H).
【0201】
得られた化合物(No.141)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 125.4 I.
【0202】
[実施例10]化合物(No.14)
【化33】
【0203】
1H−NMR分析の化学シフトδ(ppm)は以下の通りであり、得られた化合物が、化合物(No.14)であることが同定できた。なお、測定溶媒はCDCl3である。
【0204】
1H−NMR(δppm;CDCl3):13.35(s,1H),7.81(d,1H),7.13(t,1H,J=53.7),6.46(d,1H),4.17(q,2H),2.91(t,2H),1.71(quintet,2H),1.46(t,3H),1.43(sextet,2H),0.86(t,3H).
【0205】
得られた化合物(No.14)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 72.8 I.
【0206】
[比較例1]比較化合物(CoNo.1)の合成
【化34】
【0207】
〈第1工程〉
実施例1の第4工程にて得られた化合物(s6)(3.0g,6.66mmol)およびp−トルエンスルホン酸(60mg,0.33mmol)をトルエン(60ml)中にて1時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却したのち、飽和重曹水、水、および飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:酢酸エチル=20:1)および再結晶(溶媒;ヘプタン)にて精製することによって、化合物(s20)(0.9g,2.32mmol;35モル%)を得た。
【0208】
〈第2工程〉
化合物(s20)(0.9g,2.32mmol)および5%パラジウム−炭素触媒デスマーチンペルヨージナン(14.6g)をトルエン(4.5ml)およびイソプロパノール4.(5ml)中に混合したのち、水素雰囲気下にて3時間攪拌した。反応液を濾過したのち濾液を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:酢酸エチル=20:1)および再結晶(溶媒;ヘプタン)にて精製することによって、化合物(CoNo1)(0.6g,1.54mmol;66モル%)を得た。
【0209】
1H−NMR(δppm;CDCl3):6.75(dd,1H),6.53(t,1H),5.09(d,1H),4.07(q,2H),2.57(t,2H),1.83−1.67(m,8H),1.42(t,3H),1.31−0.94(m,17H),0.86(t,3H).
【0210】
得られた化合物(CoNo.1)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 85.3 SA 153 N 167 I.
【0211】
[比較例2]比較化合物(CoNo.2)の合成
【化35】
【0212】
〈第1工程〉
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s21)(80g,365mmol)および金属マグネシウム(10.65g,438mmol)を入れて、THF(800ml)中にてグリニャール試薬を調製した。2時間後、ホウ酸トリメチル(56.0ml,474.5mmol)のTHF(110ml)溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ20時間攪拌した。そこへ、酢酸(31.3ml,547.5mmol)を20℃から25℃の温度範囲で滴下した。30分後、過酸化水素(30%水溶液、82.7g,730mmol)を25℃から35℃の温度範囲で滴下し、さらに10時間攪拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、亜硫酸ナトリウム水溶液、水、および飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮したのち、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:酢酸エチル=20:1)および減圧蒸留(930Pa)にて精製して、化合物(s22)(38.0g,243mmol;66モル%)を得た。
【0213】
〈第2工程〉
反応器へ化合物(s22)(19.4g,124mmol)、炭酸カリウム(34.2g,248mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)(4.0g,12.4mmol)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(450ml)を入れた。化合物(s23)(45g,149mmol)を室温でゆっくりと滴下し、80℃にて10時間攪拌した。室温まで冷却した反応混合物を飽和食塩水に注ぎ込み、トルエンで抽出した。一緒にした有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:酢酸エチル=20:1)および再結晶(溶媒;ヘプタン、エタノール)にて精製することによって、化合物(s24)(32.4g,87.6mmol;69モル%)を得た。
【0214】
〈第3工程〉
窒素雰囲気下、反応器へ化合物(s24)(5g,13.3mmol)およびTHF(125ml)を入れて、−70℃以下に冷却した。そこへ、sec−ブチルリチウム(1.08M;n−ヘキサン/シクロヘキサン溶液;14.77ml,15.96mmol)を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、さらに1時間攪拌した。ホウ酸トリメチル(1.88ml,15.96mmol)のTHF(5ml)溶液を−75℃から−70℃の温度範囲で滴下し、25℃に戻しつつ3時間攪拌した。そこへ、酢酸(1.14ml,19.95mmol)を20℃から25℃の温度範囲で滴下した。30分後、過酸化水素(30%水溶液、3.76g,33.25mmol)を25℃から35℃の温度範囲で滴下し、さらに10時間攪拌した。反応混合物を水に注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。一緒にした有機層を水、亜硫酸ナトリウム水溶液、水、および飽和食塩水の順で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。この溶液を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(体積比、ヘプタン:酢酸エチル=9:1)および再結晶(溶媒;ヘプタン)にて精製することによって、化合物(CoNo.2)(3.1g,7.9mmol;59モル%)を得た。
【0215】
1H−NMR(δppm;CDCl3):6.50(dd,1H),6.40(t,1H),5.44(d,1H),4.03(q,2H),3.78(d,2H),1.90−1.69(m,8H),1.53(t,3H),1.42−0.93(m,15H),0.87(t,3H).
【0216】
得られた化合物(CoNo.2)の相転移温度は以下のとおりであった。
相転移温度:C 100 N 157.6 I.
【0217】
〔液晶性化合物の物性〕
(1)95%の母液晶Aと、5%の液晶性化合物(No.81)とからなる試料(液晶組成物)を調製した。この試料の物性は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=76.2℃;誘電率異方性の値(Δε)=−2.00;光学異方性の値(Δn)=0.0895。母液晶Aおよび上記試料の物性値と液晶性化合物の混合比とから、外挿法により算出した液晶性化合物(No.81)の物性値は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=106.6℃;誘電率異方性の値(Δε)=−15.30;光学異方性の値(Δn)=0.137。
(2)97%の母液晶Aと、3%の液晶性化合物(No.83)とからなる試料(液晶組成物)を調製した。この試料の物性は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=75.3℃;誘電率異方性の値(Δε)=−1.73;光学異方性の値(Δn)=0.0882。母液晶Aおよび上記試料の物性値と液晶性化合物の混合比とから、外挿法により算出した液晶性化合物(No.83)の物性値は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=97.9℃;誘電率異方性の値(Δε)=−15.63;光学異方性の値(Δn)=0.127。
(3)95%の母液晶Aと、5%の液晶性化合物(No.121)とからなる試料(液晶組成物)を調製した。この試料の物性は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=78.1℃;誘電率異方性の値(Δε)=−1.96;光学異方性の値(Δn)=0.090。母液晶Aおよび上記試料の物性値と液晶性化合物の混合比とから、外挿法により算出した液晶性化合物(No.121)の物性値は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=144.6℃;誘電率異方性の値(Δε)=−14.50;光学異方性の値(Δn)=0.147。
(4)95%の母液晶Aと、5%の液晶性化合物(No.21)とからなる試料(液晶組成物)を調製した。この試料の物性は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=70.0℃;誘電率異方性の値(Δε)=−2.24;光学異方性の値(Δn)=0.0875。母液晶Aおよび上記試料の物性値と液晶性化合物の混合比とから、外挿法により算出した液晶性化合物(No.21)の物性値は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=−17.4℃;誘電率異方性の値(Δε)=−20.10;光学異方性の値(Δn)=0.097。
(5)85%の母液晶Aと、15%の液晶性化合物(No.3)とからなる試料(液晶組成物)を調製した。この試料の物性は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=48.4℃;誘電率異方性の値(Δε)=−3.07;光学異方性の値(Δn)=0.081。母液晶Aおよび上記試料の物性値と液晶性化合物の混合比とから、外挿法により算出した液晶性化合物(No.3)の物性値は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=−100.1℃;誘電率異方性の値(Δε)=−13.10;光学異方性の値(Δn)=0.047。
(6)85%の母液晶Aと、15%の液晶性化合物(No.6)とからなる試料(液晶組成物)を調製した。この試料の物性は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=51.8℃;誘電率異方性の値(Δε)=−3.07;光学異方性の値(Δn)=0.082。母液晶Aおよび上記試料の物性値と液晶性化合物の混合比とから、外挿法により算出した液晶性化合物(No.6)の物性値は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=−77.4℃;誘電率異方性の値(Δε)=−13.10;光学異方性の値(Δn)=0.052。
(7)95%の母液晶Aと、5%の液晶性化合物(No.127)とからなる試料(液晶組成物)を調製した。この試料の物性は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=75.0℃;誘電率異方性の値(Δε)=−1.91;光学異方性の値(Δn)=0.091。母液晶Aおよび上記試料の物性値と液晶性化合物の混合比とから、外挿法により算出した液晶性化合物(No.127)の物性値は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=82.6℃;誘電率異方性の値(Δε)=−11.98;光学異方性の値(Δn)=0.165。
(8)95%の母液晶Aと、5%の液晶性化合物(No.141)とからなる試料(液晶組成物)を調製した。この試料の物性は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=75.6℃;誘電率異方性の値(Δε)=−1.83;光学異方性の値(Δn)=0.093。母液晶Aおよび上記試料の物性値と液晶性化合物の混合比とから、外挿法により算出した液晶性化合物(No.141)の物性値は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=94.6℃;誘電率異方性の値(Δε)=−10.38;光学異方性の値(Δn)=0.207。
(9)85%の母液晶Aと、15%の液晶性化合物(CoNo.1)とからなる試料(液晶組成物)を調製した。この試料の物性は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=82.7℃;誘電率異方性の値(Δε)=−1.28;光学異方性の値(Δn)=0.0883。母液晶Aおよび上記試料の物性値と液晶性化合物の混合比とから、外挿法により算出した液晶性化合物(CoNo.1)の物性値は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=128.6℃;誘電率異方性の値(Δε)=−1.17;光学異方性の値(Δn)=0.096。
(10)85%の母液晶Aと、15%の液晶性化合物(CoNo.2)とからなる試料(液晶組成物)を調製した。この試料の物性は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=82.4℃;誘電率異方性の値(Δε)=−1.80;光学異方性の値(Δn)=0.0885。母液晶Aおよび上記試料の物性値と液晶性化合物の混合比とから、外挿法により算出した液晶性化合物(CoNo.2)の物性値は、以下のとおりであった。上限温度(TNI)=126.6℃;誘電率異方性の値(Δε)=−4.63;光学異方性の値(Δn)=0.097。
【0218】
[合成例]
前記の合成法、実施例1〜5に記載された合成方法と同様の方法により、下記の化合物(No.1〜No.220)を合成することができる。なお、実施例1〜10による化合物(No.3、6、14、21、81、83、121、127、131および141)も列挙した。
【0219】
【化36】
【0220】
【化37】
【0221】
【化38】
【0222】
【化39】
【0223】
【化40】
【0224】
【化41】
【0225】
【化42】
【0226】
【化43】
【0227】
【化44】
【0228】
【化45】
【0229】
【化46】
【0230】
【化47】
【0231】
【化48】
【産業上の利用可能性】
【0232】
本発明の液晶性化合物は、熱・光等に対する高い安定性、高い透明点・上限温度、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな負の誘電率異方性、適切な弾性定数、および他の液晶化合物との優れた相溶性を有する。本発明の液晶組成物は、この化合物を含有し、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな負の誘電率異方性、および適切な弾性定数を有する。この組成物は、少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有する。本発明の液晶表示素子は、この組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、大きなコントラスト比、および長い寿命を有する。したがって、この素子は、パソコンおよびテレビ等のディスプレイに広く利用できる。