特許第6115362号(P6115362)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6115362-試料吸引装置 図000002
  • 特許6115362-試料吸引装置 図000003
  • 特許6115362-試料吸引装置 図000004
  • 特許6115362-試料吸引装置 図000005
  • 特許6115362-試料吸引装置 図000006
  • 特許6115362-試料吸引装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115362
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】試料吸引装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   G01N35/10 C
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-144469(P2013-144469)
(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公開番号】特開2015-17863(P2015-17863A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石伊 志行
(72)【発明者】
【氏名】江藤 享
(72)【発明者】
【氏名】福川 一成
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−093047(JP,A)
【文献】 特開2011−112540(JP,A)
【文献】 特開昭50−104084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容した試料容器をその開口部が突出するよう載置可能な試料容器載置手段と、
前記試料容器に収容された試料を吸引するためのノズルと、前記ノズルの根元に固定され前記試料容器の開口部と接触可能な接触部と、を有した試料吸引手段と、
試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を水平方向に移動可能な手段と、
試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を垂直方向に移動可能な手段と、
を有した試料吸引装置であって、
前記試料吸引手段に、試料容器載置手段または試料容器へのノズルおよび接触部の接触を検知可能な接触センサを一つ設け、かつ、
前記接触センサによる検知と、ノズルもしくは試料容器載置手段の垂直方向の移動距離、移動時間または高さの情報を入力とし、試料容器載置手段または試料容器へのノズルおよび接触部の接触における状況を出力とする判定手段をさらに有した、前記試料吸引装置。
【請求項2】
判定手段が出力する接触センサによる状況が、少なくとも下記(1)から(4)のいずれかである、請求項1に記載の装置。
(1)ノズル下方の試料容器に蓋があること
(2)ノズルが試料容器載置手段における試料容器載置位置の上方から外れて位置していること
(3)ノズル下方に試料を吸引可能な試料容器が戴置されていること
(4)試料容器載置手段における、ノズル下方にある試料容器載置位置に試料容器が載置されていないこと
【請求項3】
接触センサによる検知と、ノズルもしくは試料容器載置手段の垂直方向の移動距離、移動時間または高さの情報から、
判定手段が試料容器の蓋へのノズルの接触と判定した場合は、前記判定手段によりノズル下方の当該試料容器に蓋があることを出力し、
判定手段が試料容器載置手段の天面へのノズルの接触と判定した場合は、前記判定手段により前記ノズルが前記試料容器載置手段における試料容器載置位置の上方から外れて位置していることを出力し、
判定手段が試料容器の開口部への接触部の接触と判定した場合は、前記判定手段により前記ノズル下方に試料を吸引可能な当該試料容器が戴置されていることを出力し、
判定手段が試料容器の開口部への接触部の不接触、試料容器載置手段の天面への接触部の接触、または試料容器載置手段における試料容器載置位置の底へのノズルの接触と判定した場合は、前記判定手段により前記試料容器載置手段における、ノズル下方にある試料容器載置位置に試料容器が載置されていないことを出力する、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
判定手段が、試料容器の蓋または試料容器載置手段の天面へのノズルの接触と判定した場合、試料容器載置手段を垂直方向に移動可能な手段により前記試料容器載置手段を下降または試料吸引手段を垂直方向に移動可能な手段により前記試料吸引手段を上昇させる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
判定手段の出力を表示する表示手段またはアラーム手段をさらに有した、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動分析装置等に備える、試料容器に収容された試料を吸引するための試料吸引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置では、シリンジポンプなどの計量ポンプと、ニードルまたはディスポーザルチップからなるノズルとを設けた試料吸引手段を備えており、当該手段により、試料容器に収容された試料を吸引後、別の容器に吐出したり、ノズルに接続した配管を経由して分析手段へ送液したりする。
【0003】
試料を収容した試料容器を載置可能な試料容器載置手段に載置した試料容器から、試料吸引手段を用いて試料を吸引するには、試料吸引手段に設けたノズルを、吸引対象試料を収容した試料容器の真上に移動させた後、当該ノズルを垂直方向に下降、または当該試料容器載置手段を垂直方向に上昇させることで、ノズルを試料の中に挿入した上で試料を吸引する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
試料吸引装置は、ノズルを下降または試料容器戴置手段を上昇させて、試料を収容した所定の試料容器にノズルを挿入した上で試料を吸引する。しかし、当該試料容器戴置手段における試料容器を載置する位置(試料容器載置位置)に試料容器が載置されていない場合、ノズルを下降または試料容器載置手段を上昇させても試料を吸引することができず、意図する分析を行なうことができない。そのため、試料吸引装置に試料容器を検知するセンサを設け、当該センサによる検知結果を基に、当該試料容器載置位置に試料容器が戴置されていることを確認する必要がある。
【0005】
また試料容器の開口部がノズルによる貫通が困難な蓋で蓋されていたり、試料容器載置手段の水平移動機構の不具合によりノズルが試料容器載置位置からずれている状態で、ノズルを下降または試料容器載置手段を上昇させると、ノズル先端が試料容器載置手段の天面や試料容器の蓋に衝突して、当該ノズルや当該試料容器を破損する可能性がある。そのため当該ノズルの衝突を検知する衝突センサも試料吸引装置に設ける必要がある。
【0006】
しかしながら、試料容器を検知するセンサと衝突センサの両方を試料吸引装置に設けようとすると、試料吸引装置の構成が複雑になるという問題を有していた。
【0007】
そこで本発明の課題は、試料容器に収容された試料の吸引が適正に行なわれる状況にあるか否かを簡便な構成で検知可能な試料吸引装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の態様を包含する。
【0009】
すなわち本発明の第一の態様は、
試料を収容した試料容器をその開口部が突出するよう載置可能な試料容器載置手段と、
前記試料容器に収容された試料を吸引するためのノズルと、前記ノズルの根元に固定され前記試料容器の開口部と接触可能な接触部と、を有した試料吸引手段と、
試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を水平方向に移動可能な手段と、
試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を垂直方向に移動可能な手段と、
を有した試料吸引装置であって、
前記試料吸引手段に、試料容器載置手段または試料容器へのノズルおよび接触部の接触を検知可能な接触センサを一つ設け、かつ、
前記接触センサによる検知と、ノズルもしくは試料容器載置手段の垂直方向の移動距離、移動時間または高さの情報を入力とし、試料容器載置手段または試料容器へのノズルおよび接触部の接触における状況を出力とする判定手段をさらに有した、前記試料吸引装置である。
【0010】
また本発明の第二の態様は、判定手段が出力する状況が、少なくとも下記(1)から(4)のいずれかである、前記第一の態様に記載の装置である。
(1)ノズル下方の試料容器に蓋があること
(2)ノズルが試料容器載置手段における試料容器載置位置の上方から外れて位置していること
(3)ノズル下方に試料を吸引可能な試料容器が戴置されていること
(4)試料容器載置手段における、ノズル下方にある試料容器載置位置に試料容器が載置されていないこと
また本発明の第三の態様は、
接触センサによる検知と、ノズルもしくは試料容器載置手段の垂直方向の移動距離、移動時間または高さの情報から、
判定手段が試料容器の蓋へのノズルの接触と判定した場合は、前記判定手段によりノズル下方の当該試料容器に蓋があることを出力し、
判定手段が試料容器載置手段の天面へのノズルの接触と判定した場合は、前記判定手段により前記ノズルが前記試料容器載置手段における試料容器載置位置の上方から外れて位置していることを出力し、
判定手段が試料容器の開口部への接触部の接触と判定した場合は、前記判定手段により前記ノズル下方に試料を吸引可能な当該試料容器が戴置されていることを出力し、
判定手段が試料容器の開口部への接触部の不接触、試料容器載置手段の天面への接触部の接触、または試料容器載置手段における試料容器載置位置の底へのノズルの接触と判定した場合は、前記判定手段により前記試料容器載置手段における、ノズル下方にある試料容器載置位置に試料容器が載置されていないことを出力する、
前記第二の態様に記載の装置である。
【0011】
また本発明の第四の態様は、判定手段が、試料容器の蓋または試料容器載置手段の天面へのノズルの接触と判定した場合、試料容器載置手段を垂直方向に移動可能な手段により前記試料容器載置手段を下降または試料吸引手段を垂直方向に移動可能な手段により前記試料吸引手段を上昇させる、前記第三の態様に記載の装置である。
【0012】
また本発明の第五の態様は、判定手段の出力を表示する表示手段またはアラーム手段をさらに有した、前記第一から第四の態様のいずれかに記載の装置である。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の試料吸引装置における試料吸引手段のノズルとしては、金属製(例えば、ステンレススチール製)や樹脂製のニードルや、樹脂製のディスポーザルチップを中空の軸に取り付けた態様が例示できる。ただし試料の吸引を高温条件下で行なう場合は、耐熱性が高い金属製のニードルをノズルとして用いると好ましい。ノズルには配管を通じて計量ポンプが接続されており、作動液や空気を介して試料容器に収容された試料を当該ノズルで吸引する。
【0015】
本発明の試料吸引装置における試料容器載置手段は、試料を収容した試料容器を載置可能な手段である。試料容器載置手段への試料容器の載置態様に限定はなく、碁盤の目状に載置してもよく、同心円状に載置してもよく、渦巻状に載置してもよい。
【0016】
本発明の試料吸引装置における試料容器載置手段および/または試料吸引手段を水平方向に移動可能な手段としては、直交する2軸の直線移動機構を用いた手段であってもよいし、直線移動機構と回転機構とを組み合わせた手段であってもよい。
【0017】
本発明の試料吸引装置では、試料吸引手段が有する、ノズルまたは試料容器の開口部と接触可能な前記ノズルの根元に固定した接触部の、試料容器載置手段の天面および試料容器(容器に取り付けられた蓋も含む)への接触を検知可能な接触センサを、試料吸引手段に一つ設けていることを特徴としている。接触センサによる検知は、ノズルまたは接触部の試料容器載置手段および試料容器への接触により、前記ノズルおよび前記接触部が浮き上がることで検知することができる。接触センサは、通常、電気接点やフォトインタラプタなどにより構成されるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の試料吸引装置では、さらに接触センサによる検知と、ノズルもしくは試料容器載置手段の垂直方向の移動距離、移動時間または高さの情報を入力とし、試料容器載置手段または試料容器へのノズルおよび接触部の接触における状況を出力とする判定手段を設けており、当該判定手段による判定に基づき、試料吸引手段による試料吸引が適切に行なえるか否かを判断する。なお試料容器載置手段の垂直方向の移動距離または高さの情報は、垂直方向の移動の動力源にステッピングモータを使う場合はステップ数から求めることができる。また試料容器載置手段の移動距離または高さの情報は、移動機構にエンコーダを設けたり、1以上のマイクロスイッチを並べることで求めることができる。具体的には、
試料容器に蓋があると仮定したときに前記蓋とノズルが接触すると推測される高さで、接触センサが接触を検知した場合は、判断手段が試料容器の蓋へのノズルの接触と判定し、前記判定手段によりノズル下方の当該試料容器に蓋があることを出力し、試料吸引手段による当該試料容器からの試料吸引操作を中止し、試料容器載置手段および試料吸引手段をいったん初期位置に戻した後で、別の試料容器載置位置まで移動させればよく、
ノズルが試料容器載置手段における試料容器載置位置の上方から外れていると仮定したときに前記試料容器載置手段の天面とノズルが接触すると推測される高さで、接触センサが接触を検知した場合は、判定手段が試料容器載置手段の天面へのノズルの接触と判定し、前記判定手段により前記ノズルが前記試料容器載置手段における試料容器載置位置の上方から外れて位置していることを出力し、試料吸引手段による試料吸引操作を中止し、試料容器載置手段および試料吸引手段をいったん初期位置に戻した後で、再度、当該試料容器載置位置または別の試料容器載置位置まで移動させればよく、
試料容器が試料容器載置手段における試料容器載置位置に正しく戴置されていると仮定したときに前記試料容器の開口部と接触部が接触すると推測される高さで、接触センサが接触を検知した場合は、判定手段が試料容器の開口部への接触部の接触と判定し、前記判定手段によりノズル下方に試料容器が戴置されていることを出力し、試料吸引手段による試料吸引操作を実行すればよく、
試料容器が試料容器載置手段における試料容器載置位置に戴置されていると仮定したときに前記試料容器の開口部と接触部が接触すると推測される高さで、接触センサが接触を検知しなかった場合は、判定手段が試料容器の開口部への接触部の接触がない(不接触)と判定し、前記判定手段により前記試料容器載置手段における、ノズル下方にある試料容器載置位置に試料容器が載置されていないことを出力し、一旦、ノズルまたは試料容器載置手段を垂直方向の初期位置に戻した後で、再度、試料容器が載置されている試料容器載置位置へ試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を水平および垂直方向に移動すればよく、
試料容器が試料容器載置手段における試料容器載置位置に戴置されていないと仮定したときに接触部が試料容器載置手段の天面へ接触すると推測される高さで、接触センサが接触を検知した場合は、判定手段が試料容器載置手段の天面への接触部の接触と判定し、前記判定手段により前記試料容器載置手段における、ノズル下方にある試料容器載置位置に試料容器が載置されていないことを出力し、一旦、ノズルまたは試料容器載置手段を垂直方向の初期位置に戻した後で、再度、試料容器が載置されている試料容器載置位置へ試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を水平および垂直方向に移動させればよく、
試料容器が試料容器載置手段における試料容器載置位置に戴置されていないと仮定したときにノズルが試料容器載置位置の底へ接触すると推測される高さで、接触センサが接触を検知した場合は、判定手段が試料容器載置位置の底へのノズルの接触と判定し、前記判定手段により前記試料容器載置手段における、ノズル下方にある試料容器載置位置に試料容器が載置されていないことを出力し、一旦、ノズルまたは試料容器載置手段を垂直方向の初期位置に戻した後で、再度、試料容器が載置されている試料容器載置位置へ試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を水平および垂直方向に移動させればよい。
【0019】
なお本発明の試料吸引装置における試料容器載置手段に載置する試料容器には、当該容器に収容した試料の蒸発防止を目的とした、試料吸引手段に設けたノズルで容易に貫通可能な蓋(例えば十字の切り込みが入った蓋や薄いフィルムからなる蓋)を設けることがある。この場合は、接触センサが接触を検知することなく前記ノズルで容易に蓋を貫通可能なため、前記判定手段では当該試料容器に蓋があることを出力しない。ノズルまたは試料容器載置手段を垂直方向にさらに移動させ、接触部が当該試料容器の開口部または貫通可能な蓋に接触した時点で、前記判定手段はノズル下方にある試料容器戴置位置に試料容器が戴置されていることを出力する。
【0020】
本発明の試料吸引装置において、判定手段が、試料容器の蓋または試料容器載置手段の天面へのノズルの接触と判定した場合、速やかに、試料容器載置手段を垂直方向に移動可能な手段により前記試料容器載置手段を下降または試料吸引手段を垂直方向に移動可能な手段により前記試料吸引手段を上昇させると、ノズルや試料容器載置手段を間違って水平方向に動かすことによるノズルの破損を防止する意味で好ましい。
【0021】
また前述した判定手段の出力を表示する表示手段やアラーム手段を本発明の試料吸引装置にさらに設けると、どの試料容器が吸引されなかったかや、試料吸引装置の異常をオペレーターが認識することができるため、好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、試料を収容した試料容器をその開口部が突出するよう載置可能な試料容器載置手段と、前記試料容器に収容された試料を吸引するためのノズルと前記ノズルの根元に固定され前記試料容器の開口部と接触可能な接触部とを有した試料吸引手段と、試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を水平方向に移動可能な手段と、試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を垂直方向に移動可能な手段と、を有した試料吸引装置において、前記試料吸引手段に前記試料容器載置手段または試料容器への前記ノズルおよび前記接触部の接触を検知可能な接触センサを一つ設け、かつ前記接触センサによる検知と、ノズルもしくは試料容器載置手段の垂直方向の移動距離、移動時間または高さの情報を入力とし試料容器載置手段または試料容器へのノズルおよび接触部の接触における状況を出力とする判定手段をさらに有したことを特徴としている。本発明により、試料容器の検知とノズル衝突の検知を一つのセンサで検知可能となったため、試料吸引装置の構成を簡素化でき、かつ試料吸引装置の信頼性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の試料吸引装置の一態様を示す図。
図2図1の試料吸引装置において、試料容器の開口部からノズルが挿入された状態を示す図。
図3図1の試料吸引装置において、試料容器の開口部と接触部とが接触した状態を示す図。
図4図1の試料吸引装置において、試料容器載置位置に試料容器が載置されていない状態を示した図。
図5図1の試料吸引装置において、試料容器の開口部が蓋された状態を示した図。
図6図1の試料吸引装置において、ノズルが試料容器載置位置の上方に位置していない状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0025】
本発明の試料吸引装置の一態様を図1に示す。
【0026】
図1に示す試料吸引装置100のうち、試料吸引手段10のノズル11は金属製のニードルからなり、ノズル保持部14により上下方向に数mm移動可能に保持され、かつ通常はバネ15により、下方の力が加えられている。またノズル11の根元には、試料容器20の開口部21と接触可能な接触部12が固定されている。ノズル11には計量ポンプと接続した配管(不図示)が接続されており、当該ポンプと当該配管により、試料容器20に収容された試料を吸引することができる。さらにまた、試料吸引手段10のノズル11には接触センサを構成するフラグ13aが固定されており、初期位置ではフラグ13aがフォトインタラプタ13bの光を遮っている。
【0027】
試料容器載置テーブル30には同心円状に試料を収容した試料容器20を、その開口部21が突出するように載置可能な穴(試料容器載置位置31)を有しており、温度制御されている。テーブル30は、垂直/水平方向の移動および回転が可能である。水平方向の移動と回転の組合せにより、テーブル30上にある任意の試料容器20をノズル11の直下に移動させた後、テーブルを垂直方向に移動させる手段40により、テーブル30を垂直方向に移動させる。
【0028】
ノズル11により吸引しようとする試料を収容した試料容器が、ノズル11の直下に正しく位置している場合は、テーブルを垂直方向に移動させる手段40によりテーブル30を上昇させることで、ノズル11が試料容器20の開口部21から挿入される(図2)。その後、接触部12と試料容器20の開口部21が接触するまで上昇し、当該接触によりノズル11に上向きの力が与えられると、バネ15が圧縮され、ノズル11が持ち上がる。そうなると、ノズル11に固定されている接触センサのフラグ13aが、フォトインタラプタ13bの光を遮らなくなる。当該光の検知およびその位置から、判定手段(不図示)により接触部12と試料容器20の開口部21との接触(すなわち試料容器20の存在)と判定する(図3)。試料容器20が存在すると判定した後は、ノズル11により試料容器20に収容された試料を吸引すればよい。
【0029】
一方、ノズル11の直下には試料容器載置位置31が存在するものの、当該位置に試料容器20が載置されていない場合は、テーブルを垂直方向に移動させる手段40によりテーブル30を上昇させることで、ノズル11が試料容器載置位置31に挿入される(図4)。その後、接触部12とテーブル30の天面とが接触するまで上昇し、当該接触によりノズル11に上向きの力が与えられると、バネ15が圧縮され、ノズル11が持ち上がる。そうなると、ノズル11に固定されている接触センサ13のフラグ13aが、フォトインタラプタ13bの光を遮らなくなる。当該光の検知およびその位置から、判定手段(不図示)により接触部12と試料容器載置テーブル30の天面との接触(すなわち試料容器20が載置されていない)と判定する。これにより、試料容器載置位置31に試料容器20が載置されていないために試料容器を検知できなかったことを確認することができる。
【0030】
また、ノズル11の直下には試料容器20が存在するものの、当該試料容器の開口部がノズル11での貫通が困難な蓋22で蓋されている場合は、テーブルを垂直方向に移動させる手段40によりテーブル30が上昇し、ノズル11と蓋22が接触すると、当該接触によりノズル11に上向きの力が与えられ、バネ15が圧縮することで、ノズル11が持ち上がる。そうなると、ノズル11に固定されている接触センサのフラグ13aが、フォトインタラプタ13bの光を遮らなくなる。当該光の検知およびその位置から、判定手段(不図示)によりノズル11と蓋22との接触(すなわち蓋22の存在)と判定する(図5)。
【0031】
さらに、ノズル11または試料容器戴置テーブル30の位置がずれ、ノズル11の直下に試料容器載置位置31が存在していない場合は、テーブルを垂直方向に移動させる手段40によりテーブル30が上昇し、ノズル11とテーブル30の天面とが接触すると、当該接触によりノズル11に上向きの力が与えられ、バネ15が圧縮することで、ノズル11が持ち上がる。そうなると、ノズル11に固定されている接触センサのフラグ13aが、フォトインタラプタ13bの光を遮らなくなる。当該光の検知およびその位置から、判定手段(不図示)によりノズル11とテーブル30の天面との接触(すなわちノズル11の位置ずれ)と判定する(図6)。
【0032】
なお、試料容器20が載置されていないこと(図4)、試料容器の開口部がノズル11での貫通が困難な蓋22で蓋されていること(図5)、またはノズル11の位置ずれ(図6)を接触センサで検知した場合は、判定手段から出力されるノズルおよび接触部の接触における状況を、表示手段(不図示)にエラーメッセージとして表示したり、アラーム手段で警告音を鳴らした後、テーブル30を初期位置に戻して、試料吸引操作をやり直す。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、試料容器の検知とノズル衝突の検知を一つの接触センサで検知可能となったため、試料吸引装置の信頼性が向上し、かつ試料吸引装置の簡素化も可能となる。
【符号の説明】
【0034】
10:試料吸引手段
11:ノズル
12:接触部
13a:フラグ(接触センサ)
13b:フォトインタラプタ(接触センサ)
14:ノズル保持部
15:バネ
20:試料容器
21:試料容器の開口部
22:試料容器の蓋
30:試料容器載置テーブル
31:試料容器載置位置
40:試料容器載置テーブルを垂直方向に移動可能な手段
100:試料吸引装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6