【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を鑑みてなされた本発明は、以下の態様を包含する。
【0009】
すなわち本発明の第一の態様は、
試料を収容した試料容器をその開口部が突出するよう載置可能な試料容器載置手段と、
前記試料容器に収容された試料を吸引するためのノズルと、前記ノズルの根元に固定され前記試料容器の開口部と接触可能な接触部と、を有した試料吸引手段と、
試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を水平方向に移動可能な手段と、
試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を垂直方向に移動可能な手段と、
を有した試料吸引装置であって、
前記試料吸引手段に、試料容器載置手段または試料容器へのノズルおよび接触部の接触を検知可能な接触センサを一つ設け、かつ、
前記接触センサによる検知と、ノズルもしくは試料容器載置手段の垂直方向の移動距離、移動時間または高さの情報を入力とし、試料容器載置手段または試料容器へのノズルおよび接触部の接触における状況を出力とする判定手段をさらに有した、前記試料吸引装置である。
【0010】
また本発明の第二の態様は、判定手段が出力する状況が、少なくとも下記(1)から(4)のいずれかである、前記第一の態様に記載の装置である。
(1)ノズル下方の試料容器に蓋があること
(2)ノズルが試料容器載置手段における試料容器載置位置の上方から外れて位置していること
(3)ノズル下方に試料を吸引可能な試料容器が戴置されていること
(4)試料容器載置手段における、ノズル下方にある試料容器載置位置に試料容器が載置されていないこと
また本発明の第三の態様は、
接触センサによる検知と、ノズルもしくは試料容器載置手段の垂直方向の移動距離、移動時間または高さの情報から、
判定手段が試料容器の蓋へのノズルの接触と判定した場合は、前記判定手段によりノズル下方の当該試料容器に蓋があることを出力し、
判定手段が試料容器載置手段の天面へのノズルの接触と判定した場合は、前記判定手段により前記ノズルが前記試料容器載置手段における試料容器載置位置の上方から外れて位置していることを出力し、
判定手段が試料容器の開口部への接触部の接触と判定した場合は、前記判定手段により前記ノズル下方に試料を吸引可能な当該試料容器が戴置されていることを出力し、
判定手段が試料容器の開口部への接触部の不接触、試料容器載置手段の天面への接触部の接触、または試料容器載置手段における試料容器載置位置の底へのノズルの接触と判定した場合は、前記判定手段により前記試料容器載置手段における、ノズル下方にある試料容器載置位置に試料容器が載置されていないことを出力する、
前記第二の態様に記載の装置である。
【0011】
また本発明の第四の態様は、判定手段が、試料容器の蓋または試料容器載置手段の天面へのノズルの接触と判定した場合、試料容器載置手段を垂直方向に移動可能な手段により前記試料容器載置手段を下降または試料吸引手段を垂直方向に移動可能な手段により前記試料吸引手段を上昇させる、前記第三の態様に記載の装置である。
【0012】
また本発明の第五の態様は、判定手段の出力を表示する表示手段またはアラーム手段をさらに有した、前記第一から第四の態様のいずれかに記載の装置である。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の試料吸引装置における試料吸引手段のノズルとしては、金属製(例えば、ステンレススチール製)や樹脂製のニードルや、樹脂製のディスポーザルチップを中空の軸に取り付けた態様が例示できる。ただし試料の吸引を高温条件下で行なう場合は、耐熱性が高い金属製のニードルをノズルとして用いると好ましい。ノズルには配管を通じて計量ポンプが接続されており、作動液や空気を介して試料容器に収容された試料を当該ノズルで吸引する。
【0015】
本発明の試料吸引装置における試料容器載置手段は、試料を収容した試料容器を載置可能な手段である。試料容器載置手段への試料容器の載置態様に限定はなく、碁盤の目状に載置してもよく、同心円状に載置してもよく、渦巻状に載置してもよい。
【0016】
本発明の試料吸引装置における試料容器載置手段および/または試料吸引手段を水平方向に移動可能な手段としては、直交する2軸の直線移動機構を用いた手段であってもよいし、直線移動機構と回転機構とを組み合わせた手段であってもよい。
【0017】
本発明の試料吸引装置では、試料吸引手段が有する、ノズルまたは試料容器の開口部と接触可能な前記ノズルの根元に固定した接触部の、試料容器載置手段の天面および試料容器(容器に取り付けられた蓋も含む)への接触を検知可能な接触センサを、試料吸引手段に一つ設けていることを特徴としている。接触センサによる検知は、ノズルまたは接触部の試料容器載置手段および試料容器への接触により、前記ノズルおよび前記接触部が浮き上がることで検知することができる。接触センサは、通常、電気接点やフォトインタラプタなどにより構成されるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の試料吸引装置では、さらに接触センサによる検知と、ノズルもしくは試料容器載置手段の垂直方向の移動距離、移動時間または高さの情報を入力とし、試料容器載置手段または試料容器へのノズルおよび接触部の接触における状況を出力とする判定手段を設けており、当該判定手段による判定に基づき、試料吸引手段による試料吸引が適切に行なえるか否かを判断する。なお試料容器載置手段の垂直方向の移動距離または高さの情報は、垂直方向の移動の動力源にステッピングモータを使う場合はステップ数から求めることができる。また試料容器載置手段の移動距離または高さの情報は、移動機構にエンコーダを設けたり、1以上のマイクロスイッチを並べることで求めることができる。具体的には、
試料容器に蓋があると仮定したときに前記蓋とノズルが接触すると推測される高さで、接触センサが接触を検知した場合は、判断手段が試料容器の蓋へのノズルの接触と判定し、前記判定手段によりノズル下方の当該試料容器に蓋があることを出力し、試料吸引手段による当該試料容器からの試料吸引操作を中止し、試料容器載置手段および試料吸引手段をいったん初期位置に戻した後で、別の試料容器載置位置まで移動させればよく、
ノズルが試料容器載置手段における試料容器載置位置の上方から外れていると仮定したときに前記試料容器載置手段の天面とノズルが接触すると推測される高さで、接触センサが接触を検知した場合は、判定手段が試料容器載置手段の天面へのノズルの接触と判定し、前記判定手段により前記ノズルが前記試料容器載置手段における試料容器載置位置の上方から外れて位置していることを出力し、試料吸引手段による試料吸引操作を中止し、試料容器載置手段および試料吸引手段をいったん初期位置に戻した後で、再度、当該試料容器載置位置または別の試料容器載置位置まで移動させればよく、
試料容器が試料容器載置手段における試料容器載置位置に正しく戴置されていると仮定したときに前記試料容器の開口部と接触部が接触すると推測される高さで、接触センサが接触を検知した場合は、判定手段が試料容器の開口部への接触部の接触と判定し、前記判定手段によりノズル下方に試料容器が戴置されていることを出力し、試料吸引手段による試料吸引操作を実行すればよく、
試料容器が試料容器載置手段における試料容器載置位置に戴置されていると仮定したときに前記試料容器の開口部と接触部が接触すると推測される高さで、接触センサが接触を検知しなかった場合は、判定手段が試料容器の開口部への接触部の接触がない(不接触)と判定し、前記判定手段により前記試料容器載置手段における、ノズル下方にある試料容器載置位置に試料容器が載置されていないことを出力し、一旦、ノズルまたは試料容器載置手段を垂直方向の初期位置に戻した後で、再度、試料容器が載置されている試料容器載置位置へ試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を水平および垂直方向に移動すればよく、
試料容器が試料容器載置手段における試料容器載置位置に戴置されていないと仮定したときに接触部が試料容器載置手段の天面へ接触すると推測される高さで、接触センサが接触を検知した場合は、判定手段が試料容器載置手段の天面への接触部の接触と判定し、前記判定手段により前記試料容器載置手段における、ノズル下方にある試料容器載置位置に試料容器が載置されていないことを出力し、一旦、ノズルまたは試料容器載置手段を垂直方向の初期位置に戻した後で、再度、試料容器が載置されている試料容器載置位置へ試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を水平および垂直方向に移動させればよく、
試料容器が試料容器載置手段における試料容器載置位置に戴置されていないと仮定したときにノズルが試料容器載置位置の底へ接触すると推測される高さで、接触センサが接触を検知した場合は、判定手段が試料容器載置位置の底へのノズルの接触と判定し、前記判定手段により前記試料容器載置手段における、ノズル下方にある試料容器載置位置に試料容器が載置されていないことを出力し、一旦、ノズルまたは試料容器載置手段を垂直方向の初期位置に戻した後で、再度、試料容器が載置されている試料容器載置位置へ試料容器載置手段および/または前記試料吸引手段を水平および垂直方向に移動させればよい。
【0019】
なお本発明の試料吸引装置における試料容器載置手段に載置する試料容器には、当該容器に収容した試料の蒸発防止を目的とした、試料吸引手段に設けたノズルで容易に貫通可能な蓋(例えば十字の切り込みが入った蓋や薄いフィルムからなる蓋)を設けることがある。この場合は、接触センサが接触を検知することなく前記ノズルで容易に蓋を貫通可能なため、前記判定手段では当該試料容器に蓋があることを出力しない。ノズルまたは試料容器載置手段を垂直方向にさらに移動させ、接触部が当該試料容器の開口部または貫通可能な蓋に接触した時点で、前記判定手段はノズル下方にある試料容器戴置位置に試料容器が戴置されていることを出力する。
【0020】
本発明の試料吸引装置において、判定手段が、試料容器の蓋または試料容器載置手段の天面へのノズルの接触と判定した場合、速やかに、試料容器載置手段を垂直方向に移動可能な手段により前記試料容器載置手段を下降または試料吸引手段を垂直方向に移動可能な手段により前記試料吸引手段を上昇させると、ノズルや試料容器載置手段を間違って水平方向に動かすことによるノズルの破損を防止する意味で好ましい。
【0021】
また前述した判定手段の出力を表示する表示手段やアラーム手段を本発明の試料吸引装置にさらに設けると、どの試料容器が吸引されなかったかや、試料吸引装置の異常をオペレーターが認識することができるため、好ましい。