特許第6115468号(P6115468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6115468二次電池負極用バインダー組成物、二次電池負極用スラリー組成物、二次電池用負極および二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115468
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】二次電池負極用バインダー組成物、二次電池負極用スラリー組成物、二次電池用負極および二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20170410BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20170410BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20170410BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170410BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20170410BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20170410BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/133
   H01M10/0567
   H01M10/052
   H01M4/587
   H01M10/0525
【請求項の数】9
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-522935(P2013-522935)
(86)(22)【出願日】2012年6月28日
(86)【国際出願番号】JP2012066524
(87)【国際公開番号】WO2013002322
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年3月3日
(31)【優先権主張番号】特願2011-144590(P2011-144590)
(32)【優先日】2011年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100097180
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 均
(74)【代理人】
【識別番号】100110917
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100147393
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 一基
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智一
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−199043(JP,A)
【文献】 特開2009−004352(JP,A)
【文献】 特開2009−093839(JP,A)
【文献】 特開2011−124039(JP,A)
【文献】 特開2011−077029(JP,A)
【文献】 特開2002−203558(JP,A)
【文献】 特表2009−545128(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/013380(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0136956(US,A1)
【文献】 ABE Koji, et al.,Functional Electrolytes: Triple-Bonded Compound as an Additive for Negative Electrode,J. Electrochem. Soc.,The Electrochemical Society,2007年 6月22日,Vol.154, No.8,A810-A815
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
H01M 10/05 −10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池負極用バインダー組成物および負極活物質を含有してなる二次電池負極用スラリー組成物であって、
前記二次電池負極用バインダー組成物の含有量が、前記負極活物質の総量100質量部に対して0.1〜5質量部であり、
前記二次電池負極用バインダー組成物は、バインダー及びプロパルギル基含有化合物を含有し、前記プロパルギル基含有化合物の含有量が、前記バインダー100質量部に対して3〜7質量部であり、
前記負極活物質のBET比表面積が、5〜15m/gである二次電池負極用スラリー組成物。
【請求項2】
前記プロパルギル基含有化合物が、モノプロパルギル基含有化合物である請求項1に記載の二次電池負極用スラリー組成物。
【請求項3】
前記モノプロパルギル基含有化合物が、ベンゼンスルホン酸プロパルギル、アクリル酸プロパルギル、メタアクリル酸プロパルギル、酢酸プロパルギルのいずれか1つ以上である請求項2に記載の二次電池負極用スラリー組成物。
【請求項4】
前記バインダーが、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を含む請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池負極用スラリー組成物。
【請求項5】
前記バインダーのガラス転移温度が、−60℃〜40℃である請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池負極用スラリー組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の二次電池用負極スラリー組成物が有する二次電池負極用バインダー組成物および負極活物質を含んでなる負極活物質層を集電体上に有する二次電池用負極。
【請求項7】
前記負極活物質が、炭素材料系活物質である請求項に記載の二次電池用負極。
【請求項8】
正極、負極、電解液、並びにセパレーターを備えるリチウムイオン二次電池であって、前記負極が請求項6または7に記載の二次電池用負極である二次電池。
【請求項9】
前記電解液が、ビニレンカーボネートを含む請求項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池負極用バインダー組成物に関し、特に、リチウムイオン二次電池負極用バインダー組成物に関する。また、本発明は、かかる二次電池負極用バインダーを用いたスラリー組成物、負極および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノート型パソコン、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯端末の普及が著しい。これら携帯端末の電源に用いられている二次電池には、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池などが多用されている。携帯端末は、より快適な携帯性が求められて小型化、薄型化、軽量化、高性能化が急速に進み、その結果、携帯端末は様々な場で利用されるようになっている。また、電池に対しても、携帯端末に対するのと同様に、小型化、薄型化、軽量化、高性能化が要求されている。
【0003】
例えば、リチウムイオン二次電池では、軽量でエネルギー密度が大きいというその特徴から、導電性炭素質材料を負極活物質とし、電極活物質層の保形および集電体への接着のために、バインダーとして高分子(以下において「ポリマーバインダー」と記載することがある。)が利用されている。
【0004】
このポリマーバインダーには、電極活物質との接着性、電解液として使用される極性溶媒に対する耐性、電気化学的な環境下での安定性が求められる。このような要求特性からポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系のポリマーが利用されている。しかし、フッ素系ポリマーは、電極活物質層を形成した際に導電性を阻害したり、集電体と電極活物質層間の接着強度が不足するなどの問題点がある。さらに、フッ素系のポリマーを還元条件となる負極に用いた場合は、安定性が十分ではなく、二次電池のサイクル特性が低下するなど問題点もある。
【0005】
このため、負極においては、ポリマーバインダーとして、非フッ素系ポリマーを用いることが検討されている。たとえば、特許文献1(特開平11−25989号公報)、特許文献2(特開2010−140684号公報)には、(メタ)アクリル酸などのエチレン性不飽和酸単量体、ブタジエンなどの共役ジエン、およびスチレンなどの芳香族ビニルを共重合してなるポリマーバインダーが開示されている。このようなポリマーバインダーによれば、集電体と電極活物質層との間の密着性が高く、サイクル特性に高い電池が得られる。また、ポリマーバインダーに対して種々の添加剤を配合することで特性の向上を図ることも種々検討されている。
【0006】
なお、特許文献3〜5には、電解液の劣化を防止する等の目的で、電解液にアルケニル基含有化合物を添加することが教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−25989号公報
【特許文献2】特開2010−140684号公報
【特許文献3】特開2001−313072号公報
【特許文献4】特開2009−93839号公報
【特許文献5】特開2009−152133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に記載のポリマーバインダーを電極活物質層に用いることで、集電体と電極活物質層との間の密着性が高く、サイクル特性に高い電池が得られる。しかし、二次電池には、常に高機能化、長寿命化が求められ続けている。具体的には、サイクル特性、低温出力特性などの向上であり、また充放電後の集電体と電極活物質層との間の密着性の向上も求められている。
しかしながら、特許文献1、2に記載のポリマーバインダーでは、充放電後の集電体と電極活物質層との間の密着性が低下したり、得られる二次電池の、サイクル特性、特に高温におけるサイクル特性や低温出力特性が低下したりする問題があり、さらなる改善が望まれていた。
そこで、本発明は、充放電後の集電体と電極活物質層との間の密着性に優れ、二次電池の高温におけるサイクル特性、低温出力特性の向上に寄与しうる二次電池負極用バインダー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を続けたところ、負極活物質層に用いるポリマーバインダーと、特定の化合物とを併用することで、充放電後の集電体と電極活物質層との間の密着性が向上し、特に高温におけるサイクル特性、低温出力特性が改善された二次電池が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、上記課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)バインダー及びプロパルギル基含有化合物を含有し、前記プロパルギル基含有化合物の含有量が、前記バインダー100質量部に対して0.1〜20質量部である、二次電池負極用バインダー組成物。
【0011】
(2)前記プロパルギル基含有化合物が、モノプロパルギル基含有化合物である(1)に記載の二次電池負極用バインダー組成物。
【0012】
(3)前記バインダーが、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を含む(1)または(2)に記載の二次電池負極用バインダー組成物。
【0013】
(4)前記バインダーのガラス転移温度が、−60℃〜40℃である(1)〜(3)のいずれかに記載の二次電池負極用バインダー組成物。
【0014】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の二次電池負極用バインダー組成物および負極活物質を含有してなる二次電池負極用スラリー組成物。
【0015】
(6)前記負極活物質のBET比表面積が、3〜20m/gである(5)に記載の二次電池負極用スラリー組成物。
【0016】
(7)上記(1)〜4のいずれかに記載の二次電池用負極バインダー組成物および負極活物質を含んでなる負極活物質層を集電体上に有する二次電池用負極。
【0017】
(8)前記負極活物質のBET比表面積が、3〜20m/gである(7)に記載の二次電池用負極。
【0018】
(9)前記負極活物質が、炭素材料系活物質である(7)または(8)に記載の二次電池用負極。
【0019】
(10)正極、負極、電解液、並びにセパレーターを備えるリチウムイオン二次電池であって、前記負極が(7)〜(9)のいずれかに記載の二次電池用負極である二次電池。
【0020】
(11)前記電解液が、ビニレンカーボネートを含む(10)に記載の二次電池。
【発明の効果】
【0021】
負極活物質層に用いるバインダーと、プロパルギル基含有化合物とを併用することで、集電体と電極活物質層との間の密着性が向上し、特に高温サイクル特性、低温出力特性が改善された二次電池が得られる。このような本発明の作用機構は必ずしも明らかではない。何ら限定的に解釈されるものではないが、本発明者らは、上記効果が奏される機構を以下のように推定している。すなわち、負極活物質層にプロパルギル基含有化合物を配合することで、負極活物質表面に、プロパルギル基含有化合物が吸着し、負極活物質表面にはSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜と呼ばれる薄層の生成が促進されると考えられる。
【0022】
負極活物質表面と電解液とが接触する際に、多くの場合、負極活物質のエッジ部において接触した電解液の一部が分解される。このような負極活物質のエッジ部は活性点とも呼ばれる。活性点において生成した分解物によって、電極活物質層が膨らみ、集電体と電極活物質層との間の密着性が低下する。この結果、電池のサイクル特性、低温出力特性が損なわれる。
【0023】
しかし、上記のようなプロパルギル基含有化合物によりSEI被膜を形成することで、負極活物質の活性点と電解液との直接的な接触が低減され、電解液成分の分解が防止される。この結果、負極活物質層の膨潤が低減され、ピール強度、すなわち集電体と負極活物質層との密着性が維持され、サイクル特性及び低温出力特性を向上できると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下において、(1)二次電池負極用バインダー組成物、(2)二次電池負極用スラリー組成物、(3)二次電池用負極、及び(4)二次電池の順に説明する。
【0025】
(1)二次電池負極用バインダー組成物
本発明の二次電池負極用バインダー組成物は、バインダーと、プロパルギル基含有化合物とを含有する。
【0026】
(バインダー)
本発明で使用されるバインダーは、特に限定はされず、フッ素系重合体、ジエン系重合体、ニトリル系重合体等の従来より負極活物質層のバインダーとして用いられてきた種々の高分子化合物が用いられる。これらの中でも、水系での合成が容易であり、簡便に水系ラテックスの形態で得られる高分子化合物が好ましい。このような高分子化合物としては、エチレン性不飽和酸単量体単位、好ましくはエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を含む高分子化合物が挙げられる。
【0027】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を含む高分子化合物は、コモノマーとして脂肪族共役ジエン系単量体単位を含むことが好ましく、また必要に応じこれら単量体と共重合可能な他の単量体から導かれる単位を含むことができる。さらに、バインダーの耐久性や、柔軟性、接着性等の観点から、これらの単量体単位を特定の比率で含有することが特に好ましい。
【0028】
したがって、本発明で特に好ましく用いられるバインダーは、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位、脂肪族共役ジエン系単量体単位、及びこれらと共重合可能な他の単量体単位からなり、各単量体単位を特定比率で含むものが好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体を重合して得られる重合体繰り返し単位であり、脂肪族共役ジエン系単量体単位は、脂肪族共役ジエン系単量体を重合して得られる重合体繰り返し単位であり、これらと共重合可能な他の単量体単位は、共重合可能な他の単量体を重合して得られる重合体繰り返し単位である。
【0029】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。これらの中でも、集電体との密着性に優れる点で、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸が好ましく、イタコン酸が特に好ましい。ポリマーバインダーを後述するプロパルギル基含有化合物と併用した場合、プロパルギル基含有化合物の配合量が増えるにつれて、バインダー組成物の水中での分散性(以後、適宣、水分散性と略することがある)が低下することがある。しかし、ポリマーバインダー中にカルボン酸を含有する単位を導入することで、水分散性が向上する。また、特にジカルボン酸であるイタコン酸を導入すると、バインダーと水との親和性が高くなる。
【0030】
脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換および側鎖共役ヘキサジエン類などが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特に1,3−ブタジエンが好ましい。
【0031】
これらと共重合可能な他の単量体としては、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体等が挙げられ、これらは、1種または2種以上用いることができる。特に、電解液に対する膨潤が抑制できる点で、芳香族ビニル系単量体が好ましい。
【0032】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンおよびジビニルベンゼン等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。これらの中でも電解液に対する膨潤が抑制できる点で、特にスチレンが好ましい。
【0033】
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特にアクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましい。
【0034】
不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特にメチルメタクリレートが好ましい。
【0035】
ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体としては、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジ−(エチレングリコール)マレエート、ジ−(エチレングリコール)イタコネート、2−ヒドロキシエチルマレエート、ビス(2−ヒドロキシエチル)マレエート、2−ヒドロキシエチルメチルフマレートなどが挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特にβ−ヒドロキシエチルアクリレートが好ましい。
【0036】
不飽和カルボン酸アミド単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。特にアクリルアミド、メタクリルアミドが好ましい。
【0037】
さらに、上記単量体の他に、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等、通常の乳化重合において使用される単量体は何れも使用可能である。
【0038】
本発明におけるバインダーの各単量体単位の比率は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位が好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1.0〜10質量%であり、脂肪族共役ジエン系単量体単位が好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは25〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%であり、これらと共重合可能な他の単量体単位が好ましくは5〜79.9質量%、さらに好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%である。
【0039】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位が前記範囲にあることにより、バインダー組成物及びスラリー組成物の安定性が向上し、二次電池用負極における負極活物質と集電体との十分な密着性を得ることができる。その結果、得られる二次電池の耐久性、特に高温サイクル特性が向上し好適である。
【0040】
脂肪族共役ジエン系単量体単位が前記範囲にあることにより、二次電池用負極の柔軟性と、負極活物質と集電体との密着性とが高度にバランスし好ましい。また、それによって、得られる二次電池の耐久性、特に高温サイクル特性が向上し好適である。
【0041】
共重合可能な他の単量体単位が前記範囲にあることにより、二次電池用負極の柔軟性と、負極活物質と集電体との密着性とが高度にバランスし好ましい。また、それによって、得られる二次電池の耐久性、特に高温サイクル特性が向上し好適である。
【0042】
バインダーのガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−60〜40℃、より好ましくは−50〜30℃、特に好ましくは−40〜20℃である。バインダーのTgが前記範囲にあることにより、負極の柔軟性、結着性及び捲回性、負極活物質と集電体との密着性などの特性が高度にバランスされ好適である。
【0043】
なお、共重合モノマーとして脂肪族共役ジエンを用いた場合には、重合後にジエン単位に水素添加を行ってもよい。水素添加する方法は、特に限定されず、通常の方法を用いることができる。
【0044】
(プロパルギル基含有化合物)
本発明の二次電池負極用バインダー組成物には、上記のバインダー100質量部(固形分換算)に対し、特定量のプロパルギル基含有化合物が含まれる。何ら理論的に制限されるものではないが、本発明の二次電池負極用バインダー組成物によれば、特定量のプロパルギル基含有化合物を含有することで、負極活物質と接触した際に、プロパルギル基含有化合物が、負極活物質の活性点近傍でSEI被膜を形成すると考えられる。SEI被膜によって、電解液の成分が活性点に接触することが防止されるため、電池内での電解液の分解が抑制される。その結果、電解液の分解による電解液粘度の上昇と二次電池の内部抵抗の上昇とが抑制されるため、二次電池の高温保存特性、高温サイクル特性、低温出力特性が向上する。また、電解液成分の分解物による負極活物質層の膨潤が防止され、ピール強度が維持され、高温サイクル特性及び低温出力特性をさらに向上できる。
【0045】
バインダー組成物におけるプロパルギル基含有化合物の含有量は、バインダー100質量部(固形分換算)に対し、0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。プロパルギル基含有化合物の含有量が少なすぎる場合には、上記のSEI被膜の生成が不十分になり、電解液成分が分解しやすく、電池のサイクル特性や出力特性が低下するおそれがある。一方、プロパルギル基含有化合物の含有量が多すぎる場合には、バインダー組成物を用いて調製したスラリーの安定性が損なわれ、スラリーの粘度が上昇しやすくなる。この結果、スラリーの塗工が困難になり、得られる負極の均一性が低下し、出力特性が低下するおそれがある。
【0046】
本発明で使用するプロパルギル基含有化合物は、分子内に1以上のプロパルギル基(H−C≡C−CH−)を有する。プロパルギル基の数は、特に限定はされないが、プロパルギル基の数が多くなると、水への分散性が低下し、均一な水系スラリーが得られないおそれがある。したがって、プロパルギル基含有化合物1分子あたりのプロパルギル基の数は2以下であることが好ましく、1であることが特に好ましい。したがって、本発明においては、モノプロパルギル基含有化合物が特に好ましく用いられる。
【0047】
プロパルギル基含有化合物としては、具体的には、ベンゼンスルホン酸プロパルギル、アクリル酸プロパルギル、メタアクリル酸プロパルギル、酢酸プロパルギル等のモノプロパルギル基含有化合物;
ジプロパルギルカーボネート等のジプロパルギル基含有化合物があげられる。
【0048】
このようなプロパルギル基含有化合物は、後述するような負極活物質と接触すると、負極活物質表面に、プロパルギル基含有化合物が吸着し、SEI被膜と呼ばれる薄層を生成すると考えられる。SEI被膜が形成された負極活物質では、活性点であるエッジ部も被膜により覆われるため、活性点と電解液成分との接触が低減される。この結果、電解液成分の分解が抑制され、負極活物質層の膨張や、それに起因する集電体と負極活物質層との間の密着性の低下が防止され、電池の高温サイクル特性、低温出力特性が向上すると考えられる。
【0049】
(その他の成分)
本発明の二次電池負極用バインダー組成物には、バインダーおよびプロパルギル基含有化合物に加え、これら成分を分散するための分散媒が含まれていてもよい。分散媒は、水、有機溶媒の何れであってもよく、バインダー組成物の分散安定性を損なわない範囲であれば、分散媒として水に親水性の溶媒を混合してもよい。親水性の溶媒としては、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドンなどがあげられ、水に対して5質量%以下であることが好ましい。また、後述するバインダー調製時の反応溶媒をそのまま分散媒としてもよく、バインダー調製後に溶媒置換してもよい。
【0050】
バインダー組成物が、分散媒を含む場合、バインダーおよびプロパルギル基含有化合物の合計固形分濃度は特に限定はされないが、20〜60質量%程度が適当である。
【0051】
さらに、バインダー組成物には、バインダー調製時に使用した各種の分散剤等が含まれていてもよい。また、バインダー組成物には、組成物の分散性を損なわない範囲で、さらに老化防止剤、防腐剤等が含まれていてもよい。
【0052】
老化防止剤としては、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、有機リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、フェノチアジン系酸化防止剤等が挙げられる。防腐剤としては、イソチアゾリン系化合物、ピリチオン系化合物が挙げられる。バインダー組成物が、これらの成分を含む場合、組成物におけるこれら成分の固形分濃度は特に限定はされないが、0.001〜1質量%程度が適当である。
【0053】
(二次電池負極用バインダー組成物の製造方法)
本発明の二次電池負極用バインダー組成物を製造する方法としては、上記単量体を含む単量体組成物を、水系溶媒中で重合してバインダーを含む水分散液(結着力を有する重合体粒子であるバインダーが水系溶媒に溶解又は分散された溶液又は分散液)を得、バインダーを含む水分散液に特定量のプロパルギル基含有化合物及びその他の任意成分を添加・混合する方法が挙げられる。ただし、バインダー組成物の製造方法がこれに限定されることはなく、たとえば、単量体組成物にプロパルギル基含有化合物、老化防止剤あるいは防腐剤等を予め配合し、その後に重合を行ってもよい。また、重合中あるいは重合後の任意の段階でこれらをバインダー組成物に配合してもよい。
【0054】
バインダーを含む水分散液を得る工程における単量体組成物中の各単量体の比率は、エチレン性不飽和カルボン酸単量体が好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは0.5〜15質量%、より好ましくは1.0〜10質量%であり、脂肪族共役ジエン系単量体が好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは25〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%であり、これらと共重合可能な他の単量体が好ましくは5〜79.9質量%、さらに好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%である。
【0055】
水系溶媒としては、バインダーの分散が可能なものであれば格別限定されることはなく、通常、常圧における沸点が80〜350℃、好ましくは100〜300℃の分散媒から選ばれる。なお、下記例示の分散媒名の後の( )内の数字は常圧での沸点(単位℃)であり、小数点以下は四捨五入または切り捨てられた値である。例えば、ケトン類としては、ダイアセトンアルコール(169)、γ−ブチロラクトン(204);アルコール類としては、エチルアルコール(78)、イソプロピルアルコール(82)、ノルマルプロピルアルコール(97);グリコール類として、エチレングリコール(193)、プロピレングリコール(188)、ジエチレングリコール(244);グリコールエーテル類としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(120)、メチルセロソルブ(124)、エチルセロソルブ(136)、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル(152)、ブチルセロソルブ(171)、3−メトキシー3メチル−1−ブタノール(174)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(150)、ジエチレングリコールモノブチルピルエーテル(230)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(271)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(188);エーテル類としては、1,3−ジオキソラン(75)、1,4−ジオキソラン(101)、テトラヒドロフラン(66)が挙げられる。中でも、水は可燃性がなく、バインダーの分散体が容易に得られやすいという観点から最も好ましい。なお、主溶媒として水を使用して、バインダーの分散状態が確保可能な範囲において上記記載の水以外の水系溶媒を混合して用いて良い。
【0056】
重合方法は、特に限定されず、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法も用いることができる。重合反応としては、イオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などが挙げられる。高分子量体が得やすい事、重合物がそのまま水に分散した状態で得られ、再分散化の処理が不要であり、そのまま二次電池負極用スラリー組成物作製に供することができるなど、製造効率の観点から、中でも乳化重合法が最も好ましい。
【0057】
乳化重合法は、常法、例えば「実験化学講座」第28巻、(発行元:丸善(株)、日本化学会編)に記載された方法、すなわち、攪拌機および加熱装置付きの密閉容器に水、分散剤や乳化剤、架橋剤などの添加剤、開始剤およびモノマーを所定の組成になるように加え、攪拌してモノマーなどを水に乳化させ、攪拌しながら温度を上昇させて重合を開始する方法である。或いは、上記組成物を乳化させた後に密閉容器に入れ同様に反応を開始させる方法である。
【0058】
乳化剤や分散剤、重合開始剤などは、これらの重合法において一般的に用いられるものであり、その使用量も一般に使用される量でよい。また重合に際しては、シード粒子を採用すること(シード重合)もできる。
【0059】
重合温度および重合時間は、重合法や使用する重合開始剤の種類などにより任意に選択できるが、通常、重合温度は約30℃以上、重合時間は0.5〜30時間程度である。アミン類などの添加剤を重合助剤として用いることもできる。さらにこれらの方法によって得られる重合体粒子の水分散液に、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)水酸化物、アンモニア、無機アンモニウム化合物(NHClなど)、有機アミン化合物(エタノールアミン、ジエチルアミンなど)などが溶解している塩基性水溶液を加えてpH5〜10、好ましくは5〜9の範囲になるように調整することができる。アルカリ金属水酸化物によるpH調整は、バインダー組成物と、集電体及び活物質との結着性(ピール強度)を向上させるため好ましい。
【0060】
上述したバインダーは、2種以上の重合体からなる複合重合体粒子であってもよい。複合重合体粒子は、少なくとも1種のモノマー成分を常法により重合し、引き続き、他の少なくとも1種のモノマー成分を添加し、常法により重合させる方法(二段重合法)などによっても得ることができる。
【0061】
重合に用いる重合開始剤としては、たとえば過酸化ラウロイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、α,α’−アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、または過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0062】
また、前記重合において、連鎖移動剤を加えてもよい。連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタンが好ましく、具体的には、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタンが挙げられる。中でも、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンが、重合安定性が良好であるという観点から好ましい。
【0063】
また、上記アルキルメルカプタンと共に他の連鎖移動剤を併用してもよい。併用してもよい連鎖移動剤としては、ターピノーレン、アリルアルコール、アリルアミン、アリルスルフォン酸ソーダ(カリウム)、メタアリルスルフォン酸ソーダ(カリウム)等が挙げられる。上記の連載移動剤の使用量は、本願発明の効果を妨げない範囲で特に限定されない。
【0064】
水分散液中のバインダーの個数平均粒径は、50〜500nmが好ましく、70〜400nmがさらに好ましい。バインダーの個数平均粒径が上記範囲にあることで、得られる負極の強度および柔軟性が良好となる。重合体粒子の存在は、透過型電子顕微鏡法やコールターカウンター、レーザー回折散乱法などによって容易に測定することができる。
【0065】
また、バインダーは、上記単量体を段階的に重合することにより得られるコアシェル構造を有する重合体粒子からなるバインダーであってもよい。
【0066】
バインダーを含む水分散液に、プロパルギル基含有化合物およびその他の任意成分を添加・混合する方法は特に限定されない。混合する方法としては、例えば、撹拌式、振とう式、および回転式などの混合装置を使用した方法が挙げられる。また、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル、プラネタリーミキサーおよび遊星式混練機などの分散混練装置を使用した方法が挙げられる。
【0067】
また、得られた本発明の二次電池負極用バインダー組成物には、塗布性を向上させたり、充放電特性を向上させるために添加剤を加えることができる。これらの添加剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムなどのポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸−ビニルアルコール共重合体、メタクリル酸−ビニルアルコール共重合体、マレイン酸−ビニルアルコール共重合体、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ酢酸ビニル部分ケン化物などが挙げられる。これらの添加剤は、バインダー組成物に添加する方法以外に、後述する本発明の二次電池負極用スラリー組成物に添加することもできる。
【0068】
(2)二次電池負極用スラリー組成物
本発明の二次電池負極用スラリー組成物は、上記二次電池負極用バインダー組成物及び負極活物質を含有してなる。以下においては、本発明の二次電池負極用スラリー組成物を、リチウムイオン二次電池負極用スラリー組成物として用いる態様について説明する。
【0069】
(負極活物質)
本発明に用いる負極活物質は、二次電池用負極内で電子の受け渡しをする物質である。
【0070】
リチウムイオン二次電池用負極活物質としては、炭素材料系活物質や合金系活物質が挙げられる。
【0071】
炭素材料系活物質とは、リチウムが挿入可能な炭素を主骨格とする活物質をいい、具体的には、炭素質材料と黒鉛質材料が挙げられる。炭素質材料とは一般的に炭素前駆体を2000℃以下で熱処理(炭素化)された黒鉛化の低い(結晶性の低い)炭素材料を示し、黒鉛質材料とは易黒鉛性炭素を2000℃以上で熱処理することによって得られた黒鉛に近い高い結晶性を有する黒鉛質材料を示す。
【0072】
炭素質材料としては、熱処理温度によって炭素の構造を容易に変える易黒鉛性炭素や、ガラス状炭素に代表される非晶質構造に近い構造を持つ難黒鉛性炭素が挙げられる。
【0073】
易黒鉛性炭素としては石油や石炭から得られるタールピッチを原料とした炭素材料が挙げられ、例えば、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維などが挙げられる。MCMBとはピッチ類を400℃前後で加熱する過程で生成したメソフェーズ小球体を分離抽出した炭素微粒子であり、メソフェーズピッチ系炭素繊維とは、前記メソフェーズ小球体が成長、合体して得られるメソフェーズピッチを原料とする炭素繊維である。
【0074】
難黒鉛性炭素としては、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体(PFA)などが挙げられる。
【0075】
黒鉛質材料としては天然黒鉛、人造黒鉛があげられる。人造黒鉛としては、主に2800℃以上で熱処理した人造黒鉛、MCMBを2000℃以上で熱処理した黒鉛化MCMB、メソフェーズピッチ系炭素繊維を2000℃以上で熱処理した黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維などがあげられる。
これら炭素系活物質の中でも黒鉛質材料が好ましい。
【0076】
本発明で用いる合金系活物質とは、リチウムの挿入可能な元素を構造に含み、リチウムが挿入した場合の質量あたりの理論電気容量が500mAh/g以上である活物質をいい、具体的には、リチウム金属、リチウム合金を形成する単体金属およびその合金、及びそれらの酸化物や硫化物、窒化物、珪化物、炭化物、燐化物等が用いられる。
【0077】
リチウム合金を形成する単体金属及び合金としては、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn等の金属を含有する化合物が挙げられる。それらの中でもケイ素(Si)、スズ(Sn)または鉛(Pb)の単体金属若しくはこれら原子を含む合金、または、それらの金属の化合物が用いられる。
【0078】
本発明で用いる合金系活物質は、さらに、一つ以上の非金属元素を含有していてもよい。具体的には、例えばSiC、SiO(以下、「Si−O−C」と呼ぶ)(0<x≦3、0<y≦5)、Si、SiO、SiO(0<x≦2)、SnO(0<x≦2)、LiSiO、LiSnO等が挙げられ、中でも低電位でリチウムの挿入脱離が可能なSiOが好ましい。例えば、SiOは、ケイ素を含む高分子材料を焼成して得ることができる。SiOの中でも、容量とサイクル特性の兼ね合いから、0.8≦x≦3、2≦y≦4の範囲が好ましく用いられる。
【0079】
酸化物や硫化物、窒化物、珪化物、炭化物、燐化物としては、リチウムの挿入可能な元素の酸化物や硫化物、窒化物、珪化物、炭化物、燐化物等が挙げられ、その中で酸化物が特に好ましい。具体的には酸化スズ、酸化マンガン、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化バナジウム等の酸化物、Si、Sn、PbおよびTi原子よりなる群から選ばれる金属元素を含むリチウム含有金属複合酸化物材料が用いられている。ケイ素の酸化物としてはシリコンカーバイド(Si−O−C)のような材料も挙げられる。
【0080】
リチウム含有金属複合酸化物としては、更にLiTiで示されるリチウムチタン複合酸化物(0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、ZnおよびNb)が挙げられ、中でもLi4/3Ti5/3、Li1Ti、Li4/5Ti11/5が用いられる。
【0081】
これらの中でもケイ素を含む材料(以下、「ケイ素含有材料」と記載することがある。)が好ましく、中でもSi−O−Cがさらに好ましい。この化合物では高電位でSi(ケイ素)、低電位ではC(炭素)へのLiの挿入脱離が起こると推測され、他の合金系活物質よりも膨張・収縮が抑制される。
【0082】
本発明においては、負極活物質として、黒鉛質材料やケイ素含有材料が好ましく、特に天然黒鉛や、Si−O−Cが好ましい。このような活物質は、プロパルギル基含有化合物との接触によりSEI被膜が形成され、エッジ部の活性点が失活されやすく、電解液成分の分解を有効に防止することができる。特に、本発明は、炭素材料系活物質を含む電極に有効である。
【0083】
なお、負極活物質は、1種単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。併用する場合には、黒鉛質材料とケイ素含有材料との併用が好ましい。その配合比率(黒鉛質材料/ケイ素含有材料)は、重量比で、99/1〜40/60が好ましく、95/5〜45/55がより好ましい。負極活物質の形状は、粒状に整粒されたものが好ましい。粒子の形状が球形であると、電極成形時により高密度な電極が形成できる。
【0084】
負極活物質の体積平均粒子径は、電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択されるが通常0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは5〜20μmである。また、負極活物質の50%体積累積径は、初期効率、負荷特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、通常1〜50μm、好ましくは15〜30μmである。体積平均粒子径は、レーザー回折で粒度分布を測定することにより求められる。50%体積累積径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−3100;島津製作所製)にて測定し、算出される50%体積平均粒子径である。
【0085】
負極活物質のタップ密度は、特に制限されないが、0.6g/cm以上のものが好適に用いられる。
【0086】
負極活物質のBET比表面積は、好ましくは3〜20m/g、より好ましくは3〜15m/g、特に好ましくは3〜10m/gである。負極活物質のBET比表面積が上記範囲にあることで、負極活物質表面の活性点が増えるため、二次電池の低温出力特性に優れる。
【0087】
本発明の二次電池負極用スラリー組成物における、負極活物質及びバインダー組成物の合計含有量は、スラリー組成物100質量部に対して、好ましくは10〜90質量部であり、さらに好ましくは30〜80質量部である。また負極活物質の総量に対するバインダー組成物の含有量(固形分相当量)は、負極活物質の総量100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部であり、さらに好ましくは0.5〜2質量部である。スラリー組成物における負極活物質及びバインダー組成物の合計含有量とバインダー組成物の含有量が上記範囲であると、得られる二次電池負極用スラリー組成物の粘度が適正化され、塗工を円滑に行えるようになり、また得られた負極に関して抵抗が高くなることなく、十分な密着強度が得られる。その結果、極板プレス工程における集電体からの負極活物質層の剥がれを抑制することができる。
【0088】
(分散媒)
本発明では、スラリーの分散媒として水を用いることが好ましい。本発明においては、バインダー組成物の分散安定性を損なわない範囲であれば、分散媒として水に親水性の溶媒を混ぜたものを使用してもよい。親水性の溶媒としては、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドンなどがあげられ、水に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0089】
(導電剤)
本発明の二次電池負極用スラリー組成物においては、導電剤を含有することが好ましい。導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、気相成長カーボン繊維、およびカーボンナノチューブ等の導電性カーボンを使用することができる。導電剤を含有することにより、負極活物質同士の電気的接触を向上させることができ、二次電池に用いる場合に放電レート特性を改善することができる。スラリー組成物における導電剤の含有量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部である。
【0090】
(増粘剤)
本発明の二次電池負極用スラリー組成物においては、増粘剤を含有することが好ましい。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;
(変性)ポリ(メタ)アクリル酸およびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;
(変性)ポリビニルアルコール、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールとの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールとの共重合体などのポリビニルアルコール類;
ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、変性ポリアクリル酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプンなどが挙げられる。
【0091】
増粘剤の配合量は、負極活物質100質量部に対して、0.5〜1.5質量部が好ましい。増粘剤の配合量が上記範囲であると、塗工性、集電体との密着性が良好である。なお、本明細書において、「(変性)ポリ」は「未変性ポリ」又は「変性ポリ」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタアクリル」を意味する。
【0092】
二次電池負極用スラリー組成物には、上記成分のほかに、さらに補強材、レベリング剤、電解液分解抑制等の機能を有する電解液添加剤等の他の成分が含まれていてもよく、後述の二次電池用負極中に含まれていてもよい。これらは電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られない。
【0093】
補強材としては、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。補強材を用いることにより強靭で柔軟な負極を得ることができ、優れた長期サイクル特性を示すことができる。スラリー組成物における補強材の含有量は、負極活物質100質量部に対して通常0.01〜20質量部、好ましくは1〜10質量部である。上記範囲に含まれることにより、高い容量と高い負荷特性を示す。
【0094】
レベリング剤としては、アルキル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属系界面活性剤などの界面活性剤が挙げられる。レベリング剤を混合することにより、塗工時に発生するはじきを防止したり、負極の平滑性を向上させることができる。スラリー組成物中のレベリング剤の含有量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部である。レベリング剤が上記範囲であることにより負極作製時の生産性、平滑性及び電池特性に優れる。界面活性剤を含有させることによりスラリー組成物中の負極活物質等の分散性を向上することができ、また負極の平滑性を向上できる。
【0095】
スラリー組成物中及び電解液中に使用される電解液添加剤としては、ビニレンカーボネートなどを用いることができる。スラリー組成物中の電解液添加剤の含有量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部である。電解液添加剤が、上記範囲であることによりサイクル特性及び高温特性に優れる。その他には、フュームドシリカやフュームドアルミナなどのナノ微粒子が挙げられる。ナノ微粒子を混合することによりスラリー組成物のチキソ性をコントロールすることができ、また負極のレベリング性を向上できる。スラリー組成物中のナノ微粒子の含有量は、負極活物質100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部である。ナノ微粒子が上記範囲であることによりスラリー安定性、生産性に優れ、高い電池特性を示す。
【0096】
(水溶性ポリマー)
本発明の二次電池負極用スラリー組成物は、上記バインダー組成物に加え、水溶性ポリマーを含むことができる。水溶性ポリマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位20〜60質量%、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位20〜80質量%およびこれらと共重合可能な他の単量体単位0〜20質量%からなる水溶性ポリマーが好ましい。二次電池負極用スラリー組成物に上記水溶性ポリマーを含ませることで、二次電池用負極の密着性及び耐久性が向上するため、ピール強度を向上させることができる。本発明における水溶性ポリマーとは、pH12において、1%水溶液粘度が0.1〜100000mPa・sである重合体をいう。
【0097】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのモノまたはジカルボン酸(無水物)等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。これらのエチレン性不飽和カルボン酸単量体単位の割合は、より好ましくは25〜55質量%、特に好ましくは30〜50質量%である。
【0098】
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどのメタクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、より好ましくは25〜75質量%、特に好ましくは30〜70質量%である。
【0099】
共重合可能な他の単量体としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸エステルモノマー;スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー;アクリルアミド、N−メチロールアクエイルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル化合物;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物が挙げられる。これらの中でも、α,β−不飽和ニトリル化合物やスチレン系モノマーが好ましく、α,β−不飽和ニトリル化合物が特に好ましい。これらの共重合可能な単量体単位の割合は、より好ましくは0〜10質量%、特に好ましくは0〜5質量%である。
【0100】
水溶性ポリマーを製造する方法としては、上記単量体を含む単量体組成物を、水系溶媒中で重合して水分散型ポリマーを得、pH7〜13にアルカリ化する方法が挙げられる。水系溶媒や重合方法については、上述の二次電池負極用バインダー組成物と同様である。
【0101】
pH7〜13にアルカリ化する方法としては、特に限定されないが、水酸化リチウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ金属水溶液、水酸化カルシウム水溶液、水酸化マグネシウム水溶液などのアルカリ土類金属水溶液や、アンモニア水溶液などのアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
【0102】
(二次電池負極用スラリー組成物の製造)
二次電池負極用スラリー組成物は、上記バインダー組成物、負極活物質および必要に応じ用いられる導電剤等を混合して得られる。
【0103】
混合法は特に限定はされないが、例えば、撹拌式、振とう式、および回転式などの混合装置を使用した方法が挙げられる。また、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル、プラネタリーミキサーおよび遊星式混練機などの分散混練装置を使用した方法が挙げられる。
【0104】
(3)二次電池用負極
本発明の二次電池用負極は、上記のバインダー組成物および負極活物質を含んでなり、具体的には、本発明の二次電池負極用スラリー組成物を集電体上に塗布、乾燥して得られる。
【0105】
(二次電池用負極の製造方法)
本発明の二次電池用負極の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記スラリー組成物を集電体の少なくとも片面、好ましくは両面に塗布、乾燥し、負極活物質層を形成する方法が挙げられる。
【0106】
スラリー組成物を集電体上に塗布する方法は特に限定されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、およびハケ塗り法などの方法が挙げられる。
【0107】
乾燥方法としては、例えば、温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥時間は通常5〜30分であり、乾燥温度は通常40〜180℃である。
【0108】
本発明の二次電池用負極を製造するに際して、集電体上に上記スラリー組成物を塗布乾燥後、金型プレスやロールプレスなどを用い、加圧処理により負極活物質層の空隙率を低くする工程を有することが好ましい。空隙率の好ましい範囲は5〜30%、より好ましくは7〜20%である。空隙率が高すぎると充電効率や放電効率が悪化する。空隙率が低すぎる場合は、高い体積容量が得難く、負極活物質層が集電体から剥がれ易く不良を発生し易いといった問題を生じる。さらに、バインダー組成物に硬化性の重合体を用いる場合は、硬化させることが好ましい。
【0109】
本発明の二次電池用負極における負極活物質層の厚みは、通常5〜300μmであり、好ましくは30〜250μmである。負極活物質層の厚みが上記範囲にあることにより、負荷特性及びサイクル特性共に高い特性を示す。
【0110】
本発明において、負極活物質層における負極活物質の含有割合は、好ましくは85〜99質量%、より好ましくは88〜97質量%である。負極活物質の含有割合を、上記範囲とすることにより、高い容量を示しながらも柔軟性、結着性を示すことができる。
【0111】
本発明において、二次電池用負極の負極活物質層の密度は、好ましくは1.6〜1.9g/cmであり、より好ましくは1.65〜1.85g/cmである。負極活物質層の密度が上記範囲にあることにより、高容量の電池を得ることができる。
【0112】
(集電体)
本発明で用いる集電体は、電気導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されないが、耐熱性を有するため金属材料が好ましく、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などが挙げられる。中でも、二次電池用負極に用いる集電体としては銅が特に好ましい。集電体の形状は特に制限されないが、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものが好ましい。集電体は、負極活物質層との接着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用するのが好ましい。粗面化方法としては、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、負極活物質層との接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
【0113】
(4)二次電池
本発明の二次電池は、正極、負極、セパレーター及び電解液を備えてなる二次電池であって、負極が、上記二次電池用負極である。
【0114】
(正極)
正極は、正極活物質及び二次電池正極用バインダー組成物を含む正極活物質層が、集電体上に積層されてなる。
【0115】
(正極活物質)
正極活物質は、リチウムイオンをドープ及び脱ドープ可能な活物質が用いられ、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
【0116】
無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、リチウムと遷移金属とのリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo等が使用される。
【0117】
遷移金属酸化物としては、MnO、MnO、V、V13、TiO、Cu、非晶質VO−P、MoO、V、V13等が挙げられ、中でもサイクル安定性と容量からMnO、V、V13、TiOが好ましい。遷移金属硫化物としては、TiS、TiS、非晶質MoS、FeS等が挙げられる。リチウム含有複合金属酸化物としては、層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、スピネル構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。
【0118】
層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはリチウム含有コバルト酸化物(LiCoO)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)、Co−Ni−Mnのリチウム複合酸化物、Ni−Mn−Alのリチウム複合酸化物、Ni−Co−Alのリチウム複合酸化物等が挙げられる。スピネル構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはマンガン酸リチウム(LiMn)やMnの一部を他の遷移金属で置換したLi[Mn3/21/2]O(ここでMは、Cr、Fe、Co、Ni、Cu等)等が挙げられる。オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としてはLiMPO(式中、Mは、Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B及びMoから選ばれる少なくとも1種、0≦X≦2)であらわされるオリビン型燐酸リチウム化合物が挙げられる。
【0119】
有機化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子を用いることもできる。電気伝導性に乏しい、鉄系酸化物は、還元焼成時に炭素源物質を存在させることで、炭素材料で覆われた電極活物質として用いてもよい。また、これら化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。二次電池用の正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。
【0120】
正極活物質の体積平均粒子径は、通常0.01〜50μm、好ましくは0.05〜30μmである。体積平均粒子径が上記範囲にあることにより、後述する正極用スラリー組成物を調製する際の正極用バインダー組成物の量を少なくすることができ、電池の容量の低下を抑制できると共に、正極用スラリー組成物を、塗布するのに適正な粘度に調製することが容易になり、均一な電極を得ることができる。
【0121】
正極活物質層における正極活物質の含有割合は、好ましくは90〜99.9質量%、より好ましくは95〜99質量%である。正極中の正極活物質の含有量を、上記範囲とすることにより、高い容量を示しながらも柔軟性、結着性を示すことができる。
【0122】
(二次電池正極用バインダー組成物)
二次電池正極用バインダー組成物としては、特に制限されず公知のものを用いることができる。例えば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリアクリル酸誘導体、ポリアクリロニトリル誘導体などの樹脂や、アクリル系軟質重合体、ジエン系軟質重合体、オレフィン系軟質重合体、ビニル系軟質重合体等の軟質重合体を用いることができる。これらは単独で使用しても、これらを2種以上併用してもよい。
【0123】
正極には、上記成分のほかに、さらに前述の電解液分解抑制等の機能を有する電解液添加剤等の他の成分が含まれていてもよい。これらは電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られない。
【0124】
集電体は、前述の二次電池用負極に使用される集電体を用いることができ、電気導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料であれば特に制限されないが、二次電池正極用としてはアルミニウムが特に好ましい。
【0125】
正極活物質層の厚みは、通常5〜300μmであり、好ましくは10〜250μmである。正極活物質層の厚みが上記範囲にあることにより、負荷特性及びエネルギー密度共に高い特性を示す。
正極は、前述の二次電池用負極と同様に製造することができる。
【0126】
(セパレーター)
セパレーターは気孔部を有する多孔性基材であって、使用可能なセパレーターとしては、(a)気孔部を有する多孔性セパレーター、(b)片面または両面に高分子コート層が形成された多孔性セパレーター、または(c)無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート層が形成された多孔性セパレーターが挙げられる。これらの非制限的な例としては、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリオレフィン系、またはアラミド系多孔性セパレーター、ポリビニリデンフルオリド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルまたはポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン共重合体などの高分子フィルム、さらにコート層を有するセパレーター、または無機フィラー、無機フィラー用分散剤からなる多孔膜層がコートされたセパレーターなどがある。
【0127】
(電解液)
本発明に用いられる電解液は、特に限定されないが、例えば、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解したものが使用できる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどのリチウム塩が挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF、LiClO、CFSOLiは好適に用いられる。これらは、単独、または2種以上を混合して用いることができる。支持電解質の量は、電解液に対して、通常1質量%以上、好ましくは5質量%以上、また通常は30質量%以下、好ましくは20質量%以下である。支持電解質の量が少なすぎても多すぎてもイオン導電度は低下し電池の充電特性、放電特性が低下する。
【0128】
電解液に使用する溶媒としては、支持電解質を溶解させるものであれば特に限定されないが、通常、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびメチルエチルカーボネート(MEC)などのアルキルカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチルなどのエステル類、1,2−ジメトキシエタン、およびテトラヒドロフランなどのエーテル類;スルホラン、およびジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類;が用いられる。特に高いイオン伝導性が得易く、使用温度範囲が広いため、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートが好ましい。これらは、単独、または2種以上を混合して用いることができる。また、電解液には添加剤を含有させて用いることも可能である。また、添加剤としてはビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート系の化合物が好ましく、中でもビニレンカーボネートがより好ましい。電解液にビニレンカーボネートを含有させることにより、プロパルギル含有化合物とビニレンカーボネートが、負極活物質上で分解を促進し、電解液そのものの分解を抑制することができる。電解液中のビニレンカーボネートの含有割合は、0.01〜8容量%が好ましい。
【0129】
上記以外の電解液としては、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質や、硫化リチウム、LiI、LiNなどの無機固体電解質を挙げることができる。
【0130】
(二次電池の製造方法)
本発明の二次電池の製造方法は、特に限定されない。例えば、上述した負極と正極とをセパレーターを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口する。さらに必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をすることもできる。電池の形状は、ラミネートセル型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型などいずれであってもよい。
【実施例】
【0131】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例における部および%は、特記しない限り質量基準である。実施例および比較例において、各種物性は以下のように評価した。
【0132】
<スラリーの分散安定性>
実施例および比較例で製造する二次電池負極用バインダー組成物について、スラリー調製時の粘度への影響を以下のように評価した。
バインダー組成物を添加する前のスラリー粘度η0(mPa・s)とバインダー組成物を添加した後のスラリー粘度η1(mPa・s)を、25℃の環境下で、B型粘度計(60rpm、ローターNo.4)にて測定し、バインダー添加前後のスラリー粘度変化η1/η0×100(%)を算出し、分散安定性の評価指針とした。この数値が小さいほど、分散安定性に優れていることを示す。
【0133】
<密着強度:負極活物質層のピール強度>
実施例および比較例で製造する二次電池用負極を長さ100mm、幅10mmの長方形に切り出して試験片とし、負極活物質層面を下にして負極活物質層表面にセロハンテープ(JIS Z1522 2009に規定されるもの)を貼り付け、集電体の一端を垂直方向に引張り速度50mm/分で引張って剥がしたときの応力を測定した(なお、セロハンテープは試験台に固定されている。)。測定を3回行い、その平均値を求めてこれをピール強度とした。ピール強度が大きいほど負極活物質層の集電体への結着力が大きい、すなわち密着強度が大きいことを示す。
【0134】
また、後述する高温サイクル特性試験後の負極についても、上記と同様にして密着強度の評価を行った。
【0135】
<耐久性:高温保存特性>
実施例および比較例で製造するリチウムイオン二次電池用負極を用いて、ラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を作製し、25℃の環境下で24時間静置した。その後に、25℃の環境下で、0.1Cの定電流法によって、4.2Vまで充電し、3.0Vまで放電する充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。さらに、25℃の環境下で、4.2Vに充電し、60℃、7日間保存した後、0.1Cの定電流法によって、4.2Vまで充電し、3.0Vまで放電する充放電の操作を行い、高温保存後の容量C1を測定した。高温保存特性は、ΔC=C1/C0×100(%)で示す容量変化率にて評価した。この値が高いほど高温保存特性に優れることを示す。
【0136】
<耐久性:高温サイクル特性>
実施例および比較例で製造するリチウムイオン二次電池用負極を用いて、ラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を作製し、25℃の環境下で24時間静置した。その後に、25℃の環境下で、0.1Cの定電流法によって、4.2Vまで充電し、3.0Vまで放電する充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。さらに、60℃環境下で、0.1Cの定電流法によって、4.2Vまで充電し、3.0Vまで放電する充放電を繰り返し、100サイクル後の容量C2を測定した。高温サイクル特性は、ΔC=C2/C0×100(%)で示す容量変化率にて評価した。この値が高いほど高温サイクル特性に優れることを示す。
【0137】
<耐久性:高温サイクル特性試験後の極板の膨らみ率>
上記の高温サイクル特性試験後の負極について、極板の膨らみ率を下記の式から算出した。この値が低いほど耐久性が高いことを意味している。
数1
極板の膨らみ率=|試験前の負極活物質層の厚み−試験後の負極活物質層の厚み|/試験前の負極活物質層の厚み×100
【0138】
<低温出力特性>
実施例および比較例で製造するリチウムイオン二次電池用負極を用いて、ラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を作製し、25℃の環境下で、24時間静置した後に、0.1Cの定電流法により、4.2Vまで充電し、3.0Vまで放電する充放電の操作を行った。その後、25℃の環境下で、0.1Cの定電流法により50%充電状態(SOC50%)まで充電し、電圧V(V)を測定した。次いで、−25℃の環境下で、電圧V(V)から放電レート0.1Cで放電し、放電10秒後の電圧V10を測定した。低温出力特性は、ΔV=V−V10(V)で示す電圧変化にて評価し、この値が小さいほど低温出力特性に優れることを示す。
【0139】
(実施例1)
(バインダー組成物の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33部、イタコン酸4部、スチレン63部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4部、イオン交換水150部及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、バインダーを含む水系分散液を得た。なお、バインダーのガラス転移温度は10℃であった。
【0140】
上記バインダーを含む水系分散液に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った後、30℃以下まで冷却し、バインダー固形分100部に対し、プロパルギル基含有化合物として、ベンゼンスルホン酸プロパルギルを3部添加し、バインダー組成物を得た。
【0141】
(二次電池負極用スラリー組成物の製造)
ディスパー付きのプラネタリーミキサーに、負極活物質としてBET比表面積5m/gの天然黒鉛(平均粒子径:24.5μm)を100部、カルボキシメチルセルロース(日本製紙ケミカル社製、MAC350HC)1%水溶液を固形分相当量で1部をそれぞれ加え、イオン交換水で固形分濃度55%に調整した後、25℃で60分混合した。次に、イオン交換水で固形分濃度52%に調整した後、さらに25℃で15分混合し混合液を得た。
【0142】
上記混合液に、上記バインダーを1部(固形分基準)、及びイオン交換水を入れ、最終固形分濃度42%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して流動性の良い二次電池負極用スラリー組成物を得た。スラリーの分散安定性を上記のように評価した。
【0143】
(電池の製造)
上記二次電池負極スラリー組成物を、コンマコーターで、厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、60℃で1分間加熱処理し、次いで120℃で1分間加熱処理して電極原反を得た。この電極原反をロールプレスで圧延して負極活物質層の厚みが80μmの二次電池用負極を得た。
【0144】
正極活物質として、体積平均粒子径0.5μmでオリビン結晶構造を有するLiFePOを100部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースの1%水溶液(CMC、第一工業製薬株式会社製「BSH−12」)を固形分相当で1部、結着剤としてガラス転移温度が−40℃で、数平均粒子径が0.20μmのアクリレート重合体(アクリル酸2−エチルヘキシル78質量%、アクリロニトリル20質量%、メタクリル酸2質量%を含む単量体混合物を乳化重合して得られる共重合体)の40%水分散体を固形分相当で5部、及びイオン交換水で全固形分濃度が40%となるようにプラネタリーミキサーにより混合し、正極の電極組成物層用スラリーを調製した。上記二次電池正極スラリー組成物を、コンマコーターで、厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が200μm程度になるように塗布し、60℃で1分間加熱処理し、次いで120℃で1分間加熱処理して二次電池用正極を得た。
【0145】
単層のポリプロピレン製セパレーター(幅65mm、長さ500mm、厚さ25μm、乾式法により製造、気孔率55%)を直径18mmの円形に切り抜いた。
【0146】
上記得られたリチウムイオン二次電池用正極を、集電体面がアルミ包材外装に接するように配置した。正極の正極活物質層側の面上に、セパレーターを配置した。さらに、セパレーター上に上記得られたリチウムイオン二次電池用負極を、負極活物質層側の面がセパレーターに対向するよう配置した。この包材の中に、電解液を空気が残らないように注入した。さらに、アルミ包材の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミ外装を閉口し、リチウムイオン二次電池を製造した。なお、電解液は、1.0M LiPF(EC/DEC=1/2容量比)にVC(ビニレンカーボネート)を2容量%添加したものを用いた。
【0147】
得られた負極および二次電池について、前記のように密着強度、耐久性、低温出力特性を評価した。
【0148】
(実施例2)
ベンゼンスルホン酸プロパルギルの添加量を、バインダー固形分100部に対し7部とした以外は、実施例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0149】
(実施例3)
ベンゼンスルホン酸プロパルギルの添加量を、バインダー固形分100部に対し、15部とした以外は、実施例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0150】
(実施例4)
プロパルギル基含有化合物として、ベンゼンスルホン酸プロパルギルに代えてアクリル酸プロパルギルを用いた以外は、実施例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0151】
(実施例5)
プロパルギル基含有化合物として、ベンゼンスルホン酸プロパルギルに代えてメタアクリル酸プロパルギルを用いた以外は、実施例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0152】
(実施例6)
バインダー調製時のコモノマーとして、イタコン酸に代えてメタアクリル酸を用いた以外は、実施例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0153】
(実施例7)
負極活物質として、BET比表面積5m/gの天然黒鉛(平均粒子径:24.5μm)に代えてBET比表面積8m/gの天然黒鉛(平均粒子径:22μm)を用いた以外は、実施例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0154】
(実施例8)
負極活物質として、BET比表面積5m/gの天然黒鉛(平均粒子径:24.5μm)に代えてBET比表面積15m/gの天然黒鉛(平均粒子径:15μm)を用いた以外は、実施例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0155】
(実施例9)
負極活物質として、BET比表面積5m/gの天然黒鉛(平均粒子径:24.5μm)に代えてBET比表面積5m/gの天然黒鉛(平均粒子径:24.5μm)を80部およびBET比表面積6.5m/gのSiOC(平均粒子径:10μm)を20部用いた以外は、実施例1と同様とした。なお、負極活物質のBET比表面積は、5.2m/gであった。結果を表1に示す。
【0156】
(実施例10)
負極活物質として、BET比表面積5m/gの天然黒鉛(平均粒子径:24.5μm)に代えてBET比表面積5.0m/gの天然黒鉛(平均粒子径:24.5μm)を50部およびBET比表面積6.5m/gのSiOC(平均粒子径:10μm)を50部用いた以外は、実施例1と同様とした。なお、負極活物質のBET比表面積は、5.8m/gであった。結果を表1に示す。
【0157】
(実施例11)
プロパルギル基含有化合物として、ベンゼンスルホン酸プロパルギルに代えてジプロパルギルカーボネートを用いた以外は、実施例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0158】
(実施例12)
バインダー調製時のコモノマーとして、イタコン酸を用いなかった以外は、実施例1と同様とした。なお、バインダーのガラス転移温度は7℃であった。結果を表1に示す。
【0159】
(比較例1)
バインダー組成物にプロパルギル基含有化合物を配合しなかった以外は、実施例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0160】
(比較例2)
バインダー組成物にプロパルギル基含有化合物を配合しなかった以外は、実施例10と同様とした。結果を表1に示す。
【0161】
(比較例3)
ベンゼンスルホン酸プロパルギルの添加量を、バインダー固形分100部に対し、25部とした以外は、実施例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0162】
(比較例4)
ベンゼンスルホン酸プロパルギルに代えて2−オクチン酸メチルを用いた以外は、実施例1と同様とした。結果を表1に示す。
【0163】
【表1】
【0164】
バインダー組成物にプロパルギル基含有化合物を配合することで、集電体と電極活物質層との間の密着性が向上し、特にサイクル特性、低温出力特性が改善された二次電池が得られた。
【0165】
一方、プロパルギル基含有化合物を配合しない場合(比較例1,2)には、上記の効果は奏されなかった。また、プロパルギル基含有化合物の配合量が多すぎる場合(比較例3)には、スラリーが増粘しやすく、得られる負極の均一性が低下し、出力特性が低下する。また、プロパルギル基(H−C≡C−CH−)によく似た構造のアルケニル基を有する2−オクチン酸メチルを用いた場合(比較例4)でも、上記の効果は奏されなかった。