特許第6115471号(P6115471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

特許6115471ネガ型感光性樹脂組成物、隔壁、ブラックマトリックス及び光学素子
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115471
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】ネガ型感光性樹脂組成物、隔壁、ブラックマトリックス及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20170410BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20170410BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20170410BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20170410BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20170410BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20170410BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20170410BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20170410BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G03F7/027 515
   G03F7/033
   G03F7/004 505
   G03F7/031
   G03F7/004 501
   G03F7/027 502
   G02F1/1335 500
   G02B5/20 101
   H05B33/02
   H05B33/12 B
   H05B33/22 Z
   H05B33/14 A
【請求項の数】15
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2013-543053(P2013-543053)
(86)(22)【出願日】2012年11月9日
(86)【国際出願番号】JP2012079177
(87)【国際公開番号】WO2013069789
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年8月13日
(31)【優先権主張番号】特願2011-247437(P2011-247437)
(32)【優先日】2011年11月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小尾 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 光太郎
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−085904(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/013816(WO,A1)
【文献】 特開2009−075446(JP,A)
【文献】 特開2003−330166(JP,A)
【文献】 特開2009−180874(JP,A)
【文献】 特開2011−209443(JP,A)
【文献】 特開2011−170197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖に芳香族環を含み、分子中に酸性基とエチレン性二重結合とを有するアルカリ可溶性樹脂(A1)と、主鎖に芳香族環を含まず、分子中に酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂(A2)と、黒色有機顔料(B)と、光重合開始剤(C)とを含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、該組成物における固形分酸価が10〜50mgKOH/gであり、前記アルカリ可溶性樹脂(A1)と前記アルカリ可溶性樹脂(A2)の含有割合が、アルカリ可溶性樹脂(A1):アルカリ可溶性樹脂(A2)で示される質量比として99〜85:1〜15であることを特徴とするネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中のアルカリ可溶性樹脂(A1)とアルカリ可溶性樹脂(A2)の合計の含有割合が、5〜80質量%である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の黒色有機顔料(B)の含有割合が、20〜65質量%である、請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルカリ可溶性樹脂(A1)及びアルカリ可溶性樹脂(A2)のいずれかの質量平均分子量が10,000以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記光重合開始剤(C)が下式(1)で表される化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化1】
式(1)中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜20のフェニル基又はベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜20のフェノキシ基を示す。
は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜20のフェニル基、炭素原子数2〜20のアルカノイル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンゾイル基、炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基又はベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のフェノキシカルボニル基を示す。
【請求項6】
前記光重合開始剤(C)の全量中の前記式(1)で表される化合物の含有割合が、85〜95質量%であり、前記ネガ型感光性樹脂組成物の全固形分量中の前記光重合開始剤(C)の含有割合が、3.5〜7質量%である請求項5に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
架橋剤(D)をさらに含み、該架橋剤(D)が1分子中に2つ以上のエチレン性二重結合を有し、酸性基を有しない化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
撥インク剤(E)をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記撥インク剤(E)が、1分子中に下式(3)で表される基又は下式(4)で表される基を有する側鎖と、エチレン性二重結合を有する側鎖とを有する撥インク剤(E)である、請求項8に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
−CFXR (3)
式(3)中、Xは水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Rはエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素原子数1〜20のフルオロアルキル基、又はフッ素原子を示す。
−(SiR1011O)−SiR121314 (4)
式(4)中、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を示し、R14は、水素原子、又は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子もしくは窒素原子を含んでいてもよいアルキル基を示し、nは1〜200の整数を示す。
【請求項10】
前記撥インク剤(E)が、側鎖に基(3)を有し、主鎖がオルガノポリシロキサン鎖の化合物である、請求項8に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
−CFXR (3)
式(1)中、Xは水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Rは、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素原子数1〜20のフルオロアルキル基、又はフッ素原子を示す。
【請求項11】
溶媒(F)をさらに含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項12】
画素形成用に基板表面を複数の区画に仕切るように形成した隔壁であって、請求項1〜10のいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜からなることを特徴とする隔壁。
【請求項13】
請求項12に記載の隔壁が、基板表面を複数の区画に仕切るように形成されてなるブラックマトリックス。
【請求項14】
前記隔壁が、該隔壁の膜厚方向に貫通する貫通孔を有し、該貫通孔における水平方向の最大孔径が20μm以下であり、最小孔径が1μm以上である請求項13に記載のブラックマトリックス。
【請求項15】
基板表面に複数の画素と隣接する画素間に位置する隔壁とを有する光学素子であって、前記隔壁が請求項13又は14に記載のブラックマトリックスからなることを特徴とする光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物、これを用いた隔壁及びブラックマトリックス、ならびに、該ブラックマトリックスを有する光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置である液晶ディスプレイにおいて、光学素子であるカラーフィルタをTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)アレイ基板側に形成するカラーフィルタ・オン・アレイの技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
カラーフィルタ・オン・アレイ型のカラーフィルタでは、画素間を仕切るブラックマトリックスがアレイ基板上に形成されることから、このタイプのカラーフィルタはブラックマトリックス・オン・アレイ型(以下、「BOA型」ともいう。)のカラーフィルタとも呼ばれている。BOA型のカラーフィルタは、カラーフィルタとTFTアレイ基板が別体で製造され、位置合わせに精度が必要とされる通常のカラーフィルタと比較して、位置合わせなしで精度が確保できる。そのため、隔壁を細線化でき開口率が向上し、低消費電力と高輝度を両立した液晶表示装置が得られる。
【0003】
BOA型のカラーフィルタでは、通常の対向基板側に製造するカラーフィルタと異なり、TFT等のスイッチング素子と画素電極を接続するために、隔壁にコンタクトホール(contact hole)と呼ばれる貫通孔を形成する必要がある。さらに、画素形成部すなわち表示部の面積を増やすために隔壁の細線化が求められており、該隔壁に形成されるコンタクトホールのサイズも微小化が要求されている。
【0004】
また、BOA型のカラーフィルタにおいては、コンタクトホール以外での画素電極と配線やTFT等のスイッチング素子の絶縁性を確保するために、隔壁には高抵抗かつ低誘電率が求められている。従来、隔壁には黒色着色剤としてカーボンブラックを使用していたが、カーボンブラックは低抵抗かつ高誘電率であるため使用量を多くできず、充分な遮光性と電気特性の両立が困難であった。一方、赤、緑、青等を混合した黒色有機顔料や、可視光領域を広く吸収する単一の黒色有機顔料は、遮光性はカーボンブラックに劣るが、高抵抗及び低誘電率であるため含有量を多くでき、遮光性と電気特性の両立が可能となる。
【0005】
一方、光学素子である、有機EL(Electro−Luminescence)素子においては、コントラストの向上や反射の防止の観点から、画素間を仕切る隔壁からなるブラックマトリックスが使用される。電気特性の観点から、隔壁には高抵抗かつ低誘電率が求められることがある。
【0006】
特許文献2には、BOA型のカラーフィルタ等に用いる膜厚が、1.5μm以上の隔壁においてパターン安定性に優れる、遮光性分散顔料を含有するブラックレジスト用感光性樹脂組成物が記載されている。
特許文献3には、有機顔料を含有する画素形成用等の感光性樹脂組成物において、該組成物中での有機顔料の分散性を向上させるために、酸基あるいはアミノ基を有する特定の顔料分散剤を使用した感光性樹脂組成物が記載されている。
特許文献4には、光重合性化合物と黒色顔料とを含有するEL素子遮光膜形成用の感光性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−105926号公報
【特許文献2】特開2004−361736号公報
【特許文献3】特開2010−106237号公報
【特許文献4】特開2007−249045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らの知見によれば、特許文献2に記載の感光性樹脂組成物では、充分な遮光性を有する隔壁を製造する際に、高感度化と微細なコンタクトホールの形成はトレードオフの関係にあり、これらを両立することは困難である。
さらに、本発明者らの知見によれば、特許文献3に記載の感光性樹脂組成物は、有機溶媒中での有機顔料の分散性が不充分であり、有機溶媒を含む感光性樹脂組成物の貯蔵安定性が不充分である。
また、本発明者らの知見によれば、特許文献4に記載の感光性樹脂組成物では、黒色顔料としてカーボンブラックを使用しており、実施例では、アルカリ可溶性樹脂として主鎖に芳香族環を含まないアクリル共重合体を使用しているため、隔壁のラインの解像度が不充分である。
【0009】
さらに、ブラックマトリックスの一般的な形成方法であるフォトリソ法を用いた場合、黒色有機顔料を多く含む感光性樹脂組成物をアルカリ現像液で現像すると、アルカリ現像液への黒色有機顔料の分散性が劣るために、顔料が凝集し沈降するという問題があった。通常、アルカリ現像液はリサイクルされており、アルカリ現像液中での顔料分散性が悪いと、容易に凝集が起こり、フィルタ詰まりを生じやすくなる。
【0010】
本発明は、黒色有機顔料を含有するネガ型感光性樹脂組成物において、微細なラインパターンと微小なコンタクトホールをともに有する隔壁の形成が可能であり、現像に用いるアルカリ現像液に対して、含有する黒色有機顔料の分散性が良好であるとともに、それ自体の貯蔵安定性が良好なネガ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、該ネガ型感光性樹脂組成物を硬化することにより得られるBOA型の光学素子や有機EL素子に適用可能な隔壁及びブラックマトリックスならびに該ブラックマトリックスを有する光学素子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の[1]〜[15]の構成を有するネガ型感光性樹脂組成物、隔壁、ブラックマトリックス及び光学素子を提供する。
[1]主鎖に芳香族環を含み、分子中に酸性基とエチレン性二重結合とを有するアルカリ可溶性樹脂(A1)と、主鎖に芳香族環を含まず、分子中に酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂(A2)と、黒色有機顔料(B)と、光重合開始剤(C)とを含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、該組成物における固形分酸価が10〜50mgKOH/gであり、前記アルカリ可溶性樹脂(A1)と前記アルカリ可溶性樹脂(A2)の含有割合が、アルカリ可溶性樹脂(A1):アルカリ可溶性樹脂(A2)で示される質量比として99〜85:1〜15であことを特徴とするネガ型感光性樹脂組成物。
[2]前記ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中のアルカリ可溶性樹脂(A1)とアルカリ可溶性樹脂(A2)の合計の含有割合が、5〜80質量%である、上記[1]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[3]前記ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の黒色有機顔料(B)の含有割合が、20〜65質量%である、上記[1]又は[2]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[4]前記アルカリ可溶性樹脂(A1)及びアルカリ可溶性樹脂(A2)のいずれかの質量平均分子量が10,000以上である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[5]前記光重合開始剤(C)が下式(1)で表される化合物を含む、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化1】
式(1)中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜20のフェニル基又はベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜20のフェノキシ基を示す。
は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜20のフェニル基、炭素原子数2〜20のアルカノイル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンゾイル基、炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基又はベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のフェノキシカルボニル基を示す。
[6]前記光重合開始剤(C)の全量中の前記式(1)で表される化合物の含有割合が、85〜95質量%であり、前記ネガ型感光性樹脂組成物の全固形分量中の前記光重合開始剤(C)の含有割合が、3.5〜7質量%である上記[5]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[7]架橋剤(D)をさらに含み、該架橋剤(D)が1分子中に2つ以上のエチレン性二重結合を有し、酸性基を有しない化合物である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[8]撥インク剤(E)をさらに含む、上記[1]〜[7]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[9]前記撥インク剤(E)が、1分子中に下式(3)で表される基又は下式(4)で表される基を有する側鎖と、エチレン性二重結合を有する側鎖とを有する撥インク剤(E)である、上記[8]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
−CFXR (3)
式(3)中、Xは水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Rは、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素原子数1〜20のフルオロアルキル基、又はフッ素原子を示す。
−(SiR1011O)−SiR121314 (4)
式(4)中、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を示し、R14は、水素原子、又は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子もしくは窒素原子を含んでいてもよいアルキル基を示し、nは1〜200の整数を示す。
[10]前記撥インク剤(E)が、側鎖に基(3)を有し、主鎖がオルガノポリシロキサン鎖の化合物である、上記[8]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
−CFXR (3)
式(1)中、Xは水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Rはエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素原子数1〜20のフルオロアルキル基、又はフッ素原子を示す。
[11]溶媒(F)をさらに含む、上記[1]〜[10]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[12]画素形成用に基板表面を複数の区画に仕切るように形成した隔壁であって、上記[1]〜[10]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜からなることを特徴とする隔壁。
[13]上記[12]に記載の隔壁が、基板表面を複数の区画に仕切るように形成されてなるブラックマトリックス。
[14]前記隔壁が、該隔壁の膜厚方向に貫通する貫通孔を有し、該貫通孔における水平方向の最大孔径が20μm以下であり、最小孔径が1μm以上である上記[13]に記載のブラックマトリックス。
[15]基板表面に複数の画素と隣接する画素間に位置する隔壁とを有する光学素子であって、前記隔壁が上記[13]又は[14]に記載のブラックマトリックスからなることを特徴とする光学素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、黒色有機顔料を含有するネガ型感光性樹脂組成物において、微細なラインパターンと微小なコンタクトホールをともに有する隔壁の形成が可能であり、現像に用いるアルカリ現像液に対して、含有する黒色有機顔料の分散性が良好であるとともに、それ自体の貯蔵安定性が良好なネガ型感光性樹脂組成物が提供できる。
また、本発明によれば、該ネガ型感光性樹脂組成物を硬化することにより得られるBOA型の光学素子に適用可能な隔壁及びブラックマトリックスならびに該ブラックマトリックスを有する光学素子が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書における「酸価」とは、試料1g中の樹脂酸等を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。「固形分酸価」とは、試料中の樹脂や顔料等の全固形分1g中の樹脂酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。いずれも、JIS K 0070の測定方法に準じて測定することができる値であり、単位はmgKOH/gである。
本明細書における「(メタ)アクリロイル…」とは、「メタアクリロイル…」と「アクリロイル…」の総称である。(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリル…、(メタ)アクリル樹脂もこれと同様である。
【0014】
本明細書における「側鎖」とは、繰り返し単位が主鎖を構成する重合体において、主鎖を構成する炭素原子に結合する、水素原子又はハロゲン原子以外の基である。
本明細書における式(1)で表される化合物を、化合物(1)という。他の化合物も同様である。
本明細書における式(3)で表される基を、基(3)という。他の基も同様である。
本明細書における「全固形分」とは、ネガ型感光性樹脂組成物が含有する成分のうち、隔壁形成成分をいい、ネガ型感光性樹脂組成物を140℃で24時間加熱して溶媒を除去した、残存物である。具体的には、溶媒(F)等の隔壁形成過程における、加熱等により揮発する揮発性成分以外の全成分を示す。なお、全固形分の量は仕込み量からも計算できる。
本明細書においては、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布した膜を「塗膜」、それを乾燥させた状態を「膜」、さらに、それを硬化させて得られる膜を「硬化膜」という。
基板表面を複数の区画に仕切るように形成された硬化膜を「隔壁」という。
ネガ型感光性樹脂組成物が黒色有機顔料を含有することから、「隔壁」が基板表面を複数の区画に仕切るように形成されたものを「ブラックマトリックス」とする。
【0015】
本明細書において、隔壁の「表面」は、隔壁の上面のみを示す用語として用いる。したがって、隔壁の「表面」には、隔壁の側面は含まれない。
本明細書における「インク」とは、乾燥硬化した後に、例えば光学的、電気的に機能を有する液状組成物を総称するものであり、従来から用いられている着色材料に限定されるものではない。
また、上記インクを注入して形成される「画素」についても同様に、隔壁で仕切られたそれぞれに光学的、電気的機能を有する区分を表すものとして用いられる。
本明細書における撥インク性とは、上記インクをはじくために、撥水性と撥油性の両方を適度に有する性質をいい、例えば、後述の方法で評価できる。
【0016】
本明細書において、「コンタクトホール」とは、隔壁の膜厚方向に素子と電極を接続するために設けられる貫通孔をいう。
微小なコンタクトホールの、「微小」とは、該コンタクトホールを構成する貫通孔における水平方向の最大孔径が概ね20μm以下のサイズをいう。また、貫通孔における水平方向の最大孔径とは、貫通孔の水平断面のうちで最大面積を有する断面における長径をいい、最小孔径とは、貫通孔の水平断面のうちで最小面積を有する断面における短径をいう。
本明細書において、「黒色有機顔料」とは、広く可視光領域の波長(400〜800nm)の光を吸収する、単独あるいは複数の有機顔料から構成される着色剤をいう。
以下、本発明について詳しく説明する。なお、本明細書において特に説明のない場合、%は質量%を表す。
【0017】
[アルカリ可溶性樹脂(A)]
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、主鎖に芳香族環を含み、分子中に酸性基とエチレン性二重結合とを有するアルカリ可溶性樹脂(A1)及び、主鎖に芳香族環を含まず、分子中に酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂(A2)を含むアルカリ可溶性樹脂(A)を含有する。アルカリ可溶性樹脂(A)は、アルカリ可溶性樹脂(A1)、アルカリ可溶性樹脂(A2)以外のアルカリ可溶性樹脂を含んでもよいが、アルカリ可溶性樹脂(A1)及びアルカリ可溶性樹脂(A2)のみで構成されることが好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂(A1)及びアルカリ可溶性樹脂(A2)のいずれかの質量平均分子量が10,000以上であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂(A1)及びアルカリ可溶性樹脂(A2)の組み合わせにおいて、質量平均分子量の上限は特に制限されず、各アルカリ可溶性樹脂においてそれぞれ後述する上限と同様にできる。
【0018】
ネガ型感光性樹脂組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂(A1)及びアルカリ可溶性樹脂(A2)は、それぞれから1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、アルカリ可溶性樹脂(A1)及びアルカリ可溶性樹脂(A2)のいずれかの質量平均分子量は10,000以上であることが好ましい。アルカリ可溶性樹脂全量中の質量平均分子量が10,000以上であるアルカリ可溶性樹脂の含有量は、5質量%以上が好ましい。質量平均分子量が10,000以上のアルカリ可溶性樹脂をアルカリ可溶性樹脂全量中の5質量%以上用いると、黒色有機顔料(B)に対する吸着点の多いアルカリ可溶性樹脂が増加し、アルカリ現像液における黒色有機顔料(B)の分散安定化に寄与できる。
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中のアルカリ可溶性樹脂(A)の含有割合は、5〜80質量%が好ましく、10〜60質量%が特に好ましい。なお、アルカリ可溶性樹脂(A)がアルカリ可溶性樹脂(A1)及びアルカリ可溶性樹脂(A2)以外のアルカリ可溶性樹脂を含む場合、その割合はアルカリ可溶性樹脂(A)の全量に対して、10質量%以下とする。
【0019】
上記の通りアルカリ可溶性樹脂(A)は、アルカリ可溶性樹脂(A1)及びアルカリ可溶性樹脂(A2)のみから構成され、各樹脂の含有割合が、アルカリ可溶性樹脂(A1):アルカリ可溶性樹脂(A2)の質量比として99〜80:1〜20とすることが好ましく、97〜85:3〜15が特に好ましい。アルカリ可溶性樹脂(A1)及びアルカリ可溶性樹脂(A2)の含有割合が上記範囲であると、ネガ型感光性樹脂組成物の現像性が良好であり、さらに、現像後のアルカリ現像液における黒色有機顔料(B)の分散性も良好となる。
【0020】
アルカリ可溶性樹脂(A)の酸価としては、10〜350mgKOH/gが好ましく、20〜300mgKOH/gがより好ましく、30〜250mgKOH/gが特に好ましい。ネガ型感光性樹脂組成物中の固形分酸価は、アルカリ可溶性樹脂(A)の酸価と配合量等により決定される。アルカリ可溶性樹脂(A)の酸価が上記範囲内であると、ネガ型感光性樹脂組成物中の固形分酸価を本発明の範囲内、すなわち10〜50mgKOH/gに調整し易い。
【0021】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、後述するように得られる隔壁を高抵抗及び低誘電率とするために黒色有機顔料(B)を含有する。本発明においては、該黒色有機顔料(B)を含有するネガ型感光性樹脂組成物に、アルカリ可溶性樹脂(A)として、アルカリ可溶性樹脂(A1)とアルカリ可溶性樹脂(A2)の両方を配合することにより、黒色有機顔料(B)のネガ型感光性樹脂組成物中での分散安定性を維持しながらアルカリ現像液中での分散性を向上することを可能にした。なお、該分散性向上の理由は以下のように推測される。
【0022】
フォトリソ法によりネガ型感光性樹脂組成物を硬化させてブラックマトリックスを製造する場合、光の透過率が低いために隔壁底部に未硬化部分が残りやすく、パターン形状の維持が難しい。そこで、一般にブラックマトリックス用のネガ型感光性樹脂組成物には、主鎖に芳香族環を含み、分子中に酸性基とエチレン性二重結合とを有するアルカリ可溶性樹脂(A1)が用いられる。一方、ネガ型感光性樹脂組成物には、リサイクル使用されるアルカリ現像液中での顔料分散性が求められるが、本発明者らの知見では、アルカリ可溶性樹脂としてアルカリ可溶性樹脂(A1)のみを用いた場合、黒色有機顔料(B)のアルカリ現像液への分散性は不充分なことがある。
【0023】
これに対して、アルカリ可溶性樹脂(A1)と、主鎖に芳香族環を含まず、分子中に酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂(A2)とを併用することで、黒色有機顔料(B)のアルカリ現像液への分散性を向上できることを確認した。その詳細な機構は不明であるが、アルカリ可溶性樹脂(A2)は主鎖に剛直な芳香族環を含まないため、アルカリ可溶性樹脂(A)の全体として、黒色有機顔料(B)を緻密に覆いやすくなり、黒色有機顔料(B)のアルカリ現像液への分散性を向上させることができると推測している。
【0024】
従来のカーボンブラックを用いた場合、アルカリ現像液への分散性に起因する問題は生じにくい。原因は明確ではないが、カーボンブラックの表面は、酸化処理によりカルボキシ基を有しており、アルカリ現像液中では、該カルボキシ基が解離してアニオンとなる。静電反発により分散が安定化するものと推測される。一方、黒色有機顔料(B)は、顔料表面にカルボキシ基を有しないため、ネガ型感光性樹脂組成物のように有機溶媒中では、分散剤の立体反発効果により良好な顔料分散性を示すが、アルカリ現像液中ではカルボキシ基のように静電反発により分散を安定化させる基を持たないため、凝集及び沈降が起こると推測している。
【0025】
(アルカリ可溶性樹脂(A1))
本発明におけるアルカリ可溶性樹脂(A1)は、主鎖に芳香族環を含み、分子中に酸性基とエチレン性二重結合とを有する感光性樹脂である。アルカリ可溶性樹脂(A1)が分子中にエチレン性二重結合を有することで、ネガ型感光性樹脂組成物の露光部は、光重合開始剤から発生したラジカルにより重合して硬化する。硬化した露光部分はアルカリ現像液にて除去されない。また、アルカリ可溶性樹脂(A1)が分子中に酸性基を有することで、アルカリ現像液にて、硬化していないネガ型感光性樹脂組成物の未露光部を選択的に除去することができる。その結果、隔壁を形成することができる。なお、アルカリ可溶性樹脂(A1)は実質的に、後述の撥インク剤(E)が有する基(1)又は基(2)を含有しないことが好ましい。
【0026】
アルカリ可溶性樹脂(A1)の主鎖に含まれる芳香族環としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等の二価の芳香族環構造が挙げられる。芳香族環における炭素原子は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子に置換されていてもよい。芳香族環としてはフェニレン基が好ましく、2個のフェニレン基が結合したビフェニル基が特に好ましい。
【0027】
前記酸性基としては、特に制限されないが、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記エチレン性二重結合としては、特に制限されないが、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基、ビニルオキシアルキル基等の付加重合性を有する二重結合が挙げられ、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、エチレン性二重結合中の水素原子の一部又は全てが、アルキル基、好ましくはメチル基で置換されていてもよい。
【0028】
アルカリ可溶性樹脂(A1)としては、特に限定されないが、主鎖に芳香族環を含み、酸性基を有する側鎖とエチレン性二重結合を有する側鎖とを有する樹脂(A1−1)、主鎖に芳香族環を含むエポキシ樹脂に、酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂(A1−2)、酸性基を有する側鎖とエチレン性二重結合を有する側鎖とを有し、重合して主鎖を構成する部分に芳香族環を含む単量体(A1−3)等が挙げられる。1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
樹脂(A1−2)は、主鎖に芳香族環を含むエポキシ樹脂と、後述するカルボキシ基とエチレン性二重結合とを有する化合物とを反応させた後に、多価カルボン酸又はその無水物とを反応させることにより合成することができる。
具体的には、主鎖に芳香族環を含むエポキシ樹脂と、カルボキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物とを反応させることにより、該エポキシ樹脂にエチレン性二重結合が導入される。次に、エチレン性二重結合が導入された主鎖に、芳香族環を含むエポキシ樹脂に多価カルボン酸又はその無水物を反応させることにより、カルボキシ基を導入することができる。
【0030】
エポキシ樹脂としては、主鎖に芳香族環を含むエポキシ樹脂であれば特に限定されない。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、下式(A1−2a)で表されるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、下式(A1−2b)で表されるエポキシ樹脂、下式(A1−2c)で表されるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0031】
【化2】
(式(A1−2a)中、vは、1〜50の整数であり、2〜10の整数が好ましい。ベンゼン環の水素原子は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、又は一部の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基、で置換されていてもよい。)
【0032】
【化3】
(式(A1−2b)中、R31、R32、R33及びR34は、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子又は炭素原子数が1〜5のアルキル基であり、wは、0〜10の整数である。)
【0033】
【化4】
(式(A1−2c)中、ベンゼン環の水素原子は、それぞれ独立に炭素原子数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、又は一部の水素原子が置換基で置換されていてもよいフェニル基、で置換されていてもよい。uは、0〜10の整数である。)
【0034】
なお、式(A1−2a)〜(A1−2c)で表されるエポキシ樹脂と、カルボキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物とを反応させた後に、多価カルボン酸無水物を反応させる場合、多価カルボン酸無水物として、ジカルボン酸無水物及びテトラカルボン酸二無水物の混合物を用いることが好ましい。ジカルボン酸無水物とテトラカルボン酸二無水物の比率を変化させることにより、分子量を制御することができる。
【0035】
カルボキシ基とエチレン性二重結合とを有する化合物としては、(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸及びこれらの塩等が好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0036】
樹脂(A1−2)は、市販品を使用することができる。市販品としては、いずれも商品名で、KAYARAD PCR−1069、K−48C、CCR−1105、CCR−1115、CCR−1159H、CCR−1235、TCR−1025、TCR−1064H、TCR−1286H、ZAR−1535H、ZAR−2001H、ZAR−2002、ZFR−1491H、ZFR−1492H、ZCR−1571H、ZCR−1569H、ZCR−1580H、ZCR−1581H、ZCR−1588H、ZCR−1642H、ZCR−1664H(以上、日本化薬社製)、EX1010(ナガセケムテックス社製)、EA−7440(新中村化学工業社製)等が挙げられる。
【0037】
樹脂(A1−2)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、式(A1−2a)〜(A1−2c)で表されるエポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂が特に好ましい。
【0038】
アルカリ可溶性樹脂(A1)が1分子中に有するエチレン性二重結合の数は、平均3個以上が好ましく、6個以上が特に好ましい。エチレン性二重結合の数が、上記範囲の下限値以上であると、露光部分が硬化性に優れ、より少ない露光量での微細なパターン形成が可能となる。
【0039】
アルカリ可溶性樹脂(A1)の質量平均分子量(Mw)は、1.5×10〜100×10が好ましく1.5×10〜30×10がより好ましく、2×10〜20×10が特に好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、500〜50×10が好ましく、500〜20×10がより好ましく、1×10〜10×10が特に好ましい。質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)が上記範囲の下限値以上であると、露光時の硬化性に優れ、上記範囲の上限値以下であると、現像性が良好である。
アルカリ可溶性樹脂(A1)の酸価は、10〜300mgKOH/gが好ましく、30〜150mgKOH/gが特に好ましい。酸価が上記範囲であると、ネガ型感光性樹脂組成物の現像性が良好になる。また、アルカリ可溶性樹脂(A1)の酸価が上記範囲であると、アルカリ可溶性樹脂(A)としての酸価を後述の範囲に調整しやすく、さらには、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分酸価を本発明の範囲に調整しやすい。
【0040】
(アルカリ可溶性樹脂(A2))
アルカリ可溶性樹脂(A2)は、主鎖に芳香族環を含まず、分子中に酸性基を有する感光性樹脂である。分子中に酸性基を有することでアルカリ水溶液に可溶となり、未露光部を溶解させることができる。
前記酸性基としては特に制限されず、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホ基、リン酸基等が挙げられるが、カルボキシ基が好ましい。1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
アルカリ可溶性樹脂(A2)は、酸性基以外に必要に応じて、側鎖にエチレン性二重結合を有してもよい。該エチレン性二重結合としては、上記アルカリ可溶性樹脂(A1)が有するエチレン性二重結合と同様である。
【0041】
アルカリ可溶性樹脂(A2)は、例えば、以下の方法で合成できる。
酸性基とエチレン性二重結合等の反応性基を有する単量体を重合させる方法、酸性基を有しない単量体と、上記酸性基を有する単量体とを共重合させる方法等が挙げられる。なお、用いる単量体はいずれも、得られる(共)重合体が、主鎖に芳香族環を有しない構造となる単量体である。ただし、得られる(共)重合体は、側鎖に芳香族環を有するものであってもよい。
上記エチレン性二重結合としては、特に制限されないが、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基、ビニルオキシアルキル基等の付加重合性を有する二重結合が挙げられ、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、エチレン性二重結合基が有する水素原子の一部又は全てが、アルキル基、好ましくはメチル基で置換されていてもよい。
【0042】
以下、アルカリ可溶性樹脂(A2)を構成することが可能な単量体と、その組み合わせを具体的に説明する。
酸性基とエチレン性二重結合等の反応性基を有する単量体としては、酸性基としてカルボキシ基を有するとともに、エチレン性二重結合を有する化合物が好ましく、(メタ)アクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸及びこれらの塩等が好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。
【0043】
酸性基を有する単量体と共重合させる、酸性基を有しない単量体としては、ベンゼン環の水素原子が、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基に置換されていてもよいスチレン、炭素原子数1〜20のアルキル基に置換されていてもよいα−メチルスチレン等の芳香族系ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル;グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸グリシジルエステル;N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のN置換マレイミド等が好ましい。これらの中でも、スチレン、エチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが特に好ましい。
【0044】
アルカリ可溶性樹脂(A2)の単量体の組み合わせとしては、酸性基を有する単量体として(メタ)アクリル酸を用い、酸性基を有しない単量体として、得られる共重合体において、側鎖にベンゼン環を有する単量体の少なくとも1種を用いる組み合わせが好ましい。アルカリ可溶性樹脂(A2)の側鎖にベンゼン環のような嵩高い構造を含むことで、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化性を充分に確保できる。
【0045】
このようなアルカリ可溶性樹脂(A2)の製造に用いる単量体の組み合わせとして、具体的には、(メタ)アクリル酸/スチレン、(メタ)アクリル酸/長鎖アルキルスチレン、(メタ)アクリル酸/スチレン/エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸/N−エチルマレイミド/ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸/N−フェニルマレイミド/ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸/スチレン/N−フェニルマレイミド/ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。このうち、パターン形状の安定性の点から、(メタ)アクリル酸/スチレン、(メタ)アクリル酸/N−エチルマレイミド/ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸/スチレン/N−フェニルマレイミド/ベンジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0046】
アルカリ可溶性樹脂(A2)を構成する単量体の組み合わせにおいて、各組み合わせにおける構成単量体のモル比は、特に制限されないが、分子量及び酸価が以下の範囲になるように調整されることが好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂(A2)が、側鎖にベンゼン環を有する場合、共重合に用いるベンゼン環を有する単量体とそれ以外の単量体のモル比を、ベンゼン環を有する単量体1モルに対して、その他の単量体を0.05〜4モル程度とすることが好ましく、0.05〜2モルが特に好ましい。
【0047】
アルカリ可溶性樹脂(A2)の質量平均分子量は、5×10〜10×10が好ましく、黒色有機顔料(B)のアルカリ現像液中での分散性安定の点から、1×10〜10×10が特に好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、1×10〜2×10が好ましく、2×10〜1×10が特に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂(A2)の酸価は、20〜300mgKOH/gの範囲が好ましく、パターン形状を維持するために、30〜250mgKOH/gの範囲にあることが特に好ましい。また、アルカリ可溶性樹脂(A2)の酸価が上記範囲であると、アルカリ可溶性樹脂(A)としての酸価を後述の範囲に調整しやすく、さらには、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分酸価を本発明の範囲に調整しやすい。
【0048】
アルカリ可溶性樹脂(A2)は、酸性基以外に必要に応じて、側鎖にエチレン性二重結合を有してもよい。側鎖へのエチレン性二重結合の導入方法は、上記アルカリ可溶性樹脂(A1)の場合と同様である。アルカリ可溶性樹脂(A2)が、1分子中に有するエチレン性二重結合の数もアルカリ可溶性樹脂(A1)の場合と同様である。
【0049】
アルカリ可溶性樹脂(A2)は、市販品を使用することができる。市販品としては、いずれも商品名で、UC−3080、UC−3900、UC−3920(東亜合成社製、アクリル酸/スチレン共重合体)、UF−5022(東亜合成社製、アクリル酸/長鎖アルキルスチレン共重合体)、MSP−9610、MSP−9611、MSP9612、MSP9617(新中村化学社製、メタクリル酸/スチレン/N−フェニルマレイミド/ベンジルメタクリレート共重合体)等が挙げられる。
【0050】
[黒色有機顔料(B)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、遮光剤として黒色有機顔料(B)を含む。
黒色有機顔料(B)としては、アントラキノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、アゾメチン系黒色顔料等が挙げられる。具体的には、C.I.ピグメントブラック1、6、7、12、20、31等の可視光領域の波長の光を広く吸収する単一の有機顔料からなる黒色有機顔料(B)が挙げられる。
【0051】
黒色有機顔料(B)としては、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料、黄色顔料等の有彩色の有機顔料の2種以上を混合して、得られる混合物が黒色となる、すなわち可視光領域の波長の光を広く吸収するように配合し、混合した黒色有機顔料(B)を用いることもできる。このような黒色有機顔料(B)の製造に使用可能な有彩色の有機顔料としては、具体的には、C.I.ピグメントブルー2、3、9、15:1、15:3、15:6、22、25:4、60、61、66、80、C.I.ピグメントレッド7、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、81:4、146、177、184,185、187、200、202、208、210、246、254、255、264、270、272、279、C.I.ピグメントグリーン7、10、36、37、58、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、109、110、117、125、137、138、139、147、148、150、153、165、166、173、185等が挙げられる。
【0052】
これらの有彩色の有機顔料の混合物として得られる黒色有機顔料(B)としては、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントイエロー150の組み合わせが、分散性及び分散安定性の点から好ましい。各有機顔料の配合割合は、混合後に黒色となる割合であれば特に制限されない。
【0053】
黒色有機顔料(B)のBET法による比表面積は、ブラックマトリックスの形状の観点から、50〜200m/gが好ましく、50〜150m/gが特に好ましい。比表面積が50m/g以上であると、ブラックマトリックス形状が劣化しにくい。200m/g以下であると、黒色有機顔料(B)に分散助剤が過度に吸着することなく、諸物性を発現させるために多量の分散助剤を配合する必要がなくなる。
【0054】
また、黒色有機顔料(B)の透過型電子顕微鏡観察による平均1次粒子径は、20〜150nmが好ましく、30〜130nmが特に好ましい。平均1次粒子径が20nm以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物で高濃度に分散でき、経時安定性の良好なネガ型感光性樹脂組成物が得られやすい。150nm以下であると、ブラックマトリックス形状が劣化しにくい。
また、透過型電子顕微鏡観察による平均2次粒子径としては、80〜200nmが好ましく、100〜200nmが特に好ましい。
【0055】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の黒色有機顔料(B)の含有割合は、20〜65質量%が好ましく、25〜60質量%がより好ましく、30〜55質量%が特に好ましい。含有割合が上記範囲の下限値以上であると、得られる隔壁の光の遮光性を示す値である光学濃度が充分になる。上記範囲の上限値以下であると、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化性が良好になり、良好な外観の硬化膜が得られる。また、含有割合が上記範囲の上限値以下であると、現像後のアルカリ現像液中での黒色有機顔料(B)の分散性は良好であり、凝集及び沈降してアルカリ現像液の循環フィルタの目詰まり等を引き起こしにくい。
【0056】
黒色有機顔料(B)のネガ型感光性樹脂組成物における分散性を向上させるためには、高分子分散剤を含有させることが好ましい。該高分子分散剤は、黒色有機顔料(B)への親和性の点から、酸性官能基あるいは塩基性官能基を有する化合物が好ましい。該酸性官能基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。高分子分散剤の酸価としては10〜100mgKOH/gが好ましい。該塩基性官能基としては、1級、2級もしくは3級アミノ基を有すると、特に分散性に優れる。
高分子分散剤としては、ウレタン系、ポリイミド系、アルキッド系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系、メラミン系、フェノール系、アクリル系、塩化ビニル系、塩化ビニル酢酸ビニル系共重合体系、ポリアミド系、ポリカーボネート系等の化合物が挙げられる。中でも特にウレタン系、ポリエステル系の化合物が好ましい。
【0057】
高分子分散剤の使用量は、黒色有機顔料(B)に対して5〜30重量%が好ましく、10〜25重量%が特に好ましい。使用量が上記範囲の下限値以上であると、黒色有機顔料(B)の分散が良好になり、上記範囲の上限値以下であると、現像性が良好になる。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物において、通常、黒色有機顔料(B)は、黒色有機顔料(B)、高分子分散剤及び分散媒を含む分散液として使用される。該分散液は、例えば、黒色有機顔料(B)、高分子分散剤、分散媒を加えた混合物を公知の湿式粉砕分散装置、例えばペイントコンディショナー、ビーズミル等を用いて湿式粉砕分散処理することで製造できる。
用いる分散媒としては、後述のネガ型感光性樹脂組成物の溶媒(F)と同様のものが使用可能である。分散液における分散媒の配合量としては、通常、分散液全体の65〜90質量%程度である。
【0058】
なお、分散液としては、市販品を用いることができる。市販品としては、いずれも商品名で、DINA混色BM(DIC社製、黒色有機顔料(B)(混色黒色有機顔料):高分子分散剤:分散媒(プロピレングリコール1−モノメチルエーテル2−アセテート(PGMEA))の質量比=15:4.5:80.5)、S2961(大日精化工業社製、黒色有機顔料(B)(アゾメチン系黒色顔料):高分子分散剤:分散媒(PGMEA)の質量比=12:7.2:80.8)等が挙げられる。
【0059】
[光重合開始剤(C)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、光重合開始剤(C)を含む。
BOA型のカラーフィルタでは、スイッチング素子であるTFTと画素電極を接続するために、隔壁に貫通したコンタクトホールを製造する必要がある。隔壁は光透過率が低いため、従来のフォトリソ法を用いた場合、隔壁下部の光硬化性が悪く、高感度な光重合開始剤を用いないと、アルカリ現像時にパターンが溶解してしまい、良好なパターン形成が困難となる。しかし、高感度の光重合開始剤を用いると、未露光部もフォトマスクからの漏れ光等により光硬化してしまうため、微小なコンタクトホール形成に困難が生じる。良好なパターン形成と微小なコンタクトホール形成を両立するためには、光重合開始剤(C)を適宜選択することが重要である。
【0060】
光重合開始剤(C)としては、下式(1)で表される化合物(以下、「光重合開始剤(C1)」ともいう。)を用いることが好ましい。光重合開始剤(C1)を用いることで、硬化性が良好で、塗膜形成後、露光工程及び現像工程を経て得られる隔壁において、ラインパターンや線幅を露光時のマスクパターンに近い形状に形成することができ、微小なコンタクトホールの形成が可能なネガ型感光性樹脂組成物が得られる。また、光重合開始剤(C)として光重合開始剤(C1)を用いると、ネガ型感光性樹脂組成物が撥インク剤(E)を含有する場合に、隔壁に充分な撥インク性の付与ができ、アルカリ現像液への黒色有機顔料(B)の溶解性を阻害することがない。
【0061】
(光重合開始剤(C1))
光重合開始剤(C1)は、下式(1)で表されるO−アシルオキシム系化合物からなる。
【0062】
【化5】
【0063】
式(1)中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜20のフェニル基又はベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜20のフェノキシ基を示す。
は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜20のフェニル基、炭素原子数2〜20のアルカノイル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンゾイル基、炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基又はベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のフェノキシカルボニル基を示す。
【0064】
としては、炭素原子数1〜10のアルキル基、又はベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜12のフェニル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基等が挙げられる。アルキル基としては、炭素原子数1〜4のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜2のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。フェニル基も同様に好ましい。
としては、炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等が挙げられる。中でも、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、ヘキシル基、メチル基が特に好ましい。
【0065】
光重合開始剤(C1)は市販品を使用することができる。市販品としては、IRGACURE OXE01(商品名、BASF社製:上式(1)においてRがフェニル基、Rがヘキシル基である化合物)等が挙げられる。
【0066】
また、光重合開始剤(C1)を含有する光重合開始剤(C)の、ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の含有割合は、3.5〜7質量%が好ましく、3.6〜6質量%がより好ましく、3.7〜5.5質量%が特に好ましい。上記範囲にあれば、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化性が良好である。得られる隔壁やブラックマトリックスにおいて、ラインパターンや線幅を、露光時のマスクパターンに近い形状に形成することができ、微小なコンタクトホールの形成も可能となる。また、アルカリ現像液への黒色有機顔料(B)の溶解性を阻害することがない。さらに、ネガ型感光性樹脂組成物が撥インク剤(E)を含有する場合に、隔壁に充分な撥インク性の付与が可能である。
【0067】
光重合開始剤(C)は、光重合開始剤(C1)のみを使用してもよいが、各種用途や目的に応じて、光重合開始剤(C1)を配合することで得られる上記効果を損なわない範囲で、光重合開始剤(C1)以外の光重合開始剤を併用してもよい。その場合、光重合開始剤(C1)は、光重合開始剤(C)の全量に対して85〜95質量%の含有割合で配合されることが好ましい。
【0068】
光重合開始剤(C1)と併用する光重合開始剤としては、特に隔壁下部の光硬化性を高められる点で、光重合開始剤(C1)よりも高感度な光重合開始剤が挙げられる。
このような光重合開始剤としては、より高感度なO−アシルオキシム系化合物、例えば、アデカオプトマー N−1919、アデカクルーズ NCI−831、NCI−930(以上、ADEKA社製、いずれも商品名)、下式(2)で表される化合物(以下、「光重合開始剤(C2)」ともいう。)等が挙げられる。中でも、光重合開始剤(C2)が好ましい。
【0069】
【化6】
【0070】
式(2)中、Rは、水素原子、R61又はOR62を示し、該R61及びR62は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜20のアルキル基、シクロアルカン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜30のフェニル基又はベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜30のフェニルアルキル基を示す。
は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜30のフェニル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜30のフェニルアルキル基、炭素原子数2〜20のアルカノイル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンゾイル基、炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のフェノキシカルボニル基、又はシアノ基を示す。
【0071】
は、炭素原子数1〜20のアルキル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜30のフェニル基又はベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜30のフェニルアルキル基を示す。
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、R61、OR62、炭素原子数2〜20のアルカノイル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンゾイル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンジルカルボニル基、炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のフェノキシカルボニル基、又は炭素原子数1〜20のアミド基を示す。
は、R61、OR62、シアノ基又はハロゲン原子を示す。aは0〜3の整数である。
【0072】
光重合開始剤(C2)の中でも、以下の基を有する化合物が好ましい。
式(2)中、Rは、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜20のフェニル基、又はベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜20のフェノキシ基を示す。
は、水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜20のフェニル基、炭素原子数2〜20のアルカノイル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンゾイル基、炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基、又はベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のフェノキシカルボニル基を示す。
【0073】
は、炭素原子数1〜12のアルキル基を示す。
、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜12のアルキル基、シクロアルカン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数3〜8のシクロアルキル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜20のフェニル基、炭素原子数2〜20のアルカノイル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンゾイル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンジルカルボニル基、炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のフェノキシカルボニル基、炭素原子数1〜20のアミド基又はニトロ基を示す。
の個数を示すaは0である。
光重合開始剤(C2)として、国際公開第2008/078678号に記載のNo.1〜71も使用できる。
【0074】
光重合開始剤(C2)の中でも、以下の基を有する化合物が特に好ましい。
としては、炭素原子数1〜10のアルキル基、又はベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数6〜12のフェニル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基等が挙げられる。中でも、炭素原子数1〜4のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜2のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
としては、炭素原子数1〜10のアルキル基、又は炭素原子数2〜5のアルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等が挙げられる。中でも、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1〜3のアルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0075】
としては、炭素原子数1〜8のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、等が挙げられる。中でも、炭素原子数2〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
、R及びRとしては、水素原子又はニトロ基が好ましい。
としては、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンゾイル基、ベンゼン環中の水素原子がアルキル基に置換されていてもよい炭素原子数7〜20のベンジルカルボニル基、又はニトロ基が好ましく、ベンゾイル基、2−メチルベンゾイル基、2−メチル−4−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル基、2−メチル−5−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル基、2−メチル−5−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル基、ベンジルカルボニル基、1,3,5トリメチルベンジルカルボニル基、ニトロ基が特に好ましい。
の個数を示すaは、0である。
【0076】
光重合開始剤(C2)の具体例としては、式(2)において、R〜Rがそれぞれ以下の基であり、Rの個数を示すaは0である、化合物(2−1)〜(2−10)等が挙げられる。
:フェニル基、R:オクチル基、R:エチル基、R、R、R:水素原子、R:ベンゾイル基である化合物(2−1)、
:メチル基、R:オクチル基、R:エチル基、R、R、R:水素原子、R:ベンゾイル基である化合物(2−2)、
:メチル基、R:ブチル基、R:エチル基、R、R、R:水素原子、R:ベンゾイル基である化合物(2−3)、
:メチル基、R:ヘプチル基、R:エチル基、R、R、R:水素原子、R:ベンゾイル基である化合物(2−4)、
:フェニル基、R:オクチル基、R:エチル基、R、R、R:水素原子、R:2−メチルベンゾイル基である化合物(2−5)、
:メチル基、R:オクチル基、R:エチル基、R、R、R:水素原子、R:2−メチルベンゾイル基である化合物(2−6)、
:メチル基、R:メチル基、R:エチル基、R、R、R:水素原子、R:2−メチルベンゾイル基である化合物(2−7)、
:メチル基、R:メチル基、R:エチル基、R、R、R:水素原子、R:2−メチル−4−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル基である化合物(2−8)、
:メチル基、R:メチル基、R:エチル基、R、R、R:水素原子、R:2−メチル−5−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル基である化合物(2−9)、
:メチル基、R:メチル基、R:エチル基、R、R、R:水素原子、R:2−メチル−5−テトラヒドロピラニルメトキシベンゾイル基である化合物(2−10)。
【0077】
光重合開始剤(C2)は市販品を使用することができる。市販品としては、IRGACURE OXE02(商品名、BASF社製:上記化合物(2−7)に相当する。)等が挙げられる。
光重合開始剤(C1)と光重合開始剤(C2)とを併用する場合、光重合開始剤(C)の全量中の光重合開始剤(C2)の含有割合は、光重合開始剤(C1)の配合量の残部、すなわち5〜15質量%が好ましく、5〜10質量%が特に好ましい。光重合開始剤(C)中の光重合開始剤(C2)の割合が上記範囲であると、光重合開始剤(C1)による上記効果が充分に得られるとともに、よりブラックマトリックス下部の光硬化性を高めることが可能である。
【0078】
光重合開始剤(C1)と併用可能な光重合開始剤としては、上記光重合開始剤(C2)を含む高感度のO−アシルオキシム系化合物以外に、例えば、以下の光重合開始剤が挙げられる。
メチルフェニルグリオキシレート、9,10−フェナンスレンキノン等のα−ジケトン類;ベンゾイン等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、2,2’−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等のアセトフェノン類;アントラキノン、2−エチルアントラキノン、カンファーキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類;2−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル等のアミノ安息香酸類;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン等のハロゲン化合物;アシルホスフィンオキシド類;ジ−t−ブチルペルオキシド等の過酸化物;トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、n−ブチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート等の脂肪族アミン類;2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、1,4−ブタノールビス(3−メルカプトブチレート)、トリス(2−メルカプトプロパノイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等のチオール化合物等である。
【0079】
[架橋剤(D)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、ラジカル硬化を促進する任意成分として、架橋剤(D)を含んでもよい。架橋剤(D)としては、1分子中に2つ以上のエチレン性二重結合を有し、酸性基を有しない化合物が好ましい。ネガ型感光性樹脂組成物が架橋剤(D)を含むことにより、露光時におけるネガ型感光性樹脂組成物の硬化性が向上し、低い露光量でも隔壁を形成することができる。
【0080】
架橋剤(D)としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)、ウレタンアクリレート等が挙げられる。光反応性の点から多数のエチレン性二重結合を有することが好ましい。なお、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0081】
架橋剤(D)としては、市販品を使用することができる。市販品としては、KAYARAD DPHA(商品名、日本化薬社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)、NKエステル A−9530(商品名、新中村化学工業社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物))、NKエステ A−9300(商品名、新中村化学工業社製、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート)、NKエステル A−9300−1CL(商品名、新中村化学工業社製、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート)、BANI−M(商品名、丸善石油化学社製、ビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン)、BANI−X(商品名、丸善石油化学社製、N,N’−m−キシリレン−ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド))等が挙げられる。ウレタンアクリレートとしては、日本化薬社製のKAYARAD UXシリーズが挙げられ、具体的な商品名としては、UX−3204、UX−6101、UX−0937、DPHA−40H、UX−5000、UX−5002D−P20等が挙げられる。
【0082】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の架橋剤(D)の含有割合は、1〜60質量%が好ましく、2〜15質量%が特に好ましい。上記範囲であると、ネガ型感光性樹脂組成物のアルカリ現像性が良好となる。
【0083】
[撥インク剤(E)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて撥インク剤(E)を含有する。撥インク剤(E)は、塗布膜の表面に偏在し、硬化膜表面に撥インク性の機能を与える化合物である。
【0084】
撥インク剤(E)としては、1分子中に下式(3)で表される基(以下、「基(3)」ともいう。)又は下式(4)で表される基(以下、「基(4)」ともいう。)を有する側鎖を有する化合物が好ましく、基(3)又は基(4)を有する側鎖と、エチレン性二重結合を有する側鎖をともに有する化合物(以下、「撥インク剤(E1)」ともいう。)が特に好ましい。
−CFXR (3)
式(3)中、Xは水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Rはエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素原子数1〜20のフルオロアルキル基、又はフッ素原子を示す。
−(SiR1011O)−SiR121314 (4)
式(4)中、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を示し、R14は水素原子、又は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子もしくは窒素原子を含んでいてもよいアルキル基を示し、nは1〜200の整数を示す。
【0085】
撥インク剤(E1)は、基(3)を含む側鎖とエチレン性二重結合を有する側鎖を有する重合体、基(4)を含む側鎖とエチレン性二重結合を有する側鎖を有する重合体、又は基(3)を含む側鎖と基(4)を含む側鎖とエチレン性二重結合を有する側鎖を有する重合体であってもよく、これらから選ばれる重合体の2種以上からなってもよい。
【0086】
撥インク剤(E)は、撥インク性を呈する基、例えば、撥インク剤(E1)においては、基(3)又は基(4)を有する側鎖を有することで、表面自由エネルギーが小さく、充分な表面移行性を有する。すなわち、上記各種固形分成分、さらに後述する溶媒(F)を含有する本発明のネガ型感光性樹脂組成物においては、塗膜を形成する際には、これらが充分に相溶して均一な組成物として形成されるが、該組成物の塗膜の乾燥工程において溶媒(F)が蒸発する過程で、撥インク剤(E)とその他の固形分成分との間に充分な斥力をもたらし、撥インク剤(E)が膜表面近傍に移行し撥インク剤層が形成される。
【0087】
この撥インク剤層は、露光後の現像工程を経ても充分に残存し、よって、該組成物の硬化膜からなる隔壁は、その表面に適度な厚さの撥インク剤層を有することで撥インク性を発現する。また、インクジェット法で注入されるインクはドット(画素となる箇所)からあふれ出ることがなく、隣接画素間での混色が起きにくい。さらに、撥インク剤(E)としてエチレン性二重結合を有する側鎖を有する撥インク剤(E1)を用いれば、露光時に撥インク剤(E1)の硬化反応が生じ、隔壁表面に固定化されやすい。よって、露光・現像後のポストベーク時に、未反応の残存分子がドットにマイグレート(migrate)してドットを汚染することが起こりにくい。このように、撥インク剤(E)、特には、撥インク剤(E1)を含有するネガ型感光性樹脂組成物から得られる隔壁は、高い撥インク性とドット(表示部)へのインク転落性を発現できる。
【0088】
以下、本発明に好ましく用いられる撥インク剤(E1)について説明する。
基(3)又は基(4)を有する側鎖は、重合反応によって直接形成しても、重合反応後の化学変換によって形成してもよい。また、エチレン性二重結合を有する側鎖は重合反応後の化学変換によって形成できる。
【0089】
基(3)中のRが、エーテル性酸素原子を有していてもよい炭素原子数1〜20のフルオロアルキル基である場合、前記フルオロアルキル基中の水素原子は、フッ素原子以外の他のハロゲン原子に置換されていてもよく、他のハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。また、エーテル性酸素原子は、該アルキル基の炭素−炭素結合間に存在してもよく、該アルキル基の末端に存在してもよい。また該アルキル基の構造は、直鎖構造、分岐構造、環構造、又は部分的に環を有する構造が挙げられ、直鎖構造が好ましい。
【0090】
基(3)としては、ペルフルオロアルキル基又は水素原子1個を含むポリフルオロアルキル基であることが好ましく、ペルフルオロアルキル基が特に好ましい(ただし、前記アルキル基は、エーテル性酸素原子を有するものを含む。)。これにより、ネガ型感光性樹脂組成物から形成される隔壁は撥インク性が良好となる。また、基(3)の全炭素原子数は4〜6が好ましい。これにより、隔壁に充分な撥インク性が付与されるとともに、撥インク剤(E)とネガ型感光性樹脂組成物を構成する他の成分との相溶性が良好であり、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成したときに撥インク剤(E)同士が凝集することがなく、外観の良好な隔壁が形成できる。基(3)としては、全炭素原子数が4〜6のペルフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0091】
基(3)の具体例としては、以下が挙げられる。
−CF、−CFCF、−CFCHF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CFCF、−(CF11CF、−(CF15CF
−CF(CF)O(CFCF
−CFO(CFCFO)CF(pは1〜8の整数)、
−CF(CF)O(CFCF(CF)O)13(qは1〜4の整数)、
−CF(CF)O(CFCF(CF)O)(rは1〜5の整数)。
【0092】
基(4)中のR10及びR11は、シロキサン単位毎に同一でも異なっていてもよい。ネガ型感光性樹脂組成物から形成される隔壁が優れた撥インク性を示すことから、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基であることが好ましく、水素原子、メチル基、又はフェニル基であることがより好ましく、全てのシロキサン単位のR10及びR11が、メチル基であることが特に好ましい。
基(4)において、R12、R13及びR14は、シロキサン結合の末端のケイ素原子に結合する基であり、R12及びR13としては、R10及びR11と同様とすることができ、好ましい態様も同様である。また、R14が、エーテル性酸素原子(−O−)又は窒素原子(−NR40−。R40は水素原子又は炭素原子数が1〜5のアルキル基である。)を含んでいてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基である場合、炭素原子数1〜5のアルキル基、エーテル性酸素原子を1個含む炭素原子数1〜5のアルキル基等が好ましい。R14は、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基であることが特に好ましい。nは1〜200の整数が好ましく、2〜100の整数が特に好ましい。
【0093】
基(4)の具体例としては、以下が挙げられる。
−(Si(CHO)−Si(CHH、−(Si(CHO)−Si(CHCH、−(Si(CHO)−Si(CH、−(Si(CHO)−Si(CH、−(Si(CHO)−Si(CH、−(Si(CHO)−Si(CH10、−(Si(CHO)−Si(CHOH、−(Si(CHO)−Si(CHOCH、−(Si(CHO)−Si(CHOC、−(Si(CO)−Si(CHH、−(Si(CO)−Si(CH、−(Si(CO)−Si(CH、−(Si(CO)−Si(C、−(Si(C)(CH)O)−Si(CH。
【0094】
エチレン性二重結合としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基、ビニルオキシアルキル基等の付加重合性を有する二重結合が挙げられ、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、該付加重合性基が有する水素原子の一部又は全てが、アルキル基、好ましくはメチル基で置換されていてもよい。
【0095】
なお、撥インク剤(E1)を含む撥インク剤(E)は、さらに酸性基を有する側鎖を有する重合体であることが好ましい。露光工程で硬化反応しなかった撥インク剤(E)の一部の分子は、それらが酸性基を有する側鎖を有することにより、現像時に隔壁表面から洗い流され、隔壁内には固定化されなかった残存分子が残りにくい。ポストベーク工程の前段階で、ドットにマイグレートする可能性のある分子をより減らすことができ、ドットの親インク性をより向上できる。
【0096】
上記酸性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホ基等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
酸性基を有する側鎖は、酸性基を有する単量体の重合反応によって形成してもよいし、重合反応後の化学変換によって形成してもよい。
【0097】
本発明に好ましく用いられる、基(3)又は基(4)を有する側鎖と、エチレン性二重結合を有する側鎖とを有する撥インク剤(E1)は、後述する単量体(a1)及び/又は単量体(a2)と反応性基を有する単量体(a3)とを含む2種以上の単量体を共重合し、次いで、得られた共重合体と前記反応性基と結合し得る官能基とエチレン性二重結合とを有する化合物(z1)とを反応させることにより製造できる。
【0098】
単量体(a1)は基(3)を有する単量体であり、下式(11)で表される単量体(11)が好ましい。
CH=CR21COO−Y−CFXR (11)
式(11)中、R21は水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示し、Yは炭素原子数1〜6のフッ素原子を含まない2価の有機基を示し、Rはエーテル性酸素原子を有していてもよい炭素原子数1〜20の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されたアルキル基、又はフッ素原子を示す。
単量体(11)において、−CFXRの好ましい態様は、基(3)の好ましい態様と同様である。単量体(11)において、Yは、入手の容易さから、炭素原子数2〜4のアルキレン基であることが好ましい。
【0099】
単量体(11)の例としては、以下が挙げられる。
CH=CR21COOR22CFXR
CH=CR21COOR22NR23SOCFXR
CH=CR21COOR22NR23COCFXR
CH=CR21COOCHCH(OH)R24CFXR
ここで、R21は水素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示し、R22は炭素原子数1〜6のアルキレン基を示し、R23は水素原子又はメチル基を示し、R24は単結合又は炭素原子数1〜4のアルキレン基を示し、Rは上記と同じ意味を示す。
【0100】
22の具体例としては、−CH−、−CHCH−、−CH(CH)−、−CHCHCH−、−C(CH−、−CH(CHCH)−、−CHCHCHCH−、−CH(CHCHCH)−、−CH(CHCH−、−CH(CHCH(CH)−等が挙げられる。
【0101】
24の具体例としては、−CH−、−CHCH−、−CH(CH)−、−CHCHCH−、−C(CH−、−CH(CHCH)−、−CHCHCHCH−、−CH(CHCHCH)−等が挙げられる。
【0102】
単量体(11)の具体例としては、2−(ペルフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(ペルフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。単量体(11)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
単量体(a2)は基(4)を有する単量体であり、下式(21)で表される単量体(21)が好ましい。
CH=CR25COO−Z−(SiR1011O)−SiR121314 (21)
式(21)中、R25は水素原子又はメチル基を示し、Zは炭素原子数1〜6の2価の有機基を示し、R10、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を示し、R14は水素原子、又は炭素原子数1〜10のエーテル性酸素原子もしくは窒素原子(−NR41−。R41は水素原子又は炭素原子数が1〜5のアルキル基である。)を含んでいてもよいアルキル基を示し、nは1〜200の整数を示す。
単量体(21)において、R10、R11、R12、R13、R14、及びnの好ましい態様は、基(4)の好ましい態様と同様である。
【0104】
Zは、炭素原子数1〜6の2価のアルキル基が好ましい。具体例としては下記が挙げられる。
−CH−、−CHCH−、−CH(CH)−、
−CHCHCH−、−C(CH−、−CH(CHCH)−、
−CHCHCHCH−、−CH(CHCHCH)−、
−CH(CHCH−、−CH(CHCH(CH)−等。
上記単量体(21)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0105】
単量体(a3)は反応性基を有する単量体であり、水酸基を有する単量体、酸無水物基を有する単量体、カルボキシ基を有する単量体、エポキシ基を有する単量体等が挙げられる。反応性基としては、すなわち、水酸基、酸無水物基、カルボキシ基、エポキシ基が挙げられる。なお、単量体(a3)は、基(3)及び基(4)を実質的に含まないことが好ましい。
【0106】
水酸基を有する単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0107】
さらに、水酸基を有する単量体としては、末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖を有する単量体であってもよい。例えば、CH=CHOCH10CHO(CO)H(ここで、hは1〜100の整数、以下同じ。)、CH=CHOCO(CO)H、CH=CHCOOCO(CO)H、CH=C(CH)COOCO(CO)H、CH=CHCOOCO(CO)(CO)H(ここで、iは0〜100の整数であり、gは1〜100の整数であり、m+jは1〜100である。以下同じ。)、CH=C(CH)COOCO(CO)(CO)H等が挙げられる。
【0108】
水酸基を有する単量体としては、市販品を用いることができる。市販品としては、以下のものが挙げられる。
ニューフロンティアNFバイソマーPEM6E(商品名、第一工業製薬社製、CH=C(CH)COO(CHCHO)H:式中、kは約6である。)、
ブレンマーAE−400(商品名、日本油脂社製、CH=CHCOO(CHCHO)H:式中、kは約10である。)、
ブレンマー70PEP−350B(商品名、日本油脂社製、CH=C(CH)COO(CO)(CO)H:式中、mは約5、jは約2である。)、
ブレンマー55PET−800(商品名、日本油脂社製、CH=C(CH)COO(CO)(CO)H:式中、mは約10、jは約5である。)、
ブレンマーPP−800(商品名、日本油脂社製、CH=C(CH)COO(CO)H:式中、kは約13である。)、
ブレンマーAP−800(商品名、日本油脂社製、CH=CHCOO(CO)H:式中、kは約13である。)。
【0109】
酸無水物基を有する単量体の具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、無水3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸、無水cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、2−ブテン−1−イルサクシニックアンハイドライド等が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、もしくはそれらの塩が挙げられる。
エポキシ基を有する単量体の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレートが挙げられる。
【0110】
単量体(a3)としては、末端に水酸基を有する化合物が好ましく、末端に水酸基を有する(メタ)アクリレートがより好ましく、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0111】
化合物(z1)としては、単量体(a3)が有する反応性基に合わせて選択される。反応性基と化合物(z1)との組み合わせは以下の例が挙げられる。
(1)反応性基としての水酸基に対し、化合物(z1)としてのエチレン性二重結合を有する酸無水物、
(2)反応性基としての水酸基に対し、化合物(z1)としてのイソシアネート基とエチレン性二重結合を有する化合物、
(3)反応性基としての水酸基に対し、化合物(z1)としての塩化アシル基とエチレン性二重結合を有する化合物、
(4)反応性基としての酸無水物基に対し、化合物(z1)としての水酸基とエチレン性二重結合を有する化合物、
(5)反応性基としてのカルボキシ基に対し、化合物(z1)としてのエポキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物、
(6)反応性基としてのエポキシ基に対し、化合物(z1)としてのカルボキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物。
【0112】
化合物(z1)としてのエチレン性二重結合を有する酸無水物の具体例としては、上記した酸無水物基を有する単量体と同じ化合物が挙げられる。
化合物(z1)としてのイソシアネート基とエチレン性二重結合を有する化合物の具体例としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
化合物(z1)としての塩化アシル基とエチレン性二重結合を有する化合物の具体例としては、(メタ)アクリロイルクロライドが挙げられる。
化合物(z1)としての水酸基とエチレン性二重結合を有する化合物の具体例としては、上記した水酸基を有する単量体の例が挙げられる。
化合物(z1)としてのエポキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物の具体例としては、上記したエポキシ基を有する単量体の例が挙げられる。
化合物(z1)としてのカルボキシ基とエチレン性二重結合を有する化合物の具体例としては、上記したカルボキシ基を有する単量体の例が挙げられる。
上記の組み合わせとしては、(2)の組み合わせが好ましく、化合物(z1)として1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートを用いることが特に好ましい。該組み合わせにすることで、撥インク剤(E)は、側鎖1つにつきエチレン性二重結合を2つ以上有する側鎖を有することとなり、撥インク剤(E)の隔壁表面への固定化が優れ、撥インク性に優れた隔壁が得られるからである。
【0113】
撥インク剤(E)が酸性基を有する側鎖を有する場合は、単量体(a1)〜(a3)とともに酸性基を有する単量体(a4)を共重合させることが好ましい。
酸性基を有する単量体(a4)としては、カルボキシ基を有する単量体、フェノール性水酸基を有する単量体、スルホ基を有する単量体等が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体としては、上記単量体(a3)において例示したのと同様の単量体が挙げられる。
酸性基を有する単量体(a4)としてカルボキシ基を有する単量体を用い、上記反応性基を有する単量体(a3)としてもカルボキシ基を有する単量体を用いるときは、最終的にエチレン性二重結合が導入されず、カルボキシ基として残るものを単量体(a4)とみなすこととする。
【0114】
フェノール性水酸基を有する単量体としては、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン等が挙げられる。またこれらのベンゼン環の1個以上の水素原子が、メチル基、エチル基、n−ブチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基等のアルコキシ基、ハロゲン原子、アルキル基の1個以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、アミド基等に置換された化合物等が挙げられる。
【0115】
スルホ基を有する単量体としては、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アリルオキシプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホエチル、(メタ)アクリル酸−2−スルホプロピル、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0116】
本発明における重合に用いる単量体としては、単量体(a1)〜(a4)以外のその他の単量体(a5)を用いてもよい。
その他の単量体(a5)としては、ポリオキシアルキレン基を有する下式(51)で表される化合物(51)、又は下式(52)で表される化合物(52)であることが好ましい。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
CH=CR26−COO−W−(R27O)(R28O)29 …(51)
CH=CR26−O−W−(R27O)(R28O)29 …(52)
【0117】
式(51)及び式(52)中、R26は、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリール基で置換されたアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、又は炭素原子数3〜20のシクロアルキル基である。Wは、単結合又は炭素原子数が1〜10のフッ素原子を有さない2価の有機基である。R27及びR28は、それぞれ独立して、炭素原子数2〜4のアルキレン基であり、R29は、一部の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基である。mは0〜100、jは0〜100の整数をそれぞれ示し、m+jは4〜100の整数である。
【0118】
式(51)及び式(52)において、R27及びR28は、それぞれ独立して、炭素原子数2〜4のアルキレン基であるが、アルキレン基の構造は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。R27及びR28は同一であっても、異なってもよい。このようなR27及びR28のうちでも、両者がそれぞれ独立して、−CHCH−又はC−である、もしくは−CHCH−と−C−の組み合わせであることが好ましく、両者が−CHCH−である、又は、−CHCH−と−CHCH(CH)−の組み合わせであることが特に好ましい。
【0119】
式(51)及び式(52)中、m及びjはそれぞれ、0〜50の整数が好ましく、0〜30の整数が特に好ましい。
また、m+jは、6〜50の整数が好ましく、8〜30の整数が特に好ましい。m+jが上記範囲の下限値以上であると、現像工程の後に高圧水を使用したジェットリンス(Jet Rinse)工程を行った場合、撥インク性が低下しにくい。さらに、残膜が発生しにくい。m+jが上記範囲の上限値以下であると、ポストベーク時に、開口部に撥インク剤(E)がマイグレートすることなく、隔壁間開口部の親インク性が充分になり、インクジェット法を用いてインクを塗布したとき、開口部にインクが充分に濡れ拡がる。
【0120】
式(51)及び式(52)は、化合物(51)及び化合物(52)が、m個の(R27O)単位とj個の(R28O)単位を有することを示すものであって、(R27O)単位と(R28O)単位の結合の順番については特に制限されるものではない。つまり、化合物(51)及び化合物(52)において、m個の(R27O)単位とj個の(R28O)単位は、例えば、交互に、又はランダムに、もしくはブロックで結合していてもよい。
【0121】
式(51)及び式(52)において、R29は、一部の水素原子が置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜10のアルキル基である。アルキル鎖の構造は、直鎖構造、分岐構造、環構造、部分的に環を有する構造等であってもよい。また、置換基として具体的には、カルボキシ基、水酸基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基等が挙げられる。本発明においては、式(51)及び式(52)中のR29として、炭素原子数1〜5の直鎖、非置換のアルキル基が好ましく、メチル基及びエチル基が特に好ましい。
【0122】
式(51)及び式(52)における、(R27O)及び(R28O)の具体例としては、−CH10CHO−(式中C10は、シクロヘキシレン基である。)、−CHO−、−CHCHO−、−CH(CH)O−、−CHCHCHO−、−C(CHO−、−CH(CHCH)O−、−CHCHCHCHO−、−CH(CHCHCH)O−、−CH(CHCHO−、−CH(CHCH(CH)O−等が挙げられる。−(R27O)(R28O)29の具体例としては、(R27O)及び(R28O)がともに、上に例示したオキシアルキレン基から選ばれ、m+jが4〜100の整数であり、かつR29がCHである基が挙げられる。
【0123】
上記式(51)及び式(52)において、Wが示す基のうちでも、炭素原子数が1〜10のフッ素原子を有しない2価の有機基であるWとして、R27O、R28O以外の直鎖構造、分岐構造、環構造、部分的に環を有する構造等の、炭素原子数が1〜10のオキシアルキレン基、単結合等が挙げられる。オキシアルキレン基として具体的には、CH10CHO(式中C10は、シクロヘキシレン基である。)、CHO、CHCHO、CH(CH)O、CHCHCHO、C(CHO、CH(CHCH)O、CHCHCHCHO、CH(CHCHCH)O、CH(CHCHO、CH(CHCH(CH)O等が挙げられる。これらのうちでも、化合物(51)及び(52)におけるWとしては、入手の容易さから、炭素原子数が2〜4のオキシアルキレン基が好ましい。
【0124】
化合物(51)及び化合物(52)においては、上記R26が示す基のうちでも、水素原子、塩素原子、メチル基、フェニル基、ベンジル基等が好ましく、水素原子、塩素原子、又はメチル基がより好ましい。
【0125】
化合物(51)としては、
CH=CHCOO(CHCHO)29
CH=C(CH)COO(CHCHO)29
CH=CHCOO(CHCHO)(CO)29
CH=C(CH)COO(CHCHO)(CO)29
CH=CHCOO(CO)(CO)29
が好ましい。
また、化合物(52)としては、
CH=CHOCH10CHO(CHCHO)29
CH=CHO(CHO(CHCHO)29
が好ましい。
式中、m及びjは上記と同じ意味を示し、好ましい範囲も同様である。なお、C10は、シクロヘキシレン基である。C、C、Cは直鎖構造又は分岐構造のいずれかである。式中のR29は、上記と同じ意味を示し、好ましくは、炭素原子数1〜10の直鎖、非置換のアルキル基、例えば、メチル基、水素原子等である。
【0126】
化合物(51)としては、市販品を用いることができる。化合物(51)の市販品としては、以下のものが挙げられる。
ブレンマーPME−400(商品名、日本油脂社製、CH=C(CH)COO(CHCHO)CH:式中のkは分子間の平均値を示し、kの値は約9である。以下、各市販品の分子式におけるk、m、jは全て分子間の平均値を示す。)、
ブレンマーPME−1000(商品名、日本油脂社製、CH=C(CH)COO(CHCHO)CH:式中のkは分子間の平均値を示し、kの値は約23である。)
NKエステルM−230G:(商品名、新中村化学社製、CH=C(CH)COO(CHCHO)CH:式中のkは分子間の平均値を示し、kは約9である。)、
ライトエステル130A(商品名、共栄社化学社製、CH=CHCOO(CHCHO)CH:式中のkは分子間の平均値を示し、kは約9である。)。
【0127】
撥インク剤(E1)は、例えば、以下の方法によって合成できる。まず、所望の共重合体を得るための単量体を、溶媒に溶解して加熱し、重合開始剤を加えて共重合させ、共重合体を得る。共重合反応においては、必要に応じて連鎖移動剤を存在させるのが好ましい。単量体、重合開始剤、溶媒及び連鎖移動剤は連続して添加してもよい。
【0128】
重合開始剤としては、公知の有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。有機過酸化物、及び無機過酸化物は、還元剤と組み合わせて、レドックス系触媒として使用することもできる。
【0129】
有機過酸化物としては、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチル−α−クミルペルオキシド等が挙げられる。
無機過酸化物としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、過炭酸塩等が挙げられる。
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等が挙げられる。また、アゾ系重合開始剤として、市販品のV−65(商品名、和光純薬工業社製)等を使用することも可能である。
【0130】
前記溶媒としては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール等のアルコール類;アセトン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類;2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類;メチルアセテート、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、エチルラクテート、n−ブチルラクテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート、シクロヘキサノールアセテート、γ−ブチロラクトン、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、グリセリントリアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類が挙げられる。
【0131】
連鎖移動剤としては、n−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類;クロロホルム、四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化アルキルが挙げられる。
【0132】
1分子中に基(3)又は基(4)を有する側鎖と、エチレン性二重結合を有する側鎖とを有する化合物である撥インク剤(E1)を得るには、まず、上記の共重合反応により単量体(a1)及び/又は単量体(a2)と、反応性基を有する単量体(a3)を共重合させる。
次に、得られた共重合体と化合物(z1)とを反応させる。
該反応には溶媒を用いるのが好ましい。溶媒は上述の共重合反応に用いる溶媒が用いられる。
また、重合禁止剤を配合することが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールが挙げられる。
また、触媒や中和剤を加えてもよい。例えば、水酸基を有する共重合体と、イソシアネート基とエチレン性二重結合を有する化合物を反応させる場合、ジブチル錫ジラウレート等の錫化合物等を用いることができる。水酸基を有する共重合体と、塩化アシル基とエチレン性二重結合を有する化合物を反応させる場合、塩基性触媒を用いることができる。
【0133】
この場合、共重合させる単量体の全量に対する各単量体の好ましい割合は、以下のとおりである。
単量体(a1)及び/又は単量体(a2)の割合は20〜80質量%が好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。該割合が上記範囲の下限値以上であると、硬化膜からなる隔壁の表面張力を低減でき、隔壁に高い撥インク性を付与できる。上記範囲の上限値以下であると、隔壁と基材との密着性が良好になる。
単量体(a3)の割合は20〜70質量%が好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。該範囲であると、エチレン性二重結合の導入による撥インク剤(E)の隔壁への固定化及び現像性が良好となる。
【0134】
撥インク剤(E1)がさらに酸性基を有する側鎖を有する場合は、単量体(a1)〜(a3)とともに酸性基を有する単量体(a4)を共重合させることで撥インク剤(E1)が得られる。
単量体(a4)の割合は1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。該範囲であると、露光工程で固定化されなかった残存分子が現像工程において隔壁から洗い流されやすい。
その他の単量体(a5)を用いる場合には、その割合は5〜45質量%が好ましく、5〜35質量%が特に好ましい。該範囲であるとアルカリ溶解性、現像性が良好である。
【0135】
単量体の好ましい組み合わせは以下のとおりである。
単量体(a1)及び/又は単量体(a2):単量体(a3):単量体(a4):単量体(a5)=30〜60質量%:30〜50質量%:1〜10質量%:9〜35質量%。
【0136】
共重合体と化合物(z1)とは、[化合物(z1)の官能基]/[共重合体の反応性基]の当量比の値が、0.5〜2となるように仕込むことが好ましく、0.8〜1.5が特に好ましい。当量比が上記範囲の下限値以上であると、撥インク剤(E)の隔壁への固定化が良好となる。上記範囲の上限値以下であると、未反応の化合物(z1)が不純物として存在する量を低く抑えることができ、塗膜外観を良好に維持できる。
なお、単量体(a3)と単量体(a4)の両方として、カルボキシ基を有する単量体を使用する場合は、撥インク剤(E)の酸価が後述する範囲となるように、共重合体と化合物(z1)の仕込み量を調節すればよい。
【0137】
撥インク剤(E1)が基(3)を有する場合、撥インク剤(E)におけるフッ素原子の含有率は5〜35質量%が好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。含有率が上記範囲の下限値以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物より形成される隔壁の表面張力を低減でき、撥インク性に優れた隔壁が得られる。上記範囲の上限値以下であると、隔壁と基材との密着性が良好になる。
【0138】
撥インク剤(E1)が基(4)を有する場合、撥インク剤(E)におけるケイ素原子の含有率は0.1〜25質量%が好ましく、0.5〜10質量%が特に好ましい。含有率が上記範囲の下限値以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物より形成される隔壁の表面張力を低減かつドット(表示部)へのインク転落性を向上させることができる。上記範囲の上限値以下であると、隔壁と基材との密着性が良好になる。
【0139】
撥インク剤(E1)が有するエチレン性二重結合の量は、1.0×10−3〜5.0×10−3mol/gが好ましく、1.5×10−3〜3.0×10−3mol/gが特に好ましい。上記範囲であると、撥インク剤(E)の隔壁への固定化及び現像性が良好となる。
【0140】
撥インク剤(E1)を含む撥インク剤(E)が酸性基を有する場合、その酸価は100mgKOH/g以下が好ましく、10〜50mgKOH/gが特に好ましい。上記範囲であると、露光工程で固定化されなかった残存分子が、現像工程において隔壁から洗い流されやすい。
【0141】
撥インク剤(E1)を含む撥インク剤(E)の数平均分子量(Mn)は、1,500〜50,000が好ましく、10,000〜50,000が特に好ましい。また、撥インク剤(E)の質量平均分子量(Mw)は、1.2×10〜15×10が好ましく、5×10〜15×10が特に好ましい。数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw)が上記範囲であると、アルカリ溶解性及び現像性が良好である。
【0142】
本発明における撥インク剤(E)としては、含フッ素シラン化合物(以下、「撥インク剤(E2)」ともいう。)を用いてもよい。撥インク剤(E2)としては、側鎖に前述の基(3)を有し、主鎖がオルガノポリシロキサン鎖である化合物が挙げられる。
撥インク剤(E2)としては、フッ素原子を含有する加水分解性シラン化合物を含む1種以上の加水分解性シラン化合物が、部分加水分解縮合して得られる含フッ素シラン化合物が好ましい。
撥インク剤(E2)としては、下式(e2−1)で表される加水分解性シラン化合物(e2−1)(以下、「化合物(e2−1)」ともいう。)及び下式(e2−2)で表される加水分解性シラン化合物(e2−2)(以下、「化合物(e2−2)」ともいう。)を必須成分として含む、加水分解性シラン化合物混合物の部分加水分解縮合物が好ましい。
【0143】
−SiX …(e2−1)
式(e2−1)中の記号は、以下の通りである。
:炭素原子数3〜10のエーテル性酸素原子を含んでいてもよいペルフルオロアルキル基を有する1価の有機基、
:加水分解性基。
ただし、化合物内に3個存在するXは、互いに異なっていても、同一であってもよい。
【0144】
(R−SiX(4−p) …(e2−2)
式(e2−2)中の記号は、以下の通りである。
:ペルフルオロアルキル基を有しない1価の有機基、
:加水分解性基、
p:0、1又は2である。
ただし、R及びXが、化合物内に複数個存在する場合は、これらは互いに異なっていても、同一であってもよい。
【0145】
撥インク剤(E2)のフッ素原子の含有率は、10〜55質量%が好ましく、12〜40質量%がより好ましく、15〜30質量%が特に好ましい。上記範囲であると、ネガ型感光性樹脂組成物から得られる隔壁に、優れた撥インク性及び撥インク性の耐紫外線/オゾン性を付与できる。
また、撥インク剤(E2)は、シラノール基(すなわち、ケイ素原子に結合した水酸基)を有することが好ましい。シラノール基の数としては、ケイ素原子1個当たり、0.2〜3.5個が好ましく、0.2〜2.0個がより好ましく、0.5〜1.5個が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると、撥インク剤(E2)の溶媒への溶解性やネガ型感光性樹脂組成物中の他の成分への相溶性が良好であり、作業性が向上する。上記範囲の上限値以下であると、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて隔壁を形成する際に、基材表面からの撥インク剤(E2)の蒸発を防止できる。
なお、撥インク剤(E2)中のシラノール基数は、29Si−NMRにより測定されるシラノール基を有するSi基と、シラノール基を有しないSi基とのピーク面積の比により算出される。
【0146】
加水分解性シラン化合物の部分加水分解縮合物とは、多官能性の加水分解性シラン化合物が加水分解し、ついで脱水縮合することによって生成するオリゴマー(多量体)のうちで、溶媒に溶解する程度の高分子量体をいう。また、シラン化合物の2〜4量体などの比較的低分子量の多量体も、本発明における部分加水分解縮合物である。部分加水分解縮合物は、加水分解性基が加水分解して生じるシラノール基を有し、未反応の加水分解性基を有することもある。比較的高分子量の部分加水分解縮合物は、主としてシラノール基を有し、比較的低分子量の部分加水分解縮合物は、さらに加水分解性基を有することもある。
部分加水分解縮合物は、さらなる縮合や加水分解の結果、最終的に溶媒に溶解しない高分子量硬化物になる性質を有する。部分加水分解縮合物は、多量化の程度の異なるオリゴマーの混合物であってもよい。
部分加水分解縮合物は、例えば、加水分解性シラン化合物を酸触媒と水の存在下、所定の反応温度条件下で、所定の時間撹拌する等により作製することができる。得られる部分加水分解縮合物の多量体化の程度は、酸濃度、反応温度、反応時間等により適宜、調整可能である。
なお、下記シラン化合物の割合を示すモル比は、下記シラン化合物の少なくともいずれかが、部分加水分解縮合物である場合には、上記モル比は、各シラン化合物に由来するケイ素原子の数の比である。
【0147】
(化合物(e2−1))
化合物(e2−1)を用いることにより、硬化膜に撥水性と撥油性(すなわち撥インク性)を付与できる。
化合物(e2−1)としては、下式(e2−11)で表される化合物がより好ましい。
−CFX−Q−SiX ・・・(e2−11)
(式(e2−11)中の記号は、以下の通りである。
X、R及びXは上記と同様であり、Qは、炭素原子数1〜10のフッ素原子を含まない2価の有機基である。ただし、式(e2−11)中の3個のXは、それぞれ互いに異なっていても同一であってもよい。)
【0148】
は、基(3)と加水分解性シリル基(−SiX)とを連結する2価の有機基であり、炭素原子数1〜10のフッ素原子を含まない2価の有機基である。Qは、右側の結合手にSiが、左側の結合手にR−CFX−がそれぞれ結合するとして表示した場合に、具体的には、−(CHi1−(i1は1〜5の整数。)、−CHO(CHi2−(i2は1〜4の整数。)、−SONR−(CHi3−(Rは水素原子、メチル基、又はエチル基、i3は1以上であり、Rの炭素原子数との合計で4以下の整数。)、−(C=O)−NR−(CHi4−(Rは上記と同様であり、i4は1以上であり、Rの炭素原子数との合計で4以下の整数。)で表される基が好ましい。
としては、i1が2又は3である−(CHi1−がより好ましく、−(CH−が特に好ましい。
【0149】
基(1)が炭素原子数1〜6のペルフルオロアルキル基である場合、上記Qとしては、−(CHi1−(i1は上記と同様)で表される基が好ましい。i1は2〜4の整数が好ましく、i1が2である−(CH−が特に好ましい。
基(1)がエーテル性酸素原子を含む炭素原子数4〜9のペルフルオロアルキル基である場合、上記Qとしては、−(CHi1−、−CHO(CHi2−、−SONR−(CHi3−、−(C=O)−NR−(CHi4−で表される基(i1〜i4及びRは上記と同様)が好ましい。この場合においても、−(CH−が特に好ましい。
【0150】
式(e2−1)又は式(e2−11)中、Xは、ケイ素原子に結合する加水分解性基を示す。Xとしては、アルコキシ基、ハロゲン原子、アシル基、イソシアナート基、アミノ基、アミノ基の水素原子がアルキル基で置換された基が挙げられる。中でも、炭素原子数1〜4のアルコキシ基又はハロゲン原子が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、塩素原子が特に好ましい。該基は、加水分解反応により水酸基(シラノール基)となり、さらに分子間で縮合反応してSi−O−Si結合を形成する反応が円滑に進みやすい。
【0151】
化合物(e2−1)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
F(CFCHCHSi(OCH、F(CFCHCHSi(OCHCH、F(CFCHCHSiCl、F(CFCHCHSi(OCH、F(CFCHCHSi(OCHCH、F(CFCHCHSiCl、F(CFCHCHSi(OCH
CFOCFCFCFCHCHSi(OCH、F(CFOCFCFOCFCFOCFCFOCFCHCHSi(OCHCH、CFOCF(CF)CFCHCHCHSi(OCH
F(CFOCFCFOCFCHCHCHSi(OCH、F(CFO(CFO(CFCHCHSi(OCH
F(CFOCFCFCHCHSiCl、F(CFOCF(CF)CFO(CFCHCHSi(OCH、F(CFOCF(CF)CFOCF(CF)CFCHCHSi(OCH
【0152】
化合物(e2−1)として、中でも、F(CFCHCHSi(OCH、F(CFCHCHSi(OCHCH、F(CFCHCHSiCl、F(CFOCF(CF)CFO(CFCHCHSi(OCH等が特に好ましい。
加水分解性シラン化合物の混合物に含まれる加水分解性シラン化合物として、化合物(e2−1)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、前記加水分解性シラン化合物の混合物は、化合物(e2−1)の部分加水分解縮合物を含有していてもよい。しかし、部分加水分解縮合物であるよりも化合物(e2−1)単体であることが好ましい。
【0153】
(化合物(e2−2))
化合物(e2−2)を用いることにより、撥インク剤(E2)は、炭化水素系の溶媒に溶解しやすくなり、基材の表面にネガ型感光性樹脂組成物の塗膜を形成する際に、比較的安価な溶媒を選択できる。
式(e2−2)において、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。アルキル基以外のRとしては、ビニル基やアリル基などのアルケニル基、フェニル基やシクロアルキル基などの環を有する炭化水素基が挙げられる。
は加水分解性基であり、上式(e2−1)中のXと好ましい態様を含めて同様である。pは0、1又は2である。ただし、pが2の場合の2個のRH1、及び(4−p)個のXは、それぞれ互いに異なっていても、同一であってもよい。
【0154】
化合物(e2−2)は、pが0である4官能性化合物、又はpが1である3官能性化合物が好ましい。
【0155】
撥インク剤(E2)において、化合物(e2−1)由来の基(3)及び化合物(e2−2)由来のRによって撥水性が発現され、主に基(3)によって撥油性が発現される。また、撥インク剤(E2)の硬化物が充分な撥油性を発現するには、撥インク剤(E2)中の基(3)とRとの合計に対して、基(3)の割合が高いことが好ましい。pが0の場合、撥インク剤(E2)における基(3)の割合が高くなり撥油性が向上し、また造膜性に優れる。pが1又は2の場合、Rがある程度存在することにより、撥インク剤(E2)は、炭化水素系の溶媒に溶解しやすくなり、基板の表面にネガ型感光性樹脂組成物の塗膜を形成する際に、比較的安価な溶媒を選択できる。
【0156】
化合物(e2−2)としては、以下の化合物が好ましい。また、化合物(e2−2)の代わりに化合物(e2−2)の部分加水分解縮合物を使用することができる。部分加水分解縮合物としては、比較的低分子量の化合物であることが好ましい。
化合物(e2−2)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
Si(OCH、Si(OCHCH、CHSi(OCH、CHSi(OCHCH、CHCHSi(OCH、CHCHSi(OCHCH、(CHSi(OCH、(CHSi(OCHCH、Si(OCHの部分加水分解縮合物(例えば、コルコート社製のメチルシリケート51(商品名))、Si(OCHCHの部分加水分解縮合物(例えば、コルコート社製のエチルシリケート40、エチルシリケート48(いずれも商品名))。
【0157】
本発明の加水分解性シラン化合物の混合物に含まれる加水分解性シラン化合物として、化合物(e2−2)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、4官能性化合物及び/又は3官能性化合物と共に、2官能性化合物を併用することもできる。
加水分解性シラン化合物混合物中の化合物(e2−2)の含有量は、化合物(e2−1)の1モルに対して化合物(e2−2)の0.1〜9モルが好ましく、0.5〜9モルが特に好ましい。
さらに、化合物(e2−1)及び化合物(e2−2)以外の加水分解性シラン化合物(以下、「化合物(e2−3)」ともいう。)や化合物(e2−3)の部分加水分解縮合物を含んでいてもよい。
【0158】
(化合物(e2−3))
化合物(e2−3)としては、加水分解性基を有する2官能性又は3官能性のシラン化合物であり、化合物(e2−1)及び化合物(e2−2)と共縮合する化合物であれば、公知のシラン化合物を使用できる。
化合物(e2−3)としては、前記式(e2−2)において、Rの代わりに炭素原子数7以上の炭化水素基や反応性基で置換された炭化水素基を有する構造のシラン化合物であることが好ましい。ただし、式(e2−2)においてpが2である場合、2つのRの1つはRであってもよい。反応性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、アミノ基、炭化水素基置換アミノ基、エポキシ基などが好ましい。特に(メタ)アクリロイルオキシ基等のエチレン性二重結合を有する反応性基が好ましい。
好ましい化合物(e2−3)は、エチレン性二重結合を有する反応性基を有する加水分解性シラン化合物であり、(メタ)アクリロイルオキシ基置換アルキル基を有するトリアルコキシシランやジアルコキシシランが特に好ましい。エチレン性二重結合を有する化合物(e2−3)を使用することにより、エチレン性二重結合を有する撥インク剤(E2)が得られる。
【0159】
特に好ましい化合物(e2−3)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
CH=C(CH)COO(CHSi(OCHCH
CH=CHCOO(CHSi(OCH
CH=CHCOO(CHSi(OCHCH
[CH=C(CH)COO(CH]CHSi(OCH
[CH=C(CH)COO(CH]CHSi(OCHCH
(C6)NH(CHSi(OCH
本発明の加水分解性シラン化合物混合物に含まれる加水分解性シラン化合物として、化合物(e2−3)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明の加水分解性シラン化合物の混合物中の化合物(e2−3)の配合量は、化合物(e2−1)及び化合物(e2−2)の合計量の1モルに対して、5モル以下が好ましく、4モル以下が特に好ましい。
【0160】
加水分解性シラン化合物の混合物には、加水分解性シラン化合物として、1官能性のシラン化合物を配合することができる。1官能性のシラン化合物は、加水分解性シラン化合物混合物を加水分解縮合させて部分加水分解縮合物とする際に、分子量調整剤として機能する。すなわち、比較的低分子量の部分加水分解縮合物を製造する目的や部分加水分解縮合物が高分子量化しすぎて溶媒不溶性となることを防止する目的などに使用される。目的とする部分加水分解縮合物の分子量により、その使用量を適宜調節することが好ましい。
1官能性のシラン化合物としては、前記式(e2−2)において、pが3である構造の化合物やヘキサアルキルジシロキサンが好ましい。これら化合物におけるアルキル基は、炭素数4以下が好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
【0161】
化合物(e2−1)と化合物(e2−2)を用いて製造された部分加水分解縮合物は、下式(e4)で表される平均組成式の構造を有するものとなる。ただし、実際は加水分解性基又はシラノール基が残存した生成物(部分加水分解縮合物)であるので、この生成物を化学式で表すことは困難である。式(e4)で表される平均組成式は、上記のように製造された部分加水分解縮合物において、加水分解性基又はシラノール基の全てが完全に加水分解し、縮合してシロキサン結合となった場合の化学式である。
【0162】
【化7】
式(e4)中、R、R、Q及びpは、上述したものと同様である。s、及びtは、重合度の異なる複数の部分加水分解縮合物における各単位の平均存在モル数である。
【0163】
式(e4)で表される平均組成式の構造を有する部分加水分解縮合物においては、化合物(e2−1)及び化合物(e2−2)にそれぞれ由来する単位は、ランダムに配列していると推測される。なお、化合物(e2−1)及び化合物(e2−2)を用いた場合の平均組成式(e4)におけるs/t(モル比)は、撥インク剤(E2)全体の平均値として、加水分解性シラン化合物混合物における化合物(e2−1)に対する化合物(e2−2)の含有量として上述した範囲、すなわち10/1〜90(モル比)が好ましく、10/5〜90(モル比)が特に好ましい。
【0164】
撥インク剤(E2)を化合物(e2−1)、化合物(e2−2)及び化合物(e2−3)を用いて製造した場合には、式(e4)に化合物(e2−3)に由来する単位がさらに共縮合された平均組成式の構造を有するものとなる。
【0165】
撥インク剤(E2)としては、下記シラン化合物の混合物の部分加水分解縮合物が好ましい。
(組み合わせ1)
化合物(e2−1):2−(ペルフルオロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及び2−(ペルフルオロブチル)エチルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも1種。
化合物(e2−2):テトラエトキシシラン又はテトラエトキシシランとメチルトリエトキシシラン。
(組み合わせ2)
化合物(e2−1):2−(ペルフルオロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及び2−(ペルフルオロブチル)エチルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも1種。
化合物(e2−2):テトラエトキシシラン又はテトラエトキシシランとメチルトリエトキシシラン。
1官能性のシラン化合物:ヘキサメチルジシロキサン又はトリメチルメトキシシラン
(組み合わせ3)
化合物(e2−1):2−(ペルフルオロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及び2−(ペルフルオロブチル)エチルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも1種。
化合物(e2−2):テトラエトキシシラン又はテトラエトキシシランとメチルトリエトキシシラン。
化合物(e2−3):3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン又は3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
(組み合わせ4)
化合物(e2−1):2−(ペルフルオロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及び2−(ペルフルオロブチル)エチルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも1種。
化合物(e2−2):テトラエトキシシラン又はテトラエトキシシランとメチルトリエトキシシラン。
化合物(e2−3):3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン又は3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン
1官能性のシラン化合物:ヘキサメチルジシロキサン又はトリメチルメトキシシラン
(組み合わせ5)
化合物(e2−1):2−(ペルフルオロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及び2−(ペルフルオロブチル)エチルトリメトキシシランから選ばれる少なくとも1種。
化合物(e2−2):テトラエトキシシラン又はテトラエトキシシランとメチルトリエトキシシラン。
化合物(e2−3):3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
1官能性のシラン化合物:ヘキサメチルジシロキサン又はトリメチルメトキシシラン
【0166】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物における撥インク剤(E2)は、露光、硬化等の過程においては、含まれるシラノール基がさらに縮合し、紫外線/オゾン照射をしても優れた撥インク性を示す隔壁を形成するものと考えられる、
【0167】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物における撥インク剤(E2)の数平均分子量(Mn)は、500以上が好ましく、1,000,000未満が好ましく、10,000未満が特に好ましい。数平均分子量(Mn)が上記範囲の下限値以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて隔壁を形成する際に、基板表面からの脱離を防止できる。数平均分子量(Mn)が上記範囲の上限値未満であると、溶媒への溶解性が良好で、作業性に優れる。撥インク剤(E2)の数平均分子量(Mn)は、反応条件等を選択することにより調節できる。
【0168】
(撥インク剤(E2)の製造)
本発明のネガ型感光性樹脂組成物における撥インク剤(E2)は、上述した加水分解性シラン化合物の混合物を加水分解し、部分縮合させる(以下、「反応工程」ともいう。)ことで製造できる。加水分解及び部分縮合は、上述の通り、加水分解性基の加水分解反応によるシラノール基の生成とシラノール基同士の脱水縮合反応によるシロキサン結合を生成する反応である。反応工程には、加水分解性シラン化合物を加水分解縮合させる反応に通常用いる反応条件を、特に制限なく適用することができる。例えば、水、触媒、有機溶媒等を用いることができる。
【0169】
反応工程において水を用いる場合、その量は、加水分解性シラン化合物の混合物の100質量部に対して、25〜9,900質量部が好ましく、100〜1,900質量部が特に好ましい。水の量を上記範囲とすることで、加水分解及び縮合反応の制御がし易くなる。
撥インク剤(E2)は、上述した加水分解性シラン化合物を含む混合物を、加水分解及び縮合反応させることで製造できる。該反応には、通常用いられる塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸等の有機酸を触媒として用いるのが好ましく、塩酸、硫酸、硝酸等が特に好ましい。用いる触媒の量としては、加水分解性シラン化合物を含む混合物の全量に対して、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜1質量%が特に好ましい。該反応には溶媒を用いてもよい。溶媒としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒としては、上述した撥インク剤(E1)の合成で使用可能な溶媒等が使用できる。有機溶媒は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
反応工程において、有機溶媒の量は、加水分解性シラン化合物の混合物の100質量部に対して、25〜9,900質量部が好ましく、100〜1,900質量部が特に好ましい。
【0170】
得られる部分加水分解縮合物は、反応工程で用いた溶媒と共にネガ型感光性樹脂組成物に配合される。したがって、反応工程に用いる溶媒としては、撥インク剤(E2)中のシラノール基を安定化する溶媒を用いることが好ましい。シラノール基を安定化する溶媒としては、水酸基を有し、25℃における比誘電率(ε)が5〜20の範囲の化合物が挙げられる。
【0171】
具体的には、炭素原子数2〜8のグリコール系のモノアルキルエーテルアセテート溶媒、グリコール系のモノアルキルエーテル溶媒、グライム系溶媒、炭素原子数2〜4の炭化水素系アルコール等が挙げられる。より具体的には、グリコール系のモノアルキルエーテルアセテート溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ε:8.3)、グリコール系のモノアルキルエーテル溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(ε:12.3)、炭化水素系アルコールとして、2−プロパノール(ε:19.92)等が挙げられる。プロピレングリコールモノメチルエーテルは、シラノール基の安定化効果が高い点で特に好ましい。
【0172】
反応工程は、室温から溶媒の沸点までの温度で、適当な撹拌条件の下で実施することが好ましい。反応時間は、用いる原料成分の量、反応温度、撹拌条件等にもよるが、概ね0.5〜24時間、好ましくは1〜10時間を挙げることができる。反応終了後、得られた撥インク剤(E2)を、有機溶媒を除去することなく、本発明のネガ型感光性樹脂組成物中に添加することもできる。通常の方法により有機溶媒を除去してから撥インク剤(E2)を単離した後、ネガ型感光性樹脂組成物中に添加してもよい。
【0173】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の撥インク剤(E)の含有割合は、0.01〜30質量%が好ましく、0.05〜20質量%が特に好ましい。含有割合が上記範囲の下限値以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物から形成される隔壁の表面張力を低減でき、撥インク性に優れた隔壁が得られる。上記範囲の上限値以下であると、隔壁と基材との密着性が良好になる。
【0174】
[溶媒(F)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、通常溶媒(F)を含有する。ネガ型感光性樹脂組成物が溶媒(F)を含むと、ネガ型感光性樹脂組成物の粘度が低減するため、ネガ型感光性樹脂組成物の基材上への塗布がしやすい。よって、均一なネガ型感光性樹脂組成物の塗膜が形成できる。なお、ネガ型感光性樹脂組成物が溶媒(F)を含まない場合には、ネガ型感光性樹脂組成物の塗膜が、ネガ型感光性樹脂組成物の膜と同じものとなる。
【0175】
溶媒(F)は、ネガ型感光性樹脂組成物が含有する上記アルカリ可溶性樹脂(A)、黒色有機顔料(B)、光重合開始剤(C)、必要に応じて配合される架橋剤(D)、撥インク剤(E)、後述の熱硬化剤(I)及びその他の任意成分を均一に溶解又は分散させて適度な粘度とし、隔壁が形成される基材へのネガ型感光性樹脂組成物の塗布を均一かつ簡便にする機能を有し、かつこれら成分との反応性を有しないものであれば特に制限されない。
【0176】
溶媒(F)としては、例えば、上述した撥インク剤(E1)や(E2)の合成で使用可能な溶媒が使用できる。その他には、n−ブタン、n−ヘキサン等の鎖式炭化水素;シクロヘキサン等の環式飽和炭化水素;トルエン、キシレン、ベンジルアルコール等の芳香族炭化水素;水等が挙げられる。これらは、1種を用いても2種以上を併用してもよい。
このような各種有機溶媒から、ネガ型感光性樹脂組成物の種類や基板への塗工方法等により、それぞれ求められる性能を有する溶媒が適宜選択され、溶媒(F)として用いられる。
【0177】
例えば、撥インク剤(E)を含有するネガ型感光性樹脂組成物の場合、溶媒(F)には、上記機能に加えて、該組成物の塗膜の乾燥工程において溶媒(F)が蒸発する過程で、該組成物中の撥インク剤(E)とその他の固形成分の間に充分な斥力が働くように作用して、撥インク剤(E)の膜表面へ移行をしやすくする機能が求められ、該機能を有する溶媒が使用される。撥インク剤(E)を含有するネガ型感光性樹脂組成物に用いられる溶媒(F)としては、例えば、用いる撥インク剤(E)とFedorの溶解度パラメータが近く、沸点が比較的高い、例えば、沸点が165℃以上の溶媒が挙げられる。沸点の高い溶媒の使用により、ネガ型感光性組成物の乾燥速度は、充分遅くなるように調整され、撥インク剤(E)が膜の表面に移行する時間が確保できる。
【0178】
より具体的には、下式(5)で表される化合物が挙げられる。
51O(CO)52 (5)
式(5)中、R51は、炭素原子数が1〜10のアルキル基、R52は、炭素原子数が2〜10のアルキル基をそれぞれ示し、sは1〜10の整数を示す。
化合物(5)としては、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエチルエーテル等が挙げられる。
式(5)中、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテルが好ましく、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが特に好ましい。
【0179】
ネガ型感光性樹脂組成物における溶媒(F)の含有割合は、50〜99質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましく、65〜90質量%が特に好ましい。
【0180】
[微粒子(G)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて微粒子(G)を含んでいてもよい。ネガ型感光性樹脂組成物が微粒子(G)を含むことにより、ネガ型感光性樹脂組成物から得られる隔壁は、熱垂れが防止された耐熱性に優れる隔壁となる。
微粒子(G)としては、各種無機系、有機系の微粒子が使用可能であるが、塩基性高分子分散剤を吸着能の点から、マイナスに帯電しているものが好ましく用いられる。
【0181】
無機系としては、シリカ、ジルコニア、フッ化マグネシウム、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)等が挙げられる。有機系としては、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。耐熱性を考慮すると、無機系微粒子が好ましく、入手容易性や分散安定性を考慮すると、シリカ、又はジルコニアが特に好ましい。さらに、ネガ型感光性樹脂組成物の露光感度を考慮すると、微粒子(G)は、露光時に照射される光を吸収しないことが好ましく、超高圧水銀灯の主発光波長であるi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を吸収しないことが特に好ましい。
微粒子(G)の粒子径は、隔壁の表面平滑性が良好となることから、平均粒子径が1μm以下であることが好ましく、200nm以下が特に好ましい。
【0182】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の微粒子(G)の含有割合は、3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましく、7〜10質量%が特に好ましい。含有割合が上記範囲の下限値以上であると、ポストベークによる撥インク性の低下抑制効果があり、上記範囲の上限値以下であると、ネガ型感光性樹脂組成物の液の安定性が良好になる。
【0183】
[シランカップリング剤(H)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、必要に応じてシランカップリング剤(H)を含んでいてもよい。ネガ型感光性樹脂組成物がシランカップリング剤(H)を含むことで、ネガ型感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の基材密着性を向上させることができる。
シランカップリング剤(H)の具体例としては、テトラエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、ポリオキシアルキレン鎖含有トリエトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。これらは1種を用いても2種以上を併用してもよい。
【0184】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中のシランカップリング剤(H)の含有割合は、0.1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%が特に好ましい。上記範囲の下限値以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の基材密着性が向上し、上記範囲の上限値以下であると、撥インク性が良好である。
【0185】
[熱硬化剤(I)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて熱硬化剤(I)を含んでいてもよい。ネガ型感光性樹脂組成物が熱硬化剤(I)を含むことで、隔壁の耐熱性及び耐透水性を向上させることができる。
熱硬化剤(I)としては、アミノ樹脂、2個以上のエポキシ基を有する化合物、2個以上のヒドラジノ基を有する化合物、ポリカルボジイミド化合物、2個以上のオキサゾリン基を有する化合物、2個以上のアジリジン基を有する化合物、多価金属類、2個以上のメルカプト基を有する化合物、ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。中でも、形成された隔壁の耐薬品性が向上する点から、アミノ樹脂、2個以上のエポキシ基を有する化合物、2個以上のオキサゾリン基を有する化合物が特に好ましい。
【0186】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の熱硬化剤(I)の含有割合は、1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%が特に好ましい。上記範囲であると、得られるネガ型感光性樹脂組成物の現像性が良好となる。
【0187】
[リン酸化合物(J)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、必要に応じてリン酸化合物(J)を含んでいてもよい。ネガ型感光性樹脂組成物がリン酸化合物(J)を含むことで、基材との密着性を向上させることができる。
リン酸化合物しては、モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェートなどが挙げられる。
【0188】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中のリン酸化合物(J)の含有割合は、0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜1質量%が特に好ましい。上記範囲であると、得られるネガ型感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の基材との密着性が良好となる。
【0189】
[界面活性剤(K)]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて、界面活性剤(K)を含んでいてもよい。ネガ型感光性樹脂組成物が界面活性剤(K)を含むことで、硬化膜の厚さが均一になる。
【0190】
上述した撥インク剤(E)は、通常、界面活性剤としての作用も有する。インクジェット法以外の方法で画素形成を行うような光学素子用の隔壁を形成するネガ型感光性樹脂組成物は、通常、撥インク剤を含有しないため、界面活性剤を使用することが好ましい。界面活性剤(K)としては、撥インク剤(E)と同様な重合体を用いてもよく、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤(K)は市販品を用いてもよい。いずれもビックケミー・ジャパン社製の商品名で、BYK−306(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン:12質量%、キシレン:68質量%、モノフェニルグリコール:20質量%)、BYK−307(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)、BYK−323(アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン)、BYK−320(ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン:52質量%、ホワイトスピリット:43質量%、PGMEA:5質量%)、BYK−350(アクリル系共重合物)等が挙げられる。
【0191】
ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の界面活性剤(K)の含有割合は、0.01〜30質量%が好ましく、0.05〜20質量%が特に好ましい。上記範囲であると、得られるネガ型感光性樹脂組成物の膜の厚さの均一性が良好となる。
【0192】
[その他の添加剤]
本発明におけるネガ型感光性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、硬化促進剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、紫外線吸収剤等を使用することができる。
【0193】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A1)及びアルカリ可溶性樹脂(A2)を含むアルカリ可溶性樹脂(A)と、黒色有機顔料(B)と、光重合開始剤(C)とを含有する。さらに、必要に応じて、架橋剤(D)、撥インク剤(E)及び溶媒(F)を含有する。さらに、上記の微粒子(G)、熱硬化剤(I)、シランカップリング剤(H)、リン酸化合物(J)、界面活性剤(K)及びその他の添加剤を含有してもよい。
【0194】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物の固形分酸価は、10〜50mgKOH/gであり、20〜45mgKOH/gが好ましく、34〜45mgKOH/gが特に好ましい。固形分酸価が上記範囲の下限値以上であると、アルカリ現像液中での黒色有機顔料(B)の分散性が良好であり、凝集及び沈降がしにくい。よって、アルカリ現像液をリサイクルする際にフィルタの目詰まりが生じず、生産性の向上に寄与できる。上記範囲の上限値以下であると、ネガ型感光性樹脂組成物を用いて得られる膜の未露光部のアルカリ現像液への溶解性が良好であり、パターン形成が良好である。
【0195】
ネガ型感光性樹脂組成物の固形分酸価の調整は、上記配合成分のうちの固形分を構成する成分、すなわち、溶媒(F)を除く成分の酸価と配合量を調整することで行われる。ただし、ネガ型感光性樹脂組成物における各成分の配合量は、各成分の機能により酸価以外の観点から、成分毎に上記の通り好ましい範囲があるので、その配合量の範囲内で酸価を調整することが求められる。
本発明においては、他の成分に比べて配合量が比較的大きく、かつ酸価の調整が容易なアルカリ可溶性樹脂(A)により、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分酸価を上記範囲に調整している。例えば、アルカリ可溶性樹脂(A)以外の固形分成分が酸価を有しない場合、酸価が100mgKOH/gのアルカリ可溶性樹脂(A)を、ネガ型感光性樹脂組成物の全固形分に10〜50質量%となる量配合することで、上記本発明のネガ型感光性樹脂組成物の固形分酸価を10〜50mgKOH/gに調整できる。
【0196】
ネガ型感光性樹脂組成物は、通常のネガ型感光性樹脂組成物と同様に、フォトリソグラフィ等の材料として用いられる。得られた硬化膜は、通常のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜が用いられる光学素子の部材として、使用することが可能である。
【0197】
(ネガ型感光性樹脂組成物の好ましい組み合わせ)
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、用途や要求特性に合わせて、組成と配合比を選択することが好ましい。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物における各種配合成分の好ましい組成を以下に示す。
【0198】
<組み合わせ1>
アルカリ可溶性樹脂(A):以下のアルカリ可溶性樹脂(A1)とアルカリ可溶性樹脂(A2)のみからなり、アルカリ可溶性樹脂(A1)とアルカリ可溶性樹脂(A2)のいずれかの質量平均分子量が10,000以上であり、アルカリ可溶性樹脂(A)としての酸価が10〜350mgKOH/gである樹脂であって、ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中に10〜60質量%、
(アルカリ可溶性樹脂(A1):ビスフェノールA型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂、及び上記式(A1−2a)〜(A1−2c)で表されるエポキシ樹脂に酸性基とエチレン性二重結合とを導入した樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの樹脂であって、アルカリ可溶性樹脂(A)の全量に対して85〜97質量%、アルカリ可溶性樹脂(A2):主鎖に芳香族環を含まず、分子中に酸性基を有する樹脂から選ばれる少なくとも1つの樹脂であって、アルカリ可溶性樹脂(A)の全量に対して3〜15質量%)、
【0199】
黒色有機顔料(B):単独の化合物からなる黒色有機顔料、及び複数の有彩色の有機顔料を混合して得られる黒色有機顔料からなる群から選ばれる少なくとも1つの着色剤であって、ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中に20〜65質量%、
光重合開始剤(C):光重合開始剤(C)の全量に対して、光重合開始剤(C1)を85〜100質量%、及び該光重合開始剤(C)の全量に対して光重合開始剤(C2)を0〜15質量%含有し、ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中に3.5〜7.0質量%、
【0200】
溶媒(F):水、2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、3−メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ブチルアセテート、γ−ブチロラクトン、及びシクロヘキサノンからなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒であって、ネガ型感光性樹脂組成物中に50〜99質量%、
界面活性剤(K):フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びアクリル系界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの界面活性剤であって、ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中に0.05〜20質量%。
【0201】
<組み合わせ2>
アルカリ可溶性樹脂(A)、黒色有機顔料(B)、光重合開始剤(C)及び溶媒(F)は組み合わせ1と同様であり、さらに、架橋剤(D)及び/又は撥インク剤(E)を以下の通り配合する。
架橋剤(D):1分子中に2つ以上のエチレン性二重結合を有し、酸性基を有しない化合物であって、ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中に2〜15質量%、
撥インク剤(E):撥インク剤(E1)又は撥インク剤(E2)であって、ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中に0.01〜30質量%。
【0202】
[光学素子用隔壁及びその製造方法]
本発明の隔壁は、基板表面に区画を設けるために形成される隔壁であって、上記本発明のネガ型感光性樹脂組成物の硬化膜からなる。
本発明の隔壁は、光学素子の用途に好適に用いられ、上記ネガ型感光性樹脂組成物が黒色着色剤(B)を含有することから、得られる隔壁は、該隔壁が基板表面を複数の区画に仕切るように形成されてなるブラックマトリックスへの適用が可能である。
本発明の隔壁は、例えば、基板上に複数の画素と隣接する画素間に位置する隔壁とを有する、光学素子用のブラックマトリックスに適用される。
【0203】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いれば、マスクパターンに近い微細ラインに隔壁を形成することができ、同時に、隔壁にコンタクトホールが必要な場合には、微小なコンタクトホールの形成が可能である。さらに、ネガ型感光性樹脂組成物が撥インク剤(E)を含有する場合には、充分な撥インク性の付与も同時に達成できる。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いて、本発明の光学素子用の隔壁を製造する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0204】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を、上記基板表面に塗布して塗膜を形成し(塗膜形成工程)、次いで、上記塗膜を乾燥して膜とし(乾燥工程)、次いで、上記膜の隔壁となる部分のみを露光して光硬化させ(露光工程)、次いで、上記光硬化した部分以外の塗膜を除去して、上記塗膜の光硬化部分からなる隔壁を形成させ(現像工程)、次いで、必要に応じて、上記形成された隔壁等をさらに熱硬化させる(ポストベーク工程)ことにより、本発明の光学素子用の隔壁が製造できる。また、現像工程とポストベーク工程の間に、上記形成された隔壁等をさらに光硬化させる(ポスト露光工程)を入れてもよい。
【0205】
基板の材質は、特に限定されるものではないが、各種ガラス板;ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル樹脂等の熱可塑性プラスチックシート;エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂の硬化シート等を使用できる。特に、耐熱性の点からガラス板、ポリイミド等の耐熱性プラスチックが好ましい。また、ポスト露光を、隔壁が形成されていない裏面(基板側)から行うこともあるため、透明基板であることが好ましい。
基板のネガ型感光性樹脂組成物の塗布面は、塗布前に予めアルコール洗浄、紫外線/オゾン洗浄等で洗浄することが好ましい。
また、BOA型のカラーフィルタのように、隔壁をブラックマトリックスの形態でTFTアレイ基板上に形成する場合には、基板表面に予めTFTアレイ等の所定の部材が形成されたものを準備すればよい。
【0206】
(塗膜形成工程)
塗布方法としては、膜厚が均一な塗膜が形成される方法であれば特に制限されず、スピンコート法、スプレー法、スリットコート法、ロールコート法、回転塗布法、バー塗布法等、通常の塗膜形成に用いられる方法が挙げられる。
塗膜の膜厚は、最終的に得られる隔壁の高さとネガ型感光性樹脂組成物の固形分濃度を勘案して決められる。塗膜の膜厚は、最終的に得られる隔壁の高さの500〜2,000%が好ましく、550〜1,000%が特に好ましい。塗膜の膜厚は0.3〜100μmが好ましく、1〜50μmが特に好ましい。
【0207】
(乾燥工程)
上記塗膜形成工程で基板表面に形成された塗膜を乾燥し、膜を得る。乾燥によって、塗膜を構成するネガ型感光性樹脂組成物に含まれる溶媒を含む揮発成分が揮発、除去され、粘着性のない膜が得られる。また、ネガ型感光性樹脂組成物が撥インク剤(E)を含有する場合には、該撥インク剤(E)が塗膜表面近傍に移行する。
乾燥方法としては、真空乾燥や加熱乾燥(プリベーク)を採用することが好ましい。また、塗膜外観のムラを発生させず、効率よく乾燥させるために、真空乾燥と加熱乾燥を併用することがより好ましい。
真空乾燥の条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、10〜500Paで10〜300秒間行うことが好ましい。
加熱乾燥は、基板とともに塗膜をホットプレート、オーブン等の加熱装置により、50〜120℃で10〜2,000秒間行うことが好ましい。
【0208】
(露光工程)
得られた膜の一部に所定パターンのマスクを介して露光を行う。露光部のネガ型感光性樹脂組成物は硬化し、未露光部のネガ型感光性樹脂組成物は硬化しない。照射する光としては、可視光、紫外線、遠紫外線、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、Fエキシマレーザ、Krエキシマレーザ、KrArエキシマレーザ、Arエキシマレーザ等のエキシマレーザ、X線、電子線等が挙げられる。波長100〜600nmの光が好ましく、波長300〜500nmの範囲に分布を有する電磁波がより好ましく、i線(365nm)、h線(405nm)及びg線(436nm)が特に好ましい。
照射装置としては、公知の超高圧水銀灯等を用いることができる。露光量は、5〜1,000mJ/cmが好ましく、50〜400mJ/cmが特に好ましい。露光量が上記範囲の下限値以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化が充分である。上記範囲の上限値以下であると、高い解像度が得られる。
【0209】
(現像工程)
現像液により現像し、未露光部分のネガ型感光性樹脂組成物の膜を除去する。アルカリ現像液としては、無機アルカリ類、アミン類、アルコールアミン類、第4級アンモニウム塩等のアルカリ類を含むアルカリ水溶液を用いることができる。またアルカリ現像液には、溶解性の向上や残渣除去のために、界面活性剤やアルコール等の有機溶媒を添加することができる。
現像時間(現像液に接触させる時間)は、5〜180秒間が好ましい。また現像方法は液盛り法、ディッピング法、シャワー法等が挙げられる。現像後、高圧水洗や流水洗浄を行い、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、基板上の水分を除去できる。
ここで、現像処理に用いたアルカリ現像液は、通常、フィルタ処理等の後、現像に再利用される。本発明のネガ型感光性樹脂組成物においては、アルカリ現像液中においても、該組成物が含有する黒色有機顔料(B)が良好な分散性を有するように、固形分成分に上記特徴を持たせたものであり、黒色有機顔料(B)の凝集・沈降等によるフィルタの目詰まりが生じず、生産性の向上に寄与することが可能である。
【0210】
(ポスト露光工程)
次に、必要に応じてポスト露光を行ってもよい。ポスト露光は隔壁が形成されている表面、又は隔壁が形成されていない裏面(基板側)のいずれから行ってもよい。また、表裏両面から露光してもよい。好ましい露光量としては、50mJ/cm以上であり、200mJ/cm以上がより好ましく、1,000mJ/cm以上がさらに好ましく、2,000mJ/cm以上が特に好ましい。
【0211】
照射する光としては、紫外線が好ましく、光源としては、公知の超高圧水銀灯又は高圧水銀灯等を用いることができる。これらの光源は、隔壁の硬化に寄与する600nm以下の光を発光し、かつ、隔壁の酸化分解の原因となる200nm以下の光の発光が少ないため、好ましく用いられる。さらに水銀灯に用いられている石英管ガラスが、200nm以下の光をカットする光学フィルタ機能を有することが好ましい。
【0212】
光源としては、低圧水銀灯を用いることもできる。ただし、低圧水銀灯は200nm以下の波長の発光強度も高く、オゾンの生成により隔壁の酸化分解が起こり易いため、多量の露光を行うことは好ましくない。露光量は500mJ/cm以下であることが好ましく、300mJ/cm以下が特に好ましい。
【0213】
(ポストベーク工程)
続いて、隔壁を加熱することが好ましい。ホットプレート、オーブンなどの加熱装置により、5〜90分間加熱処理をすることによって、隔壁及び隔壁で区分された領域(ドット)とからなるパターンが形成される。
加熱温度は150〜250℃が好ましく、180〜250℃が特に好ましい。加熱温度が上記範囲の下限値以上であると、隔壁の硬化が充分であり、充分な耐薬品性が得られ、その後の画素を形成する際にインクを塗布した場合に、そのインクに含まれる溶媒により隔壁が膨潤したり、インクが滲んでしまうことがない。上記範囲の上限値以下であると、隔壁の熱分解が生じにくい。
【0214】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物から形成されるパターンは、隔壁の幅の平均が、100μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが特に好ましい。また、隣接する隔壁間の距離(ドットの幅)の平均が、300μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。また、隔壁の高さの平均が、0.05〜50μmであることが好ましく、0.2〜10μmであることが特に好ましい。
【0215】
本発明の隔壁を、例えば、カラーフィルタがTFTアレイ基板上に配置された、いわゆるBOA型のカラーフィルタにブラックマトリックスの形態で適用する場合、TFT等のスイッチング素子と画素電極を接続するために、隔壁に、その膜厚方向に貫通した貫通孔をコンタクトホールとして形成する必要がある。コンタクトホールの形成は、上記露光工程で用いる所定パターンのマスクを、コンタクトホールが形成可能なパターンに作製することで行われる。コンタクトホールの大きさは、用いる光学素子の種類や設計によるが、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いれば、コンタクトホールとなる貫通孔において水平断面積が最大である断面の長径、すなわち最大孔径が20μm以下という微小なコンタクトホールの形成が可能である。したがって、本発明の隔壁は、このような微小なコンタクトホールを必要とする光学素子用の隔壁として好適である。
【0216】
ここで、膜厚方向の貫通孔がコンタクトホールとして機能するために該貫通孔における水平方向の最小孔径は1μm以上であることが好ましく、2μm以上が特に好ましい。また、コンタクトホールを充分に微小なサイズとするためには、貫通孔の水平方向の最大孔径は20μm以下であることが好ましく、15μm以下が特に好ましい。
【0217】
本発明の隔壁は、カラーフィルタ等の光学素子、有機EL素子等に利用することができる。特に、用いるマスクパターンに近い微細なラインパターンに隔壁を形成することができ、同時に、この微細な隔壁に微小なコンタクトホールを形成することが可能であることから、本発明の隔壁は、ブラックマトリックスの形態で、BOA型のカラーフィルタに好適に用いられる。
本発明のカラーフィルタは、微細なラインパターンに微小なコンタクトホールが形成された隔壁をブラックマトリックスの形態で採用していることから、このカラーフィルタをTFTアレイ基板上に形成すれば、低消費電力で高輝度を有する液晶表示装置が得られる。
【0218】
[カラーフィルタの製造方法]
ネガ型感光性樹脂組成物として撥インク剤(E)を含有しない組成物を用いた場合、上記のように基板表面に隔壁を、該隔壁が基板表面を複数の区画に仕切るように形成されてなるブラックマトリックスの形態で形成した後、この隔壁表面に、透明着色感光性樹脂組成物からなるインクを用いて、隔壁と同様な方法(フォトリソグラフィ法)で、隔壁間に位置するように画素を形成して、カラーフィルタを製造する。
【0219】
フォトリソグラフィ法に用いるインクは、主に着色成分と開始剤とバインダー樹脂成分と溶剤とを含む。着色成分としては、耐熱性、耐光性等に優れた顔料及び染料を用いることが好ましい。
バインダー樹脂成分としては、透明で耐熱性に優れた樹脂が好ましく、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。水性のインクは、溶剤として水及び必要に応じて水溶性有機溶媒を含み、バインダー樹脂成分として水溶性樹脂又は水分散性樹脂を含み、必要に応じて各種助剤を含む。また、油性のインクは、溶剤として有機溶剤を含み、バインダー樹脂成分として有機溶剤に可溶な樹脂を含み、必要に応じて各種助剤を含む。
【0220】
また、隔壁で区分された領域内に、インクジェット法によりインクジェット装置を用いてインクを注入して画素を形成することもできる。この場合、ネガ型感光性樹脂組成物として撥インク剤(E)を含有する組成物を用いることが好ましい。
【0221】
なお、本発明のカラーフィルタをTFTアレイ基板表面に形成する場合には、上記の通り、基板上に予め形成されたTFTアレイを具備する基板を用い、該基板表面の所定位置に上記本発明の製造方法によって隔壁をブラックマトリックスの形態で形成した後、該基材上の隔壁表面に、透明着色感光性樹脂組成物からなるインクを用いて、隔壁と同様な方法(フォトリソグラフィ法)で、隔壁間に位置するように画素を形成して、カラーフィルタを製造する。又は、該基材上の隔壁で仕切られた領域にインクジェット法によりインクを注入して画素を形成すればよい。
【0222】
また、上記隔壁がブラックマトリックスの形態で形成されたTFTアレイを有する又は有しない基板においては、該隔壁で仕切られた領域(ドット)内にインクを投入する前に、ドット内に露出した基板表面に、例えば、アルカリ水溶液による洗浄処理、UV洗浄処理、UVオゾン洗浄処理、エキシマ洗浄処理、コロナ放電処理、酸素プラズマ処理等の方法で親インク化処理が施されてもよい。
【0223】
インクジェット装置としては、特に限定されるものではないが、帯電したインクを連続的に噴射し、磁場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱し、その発泡を利用して間欠的に噴射する方法等の各種の方法を用いた装置を用いることができる。
画素の形状は、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型、4画素配置型等の公知のいずれの配列とすることも可能である。なお、本発明のカラーフィルタをTFTアレイ基板表面に形成する場合には、上記隔壁は、この画素の形状とTFTアレイ基材表面のTFTアレイの位置関係を考慮して設定された所定の位置に所定の形状で形成される。
【0224】
インクジェット法に用いるインクは、主に着色成分とバインダー樹脂成分と溶剤とを含む。着色成分としては、耐熱性、耐光性等に優れた顔料及び染料を用いることが好ましい。
バインダー樹脂成分としては、透明で耐熱性に優れた樹脂が好ましく、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。水性のインクは、溶剤として水及び必要に応じて水溶性有機溶媒を含み、バインダー樹脂成分として水溶性樹脂又は水分散性樹脂を含み、必要に応じて各種助剤を含む。また、油性のインクは、溶剤として有機溶剤を含み、バインダー樹脂成分として有機溶剤に可溶な樹脂を含み、必要に応じて各種助剤を含む。
なお、インクジェット法においては、上記インクジェット装置でドットにインクを注入した後、ドット内に形成されたインク層に対して、必要に応じて、乾燥、加熱硬化、紫外線硬化等の処理を行うことで画素が形成される。
【0225】
画素形成後、必要に応じて、保護膜層を形成する。保護膜層は表面平坦性を上げる目的と隔壁や画素部のインクからの溶出物が液晶層に到達するのを遮断する目的で形成することが好ましい。保護膜層を形成する場合は、事前に隔壁の撥インク性を除去することが好ましい。撥インク性を除去しない場合、オーバーコート用塗布液をはじき、均一な膜厚が得られないため好ましくない。隔壁の撥インク性を除去する方法としては、プラズマアッシング(Plasma Ashing)処理や光アッシング処理等が挙げられる。
さらに必要に応じて、カラーフィルタを用いて製造される液晶パネル等の高品位化のためにフォトスペーサ(Photo Spacer)を隔壁上に形成することが好ましい。
【0226】
[有機EL素子の製造方法]
隔壁を形成する前に、ガラス等の透明基板にスズドープ酸化インジウム錫(ITO)等の透明電極をスパッタ法等によって製膜し、必要に応じて所望のパターンに透明電極をエッチングする。
ネガ型感光性樹脂組成物として撥インク剤(E)を含有しない組成物を用いた場合、上記のように基板表面に隔壁を形成した後、蒸着法によって必要に応じ正孔注入層、必要に応じ正孔輸送層、発光層、必要に応じ正孔阻止層、必要に応じ電子輸送層、必要に応じ電子注入層などを形成する。その後,アルミニウム等の電極を蒸着法等によって形成することによって、有機EL素子の画素が得られる。
【0227】
ネガ型感光性樹脂組成物として撥インク剤(E)を含有する組成物を用いた場合、上記のように基板表面に隔壁を形成した後、インクジェット法によって,必要に応じ正孔注入層、必要に応じ正孔輸送層、発光層、必要に応じ正孔阻止層、必要に応じ電子輸送層、必要に応じ電子注入層などを形成する。その後,アルミニウム等の電極を蒸着法等によって形成することによって、有機EL素子の画素が得られる。インクジェット法を用いて,正孔輸送層、発光層を形成する場合、必要に応じて、形成前にドットの親インク化処理を行う。
【実施例】
【0228】
以下に実施例を用いて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。
なお、例1〜13及び例17〜19が実施例であり、例14〜16が比較例である。
【0229】
各測定は以下の方法で行った。
(数平均分子量(Mn)及び質量平均分子量(Mw))
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(東ソー社製、装置名:HLC−8220GPC)により、ポリスチレンを標準物質として測定した。
測定条件;
(撥インク剤(E)中のフッ素原子の含有率、エチレン性二重結合の量、酸価)
撥インク剤(E)中のフッ素原子の含有率は、1,4−ジトリフルオロメチルベンゼンを標準物質として、19F NMR測定(日本電子社製、装置名:JNM−AL300、溶媒:重アセトン)により算出した。
撥インク剤(E)中のエチレン性二重結合の量は、1,4−ジトリフルオロメチルベンゼンを標準物質として、H NMR測定により算出した。
撥インク剤(E)の酸価(mgKOH/g)は、原料である単量体の配合割合から算出した理論値である。
【0230】
[化合物の略語]
合成例及び実施例で用いた化合物の略語は以下の通りである。
(アルカリ可溶性樹脂(A1))
ZAR2001:ビスフェノールA骨格を有するエポキシ樹脂にエチレン性二重結合と酸性基とを導入した樹脂(日本化薬社製、商品名:ZAR−2001H、質量平均分子量(Mw):16,000、固形分酸価:100mgKOH/g、固形分:70質量%、PGMEA:30質量%)。
ZCR1642:上式(A1−2a)で表されるビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂にエチレン性二重結合と酸性基とを導入した樹脂(日本化薬社製、商品名:ZCR−1642H、質量平均分子量(Mw):5,800、固形分酸価:100mgKOH/g、固形分:70質量%、PGMEA:30質量%)。
ZFR1492:ビスフェノールF骨格を有するエポキシ樹脂にエチレン性二重結合と酸性基とを導入した樹脂(日本化薬社製、商品名:ZFR−1492H、質量平均分子量(Mw):23,000、固形分酸価:100mgKOH/g、固形分:65質量%、PGMEA:35質量%)。
CCR1159:クレゾールノボラック骨格を有するエポキシ樹脂にエチレン性二重結合と酸性基とを導入した樹脂(日本化薬社製、商品名:CCR−1159H、質量平均分子量(Mw):7,400、固形分酸価:100mgKOH/g、固形分:65質量%、PGMEA:35質量%)。
EA7440:クレゾールノボラック骨格を有するエポキシ樹脂にエチレン性二重結合と酸性基とを導入した樹脂(新中村化学工業社製、商品名:EA−7440、質量平均分子量(Mw):4,000、固形分酸価:40.5mgKOH/g、固形分:60質量%、PGMEA:40質量%)。
【0231】
(アルカリ可溶性樹脂(A2))
UC3080:スチレンとアクリル酸をスチレン:アクリル酸のモル比で62:38の割合で共重合した樹脂(東亜合成社製、商品名:UC−3080、質量平均分子量(Mw):14,000、酸価:230mgKOH/g、固形分:100質量%)。
UC3900:スチレンとアクリル酸をスチレン:アクリル酸のモル比で81:19の割合で共重合した樹脂(東亜合成社製、商品名:UC−3900、質量平均分子量(Mw):4,600、酸価:108mgKOH/g、固形分:100質量%)。
MSP9612:N−フェニルマレイミドとベンジルメタクリレートとメタクリル酸とスチレンを共重合した樹脂(新中村化学社製、商品名:MSP−9612、質量平均分子量(Mw):26,000、固形分酸価:32mgKOH/g、固形分:30質量%、PGMEA:70質量%)。
MSP9610:N−フェニルマレイミドとベンジルメタクリレートとメタクリル酸とスチレンを共重合した樹脂(新中村化学社製、商品名:MSP−9610、質量平均分子量(Mw):28,000、固形分酸価:75mgKOH/g、固形分:30質量%、PGMEA:70質量%)。
【0232】
(黒色有機顔料(B)+高分子分散剤)
DINA:黒色有機顔料のPGMEA分散液(DIC社製、商品名:DINA混色BM、有彩色の有機顔料混合物(黒色):15質量%、高分子分散剤:4.5質量%、PGMEA:80.5質量%、固形分酸価:0mgKOH/g)。
S2961:黒色有機顔料のPGMEA分散液(大日精化工業社製、商品名:S2961、アゾメチン系黒色有機顔料:12質量%、高分子分散剤:7.2質量%、PGMEA:80.8質量%、固形分酸価:7.2mgKOH/g)。
【0233】
(光重合開始剤(C1))
OXE01:1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−,2−(0−ベンゾイルオキシム)(式(1)で表される化合物において、R:フェニル基、R:ヘキシル基で示される。BASF社製、商品名:OXE01)。
(光重合開始剤(C2))
OXE02:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)(式(2)で表される化合物において、R:メチル基、R:メチル基、R:エチル基、R、R、及びR:水素原子、R:2−メチルベンゾイル基で示される。BASF社製、商品名:OXE02。)。
(架橋剤(D))
UX5002:多官能ウレタンアクリレートオリゴマー(日本化薬社製、商品名:KAYARAD UX−5002D−P20、固形分:80質量%、PGMEA:20質量%)。
(界面活性剤(K))
BYK−307:商品名(ビックケミー・ジャパン社製。ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)。
【0234】
(撥インク剤(E1)の合成に用いた化合物)
MEK:2−ブタノン。
C6FMA:CH=C(CH)COOCHCH(CFF(単量体(a1)に該当する。)。
MAA:メタクリル酸(単量体(a4)に該当する。)。
PME400:ブレンマーPME−400(日本油脂社製、CH=C(CH)COO(CHCHO)CH、式中のkは分子間の平均値を示し、kの値は約9である。)(単量体(a5)の化合物(51)に該当する。)。
PME1000:ブレンマーPME−1000(日本油脂社製、CH=C(CH)COO(CHCHO)CH:式中のkは分子間の平均値を示し、kの値は約23である。)(単量体(a5)の化合物(51)に該当する。)。
2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(単量体(a3)に該当する。)。
V−65:アゾ系重合開始剤(和光純薬工業社製、商品名:V−65)。
AOI:2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、商品名:カレンズAOI)(化合物(z1)に該当する。)。
DBTDL:ジブチル錫ジラウレート。
BHT:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール。
(撥インク剤(E2)の合成に用いた化合物)
化合物(e2−1−1):F(CFCHCHSi(OCH(旭硝子社製)。
化合物(e2−2−1):Si(OCHCH(コルコート社製)。
化合物(e2−3−1):CH=CHCOO(CHSi(OCH(東京化成工業社製)。
1官能性のシラン化合物(1):トリメチルメトキシシラン、(CHSi(OCH)(東京化成工業社製)。
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
(溶媒(F))
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
【0235】
[合成例1:撥インク剤(E1−1)の合成]
以下の方法で撥インク剤(E1)に分類される撥インク剤(E1−1)を合成した。
撹拌機を備えた内容積2L(リットル)のオートクレーブに、MEK(700g)、C6FMA(140g)、MAA(15g)、PME400(60g)、2−HEMA(85g)及び重合開始剤V−65(2g)を仕込み、窒素ガス中で撹拌しながら、50℃で24時間重合させ、粗共重合体を合成した。得られた粗共重合体の溶液をヘキサンに加えて再沈精製した後、真空乾燥し、共重合体1(242g)を得た。
該共重合体1は、数平均分子量(Mn)が35,000、質量平均分子量(Mw)が91,000であった。
【0236】
(エチレン性二重結合の導入)
温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量300mLのガラス製フラスコに、共重合体1(40g)、AOI(12g)、DBTDL(0.05g)、BHT(0.2g)及びMEK(130g)を仕込み、撹拌しながら、40℃で24時間反応させ、撥インク剤(E1−1)の溶液を得た。得られた撥インク剤(E1−1)のMEK溶液をヘプタンに加え再沈精製し、真空乾燥し、撥インク剤(E1−1)(65.6g)を得た。数平均分子量(Mn)は38,000であった。撥インク剤(E1−1)の赤外分光分析を行ったところ、アクリロイル基のC=C伸縮振動に由来する吸収帯(1,635cm−1)、アクリロイル基のCH面内変角振動に由来する吸収帯(1,409cm−1)、及びアクリロイル基のCH面外変角振動に由来する吸収帯(810cm−1)が存在すること、またAOIのNCO伸縮振動に由来する吸収帯(2,274cm−1)が消失していたことから、撥インク剤(E1−1)中にアクリロイル基が存在することが確認された。
得られた撥インク剤(E1−1)の質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、フッ素原子の含有率、エチレン性二重結合の量(C=C量、×10−3mol/g)、酸価(mgKOH/g)を表1に示した。
得られた撥インク剤(E1−1)とPGMEAを質量比で1:9の割合で混合した撥インク剤溶液(E1−11)を調製し、以下の各例に用いた。
【0237】
[合成例2:撥インク剤(E1−2)の合成]
以下の方法で、撥インク剤(E1)に分類される撥インク剤(E1−2)を合成した。
共重合体1の合成において、原料の配合を表1のように変更した以外は同様の共重合反応により、共重合体2を得た。次に、撥インク剤(E1−1)の合成において、原料の配合を表1のように変更した以外は同様の反応により、撥インク剤(E1−2)を得た。得られた撥インク剤(E1−2)の質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、フッ素原子の含有率、エチレン性二重結合の量(C=C量、×10−3mol/g)、酸価(mgKOH/g)を表1に示した。
上記で得られた撥インク剤(E1−2)とPGMEAを質量比で1:9の割合で混合した撥インク剤溶液(E1−21)を調製し、以下の各例に用いた。
【0238】
【表1】
【0239】
[合成例3:撥インク剤(E2−1)の製造]
以下の方法で、撥インク剤(E2)に分類される撥インク剤(E2−1)を合成した。
撹拌機を備えた1,000cmの三口フラスコに、化合物(e2−1−1)の11.8g、化合物(e2−2−1)の29.4g、化合物(e3−1−1)の29.4g、及び1官能性のシラン化合物(1)の29.4gを入れて、加水分解性シラン化合物の混合物を得た。次いで、該混合物にPGMEAの564.7gを入れて、溶液(原料溶液)とした。
得られた原料溶液に、40℃で、撹拌しながら、1.0質量%塩酸水溶液を52.0g滴下した。滴下終了後、40℃で5時間撹拌して、撥インク剤(E2−1)をPGMEA溶液(撥インク剤(E2−1)濃度:10質量%。以下、「(E2−1)液」という。)として得た。なお、反応液中の成分をガスクロマトグラフィを使用して測定し、原料としての各化合物が検出限界以下になったことを確認した。
得られた撥インク剤(E2−1)の質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、フッ素原子の含有率を、撥インク剤(E2−1)の仕込み組成(モル%)とともに表2に示す。
【0240】
[合成例4:撥インク剤(E2−2)の製造]
以下の方法で、撥インク剤(E2)に分類される撥インク剤(E2−1)を合成した。
撹拌機を備えた1,000cmの三口フラスコに、化合物(e2−1−1)の16.7g、化合物(e2−2−1)の41.7g、及び化合物(e3−1−1)の41.7gを入れて、加水分解性シラン化合物の混合物を得た。次いで、該混合物にPGMEの564.7gを入れて、溶液(原料溶液)とした。
得られた原料溶液に、40℃で、撹拌しながら、1.0質量%硝酸水溶液を65.7g滴下した。滴下終了後、40℃で5時間撹拌して、撥インク剤(E2−2)をPGME溶液(撥インク剤(E2−2)濃度:10質量%。以下、「(E2−2)液」という。)として得た。なお、反応液中の成分をガスクロマトグラフィを使用して測定し、原料としての各化合物が検出限界以下になったことを確認した。
得られた撥インク剤(E2−2)の質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、フッ素原子の含有率を、撥インク剤(E2−2)の仕込み組成(モル%)とともに表2に示す。
【0241】
【表2】
【0242】
[例1〜19:ネガ型感光性樹脂組成物の調製、隔壁の形成及び評価]
表3及び表4に示す割合で、アルカリ可溶性樹脂(A1)(溶媒としてPGMEAを30〜40質量%含む。)、アルカリ可溶性樹脂(A2)(溶媒としてPGMEAを0〜70質量%含む。)、黒色有機顔料(B)(溶媒としてPGMEAを80.5〜80.8質量%含む。)、光重合開始剤(C1)、光重合開始剤(C2)、架橋剤(D)(溶媒としてPGMEAを20質量%含む。)、撥インク剤(E)(溶媒としてPGMEA又はPGMEを90質量%含む。)、溶媒(F)及び界面活性剤(K)を、常温下、撹拌機を備えたセパラブルフラスコ中で配合し、ネガ型感光性樹脂組成物を得た。
ガラス基板(旭硝子社製、商品名:AN100、横×縦(7.5mm×7.5mm)、厚さ0.7mm)上にスピンナー(ミカサ社製、装置名:MS−A200)を用いてネガ型感光性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成した(塗膜形成工程)。次に、100℃、2分間ホットプレート上で乾燥し、膜厚3μmの膜を形成したガラス基板(1)を得た(乾燥工程)。なお、ガラス基板(1)については、光学濃度及び現像性の評価用と以下のパターン形成用の複数枚を製造した。
【0243】
次に、ガラス基板(1)が有する膜に、10μm×10mmの線状の開口部、及び50μm×50μmの開口部の中央に直径20μmの遮光部を持つフォトマスクを通して、超高圧水銀灯(大日本科研社製、装置名:MA−1200)を用いて、露光量がi線(365nm)基準で50mJ/cmの光を照射した(露光工程)。
次いで、未露光部分を無機アルカリタイプ現像液(横浜油脂工業社製、商品名:セミクリーンDL−A4の10倍希釈水溶液)に1分間浸漬して現像し、未露光部を水により洗い流し、乾燥させた(現像工程)。
次いで、ホットプレート上、220℃で1時間加熱することにより、パターン(ブラックマトリックス)が形成されたガラス基板(2)を得た(ポストベーク工程)。これらについて、パターン形成性、現像性、撥インク性を以下に示す方法で測定、評価した。評価結果を表3及び表4に示す。
【0244】
(アルカリ現像液中での黒色有機顔料(B)の沈降)
上記ガラス基板(1)の表面から剥がした膜の80mgを、上記現像工程で用いたアルカリ現像液と同等のアルカリ濃度のNaHCO水溶液(1質量%)の25gに溶解し24時間静置後、目視で沈殿物の有無を観察した。沈殿物が観察されなかったものを○(良好)、観察されたものを×(不良)とした。
(光学濃度)
上記ガラス基板(1)について、伊原電子工業社製のIhca−T5にて、光学濃度を測定した。膜厚3μmで光学濃度が3以上のものを○(良好)、3未満のものを×(不良)とした。
【0245】
(ライン解像度)
上記ガラス基板(2)について、幅10μm、長さ10mmの線状のパターンが残ったものを○(良好)、残らなかったものを×(不良)としてパターンの有無を評価した。
(コンタクトホール解像度)
上記ガラス基板(2)について、隔壁上部における直径が20μmの円形の空孔が現像により、底部において残渣等残らずに直径1μm以上で貫通したものを○(良好)、貫通しなかったものを×(不良)として、パターンの有無を評価した。
【0246】
(撥インク性)
撥インク性は、上記ガラス基板(2)上の硬化膜のPGMEAの接触角(度)により評価した。接触角とは、固体と液体が接触する点における液体表面に対する接線と固体表面がなす角で、液体を含む方の角度で定義した。この角度が大きいほど硬化膜の撥インク性が優れることを意味する。PGMEAの接触角35度以上を○(良好)、35度未満を×(不良)とした。
接触角の測定は、Kruss社製のDSA10により行った。
【0247】
(ネガ型感光性樹脂組成物の貯蔵安定性)
上記ネガ型感光性樹脂組成物を調製後、5℃で3ヶ月間静置保管した。保管後のネガ型感光性樹脂組成物の上層と下層から採取した液により上記ガラス基板(1)と同様に膜を作製し、その光学濃度が0.5以下であるものを○(良好)、0.5を超えるものを×(不良)とした。
【0248】
【表3】
【0249】
【表4】
【0250】
例1〜13及び例17〜19の評価結果より、本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる膜のアルカリ現像液への溶解性は良好であり、同時に光学濃度も良好であることが分かった。
また、該ネガ型感光性樹脂組成物から微細な線幅のパターンが形成でき、特に微小なコンタクトホールの形成も可能であった。さらに、該ネガ型感光性樹脂組成物から形成された硬化膜の撥インク性も良好であった。
一方、固形分中の酸価が10mgKOH/g未満である例14は、アルカリ現像液中で黒色有機顔料(B)の沈降が見られた。また、アルカリ可溶性樹脂(A1)のみを用いた例16においても、沈降が見られた。これは、アルカリ可溶性樹脂(A)により黒色有機顔料(B)が充分に被覆されていないためと推定している。
アルカリ可溶性樹脂(A2)のみを用いた例15では、ライン及びコンタクトホールの解像度が不良であった。これは、アルカリ可溶性樹脂(A1)を用いないことで形状保持が困難であるためと推定している。
【産業上の利用可能性】
【0251】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物によれば、微細なラインパターンと微小なコンタクトホールを有する隔壁及びブラックマトリックスを製造することができる。このようなブラックマトリックスは、カラーフィルタ、特に、低消費電力で高輝度画像が得られるBOA型のカラーフィルタや有機EL素子に好適に用いられる。
また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、黒色有機顔料を含む固形分のアルカリ現像液への溶解性・分散性に優れることから、アルカリ現像液のリサイクル利用性が増大し、生産性の向上に寄与することが可能となり、産業上の利用可能性が高い。
なお、2011年11月11日に出願された日本特許出願2011−247437号の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。