特許第6115665号(P6115665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6115665
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】水処理薬品の調製方法および水処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20170410BHJP
   C02F 1/56 20060101ALI20170410BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20170410BHJP
   C02F 1/24 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   B01D21/01 108
   B01D21/01 107A
   B01D21/01 102
   C02F1/56 E
   B01D21/01 A
   C02F1/44 D
   C02F1/24 B
   C02F1/56 Z
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-42000(P2016-42000)
(22)【出願日】2016年3月4日
【審査請求日】2016年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 昭宏
【審査官】 小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03951792(US,A)
【文献】 特開昭57−132509(JP,A)
【文献】 特開平09−038700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00− 1/78
B01D 21/00−21/34
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンイミン(PEI)とポリビニルピロリドン(PVP)を一剤で含む溶液状水処理薬品を調製する方法であって、PEIとPVPの分子量の関係と、PEIとPVPの液中濃度の関係から、両者を混合した際にゲル化しない分子量と濃度の関係でPEIとPVPを用いる水処理薬品の調製方法であって、ゲル化の判定を以下のように行い、以下の操作方法I〜IVのいずれかに従って、一剤化薬品を調製することを特徴とする水処理薬品の調製方法。
<ゲル化の判定>
試験管倒置法で、特定の分子量のPEIとPVPを所定の濃度になるよう試験管内に入れ、撹拌混合することで均一な溶液とし、10分〜24時間、0〜50℃で静置したのち、試験管を倒置し、試験管として用いた容器を倒置した際に、容器の底面から薬液が流れ落ちない状態を「ゲル化」、粘性が増大し時間をかけて全ての薬液が流れ落ちるものを「ゾル化」、全ての薬液がただちに流れ落ちるものを「液体」とし、この「液体」を「ゲル化しない」と判定する。
(操作方法I)
それぞれ分子量の異なるPEI水溶液とPVP水溶液を複数種類準備し、PEI濃度とPVP濃度が等しくなるようにPEI水溶液とPVP水溶液とを混合し、混合液のゲル化の有無を上記の通り試験管倒置法で判定する。
ここで、ゲル化及びゾル化が起こる組み合わせを除き、ゲル化が起こらない、液体となる組み合わせで一剤化薬品を調製する。
(操作方法II)
上記操作方法Iでゲル化を起こす組み合わせにおいて、PEI水溶液とPVP水溶液の混合割合を種々変えて混合液を調製し、各混合液についてゲル化の有無を上記の通り試験管倒置法で判定する。
ここで、ゲル化及びゾル化が起こる組み合わせを除き、ゲル化が起こらない、液体となる混合割合で一剤化薬品を調製する。
(操作方法III)
用いるPEIとPVPとが予め決められており、PEIの分子量とPVPの分子量が固定されている場合、これらを混合割合を変えて、また、液中濃度を変えて混合液を調製し、各混合液についてゲル化の有無を上記の通り試験管倒置法で判定する。
PEIとPVPとの混合割合とゲル・ゾル−液体の相図を作製し、ゲル化が起こらない、液体となる領域を求め、この領域の範囲内で一剤化薬品を調製する。
(操作方法IV)
PEIとPVPとの混合割合が決められている場合、分子量の異なるPEIとPVPを複数種準備し、異なる組み合わせで混合液を調製し、各混合液についてゲル化の有無を上記の通り試験管倒置法で判定する。
PEIとPVPの分子量とゲル・ゾル−液体の相図を作製し、ゲル化が起こらない、液体となる領域を求め、この領域の範囲内で一剤化薬品を調製する。
【請求項2】
分子量1,000〜4,000,000のポリエチレンイミン(PEI)と、分子量6,000〜150,000のポリビニルピロリドン(PVP)を一剤で含む溶液状水処理薬品を調製する方法であって、PEIとPVPの分子量の関係と、PEIとPVPの液中濃度の関係から、両者を混合した際にゲル化しない分子量と濃度の関係でPEIとPVPを用いる水処理薬品の調製方法であって、ゲル化の判定を以下のように行い、PEI:PVP=1:2〜0.1(重量比)であって、PEIとPVPの合計濃度が5〜40重量%の一剤化薬品を調製することを特徴とする水処理薬品の調製方法。
<ゲル化の判定>
試験管倒置法で、特定の分子量のPEIとPVPを所定の濃度になるよう試験管内に入れ、撹拌混合することで均一な溶液とし、24時間、室温(24℃)で静置したのち、試験管を倒置し、試験管として用いた容器を倒置した際に、容器の底面から薬液が流れ落ちない状態を「ゲル化」、粘性が増大し時間をかけて全ての薬液が流れ落ちるものを「ゾル化」、全ての薬液がただちに流れ落ちるものを「液体」とし、この「液体」を「ゲル化しない」と判定する。
【請求項3】
請求項1において、分子量1,000〜4,000,000のPEIと、分子量6,000〜150,000のPVPとから、PEI:PVP=1:2〜0.1(重量比)でPEIとPVPの合計濃度が5〜40重量%の一剤化薬品を調製することを特徴とする水処理薬品の調製方法。
【請求項4】
被処理水に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水処理薬品の調製方法により調製した水処理薬品を添加することを特徴とする水処理方法。
【請求項5】
請求項4において、前記被処理水に前記水処理薬品と無機凝集剤とを添加して凝集処理する方法であって、該被処理水に前記水処理薬品と該無機凝集剤とを同時に添加して凝集処理するか、或いは、該被処理水に該水処理薬品を添加して凝集処理した後該無機凝集剤を添加して凝集処理することを特徴とする水処理方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、前記被処理水に第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物を添加して凝集処理した後、前記水処理薬品を添加して凝集処理することを特徴とする水処理方法。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項において、前記被処理水が有機物および濁質を含んでおり、該被処理水に前記水処理薬品を添加して凝集処理した後、固液分離することを特徴とする水処理方法。
【請求項8】
請求項7において、前記固液分離を、沈殿処理、加圧浮上処理、濾過、もしくは膜分離により行うことを特徴とする水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレンイミン(PEI)とポリビニルピロリドン(PVP)を一剤で含む溶液状の水処理薬品の調製方法と、この水処理薬品を用いた水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
凝集剤、脱水剤、消泡剤、分散剤、殺菌剤、洗浄剤などの水処理薬品を2種以上同時に使用する際には、2種あるいは3種以上の液体薬品を混合あるいは2種あるいは3種以上の液体および固体薬品を同一の溶媒に溶解させて(以下、一剤化処理という。)、複数の有効成分を一剤で含む液体組成物(以下、一剤化薬品という。)を調製して用いることが広く行われている。一剤化薬品の利点としては、それぞれの薬品ごとに必要であった薬注ポンプの台数を削減し、また、複数の薬品の配合比率をそれぞれの薬品の送液量などで調整しなくても良いという、コストと手間の低減が挙げられる。
【0003】
一方、一剤化処理により、一部の有効成分の析出、または、一剤化薬品のゲル化および粘度の向上により、一部の有効成分が所定の濃度で添加されない問題や、薬注ポンプによる送液が不可能となる問題が生じることがある。
【0004】
本発明者は、特許文献1にて、有機物および濁質を含む被処理水の凝集処理に有効な凝集剤として、ポリエチレンイミン(PEI)等の弱カチオン性のアミノ基を有する高分子化合物と、ポリビニルピロリドン(PVP)等のノニオン性高分子化合物とを含む凝集剤を先に提案したが、ポリエチレンイミン(PEI)とポリビニルピロリドン(PVP)とを一剤化処理しようとすると、ゲル化が生じる場合があることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2016−023796
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の通り、PEIとPVPを含む一剤化薬品を調製した場合、薬品のゲル化が生じることがあり、薬注ポンプによる送液が不可能になったり、一部の有効成分が所定の濃度で添加されなかったりする課題がある。
【0007】
本発明はこの問題を解決し、PEIとPVPの一剤化薬品をゲル化させずに調製する方法と、この一剤化薬品を用いた水処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、PEIとPVPを含む一剤化薬品の調製において、PEIとPVPの分子量の関係と、PEIとPVPの濃度の関係から、両者を混合した際にゲル化しない分子量と濃度の関係であるPEIとPVPを用いることで、上記課題を解決することができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0010】
[1] ポリエチレンイミン(PEI)とポリビニルピロリドン(PVP)を一剤で含む溶液状水処理薬品を調製する方法であって、PEIとPVPの分子量の関係と、PEIとPVPの液中濃度の関係から、両者を混合した際にゲル化しない分子量と濃度の関係でPEIとPVPを用いる水処理薬品の調製方法であって、ゲル化の判定を以下のように行い、以下の操作方法I〜IVのいずれかに従って、一剤化薬品を調製することを特徴とする水処理薬品の調製方法。
<ゲル化の判定>
試験管倒置法で、特定の分子量のPEIとPVPを所定の濃度になるよう試験管内に入れ、撹拌混合することで均一な溶液とし、10分〜24時間、0〜50℃で静置したのち、試験管を倒置し、試験管として用いた容器を倒置した際に、容器の底面から薬液が流れ落ちない状態を「ゲル化」、粘性が増大し時間をかけて全ての薬液が流れ落ちるものを「ゾル化」、全ての薬液がただちに流れ落ちるものを「液体」とし、この「液体」を「ゲル化しない」と判定する。
(操作方法I)
それぞれ分子量の異なるPEI水溶液とPVP水溶液を複数種類準備し、PEI濃度とPVP濃度が等しくなるようにPEI水溶液とPVP水溶液とを混合し、混合液のゲル化の有無を上記の通り試験管倒置法で判定する。
ここで、ゲル化及びゾル化が起こる組み合わせを除き、ゲル化が起こらない、液体となる組み合わせで一剤化薬品を調製する。
(操作方法II)
上記操作方法Iでゲル化を起こす組み合わせにおいて、PEI水溶液とPVP水溶液の混合割合を種々変えて混合液を調製し、各混合液についてゲル化の有無を上記の通り試験管倒置法で判定する。
ここで、ゲル化及びゾル化が起こる組み合わせを除き、ゲル化が起こらない、液体となる混合割合で一剤化薬品を調製する。
(操作方法III)
用いるPEIとPVPとが予め決められており、PEIの分子量とPVPの分子量が固定されている場合、これらを混合割合を変えて、また、液中濃度を変えて混合液を調製し、各混合液についてゲル化の有無を上記の通り試験管倒置法で判定する。
PEIとPVPとの混合割合とゲル・ゾル−液体の相図を作製し、ゲル化が起こらない、液体となる領域を求め、この領域の範囲内で一剤化薬品を調製する。
(操作方法IV)
PEIとPVPとの混合割合が決められている場合、分子量の異なるPEIとPVPを複数種準備し、異なる組み合わせで混合液を調製し、各混合液についてゲル化の有無を上記の通り試験管倒置法で判定する。
PEIとPVPの分子量とゲル・ゾル−液体の相図を作製し、ゲル化が起こらない、液体となる領域を求め、この領域の範囲内で一剤化薬品を調製する。
[2] 分子量1,000〜4,000,000のポリエチレンイミン(PEI)と、分子量6,000〜150,000のポリビニルピロリドン(PVP)を一剤で含む溶液状水処理薬品を調製する方法であって、PEIとPVPの分子量の関係と、PEIとPVPの液中濃度の関係から、両者を混合した際にゲル化しない分子量と濃度の関係でPEIとPVPを用いる水処理薬品の調製方法であって、ゲル化の判定を以下のように行い、PEI:PVP=1:2〜0.1(重量比)であって、PEIとPVPの合計濃度が5〜40重量%の一剤化薬品を調製することを特徴とする水処理薬品の調製方法。
<ゲル化の判定>
試験管倒置法で、特定の分子量のPEIとPVPを所定の濃度になるよう試験管内に入れ、撹拌混合することで均一な溶液とし、24時間、室温(24℃)で静置したのち、試験管を倒置し、試験管として用いた容器を倒置した際に、容器の底面から薬液が流れ落ちない状態を「ゲル化」、粘性が増大し時間をかけて全ての薬液が流れ落ちるものを「ゾル化」、全ての薬液がただちに流れ落ちるものを「液体」とし、この「液体」を「ゲル化しない」と判定する。
[3] [1]において、分子量1,000〜4,000,000のPEIと、分子量6,000〜150,000のPVPとから、PEI:PVP=1:2〜0.1(重量比)でPEIとPVPの合計濃度が5〜40重量%の一剤化薬品を調製することを特徴とする水処理薬品の調製方法。
【0013】
[4] 被処理水に、[1]〜[3]のいずれかに記載の水処理薬品の調製方法により調製した水処理薬品を添加することを特徴とする水処理方法。
【0014】
[5] [4]において、前記被処理水に前記水処理薬品と無機凝集剤とを添加して凝集処理する方法であって、該被処理水に前記水処理薬品と該無機凝集剤とを同時に添加して凝集処理するか、或いは、該被処理水に該水処理薬品を添加して凝集処理した後該無機凝集剤を添加して凝集処理することを特徴とする水処理方法。
【0015】
[6] [4]又は[5]において、前記被処理水に第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物を添加して凝集処理した後、前記水処理薬品を添加して凝集処理することを特徴とする水処理方法。
【0016】
[7] [4]ないし[6]のいずれかにおいて、前記被処理水が有機物および濁質を含んでおり、該被処理水に前記水処理薬品を添加して凝集処理した後、固液分離することを特徴とする水処理方法。
【0017】
[8] [7]において、前記固液分離を、沈殿処理、加圧浮上処理、濾過、もしくは膜分離により行うことを特徴とする水処理方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、弱カチオン性のアミノ基を有する高分子化合物であるポリエチレンイミン(PEI)と、ノニオン性高分子化合物であるポリビニルピロリドン(PVP)の一剤化薬品をゲル化させずに調製することができる。PEIとPVPとの一剤化薬品は、水処理、特に有機物および濁質を含む被処理水の凝集処理に有効であり、2種の薬剤を一剤化薬品として添加することができるため、薬注作業、薬注設備を削減して低コストで効率的な水処理を行える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1−1におけるPEI/PVP同量混合時のゲル・ゾル−液体の相図である。
図2】実施例1−1における試験管倒置法による評価時の写真である。
図3】実施例1−2におけるPVP(K−30)/PEI(P−1000)の混合時のゲル・ゾル−液体の相図である。
図4】実施例1−3におけるPVP(K−15)/PEI(IP250)の混合時のゲル・ゾル−液体の相図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
[水処理薬品の調製方法]
本発明の水処理薬品の調製方法は、ポリエチレンイミン(PEI)とポリビニルピロリドン(PVP)を一剤で含む溶液状水処理薬品を調製する方法であって、PEIとPVPの分子量の関係と、PEIとPVPの液中濃度の関係から、両者を混合した際にゲル化しない分子量と濃度の関係でPEIとPVPを用いることを特徴とする。
【0022】
<作用機構>
本発明による作用機構は以下の通りである。
ポリエチレンイミン(PEI)とポリビニルピロリドン(PVP)は水素結合を介して相互作用し、特定の分子量の組み合わせかつ特定の濃度の配合でPEIとPVPを含む水溶液はゲル化する。該水溶液のゲル化が生じない分子量の組み合わせと濃度の配合を、例えば試験管倒置法により目視で確認することで、少量の薬液を用いて、PEIとPVPを含む一剤化薬品のゲル化が生じるか否かを容易に判別することができる。
従って、ゲル化の有無を確認し、このような範囲を除いて一剤化薬品を調製すればよい。
【0023】
<ゲル化の判定>
本発明において、PEIとPVPを混合した際にゲル化しない分子量と濃度の関係を判別するには、試験管倒置法を用いることが好ましい。試験管倒置法では、特定の分子量のPEIとPVPを所定の濃度になるよう試験管内に入れ、撹拌混合することで均一な溶液とし、一定時間、一定温度で静置したのち、試験管を倒置してゲル化の有無を確認する。
【0024】
静置時間については、PEIとPVPのそれぞれの分子量と濃度に応じてゲル化するまでの時間が変化するため、10分〜24時間の範囲で適宜設定することが望ましい。静置時の温度については、調製した一剤化薬品を使用する環境に合わせれば良く、0〜50℃の範囲であることが望ましい。
【0025】
判定基準としては、試験管として用いた容器を倒置した際に、容器の底面から薬液が流れ落ちない状態を「ゲル化」、粘性が増大し時間をかけて全ての薬液が流れ落ちるものを「ゾル化」、全ての薬液がただちに流れ落ちるものを「液体」とし、この「液体」を「ゲル化しない」と判定する。
【0026】
ゲル化が生じた薬液については、ダイアフラムポンプなどの一般的な薬注ポンプでは送液が不可能であるため一剤化薬品として不適である。また、ゾル化が生じた薬液についても、粘度が高い上に、薬液温度の変化(特に低温状態)により容易にゲル状態へ転移するため、薬注ポンプによる送液は困難となり、一剤化薬品として不適である。
【0027】
なお、ゲル化の判別法としては試験管倒置法の他に落球法などが挙げられるが、特別な器具を必要とせず容易に実施できる点で、試験管倒置法が望ましい。
【0028】
試験管として用いる容器については、薬液を密封できる透明な容器であれば特に制限するものではないが、容積5〜100mLの有底円筒型のガラス製又はプラスチック製の容器(蓋付き)を使用することが望ましい。
【0029】
<具体的な操作方法>
本発明の水処理薬品の調製方法は、具体的には次のような方法で実施することができる。
【0030】
(操作方法I)
それぞれ分子量の異なるPEI水溶液とPVP水溶液を複数種類準備し、PEI濃度とPVP濃度が等しくなるようにPEI水溶液とPVP水溶液とを混合し、混合液のゲル化の有無を上記の通り試験管倒置法で判定する。
ここで、ゲル化及びゾル化が起こる組み合わせを除き、ゲル化が起こらない、液体となる組み合わせで一剤化薬品を調製する。
【0031】
(操作方法II)
上記操作方法Iでゲル化を起こす組み合わせにおいて、PEI水溶液とPVP水溶液の混合割合を種々変えて混合液を調製し、各混合液についてゲル化の有無を上記の通り試験管倒置法で判定する。
ここで、ゲル化及びゾル化が起こる組み合わせを除き、ゲル化が起こらない、液体となる混合割合で一剤化薬品を調製する。
【0032】
(操作方法III)
用いるPEIとPVPとが予め決められている場合、即ち、PEIの分子量とPVPの分子量が固定されている場合、これらを混合割合を変えて、また、液中濃度を変えて混合液を調製し、各混合液についてゲル化の有無を上記の通り試験管倒置法で判定する。
後掲の図3,4のようにPEIとPVPとの混合割合とゲル・ゾル−液体の相図を作製し、ゲル化が起こらない、液体となる領域を求め、この領域の範囲内で一剤化薬品を調製する。
【0033】
(操作方法IV)
PEIとPVPとの混合割合が決められている場合、分子量の異なるPEIとPVPを複数種準備し、異なる組み合わせで混合液を調製し、各混合液についてゲル化の有無を上記の通り試験管倒置法で判定する。
後掲の図1のように、PEIとPVPの分子量とゲル・ゾル−液体の相図を作製し、ゲル化が起こらない、液体となる領域を求め、この領域の範囲内で一剤化薬品を調製する。
【0034】
<好適なPEIおよびPVPと好適な混合割合>
凝集剤としての使用において、PEIの分子量は200〜10,000,000、特に1,000〜4,000,000であることが好ましい。この範囲よりも分子量が小さいものでは凝集効果が劣る傾向にあり、大きいものでは残存時に後段の膜を閉塞させる可能性がある。また、PVPの分子量は、4,000〜1,000,000、特に6,000〜150,000であることが好ましい。この範囲よりも分子量が小さいものでは凝集効果が劣る傾向にあり、大きいものでは残存時に後段の膜を閉塞させる可能性がある。なお、ここで、PEIおよびPVPの分子量は粘度法により測定した数平均分子量の値である。
【0035】
また、凝集剤としての使用において、PEIとPVPとの併用による凝集性の向上効果を相乗的な効果として得る上で、PEIとPVPとは、重量比でPEI:PVP=1:4〜0.05、特に1:2〜0.1の範囲で用いることが好ましい。
【0036】
また、凝集剤としての使用において、得られる一剤化薬品中のPEI濃度およびPVP濃度が過度に低いと水処理時に大量の薬液を添加する必要が生じ好ましくないが、PEI濃度およびPVP濃度を高くすると、ゲル化を生じ易くなり、分子量及び混合割合の自由度が低下する場合がある。従って、用いるPEIとPVPの組み合わせによっても異なるが、調製される一剤化薬品のPEIとPVPとの合計濃度が5〜40重量%の範囲となるようにすることが好ましい。
【0037】
従って、本発明の水処理薬品の調製方法においては、好ましくは、上記の分子量範囲のPEIとPVPを、上記の重量比の範囲および上記の合計濃度の範囲で用いて、ゲル化しない分子量と濃度の組み合わせを採用することが好ましい。
【0038】
<具体的な組み合わせ>
本発明の水処理薬品の調製方法によれば、様々な分子量のPEIとPVPを用いて、様々な混合割合の一剤化薬品を調製することができるが、例えば、以下のような組み合わせにおいて、ゲル化しないことを確認して一剤化薬品を調製することが好ましい。
組み合わせ例1:分子量200〜10,000のPEIと分子量4,000〜100,000のPVPとをPEI:PVP=1:4〜0.1(重量比)で混合し、PEIとPVPとの合計濃度を10〜50重量%とする。
組み合わせ例2:分子量10,000〜200,000のPEIと分子量4,000〜200,000のPVPとをPEI:PVP=1:4〜0.5(重量比)で混合し、PEIとPVPとの合計濃度を4〜40重量%とする。
組み合わせ例3:分子量200,000〜10,000,000のPEIと分子量4,000〜1,000,000のPVPとをPEI:PVP=1:4〜0.1(重量比)で混合し、PEIとPVPとの合計濃度を4〜30重量%とする。
【0039】
<用途>
本発明により調製される一剤化薬品は、後述の本発明の水処理方法における凝集剤として有用であり、PEIとPVPとを一剤化した一剤化薬品として薬注操作を効率化することができる。
【0040】
[水処理方法]
本発明の水処理方法は、本発明の水処理薬品の調製方法により調製された水処理薬品を用いて水処理を行うものであり、特にこの水処理薬品(以下、「PEI/PVP一剤化薬品」又は「本発明のPEI/PVP一剤化薬品」と称す場合がある。)を凝集剤として用いて、有機物および濁質を含んだ被処理水を凝集処理する場合に有効である。
【0041】
なお、本発明の水処理方法においては、被処理水にPEI/PVP一剤化薬品を添加した後、あるいは同時に、無機凝集剤をさらに添加して凝集処理してもよい。また、PEI/PVP一剤化薬品を添加する前に第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物を添加して凝集処理してもよい。
【0042】
<作用機構>
本発明のPEI/PVP一剤化薬品による凝集処理の作用機構の詳細は明らかではないが、以下の通りと考えられる。
【0043】
1)被処理水中に含まれる有機物、例えば、生物代謝物に含まれる多糖類などに対し、PVPが水素結合を介して結合し、結合物(I)が生じる。
2)PEIとこの結合物(I)が水素結合を介してさらに結合して結合物(II)を形成する。また、PEIは、被処理水中に含まれる濁質とも静電的相互作用により結合する。
なお、このPEIの濁質への結合は、pH9以下の条件で、PEIのアミノ基が電荷を有し、濁質に対して十分な静電相互作用を示す場合に起こる。そのため、高pHの場合には、以下の3)の通り、第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物を添加して、第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物による凝集効果を利用することが好ましい。
3)第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物は、被処理水中に含まれる濁質に静電的相互作用により結合し、結合物(III)を形成する。
4)結合物(II)と結合物(III)はそれぞれ核となり、鉄系無機凝集剤を加えた際に鉄フロックに取り込まれやすくなる。一方、鉄系無機凝集剤を加えたことにより、鉄フロックが生じるとともに微細な鉄コロイドも生じる。
5)微細な鉄コロイドは後段の沈殿処理、加圧浮上処理および濾過処理で分離しにくく、後段の膜処理における膜の目詰まりを引き起こす。しかし、PEIが鉄フロックと鉄コロイドを架橋することで、粗大なフロックを形成するとともに、微細な鉄コロイドを除去することができる。
【0044】
<被処理水>
本発明の水処理方法で凝集処理対象となる被処理水は、有機物および濁質を含む各種産業排水や生活排水又は該排水の生物処理水、あるいは表層水、地下水などであるが、中でも生物処理水が望ましく、特に、水質としてpH6〜11、アルカリ度100mg/L as CaCO以上、例えば100〜5,000mg/L as CaCOの被処理水であると、本発明のPEI/PVP一剤化薬品による凝集効果がより一層顕著に得られるため好ましい。
【0045】
<PEI/PVP一剤化薬品の添加量>
PEI/PVP一剤化薬品の添加は、被処理水の水質や、PEI/PVP一剤化薬品以外の凝集薬剤の併用の有無、要求される処理水水質等によっても異なるが、PEIの有効成分量として0.5〜10mg/Lの範囲、PVPの有効成分量として0.1〜20mg/Lの範囲となるように、前述の通り、好ましい混合重量比であるPEI:PVP=1:4〜0.05、特に1:2〜0.1の範囲で調製されたPEI/PVP一剤化薬品を添加することが好ましい。
【0046】
<無機凝集剤>
本発明では、上記のPEI/PVP一剤化薬品と共に無機凝集剤として、pH4〜14という高pH領域を含む幅広いpH範囲でフロックを形成することができる鉄系又はアルミ系の無機凝集剤を併用することが好ましい。鉄系無機凝集剤としては、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ塩化第二鉄、ポリ硫酸第二鉄などが挙げられ、アルミ系無機凝集剤としては、ポリ塩化アルミニウムや硫酸アルミニウムが挙げられる。特に凝集効果とコストの面で鉄系無機凝集剤である塩化第二鉄が好ましい。これらの無機凝集剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
被処理水への無機凝集剤の添加量は、被処理水の水質や、用いる無機凝集剤の種類、要求される処理水水質等によっても異なるが、有効成分量として2〜100mg/Lの範囲とすることが好ましい。
【0048】
前述の通り、無機凝集剤は、PEI/PVP一剤化薬品と同時に被処理水へ添加してもよく、別々に添加してもよいが、PEI/PVP一剤化薬品と無機凝集剤とを同時に添加する場合は、更にPEI/PVP一剤化薬品と無機凝集剤を一剤化して用いてもよい。
【0049】
<第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物>
PEI/PVP一剤化薬品を被処理水に添加する前に、第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物を添加することが好ましい。第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物は、強カチオン性基を有しており、pH9以上というような高pHの被処理水に対しても荷電中和能力を維持できるため、特に効果的である。ただし、PEI/PVP一剤化薬品の凝集効果が低下するため、PEI/PVP一剤化薬品の添加後あるいは同時に第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物を添加することは好ましくない。被処理水に第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物を添加した場合は、ラインミキサ−あるいは撹拌翼による撹拌などで均一に混合し30秒以上の時間を空けてから、PEI/PVP一剤化薬品を添加することが望ましい。
【0050】
第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物としては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)等のポリジアリルジメチルアンモニウム塩やポリ(メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル)などが挙げられ、薬剤コスト面から、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩が好ましい。
【0051】
第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物の分子量は10,000〜10,000,000、特に100,000〜10,000,000であることが好ましい。この範囲よりも分子量が小さいものでは凝集効果が劣る傾向にあり、大きいものでは残存時に後段の膜を閉塞させる可能性がある。なお、ここで、第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物の分子量は粘度法により測定した数平均分子量の値である。
【0052】
第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
被処理水への第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物の添加量は、被処理水の水質や、用いる第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物の種類、要求される処理水水質等によっても異なるが、有効成分量として0.1〜10mg/Lの範囲とすることが好ましい。
【0054】
<水処理方法>
本発明の水処理方法は、例えば、上述のような本発明のPEI/PVP一剤化薬品を被処理水に添加して凝集処理した後、固液分離することにより実施することができる。
【0055】
凝集処理水の固液分離方法としては特に制限はなく、沈殿処理、加圧浮上処理、濾過、膜分離のいずれの方法も採用することができる。
【0056】
特に本発明の水処理方法によれば、本発明のPEI/PVP一剤化薬品を凝集剤として用いることで、被処理水中の有機物や濁質を高度に凝集処理することができるため、固液分離として膜分離を行う場合や、更に固液分離水を逆浸透膜分離する場合であっても、膜汚染を防止して長期に亘り安定処理が可能となる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0058】
[実験I]
以下の薬品を用いて一剤化薬品を調製する実験を行った。
【0059】
<PEI>
IP2M(分子量2,000,000、BASF社製)
P−1000(分子量70,000、日本触媒社製)
IP250(分子量25,000、BASF社製)
SP−200(分子量10,000、日本触媒社製)
【0060】
<PVP>
K−85N(K値83〜87、分子量900,000、日本触媒社製)
K−30(K値27〜33、分子量100,000、日本触媒社製)
K−15(K値16、分子量10,000、ISP社製)
PVP5000(分子量4000〜6000、ポリサイエンス社製)
ここで、ポリビニルピロリドンのK値はポリビニルピロリドンの分子量と相関する値であり、毛細管粘度計により測定したポリビニルピロリドン水溶液の水に対する相対粘度ηrel(25℃)から、下記のフィッケンチャーの式を用いて算出される。
K=(1.5logηrel−1)/(0.15+0.003c)+
(300clogηrel+(c+1.5clogηrel1/2
(0.15c+0.003c
ηrel:ポリビニルピロリドン水溶液の水に対する相対粘度
c:ポリビニルピロリドン水溶液中のポリビニルピロリドン濃度(重量%)
【0061】
<実施例1−1>
表1に示した組成1−1〜1−16の条件で、PEI 10重量%、PVP 10重量%を含む一剤化薬品を調製した。
具体的には、直径26mm、高さ55mmの蓋付きガラス製サンプル瓶(容量20mL)に、20重量%のPEI水溶液と20重量%のPVP水溶液をそれぞれ4gずつ入れ、十分に撹拌した後、室温(24℃)で24時間静置した。その後、サンプル瓶を倒置(試験管倒置法)し、容器の底面から薬液が流れ落ちないものをゲル化(G)、混合直後の薬液よりも粘性が大幅に増大し、時間をかけて(1分〜1時間程度)全ての薬液が流れ落ちたものをゾル化(S)、全ての薬液が1分以内に流れ落ちたものを液体(L)として評価した。結果を表1に示し、ゲル・ゾル化−液体の相図を図1に示す。
また、組成1−5〜1−8の条件で作製した薬液の、試験管倒置法による評価で、倒置から2分経過したときの写真を図2に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
薬液のゲル化は分子量25,000〜70,000のPEIと分子量10,000〜100,000(K値16〜33)のPVPとの組み合わせで起こりやすいことが判明した。よって、このPEIとPVPの分子量の組み合わせの範囲を除くことで、液体状態を保持した一剤化薬品を調製することができることが確認された。
【0064】
<実施例1−2>
実施例1−1でゲル化が生じた組成1−6の条件において、PEI(P−1000)およびPVP(K−30)の各濃度を変更して一剤化薬品を調製した。
具体的には、表2に示した組成2−1〜2−21の条件で、20重量%のPEI(P−1000)水溶液と20重量%のPVP(K−30)水溶液と純水を総重量で8gになるよう混合した。試験管倒置法の手順については、実施例1−1と同様である。
結果を表2に示し、ゲル・ゾル化−液体の相図を図3に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
PEI(P−1000)10重量%、PVP(K−30)10重量%を含む一剤化薬品(組成2−3)ではゲル化が生じるが、PEIおよびPVPの各濃度を小さくすれば、PEIとPVPを一剤化処理しても液体状態を保持できることが示された。また、図3で得られた相図をもとに、一剤化薬品が液体状態を維持する領域の範囲内でPEIとPVPの各濃度を自由に設定することができる。例えば、PEI(P−1000)を2重量%以上含む一剤化薬品を調製する場合は、PVP(K−30)の濃度を2重量%以下にすれば良いことが分かる。
【0067】
<実施例1−3>
実施例1−1でゲル化が生じた組成1−11の条件において、PEI(IP250)およびPVP(K−15)の各濃度を変更して一剤化薬品を調製した。
具体的には、表3に示した組成3−1〜3−16の条件で、20重量%のPEI(IP250)水溶液と20重量%のPVP(K−15)水溶液と純水を総重量で8gになるよう混合した。試験管倒置法の手順については、実施例1−1と同様である。
結果を表3に示し、ゲル・ゾル化−液体の相図を図4に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
実施例1−2と同様、PEI(IP250)およびPVP(K−15)の各濃度を小さくすれば、PEIとPVPを一剤化処理しても液体状態を保持できることが示された。実施例1−2と比べ、分子量の異なるPEIとPVPの組み合わせであるため、一剤化薬品の液体状態を保持できるPEIおよびPVPの濃度は高く設定できることが示された。また、図4で得られた相図をもとに、一剤化薬品が液体状態を維持する領域の範囲内で、PEIとPVPの各濃度を自由に設定することができる。
【0070】
[実験2]
実験1で調製した一剤化薬品を用いて、水処理効果を確認する実験を行った。
以下の実験2で用いた被処理水および他の凝集剤は以下の通りである。
【0071】
<被処理水>
工場Aの排水の生物処理水に、炭酸水素ナトリウムを0.08重量%になるよう加え、アルカリ度を約500mg/L as CaCO相当に調整したもの(pH8.6)。
【0072】
<第四級アンモニウム塩基を含むカチオン性高分子化合物>
ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(分子量300,000)
<鉄系無機凝集剤>
塩化第二鉄(FeCl、3.8重量%水溶液)
上記凝集薬剤は、いずれも水溶液として添加した。
【0073】
<凝集処理水の水質判断指標>
凝集処理水の水質判断の指標としては、SFF値、MFF値、MF値を用いた(大井康裕、分離技術45巻4号(2015)、216−223)。
SFF値は高分子有機物の汚染指標を、MFF値は微粒子の汚染指標を示す。MF値は、−67kPaの減圧下で測定試料300mLが有効膜面積3.0cm、孔径0.45μmのニトロセルロ−ス膜(以下MF膜)を透過するのに要した時間を示したものである。SFF値、MFF値、MF値が低いほど、良好な凝集処理水が得られていることを示す。
【0074】
SFF値、MFF値、MF値の測定方法を簡潔に以下に示す。
【0075】
MF膜を吸引濾過装置にセットし、−67kPaの減圧下で溶解性高分子物質および微粒子フリ−の基準水150mLの透過時間T0を測定した後に、測定試料(150mL)の1回目通水時間T1、2回目通水時間T2を測定する。
SFF値、MFF値、MF値は以下の式で算出される。
SFF値=T1/T0
MFF値=T2/T1
MF値=T1+T2
【0076】
<実施例2−1>
被処理水500mLをビ−カ−に入れ、150rpmで撹拌している最中に、分子量300,000のポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)を1mg/Lになるよう添加し2分間撹拌した。その後、一剤化薬品(P−1000 4重量%、K−30 2重量%含有水溶液、組成2−18)を20mg添加し、2分間撹拌した。その後、無機凝集剤を成分として20mg/Lになるよう添加し6分間撹拌した後、凝集反応時のpHを測定した。さらに、50rpmで6分間撹拌することで凝集処理を行った。凝集処理により生じたフロックの平均の大きさは目視で計測した。凝集処理後の水は、孔径7μmの濾紙で濾過し、固液分離を行った。この濾過水に対して、SFF値、MFF値、MF値を測定した。
【0077】
<参考例2−1>
一剤化薬品(P−1000 4重量%、K−30 2重量%含有水溶液、組成2−18)の代わりに、P−1000を1.6mg/Lになるよう添加した直後に、K−30を0.8mg/Lになるよう添加することで各薬品を別々に添加した。その他は実施例2−1と同様である。
【0078】
<比較例2−1>
一剤化薬品(P−1000 4重量%、K−30 2重量%含有水溶液、組成2−18)の代わりに、一剤化薬品(P−1000 10重量%、K−30 5重量%含有水溶液、組成2−8)を使用した。しかし、一剤化薬品(P−1000 10重量%、K−30 5重量%含有水溶液、組成2−8)は調製5分後にゲル化が生じたため、被処理水に添加することはできなかった。一剤化薬品を添加しなかったこと以外は、実施例2−1と同様である。
【0079】
<実施例2−2>
比較例2−1で用いた一剤化薬品(P−1000 10重量%、K−30 5重量%含有水溶液、組成2−8)の代わりに、同一濃度でゲル化が生じない分子量の組み合わせである一剤化薬品(IP−250 10重量%、K−15 5重量%含有水溶液、組成3−15)を8mg添加した。その他は実施例2−1と同様である。
【0080】
結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】
比較例2−1では、一剤化薬品のゲル化によりPEIとPVPの添加が行われなかったため、SFF値は非常に高い値を示し、計測時にMF膜の閉塞が生じたことからMFF値、MF値は測定不能であった。濃度を変更してゲル化が生じない一剤化薬品(実施例2−1)を添加したことで、SFF値は大幅に低減し、MFF値、MF値の計測も可能となった。また、フロック径が増大し、フロック沈降性の向上が見られた。一剤化薬品の効果は、PEIとPVPを個別に添加したとき(参考例2−1)と殆ど差異は認められなかった。
PEIとPVP分子量の組み合わせを変更して、ゲル化が生じない一剤化薬品を添加した場合(実施例2−2)においても、フロック径の変化は見られるものの、実施例2−1とほぼ同等の凝集処理水質(SFF値、MFF値、MF値)が得られた。
【要約】
【課題】ポリエチレンイミン(PEI)とポリビニルピロリドン(PVP)とをゲル化させずに一剤化処理して一剤化薬品を調製する。
【解決手段】ポリエチレンイミン(PEI)とポリビニルピロリドン(PVP)を一剤で含む溶液状水処理薬品を調製するにあたり、PEIとPVPの分子量の関係と、PEIとPVPの液中濃度の関係から、両者を混合した際にゲル化しない分子量と濃度の関係でPEIとPVPを用いる水処理薬品の調製方法。同量のPEIとPVPを混合し、ゲル化することを確認した分子量の組み合わせを除く。同量のPEIとPVPを混合し、ゲル化することを確認した分子量の組み合わせにおいて、PEIとPVPの各濃度を変化させた際に、ゲル化する濃度比の範囲を除く。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4