(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施の形態について
図1ないし
図9を参照して説明する。
【0017】
図中の1は農作業機で、この農作業機1は、圃場に植生した農作物である落花生Aを収穫するための落花生収穫機である。
【0018】
つまり、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に脱着可能に連結された状態で、トラクタの走行により進行方向である前方に移動しながら、圃場に植生した落花生Aを掘り上げて搬送した後、その落花生Aを実(豆)A1が上側に位置した姿勢で圃場上に置いて行くものである。なお、落花生Aは、多数の実A1を有する根側部分と、茎および葉からなる茎葉部分とにて構成されている。
【0019】
農作業機1は、
図1に示されるように、トラクタの後部の3点リンク部(作業機昇降支持部)に脱着可能に連結された機体2と、この機体2の前端部に設けられ圃場の畝に植生した落花生Aを掘り上げる掘上手段3と、機体2に前低後高の傾斜状に設けられ掘上手段3にて掘り上げられた落花生Aを掻き上げて斜め上後方に向けて搬送する搬送手段4とを備えている。
【0020】
また、農作業機1は、機体2の後端部に回転可能に設けられ搬送手段4からの落花生Aを実A1が上側に位置した姿勢(実上側姿勢)に姿勢変更する反転手段5と、その実上側姿勢の落花生Aを斜め下後方に向けて搬送して圃場上に置くシュート6とを備えている。なお、シュート6は、例えば複数本の棒状部材7にて構成されている。
【0021】
さらに、機体2のホルダ部10には、圃場の畝間上を走行するゲージ輪9が上下方向に位置調整可能に設けられている。
【0022】
機体2は、トップマスト11および左右1対のロワアーム12等にて構成された3点ヒッチ部13を有し、この3点ヒッチ部13がトラクタの3点リンク部にカプラを介して脱着可能に連結されている。3点ヒッチ部13には、トラクタ側からの動力が入力される入力軸15が回転可能に設けられ、この入力軸15がトラクタのPTO軸にジョイント等を介して接続されている。
【0023】
掘上手段3は、圃場の土中を移動しながら落花生Aをその根を切断して圃場の畝から掘り上げる前低後高の傾斜状の根切り用の先金等の掘上体16を有している。掘上体16は、機体2に対して回動可能な回動フレーム17の下端部に取り付けられている。掘上体16は、例えば櫛状のもので、左右方向に間隔をおいて並ぶ互いに平行な複数本の掘上棒16aを有している。
【0024】
そして、回動フレーム17が入力軸15側からの動力により上端側を中心として下端側が前後動するように回動すると、この回動フレーム17の回動に伴って掘上体16が前後方向に振動する。このため、掘上体16は、前後振動しながら圃場の落花生Aを圃場の土とともに掘り上げ、その土を互いに隣り合う掘上棒16a間の隙間から圃場へ落下させつつその落花生Aを搬送手段4の搬送始端部に渡す。
【0025】
搬送手段4は、掘上手段3の掘上体16からの落花生Aを受け取り、この受け取った落花生Aを掻き上げて所定姿勢(実A1が搬送方向前側に位置した姿勢)に維持したまま斜め上後方に向けて搬送する爪付きバーコンベヤである。
【0026】
この搬送手段4は、
図2ないし
図4にも示されるように、入力軸15側からの動力により所定方向(図示した回転方向)に回転する互いに平行な複数(例えば3本)のチェーン等の無端体21を有している。
【0027】
そして、無端体21における回転方向に間隔をおいた位置には、落花生Aの茎葉部分に引っ掛かってその落花生Aを掻き上げる複数の爪体(掻き上げ爪)23が突設された左右方向長手状の複数本の搬送用の長尺体24が無端体21とともに回転するように架設されている。
【0028】
また、無端体21における回転方向に間隔をおいた位置には、爪体23が設けられていない左右方向長手状の複数本の搬送用の長手状部材25が無端体21とともに回転するように架設されている。なお、爪無しの長手状部材25は、互いに隣り合う両長尺体24間に位置している。爪有りの各長尺体24には、複数の爪体23が長尺体24の長手方向に間隔をおいて設けられている。
【0029】
無端体21は、駆動軸26に固着された駆動回転体である駆動スプロケット27および従動軸28a,28bに固着された従動回転体である従動スプロケット29a,29bに掛け渡されている。つまり、各無端体21は、1つの駆動スプロケット27と2つの従動スプロケット29a,29bとに掛け渡されている。上側の従動スプロケット29aは、駆動スプロケット27の下方に配設されており、無端体21は、鉛直方向に沿って位置する鉛直状部21cを有している。また、駆動軸26および従動軸28a,28bは、互いに離間対向する左右1対のコンベヤ側板である支持フレーム30にて回転可能に支持されており、その駆動軸26は動力伝達手段31を介して入力軸15に接続されている。
【0030】
また、無端体21は、回転方向に隣接するもの同士が互いに回動可能に連結された複数の無端体構成部材(リンク部材)33にて構成されている。各無端体構成部材33は、複数(例えば2つ)の取付用孔34が形成された矩形状の取付板部35を有している。取付板部35の下面には、取付用孔34に対応してナット36が溶接等により固着されている。なお、無端体21は、上側の往路部21aと下側の復路部21bとを有しており、この無端体21の往路部21aは、前低後高の傾斜状に位置している(
図1参照)。
【0031】
長尺体24および長手状部材25は、例えば搬送手段4の搬送方向に対して直交する方向である水平な左右方向に長手方向を有する細長板状のフラットバー41にて構成されている。つまり、長尺体24および長手状部材25はいずれも同じ左右方向長手状のフラットバー41からなり、これら複数のフラットバー41は、無端体21の回転方向に互いに等間隔(土落し用の隙間)をおいて並んでいる。また、各フラットバー41の長手方向中央部および長手方向両端部には、複数の取付用孔42が形成されている。
【0032】
そして、フラットバー41が複数の無端体21の取付板部35上にこれら複数の無端体21に跨るように載置され、バー取付用のボルト43が互いに対向した両取付用孔34,42に挿入されてナット36に螺合されることにより、フラットバー(爪有りの長尺体24および爪無しの長手状部材25)41が無端体21に脱着可能に取り付けられている。なお、これらボルト43およびナット36にて、フラットバー41を無端体21に脱着可能に取り付けるための取付手段40が構成されている。
【0033】
爪体(掻き上げ爪)23は、取付手段50によって、各長尺体24であるフラットバー41における長手方向に間隔をおいた複数位置にそれぞれ脱着可能に取り付けられている。取付手段50は、
図4から明らかなように、複数(例えば2つ)のねじ孔51が形成された矩形状の取付板52と、この取付板52のねじ孔51に螺合可能な爪取付用のボルト53とにて構成されている。
【0034】
また、爪体23は、
図5にも示されるように、正面視L字状(略L字状を含む)の板部材からなるもので、複数(例えば2つ)の取付用孔55が形成された取付板部56と、この取付板部56の左右方向端部にこの取付板部56に対して直交するように一体に立設された4角形状の作用板部57とを有している。
【0035】
取付板部56は、例えば平面視で搬送方向(爪体23の移動方向)に長手方向を有する矩形状をなす板状に形成されている。作用板部57は、例えば側面視で上下の対辺が平行な台形状をなす板状に形成されている。また、作用板部57は、先端に向かって幅狭状のもので、この作用板部57の幅寸法は、下端側から上端側に向かって徐々に減少している。なお、作用板部57の下端の幅寸法は、取付板部56の長手方向長さ寸法と同じである。
【0036】
また、作用板部57の搬送方向前側の第1縦縁部58は、側面視で搬送方向に対して直交する基準線(取付板部56に対する垂線)Xに対して、下端ほど搬送方向前側に位置するように所定角度θをもって傾斜している。一方、作用板部57の搬送方向後側の第2縦縁部59は、側面視で搬送方向に対して直交する基準線Xに対して、上端ほど搬送方向前側に位置するように同じ所定角度θをもって傾斜している。なお図示しないが、第1縦縁部58の傾斜角度と第2縦縁部59の傾斜角度とが互いに異なるようにしてもよい。
【0037】
そして、爪体23の取付板部56が長尺体24の表面24aに当接されかつ取付板52が長尺体24の裏面24bに当接され、爪取付用のボルト53が取付用孔55に挿入されて取付板52のねじ孔51に螺合されることにより、爪体23の取付板部56が長尺体24に脱着可能に取り付けられている。つまり、爪体23の取付板部56と裏板である取付板52とにて長尺体24が挟持されており、この爪体23は、長尺体24に沿ってその長手方向にスライド調整可能で、長尺体24に対して任意位置に取り付け可能となっている。なお、無端体21の往路部21a側では、爪体23は、長尺体24から上方に向かって突出している。
【0038】
ここで、搬送手段4では、搬送方向に互いに隣り合う両長尺体24間の距離が調整可能となっている。例えば
図6は、互いに隣り合う両長尺体24間の距離が長さaに設定された状態である。このとき、互いに隣り合う両長尺体24間には、爪体23が取り付けられていない爪無しの長手状部材25が1本ずつ位置している。そして、互いに隣り合う長尺体24と長手状部材25との間の距離は、その間に搬送方向に並ぶ不使用の2つの取付板部35が位置する長さとなっている。
【0039】
また、
図7は、互いに隣り合う両長尺体24間の距離が、
図6の長さaよりも長い長さbに設定された状態である。このとき、互いに隣り合う両長尺体24間には、長手状部材25が1本ずつ位置している。そして、互いに隣り合う長尺体24と長手状部材25との間の距離は、その間に搬送方向に並ぶ不使用の3つの取付板部35が位置する長さとなっている。
【0040】
さらに、
図8は、互いに隣り合う両長尺体24間の距離が、
図7の長さbよりも更に長い長さcに設定された状態である。このとき、互いに隣り合う両長尺体24間には、長手状部材25が2本ずつ位置している。そして、互いに隣り合う長尺体24と長手状部材25との間の距離は、その間に搬送方向に並ぶ不使用の2つの取付板部35が位置する長さとなっている。
【0041】
このように、長尺体24の無端体21に対する取付位置や、長手状部材25の無端体21に対する取付位置を変更することにより、互いに隣り合う両長尺体24間の距離および互いに隣り合う長尺体24と長手状部材25との間の距離が調整可能となっている。
【0042】
さらに、搬送手段4では、各爪体23が長尺体24に対してその長尺体24の長手方向に位置調整可能となっている。例えば
図9に示すように、爪体23を長尺体24の表面24aに沿ってその長手方向にスライド調整して爪体23の長尺体24に対する取付位置を変更することにより、
図6の状態とは異なる爪配置パターンに変更可能である。換言すると、長尺体24の長手方向である左右方向に互いに隣り合う両爪体23間の距離が調整可能となっている。また、各爪体23が長尺体24に対して脱着可能となっているため、落花生Aの大きさ等に合わせて爪体23の数も変更可能である。
【0043】
なお、
図1に示されるように、農作業機1は、搬送手段4の傾斜角度を調整するための角度調整手段61を備えている。つまり、搬送手段4は、機体2に対して駆動軸26を通る左右方向の回動中心軸線Sを中心として上下方向に回動可能となっており、角度調整手段61のハンドル62を操作すると、搬送手段4が回動中心軸線Sを中心として上下方向に回動する。そして、この角度調整手段61による調整により、搬送手段4は、作業時においてこの搬送手段4のうち爪体23のみが圃場の畝の土中に入る状態に設定される。
【0044】
また、側面視で、掘上手段3の掘上体16の上端部と搬送手段4の無端体21の前側の円弧状部との間には、爪体23が通過可能な土落し用の空間部60が位置している。
【0045】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0046】
農作業機1をトラクタに連結した状態で、トラクタの走行により農作業機1を進行方向である前方に移動させると、圃場の畝に植生した落花生Aは、掘上手段3にて掘り上げられ、その後、搬送手段4にて斜め上後方に向けて搬送される。
【0047】
このとき、搬送手段4の無端体21、長尺体24および長手状部材25は、圃場の畝の土中には入らず、搬送手段4のうち爪体23のみが、圃場の畝の土中に入るようになっている。このため、落花生Aとともに圃場の土が搬送手段4上に載って搬送されるようなことがなく、また無端体21が圃場の土との接触により磨り減るようなこともない。
【0048】
そして、爪体23は、掘上手段3にて掘り上げられた落花生Aの茎葉部分に引っ掛かってその落花生Aを掻き上げ、その後、その爪体23は、落花生Aを長尺体24および長手状部材25上でその実A1が搬送方向前側に位置した横倒れの姿勢に維持したまま、斜め上後方に向けて搬送する。
【0049】
つまり、落花生Aは、爪体23にて掻き上げられた後、その爪体23が茎葉部分に入り込んで引っ掛かった係合状態のまま、長尺体24および長手状部材25にて一定姿勢で搬送される。この搬送の際、落花生Aに付着した土は、振るい落されて、互いに隣り合うフラットバー41間の隙間から圃場上に落下する。
【0050】
その後、落花生Aは、搬送手段4から搬出されると、反転手段5との接触により実A1が上側に位置した姿勢となり、その姿勢のままシュート6上を滑落して圃場上に置かれる。
【0051】
なお、搬送手段4による搬出の際に、落花生Aが爪体23に引っ掛かって係合したまま無端体21の復路部21b側に巻き込まれるようなことがない。つまり、搬送手段4の搬送終端部において無端体21が鉛直状部21cを有するため、この鉛直状部21cの位置で、落花生Aが自重で落下することにより爪体23から離れる。
【0052】
こうして圃場上に置かれた落花生Aは、地干し等により自然乾燥させた後、実A1のみを分離して収穫する。
【0053】
そして、農作業機1によれば、掘上手段3にて掘り上げられた落花生Aを掻き上げて搬送する搬送手段4が、無端体21等とともに回転しながら落花生Aに引っ掛かる複数の爪体23を有するため、落花生Aが搬送手段4上で滞留するようなことがなく、搬送手段4にて落花生Aを所定姿勢に維持したまま適切に搬送できる。
【0054】
また、爪体23が長尺体24に対してその長尺体24の長手方向に位置調整可能であり、かつ、爪体23が突設された隣り合う両長尺体24間の距離が調整可能であるため、落花生Aの大きさや茎葉部分の繁茂状態等に対応でき、落花生Aをより一層適切に搬送できる。
【0055】
さらに、互いに隣り合う長尺体24と長手状部材25との間の距離が調整可能、つまり搬送方向に互いに隣り合う両フラットバー41間の土落し用の隙間の大きさが調整可能となっているため、落花生Aの茎葉部分がその隙間に入り込むのを防止しつつ、落花生Aから除去した土をその隙間から適切に落下させることができる。
【0056】
また、爪体23は、断面L字状の板部材からなり、長尺体24に脱着可能に取り付けられた取付板部56と、この取付板部56に立設され落花生Aに引っ掛かる作用板部57とにて構成されたものであるから、製造が容易であるばかりでなく、落花生Aには絡み付きにくく、搬送手段4の搬送終端部での分離性が良好である。
【0057】
なお、搬送手段4の爪体23は、
図4および
図5等に示すものには限定されず、例えば
図10および
図11に示す第2の実施の形態のように、作用板部57の第1縦縁部58が、取付板部56に対して直交するようにしてもよい。
【0058】
つまり、この作用板部57の搬送方向前側の第1縦縁部58は、側面視で搬送方向に対して直交する基準線Xに沿って位置している。一方、作用板部57の搬送方向後側の第2縦縁部59は、側面視で搬送方向に対して直交する基準線Xに対して、上端ほど搬送方向前側に位置するように所定角度θをもって傾斜している。
【0059】
また、搬送手段4の長手状部材25は、長尺体24と同じ細長板状のフラットバー41にて構成されたものには限定されず、例えば
図12および
図13に示す第3の実施の形態のように、細長棒状で断面楕円状或いは真円状の丸棒71にて構成されたものでもよい。この場合、丸棒71に角がないことで、落花生Aの分離性を高めることができ、また軽量化を図ることができる。なお、例えば長尺体24を丸棒71で構成してもよい。
【0060】
さらに、搬送手段4は、例えば爪無しの長手状部材25を有さず、無端体21に設けられたすべての各フラットバー41に爪体23を取り付けた構成等でもよい。
【0061】
また、例えば落花生の上部を水平方向に沿って切断する切断手段が機体2の前端部に設けられた構成等でもよい。
【0062】
さらに、爪体23が長尺体24に脱着可能に取り付けられた構成には限定されず、例えば爪体23が長尺体24に一体に突設された構成等でもよく、また、例えば落花生Aを搬送する搬送ベルトの表面に爪体23を設けた構成等でもよい。
【0063】
また、掘上手段3の掘上体16は、例えば振動するものではなく、固定フレームに取り付けられたものでもよい。
【0064】
なお、トラクタに連結する牽引式の農作業機には限定されず、走行タイヤ等の走行手段を備えた自走式の農作業機でもよい。
【0065】
また、農作物は、落花生Aには限定されず、例えば甘藷等でもよい。