特許第6115985号(P6115985)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6115985
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 29/00 20060101AFI20170410BHJP
【FI】
   A01D29/00
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-273592(P2012-273592)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-117201(P2014-117201A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】深山 大介
(72)【発明者】
【氏名】青木 循
(72)【発明者】
【氏名】李 昇圭
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 芳則
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−196646(JP,A)
【文献】 実開平07−018520(JP,U)
【文献】 特開2000−157024(JP,A)
【文献】 特開2008−228619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00 − 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に植生した農作物の茎葉部分を前方に押し倒しながらその農作物の根を切断する根切断手段と、
根切断後の農作物を茎葉部分が前側に位置する前倒れ姿勢に維持したまま搬送する搬送手段と、
この搬送手段からの農作物を放てきする放てき手段と、
この放てき手段にて放てきされた農作物を茎葉部分が下側に位置する反転姿勢にする姿勢変更手段とを備え、
前記根切断手段は、
圃場に植生した農作物の茎葉部分に当接してこの茎葉部分を前方に押し倒す当接体と、
圃場に植生した農作物の根を切断する切断体とを有し、
前記当接体は、左右方向長手状の形状であり、少なくとも上下動が可能で、かつ、農作物の茎葉部分との当接により左下がり傾斜状態および右下がり傾斜状態のいずれの状態にもなることが可能である
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
圃場に植生した農作物の茎葉部分を前方に押し倒しながらその農作物の根を切断する根切断手段と、
根切断後の農作物を茎葉部分が前側に位置する前倒れ姿勢に維持したまま搬送する搬送手段と、
この搬送手段からの農作物を放てきする放てき手段と、
この放てき手段にて放てきされた農作物を茎葉部分が下側に位置する反転姿勢にする姿勢変更手段とを備え、
前記姿勢変更手段は、前記放てき手段にて放てきされた農作物を反転姿勢にして圃場に向けて落下させる案内体にて構成され、
前記案内体は、圃場に植生した複数条の農作物が圃場上に反転姿勢で1列状に並ぶように、農作物を左右方向中央側に案内しながら圃場に向けて落下させる
ことを特徴とする農作業機。
【請求項3】
案内体は、平面視で前方に開口するV字状をなす傾斜状の案内面を有する
ことを特徴とする請求項記載の農作業機。
【請求項4】
放てき手段は、所定方向に回転しながら搬送手段からの農作物を放てきする放てき用回転体にて構成され、
前記放てき用回転体の周速度が、前記搬送手段の搬送速度よりも速い
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれか一記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物を適切に反転できる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、圃場に植生した落花生である農作物の上部を横方向に切断する切断刃と、農作物を掘り取る掘り取り装置と、掘り取った農作物を搬送するとともに搬送時に土を落とすことができる選別コンベアである搬送装置と、農作物を上下反転する反転装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−69826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の農作業機では、例えば搬送装置による搬送中の農作物の姿勢が搬送装置上で安定せず、反転装置による農作物の反転が不十分となるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、農作物を適切に反転できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
求項記載の農作業機は、圃場に植生した農作物の茎葉部分を前方に押し倒しながらその農作物の根を切断する根切断手段と、根切断後の農作物を茎葉部分が前側に位置する前倒れ姿勢に維持したまま搬送する搬送手段と、この搬送手段からの農作物を放てきする放てき手段と、この放てき手段にて放てきされた農作物を茎葉部分が下側に位置する反転姿勢にする姿勢変更手段とを備え、前記根切断手段は、圃場に植生した農作物の茎葉部分に当接してこの茎葉部分を前方に押し倒す当接体と、圃場に植生した農作物の根を切断する切断体とを有し、前記当接体は、左右方向長手状の形状であり、少なくとも上下動が可能で、かつ、農作物の茎葉部分との当接により左下がり傾斜状態および右下がり傾斜状態のいずれの状態にもなることが可能であるものである。
【0008】
求項記載の農作業機は、圃場に植生した農作物の茎葉部分を前方に押し倒しながらその農作物の根を切断する根切断手段と、根切断後の農作物を茎葉部分が前側に位置する前倒れ姿勢に維持したまま搬送する搬送手段と、この搬送手段からの農作物を放てきする放てき手段と、この放てき手段にて放てきされた農作物を茎葉部分が下側に位置する反転姿勢にする姿勢変更手段とを備え、前記姿勢変更手段は、前記放てき手段にて放てきされた農作物を反転姿勢にして圃場に向けて落下させる案内体にて構成され、前記案内体は、圃場に植生した複数条の農作物が圃場上に反転姿勢で1列状に並ぶように、農作物を左右方向中央側に案内しながら圃場に向けて落下させるものである。
【0009】
請求項記載の農作業機は、請求項記載の農作業機において、案内体は、平面視で前方に開口するV字状をなす傾斜状の案内面を有するものである。
【0010】
請求項記載の農作業機は、請求項1ないしのいずれか一記載の農作業機において、放てき手段は、所定方向に回転しながら搬送手段からの農作物を放てきする放てき用回転体にて構成され、前記放てき用回転体の周速度が、前記搬送手段の搬送速度よりも速いものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、根切断手段が圃場に植生した農作物の茎葉部分を前方に押し倒しながらその農作物の根を切断し、搬送手段が根切断後の農作物を前倒れ姿勢に維持したまま搬送し、放てき手段が搬送手段からの農作物を放てきし、姿勢変更手段が放てき手段にて放てきされた農作物を反転姿勢にするため、農作物を所望の反転姿勢にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の概略側面図である。
図2】同上農作業機の根切断手段の正面図である。
図3】同上根切断手段の側面図である。
図4】同上根切断手段の作用説明図である。
図5】同上農作業機の放てき部の平面図である。
図6】同上放てき部の側面図である。
図7】同上放てき部の背面図である。
図8】同上放てき部の放てき手段(スターローラ)の側面図である。
図9】同上放てき手段の背面図である。
図10】同上放てき手段と搬送手段との位置関係を示す側面図である。
図11】同上根切断手段の変形例の正面図である。
図12】同上根切断手段の変形例の側面図である。
図13】同上放てき部の案内体の変形例の平面図である。
図14】同上放てき部の案内体の変形例の側面図である。
図15】同上放てき部の案内体の変形例の背面図である。
図16】同上放てき手段(突起付きローラ)の変形例の側面図である。
図17】(a)および(b)は同上放てき手段の変形例の詳細図である。
図18】同上放てき手段と搬送手段との位置関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1において、1は農作業機で、この農作業機1は、圃場に植生した農作物である落花生Aを収穫するための落花生収穫機である。
【0015】
つまり、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に脱着可能に連結された状態で、トラクタの走行により進行方向である前方に移動しながら、圃場に植生した複数条、例えば2条の落花生Aを掘り上げて斜め上後方に搬送した後、その落花生Aを茎葉部分A1が下側に位置する反転姿勢(実を有する根側部分A2が上側に位置する実上側姿勢)にして圃場上に1列状に置いて行くものである。
【0016】
なお、落花生Aは、茎および葉を有する茎葉部分(地上部)A1と、実(豆)および根を有する根側部分(地下部)A2とにて構成されている。
【0017】
農作業機1は、図1等に示されるように、図示しないトラクタの後部の3点リンク部(作業機昇降支持部)に脱着可能に連結された機体2と、この機体2の前端部に設けられ、圃場の畝に植生した落花生Aの茎葉部分A1を前方に押し倒しながら根側部分A2の根を切断してその落花生Aを地上に掘り上げる掘上手段である根切断手段3とを備えている。
【0018】
また、農作業機1は、機体2に設けられ、根切断後の落花生Aを茎葉部分A1が前側に位置する前倒れ姿勢に維持したまま斜め上後方に向けて搬送する搬送手段4と、この搬送手段4から搬出された落花生Aを後方に向けて放てきする放てき手段5と、この放てき手段5にて放てきされた落花生Aを前倒れ姿勢から反転姿勢(実が上を向いた実上側姿勢)へ姿勢変更して圃場上に向けて落下させる姿勢変更手段6とを備えている。なお、放てき手段5および姿勢変更手段6は、機体2の後端部に設けられている。これら放てき手段5および姿勢変更手段6にて放てき部7が構成されている。
【0019】
さらに、機体2のホルダ部8には、圃場の畝間上を走行するゲージ輪9が上下方向に位置調整可能に設けられている。
【0020】
機体2は、トップマスト11および左右1対のロワアーム12等にて構成された3点ヒッチ部13を有し、この3点ヒッチ部13がトラクタの3点リンク部にカプラを介して脱着可能に連結されている。この3点ヒッチ部13は、左右方向長手状のフレームパイプ部14に固設されている。3点ヒッチ部13には、トラクタ側からの動力が入力される前後方向の入力軸15が回転可能に設けられ、この入力軸15がトラクタのPTO軸にジョイント等を介して接続されている。
【0021】
根切断手段3は、図1ないし図4等に示されるように、機体2に対して前後方向に振動するフレーム体である振動フレーム16を有し、この振動フレーム16の横杆部17の中間部が振動機構18を介して入力軸15に連動連結され、この入力軸15の回転によって振動機構18の作動を介して振動フレーム16が左右1対の左右方向の支軸19を中心として前後方向に回動して振動するようになっている。
【0022】
また、根切断手段3は、機体2に対して少なくとも上下動可能で、圃場の畝に植生した落花生Aの茎葉部分A1の上部に当接してこの茎葉部分A1を前方に押し倒して落花生Aを前倒れ姿勢にする左右方向長手状で円筒状の当接体である当接パイプ21と、この当接パイプ21の下方に配設され、圃場の畝に植生した落花生Aの根側部分A2の根を切断する板状の切断体22とを有している。
【0023】
当接パイプ(姿勢制御ローラ)21は、落花生Aを前倒れ姿勢にするためのもので、互いに離間対向する左右1対の左右方向の支軸23を介して、振動フレーム16に少なくとも上下方向および前後方向に移動可能に取り付けられている。当接パイプ21の左右方向端部を支持する支持部である突出状の支軸23は、振動フレーム16の下部内面に位置調整可能に取り付けられた鉛直状の取付板24に内方に向かって固定的に突設されている。
【0024】
当接パイプ21は、左右方向両端面に円形状の開口部25を有した両端面開口状の円筒状に形成されており、その開口部25から支軸23が当接パイプ21内に挿入され、この挿入された支軸23が当接パイプ21の内周面の上端部に当接している。つまり、当接パイプ21は、その左右方向両端部が左右1対の支軸23のみによって支持されており、この支軸23は開口部25内で自由に移動可能となっている。このため、当接パイプ21は、支軸23が開口部25から抜け出ない範囲内で自由に動けるようになっている。
【0025】
そして、当接パイプ21は、作業時には落花生Aの茎葉部分A1との当接により、左下がり傾斜状態および右下がり傾斜状態のいずれの状態にもなることが可能である(図2参照)。つまり、例えば2条のうちの一方の落花生Aが当接パイプ21の外周面の左側に当接した場合には、当接パイプ21はその左側が落花生Aにて押されて上動して右下がり傾斜状態となり、また、2条のうちの他方の落花生Aが当接パイプ21の外周面の右側に当接した場合には、当接パイプ21はその右側が落花生Aにて押されて上動して左下がり傾斜状態となる。なお、2つの落花生Aが同時に当接パイプ21に当接した場合には、当接パイプ21は、その全体が水平状態のまま上動する。
【0026】
また、当接パイプ21は、作業時には落花生Aの茎葉部分A1との当接により、支軸23を中心として後上方へ回動することも可能であり(図4参照)、また支軸23を中心として360度以上、回転する場合もある。なお、当接パイプ21は、落花生Aから離れると、自重によって元の状態に復帰する。
【0027】
切断体22は、振動フレーム16の下部外面に位置調整可能に取り付けられた左右1対の鉛直状の取付板部26と、これら両取付板部26の下端部を一体に連結する左右方向長手状で前下がり傾斜状の先金等の切断刃部27とにて構成されている。
【0028】
切断刃部27の前端部は鋭利状に尖っており、切断刃部27の後端部には、前倒れ姿勢になった根切断後の落花生Aを持ち上げて搬送手段4の搬送始端部に渡す櫛状の持上体28が取り付けられている。持上体28は、例えば左右方向に間隔をおいて並ぶ前下がり傾斜状の複数の持上棒29にて構成されており、互いに隣り合う持上棒29間の隙間から土が圃場に向かって落下するようになっている。各持上棒29の前端部が切断刃部27の後端部に固着され、各持上棒29の後端部が自由端部となっている。
【0029】
搬送手段4は、図1等に示されるように、入力軸15側からの動力により所定方向に回転(回行)しながら、落花生Aを前倒れ姿勢に維持したまま斜め上後方に向けて搬送するとともに、この搬送途中で隙間から土を圃場に落とすことが可能な無端状の搬送体31を有している。つまり、落花生Aを引っ掛けて搬送する引掛搬送部である搬送体31は、搬送面32から上方に突出する複数の爪体33を有するもので、持上体28からの落花生Aを受け取りこの受け取った落花生Aを爪体33で前倒れ姿勢に維持したまま搬送する。
【0030】
搬送体31は、入力軸15側からの動力により所定方向に回転する互いに平行な複数(例えば3本)のチェーン等の無端体36を有している。無端体36における回転方向に間隔をおいた位置には、落花生Aの茎葉部分A1に引っ掛かる複数の爪体(掻き上げ爪)33が突設された左右方向長手状の複数本の搬送用の長尺体37が無端体36とともに回転するように架設されている。また、無端体36における回転方向に間隔をおいた位置には、爪体33が設けられていない左右方向長手状の複数本の搬送用の長手状部材38が無端体36とともに回転するように架設されている。
【0031】
なお、爪無しの長手状部材38は、互いに隣り合う両長尺体37間に位置している。爪有りの各長尺体37には、複数の爪体33が長尺体37の長手方向に間隔をおいて設けられている。なお、長尺体37の上面および長手状部材38の上面にて搬送面32が構成されている。
【0032】
また、無端体36は、駆動軸41に固着された駆動回転体である駆動スプロケット42と、従動軸43a,43bに固着された従動回転体である従動スプロケット44a,44bに掛け渡されている。上側の従動スプロケット44aは、駆動スプロケット42の下方に配設されており、無端体36は、鉛直方向に沿って位置する鉛直状部36aを有している。つまり、搬送手段4の搬送終端部において無端体36が鉛直状部36aを有しており、このため、この鉛直状部36aの位置で落花生Aが自重により落下して爪体33から離れるようになっている。
【0033】
さらに、駆動軸41および従動軸43a,43bは、互いに離間対向する左右1対のコンベヤ側板である支持フレーム45にて回転可能に支持されており、その駆動軸41は動力伝達手段46を介して入力軸15に接続されている。
【0034】
さらに、爪体33は、取付手段によって長尺体37における長手方向に間隔をおいた複数位置にそれぞれ脱着可能に取り付けられている。爪体33は、図10に示されるように、例えば正面視L字状(略L字状を含む)の板部材からなるもので、複数の取付用孔が形成された取付板部51と、この取付板部51の左右方向端部にこの取付板部51に対して直交するように一体に立設された4角形状の作用板部52とを有している。
【0035】
取付板部51は、例えば平面視で搬送方向に長手方向を有する矩形状をなす板状に形成されている。作用板部52は、例えば側面視で上下の対辺が平行な台形状をなす板状に形成されている。また、作用板部52は、先端に向かって幅狭状のもので、この作用板部52の幅寸法が基端側から先端側に向かって徐々に減少している。
【0036】
放てき手段5は、図5ないし図10等に示されるように、搬送手段4の駆動軸41側からの動力により所定方向に回転しながら、搬送手段4の搬送終端部から搬出された前倒れ姿勢の落花生Aを後方に向けて放てきする1本の水平状の放てき用回転体である放てき用ローラ(反転ディスク)61にて構成されている。つまり、この放てき用ローラ61は、例えばスターローラからなるもので、左右方向の回転中心軸線Xを中心として所定方向に回転しながら落花生Aを前倒れ姿勢のまま姿勢変更手段6側に向けて放てきする。
【0037】
放てき用ローラ61は、機体2の軸支持部60にて回転可能に支持され回転中心軸線Xが軸芯を通る左右方向の回転軸63と、この回転軸63に設けられこの回転軸63とともに回転しながら落花生Aを後方へ放てきするローラ本体64とを有している。
【0038】
回転軸63の軸方向端部である左端部にはスプロケット65が固着され、同様に駆動軸41の軸方向端部である左端部にもスプロケット66が固着され、これら互いに離間対向する両スプロケット65,66には動力伝達用のチェーン67が掛け渡されている。なお、回転軸63は、無端体36の鉛直状部36aの後方に配設され、前方の従動軸43aと略同じ高さ位置に位置している。
【0039】
ローラ本体64は、回転軸63における軸方向に間隔をおいた位置に固着され落花生Aの茎葉部分A1に引っ掛かる側面視で星形状の引掛部材71と、互いに隣り合う引掛部材71間に固設された両端面開口状で円筒状の筒状部材72とにて構成されている。なお、筒状部材72は、回転軸63への茎葉部分A1の絡み付きを防止するためのものである。
【0040】
引掛部材71は、ローラ本体64の周方向に間隔をおいて並ぶ複数、例えば8つの凸部である三角部分(引掛部分)73が外周部に形成された星形板部74を有し、この星形板部74の中央部には取付筒部75が突設され、この取付筒部75が回転軸63の外周側にボルト80にて固着されている。また、星形板部74の側面には円環状の止め部76が突設され、この止め部76の外周側に筒状部材72が固着されている。なお、引掛部材71のうち少なくとも三角部分73は、例えば弾性変形可能な樹脂やゴム等の弾性部材にて構成することが好ましいが、例えば鉄製の金属で構成してもよい。
【0041】
また一方、放てき用ローラ61の外周の周速度(移動速度)は、搬送手段4の搬送体31の搬送速度(移動速度)よりも速い。つまり、落花生Aが搬送体31の爪体33から離れて後方へ適切に放てきされるように、放てき用ローラ61のローラ本体64の回転に基づく落花生Aの移動速度が、搬送手段4の搬送体31の回転に基づく落花生Aの移動速度よりも速くなっている。
【0042】
また、図10に示されるように、放てき用ローラ61は、搬送手段4の搬送終端部に近接して配設されており、側面視で搬送手段4の爪体33の移動領域と放てき用ローラ61の三角部分73の移動領域とが互いに重なるようになっている。
【0043】
姿勢変更手段6は、図5ないし図7等に示されるように、放てき手段5の放てき用ローラ61にて放てきされた落花生Aが衝突して前倒れ姿勢から反転姿勢になり、この反転姿勢になった落花生Aを圃場に向けて落下させる板状の姿勢変更用シュートである案内体(反転ガイド)81にて構成されている。
【0044】
案内体81は、例えば圃場に植生した2条の落花生Aが作業後において圃場の畝上に反転姿勢で1列状(略1列状を含む)に並ぶように、落花生Aをこの案内体81の左右方向中央側に案内しながら圃場に向けて落下させるものである。案内体81は、例えば半すり鉢状をなす1枚の板部材からなるもので、取付手段(例えばボルトおよびナット)82によって機体2の左右両側の取付板部83に位置調整可能に取り付けられている。
【0045】
また、案内体81は、平面視で前方に開口するV字状(略V字状を含む)をなす前下がり傾斜状で落花生Aを滑落案内する案内面85を前面に有し、かつ、下方に向かって開口して落花生Aを落下させる農作物排出口である落下口86を下端部に有している。この案内面85は、落花生Aがスムーズに滑落するように、滑らかな曲面形状に形成されている。
【0046】
そして、例えば2条のうちの一方の落花生Aが案内面85の左側に衝突した場合には、落花生Aは、衝突により前倒れ姿勢から反転姿勢へと姿勢変更した後、案内面85の左側にて案内面85の中央部に向けて案内されてから、中央側の落下口86を通って圃場に向かって落下する。
【0047】
また、2条のうちの他方の落花生Aが案内面85の右側に衝突した場合には、落花生Aは、衝突により前倒れ姿勢から反転姿勢へと姿勢変更した後、案内面85の右側にて案内面85の中央部に向けて案内されてから、中央側の落下口86を通って圃場に向かって落下する。
【0048】
なお、案内体81の案内面85の水平方向に対する傾斜角度αは、例えば45度〜75度である。なお、品種や育成条件等によって落花生Aの状態が異なるため、例えば落花生Aの状態に対応できるように、案内面85の傾斜角度αを調整可能な構成としてもよい。また、案内体81は、例えば弾性変形可能な樹脂やゴム等の弾性部材にて構成することが好ましいが、例えば鉄製の金属板等にて構成してもよい。
【0049】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0050】
農作業機1をトラクタに連結した状態で、トラクタの走行により農作業機1を進行方向である前方に移動させると、圃場の畝に植生した落花生Aは、まず、根切断手段3にて根が切断されて土中の根側部分A2が地上に掘り上げられる。
【0051】
この際、根切断手段3は、当接パイプ21の外周面で落花生Aの茎葉部分A1を前方に押し倒しながら、切断体22の切断刃部27で落花生Aの根側部分A2の根を切断するため、落花生Aは、茎葉部分A1が上側に位置する通常姿勢から茎葉部分A1が前側に位置する前倒れ姿勢となる。
【0052】
そして、前倒れ姿勢となった根切断後の落花生Aは、前倒れ姿勢のまま、持上体28にて持ち上げられた後、搬送手段4の搬送体31にて斜め上後方に向けて搬送される。
【0053】
このとき、搬送体31の無端体36、長尺体37および長手状部材38は、圃場の畝の土中には入らず、搬送体31のうち爪体33のみが、圃場の畝の土中に入るようになっている。このため、落花生Aとともに圃場の土が搬送体31上に載って搬送されるようなことがなく、また無端体36が圃場の土との接触により磨り減るようなこともない。
【0054】
そして、爪体33は、根が切断された前倒れ姿勢の落花生Aの茎葉部分A1(主として茎葉部分A1のうち根側部分A2に近い部分)に引っ掛かってその落花生Aを掻き上げ、その後、その爪体33は、長尺体37および長手状部材38上で落花生Aを前倒れ姿勢に維持したまま、斜め上後方に向けて搬送する。
【0055】
つまり、落花生Aは、搬送体31の爪体33にて掻き上げられた後、その爪体33が茎葉部分A1に入り込んで引っ掛かった係合状態のまま、長尺体37および長手状部材38にて前倒れ姿勢(実が搬送方向前方を向いた姿勢)で搬送される。この搬送の際、落花生Aに付着した土は、搬送体31の隙間から圃場上に落下する。
【0056】
その後、落花生Aは、搬送手段4の搬送体31の搬送終端部から搬出されると、放てき手段5の放てき用ローラ61にて前倒れ姿勢のまま後方へ放てきされ、姿勢変更手段6の案内体81の案内面85に衝突する。
【0057】
すると、落花生Aは、衝突の勢いと案内面85の傾斜角度αにより、前倒れ姿勢から反転姿勢へと姿勢変更する。
【0058】
そして、反転姿勢になった落花生Aは、案内面85上をこの案内面85の中央側に向かって滑落して落下口86から圃場の畝上に落下する。こうして、例えば圃場に植生した2条の落花生Aは、圃場の畝上に反転姿勢で前後方向に略沿った1列状に置かれて行く(図5参照)。
【0059】
なお、圃場上に置かれた落花生Aは、地干し等により自然乾燥させた後、根側部分A2の実のみを分離して収穫する。
【0060】
そして、農作業機1によれば、根切断手段3が圃場に植生した落花生Aの茎葉部分A1を前方に押し倒しながらその落花生Aの根を切断し、搬送手段4が根切断後の落花生Aを茎葉部分A1が前側に位置する前倒れ姿勢に維持したまま斜め上後方へ搬送し、放てき手段5が搬送手段4からの落花生Aを放てきし、姿勢変更手段6が放てき手段5からの落花生Aを茎葉部分A1が下側に位置する反転姿勢にして圃場上に落下させるため、搬送手段4上での落花生Aの前倒れ姿勢が爪体33との係合により効果的に安定して、落花生Aを適切に上下反転させることができ、よって、落花生Aを適切に反転姿勢にして圃場上に置いて行くことができる。
【0061】
また、根切断手段3は、圃場に植生した落花生Aの茎葉部分A1に当接してこの茎葉部分A1を前方に押し倒す少なくとも上下動可能な当接パイプ21を有するため、この当接パイプ21にて落花生Aの茎葉部分A1を適切に押し倒すことができる。
【0062】
さらに、当接パイプ21は、落花生Aの茎葉部分A1との当接により左下がり傾斜状態および右下がり傾斜状態のいずれの状態にもなることが可能であるため、落花生Aの茎葉部分A1をより適切に押し倒すことができる。すなわち例えば欠株や繁茂の違い等が左右や前後にあっても、その傾動可能な当接パイプ21によって落花生Aの茎葉部分A1を適切に押し倒すことができる。
【0063】
また、姿勢変更手段6の案内体81は、圃場に植生した複数条の落花生Aが圃場上に反転姿勢で1列状に並ぶように、落花生Aを案内体81の左右方向中央側に案内しながら圃場に向けて落下させるため、落花生Aの条数が半減し、例えば後作業を効率良く行うことができる。
【0064】
さらに、放てき手段5の放てき用ローラ61の周速度が、搬送手段4の搬送体31の搬送速度よりも速いため、搬送手段4の搬送体31からの落花生Aを案内体81に向けて適切に放てきでき、落花生Aをより適切に反転させることができる。
【0065】
なお、農作業機1の根切断手段3は、例えば図11および図12に示すものでもよい。
【0066】
この根切断手段3の当接パイプ(姿勢制御ローラ)21は、機体2に対して少なくとも上下動可能なものであるが、振動フレーム16の振動による影響を受けないように、左右1対の支持手段91を介して機体2のフレームパイプ部14に取り付けられている。
【0067】
当接パイプ21は、左右方向両端面が閉塞した円筒状に形成されており、左右方向両端部に軸部93を有している。つまり、当接パイプ21は、両端面が閉塞した円筒状のパイプ本体部92と、このパイプ本体部92の両端面の中央部に突設された左右方向の軸部93とにて構成されている。
【0068】
支持手段91は、上端部が機体2のフレームパイプ部14の左右方向端部に固着された略く字状の固定アーム95を有し、この固定アーム95の下端部には回動アーム96が左右方向の支軸(回動中心)97を中心として上下方向に回動可能に取り付けられている。
【0069】
回動アーム96にはその長手方向に並ぶ複数の取付用孔98が形成され、これら複数の取付用孔98の中から選択された一の取付用孔98に支軸97が挿入されている。また、固定アーム95と回動アーム96とが、当接パイプ21を所定の下限位置に位置決めする下がり止め用の線状部材(例えばチェーンやワイヤー等)100にて連結されている。つまり、線状部材100の上端部が固定アーム95の孔部101に取り付けられ、線状部材100の下端部が回動アーム96の孔部102に取り付けられている。
【0070】
回動アーム96の後端部には当接パイプ21の軸部93が回転可能に取り付けられており、この当接パイプ21は、支軸97を中心として上下回動可能な左右1対の回動アーム96によって回転可能に支持されている。つまり、当接パイプ21は、回動アーム96に対して軸部93を中心として回転可能で、かつ、固定アーム95に対して支軸97を中心として上下方向に回動可能である。
【0071】
また、この当接パイプ21は、図2に示すものと同様、作業時には落花生Aの茎葉部分A1との当接により、左下がり傾斜状態および右下がり傾斜状態のいずれの状態にもなることが可能である。換言すると、左右1対の回動アーム96は、固定アーム95に対してそれぞれ個別に上下回動可能となっている。
【0072】
そして、このような根切断手段3を備えた農作業機1であっても、上述した農作業機1と同様の作用効果を奏することができる。
【0073】
また、農作業機1の姿勢変更手段6の案内体81は、例えば図13ないし図15に示すものでもよい。
【0074】
この半すり鉢状の案内体81は、図5に示すものと同様、放てき手段5にて放てきされた落花生Aを前倒れ姿勢から反転姿勢にして圃場に向けて落下させるものである。そして、この案内体81は、平面視で前方に開口するV字状(略V字状を含む)をなす前下がり傾斜状で落花生Aを滑落案内する案内面85を前面下部に有し、かつ下方に向かって開口して落花生Aを落下させる農作物排出口である落下口86を下端部に有しているが、この案内面85は、複数の平面によって構成されている。
【0075】
すなわち例えば、この案内面85は、左右に向くことなく前斜め上方を向いた前下がり傾斜状で平面状の中央案内面部85aと、右前斜め上方を向いた右前下がり傾斜状で平面状の左案内面部85bと、左前斜め上方を向いた左前下がり傾斜状で平面状の右案内面部85cとを有している。なお、この案内体81は、鉛直方向に沿った複数の平面からなる鉛直面90を前面上部に有している。
【0076】
そして、このような案内体81を備えた農作業機1であっても、上述した農作業機1と同様の作用効果を奏することができる。なお、例えば中央案内面部85aのみを曲面状に形成して、案内面85を曲面と平面との組み合わせによって構成してもよい。また、例えば鉛直面90を有しない形状等でもよい。
【0077】
さらに、農作業機1の放てき手段5の放てき用ローラ61は、例えば図16ないし図18に示すものでもよい。
【0078】
この放てき用ローラ61は、例えば複数の凸部であるゴム突起111を外周部に有する突起付きローラからなるもので、左右方向の回転中心軸線Xを中心として所定方向に回転しながら落花生Aを前倒れ姿勢のまま姿勢変更手段6側に向けて放てきする。
【0079】
そして、この放てき用ローラ61は、図8に示すものと同様、動力伝達用のチェーン67および両スプロケット65,66を介して搬送手段4の駆動軸41に接続された回転軸63と、この回転軸63に設けられこの回転軸63とともに回転しながら落花生Aを後方へ放てきするローラ本体64とを有している。
【0080】
このローラ本体64は、回転軸63の外周側に固着されこの回転軸63とともに回転する円筒状のローラ本体部112を有し、このローラ本体部112の外周面には互いに平行な複数の軸方向長手状の取付部113が固着され、これら複数の取付部113はローラ本体部112の周方向に等間隔をおいて並設されている。
【0081】
各取付部113には、弾性変形可能な複数の弾性突起であるゴム突起111が取付部113の長手方向に沿って2列をなすように取り付けられている。そして、各取付部113に取り付けられた2列のゴム突起111は、その間の離間距離が基端側から先端側に向かって徐々に増大し、側面視でV字状をなしている。なお、各取付部113ごとのゴム突起111は、2列ではなく1列でもよい。
【0082】
また、この放てき用ローラ61の外周の周速度は搬送手段4の搬送体31の搬送速度よりも速い。なお、図18に示されるように、側面視で、搬送手段4の爪体(凸部)33の移動領域と、放てき用ローラ61のローラ本体64のゴム突起(凸部)111の移動領域とが、互いに重ならないようになっている。
【0083】
そして、このような放てき用ローラ(突起付きローラ)61を備えた農作業機1であっても、上述した農作業機1と同様の作用効果を奏することができる。
【0084】
なお、農作業機1は、例えば前記各変形例の構成を適宜組み合わせたもの等でもよい。
【0085】
また、農作業機1は、2条の農作物(落花生A)を作業対象とするものには限定されず、例えば1条の農作物や3条以上の農作物を作業対象とするもの等でもよい。
【0086】
さらに、振動フレーム16が機体2に支軸19を中心として回動可能に設けられた構成には限定されず、例えば振動フレーム16の代わりに固定フレームが機体2に固着され、この固定フレームに当接パイプ21等の当接体が設けられた構成等でもよい。
【0087】
また、当接体は、例えば機体に対して回転のみするもの、機体に対して上下動のみするもの、或いは機体に対して固定されたもの等でもよい。
【0088】
さらに、トラクタに連結する牽引式の農作業機には限定されず、走行タイヤ等の走行手段を備えた自走式の農作業機でもよい。
【0089】
また、農作物は、落花生Aには限定されず、例えば甘藷等でもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 農作業機
3 根切断手段
4 搬送手段
5 放てき手段
6 姿勢変更手段
21 当接体である当接パイプ
22 切断体
61 放てき用回転体である放てき用ローラ
81 案内体
85 案内面
A 農作物である落花生
A1 茎葉部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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