(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電磁波共振体を形成する材料は、金属、グラフェン、インジウムスズ酸化物、亜鉛酸化物、およびスズ酸化物からなる群から選定された、少なくとも一つの材料である、請求項1乃至10のいずれか一つに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。
【0011】
本実施形態では、電磁波に対して共振する電磁波共振体を備えるメタマテリアルの製造方法であって、
(a)電磁波共振体が形成される部分を有する支持体を形成するステップと、
(b)前記支持体の前記部分に、電磁波共振体を形成する材料を蒸着し、前記支持体に前記電磁波共振体を配置するステップと、
を含み、
前記支持体を形成するステップは、
(c)基板上に、厚さ方向に貫通した親水性液相領域を有する親水性・疎水性分相膜のカラム構造を形成するステップと、
(d)前記厚さ方向に貫通した親水性液相領域を有する親水性・疎水性分相膜のカラム構造内に、充填物を充填するステップであって、前記充填物を、前記カラム構造の高さと同じ高さで形成するステップと、
(e)前記充填物を有する前記親水性・疎水性分相膜から、該親水性・疎水性分相膜の少なくとも一部を選択的に除去し、前記充填物を含む支持体を得るステップと、
を有するメタマテリアルの製造方法が提供される。
【0012】
従来の一般的なメタマテリアルを製造する方法では、電磁波共振体を製造する際に、リソグラフィー技術およびエッチング技術を用いる。しかしながら、このような方法では、例えば、微細な電磁波共振体を有するメタマテリアルを量産する場合などにおいて、電磁波共振体の寸法形状等にバラツキが生じるおそれがある。このため、従来の方法では、メタマテリアルを効率的に量産することは難しいと考えられる。
【0013】
これに対して、本実施形態では、前記電磁波共振体を配置する際に使用される支持体を、
・基板上に、厚さ方向に貫通した親水性液相領域を有する親水性・疎水性分相膜のカラム構造を形成するステップと、
・前記厚さ方向に貫通した親水性液相領域を有する親水性・疎水性分相膜のカラム構造内に、充填物を充填するステップであって、前記充填物を、前記カラム構造の高さと同じ高さで形成するステップと、
・前記充填物を有する前記親水性・疎水性分相膜から、該親水性・疎水性分相膜の少なくとも一部を選択的に除去し、前記充填物を含む支持体を得るステップと、により製造する。
【0014】
この場合、後述するように、極めて微細なカラム状パターンを有する支持体を、高精度で容易に製造できる。
【0015】
また、本発明によるメタマテリアルの製造方法では、電磁波共振体は、蒸着法によって支持体に配置される。この場合、比較的大きな精度誤差が生じ得るリソグラフィー技術を使用する必要はなく、高い精度で再現性良く、メタマテリアルを製造できる。
【0016】
また、本発明によるメタマテリアルの製造方法では、支持体の大面積化が容易となり、メタマテリアルを効率的に量産することが可能になる。
【0017】
(ブロック共重合体のミクロ相分離現象)
ここで、本実施形態によるメタマテリアルの製造方法において、厚さ方向に貫通した親水性液相領域を有する親水性・疎水性分相膜のカラム構造を形成する方法として、ブロック共重合体のミクロ相分離現象を利用している。使用されるブロック共重合体のミクロ相分離現象について、簡単に説明する。
【0018】
親水性高分子鎖と疎水性高分子鎖の双方を有するブロック共重合体は、所定の(熱処理)条件下で、両鎖が相分離し、特徴的な微細構造を示すことが知られている(ミクロ相分離現象)(例えば特開2012−1787号公報)。
【0019】
例えば、以下の化学式で表されるブロック共重合体(1)は、親水性高分子鎖(式(1)のA部分)と疎水性高分子鎖(式(1)のZ部分)とが互いに非相溶性であるため、熱処理により容易に相分離し、ヘキサゴナル配置の親水相を有するカラム構造を形成する。
【0020】
【化1】
ここで、R
1およびR
2は、水素原子またはアルキル基であり、R
3は、メチル基であり、pは、4〜30の整数であり、qは、5〜500の整数であり、Aは、親水性高分子鎖であり、Bは、ハロゲン原子であり、Zは、液晶性メソゲン鎖である。
【0021】
本実施形態においては、式(1)で示されるブロック共重合体の中でも、親水性高分子鎖としてポリエチレンオキサイド(PEO)と、疎水性高分子鎖としてポリメタクリレート誘導体(PMA(Az))とを有するブロック共重合体(PEO−b−PMA(Az))を使用した。
【0022】
カラム構造における親水相の直径および隣り合う親水相のピッチは、カラム構造を形成する被処理体(例えば、基板)の表面状態、熱処理条件、親水性高分子鎖の種類及び鎖長、並びに、疎水性高分子鎖の種類及び鎖長等により制御できる。具体的には、当業者であれば、例えば、直径3nm程度の超微細なカラムから、直径100nmの比較的大きなカラムまで調整できる。
【0023】
また、PEOの分子量が異なるブロック共重合体を混合することでも、カラム構造における親水相の直径および隣り合う親水相のピッチを制御できることが知られている(例えば、S.Y. Jung and H. Yoshida, J. Therm. Anal. Cal., 85 (2006) 3, 719-724)。
【0024】
この親水相を有するカラム構造は、親水性高分子鎖が内部に液相状態で存在する。即ち、厚さ方向に貫通した親水性液相領域を有する親水性・疎水性分相膜のカラム構造が形成される。液相状態であるため、配位結合とイオン結合を介して、後述する方法により、内部に親水性の充填物を充填することが可能となる。その結果、充填物がカラム状に形成されたミクロ相分離膜を得ることができる。
【0025】
カラム状に形成された充填物をメタマテリアル用の支持体に適用する場合、充填物は一定の高さで高精度に配列されている必要がある。そこで、本実施形態では、親水性液相のカラム内に充填物を形成させる際に、後述する方法等によって、充填物をカラム構造の高さと同じ高さとなるように形成させる。これによって、高さが一定の高さで高精度に配列されたメタマテリアル用の支持体を形成できる。
【0026】
なお、親水性・疎水性分相膜は、その後、充填物から選択的に除去され、最終的には、充填物で構成された支持体が得られる。
【0027】
このような支持体の製造方法では、極めて微細なカラム状パターンを有する支持体を、高精度で容易に製造できる。また、支持体の製造に利用される、親水性液相のカラム構造を有する親水性・疎水性分相膜は、ブロック共重合体の熱処理によって、いわば「自発的に」形成される。従って、本発明では、支持体の製造の際に、あまり特殊な装置および/または環境を準備する必要はなく、さらに、大面積の支持体を容易に製造できる。
【0028】
なお、厚さ方向に貫通した親水性液相領域を有する親水性・疎水性分相膜のカラム構造と構造が類似の厚さ方向に貫通した穴を有する多孔膜のカラム構造を形成する方法としては、アルミニウム薄膜やシリコン薄膜等の導電性もしくは半導体性薄膜の陽極酸化による方法もある。カラム構造の配置を制御するための表面の凹凸形成や、電気化学反応による陽極酸化のための精密な電流制御などが必要であることから、生産性についてはブロック共重合体のミクロ相分離を利用する方法にはおよばないものの、類似のカラム構造の形成は可能である。一方、陽極酸化による多孔膜のカラム構造の場合、本発明のブロック共重合体の様に少なくとも一部を選択的に除去し、支持体を得ることが困難である。
【0029】
(本発明によるメタマテリアルの製造方法)
次に、図面を参照して、本実施形態によるメタマテリアルの製造方法の一例について、詳しく説明する。
【0030】
図1には、本実施形態によるメタマテリアルの製造方法の一例の概略的なフロー図を示す。
図2には、本実施形態によるメタマテリアルの製造方法における各工程を模式的に示す。
【0031】
図1に示すように、本実施形態によるメタマテリアルの製造方法は、
(a)電磁波共振体が形成される部分を有する支持体を形成するステップ(S110)と、
(b)前記支持体の前記部分に、電磁波共振体を形成する材料を蒸着し、前記支持体に前記電磁波共振体を配置するステップ(S150)と、
を含み、
前記支持体を形成するステップ(S110)は、
(c)基板上に、厚さ方向に貫通した親水性液相領域を有する親水性・疎水性分相膜のカラム構造を形成するステップ(S120)と、
(d)前記厚さ方向に貫通した親水性液相領域を有する親水性・疎水性分相膜のカラム構造内に、充填物を充填するステップであって、前記充填物を、前記カラム構造の高さと同じ高さで形成するステップ(S130)と、
(e)前記充填物を有する前記親水性・疎水性分相膜から、該親水性・疎水性分相膜の少なくとも一部を選択的に除去し、前記充填物を含む支持体を得るステップ(S140)と、
を有する。
【0032】
以下、各ステップについて、説明する。
【0033】
(ステップS110)
まず、電磁波共振体が形成される部分を有する支持体が形成される。
【0034】
支持体は、以下のステップS120〜ステップS140を経て形成される。
【0035】
(ステップS120)
図2(a)に示すように、まず、第1の表面112を有する基板110が準備される。
【0036】
基板110は、後に第1の表面112上に、親水性・疎水性分相膜を支持する役割を有する。
【0037】
基板110の材質は、特に限られないが、基板110と親水性・疎水性分相膜との間において、十分な密着性を有することが好ましい。基板110と親水性・疎水性分相膜との間の密着性が極端に悪いと、基板110上に親水性・疎水性分相膜を適正に設置することができなくなるおそれがある。
【0038】
基板110は、導電性であっても、非導電性であってもよい。導電性基板としては、金属基板、または表面にITO膜等の(透明)導電性コーティングを設置した基板が挙げられる。非導電性基板としては、ガラス基板および樹脂基板等が挙げられる。
【0039】
また、基板110の表面エネルギー状態を制御するために、SAM(Self Assembled Monolayer)材料を塗布し、基板110の表面にSAM膜を形成させてもよい。なお、この場合、SAM膜の表面が第1の表面112となる。
【0040】
次に、第1の表面112の上に、ブロック共重合体膜120が設置される。
【0041】
ブロック共重合体は、前述のように、所定の環境下でミクロ相分離現象が生じ、ヘキサゴナル配置の親水性液相を有するカラム構造が形成されるものであれば、その種類は、特に限られない。そのようなブロック共重合体は、当業者には良く知られている。なお、ブロック共重合体は、例えば、前述の式(1)で示されるブロック共重合体であってもよい。
【0042】
基板110へのブロック共重合体膜120の形成方法は、特に限られないが、例えば、ブロック共重合体を有機溶媒に溶解した塗布液を、スピンコーティング法、またはスプレー塗布等により、基板110に形成できる。
【0043】
次に、ブロック共重合体膜120を有する基板110を熱処理して、ブロック共重合体膜120にミクロ相分離現象を発現させる。
【0044】
熱処理温度は、ブロック共重合体膜120の種類によって異なるが、例えば、ブロック共重合体膜120の融点をTm(℃)としたとき、Tm−50℃〜Tm+30℃の範囲であってもよい。
【0045】
これにより、
図2(b)に示すような親水性・疎水性分相膜130が形成される。親水性・疎水性分相膜130は、貫通した親水性液相のカラム132の部分と、疎水性固相のカラム134の部分とで構成される。そして、親水性・疎水性分相膜130は、所定の熱処理条件において、ヘキサゴナル配置の親水性液相のカラム132を有するカラム構造136を有する。
【0046】
親水性液相のカラム132の直径は、特に限られないが、例えば、3nm〜100nmの範囲内であってよい。
【0047】
(ステップS130)
次に、親水性・疎水性分相膜130を有する基板110において、親水性液相のカラム132内に、充填物150が充填される。この際、充填物150は、カラム構造の高さと同じ高さで形成されることが重要である。
【0048】
充填物は、導電性のものであっても、非導電性のもの(例えばセラミックス)であってもよい。導電性の充填物としては、例えば金属が挙げられ、非導電性の充填物としては、酸化シリコン(SiO
2)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化チタン(TiO
2)等の酸化物が挙げられる。
【0049】
以下、親水性液相のカラム132に、電析を利用してCeO
2を含む充填物150を充填する場合を例に、この工程について説明する。なお、電析を利用する方法では、金属等の導電性の充填物150を、カラム132の部分に電解めっきとして充填することも可能である。
【0050】
まず、親水性・疎水性分相膜130を有する基板110に対して、電析処理が行われる。
【0051】
なお、基板110が導電性を有する場合は、この基板110をそのまま使用できる。一方、基板110が非導電性基板である場合には、予め導電性物質の蒸着や無電解めっき処理等を行い、基板110を導電性にしておく必要がある。
【0052】
基板110に対して電析処理が行われると、アルカリ性を呈する親水性液相のカラム132内のみ充填物の析出がおこる。その特徴から、析出物の高さは、親水性液相のカラムの高さと同じになる。
【0053】
また、電析処理は、
図2(c)に示すように、電析物の厚さが、親水性液相のカラム132の高さと同じ高さになるまで実施される。
【0054】
なお、この場合、充填物150は、Ceの水酸化物およびCeの酸化物等の混合物が充填される。
【0055】
次に、親水性液相のカラム132の部分に、充填物を充填する他の例について、説明する。
【0056】
図3には、本実施形態によるメタマテリアルの製造方法の他の例における各工程を模式的に示す。
図3に示す例では、一例として、充填物としてSiO
2等の非導電性物質を充填する例について、説明する。また、
図3において、
図3(b)までの工程および
図3(d)以降の工程は、
図2と同様であるので、説明を省略する。
【0057】
まず、親水性・疎水性分相膜130を有する親水性液相のカラム132の部分に、一般的なゾル−ゲル法等を利用して、ゾル状の充填物150が親水性液相のカラム132の部分に充填される。この時、カラムは液相状態であるため、配位結合とイオン結合を介して、容易に充填物150はカラム132内に充填される。
【0058】
充填物150は、
図3(c')に示すように、親水性液相のカラム132の高さを超えるまで実施されてもよい。その場合、
図3(c')に示すように、親水性・疎水性分相膜130の上部に、充填物150の残部140が構成される。ゾル状充填物は、ゲル化して流動性を失ってゲル化する。なお、
図3(c')では、明確化のため、親水性液相のカラム132は、示されていない。また、残部140は、充填物150の、カラム132の高さを超えた部分のことを形式的に残部140と呼ぶ。
【0059】
そして、ゲル化した充填物150の少なくとも残部140を公知の乾燥方法によって乾燥させる。そして、残部140を、例えば剥離除去する。
【0060】
結果として、
図3(c'')に示すように、充填物150の高さが、親水相のカラム132の高さと同じ高さとなるような、充填物150を形成できる。
【0061】
ゾル状の充填物150を充填する実施形態では、残部140を除去して、充填物150の高さが、親水性液相のカラム132の高さと同じ高さにした後、例えば電子ビーム照射、酸素プラズマ処理、熱処理により、ゾル状の充填物150を架橋(硬化)させる必要がある。
【0062】
(ステップS140)
次に、
図2(d)に示すように、基板110上から、親水性・疎水性分相膜130が選択的に除去される。
【0063】
親水性・疎水性分相膜130の除去方法は、特に限られない。親水性・疎水性分相膜130は、例えば、熱分解処理、酸素プラズマ処理、または有機溶媒による溶解処理等により、基板110上から除去してもよい。
【0064】
これにより、
図2(d)に示すような、基板110およびカラム状の充填物150で構成された支持体200が得られる。
【0065】
なお、親水性・疎水性分相膜130の除去は、
図2(d)においては、完全に除去されているが、親水性・疎水性分相膜130がカラム状の充填物150の根元部分に残るように、部分的に除去されてもよい。カラム状の充填物150の根元部分に一部の親水性・疎水性分相膜が残るように除去することで、カラム状の充填物150の垂直性の保持が容易となる。
【0066】
前述のように、親水性・疎水性分相膜130の親水相のカラム132は、極めて微細であり、極めて高精度に配列される。したがって、支持体200は、極めて高精度に配列された微細なカラム状の充填物150を有することになる。
【0067】
(ステップS150)
次に、前述までの工程で得られた支持体200を用いて、メタマテリアルが製造される。
【0068】
より具体的には、
図2(e)に示すように、支持体200のカラム状の充填物150部分に、電磁波共振体160(より正確には、電磁波共振体を形成する材料)が蒸着等により配置される。
【0069】
電磁波共振体を形成する材料としては、金属、グラフェン、インジウムスズ酸化物、亜鉛酸化物、およびスズ酸化物からなる群から選定された、少なくとも一つの材料であってもよい。
【0070】
なお、蒸着は、
図2(e)に示すように、支持体200のカラム状部分150の延伸方向(Z方向)に対して、所定の角度θ(0<θ<90゜)を有する、第1の方向Pから実施されることが好ましい。なお、角度θは、XZ平面に垂直な方向(
図2(e)において、紙面に垂直な方向)から見たとき、カラム状部分150の延伸方向に対して、時計回りの方向の角度を表す。これにより、支持体200のカラム状の充填物150の先端部分にのみ、電磁波共振体160を蒸着できる。
【0071】
また、
図2(e)に示すように、必要な場合、その後、支持体200のカラム状の充填物150の延伸方向に対して、所定の角度φ(−90゜<φ<0)を有する、第2の方向Qから、蒸着が実施されてもよい。なお、角度φは、XZ平面に垂直な方向(
図2(e)において、紙面に垂直な方向)から見たとき、カラム状部分150の延伸方向に対して、反時計回りの方向の角度を表す。角度φは、角度θと絶対値が等しくてもよい。
【0072】
このような2回の蒸着を実施した場合、支持体200の側面から見たとき、支持体200のカラム状の充填物150の表面に、略逆U字型の電磁波共振体160を配置できる。
【0073】
このような略逆U字型の電磁波共振体160の配列は、電気回路のU字コイルの配列と考えることができる。支持体200に対して概ね垂直方向から電磁波を入射すると、該電磁波の磁場成分がU字コイルを貫くこととなり、電磁波共振体160内に電磁誘導により電流が流れ、その電流が反抗磁場を形成するように働く。この現象は磁場共鳴と呼ばれ、電磁波共振体160のU字のそれぞれの端部の長さを蒸着角度φ、θにより変えることかでき、透磁率と誘電率を調節できる。それによって例えば、共振周波数の直後の高周波数帯で透磁率と誘電率が、ともに負の値となることで負の屈折率を実現することのできるメタマテリアルのリング共振器(Split Ring Resonator(SRR))として利用できる。SRRを有するメタマテリアルでは、従来はリソグラフィー技術およびエッチング技術によって略U字型SRRや略C字型SRRが平面内に形成されたものが報告されているが、その様なSRRで磁場共鳴現象を発現するためには、電磁波をSRRが形成された面内に入射するか、面に対して斜め方向から入射して、平面方向の磁場成分を利用する必要があり、レンズや波長選択フィルターなどの光素子として使いにくいものであった。一方、本発明の略逆U字型のSRRでは、前述の様に電磁波を支持体に対して垂直な方向から入射することで機能させることから、素子応用が容易である利点を有する。
【0074】
蒸着方法の種類は、特に限られない。例えば、電磁波共振体160は、物理蒸着法または化学蒸着法で形成されてもよい。
【0075】
物理蒸着は、固体の原料を加熱することによって原料を気化させ、および気化した原料のガスを基板の表面に堆積させる手段であり、あるいはイオンや高エネルギーの粒子をターゲットに衝突させて、飛び出した粒子を基板の表面に堆積させる手段である。
【0076】
物理蒸着の具体例としては、真空蒸着、スパッタリングおよびイオンプレーティング等が挙げられる。真空蒸着としては、例えば、電子ビーム蒸着、抵抗加熱蒸着等が挙げられる。スパッタリングとしては、例えば、直流(DC)スパッタリング、交流(AC)スパッタリング、高周波(RF)スパッタリング、パルス化直流(DC)スパッタリング、マグネトロンスパッタリング等が挙げられる。
【0077】
化学蒸着は、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し、基板表面あるいは気相での化学反応により膜を堆積させる手段である。
【0078】
化学蒸着の具体例としては、例えば、熱CVD、光CVD、プラズマCVD、エピタキシャルCVDなどが挙げられる。
【0079】
下記に、支持体の各カラム状部分の先端に、グラフェン膜を形成する方法の一例を説明する。
【0080】
まず、支持体の各カラム状部分の先端に、銅の蒸着膜を形成する。この銅の蒸着膜は、支持体に対して、異なる2方向から銅を物理蒸着することにより、支持体の各カラム状部分の先端に、略逆U字型となるように設置する。
【0081】
次に、メタン、アルゴンおよび水素の混合ガスを用いて、CVD法により、各カラム状部分の先端にグラフェン膜を成膜する。
【0082】
各ガスの流量は、限られないが、メタン27SCCM、アルゴン18SCCM、および水素9SCCMであってもよい。また、成膜圧力は、3Paとし、成膜温度は320℃とし、成膜時間は200秒としてもよい。
【0083】
ここで、銅の蒸着膜は、グラフェン膜を形成する際の触媒層として機能する。このため、グラフェン膜は、各カラム状部分のうち、銅の蒸着膜が設置されている箇所にのみ形成される。これにより、各カラム状部分の先端に、略逆U字型のグラフェン膜が形成される。
【0084】
次に、得られた支持体上に、エポキシ系樹脂(エクセルエポ・透明タイプ;セメダイン社製)を滴下、塗布し、その上から、撥液処理を行った石英ガラス基板を押し付ける。この状態で、20分間保持し、エポキシ系樹脂を硬化させる。
【0085】
その後、石英ガラス基板を取り外すことにより、銅膜およびグラフェン膜を有する支持体と、エポキシ樹脂とからなる組立体を得る。
【0086】
次に、5%の硫化水素水溶液に組立体を浸漬し、支持体および銅膜を選択的に溶解させることにより、グラフェン膜の凹パターンを有するエポキシ樹脂製のメタマテリアルを作製する。
【0087】
(メタマテリアルの構成について)
次に、図面を参照して、前述のような本発明による製造方法によって得られるメタマテリアルの構成例について、簡単に説明する。
【0088】
図4には、本発明による製造方法によって得られるメタマテリアルの一構成例を概略的に示す。
図4(a)には、メタマテリアルの一部の拡大斜視図が示されている。また、
図4(b)には、メタマテリアルの一部の拡大上面図が示されている。
【0089】
図4(a)、(b)に示すように、このメタマテリアル300は、支持体200と、電磁波共振体310とで構成される。
【0090】
支持体200は、基板110と、該基板110の上部に形成されたカラム190とを有する。各カラム190は、メタマテリアル300を上部から見たとき、モデルとして分かり易い様にヘキサゴナル配置となるように図示されている。
図4(a)、(b)には、明確化のため、カラム190の構成単位となる、単位六角形状配置320が破線で示されている。
【0091】
電磁波共振体310は、ヘキサゴナル配置となるように配列された各カラム190の上面、および側面の一部に配置されている。より詳しくは、電磁波共振体310は、メタマテリアルを水平方向(図のX方向)から見たとき、略逆U字型の形態となるようにして、各カラム190の先端に形成されている。
【0092】
なお、このようなメタマテリアル300は、例えば、各カラム190の延伸方向(Z方向)に対して傾斜する2方向から、支持体200に、電磁波共振体を形成する材料を蒸着することにより構成できる。
【0093】
例えば、
図4(a)、(b)の例では、最初に矢印330の方向から、第1回目の蒸着が行われ、次に矢印340の方向から、第2回目の蒸着が行われる。ここで、矢印330および340は、支持体200の表面と垂直な同一の平面(XZ平面)内にあるものの、カラム190の延伸軸(Z軸)に対して相互に反対向きに傾斜している。
【0094】
この場合、矢印330の側からの第1回目の蒸着の際には、2つの相互に隣接するカラム190において、下流側のカラムと支持体200は、上流側のカラムの陰となる。そのため、各カラム190の側面全体と支持体200には、蒸着材料が成膜されなくなる。すなわち、蒸着材料は、カラム190の上面と、側面の一部にのみ成膜される。
【0095】
同様に、矢印340の側からの第2回目の蒸着の際には、2つの相互に隣接するカラム190において、下流側のカラムと支持体200は、上流側のカラムの陰となる(第1回目の蒸着とは、上流と下流の関係が逆となることに留意する必要がある)。そのため、各カラム190の側面全体と支持体200には、蒸着材料が成膜されなくなる。すなわち、蒸着材料は、カラム190の上面と、側面の1回目の蒸着によって成膜がなされた部分とは反対側の部分にのみ成膜される。
【0096】
したがって、これにより、カラム190の先端に、略逆U字型の形態で電磁波共振体310を形成できる。
【0097】
なお、
図4の例では、第1の方向(矢印330の方向)および第2の方向(矢印340の方向)は、メタマテリアル300を上部から見たとき、カラム190の単位配列を構成する六角形の一つの辺に対して、垂直な方向(
図4(b)のY方向)となっている。しかしながら、これは一例に過ぎず、蒸着の際の第1の方向および第2の方向は、必要な電磁波共振体の形状に応じて、適宜選定すればよい。
また、ミクロ相分離により形成されるヘキサゴナル配置には、構造のゆらぎがあることから、
図4(b)で図示された領域を広げて巨視的に観察すると、ヘキサゴナル配置になっていない部分や、ヘキサゴナル配置の回転対称軸がずれている場合もあり、形成される電磁波共振体の形状がひずむこともあり、磁場共鳴効果に影響を及ぼすことがあるが、目的に合せて、必要な部分を適宜選定すればよい。
【0098】
(電磁波共振体の共振の評価方法について)
ここで、ある特定の周波数の電磁波に対する電磁波共振体の共振の性質を評価する方法を説明する。
【0099】
図5には、ある特定の周波数の電磁波に対する電磁波共振体の共振の性質を評価する方法を説明する図を示す。
図5(a)は、ある特定の周波数の電磁波に対する電磁波共振体の共振の性質を評価する装置を説明する図である。
【0100】
図5(a)に示すように、電磁波共振体を含む試料420の共振の性質を評価する装置410は、光源430、偏光板440、および分光光度計450を含む。装置410において、光源430は、無偏光の白色光を発生する。光源430から発生した無偏光の白色光は、偏光板440を通過する。偏光板440を通過した白色光は、直線偏光である。次に、直線偏光の白色光は、試料420に入射する。試料420に入射した直線偏光の白色光のうち共振周波数の直線偏光が、試料420に含まれる電磁波共振体と共振すると、共振周波数の直線偏光が、試料420に含まれる電磁波共振体によって吸収される。そこで、分光光度計450を用いて白色光における様々な波長に対する試料420を通過した直線偏光の吸光度を測定する。
【0101】
次に、電磁波共振体に代えて、該電磁波共振体の材料と同一の材料で作られた(実質的に)球状の粒子を用いて、同様にして、直線偏光に波長に対する試料420における粒子の吸光度を得る。そして、試料420における電磁波共振体の吸光度と、試料420における粒子の吸光度との間に有意な差が観察される場合には、電磁波共振体は、電磁波共振体として機能していると判断される。
【0102】
さらに、
図5(a)に示される装置410を用いて、試料に電磁波共振体がランダムに配置されているか、規則的に配列されているか、を調べることもできる。装置410は、好ましくは、試料420を回転させる手段および偏光板440を回転させる手段の少なくとも一方を有する。
【0103】
まず、電磁波共振体を含む試料について波長を切り換えて吸光度を測定した後、吸収のピークとなる波長を特定する。そして、光源430から発生する無偏光の白色光の波長を、この特定された波長に固定し、偏光板を回転させるか、または試料を回転させるかして、吸光度の変化を観察する。なお、試料420は、実線と破線とで示されるように回転させるほか、H方向にも回転させて吸光度の変化を観察する。偏光板440は、H方向に回転させて、吸光度の変化を観察する。
図5(b)は偏光板を回転させた場合、
図5(c)は、試料を回転させた場合、の電磁波共振体の吸光度の変化を説明する図である。
【0104】
試料420における電磁波共振体が規則的に配列された場合には、試料420に含まれた電磁波共振体に起因する直線偏光の吸光度は、直線偏光の方向と電磁波共振体の規則的な配列の方向との間の角度に依存する。このため、
図5(b)の実線に示すように、偏光板440を回転させると、試料420に含まれた電磁波共振体に起因する光の吸光度は、変動する。また、
図5(c)の実線に示すように、試料420を回転させる手段によって試料420を回転させると、試料420に含まれた電磁波共振体に起因する光の吸光度は、変動する。
【0105】
また、試料420における電磁波共振体がランダムに配置された場合には、
図5(b)の点線に示すように偏光板を回転させても、試料420に含まれた電磁波共振体に起因する光の吸光度は、偏光板の回転に依存しない。さらに、
図5(c)の点線に示すように、試料420を回転させる手段によって試料420を回転させても、試料420に含まれた電磁波共振体に起因する光の吸光度は、試料420の回転に依存しない。
【0106】
(メタマテリアルの形態について)
本発明による方法で製造されるメタマテリアルは、いかなる形態で提供されてもよい。
【0107】
以下、図面を参照して、メタマテリアルのいくつかの形態について、説明する。
【0108】
図6には、メタマテリアルの一形態を模式的に示す。
【0109】
メタマテリアルは、電磁波共振体を支持体から分離した状態で、提供されてもよい。
【0110】
例えば、
図6の例では、メタマテリアル500は、電磁波共振体510が液体520中に分散された状態で提供されている。
【0111】
例えば、支持体のみを選択的に溶解させることにより、このような形態のメタマテリアル500を提供できる。
【0112】
図7には、メタマテリアルの別の一形態を模式的に示す。
【0113】
図7の例では、メタマテリアル600は、樹脂の硬化体620および電磁波共振体610からなる、レンズのような光学素子として構成される。
【0114】
メタマテリアル600において、電磁波共振体育610は、樹脂の硬化体620に不規則に(ランダム)に分散されている。このため、メタマテリアル600は、例えば、電磁波の偏光の方向に対して等方性の物理的な性質(例えば、比透磁率、屈折率、分散など)を有するレンズとして機能する。また、樹脂の硬化体620に分散される電磁波共振体610を適宜設計することによって、調整された等方的な物理的な性質(例えば、比透磁率、屈折率、分散など)を有するレンズを提供できる。
【0115】
この他にも、各種形態でメタマテリアルが提供できることは、当業者には明らかである。
【0116】
例えば、
図4に示したような形態で、支持体200のカラム190に配置された電磁波共振体310を、粘着性材料に転写させ、支持体200と電磁波共振体310とを分離させてもよい。そのような粘着性材料は、例えば、シリコーンゴム等であってもよい。この場合、電磁波共振体310の配列を有する、シリコーンゴム製のシート材を得ることができる。
【0117】
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0118】
(実施例1)
以下の方法で、本実施形態によるメタマテリアルを作製した。
【0119】
(親水性・疎水性分相膜を有する基板の調製)
まず、公知の方法で、以下の式(2)および式(3)に示す化学式を有するブロック共重合体を準備した。
【0121】
【化3】
これらのブロック共重合体の調製方法は、例えば、特開2012−1787号公報等に記載されている。これらのブロック共重合体を、所定の割合でトルエン中に溶解し、4重量%のブロック共重合体濃度のトルエン溶液を調製した。
【0122】
表1には、各例における、ブロック共重合体の混合比を示す。なお、表1においては、式(2)に示す化合物を、P454と記し、式(3)に示す化合物を、P272と記す。
【0123】
【表1】
次に、シリコンウエハを準備し、このシリコンウエハの表面を、紫外線オゾン処理により清浄化した後、シリコンウエハの表面に、トルエン溶液をスピンコーティングした。
【0124】
その後、シリコンウエハを乾燥させることにより、ブロック共重合体がコーティングされたシリコンウエハを得た。
【0125】
次に、このシリコンウエハを用いて、140℃で24時間の熱処理を行った。これにより、全ての実施例において、シリコンウエハ上に、ブロック共重合体の親水性・疎水性分相膜が形成された。
【0126】
図8に、本実施形態によるカラム構造の一例のTEM(Transmission Electron Microscope)画像を示す。TEM画像の撮影に当たって、試料には、ルテニウム酸化物を用いてステイニング処理を施した。なお、
図8は、表1の例3における画像である。
【0127】
図8に示されるように、親水性・疎水性分相膜は、親水性液相の部分がヘキサゴナル配置で配列されたカラム構造を有する。各カラムの直径は、おおよそ25nm程度であり、隣接するカラム同士の間の間隔(すなわちヘキサゴナル配置の六角形の1辺の長さ)は、おおよそ40nm程度であった。
【0128】
(支持体の作製)
次に、得られた親水性・疎水性分相膜付きシリコンウエハを、シリカゲル溶液中に浸漬し、親水性・疎水性分相膜の親水性液相カラムに、シリカゲルを充填した。この際、親水性・疎水性分相膜の親水性液相のカラム構造の高さと同じ高さまで、シリカゲルを形成させた。
【0129】
得られたシリカゲル充填シリコンウエハに対して、電子線(Electron Beam: EB)照射して、シリカゲルを架橋(硬化)し、更にEB照射により、シリコンウエハから親水性・疎水性分相膜を選択的に除去した。
【0130】
これにより、カラム状部分およびシリコンウエハを有する支持体が形成された。
【0131】
得られた支持体の、各カラムの直径は、おおよそ23nm程度であり、隣接するカラム同士の間の間隔は、おおよそ37nm程度であり、カラムの高さはおおよそ62nm程度であった。
【0132】
実施例1により、本実施形態によるメタマテリアルの製造方法により、カラムの高さが均一である支持体を形成可能であることを確認した。
【0133】
(実施例2)
実施例1で使用したシリコンウエハの代わりに、両面研磨したシリカガラス基板を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、シリカガラス基板上に親水性・疎水性分相膜を形成した。なお、ブロック共重合体の混合割合は、P454:P272=1:1(表1における例3の条件)とした。
【0134】
次に、得られた親水性・疎水性分相膜付きシリカガラス基板に対して、スピンコート法によりシリカゲル溶液を塗布し、親水性・疎水性分相膜の親水相カラム領域に、シリカゲルを充填した。この際、親水性・疎水性分相膜の親水性液相のカラム構造の高さを超える高さまで、シリカゲルを形成させた。
【0135】
得られたシリカゲル充填シリカガラス基板を乾燥し、その後、親水性液相のカラム構造の高さを超えて形成されたシリカゲル膜を、剥離除去した。これにより、シリカゲルが、親水性・疎水性分相膜の親水性液相のカラム構造の高さと同じ高さまで形成された、シリカゲル充填シリカガラス基板を得た。
【0136】
得られたシリカゲル充填シリカガラス基板に対して、所定の熱処理を施すことにより、シリカガラス基板から親水性・疎水性分相膜を選択的に分解、除去した。
【0137】
これにより、カラム状部分およびシリカガラス基板を有する支持体が形成された。
【0138】
得られた支持体の、各カラムの直径は、おおよそ18nm程度であり、隣接するカラム同士の間の間隔は、おおよそ31nm程度であり、カラムの高さはおおよそ200nm程度であった。
【0139】
(電磁波共振体の配置)
次に、得られた支持体の各カラム状部分の先端に、電磁波共振体を設置し、メタマテリアルを製造した。本実施形態においては、電磁波共振体として、銀を選択した。
【0140】
電磁波共振体は、支持体に対して、異なる2方向から銀を物理蒸着することにより、支持体の各カラム状部分の先端に、略逆U字型となるように設置した。
【0141】
なお、第1の方向は、前述の
図4における矢印330の方向、すなわち、カラム状部分の延伸方向(Z方向)から見たとき、単位六角形配列の一つの辺に対して垂直な方向であって、YZ平面に垂直な方向から見たとき、Z方向に対して、角度θだけ、時計回りに傾斜した方向とした。ここで、θ=10°とした。また、第2の方向は、前述の
図4における矢印340の方向、すなわり、カラム状部分の延伸方向(Z方向)から見たとき、単位六角形配列の一つの辺に対して垂直な方向であって、YZ平面に垂直な方向から見たとき、Z方向に対して、角度φだけ、反時計回りに傾斜した方向とした。ここで、φ=−θ=10°とした。
【0142】
得られたメタマテリアルを用いて、電磁波特性(共振特性)を測定した。電磁波特性は、メタマテリアルに対して、電磁波共振体のコイルを磁場が貫通する方向の偏光を照射し、得られる光吸収スペクトルを測定することにより実施した。
【0143】
測定の結果、磁場吸収に偏光方向依存性が確認され、本実施形態によるメタマテリアルが、磁場共鳴する共振器構造を有することがわかった。
【0144】
(実施例3)
表面にインジウムスズ酸化物(ITO)が設置されたガラス基板を準備した。このガラス基板を有機溶媒で超音波洗浄処理し、次いで紫外線処理して洗浄した。
【0145】
洗浄後のガラス基板を、SAM材料を用いて浸漬処理した。これにより、ガラス基板のITO膜表面にSAM膜が付着する。
【0146】
このSAM膜が付着したガラス基板に対して、実施例1と同様の方法により、SAM膜が形成された表面に親水性・疎水性分相膜がコーティングされたガラス基板を得た。なお、ブロック共重合体の混合割合は、P454:P272=1:1(表1における例3の条件)とし、熱処理条件は、140℃で1時間とした。
【0147】
親水性・疎水性分相膜のカラムの直径は、おおよそ15nm程度であり、カラムの高さは、おおよそ150nm程度であった。
【0148】
次に、得られた親水性・疎水性分相膜付きガラス基板を用いて、親水性・疎水性分相膜に対して、酸化セリウム膜の電析を行った。酸化セリウム膜の電析により、親水性・疎水性分相膜の親水性液相の部分に、酸化セリウム電析物が充填された。なお、電析は、酸化セリウム膜の高さが、親水性・疎水性分相膜の親水性液相のカラムの高さと同じ高さになるまで実施した。
【0149】
なお、酸化セリウム膜の電析方法は、当業者には良く知られており、ここではこれ以上説明しない。
【0150】
得られた酸化セリウム充填ガラス基板に対して、プラズマアッシング処理することにより、ガラス基板から親水性・疎水性分相膜を選択的に除去した。
【0151】
これにより、カラム状部分およびガラス基板を有する支持体が形成された。
【0152】
得られた支持体に対して、電磁波共振体の材料としてアルミニウムを使用した以外は実施例2と同様の方法により、本実施形態によるメタマテリアルを製造した。
【0153】
得られたメタマテリアルを用いて、電磁波特性(共振特性)を測定した。電磁波特性は、メタマテリアルに対して、電磁波共振体のコイルを磁場が貫通する方向の偏光を照射し、得られる光吸収スペクトルを測定することにより実施した。
【0154】
図9には、本実施形態によるメタマテリアルの一例の光吸収スペクトルを示す。
図9の実線は、偏光角が90°の場合の光吸収スペクトルであり、破線は、偏光角が0°の場合の光吸収スペクトルである。
【0155】
図9に示されるように、実施例3によるメタマテリアルは、光吸収のブロード化が認められ、可視領域を含む幅広い波長範囲において、磁場吸収に偏光方向依存性が確認された。これにより、本実施形態によるメタマテリアルが、磁場共鳴する共振器構造を有することがわかった。
【0156】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、これらの実施形態を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更する、変形する、及び/又は組み合わせることができる。
【0157】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。