特許第6116592号(P6116592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6116592TANKおよびPARPのインヒビターとしてのテトラヒドロ−キナゾリノン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6116592
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】TANKおよびPARPのインヒビターとしてのテトラヒドロ−キナゾリノン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 239/95 20060101AFI20170410BHJP
   C07D 401/04 20060101ALI20170410BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C07D239/95CSP
   C07D401/04
   C07D401/12
   A61K31/517
   A61K31/5377
   A61P25/00
   A61P25/00 101
   A61P9/00
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P43/00 111
【請求項の数】7
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2014-555963(P2014-555963)
(86)(22)【出願日】2013年1月14日
(65)【公表番号】特表2015-506965(P2015-506965A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】EP2013000078
(87)【国際公開番号】WO2013117288
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2016年1月14日
(31)【優先権主張番号】12000841.2
(32)【優先日】2012年2月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ブッフスタッラー,ハンス−ペーター
(72)【発明者】
【氏名】エスダール,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ロイトナー,ビルギッタ
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/111880(WO,A1)
【文献】 特表2005−516053(JP,A)
【文献】 特表2008−532955(JP,A)
【文献】 特表2005−515216(JP,A)
【文献】 特表2004−515544(JP,A)
【文献】 特表2008−504347(JP,A)
【文献】 STN International,File REGISTRY [online],ED Entered STN: 05 Mar 2007,検索日:平成28年8月8日,CAS Registry No. 924864-18-6, 925643-44-3, 885884-05-9, 878433-57-9, 881430-67-7
【文献】 STN International,File REGISTRY [online],ED Entered STN: 06 Sep 2011,検索日:平成28年8月8日,CAS Registry No. 1328981-51-6, 1328165-08-7, 1266688-80-5, 1240672-65-4, 1082512-28-4, 1082429-26-2, 942698-83-1, 924870-68-8, 914354-44-2, 885883-68-1, 838815-95-5
【文献】 GUPTA, C. M. et al.,A Novel Class of Hypoglycemic Agents: Syntheses & SAR in 2-Substituted 4(3H)-Quinazolones, 2-Substituted 4-Hydroxypolymethylene[5,6]pyrimidines & 3-Substituted 4-Oxo-pyrido[I,2-a]pyrimidines,Indian Journal of Chemistry,1971年,9(3),pp. 201-206
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の群
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】

から選択される化合物、または、それらの薬学的に許容し得る溶媒和物、塩、互変異性体もしくは立体異性体、あるいは、すべての比率でのそれらの混合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物、および/または、それらの薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体および立体異性体、ならびに、すべての比率でのそれらの混合物の少なくとも1種と、任意に薬学的に許容し得る担体、賦形剤またはビヒクルとを含む、医薬。
【請求項3】
がん、多発性硬化症、心血管疾患、中枢神経系損傷および種々の形態の炎症の処置および/または防止のための使用のための、請求項1に記載の化合物、または、それらの薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体もしくは立体異性体、あるいは、すべての比率でのそれらの混合物。
【請求項4】
頭部、頸部、目、口、喉、食道、気管支、喉頭、咽頭、胸、骨、肺、結腸、直腸、胃、前立腺、膀胱、子宮、子宮頸部、乳房、卵巣、精巣または他の生殖器、皮膚、甲状腺、血液、リンパ節、腎臓、肝臓、膵臓、脳、中枢神経系のがん、固形腫瘍および血液由来の腫瘍の群から選択される疾患の処置および/または防止のための使用のための、請求項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物、および/または、それらの薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および立体異性体、ならびに、すべての比率でのそれらの混合物の少なくとも1種と、さらなる医薬活性成分の少なくとも1種とを含む、医薬。
【請求項6】
(a)請求項1に記載の化合物、および/または、それらの薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、塩および立体異性体、ならびに、すべての比率でのそれらの混合物の有効量、
ならびに
(b)さらなる医薬活性成分の有効量
の別個のパックからなる、セット(キット)。
【請求項7】
化合物
2−(4−tert−ブチル−ピペラジン−1−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“B1”)、
または、それらの薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体もしくは立体異性体、あるいは、すべての比率でのそれらの混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、有用な特性を有する新規な化合物、特に医薬の調製のために使用することができるものを見出す目的を有していた。
【0002】
本発明は、タンキラーゼ(TANK)およびポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼPARP−1の活性を阻害するテトラヒドロ−キナゾリン誘導体に関する。したがって、本発明の化合物は、疾患、例えばがん、多発性硬化症、心血管疾患、中枢神経系損傷および種々の形態の炎症を処置するにあたり有用である。本発明はまた、これらの化合物を調製する方法、これらの化合物を含む医薬組成物、および、これらの化合物を含む医薬組成物を利用する、疾患を処置する方法をも提供する。
【背景技術】
【0003】
核酵素ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ−1(PARP−1)は、PARP酵素ファミリーのメンバーである。酵素のこの拡大しつつあるファミリーは、PARP、例えば:PARP−1、PARP−2、PARP−3およびVault−PARP;ならびにタンキラーゼ(TANK)、例えば:TANK−1およびTANK−2からなる。PARPはまた、ポリ(アデノシン5’−ジホスホ−リボース)ポリメラーゼまたはPARS(ポリ(ADP−リボース)合成酵素)と称される。
【0004】
TANK−1は、紡錘体関連ポリ(ADP−リボース)の重合に必要であると見られる。TANK−1のポリ(ADP−リボース)化活性は、紡錘体二極性の正確な形成および維持にとって重大であり得る。さらに、TANK−1のPARP活性は、分裂後期の前の正常なテロメア分離に必要であると示された。タンキラーゼPARP活性への干渉の結果、異常な有糸分裂がもたらされ、それによって、場合によっては紡錘体チェックポイント活性化による一時的な細胞周期停止、続いて細胞死が生じる。したがって、タンキラーゼの阻害は、増殖する腫瘍細胞に対する細胞毒性効果を有すると予測される(WO 2008/107478)。
【0005】
PARPインヒビターは、M. Rouleau et al.によって、臨床学的がん研究におけるNature Reviews、第10巻、293-301に記載されている(表2、298頁)。
【0006】
HorvathおよびSzabo(Drug News Perspect 20(3)、2007年4月、171-181)による調査において、つい最近の研究によって、PARPインヒビターが、主としてそれらが様々なレベルにおいてDNA修復に干渉するため、がん細胞死を増強することが例証された。より最近の研究によってもまた、PARPインヒビターが、成長因子発現を阻害するか、または成長因子誘発細胞増殖応答を阻害するかのいずれかにより、血管新生を阻害することが例証された。これらの発見はまた、in vivoでのPARPインヒビターの抗がん作用機序とも関わり合いがあるかもしれない。
【0007】
また、Tentori et al.による研究(Eur. J. Cancer, 2007, 43 (14) 2124-2133)によって、PARPインヒビターがVEGFまたは胎盤成長因子による誘導される遊走を抑止し、細胞ベースのシステムにおける尿細管様の回路網の形成を防止し、in vivoでの血管新生を損なうことが示される。また、当該研究によって、成長因子に誘導される血管新生がPARP−1ノックアウトマウスにおいて不完全であることも例証される。研究の結果は、PARPを抗血管新生のために標的するための証拠を提供し、がん治療におけるPARPインヒビターの使用に、新規な治療的関わり合いを追加する。
【0008】
保存的シグナル経路における欠陥は、実質的にすべてのがんの起源および挙動において重要な役割を果たすことが周知である(E.A.Fearon, Cancer Cell, Vol. 16, Issue 5, 2009, 366-368)。Wnt経路は、抗がん治療のための標的である。Wnt経路の重要な特徴は、β−カテニンのβ−カテニン崩壊複合体による調節されたタンパク質分解(分解)である。WTX、APCまたはAxinのようなタンパク質は、分解プロセスに関与する。β−カテニンの適切な分解は、多くのがんにおいて観察されたWnt経路の不適切な活性化を回避するために重要である。タンキラーゼは、Axinの活性を阻害し、それ故にβ−カテニンの分解を阻害する。
【0009】
したがって、タンキラーゼインヒビターによって、β−カテニンの分解が増大する。Nature誌中の最近の論文は、Wntシグナル伝達を調節するタンパク質への重要な新たな洞察を提供するのみならず、さらに、β−カテニンレベルおよび小分子を介する局所化に拮抗するためのアプローチもまた支持する(Huang et al., 2009; Nature, Vol 461, 614-620)。化合物XAV939は、DLD−1−がん細胞の成長を阻害する。彼らは、XAV9393が、β−カテニンのWntで刺激された蓄積を、AXIN1タンパク質およびAXIN2タンパク質のレベルを増加させることにより、阻止することを見出した。当該著者のその後の作業によって、XAV939が、いずれもポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)タンパク質ファミリーのメンバーであるタンキラーゼ1および2(TNKS1およびTNKS2)の阻害によって、AXINレベルを調節することが確立された(S.J. Hsiao et al., Biochimie 90, 2008, 83-92)。
【0010】
本発明の化合物およびそれらの塩は、良好な耐容性を示しながら、極めて有用な薬理学的特性を有することが見出された。
本発明は、特に、タンキラーゼ1および2を阻害する式Iで表される化合物、これらの化合物を含む組成物、ならびに、TANKに誘導される疾患および愁訴の処置のためのその使用のための方法に関する。
【0011】
式Iで表される化合物を、さらに、TANKの活性または発現の単離および調査のために使用することができる。加えて、それらは、非調節の、または妨げられたTANK活性と関連する疾患のための診断的方法において使用するのに特に好適である。
【0012】
宿主または患者は、あらゆる哺乳動物種、例えば霊長類種、特にヒト;マウス、ラットおよびハムスターを含むげっ歯動物;ウサギ;ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどに属し得る。動物モデルは、実験的調査のための対象であり、ヒト疾患の処置のためのモデルを提供する。
【0013】
本発明の化合物による処置に対する特定の細胞の感受性を、in vitro試験によって決定することができる。典型的には、細胞の培養物を、様々な濃度での本発明の化合物と、抗IgM等の活性剤が、表面マーカーの発現等の細胞応答を誘導することを可能にするのに十分である期間、通常約1時間〜1週間にわたって、組み合わせる。in vitro試験を、血液または生検試料から培養した細胞を使用して行うことができる。発現した表面マーカーの量を、マーカーを認識する特定の抗体を使用するフローサイトメトリーによって評価する。
【0014】
用量は、使用する特定の化合物、特定の疾患、患者の状態などに依存して変化する。治療的用量は、典型的には、患者のバイアビリティを維持しつつ、標的組織中の望ましくない細胞集団を縮小させるのに相当に十分である。処置を、一般的に、相当な低減、例えば細胞負荷における少なくとも約50%の低減が生じるまで継続し、本質的に、望ましくない細胞が身体においてもはや検出されなくなるまで継続してもよい。
【0015】
先行技術
ヒスタミンH4受容体を変調する活性を有する他のテトラヒドロ−キナゾリン誘導体は、WO 2011/078143に記載されている。
抗腫瘍活性を有する他のテトラヒドロ−キナゾリン誘導体は、WO 2006/094604に記載されている。
他のテトラヒドロ−キナゾリン誘導体の合成は、Sekiya et al.によってChem. Pharm. Bull. 29(4), 948-954 (1981)に記載されている。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、式I
【化1】
式中、
Uは、CHまたはCHRを示し、
Vは、CH、CHRまたはCOを示し、
Wは、NRまたはCRを示すか、
あるいは、UまたはVがCHRを示す場合には、NHを示し、
【0017】
は、Ar、Het、COA、COAr、COHet、CO(CHNR、(CHHet、(CHCONHAr、(CHCONHHet、(CHCONR、(CHOH、(CHOAまたは(CHNRを示し、
は、A、Ar、Hal、CN、COA、COOH、COOA、CONR、SONR、(CHOHまたは(CHNRを示し、
は、H、OHまたはOAを示し、
、Rは、各々、互いに独立して、HまたはAを示し、
は、AまたはArを示し、
【0018】
Arは、フェニルを示し、それは、Hal、A、O(CHCyc、Alk、(CHOH、(CHOA、(CHCOOH、(CHCOOA、S(O)A、フェノキシ、ベンジルオキシ、(CHNH、(CHNHA、(CHNA、(CHCN、NO、(CHCONH、(CHCONHA、(CHCONA、SONH、SONHA、SONA、NHCONH、(CHNHCOA、(CHNHCOAlk、NHCOCH=CH(CHNA、CHO、COA、SOH、O(CHNH、O(CHNHCOOA、O(CHNHA、O(CHNA、NH(CHNH、NH(CHNHCOOA、NH(CHNHA、NH(CHNA、NHCOHet、COHet、(CHHet、O(CHHetおよび/またはO(CHCH(OH)(CH)によって単置換、二置換または三置換されており、
【0019】
Arは、フェニルを示し、それは、非置換であるか、またはHal、A、(CHOH、(CHOA、(CHCOOH、(CHCOOA、S(O)A、フェノキシ、ベンジルオキシ、(CHNH、(CHNHA、(CHNA、(CHCN、NO、(CHCONH、(CHCONHA、(CHCONA、SONH、SONHA、SONA、NHCONH、(CHNHCOA、CHO、COAおよび/もしくはSOHによって単置換、二置換もしくは三置換されており、
【0020】
Hetは、1〜4個のN原子、O原子および/またはS原子を有する、単環式もしくは二環式の飽和、不飽和または芳香族複素環を示し、それは、非置換であるか、またはHal、A、(CHHet、OHet、NH(CHHet、(CHCOOH、(CHCOOA、フェニル、ベンジル、CHO、COA、(CHNH、(CHNHA、(CHNA、CN、(CHOH、(CHOA、(CHCH(OH)(CHOH、(CHCH(OH)(CHOA、NH(CHNH、NHSOA、NASOA、SOA、(CHCONR、(CHSONRおよび/もしくは=Oによって単置換、二置換、三置換もしくは四置換されていてもよく、
【0021】
Het3は、1〜4個のN原子、O原子および/またはS原子を有する、単環式もしくは二環式の飽和、不飽和または芳香族複素環を示し、それは、非置換であるか、またはA、Hal、(CHNH、(CHNHA、(CHNA、(CHOH、(CHOA、COOA、Arおよび/もしくは=Oによって単置換、二置換、三置換もしくは四置換されていてもよく、
【0022】
Aは、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状のアルキルを示し、ここで1〜7個のH原子は、Fおよび/もしくはClによって置き換えられていてもよく、ならびに/または、ここで1つもしくは2つの隣接していないCH基は、O、NH、S、SO、SOによって、および/もしくはCH=CH基によって、置き換えられていてもよく、
【0023】
Cycは、3〜7個のC原子を有する環状アルキルを示し、
Alkは、2個、3個、4個、5個または6個のC原子を有するアルケニルまたはアルキニルを示し、
Arは、フェニルを示し、それは、非置換であるか、またはHalおよび/もしくはAによって単置換、二置換もしくは三置換されており、
Halは、F、Cl、BrまたはIを示し、
mは、0、1または2を示し、
nは、0、1、2、3または4を示し、
pは、1、2、3または4を示す、
で表される化合物、
ならびに、それらの薬学的に使用可能な溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体、ならびに、すべての比率でのそれらの混合物に関する。
【0024】
本発明はまた、これらの化合物の光学的に活性な形態(立体異性体)、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、ならびに、水和物および溶媒和物に関する。
本発明は、式Iで表される化合物および式Ia
【化2】
で表されるそれらの互変異性体に関する。
【0025】
さらに、本発明は、式Iで表される化合物の薬学的に許容し得る誘導体に関する。
化合物の溶媒和物という用語は、それらの相互の引力に起因して形成する不活性溶媒分子の化合物上への付加物(adduction)を意味するものと解釈される。溶媒和物は、例えば、一水和物もしくは二水和物またはアルコキシドである。
【0026】
本発明はまた、塩の溶媒和物にも関することが、理解される。
薬学的に許容し得る誘導体という用語は、例えば、本発明の化合物の塩、またいわゆるプロドラッグ化合物をも意味するものと解釈される。
【0027】
本明細書中で使用されるとおりであって、別段の指示がない限り、用語「プロドラッグ」は、活性化合物、特に式Iで表される化合物を提供するため、加水分解、酸化することができるか、または、そうでなければ生物学的条件(in vitroまたはin vivo)の下、反応することができる式Iで表される化合物の誘導体を意味する。プロドラッグの例は、生体加水分解可能な(biohydrolyzable)部分、例えば、生体加水分解可能なアミド、生体加水分解可能なエステル、生体加水分解可能なカルバマート、生体加水分解可能なカルボナート、生体加水分解可能なウレイドおよび生体加水分解可能なホスファート類似体を含む式Iで表される化合物の誘導体および代謝産物を含むが、それらには限定されない。
【0028】
ある態様において、カルボキシル官能基を有する化合物のプロドラッグは、カルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボン酸エステルは、分子上に存在するカルボン酸部分のいずれもエステル化することにより好都合に生成する。プロドラッグを、典型的には、周知の方法、例えばBurger 's Medicinal Chemistry and Drug Discovery、第6版(Donald J. Abraham編、2001, Wiley)およびDesign and Application of Prodrugs(H.Bundgaard編、1985, Harwood Academic Publishers Gmfh)によって記載されている方法を使用して製造することができる。
【0029】
「有効量」の表現は、組織、系、動物またはヒトにおいて、例えば研究者または医師によって求められているか、もしくは所望されている生物学的または薬学的な応答を引き起こさせる、医薬あるいは薬学的に活性な成分の量を示す。
加えて、「治療的有効量」の表現は、この量を施与されていない対応する対象と比較して、以下の結果:
疾患、症候群、状態、愁訴、障害もしくは副作用の改善された処置、治癒、防止または解消、あるいはまた疾患、愁訴もしくは障害の進行の低減
を有する量を示す。
表現「治療的有効量」はまた、正常な生理学的機能を増大させるのに有効である量をも包含する。
【0030】
本発明はまた、式Iで表される化合物の混合物、例えば比率1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100または1:1000における、例えば2種のジアステレオマーの混合物の使用に関する。
これらは、特に好ましくは立体異性の化合物の混合物である。
【0031】
「互変異性体」は、互いに平衡にある化合物の異性体の形態を指す。異性体の形態の濃度は、化合物が見出される環境に依存し、例えば化合物が固体であるか、または有機溶液中もしくは水溶液中にあるかに依存して異なり得る。
【0032】
本発明は、式Iで表される化合物およびそれらの塩、ならびに、式Iで表される化合物ならびにそれらの薬学的に使用可能な塩、溶媒和物、互変異性体および立体異性体の製造方法であって、
【0033】
式II
【化3】
で表される化合物を、式III
【化4】
(式中、U、VおよびWは請求項1において示した意味を有する)
で表される化合物と反応させること、
および/または
式Iで表される塩基または酸をその塩の1種に変換すること
を特徴とする、前記方法に関する。
【0034】
以上以下、ラジカルU、VおよびWは、他に明確に述べない限り式Iについて示した意味を有する。
【0035】
Aは、アルキルを示し、これは、非分枝状(直鎖状)または分枝状であり、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のC原子を有する。Aは、好ましくは、メチル、さらにエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−または3−メチルブチル、1,1−、1,2−または2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−、2−、3−または4−メチルペンチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−または3,3−ジメチルブチル、1−または2−エチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−または1,2,2−トリメチルプロピル、さらに好ましくは、例えばトリフルオロメチルを示す。
【0036】
Aは、極めて特に好ましくは、1個、2個、3個、4個、5個または6個のC原子を有するアルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは1,1,1−トリフルオロエチルを示す。
【0037】
さらに、Aは、好ましくはCHOCH、CHCHOH、CHNHCHまたはNHCHCHを示す。
Cycは、3〜7個のC原子を有する環状アルキルを示し、好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルを示す。
【0038】
Alkは、2個、3個、4個、5個もしくは6個のC原子を有する分枝状または非分枝状のアルケニルあるいはアルキニルを示し、好ましくはイソプロペニル、プロパ−2−イニル、ビニルまたはアリルを示す。
【0039】
Uは、好ましくはCHを示す。
Vは、好ましくはCHを示す。
UまたはVがCHRを示す場合には、Wは、好ましくはNRを示すか、またはNHを示す。
Wは、極めて特に好ましくはNRを示す。
は、好ましくはA、Ar、CONRまたは(CHOHを示す。
は、好ましくはH、メチル、エチル、プロピルまたはブチルを示す。
は、好ましくはH、メチル、エチル、プロピルまたはブチルを示す。
【0040】
Arは、好ましくはo−、m−またはp−トリル、o−、m−またはp−エチルフェニル、o−、m−またはp−プロピルフェニル、o−、m−またはp−イソプロピルフェニル、o−、m−またはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−またはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−またはp−ニトロフェニル、o−、m−またはp−アミノフェニル、o−、m−またはp−(N−メチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N−メチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−またはp−メトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシカルボニルフェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジメチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−またはp−(N−エチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル、o−、m−またはp−フルオロフェニル、o−、m−またはp−ブロモフェニル、o−、m−またはp−クロロフェニル、o−、m−またはp−(メチルスルホンアミド)フェニル、o−、m−またはp−(メチルスルホニル)フェニル、o−、m−またはp−シアノフェニル、o−、m−またはp−カルボキシフェニル、o−、m−またはp−メトキシカルボニルフェニル、o−、m−またはp−ホルミルフェニル、o−、m−またはp−アセチルフェニル、o−、m−またはp−アミノスルホニルフェニル、o−、m−またはp−[2−(モルホリン−4−イル)エトキシ]フェニル、o−、m−またはp−[3−(N,N−ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル、
【0041】
さらに好ましくは2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジブロモフェニル、2,4−もしくは2,5−ジニトロフェニル、2,5−もしくは3,4−ジメトキシフェニル、3−ニトロ−4−クロロフェニル、3−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−3−クロロ−、2−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−5−クロロ−または2−アミノ−6−クロロフェニル、2−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノ−または3−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノフェニル、2,3−ジアミノフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリクロロフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル、p−ヨードフェニル、3,6−ジクロロ−4−アミノフェニル、4−フルオロ−3−クロロフェニル、2−フルオロ−4−ブロモフェニル、2,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、3−ブロモ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニル、3−フルオロ−4−メトキシフェニル、3−アミノ−6−メチルフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニルまたは2,5−ジメチル−4−クロロフェニルを示す。
【0042】
Arは、さらに好ましくはフェニルを示し、それは、Hal、(CHOH、(CHOA、(CHCN、(CHCONH、(CHCONHAおよび/または(CHCONAによって単置換、二置換または三置換されている。
Arは、好ましくはフェニル基を示す。
Arは、好ましくはフェニル基を示す。
【0043】
さらなる置換とは無関係に、Hetは、好ましくは2−または3−フリル、2−または3−チエニル、1−、2−または3−ピロリル、1−、2、4−または5−イミダゾリル、1−、3−、4−または5−ピラゾリル、2−、4−または5−オキサゾリル、3−、4−または5−イソキサゾリル、2−、4−または5−チアゾリル、3−、4−または5−イソチアゾリル、2−、3−または4−ピリジル、2−、4−、5−または6−ピリミジニル、
【0044】
さらに好ましくは1,2,3−トリアゾール−1−、−4−または−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−または5−イル、1−または5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−または−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−または−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−または−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−または−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−または−5−イル、3−または4−ピリダジニル、ピラジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−または7−インドリル、4−または5−イソインドリル、インダゾリル、1−、2−、4−または5−ベンズイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾキサゾリル、3−、4−、5−、6−または7−ベンズイソキサゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンズイソチアゾリル、4−、5−、6−または7−ベンズ−2,1,3−オキサジアゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−または8−イソキノリル、3−、4−、5−、6−、7−または8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−または8−キナゾリニル、5−または6−キノキサリニル、2−、3−、5−、6−、7−または8−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、
【0045】
さらに好ましくは1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−、−5−イルまたは2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−イル、アザビシクロ[3.2.1]オクチルまたはジベンゾフラニルを示す。
【0046】
複素環式ラジカルはまた、部分的に、または完全に水素化されていてもよい。
【0047】
したがって、さらなる置換とは無関係に、Hetはまた、好ましくは2,3−ジヒドロ−2−、−3−、−4−または−5−フリル、2,5−ジヒドロ−2−、−3−、−4−または5−フリル、テトラヒドロ−2−または−3−フリル、1,3−ジオキソラン−4−イル、テトラヒドロ−2−または−3−チエニル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピロリル、2,5−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピロリル、1−、2−または3−ピロリジニル、テトラヒドロ−1−、−2−または−4−イミダゾリル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピラゾリル、テトラヒドロ−1−、−3−または−4−ピラゾリル、1,4−ジヒドロ−1−、−2−、−3−または−4−ピリジル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−または−6−ピリジル、1−、2−、3−または4−ピペリジニル、2−、3−または4−モルホリニル、テトラヒドロ−2−、−3−または−4−ピラニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサン−2−、−4−または−5−イル、ヘキサヒドロ−1−、−3−または−4−ピリダジニル、ヘキサヒドロ−1−、−2−、−4−または−5−ピリミジニル、1−、2−または3−ピペラジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−キノリル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−,−2−,−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−イソキノリル、2−、3−、5−、6−、7−または8−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、
【0048】
さらに好ましくは2,3−メチレンジオキシフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2,3−エチレンジオキシフェニル、3,4−エチレンジオキシフェニル、3,4−(ジフルオロメチレンジオキシ)フェニル、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−もしくは6−イル、2,3−(2−オキソメチレンジオキシ)フェニルまたはまた3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−もしくは7−イル、さらに好ましくは2,3−ジヒドロベンゾフラニル、2,3−ジヒドロ−2−オキソフラニル、3,4−ジヒドロ−2−オキソ−1H−キナゾリニル、2,3−ジヒドロベンゾキサゾリル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾキサゾリル、2,3−ジヒドロベンズイミダゾリル、1,3−ジヒドロインドール、2−オキソ−1,3−ジヒドロインドールまたは2−オキソ−2,3−ジヒドロベンズイミダゾリルを示すことができる。
【0049】
Hetは、好ましくはピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、ジヒドロ−ピラゾリル、ジヒドロ−ピリジル、ジヒドロピラニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシニル、インダゾリルまたはベンゾチアジアゾリルを示し、その各々は、非置換であるか、または(CHOH、(CHOA、(CHCONR、(CHSONRおよび/もしくは=Oによって単置換、二置換もしくは三置換されている。
【0050】
さらなる置換とは無関係に、Hetは、好ましくは2−または3−フリル、2−または3−チエニル、1−、2−または3−ピロリル、1−、2、4−または5−イミダゾリル、1−、3−、4−または5−ピラゾリル、2−、4−または5−オキサゾリル、3−、4−または5−イソキサゾリル、2−、4−または5−チアゾリル、3−、4−または5−イソチアゾリル、2−、3−または4−ピリジル、2−、4−、5−または6−ピリミジニル、
【0051】
さらに好ましくは1,2,3−トリアゾール−1−、−4−または−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−または5−イル、1−または5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−または−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−または−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−または−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−または−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−または−5−イル、3−または4−ピリダジニル、ピラジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−または7−インドリル、4−または5−イソインドリル、インダゾリル、1−、2−、4−または5−ベンズイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾキサゾリル、3−、4−、5−、6−または7−ベンズイソキサゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンズイソチアゾリル、4−、5−、6−または7−ベンズ−2,1,3−オキサジアゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−または8−イソキノリル、3−、4−、5−、6−、7−または8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−または8−キナゾリニル、5−または6−キノキサリニル、2−、3−、5−、6−、7−または8−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、
【0052】
さらに好ましくは1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−、−5−イルまたは2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−イル、アザビシクロ[3.2.1]オクチルまたはジベンゾフラニルを示す。
【0053】
複素環式ラジカルはまた、部分的に、または完全に水素化されていてもよい。
【0054】
したがって、さらなる置換とは無関係に、Hetはまた、好ましくは2,3−ジヒドロ−2−、−3−、−4−または−5−フリル、2,5−ジヒドロ−2−、−3−、−4−または5−フリル、テトラヒドロ−2−または−3−フリル、1,3−ジオキソラン−4−イル、テトラヒドロ−2−または−3−チエニル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピロリル、2,5−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピロリル、1−、2−または3−ピロリジニル、テトラヒドロ−1−、−2−または−4−イミダゾリル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピラゾリル、テトラヒドロ−1−、−3−または−4−ピラゾリル、1,4−ジヒドロ−1−、−2−、−3−または−4−ピリジル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−または−6−ピリジル、1−、2−、3−または4−ピペリジニル、2−、3−または4−モルホリニル、テトラヒドロ−2−、−3−または−4−ピラニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサン−2−、−4−または−5−イル、ヘキサヒドロ−1−、−3−または−4−ピリダジニル、ヘキサヒドロ−1−、−2−、−4−または−5−ピリミジニル、1−、2−または3−ピペラジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−キノリル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−イソキノリル、2−、3−、5−、6−、7−または8−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、
【0055】
さらに好ましくは2,3−メチレンジオキシフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2,3−エチレンジオキシフェニル、3,4−エチレンジオキシフェニル、3,4−(ジフルオロメチレンジオキシ)フェニル、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−もしくは6−イル、2,3−(2−オキソメチレンジオキシ)フェニルまたはまた3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−もしくは−7−イル、さらに好ましくは2,3−ジヒドロベンゾフラニル、2,3−ジヒドロ−2−オキソフラニル、3,4−ジヒドロ−2−オキソ−1H−キナゾリニル、2,3−ジヒドロベンゾキサゾリル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾキサゾリル、2,3−ジヒドロベンズイミダゾリル、1,3−ジヒドロインドール、2−オキソ−1,3−ジヒドロインドールまたは2−オキソ−2,3−ジヒドロベンズイミダゾリルを示すことができる。
【0056】
Hetは、好ましくはピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、2,3−ジヒドロ−ピラゾリル、1,2−ジヒドロ−ピリジル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリアゾリル、4,5−ジヒドロ−1H−[1,2,4]トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラヒドロ−ベンゾチオフェニル、ピリダジニルまたはピラジニルを示し、その各々は、非置換であるか、またはA、(CHOH、(CHOAおよび/もしくは=Oによって単置換、二置換、三置換もしくは四置換されている。
【0057】
Halは、好ましくはF、ClまたはBr、しかしまたI、特に好ましくはFまたはClを示す。
【0058】
本発明の全体にわたって、1回よりも多く出現するすべてのラジカルは、同一であるか、または異なっていてもよく、つまり互いに独立している。
式Iで表される化合物は、1つまたは2つ以上のキラル中心を有していてもよく、したがって様々な立体異性体の形態で存在し得る。式Iは、すべてのこれらの形態を包含する。
【0059】
したがって、本発明は、特に、前記ラジカルの少なくとも1つが先に示した好ましい意味の1つを有する式Iで表される化合物に関する。化合物のいくつかの好ましい群を、以下の従属式Ia〜Igによって表すことができ、それは式Iに適合し、ここでより詳細に表示しないラジカルは、式Iについて示した意味を有するが、ここで、
【0060】
Iaにおいて、Arは、フェニルを示し、それは、Hal、(CHOH、(CHOA、(CHCN、(CHCONH、(CHCONHAおよび/または(CHCONAによって単置換、二置換または三置換されており;
Ibにおいて、Arは、フェニルを示し;
【0061】
Icにおいて、Hetは、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、ジヒドロ−ピラゾリル、ジヒドロ−ピリジル、ジヒドロピラニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシニル、インダゾリルまたはベンゾチアジアゾリルを示し、その各々は、非置換であるか、または(CHOH、(CHOA、(CHCONR、(CHSONRおよび/もしくは=Oによって単置換、二置換もしくは三置換されており;
【0062】
Idにおいて、Hetは、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、2,3−ジヒドロ−ピラゾリル、1,2−ジヒドロ−ピリジル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリアゾリル、4,5−ジヒドロ−1H−[1,2,4]トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラヒドロ−ベンゾチオフェニル、ピリダジニルまたはピラジニルを示し、その各々は、非置換であるか、またはA、(CHOH、(CHOAおよび/もしくは=Oによって単置換、二置換、三置換もしくは四置換されており;
【0063】
Ieにおいて、Aは、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状のアルキルを示し、ここで1〜7個のH原子は、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく;
【0064】
Ifにおいて、Uは、CHを示し、
Vは、CH、CHRまたはCOを示し、
Wは、NRまたはCRを示すか、
あるいは、UまたはVがCHRを示す場合には、NHを示し、
【0065】
は、Ar、Het、COA、COAr、COHet、CO(CHNR、(CHHet、(CHCONHAr、(CHCONHHet、(CHCONR、(CHOH、(CHOAまたは(CHNRを示し、
は、A、Ar、CONRまたは(CHOHを示し、
は、H、OHまたはOAを示し、
、Rは、各々、互いに独立して、HまたはAを示し、
は、AまたはArを示し、
【0066】
Arは、フェニルを示し、それは、Hal、(CHOH、(CHOA、(CHCN、(CHCONH、(CHCONHAおよび/または(CHCONAによって単置換、二置換または三置換されており、
Arは、フェニルを示し、
【0067】
Hetは、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、ジヒドロ−ピラゾリル、ジヒドロ−ピリジル、ジヒドロピラニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシニル、インダゾリルまたはベンゾチアジアゾリルを示し、その各々は、非置換であるか、または(CHOH、(CHOA、(CHCONR、(CHSONRおよび/もしくは=Oによって単置換、二置換もしくは三置換されており、
【0068】
Aは、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状のアルキルを示し、ここで1〜7個のH原子は、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく、
nは、0、1、2、3または4を示し;
【0069】
Igにおいて、Uは、CHを示し、
Vは、CHを示し、
Wは、NRを示し、
は、Ar、Het、COA、COAr、COHet、CO(CHNR、(CHHet、(CHCONHAr、(CHCONHHet、(CHCONR、(CHOH、(CHOAまたは(CHNRを示し、
、Rは、各々、互いに独立して、HまたはAを示し、
Arは、フェニルを示し、それは、Hal、(CHOH、(CHOA、(CHCN、(CHCONH、(CHCONHAおよび/または(CHCONAによって単置換、二置換または三置換されており、
Arは、フェニルを示し、
【0070】
Hetは、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、ジヒドロ−ピラゾリル、ジヒドロ−ピリジル、ジヒドロピラニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、2,3−ジヒドロ−ベンゾ[1,4]ジオキシニル、インダゾリルまたはベンゾチアジアゾリルを示し、その各々は、非置換であるか、または(CHOH、(CHOA、(CHCONR、(CHSONRおよび/もしくは=Oによって単置換、二置換もしくは三置換されており;
【0071】
Aは、1〜10個のC原子を有する非分枝状または分枝状アルキルを示し、ここで1〜7個のH原子は、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく、
nは、0、1、2、3または4を示す、
ならびにそれらの薬学的に使用可能な塩、溶媒和物、互変異性体および立体異性体であり、すべての比率でのそれらの混合物を含む。
【0072】
式Iで表される化合物およびまたこれらの製造のための出発物質は、加えて、文献(例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag, Stuttgartなどの標準学術書)に記載されているような、それ自体公知の方法により、正確には公知でありおよび前述の反応に適する周知の反応条件下で、製造される。また、ここで、本明細書では詳細には述べない、それ自体公知の変法を使用することができる。
【0073】
式IIおよびIIIで表される出発化合物は、一般的に知られている。しかしながら、それらが新規である場合には、それらを、それ自体公知の方法によって製造することができる。
【0074】
式Iで表される化合物を、好ましくは、最初のステップにおいて式IIで表される化合物を式IIIで表される化合物と反応させることにより得ることができる。
使用する条件に依存して、反応時間は数分間〜14日間であり、反応温度は約−10°〜180°、通常30°〜170°、特に約60°〜約160°である。
【0075】
好適な不活性溶媒の例は、炭化水素、例えばヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンもしくはキシレン;塩素化炭化水素、例えばトリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルムもしくはジクロロメタン;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールもしくはtert−ブタノール;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)もしくはジオキサン;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルもしくはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム);ケトン、例えばアセトンもしくはブタノン;アミド、例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミドもしくはジメチルホルムアミド(DMF);ニトリル、例えばアセトニトリル;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO);二硫化炭素;カルボン酸、例えばギ酸もしくは酢酸;ニトロ化合物、例えばニトロメタンもしくはニトロベンゼン;エステル、例えば酢酸エチル、または前記溶媒の混合物である。
特に好ましいのは、イソアミルアルコールである。
【0076】
遊離のアミノ基を、さらに、有利には不活性溶媒、例えばジクロロメタンもしくはTHF中で、および/または塩基、例えばトリエチルアミンもしくはピリジンの存在下で、−60〜+30°の温度で、慣用の方式において酸塩化物もしくは無水物を使用してアシル化するか、または非置換もしくは置換ハロゲン化アルキルを使用してアルキル化することができる。
【0077】
薬学的塩および他の形態
本発明の前述の化合物を、それらの最終的な非塩形態で用いることができる。一方、本発明はまた、これらの化合物を、当該分野で公知の手順によって、種々の有機および無機酸類および塩基類から誘導し得るそれらの薬学的に許容し得る塩の形態で用いることを包含する。式Iで表される化合物の薬学的に許容し得る塩の形態は、大部分、慣用的な方法によって製造される。式Iで表される化合物がカルボキシル基を含む場合は、この好適な塩の1種を、当該化合物を好適な塩基と反応させて対応する塩基付加塩を得ることによって生成することができる。このような塩基は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを含むアルカリ金属水酸化物;アルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化バリウムおよび水酸化カルシウム;アルカリ金属アルコキシド類、例えばカリウムエトキシドおよびナトリウムプロポキシド;ならびに種々の有機塩基、例えばピペリジン、ジエタノールアミンおよびN−メチルグルタミンである。
【0078】
式Iで表される化合物のアルミニウム塩が、同様に包含される。式Iで表される数種の化合物の場合、これらの化合物を、薬学的に許容し得る有機および無機酸類、例えばハロゲン化水素、例えば塩化水素、臭化水素またはヨウ化水素、他の鉱酸およびそれらの対応する塩、例えば硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩など、ならびにアルキルおよびモノアリールスルホン酸塩類、例えばエタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩、ならびに他の有機酸およびそれらの対応する塩、例えば酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩などで処置することによって、酸付加塩を生成することができる。
【0079】
したがって、式Iで表される化合物の薬学的に許容し得る酸付加塩は、以下のものを含む:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギニン酸塩(arginate)、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、重亜硫酸塩、臭化物、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、リン酸二水素塩、ジニトロ安息香酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩(ムチン酸から)、ガラクツロン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル安息香酸塩、リン酸一水素塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、フタル酸塩、しかしこれは、限定を表すものではない。
【0080】
さらに、本発明の化合物の塩基性塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)、マンガン(II)、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛塩を含むが、これは、限定を表すことを意図しない。前述の塩の中で、好ましいのは、アンモニウム;アルカリ金属塩、ナトリウムおよびカリウム、ならびにアルカリ土類金属塩、カルシウムおよびマグネシウムである。
【0081】
薬学的に許容し得る有機無毒性塩基から誘導される式Iで表される化合物の塩は、第一、第二および第三アミン類、また天然に存在する置換アミン類を含む置換アミン類、環状アミン類、ならびに塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン(ベンザチン)、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、イソプロピルアミン、リドカイン、リシン、メグルミン、N−メチル−D−グルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(トロメタミン)の塩を含むが、これは、制限を表すことを意図しない。
【0082】
塩基性窒素含有基を含む本発明の化合物を、剤、例えば(C〜C)アルキルハロゲン化物、例えば塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、イソプロピルおよびtert−ブチル;ジ(C〜C)アルキル硫酸塩、例えば硫酸ジメチル、ジエチルおよびジアミル;(C10〜C18)アルキルハロゲン化物、例えば塩化、臭化およびヨウ化デシル、ドデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリル;ならびにアリール(C〜C)アルキルハロゲン化物、例えば塩化ベンジルおよび臭化フェネチルを用いて四級化することができる。本発明の水溶性および油溶性の化合物を共に、このような塩を用いて製造することができる。
【0083】
好ましい前述の薬学的塩は、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベシル酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヘミコハク酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、イセチオン酸塩、マンデル酸塩、メグルミン、硝酸塩、オレイン酸塩、ホスホン酸塩、ピバリン酸塩、リン酸ナトリウム、ステアリン酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、チオリンゴ酸塩、トシル酸塩およびトロメタミンを含むが、これは、制限を表すことを意図しない。
【0084】
特に好ましいのは、塩酸塩、二塩酸塩、臭化水素酸塩、マレイン酸塩、メシラート、リン酸塩、硫酸塩およびコハク酸塩である。
【0085】
式Iで表される塩基性化合物の酸付加塩を、遊離塩基形態を十分な量の所望の酸と接触させ、慣用的な方法で塩の生成を引き起こさせることによって製造する。塩形態を塩基と接触させ、慣用の方法で遊離塩基を単離することによって、遊離塩基を再生することができる。遊離塩基形態は、ある観点において、いくつかの物性、例えば極性溶媒への溶解性の点で、対応する塩形態と異なる;しかし、本発明の目的のためには、塩は、他の点ではそれぞれの遊離塩基形態に相当する。
【0086】
述べたとおり、式Iで表される化合物の薬学的に許容し得る塩基付加塩は、金属またはアミン類、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミン類を用いて生成する。好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムである。好ましい有機アミン類は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−D−グルカミンおよびプロカインである。
【0087】
本発明の酸性化合物の塩基付加塩を、遊離酸形態を十分な量の所望の塩基と接触させ、慣用的な方法で塩の生成を引き起こさせることによって製造する。塩形態を酸と接触させ、慣用的な方法で遊離酸を単離することによって、遊離酸を再生することができる。遊離酸形態は、ある観点において、いくつかの物性、例えば極性溶媒への溶解性の点で、対応する塩形態と異なる;しかし、本発明の目的のためには、塩は、他の点ではそれぞれの遊離酸形態に相当する。
【0088】
本発明の化合物が、このタイプの薬学的に許容し得る塩を生成することができる1つよりも多い基を含む場合には、本発明はまた、多重塩を包含する。典型的な多重塩形態には、例えば、重酒石酸塩、二酢酸塩、二フマル酸塩、ジメグルミン、二リン酸塩、二ナトリウムおよび三塩酸塩が含まれるが、これは、制限を表すことを意図しない。
【0089】
前述に関し、本文脈における表現「薬学的に許容し得る塩」は、式Iで表される化合物をその塩の1種の形態で含む活性成分を意味するものと解釈されることが明らかであり、特に、この塩形態が、活性成分に対して、前に用いられていた活性成分の遊離形態または活性成分のすべての他の塩形態と比較して改善された薬物動態学的特性を付与する場合は、このように解釈されることが明らかである。活性成分の薬学的に許容し得る塩形態はまた、活性成分に前には有していなかった所望の薬物動態学的特性を初めて付与することができ、さらに、この活性成分の薬力学に対して身体における治療的有効性に関する正の影響を有することができる。
【0090】
同位体
さらに、式Iで表される化合物が同位体で標識されたその形態を含むことを、意図する。式Iで表される化合物の同位体で標識された形態は、化合物の1個または2個以上の原子が通常天然に存在する原子の原子質量または質量数と異なる原子質量または質量数を有する原子(単数)または原子(複数)によって置き換えられているという事実とは別に、この化合物と同一である。
【0091】
容易に商業的に入手でき、周知の方法によって式Iで表される化合物に包含させることができる同位体の例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体、例えば、それぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18Fおよび36CIを含む。前述の同位体および/または他の原子の他の同位体の1種または2種以上を含む式Iで表される化合物、そのプロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩は、本発明の一部であることを意図する。式Iで表される同位体で標識した化合物を、多数の有益な方法において使用することができる。
【0092】
例えば、例えばHまたは14Cなどの放射性同位体が包含された式Iで表される同位体で標識した化合物は、医薬および/または基質の組織分布アッセイに適している。これらの放射性同位体、つまりトリチウム(H)および炭素14(14C)は、単純な調製および優れた検出可能性のために特に好ましい。より重い同位体、例えば重水素(H)の式Iで表される化合物中への包含は、この同位体で標識した化合物のより高い代謝安定性のために治療的利点を有する。
【0093】
より高い代謝安定性は、増加したin vivoでの半減期またはより低い投与量に直接変換可能であり、それは、ほとんどの状況の下で本発明の好ましい態様を表す。式Iで表される同位体で標識した化合物を、通常、本テキスト中の合成スキームおよび関連する記載に、例の部に、ならびに調製の部に開示した手順を行うことによって製造することができ、同位体で標識していない反応体を容易に入手できる同位体で標識した反応体によって交換する。
【0094】
重水素(H)をまた、化合物の酸化的代謝を一次反応速度の同位体効果(primary kinetic isotope effect)によって操作するための目的で、式Iで表される化合物に包含させることもできる。一次反応速度の同位体効果は、同位体核の交換に起因する化学反応の速度の変化であり、それは、この同位体交換の後に共有結合形成に必要な基底状態エネルギーの変化によって順に引き起こされる。より重い同位体の交換の結果、通常、化学結合のための基底状態エネルギーの低下がもたらされ、したがって律速的な結合破壊において速度の低下が生じる。
【0095】
結合破壊が、多生成物反応の座標に沿った鞍点領域において、またはその近辺で生じる場合には、生成物分布比を、実質的に変化させることができる。説明のために:重水素が炭素原子に交換可能でない位置において結合する場合には、k/k=2〜7の速度差が、典型的である。この速度差を、酸化を受けやすい式Iで表される化合物に首尾よく適用する場合には、in vivoでのこの化合物のプロフィールを大幅に修正し、改善された薬物動態学的特性をもたらすことができる。
【0096】
治療薬を発見し、進展させる場合には、当業者は、薬物動態学的パラメーターを最適化し、同時に所望のin vitro特性を保持することを試みる。薬物動態学的プロフィールの乏しい多くの化合物が酸化的代謝を受けやすいものと推測することは、合理的である。
【0097】
現在利用可能なin vitroでの肝臓ミクロソームアッセイは、このタイプの酸化的代謝の経過についての有用な情報を提供し、それによって次に、かかる酸化的代謝に対する耐性によって改善された安定性を有する式Iで表される重水素化された化合物の合理的な設計が可能になる。
【0098】
式Iで表される化合物の薬物動態学的プロフィールにおける著しい改良が、それによって得られ、in vivo半減期(t/2)、最大の治療効果における濃度(Cmax)、用量反応曲線下面積(AUC)およびFの増加の点において;ならびに低下したクリアランス、用量および物質コストの点において定量的に表すことができる。
【0099】
以下は、上記のものを例示することを意図する:酸化的代謝のための攻撃の複数の潜在的な部位、例えばベンジル水素原子および窒素原子に結合した水素原子を有する式Iで表される化合物を、水素原子の様々な組み合わせが重水素原子によって置き換えられ、したがってこれらの水素原子のいくつか、ほとんどまたはすべてが重水素原子によって置き換えられている一連の類似体として製造する。半減期決定によって、酸化的代謝に対する耐性の改善が改善される程度の好ましく、かつ正確な決定が可能になる。このようにして、基本化合物の半減期を、このタイプの重水素−水素交換の結果、最高100%まで延長することができることが決定される。
【0100】
式Iで表される化合物における重水素−水素交換をまた、望ましくない有毒な代謝産物を減少させるか、または消失させるための出発化合物の代謝産物範囲の好ましい修正を達成するために使用することもできる。例えば、有毒な代謝産物が酸化的炭素−水素(C−H)結合切断によって生じる場合には、重水素化された類似体が、特定の酸化が律速ステップでない場合であっても不要な代謝産物の産生を大幅に減少させるか、または消失させるであろうことを合理的に推測することができる。重水素−水素交換に関しての先端技術に関するさらなる情報は、例えばHanzlik et al., J. Org. Chem. 55, 3992-3997, 1990、Reider et al., J. Org. Chem. 52, 3326-3334, 1987、Foster, Adv. Drug Res. 14, 1-40, 1985、Gillette et al, Biochemistry 33(10) 2927-2937, 1994およびJarman et al. Carcinogenesis 16(4), 683-688, 1993に見出され得る。
【0101】
本発明はさらに、式Iで表される少なくとも1種の化合物ならびに/または、それらの薬学的に許容し得る誘導体、溶媒和物および立体異性体、ならびにすべての比率でのそれらの混合物、および任意に賦形剤および/または補助剤を含む医薬に関する。
【0102】
医薬製剤を、投薬単位あたり所定量の活性成分を含む投薬単位の形態で、投与することができる。かかる単位は、処置される状態、投与の方法、ならびに患者の年齢、体重および状態に依存して、例えば0.5mg〜1g、好ましくは1mg〜700mg、特に好ましくは5mg〜100mgの本発明の化合物を含んでもよく、または医薬製剤を、投薬単位あたり所定量の活性成分を含む投薬単位の形態で投与してもよい。好ましい投薬単位製剤は、前に示されるように、毎日の用量もしくは部分的用量を含むもの、または活性成分のこの対応する部分である。さらに、このタイプの医薬製剤を、薬学分野で周知の方法を用いて製造することができる。
【0103】
医薬製剤を、すべての所望の好適な方法による、例えば経口(口腔内もしくは舌下を含む)、直腸内、鼻腔内、局所的(口腔内、舌下もしくは経皮的を含む)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内もしくは皮内を含む)方法による投与に適合させることができる。このような製剤を、薬学分野で公知のすべての方法を用いて、例えば活性成分を賦形剤(単数もしくは複数)または補助剤(単数もしくは複数)と合わせることによって製造することができる。
【0104】
経口投与に適合した医薬製剤を、別個の単位、例えばカプセルもしくは錠剤;散剤もしくは顆粒;水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁液;食用発泡体もしくは発泡体食品;または水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型液体エマルジョンとして投与することができる。
【0105】
したがって、例えば、錠剤またはカプセルの形態での経口投与の場合、活性成分要素を、経口的な、無毒性の、かつ薬学的に許容し得る不活性賦形剤、例えばエタノール、グリセロール、水などと組み合わせることができる。散剤を、化合物を好適な微細な大きさに粉砕し、これを同様にして粉砕した薬学的賦形剤、例えば食用炭水化物、例えばデンプンまたはマンニトールと混合することによって製造する。風味剤、保存剤、分散剤および色素が、同時に存在してもよい。
【0106】
カプセルを、上記のように散剤混合物を製造し、成形したゼラチン殻をそれで充填することによって製造する。流動促進剤および潤滑剤、例えば固体形態での高度に分散性のケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはポリエチレングリコールを、充填操作の前に散剤混合物に添加することができる。崩壊剤または可溶化剤、例えば寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムを、同様に加えて、カプセルを服用した後の医薬の有効性を改善してもよい。
【0107】
加えて、所望により、または所要に応じて、好適な結合剤、潤滑剤および崩壊剤ならびに染料を、同様に混合物中に包含させることができる。好適な結合剤は、デンプン、ゼラチン、天然糖類、例えばグルコースまたはベータ−ラクトース、トウモロコシから製造された甘味剤、天然および合成ゴム、例えばアカシア、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ろうなどを含む。これらの投薬形態で用いられる潤滑剤は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。崩壊剤は、限定されずに、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンゴムなどを含む。錠剤を、例えば散剤混合物を製造し、混合物を顆粒化または乾燥圧縮し、潤滑剤および崩壊剤を添加し、混合物全体を圧縮して錠剤を得ることによって処方する。
【0108】
散剤混合物を、好適な方法で粉砕した化合物を上記のように希釈剤または塩基と、および任意に結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン、溶解遅延剤、例えばパラフィン、吸収促進剤、例えば第四級塩および/または吸収剤、例えばベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウムと混合することによって製造する。散剤混合物を、それを結合剤、例えばシロップ、デンプンペースト、アラビアゴム粘液またはセルロースの溶液またはポリマー材料で湿潤させ、それをふるいに通過させて押圧することによって顆粒化することができる。顆粒化の代替として、散剤混合物を、打錠機に通し、不均一な形状の塊を得、それを崩壊させて、顆粒を形成することができる。
【0109】
顆粒を、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を添加することによって潤滑化して、錠剤流延型への粘着を防止することができる。次に、潤滑化した混合物を圧縮して、錠剤を得る。本発明の化合物をまた、自由流動の不活性賦形剤と組み合わせ、次に直接圧縮して、顆粒化または乾燥圧縮工程を行わずに錠剤を得ることもできる。セラック密封層、糖またはポリマー材料の層およびろうの光沢層からなる透明な、または不透明な保護層が、存在してもよい。色素を、これらのコーティングに加えて、異なる投薬単位間を区別することができるようにすることができる。
【0110】
経口液体、例えば溶液、シロップおよびエリキシル剤を、投薬単位の形態で製造し、そのようにして所定量が予め特定された量の化合物を含むようにすることができる。シロップを、化合物を水性溶液に好適な風味剤と共に溶解することによって製造することができ、一方エリキシル剤を、無毒性アルコール性ビヒクルを用いて製造する。懸濁液を、化合物を無毒性ビヒクル中に分散させることによって処方することができる。可溶化剤および乳化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール類およびポリオキシエチレンソルビトールエーテル類、保存剤、風味添加剤、例えばペパーミント油もしくは天然甘味剤もしくはサッカリン、または他の人工甘味料などを、同様に添加することができる。
【0111】
経口投与用の投薬単位製剤を、所望により、マイクロカプセル中にカプセル封入することができる。製剤をまた、放出が延長されるかまたは遅延されるように、例えば粒子状材料をポリマー、ろうなどの中にコーティングするか、または包埋することによって製造することができる。
【0112】
式Iで表される化合物ならびにそれらの塩、溶媒和物および生理学的に官能性の誘導体をまた、リポソーム送達系、例えば小さな単層小胞(small unilamellar vesicles)、大きな単層小胞(large unilamellar vesicles)、および多層小胞(multilamellar vesicles)の形態で投与することができる。リポソームを、種々のリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリン類から生成することができる。
【0113】
式Iで表される化合物ならびにそれらの塩、溶媒和物および生理学的に官能性の誘導体をまた、化合物分子が結合した個別の担体としてモノクローナル抗体を用いて送達することができる。当該化合物をまた、標的化された医薬担体としての可溶性ポリマーに結合させることができる。このようなポリマーは、パルミトイルラジカルにより置換されたポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパラタミドフェノール(polyhydroxyethylaspartamidophenol)またはポリエチレンオキシドポリリジンを包含することができる。当該化合物をさらに、医薬の制御された放出を達成するのに適する生分解性ポリマーの群、例えばポリ乳酸、ポリ−エプシロン−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル類、ポリアセタール類、ポリジヒドロキシピラン類、ポリシアノアクリレート類、およびヒドロゲルの架橋ブロックコポリマーまたは両親媒性のブロックコポリマーに結合することができる。
【0114】
経皮的投与に適合した医薬製剤を、レシピエントの表皮との長期間の、密接な接触のための独立した硬膏剤として投与することができる。したがって、例えば、活性成分を、Pharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)に一般的に記載されているように、イオン泳動により硬膏剤から送達することができる。
局所投与に適合した医薬化合物を、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、散剤、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアゾールまたは油として処方することができる。
【0115】
目または他の外部組織、例えば口および皮膚の処置のために、製剤を、好ましくは、局所用軟膏またはクリームとして適用する。軟膏を施与するための製剤の場合、活性成分を、パラフィン系または水混和性クリームベースのいずれかと共に用いることができる。あるいはまた、活性成分を処方して、水中油型クリームベースまたは油中水型ベースのクリームを得ることができる。
【0116】
目への局所的適用に適合した医薬製剤には、点眼剤が含まれ、ここで活性成分を、好適な担体、特に水性溶媒中に溶解させるか、または懸濁させる。
口における局所的適用に適合した医薬製剤は、薬用キャンディー、トローチおよび洗口剤を包含する。
直腸内投与に適合した医薬製剤を、坐剤または浣腸剤の形態で投与することができる。
【0117】
担体物質が固体であって鼻腔内投与に適合した医薬製剤は、例えば20〜500ミクロンの範囲内の粒子の大きさを有する粗い粉末を含み、これを、嗅ぎタバコを服用する方法で、すなわち鼻に近接して保持した散剤を含む容器からの鼻道を介する迅速な吸入によって投与する。担体物質としての液体とともに鼻腔内スプレーまたは点鼻剤で投与するのに好適な製剤は、水または油に溶解した活性成分溶液を包含する。
【0118】
吸入による投与に適合した医薬製剤は、微細粒子状細粉またはミストを含み、これは、エアゾール、噴霧器または吸入器を有する種々のタイプの加圧ディスペンサーによって生じせしめ得る。
膣内投与に適合した医薬製剤を、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体またはスプレー製剤として投与することができる。
【0119】
非経口投与に適合した医薬製剤は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および溶質を含む水性および非水性の無菌注射溶液であって、それによって製剤が処置されるべきレシピエントの血液と等張になるもの;ならびに水性の、および非水性の無菌懸濁液であって、懸濁媒体および増粘剤を含むことができるもの、を含む。製剤を、単一用量または複数用量の容器、例えば密封したアンプルおよびバイアルで投与してもよく、使用の直前に無菌の担体液体、例えば注射用水を添加することのみを要するように、フリーズドライ(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilised))状態で貯蔵してもよい。レシピに従って製造される注射溶液および懸濁液は、無菌の散剤、顆粒および錠剤から製造することができる。
【0120】
上記で特に述べた構成成分に加えて、製剤はまた、製剤の特定のタイプに関して当該分野において通常である他の剤をも含むことができることは、言うまでもない;したがって、例えば、経口投与に適する製剤は、風味剤を含んでいてもよい。
【0121】
式Iで表される化合物の治療的有効量は、例えば、動物の年齢および体重、処置を必要とする正確な状態およびその重篤度、製剤の性質および投与の方法を含む多くの因子に依存し、最終的には、処置する医師または獣医師によって決定される。しかしながら、処置のための本発明の化合物の有効量は、一般的に、1日あたり0.1〜100mg/レシピエント(哺乳動物)の体重1kgの範囲内および特に典型的には1日あたり1〜10mg/体重1kgの範囲内である。したがって、体重が70kgである成体の哺乳動物についての1日あたりの実際の量は、通常は70〜700mgであり、ここで、この量を、1日あたりの単一の用量として、または通常は1日あたり一連の部分用量(例えば2回分、3回分、4回分、5回分もしくは6回分)で投与し、したがって合計の1日用量が同一であるようにすることができる。その塩もしくは溶媒和物の、または生理学的に官能性の誘導体の有効量を、本発明の化合物自体の有効量の比として決定することができる。同様の用量が、前述の他の状態の処置に適すると、推測することができる。
【0122】
このタイプの併用処置を、処置の個々の構成成分の同時の、連続的な、または別個の施しを活用することによって達成することができる。このタイプの組み合わせ生成物は、本発明の化合物を使用する。
【0123】
本発明はさらに、式Iで表される化合物ならびに/またはそれらの薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および立体異性体、ならびにすべての比率でのそれらの混合物の少なくとも1種と、少なくとも1種の他の医薬活性成分とを含む医薬に関する。
【0124】
本発明はまた、
(a)式Iで表される化合物ならびに/またはそれらの薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および立体異性体、ならびにすべての比率でのそれらの混合物の有効量、
ならびに
(b)さらなる医薬活性成分の有効量
の別個のパックからなるセット(キット)に関する。
【0125】
セットは、好適な容器、例えば箱、個別のビン、袋またはアンプルを含む。セットは、例えば、各々が有効量の式Iで表される化合物ならびに/またはそれらの薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および立体異性体、ならびにすべての比率でのそれらの混合物、
ならびに、溶解した形態または凍結乾燥形態での有効量のさらなる医薬活性成分
を含む個別のアンプルを含んでもよい。
【0126】
本明細書中で使用する「処置」は、障害または疾患と関連する徴候の全体的な、もしくは部分的な軽減、または当該徴候のさらなる進行もしくは悪化の緩徐化、もしくは停止、または疾患もしくは障害を発症する危険にある対象における疾患もしくは障害の防止もしくは予防を意味する。
【0127】
式(I)で表される化合物に関連する用語「有効量」は、障害または疾患と関連する徴候を全体的に、もしくは部分的に軽減するか、または当該徴候のさらなる進行もしくは悪化を緩徐化、もしくは停止するか、または本明細書中に開示した疾患を有するかもしくは発症する危険にある対象における疾患もしくは障害、例えば炎症性状態、免疫学的状態、がんもしくは代謝的状態を防止するかもしくは予防を提供することができる量を意味することができる。
【0128】
一態様において、式(I)で表される化合物の有効量は、細胞におけるタンキラーゼを例えばin vitroまたはin vivoで阻害する量である。いくつかの態様において、有効量の式(I)で表される化合物は、細胞におけるタンキラーゼを、処理していない細胞のタンキラーゼの活性と比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または99%まで阻害する。例えば医薬組成物中の有効量の式(I)で表される化合物は、所望の効果を発揮するレベル;例えば経口投与および非経口的投与の両方のための単位投薬において対象の体重の約0.005mg/kg〜対象の体重の約10mg/kgにあり得る。
【0129】
使用
本化合物は、がん、多発性硬化症、心血管疾患、中枢神経系損傷および種々の形態の炎症の処置における哺乳動物のための、特にヒトのための医薬活性成分として好適である。
【0130】
本発明は、式Iで表される化合物ならびに/またはそれらの生理学的に許容し得る塩および溶媒和物の、がん、多発性硬化症、心血管疾患、中枢神経系損傷および種々の形態の炎症の処置または予防のための医薬の調製のための使用を包含する。
【0131】
炎症性疾患の例は、関節リウマチ、乾癬、接触性皮膚炎、遅延型過敏反応などを含む。
【0132】
また包含されるのは、式Iで表される化合物ならびに/またはそれらの生理学的に許容し得る塩および溶媒和物の、哺乳動物におけるタンキラーゼによって誘導される疾患またはタンキラーゼによって誘導される状態の処置または予防のための医薬の調製のための使用であり、ここでこの方法に対して、治療的有効量の本発明の化合物を、かかる処置を必要とする罹患した哺乳動物に投与する。治療量は特定の疾患に従って変化し、過度の努力を伴わずに当業者によって決定することができる。
【0133】
表現「タンキラーゼに誘導される疾患または状態」は、1種または2種以上のタンキラーゼの活性に依存する病理学的状態を指す。タンキラーゼ活性に関連した疾患は、がん、多発性硬化症、心血管疾患、中枢神経系損傷および種々の形態の炎症を含む。
【0134】
本発明は、特に、タンキラーゼの阻害、調節および/または変調が役割を果たす疾患の処置のための使用のための、
式Iで表される化合物およびそれらの薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体および立体異性体、ならびにすべての比率でのそれらの混合物に関する。
【0135】
本発明は、特にタンキラーゼの阻害のための使用のための、式Iで表される化合物ならびにそれらの薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体および立体異性体、ならびにすべての比率でのそれらの混合物に関する。
【0136】
本発明は、特にがん、多発性硬化症、心血管疾患、中枢神経系損傷および種々の形態の炎症の処置のための使用のための、式Iで表される化合物ならびにそれらの薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、互変異性体および立体異性体、ならびにすべての比率でのそれらの混合物に関する。
【0137】
本発明は、特にがん、多発性硬化症、心血管疾患、中枢神経系損傷および種々の形態の炎症を処置または防止する方法であって、その必要のある対象に、有効量の式Iで表される化合物またはそれらの薬学的に許容し得る塩、互変異性体、立体異性体もしくは溶媒和物を投与することを含む、前記方法に関する。
【0138】
他の観点において、本明細書中で提供するのは、前記キナーゼを発現する細胞中のタンキラーゼを阻害する方法であって、前記細胞を有効量の式Iで表される化合物またはそれらの薬学的に許容し得る塩、互変異性体、立体異性体もしくは溶媒和物と接触させることを含む、前記方法である。
【0139】
式Iで表される化合物が処置または防止するのに有用である代表的な炎症性状態は、非ANCA(抗好中球細胞質自己抗体)血管炎(例えばここでSyk機能は、好中球付着、血管外漏出および/または活性化と関連する)、乾癬、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、慢性蕁麻疹、蕁麻疹、アナフィラキシー、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、炎症性腸疾患、過敏性大腸症候群、痛風、クローン病、粘液性大腸炎、潰瘍性大腸炎、腸抗原に対するアレルギー(例えばグルテン腸症)、糖尿病(例えばI型糖尿病およびII型糖尿病)ならびに肥満を含むが、それらには限定されない。
【0140】
いくつかの態様において、炎症性状態は、皮膚科学的な状態、例えば乾癬、皮膚の掻痒、蕁麻疹、湿疹、強皮症または皮膚炎である。他の態様において、炎症性状態は、炎症性の肺の状態、例えば喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)または成人急性呼吸促迫症候群(ARDS)である。他の態様において、炎症性状態は、胃腸の状態、例えば炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、特発性炎症性腸疾患、過敏性大腸症候群または痙攣性結腸である。
【0141】
式Iで表される化合物が処置または防止するのに有用である代表的ながんは、頭部、頸部、目、口、喉、食道、気管支、喉頭、咽頭、胸、骨、肺、結腸、直腸、胃、前立腺、膀胱、子宮、子宮頸部、乳房、卵巣、精巣または他の生殖器、皮膚、甲状腺、血液、リンパ節、腎臓、肝臓、膵臓、脳、中枢神経系のがん、固形腫瘍および血液由来の腫瘍を含むが、それらには限定されない。
【0142】
式Iで表される化合物が処置または防止するのに有用である代表的な心血管疾患は、再狭窄、アテローム性動脈硬化症およびその結果、例えば脳卒中、心筋梗塞、心臓、肺、腸、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓または脳に対する虚血性障害を含むが、それらには限定されない。
【0143】
本発明は、増殖性、自己免疫、抗炎症性または感染性疾患障害を処置する方法であって、その必要のある対象に、治療的に有効な量の式Iで表される化合物を投与することを含む、前記方法に関する。
【0144】
好ましくは、本発明は、疾患ががんである方法に関する。
特に好ましくは、本発明は、疾患ががんである方法に関し、投与が、同時、連続的または少なくとも1種の他の活性薬剤の投与との交互である。
【0145】
式Iで表される開示した化合物を、抗がん剤を含む他の既知の治療薬と組み合わせて投与することができる。本明細書中で使用する用語「抗がん剤」は、がんを処置する目的のためにがんを有する患者に投与されるあらゆる剤に関する。
【0146】
本明細書中で定義する抗がん処置を、単独の療法として適用してもよく、または本発明の化合物に加えて、慣用の手術または放射線療法または化学療法を含んでもよい。かかる化学療法は、以下のカテゴリーの抗腫瘍剤の1種または2種以上を含んでもよい:
【0147】
(i)医学的腫瘍学において使用する抗増殖/抗悪性腫瘍/DNA損傷剤およびそれらの組み合わせ、例えばアルキル化剤(例えばシスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファンおよびニトロソ尿素);代謝拮抗薬(例えば葉酸代謝拮抗薬、例えばフルオロピリミジン、例えば5−フルオロウラシルおよびテガフール、ラルチトレキセド、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素およびゲムシタビン);抗腫瘍抗生物質(例えばアントラサイクリン、例えばアドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシンC、ダクチノマイシンおよびミトラマイシン);有糸分裂阻害薬(例えばビンカアルカロイド、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビン、ならびにタキソイド、例えばタキソールおよびタキソテール);トポイソメラーゼインヒビター(例えばエピポドフィロトキシン、例えばエトポシドおよびテニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカンおよびカンプトセシン)ならびに細胞分化剤(例えば全トランス型レチノイン酸、13−シスレチノイン酸およびフェンレチニド);
【0148】
(ii)細胞分裂インヒビター、例えば抗エストロゲン(antioestrogen)(例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン(droloxifene)およびヨードキシフェン(iodoxyfene))、エストロゲン受容体下方調節剤(downregulator)(例えばフルベストラント)、抗アンドロゲン(例えばビカルタミド、フルタミド、ニルタミドおよび酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えばゴセレリン、リュープロレリンおよびブセレリン)、プロゲステロン(例えば酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害薬(例えばアナストロゾール、レトロゾール、ボロゾールおよびエキセメスタン)ならびに5α還元酵素のインヒビター、例えばフィナステリド;
【0149】
(iii)がん細胞侵入を抑制する剤(例えばメタロプロテイナーゼインヒビター、例えばマリマスタットおよびウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体機能のインヒビター);
【0150】
(iv)成長因子機能のインヒビター、例えばかかるインヒビターは、成長因子抗体、成長因子レセプター抗体(例えば抗erbb2抗体トラスツズマブ[HerceptinTM]および抗erbb1抗体セツキシマブ[C225])、ファルネシルトランスフェラーゼインヒビター、チロシンキナーゼインヒビターおよびセリン/トレオニンキナーゼインヒビター、例えば上皮成長因子ファミリーのインヒビター(例えばEGFRファミリーチロシンキナーゼインヒビター、例えば−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ、AZD1839)、−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSI−774)および6−アクリルアミド−−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(CI 1033))、例えば血小板由来成長因子ファミリーのインヒビターおよび例えば肝細胞成長因子ファミリーのインヒビターを含む。
【0151】
(v)抗血管新生薬、例えば血管内皮成長因子の効果を抑制するもの(例えば抗血管内皮細胞成長因子抗体ベバシズマブ[AvastinTM]、化合物、例えば公表された国際特許出願WO 97/22596、WO 97/30035、WO 97/32856およびWO 98/13354に開示されているもの)および他の機構によって作動する化合物(例えばリノミド(linomide)、インテグリンαvβ3機能およびアンジオスタチンのインヒビター)、
【0152】
(vi)血管損傷剤、例えばコンブレタスタチンA4ならびに国際特許出願WO 99/02166、WO 00/40529、WO 00/41669、WO 01/92224、WO 02/04434およびWO 02/08213に開示されている化合物);
【0153】
(vii)アンチセンス療法、例えば上に列挙した標的に向けられるもの、例えばISIS 2503、抗Rasアンチセンス;
【0154】
(viii)例えば異常な遺伝子、例えば異常なp53または異常なBRCA1もしくはBRCA2の置換のためのアプローチ、GDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法)アプローチ、例えばシトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌性ニトロ還元酵素を使用するもの、および化学療法または放射線療法に対する患者耐性を増加させるためのアプローチ、例えば多剤耐性遺伝子療法を含む、遺伝子療法アプローチ;ならびに
【0155】
(ix)例えば患者腫瘍細胞の免疫原性を増加させるためのex-vivoおよびin vivoアプローチ、例えばサイトカイン、例えばインターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子でのトランスフェクション、T細胞アネルギーを減少させるためのアプローチ、トランスフェクトした免疫細胞、例えばサイトカインでトランスフェクトした樹状細胞を使用するアプローチ、サイトカインでトランスフェクトした腫瘍細胞系を使用するアプローチ、および抗イディオタイプ抗体を使用するアプローチを含む、免疫療法アプローチ。
【0156】
以下の表1からの医薬を、好ましくは、しかし排他的でなく、式Iで表される化合物と組み合わせる。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
【表5】
【0162】
式Iで表される開示した化合物ならびにそれらの薬学的に許容し得る溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体、ならびにすべての比率でのそれらの混合物を、好ましくは免疫調節物質と、好ましくは抗PDL−1−またはIL−12と組み合わせて投与することができる。
【0163】
以下の略語は、それぞれ以下の定義を指す:
aq(水性)、h(時間)、g(グラム)、L(リットル)、mg(ミリグラム)、MHz(メガヘルツ)、min.(分)、mm(ミリメートル)、mmol(ミリモル)、mM(ミリモル)、m.p.(融点)、eq(当量)、mL(ミリリットル)、L(マイクロリットル)、ACN(アセトニトリル)、AcOH(酢酸)、CDCl(重水素化クロロホルム)、CDOD(重水素化メタノール)、CHCN(アセトニトリル)、c−hex(シクロヘキサン)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DCM(ジクロロメタン)、DIC(ジイソプロピルカルボジイミド)、DIEA(ジイソプロピルエチル−アミン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMSO−d(重水素化ジメチルスルホキシド)、EDC(1−(3−ジメチル−アミノ−プロピル)−3−エチルカルボジイミド、ESI(エレクトロスプレーイオン化)、EtOAc(酢酸エチル)、EtO(ジエチルエーテル)、EtOH(エタノール)、HATU(ジメチルアミノ−([1,2,3]トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−3−イルオキシ)−メチレン]−ジメチル−アンモニウムヘキサフルオロホスフェート)、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、i−PrOH(2−プロパノール)、KCO(炭酸カリウム)、LC(液体クロマトグラフィー)、MeOH(メタノール)、MgSO(硫酸マグネシウム)、MS(質量分析)、MTBE(メチルtert−ブチルエーテル)、NaHCO(重炭酸ナトリウム)、NaBH(水素化ホウ素ナトリウム)、NMM(N−メチルモルホリン)、NMR(核磁気共鳴)、PyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、RT(室温)、Rt(保持時間)、SPE(固相抽出)、TBTU(2−(1−H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、TEA(トリエチルアミン)、TFA(トリフルオロ酢酸)、THF(テトラヒドロフラン)、TLC(薄層クロマトグラフィー)、UV(紫外線)。
【0164】
in vitroアッセイの説明
略語:
GST=グルタチオン−S−転移酵素
FRET=蛍光共鳴エネルギー移動
HTRF(登録商標)=(均質時間分解蛍光)
HEPES=4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液
DTT=ジチオトレイトール
BSA=ウシ血清アルブミン
CHAPS=洗浄剤;
CHAPS=3−[(3−クロルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート
【0165】
Streptavidin-XLent(登録商標)は、カップリング条件がいくつかのアッセイについて増強された性能を有する複合体、特に高い感受性を必要とするものを生成するように最適化されている、高い階級のストレプトアビジン−XL665複合体である。
【0166】
タンキラーゼ1および2の生化学的活性試験:オートパラジレーション(autoparsylation)アッセイ
オートパラジレーションアッセイを、2ステップにおいて行った:それぞれGSTタグ付加タンキラーゼ−1およびタンキラーゼ−2がビオチン化ADP−リボースをそれ自体に、補助基質としてのビオチン化NADから移行させた酵素反応ならびに酵素のGSTタグに結合したクリプテート標識抗GSTとビオチン−パラジレーション残基に結合したXlent(登録商標)標識ストレプトアビジンとの間の時間分解FRETを分析した検出反応。オートパラジレーション活性は、HTRFシグナルの増加によって直接検出可能であった。
【0167】
オートパラジレーションアッセイを、384ウェルHTRF(登録商標)(Cisbio, Codolet、フランス)アッセイ様式として、Greiner低容積nb384ウェルマイクロタイタープレート中で行い、ハイスループットスクリーンのために使用した。補助基質としてのそれぞれ250nMのGSTタグ付加タンキラーゼ−1(1023〜1327aa)、約250nMのGSTタグ付加タンキラーゼ−2(873〜1166aa)および5μMのbio-NAD(Biolog, Life science Inst., Bremen、ドイツ)を、5μlの全容積(50mMのHEPES、4mMの塩化Mg、0.05%のPluronic F-68、1.4mMのDTT、0.5%のDMSO、pH7.7)において、試験化合物(10種の希釈濃度)の非存在下または存在下で、30℃で90minインキュベートした。反応を、1μlの50mMのEDTA溶液の添加によって停止した。
【0168】
2μlの検出溶液(1.6μMのSA-Xlent(登録商標)(Cisbio, Codolet、フランス)、50mMのHEPES中の7.4nMの抗GST−K(登録商標)(Eu標識抗GST、Cisbio, Codolet、フランス)、800mMのKF、0.1%のBSA、20mMのEDTA、0.1%のCHAPS、pH7.0)を、加えた。室温での1hのインキュベーションの後、HTRFを、Envisionマルチモード読取機(Perkin Elmer LAS Germany GmbH)で、励起波長340nm(レーザーモード)ならびに発光波長615nmおよび665nmで測定した。発光シグナルの比を、決定した。使用した完全な値は、インヒビターなしの反応であった。使用した薬理学的ゼロ値は、5μMの最終濃度におけるXAV-939(Tocris)であった。阻害値(IC50)を、GeneDataからのプログラムSymyx Assay Explorer(登録商標)またはCondosseo(登録商標)のいずれかを使用して決定した。
【0169】
タンキラーゼの細胞阻害の測定
タンキラーゼがAxin2の細胞レベルを変調させると記載されている(Huang et al., 2009; Nature)ので、Axin2レベルの増加を、Luminexに基づくアッセイにおいてタンキラーゼの細胞阻害の決定についての読み出しとして使用する。
【0170】
結腸がん細胞系DLD1の細胞を、ウェルあたり1.5×10個の細胞で96ウェルプレート中に播種する。翌日、細胞を、試験化合物の連続的希釈で7ステップにおいて3つ1組として0.3%の最終的DMSO濃度で処理する。24時間後、細胞を、溶解緩衝液(20mMのトリス/HCl、pH8.0、150mMのNaCl、1%のNP40、10%のグリセリン)に溶解し、溶解物を、96ウェルフィルタープレート(0.65μm)による遠心分離によって除去する。Axin2タンパク質を、細胞溶解物から、蛍光性カルボキシビーズ(carboxybeads)に結合したモノクローナル抗Axin2抗体(R&D Systems #MAB6078)とのインキュベーションによって単離する。次に、結合したAxin2を、ポリクローナル抗Axin2抗体(Cell Signaling #2151)および適切なPE蛍光性二次抗体で特異的に検出する。
【0171】
単離したAxin2タンパク質の量を、Luminex200機械(Luminex Corporation)において製造者の指示に従ってウェルあたり100の事象を計数することにより決定する。試験化合物によるタンキラーゼの阻害の結果、より高いレベルのAxin2がもたらされ、それは、検出可能な蛍光の増加と直接相関する。対照として、細胞を、溶媒のみで(中立の対照)、およびAxin2の最大の増加について対照として参照するタンキラーゼ基準インヒビターIWR−2(3E−06 M)で処理する。分析のために、得られたデータを、未処理の溶媒対照に対して標準化し、Assay Explorer software (Accelrys)を使用してEC50値の決定のために適合させた。
【0172】
PARP−1の生化学的活性試験:オートパラジレーションアッセイ
オートパラジレーションアッセイを、2ステップにおいて行った:Hisタグ付加Parp−1がビオチン化ADP−リボース/ADP−リボースをそれ自体に、補助基質としてのビオチン化NAD/NADから移行させた酵素反応ならびに酵素のHisタグに結合したクリプテート標識抗His抗体とビオチン−パラジレーション残基に結合したXlent(登録商標)標識ストレプトアビジンとの間の時間分解FRETを分析した検出反応。オートパラジレーション活性は、HTRFシグナルの増加によって直接検出可能であった。
【0173】
オートパラジレーションアッセイを、384ウェルHTRF(登録商標)(Cisbio, Codolet、フランス)アッセイ様式として、Greiner低容積nb384ウェルマイクロタイタープレート中で行った。35nMのHisタグ付加Parp−1(ヒト、組換え、Enzo Life Sciences GmbH, Loerrach、ドイツ)および125nMのbio-NAD(Biolog, Life science Inst., Bremen、ドイツ)と補助基質としての800nMのNADとの混合物を、6μlの全容積(100mMのトリス/HCl、4mMの塩化Mg、0.01%のIGEPAL(登録商標)CA630、1mMのDTT、0.5%のDMSO、pH8、13ng/μlの活性化DNA(BPS Bioscience, San Diego, US))において、試験化合物(10種の希釈濃度)の非存在下または存在下で、23℃で150minインキュベートした。
【0174】
反応を、4μlの停止/検出溶液(70nMのSA-Xlent(登録商標)(Cisbio, Codolet、フランス)、50mMのHEPES中の2.5nMのAnti-His-K(登録商標)(Eu標識抗His、Cisbio, Codolet、フランス)、400mMのKF、0.1%のBSA、20mMのEDTA、pH7.0)の添加によって停止した。室温での1hのインキュベーションの後、HTRFを、Envisionマルチモード読取機(Perkin Elmer LAS Germany GmbH)で、励起波長340nm(レーザーモード)ならびに発光波長615nmおよび665nmで測定した。発光シグナルの比を、決定した。使用した完全な値は、インヒビターなしの反応であった。使用した薬理学的ゼロ値は、1μMの最終濃度におけるOlaparib(LClabs, Woburn, US)であった。阻害値(IC50)を、GeneDataからのプログラムSymyx Assay Explorer(登録商標)またはCondosseo(登録商標)のいずれかを使用して決定した。
【0175】
TNKS1および2の生化学的活性試験:活性ELISA(オートパラジレーションアッセイ)
TNKS1および2のオートパラジレーション活性の分析のために、活性ELISAを行った:最初のステップにおいて、GSTタグ付加TNKSを、グルタチオンでコーティングしたプレート上で捕獲した。次に、ビオチン化NADでの活性アッセイを、化合物の非存在/存在下で行った。酵素反応の間に、GSTタグ付加TNKSは、ビオチン化ADPリボースをそれ自体に、補助基質としてのビオチン化NADから移行させた。検出のために、ストレプトアビジン−HRP複合体を加え、それはビオチン化TNKSに結合し、それによってプレートに捕獲された。それぞれビオチン化された、およびオートパラジレートされたTNKSの量を、HRPについてのルミネセンス基質で検出した。ルミネセンスシグナルのレベルは、オートパラジレートされたTNKSの量と、およびしたがってTNKSの活性と直接相関している。
【0176】
活性ELISAを、384ウェルグルタチオン被覆マイクロタイタープレート(Express capture Glutathione被覆プレート、Biocat, Heidelberg、ドイツ)において行った。プレートを、PBSで予め平衡化した。次に、プレートを、それぞれ50μlの20ng/ウェルのGSTタグ付加Tnks−1(1023〜1327aa、社内で調製した)およびGSTタグ付加Tnks−2(873〜1166aa、社内で調製した)と共に、アッセイ緩衝液(50mMのHEPES、4mMの塩化Mg、0.05%のPluronic F-68、2mMのDTT、pH7.7)中で、4℃で一晩インキュベートした。プレートを、PBS−Tween-20で3回洗浄した。ウェルを、50μlの遮断緩衝液(PBS、0.05%のTween-20、0.5%のBSA)との20分間室温でのインキュベーションによって遮断した。
【0177】
後に、プレートを、PBS−Tween-20で3回洗浄した。酵素反応を、50μlの反応溶液(50mMのHEPES、4mMの塩化Mg、0.05%のPluronic F-68、1.4mMのDTT、0.5%のDMSO、pH7.7)中で、補助基質としての10μMのbio-NAD(Biolog, Life science Inst., Bremen, ドイツ)と共に、試験化合物(10種の希釈濃度)の非存在下または存在下で、30℃で1時間行った。反応を、PBS−Tween-20で3回洗浄することによって停止した。50μlの20ng/μlストレプトアビジンの検出のために、PBS/0.05%Tween-20/0.01%BSA中のHRP複合体(MoBiTec, Goettingen、ドイツ)を加え、プレートを室温で30分間インキュベートした。
【0178】
PBS−Tween-20での3回の洗浄の後、50μlのSuperSignal ELISA Femto Maximum感受性基質溶液(ThermoFisherScientific (Pierce), Bonn, ドイツ)を、加えた。室温での1分間のインキュベーションに続いて、ルミネセンスシグナルを、Envisionマルチモード読取機(Perkin Elmer LAS Germany GmbH)で、700nmで測定した。使用した完全な値は、インヒビターなしの反応であった。使用した薬理学的ゼロ値は、5μMの最終濃度におけるXAV-939(Tocris)であった。阻害値(IC50)を、GeneDataからのプログラムSymyx Assay Explorer(登録商標)またはCondosseo(登録商標)のいずれかを使用して決定した。
【0179】
本明細書中で、すべての温度を、℃において示す。以下の例において、「慣用のワークアップ(work-up)」は、以下のことを意味する:必要に応じて水を加え、pHを、必要に応じて、最終生成物の構成に依存して2〜10の値に調整し、混合物を酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出し、相を分離し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させ、残留物を、シリカゲル上のクロマトグラフィーおよび/または結晶化によって精製する。シリカゲル上のRf値;溶離剤:酢酸エチル/メタノール 9:1。
【0180】
質量分析(MS):EI(電子衝撃イオン化)M
FAB(高速原子衝撃)(M+H)
ESI(エレクトロスプレーイオン化)(M+H)
APCI−MS(大気圧化学的イオン化−質量分析)(M+H)
質量分析(MS):EI(電子衝撃イオン化)M
FAB(高速原子衝撃)(M+H)
ESI(エレクトロスプレーイオン化)(M+H)
APCI−MS(大気圧化学的イオン化−質量分析)(M+H)
m.p.=融点
【0181】
以下に記載する例において提供したHPLCデータ(所与の保持時間)が、以下のように得られた:
【0182】
P:HPLC方法:
勾配:5.5min;流量:2.75ml/min、99:1から0:100までのHO/アセトニトリル
水+TFA;(0.01% vol.);アセトニトリル+TFA(0.01% vol.)
カラム:Chromolith SpeedROD
Rp 18e 50-4.6
波長:220nm
Merck Hitachi La Chrome機器
【0183】
N:HPLC方法:
勾配:5.5min;流量:2.75ml/min、90:10から0:100までのHO/ACN
水+TFA;(0.01% vol.);アセトニトリル+TFA(0.01% vol.)
カラム:Chromolith SpeedROD RP 18e 50-4.6
波長:220nm
Merck Hitachi La Chrome機器
【0184】
H NMRを、内部基準として重水素化溶媒の残留信号を使用して、Bruker DPX-300、DRX-400またはAVII-400分光計に記録した。化学シフト(δ)を、ppmにおいて、残留溶媒信号(DMSO−d中のH NMRについてδ=2.49ppm)に相対して報告する。H NMRデータを、以下のように報告する:化学シフト(多重度、結合定数および水素の数)。多重度を、以下のように略す:s(一重項)、d(二重項)、t(三重項)、q(四重項)、m(多重項)、br(広い)。
【0185】
マイクロ波化学を、Personal Chemistryからの単一モードマイクロ波反応器EmrysTM Optimiserで行う。
【0186】
例1.1.1
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−4−イルアミン
【化5】
N−シアノ−S−メチルイソチオ尿素(10g;86.84mmol)、シクロヘキサノン(90.7ml;868.37mmol)およびピロリジン(0.36ml;4.34mmol)の混合物を、150℃で30min撹拌し、淡黄色の反応混合物を、150℃でさらに60h撹拌する。反応混合物を蒸発乾固させる。残留物をMeOHに溶解し、Combiflash CompanionのRP18ecシリカゲルカラム上のクロマトグラフィーによって精製する;収量:5.09g(27%)、油(純度:88%)。
【0187】
例1.1
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン
【化6】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロキナゾリン−4−イルアミン(5.09g;23.145mmol)、3−メチル−1−ニトロソオキシブタン(11.6ml;86.79mmol)およびトリフルオロ酢酸(23.2ml;300.89mmol)を、クロロホルム(300ml)に溶解し、淡黄色溶液を60℃に加温し、2h撹拌する。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、10%KCOで抽出する。水相を分離し、ジクロロメタンで1回逆抽出し(back-extract)、NaClをその後加え、混合物を酢酸エチルで再び抽出する。合わせた有機相を、NaSOで乾燥し、濾過し、蒸発させる。このようにして得られた粗生成物を、吸着剤上に吸着させ、Combiflash Companion XLのSI50シリカゲルカラム上のクロマトグラフィーによって精製する。生成物画分の蒸発の後、結晶残留物をジエチルエーテルで粉末にし、吸引によって濾過し、真空中で乾燥する;収量:2.0g(57%)、結晶。
【0188】
例1
2−[4−(4−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A6”)
【化7】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)および1−(4−フルオロフェニル)ピペラジン(91.8μl;0.51mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)に懸濁させ、混合物を、マイクロ波(CEM Discover)中で、150℃で2h、撹拌しながら照射する。沈殿した結晶を吸引しながら濾別し、エタノールおよびジエチルエーテルで十分にすすぎ、吸引しながら濾別する。このようにして得られた粗生成物を、高温エタノールおよびジエチルエーテルで再びすすぎ、吸引しながら濾別し、真空中50℃で乾燥する;収量:86mg(50%)、結晶;
【化8】
【0189】
例2
2−[4−(3−フルオロフェニル)ピペラジン−1−イル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A5”)
【化9】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)および1−(3−フルオロフェニル)ピペラジン(82.6μl;0.51mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)中で例1についての手順に従って反応させ、ワークアップを行う;収量:54mg(32%)、結晶;
【化10】
【0190】
例3
2−[4−(3−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A7”)
【化11】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)、1−(3−メトキシフェニル)ピペラジン塩酸塩(116.5mg;0.51mmol)およびトリエチルアミン(141.3μl;1.02mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)中で例1についての手順に従って反応させ(反応時間4h)、ワークアップを行う;収量:79mg(45%)、結晶;
【化12】
【0191】
例4
2−[4−(4−クロロフェニル)ピペラジン−1−イル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A8”)
【化13】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)および1−(4−クロロフェニル)ピペラジン(100.2mg;0.51mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)中で例1についての手順に従って反応させ、ワークアップを行う;収量:83mg(47%)、結晶;
【化14】
【0192】
例5
2−[4−(2−クロロフェニル)ピペラジン−1−イル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A9”)
【化15】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)および1−(2−クロロフェニル)ピペラジン(84.9μl;0.51mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)中で例1についての手順に従って反応させ、ワークアップを行う;収量:65mg(37%)、結晶;
【化16】
【0193】
例6
2−[4−(3−クロロフェニル)ピペラジン−1−イル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A11”)
【化17】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)、1−(3−クロロフェニル)ピペラジン塩酸塩(118.8mg;0.51mmol)およびトリエチルアミン(141.3μl;1.02mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)中で例1についての手順に従って反応させ(反応時間4h)、ワークアップ行う;収量:51mg(29%)、結晶;
【化18】
【0194】
例7
2−[4−(2−メトキシフェニル)ピペラジン−1−イル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A12”)
【化19】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)および1−(2−メトキシフェニル)ピペラジン(98mg;0.51mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)中で例1についての手順に従って反応させ(反応時間4h)、ワークアップ行う;収量:52mg(30%)、結晶;
【化20】
【0195】
例8
2−(4−tert−ブチルピペラジン−1−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A13”)
【化21】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)および1−tert−ブチルピペラジン(72.5mg;0.51mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)中で例1についての手順に従って反応させ、ワークアップを行う;収量:42mg(28%)、結晶。
【0196】
例9
2−[4−(ピペリジン−1−カルボニル)ピペラジン−1−イル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A15”)
【化22】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)およびピペラジン−1−イルピペリジン−1−イルメタノン(100.5mg;0.51mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)中で例1についての手順に従って反応させる。4hの反応時間の後、ピペラジン−1−イルピペリジン−1−イルメタノン(50.3mg;0.26mmol)およびイソアミルアルコール(0.5ml)を再び加え、混合物をマイクロ波中で4h再び照射する。慣用のワークアップの後に得られた結晶を、アセトニトリルおよび水に溶解し、凍結乾燥する;収量:17mg(9%)、結晶;
【化23】
【0197】
例10
2−[4−(6−ヒドロキシピリジン−2−イル)ピペラジン−1−イル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A16”)
【化24】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)および6−ピペラジン−1−イルピリジン−2−オール(91.3mg;0.51mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)中で例9についての手順に従って反応させ、ワークアップを行う。慣用のワークアップの後に得られた粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製し、ジエチルエーテルで粉末にし、吸引しながら濾別し、乾燥する;収量:17mg(10%)、結晶;
【化25】
【0198】
例11
2−(4−ベンゾイルピペラジン−1−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A17”)
【化26】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)、フェニルピペラジン−1−イルメタノン塩酸塩(115.5mg;0.51mmol)およびトリエチルアミン(141.3μl;1.02mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)中で例9についての手順に従って反応させ(反応時間6h)、ワークアップを行う。カラムクロマトグラフィーによる精製の後に得られた結晶を、アセトニトリルおよび水に溶解し、凍結乾燥する;収量:47mg(27%)、結晶;
【化27】
【0199】
例12
N−ピリジン−2−イル−2−[4−(4−オキソ−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロキナゾリン−2−イル)ピペラジン−1−イル]アセトアミド(“A18”)
【化28】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)、N−(2−ピリジル)−2−(ピペラジン−1−イル)アセトアミド*3HCl*2HO(279.5mg;0.76mmol)およびトリエチルアミン(282.5μl;2.04mmol)を、イソアミルアルコール(2ml)中で例9についての手順に従って反応させ(反応時間8h)、ワークアップを行う。得られた結晶を、アセトニトリルおよび水に溶解し、凍結乾燥する;収量:19mg(10%)、結晶;
【化29】
【0200】
例13
2−(4−アセチルピペラジン−1−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A19”)
【化30】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)およびN−アセチルピペラジン(98mg;0.76mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)中で例1についての手順に従って反応させ(反応時間8h)、ワークアップを行う。このようにして得られた粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製する;収量:12mg(8%)、結晶;
【化31】
【0201】
例14
2−[4−(モルホリン−4−カルボニル)ピペラジン−1−イル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A20”)
【化32】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)およびピペラジノカルボン酸モルホリド(152.3mg;0.76mmol)を、イソアミルアルコール(1.5ml)中で例1についての手順に従って反応させ(反応時間8h)、ワークアップを行う。得られた結晶を、アセトニトリルおよび水に溶解し、凍結乾燥する;収量:38mg(21%)、結晶;
【化33】
【0202】
例15
2−[4−(4−オキソ−3,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロキナゾリン−2−イル)ピペラジン−1−イル]−N−ピリジン−3−イルアセトアミド(“A23”)
【化34】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)、N−(3−ピリジル)−2−(ピペラジン−1−イル)アセトアミド*3HCl(251.9mg;0.76mmol)およびトリエチルアミン(282.5μl;2.04mmol)を、イソアミルアルコール(2ml)中で例1についての手順に従って反応させ(反応時間4h)、ワークアップを行う。
【0203】
例16
2−(4−トリフルオロメチルピペリジン−1−イル)−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A10”)
【化35】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)、4−トリフルオロメチルピペリジン*HCl(97mg;0.51mmol)およびトリエチルアミン(141.3μl;1.02mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)中で例1についての手順に従って反応させ(反応時間4h)、ワークアップを行う。このようにして得られた粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製する;収量:43mg(28%)、結晶;
【化36】
【0204】
例17
2−[4−(4−メトキシフェニル)−3−オキソピペラジン−1−イル]−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(“A14”)
【化37】
2−メチルスルファニル−5,6,7,8−テトラヒドロ−3H−キナゾリン−4−オン(100mg;0.51mmol)および1−(4−メトキシフェニル)ピペラジン−2−オン(105mg;0.51mmol)を、イソアミルアルコール(1ml)中で例1についての手順に従って反応させ(反応時間4h)、ワークアップを行う。このようにして得られた粗生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製する;収量:8mg(4%)、結晶;
HPLC方法P;RT/min 2.87。
【0205】
同様にして、以下の化合物を得る。
【表6】
【0206】
【表7】
【0207】
【表8】
【0208】
【表9】
【0209】
【表10】
【0210】
【表11】
【0211】
【表12】
【0212】
【表13】
【0213】
【表14】
【0214】
【表15】
【0215】
【表16】
【0216】
薬理学的データ
【表17-1】
【表17-2】
【0217】
表1に示した化合物は、本発明の特に好ましい化合物である。
【0218】
【表18-1】
【表18-2】
【0219】
以下の例は、医薬に関する:
例A:注射バイアル
100gの式Iで表される活性成分および5gのリン酸水素二ナトリウムを3lの2回蒸留水に溶解させた溶液を、2N塩酸を用いてpH6.5に調整し、滅菌濾過し、注射バイアル中に移し、滅菌条件下で凍結乾燥させ、滅菌条件下で密封する。各々の注射バイアルは、5mgの活性成分を含む。
【0220】
例B:座剤
20gの式Iで表される活性成分の100gの大豆レシチンおよび1400gのココアバターとの混合物を、溶融し、型中に注入し、放冷する。各々の座剤は、20mgの活性成分を含む。
【0221】
例C:溶液
940mlの2回蒸留水中の1gの式Iで表される活性成分、9.38gのNaHPO・2HO、28.48gのNaHPO・12HOおよび0.1gの塩化ベンザルコニウムから、溶液を調製する。pHを6.8に調整し、溶液を1lにし、放射線により滅菌する。この溶液を、点眼剤の形態で用いることができる。
【0222】
例D:軟膏
500mgの式Iで表される活性成分を、99.5gのワセリンと、無菌条件下で混合する。
【0223】
例E:錠剤
1kgの式Iで表される活性成分、4kgのラクトース、1.2kgのジャガイモデンプン、0.2kgのタルクおよび0.1kgのステアリン酸マグネシウムの混合物を、慣用の方法で圧縮して、錠剤を得、各々の錠剤が10mgの活性成分を含むようにする。
【0224】
例F:糖衣錠
例Eと同様にして、錠剤を圧縮し、次に、慣用の方法で、スクロース、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカントおよび染料の被膜で被覆する。
【0225】
例G:カプセル
2kgの式Iで表される活性成分を、硬質ゼラチンカプセル中に、慣用の方法で導入して、各々のカプセルが20mgの活性成分を含むようにする。
【0226】
例H:アンプル
1kgの式Iで表される活性成分を60lの2回蒸留水に溶解させた溶液を、滅菌濾過し、アンプル中に移送し、滅菌条件下で凍結乾燥させ、滅菌条件下で密封する。各々のアンプルは、10mgの活性成分を含む。