(54)【発明の名称】疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子、トナー用外添剤、電子写真用乾式トナー、および、疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の製造方法
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
遠心沈降法によって得られる質量基準粒度分布において、質量基準累積90%径(D90径)と質量基準累積10%径(D10径)との割合(D90径/D10径)が1.5〜4.0の範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子。
メタノール滴定法による疎水化度が55容量%以上であり、且つメタノール濃度が50容量%のメタノール水における浮遊率が80質量%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子。
(i)アルキルトリアルコキシシランの加水分解物、(ii)前記加水分解物の部分縮合物、および、(iii)前記加水分解物と前記部分縮合物との混合物、からなる群より選択される微粒子前駆体、ならびに、有機溶媒を含む原料溶液と、有機溶媒を含有するアルカリ性水系媒体とを混合して、前記微粒子前駆体を重縮合反応させることで重縮合反応液を得、
次に、前記重縮合反応液と水性溶液とを混合することで球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を分散させた球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子分散液を得、
さらに、前記球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子分散液に疎水化剤を配合して前記球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の表面を疎水化処理することにより、
遠心沈降法による質量基準のメジアン径が0.05〜0.3μmの範囲内にある疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子(但し、アルキルは炭素数1〜3の鎖状アルキルである)を製造することを特徴とする疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の製造方法。
前記アルキルトリアルコキシシランがメチルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項8または9に記載の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の製造方法。
前記重縮合反応液と前記水性溶液とを混合した混合液の組成が時間の経過に対して常に一定に保たれるように、前記重縮合反応液と前記水性溶液との混合が実施される特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の製造方法。
接続部から3分岐した3つの流路のうちの第一の流路の入口側から前記接続部側に向けて前記重縮合反応液を一定の流量で連続的に供給し、前記3つの流路のうちの第二の流路の入口側から前記接続部側に向けて前記水性溶液を一定の流量で連続的に供給することにより、
前記重縮合反応液と前記水性溶液との混合が実施されることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の製造方法。
前記重縮合反応液と前記水性溶液とを混合した混合液の組成が時間の経過に対して変化するように、前記重縮合反応液と前記水性溶液との混合が実施されることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子(
但し、アルキルは炭素数1〜3の鎖状アルキルである。以下同様。)は、遠心沈降法による質量基準のメジアン径が0.05〜0.3μmの範囲内であることを特徴とする。即ち、前述の如くに、従来のゾル−ゲル法によるポリメチルシルセスキオキサン微粒子の製造では、小粒径の粒子を得ようとすると反応が安定的に遂行できず、斯様に微粒子状の当該粒子は、本発明により初めて提供されるものである。
【0028】
質量基準のメジアン径は、遠心沈降法による測定で求めることができる。具体的には、乾燥した疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子0.1gを内径4cm高さ11cmのガラス製容器に投入し、そこに2−プロパノール50gを添加した溶液を得た。次に、超音波分散機のプローブ(先端の内径7mm)の先端より4.5cmを上記溶液に浸し、出力20Wで15分間超音波分散することで分散液を得た。続いて、この分散液を用いて、CPS Instruments社遠心沈降粒度分布測定装置DC24000によりメジアン径を測定した。ディスクの回転数は24000rpmに設定し、ポリアルキルシルセスキオキサンの真密度は1.3g/cm
3に設定した。測定前に、平均粒径0.476μmのポリ塩化ビニル粒子を使用して装置の校正を行った。なお、上述した遠心沈降法によれば、メジアン径が0.05〜0.3μmの範囲内程度の粒径範囲の粒子であっても独立した個々の粒子の粒径を高精度に測定できる。
【0029】
上述したように、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は粒径0.3μm以下の小粒径であり、かつ、疎水性を有する。このような粒径サイズは、可視光の波長域と比べて相対的に小さいため、他の透明性のある材料と混合しても透明性を劣化させることが少ない。また、粒径サイズにも依存するが、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を樹脂溶液などの液状の材料に添加すれば粘性を低下させることが容易となる傾向にある。これに加えて、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は、微粒子本体中に疎水性のアルキル基が含まれる上に疎水化処理されているために疎水性を有するため、湿度の影響を受けにくく、耐候性や、環境安定性の点でも有利である。
【0030】
本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の使用用途は特に限定されるものではないが、上述した点を考慮すれば、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は、たとえば、各種ゴムや樹脂の充填剤、半導体封止材やフィルム等の充填剤、電子写真用トナーの外添剤、化粧品やワックス、塗料、プラスチック、ゴム、化粧品、紙等の改質用添加剤、半導体製造工程で利用される研磨剤等などに用いることが好ましい。各種ゴムや樹脂の充填剤として用いた場合は、これら材料の低粘度化や透明性の確保を容易にすることができる。また、半導体封止材やフィルム等の充填剤としては、近年の装置の小型化、薄膜化に伴い、耐候性に優れた粒度の揃った粒径0.3μm以下のシリカ粒子が求められていることから、このようなニーズにも応えることができる。化粧品やワックスでは、撥水性を持つシリカ粒子を用いることが有用である。さらに、トナーの外添剤においては、印刷の高速化、カラートナーの使用拡大や、高精細画像形成の目的でトナーが小粒径化するのに伴い、粒径が0.3μm以下の疎水化微粒子が必要とされている。また、トナーには優れた環境安定性も求められる。これらの点では、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子はトナー用の外添剤として用いることが特に好適である。また、環境安定性の確保は、トナーの帯電安定性の確保にも寄与する。
【0031】
本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子のメジアン径は、0.05〜0.30μmであればよいが、一般的には、好ましくは、0.08〜0.25μmであり、より好ましくは0.08〜0.20μmである。但し、メジアン径は、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の使用用途に応じて0.05〜0.30μmの範囲内で適宜選択することができる。
【0032】
なお、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子をトナー用外添剤として使用する場合、メジアン径が0.05μmより小さい場合に、特に近年の低融点化されたトナーにおいて、外添剤粒子がトナーに埋没しやすくトナーの転写性や耐久性の向上効果が得られなくなる。また、メジアン径が0.30μmより大きい場合は、近年の小粒径化されたトナーにおいて、外添剤粒子がトナー粒子表面を被覆し難く、トナーの耐久性や転写性が低下する。更に、外添剤粒子がトナー粒子表面を被覆されたとしてもトナー粒子表面から脱離し易く、脱離した外添剤粒子が感光体の損傷や画質不良の原因になる。
【0033】
さらに、疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は、上記遠心沈降法によって得られる質量基準粒度分布において、質量基準累積90%径(D90径)と質量基準累積10%径(D10径)の割合(以下、D90径/D10径ともいう)が1.5〜4.0の範囲にあることが好ましく、1.5〜3.0であることが更に好ましい。上記割合(D90径/D10径)が上記の如く小さい粒子は、粒度分布の幅が狭く、例えば、粒径の異なる数種類の充填剤を混合するなど、充填剤の設計を行う上で好適に用いることが可能である。一方、上記割合、(D90径/D10径)が4.0を超えることは粒度分布の幅が広いことを意味している。このため、粒度分布の幅の狭さが要求される用途に本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を用いることが困難となる場合がある。たとえば、(D90径/D10径)が4.0を超える疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子をトナー用外添剤として用いた場合、転写性の効果を得るために過剰の外添剤粒子を添加しなければならず経済性が悪化する場合がある。また、外添剤粒子中に粗大粒子が含まれ、粒径のばらつきも存在するため、外添剤粒子のトナーへの分散性が悪くなる場合がある。
【0034】
本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は、下記一般式(1)で表わされる基本構造からなる微粒子本体の表面が疎水化剤で疎水化された微粒子である。
R
1SiO
3/2 一般式(1)
(一般式(1)において、R
1は、
炭素数1〜3の鎖状アルキル
基である。)
【0035】
本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子において、ケイ素原子に結合するアルキル基R
1としては、例えば置換または非置換の1価の
炭素数1〜3の鎖状アルキル基が制限無く適用でき
る。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル
基を例示することができる。特に好適に
は、メチル基である。
【0036】
本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は、形状がほぼ真球状であり、具体的には平均円形度が0.8以上あることが好ましく、0.90以上であることがより好ましい。ここで、平均円形度は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により得られた画像データを画像解析ソフトにより解析し、粒子の周囲長、及び投影面積を求めることで得られた一次粒子の平均円形度(上記画像解析によって得られた一次粒子100個の下記数式(2)により算出した円形度の累積頻度50%における50%円形度)を意味する。
【0037】
円形度=4π×(A/I
2) 数式(2)
(数式(2)中、Iは画像上における一次粒子の周囲長(nm)を示し、Aは一次粒子の投影面積(nm
2)を表す)
【0038】
上記一次粒子の平均円形度が1に近いほど粒子が真球に近いことを表すが、この平均円形度は大きくて0.97程度である。一次粒子の平均円形度が0.80未満であると、疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子同士の付着性が高くなり、疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の凝集塊の解砕性が悪くなる場合がある。また、疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサンをトナー用外添剤として使用した場合に、定着部材からの離型性が悪化する傾向がある。
【0039】
また、本実施形態の
疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は、一般式(1)で表わされる基本構造からなる微粒子本体の表面が疎水化剤により疎水化処理されたものである。微粒子本体の表面を疎水化処理する疎水化剤としては特に限定されないが、有機ケイ素化合物であることが好ましい。例えば、ヘキサメチルジシラザンのようなアルキルシラザン系化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシランのようなアルキルアルコキシシラン系化合物、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランのようなクロロシラン系化合物、あるいはシリコーンオイル、シリコーンワニスなどを挙げることができる。微粒子本体表面の疎水化処理により、本実施形態の
疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の疎水性や、本実施形態の
疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子からなる凝集塊の解砕性を向上でき、樹脂への分散性が向上する。また、本実施形態の
疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子をトナー用の外添剤として用いた場合には、高温高湿といった環境条件に影響されない安定した帯電安定性を持つ電子写真用乾式トナーを得ることができる。
【0040】
本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の疎水化度は、メタノール滴定法による疎水化度で、55容量%以上であることが好ましい。メタノール滴定法による疎水化度は、以下の手順で測定される。即ち、水50ml中に疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を0.2g添加した混合液中にて、疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の全量が湿潤されるまで、混合液を攪拌しながら、ビュレットからメタノールを滴下する。なお、全量が湿潤したかどうかは、水面上に浮遊していた疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子が全て液中に没して、液体中に懸濁されたか否かにより判断される。この際、滴下終了時点での混合液と滴下したメタノールとの総量に対するメタノールの百分率の値を疎水化度とする。疎水化度の値が高いほど疎水性が高いことを示す。本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の疎水化度は、55〜75容量%であることが特に好ましい。
【0041】
さらに、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は、メタノール濃度が50容量%のメタノール水における疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の浮遊率が、80
質量%以上であることが好ましい。当該浮遊率は、以下の手順で測定することができる。即ち、110mlスクリュー管瓶に、50容量%のメタノール水100ml、及び疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子0.5gを加え、振とう機にて30分間混合し、一晩静置する。湿潤して沈降した疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を含むスラリーをスポイトで除去し、溶液上に浮遊した粉と液を70℃で2時間、120℃で15時間乾燥することでスクリュー瓶中に残った残留微粒子を得る。そして、仕込み量(0.5g)に対する残留微粒子の質量(g)の百分率を浮遊率として測定する。本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の浮遊率は、80〜90
質量%であることが特に好ましい。
【0042】
疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の疎水化度が55容量%以上、且つ、浮遊率が80
質量%以上である場合、この疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の表面がより均一に疎水化処理される。このため、この疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を各種の添加剤として用いた場合には、樹脂への分散性に優れる上に、トナー用外添剤として用いた場合には、電子写真用乾式トナーの帯電安定性が向上する。一方、疎水化度が55容量%未満の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は、飽和水分量が高くなり、環境条件によって吸湿しやすくなるため、例えば、トナー用外添剤として使用した場合には帯電安定性が不十分になる場合がある。また、疎水化度が55容量%未満、および/または、浮遊率が80
質量%未満であると、疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子表面のシラノール基の水素結合により粒子同士が強固な凝集体を生成し易くなるため、樹脂への分散性が低下したり、樹脂の流動性低下が生じやすくなる場合がある。また、上記の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子をトナー用外添剤として使用した場合、その凝集粒子はトナー粒子の表面を被覆し難しくなり、トナー用外添剤としての効果が発揮され難くなる。
【0043】
次に、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の製造方法について説明する。本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は、その製造方法が特定の方法に制限されるものではないが、従来のゾル−ゲル法によりアルキルトリアルコキシシランを加水分解し重縮合したのでは、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子のような小粒径の粒子を安定的に得ることは通常困難である。それゆえ、疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は、次の方法により製造することが好ましい。すなわち、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の製造方法は、具体的には、(i)アルキルトリアルコキシシランの加水分解物、(ii)加水分解物の部分縮合物、および、(iii)加水分解物と部分縮合物との混合物、からなる群より選択される微粒子前駆体、ならびに、有機溶媒を含む原料溶液と、有機溶媒を含有するアルカリ性水系媒体とを混合して、微粒子前駆体を重縮合反応させることで重縮合反応液を得、次に、重縮合反応液と水性溶液とを混合することで球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を分散させた球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子分散液を得、さらに、球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子分散液に疎水化剤を配合して球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の表面を疎水化処理する、製造方法であることが好ましい。
【0044】
上記製造方法では、第1の工程として、(i)アルキルトリアルコキシシランの加水分解物、(ii)加水分解物の部分縮合物、および、(iii)加水分解物と部分縮合物との混合物、からなる群より選択される微粒子前駆体、ならびに、有機溶媒を含む原料溶液を得る。なお、原料溶液は、微粒子前駆体の作製に用いた出発原料を加水分解反応や部分縮合反応を進行させることにより直接得られた微粒子前駆体を含有する1次溶液であってもよく、この1次溶液に対してさらに水や有機溶媒を加えて希釈した2次溶液であってもよい。また、1次溶液には、微粒子前駆体と、アルキルトリアルコキシシランの加水分解により生じたアルコール(すなわち、有機溶媒)とが少なくとも含まれる。しかしながら、1次溶液には、これら成分以外にも、通常は、水や、触媒として用いた酸が含まれる。また、1次溶液の有機溶媒には、アルキルトリアルコキシシランの加水分解等により生じたアルコール以外にも、出発原料として必要に応じて用いられる有機溶媒がさらに含まれていてもよい。
【0045】
ここで、原料溶液に含まれる有機溶媒としては、少なくともアルキルトリアルコキシシランの加水分解により生じたアルコールが挙げられる。このようなアルコールとしては使用するアルキルトリアルコキシシランの種類にもよるが、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。また、出発原料として必要に応じて用いられる有機溶媒や、2次溶液の調製に際して必要に応じて用いられる有機溶媒としては、後述するアルカリ系水性媒体の調製に用いる有機溶媒として列挙されている溶媒を適宜選択することができる。
【0046】
ここで、アルキルトリアルコキシシランは、下記一般式(2)で表される化合物である。
R
1Si(OR
2)
3 一般式(2)
(一般式(2)中、R
1は炭素数1〜3の鎖状アルキル基であり、R
2は、アルキル基、環状アルキル基のいずれかであり、R
1とR
2とは同じであっても、異なっていても良い)
【0047】
また、このアルキルトリアルコキシシランの加水分解物とは、アルキルトリアルコキシシランを加水分解して得られる下記一般式(3)で表される化合物である。また、部分縮合物は、上記一般式(2)および/または下記一般式(3)で表される化合物同士が縮合した化合物である。
R
1Si(OR
2)
a(OH)
3−a 一般式(3)
(一般式(3)中のR
1、R
2は、一般式(2)中に示すものと同じであり、aは0から2の間の整数である)
【0048】
上記アルキルトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラ
ンなどを例示することができる。これらは1種類を用いても2種類以上を併用しても差し支えない。
【0049】
この中でも特に、メチルトリメトキシシランは工業的に入手が容易であること、及び取り扱いが容易であることからより好ましい。
【0050】
また、アルキルトリアルコキシシランが、常温常圧で液体である場合には、そのまま使用することも可能であるし、有機溶媒で希釈して使用することも可能である。
【0051】
第1の工程は、水に触媒となる酸を溶解させた水溶液中において、アルキルトリアルコキシシランと酸とを、撹拌、混合等の方法で接触させることにより行なう。
【0052】
触媒としては公知の触媒を好適に使用することができる。具体的には、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、プロピオン酸等の有機酸が挙げられる。
【0053】
この中でも、最終的に得られる疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子中に不純物が含まれないようにしたり、あるいは、不純物が含まれても少量であり、生成した加水分解物の部分縮合反応が起こりにくいことから、ギ酸および酢酸等の有機酸を用いることが好ましい。
【0054】
触媒の使用量は、アルキルトリアルコキシシランおよび酸の種類によって適宜調整すれば良いが、アルキルトリアルコキシシランを加水分解する場合に用いる水の量100質量部に対して1×10
−3〜1質量部の範囲で選ばれる。触媒の使用量が1×10
−3質量部未満の場合には反応が十分に進行せず、1質量部を超える場合には微粒子中に不純物として残存する濃度が高くなるばかりでなく、生成した加水分解物が縮合しやすくなる。水の使用量は、アルキルトリアルコキシシラン1モルに対して2〜15モルが好ましい。水の量が2モル未満の場合には加水分解反応が十分に進行せず、15モルを超えて使用するのは生産性が悪くなる場合がある。
【0055】
反応温度はとくに制限されず、常温または加熱状態で行なってもよいが、短時間で加水分解物が得られ、かつ生成した加水分解物の部分縮合反応を抑制できることから、10〜60℃に保持した状態で反応を行なうことが好ましい。反応時間はとくに制限されず、用いるアルキルトリアルコキシシランの反応性や、アルキルトリアルコキシシランと酸と水とを調合した反応液の組成、生産性を考慮して適宜選択すればよい。
【0056】
本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の製造方法では、第2の工程として、上記第一工程で得られた原料溶液と、有機溶媒を含有するアルカリ性水系媒体とを混合して、微粒子前駆体を重縮合反応させる。これにより重縮合反応液を得る。ここで、アルカリ性水系媒体は、アルカリ成分と、水と、有機溶媒とを混合して得られる液である。
【0057】
アルカリ性水系媒体に使用されるアルカリ成分は、その水溶液が塩基性を示すものであり、第1の工程で用いられた酸の中和剤として、また第2の工程の重縮合反応の触媒として作用するものである。かかるアルカリ成分としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物;アンモニア;およびモノメチルアミン、ジメチルアミンのような有機アミン類を例示することができる。これらのなかでも、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の用途を制限するような微量の不純物を残さないことからアンモニアおよび有機アミン類が好ましく、さらには不純物の除去が容易なことからアンモニアがとくに好ましい。これらアルカリ成分は、取り扱いや反応の制御が容易なことから水溶液状のものを用いることが好ましい。
【0058】
アルカリ成分の使用量は、酸を中和し、重縮合反応の触媒として有効に作用する量であり、例えばアルカリ成分としてアンモニアを用いた場合には水と有機溶媒との混合物100質量部に対して、通常は0.01質量%以上12.5質量%以下の範囲で選ばれる。アルカリ成分の使用量が0.01質量%未満の場合は、続く第3の工程において球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子が得難くなり、収率が低下しやすくなる。また、アルカリ成分の使用量が12.5質量%を超える場合は、析出物が生成し易くなるため均一な反応液が得られ難く、続く第3の工程において球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の生成が不安定化することがある。また、廃液の処理も煩雑になりやすい。
【0059】
第2の工程においては、アルカリ性水系媒体を調製するために、アルカリ成分および水に加えて、さらに有機溶媒を使用する。かかる有機溶媒は水に対して相溶性を有するものであれば、特に制限されないが、常温、常圧下で100g当たり10g以上の水を溶解する有機溶媒が好適である。具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール;エチレングリコールモノエチルエーテル、アセトン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジアセトンアルコール等のエーテル;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物等が挙げられる。
【0060】
以上に挙げた有機溶媒の中でも、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒が好ましい。さらには、加水分解、脱水縮合反応の観点から、脱離生成するアルコールと同一のアルコールを有機溶媒として選択するのがより好ましい。
【0061】
また、第2の工程において、析出物の生成を抑制することでより均一な重縮合反応液を得やすくする観点からは、下記数式(1)を満たすことが好ましい。
100×(OS1+OS2)/(L1+L2)≧50質量% 数式(1)
〔数式(1)中、OS1は重縮合反応液の調製に用いた原料溶液に含まれる有機溶媒の含有量(g)、OS2は重縮合反応液の調製に用いたアルカリ性水系媒体に含まれる有機溶媒の含有量(g)、L1は重縮合反応液の調製に用いた原料溶液の量(g)、L2は重縮合反応液の調製に用いたアルカリ性水系媒体の量(g)を表す。〕
【0062】
なお、数式(1)中のOS1として示される有機溶媒の含有量には、上述したように、少なくともアルキルトリアルコキシシランの加水分解により生じたアルコールの含有量が必ず含まれ、その他に、任意でさらに用いる有機溶媒(出発原料に用いた有機溶媒や2次溶液の調製に際して用いた有機溶媒)の含有量が含まれることがある。ここで、OS1の値を求める場合において、アルキルトリアルコキシシランの加水分解により生じたアルコールの量は、アルキルトリアルコキシシランの加水分解が100%進行したと仮定した場合に生じるアルコールの量を採用する。
【0063】
なお、数式(1)の左辺に示される有機溶媒含有率A{=100×(OS1+OS2)/(L1+L2)}は58質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましい。また、上限値は特に限定されるものではないが、実用上は90質量%以下であることが好ましい。
【0064】
また、析出物の生成を抑制することでより均一な重縮合反応液を得やすくする観点で、アルカリ系水系媒体における有機溶媒の含有割合については、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、上限値は特に限定されるものではないが99.5質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0065】
原料溶液と、アルカリ性水系媒体との混合方法は特に制限されず、滴下法など公知の方法を使用することができる。なお、アルカリ性水系媒体中に、滴下法などにより、原料溶液を少量づつ添加することで、アルカリ性水系媒体と原料溶液とを混合する場合、原料溶液のアルカリ性水系媒体中への添加は、製造スケール等を考慮して適宜調整すればよいが、10分以内で行なうことが好ましく、より好ましくは5分以内である。添加速度が遅すぎると、原料溶液の全量をアルカリ性水系媒体に添加し終わる前に液中に析出物が生成して均一な重縮合物が得られず、続く第3の工程で得られる球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の球形度等が低下する傾向がある。
【0066】
原料溶液と、アルカリ性水系媒体とを混合する際の温度は、原料溶液の組成、アルカリ性水系媒体の組成を考慮して、5〜90℃の範囲が好適に選択される。
【0067】
混合後の反応時間は、反応温度、原料溶液の組成、アルカリ性水系媒体の組成等を考慮して適宜決定すればよい。好ましくは、透明な反応液に濁りが生じる時間以上、且つ反応液に析出物が生じ始める時間未満である。例えば、後述する実施例1−1の条件では、15〜50分が好適に選択される。混合する時間が短すぎると、続く第3の工程で得られる球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の球形度が低下したり、球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の収率が低下する。混合する時間が長すぎると、反応液中に析出物が生成して均一な重縮合反応液が得られず、続く第3の工程で得られる球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の球形度等が低下する傾向がある。
【0068】
続いて、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の製造方法では、第3の工程として、上記第2の工程で得られた重縮合反応液と水性溶液とを混合することで、球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を分散させた球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子分散液を得る。即ち、第2の工程における重縮合反応でも、球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を生成させることはある程度可能である。しかし、前記したように粒径が0.3μm以下の小粒径の球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を生成させようとすると、第2の工程における重縮合反応を実施するだけでは、球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を安定的に製造することは困難である。これに対して、第2の工程における重縮合反応で得られた重縮合反応液を、さらに水性溶液と混合することで、重縮合反応液と水性溶液とを混合した混合液中に、良好な球性状で、メジアン径が0.05〜0.3μmの範囲内の球状ポリアルキルシルセ
スキオキサン微粒子を安定的に生成させることができる。
【0069】
なお、球状ポリ
アルキルシルセスキオキサンの粒子化を完了させるためには、重縮合反応液を水性溶液とを混合させて得られた混合液を撹拌した状態で保持することが望ましい。ここで、混合液の撹拌温度はとくに制限されず、常温または加熱状態で行ってもよいが、短時間で粒子化できる観点からは20〜70℃に保持した状態で撹拌することが望ましい。撹拌時間は用いる原料溶液の反応性や混合液の組成、生産性を考慮して適宜選択される。たとえば、使用するアルキルトリアルコキシシランが、一般式(2)のR
1としてメチル基を含む場合は、0.5〜24時間、R
1がエチル基の場合は2〜48時間が好ましい。
【0070】
重縮合反応液と混合させるために用いる水性溶液としては、水(水道水、純水等)が利用できるが、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を得るのに適した球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子が得られる範囲で、水に塩、酸、アルカリ、有機溶媒、界面活性剤、水溶性高分子等の水と相溶性を示す成分をさらに添加してもよい。なお、水性溶液中に有機溶媒が含まれる場合、有機溶媒の含有量は、重縮合反応液の全量と水性溶液の全量とを混合し終えた混合液中において30質量%以下となるように調製されることが好ましく、15質量%以下となるように調製されることがより好ましい。なお、混合させる際の重縮合反応液および水性溶液の温度は、特に制限されず、これらの組成、生産性等を考慮して5〜90℃の範囲が好適に選択される。
【0071】
重縮合反応液と、水性溶液とを混合する方法は、特に制限されず、公知の混合方法を用いることができる。しかしながら、混合は以下の第一の混合方法または第二の混合方法に示す態様で実施することが好ましい。
(I)第一の混合方法
重縮合反応液と水性溶液とを混合した混合液の組成が時間の経過に対して変化するように、重縮合反応液と水性溶液とを混合する混合方法
(II)第二の混合方法
重縮合反応液と水性溶液とを混合した混合液の組成が時間の経過に対して常に一定に保たれるように、重縮合反応液と水性溶液とを混合する混合方法
ここで、上記(I)、(II)において、「混合液の組成」とは、重縮合反応液と水性溶液とを混合した直後の時点を基準とした組成を意味する。
【0072】
第一の混合方法の具体例としては、たとえば、i)容器内に配置された水性溶液の液面へと、重縮合反応液の液滴を滴下したり、ii)容器内に配置された水性溶液の液面へと、霧状の重縮合反応液を散布したり、iii)容器内に配置された水性溶液中に、送液管から重縮合反応液を供給する方法が挙げられる。なお、滴下にはビュレットやシャワーヘッド等の液滴滴下装置を用いることができ、霧状の散布にはスプレーノズルや、超音波振動子などを利用した液体噴霧装置を用いることができる。なお、液滴を滴下する代わりに、インクジェットヘッドのような液滴吐出装置を用いて液滴を水性溶液の液面に着弾させてもよい。これらの方法の中では、上記i)に示す滴下法が好適である。
【0073】
第一の混合方法では、上記i)〜iii)に例示したように、予め容器内に配置された水性溶液に、重縮合反応液を少量づつ継時的に供給することができる。言い換えれば、大容量の水性溶液に対して、少量の重縮合反応液が逐次供給される。よって、重縮合反応液が供給された水性溶液(すなわち、重縮合反応液と水性溶液との混合液)の組成は、時間の経過と共に変化することになる。
【0074】
ここで、第一の混合方法において用いる重縮合反応液の総体積量に対する水性溶液の総体積量の体積比率Vr(水性溶液の総体積量/重縮合反応液の総体積量)は、少なくとも1.0倍以上であることが好ましく、特に、1.0倍〜4.0倍の範囲内であることが好ましい。また、第一の混合方法において用いる重縮合反応液の総質量に対する水性溶液の総質量の質量比率Mr(水性溶液の総質量/重縮合反応液の総質量)は、少なくとも1.0倍以上であることが好ましく、特に、1.0倍〜5.0倍の範囲内であることが好ましい。
【0075】
なお、第一の混合方法では、上述したように、重縮合反応液と水性溶液とを混合した混合液の組成が時間の経過に対して変化する。したがって、混合作業開始から終了までの間において、混合開始時から混合終了時へと向かうに従い、得られる球状ポリアルキルシルセ
スキオキサン微粒子の粒径は変化することになる。それゆえ、第3の工程で得られる球状ポリアルキルシルセ
スキオキサン微粒子分散液中の球状ポリアルキルシルセ
スキオキサン微粒子の粒度分布が広くなることは避けがたい。これに加えて、粒度分布が広くなるのを少しでも抑制するためには、混合作業中の混合液の液組成の変化を出来る限り小さくすることが望ましい。このためには、体積比率Vrおよび質量比率Mrを大きくする必要がある。しかしながら体積比率Vrおよび質量比率Mrを大きくすると、第3の工程で得られる球状ポリアルキルシルセ
スキオキサン微粒子分散液中の固形分濃度が小さくなる。このため、後工程である第4の工程で使用する疎水化剤の消費量も大きくなる。
【0076】
したがって、第3の工程で得られる球状ポリアルキルシルセ
スキオキサン微粒子分散液中の球状ポリアルキルシルセ
スキオキサン微粒子の粒度分布をより狭くし、かつ、球状ポリアルキルシルセ
スキオキサン微粒子分散液中の固形分濃度も高くするためには、第一の混合方法よりも第二の混合方法を用いることが好ましい。第二の混合方法では、重縮合反応液と水性溶液とを混合した混合液の組成が時間の経過に対して常に一定に保たれるため、混合作業中のいずれの時点においても得られる球状ポリアルキルシルセ
スキオキサン微粒子の粒径を実質的にほぼ一定に保つことが容易である。それゆえ、粒度分布を狭くでき、さらに、体積比率Vrおよび質量比率Mrを大きくする必要も無いため、結果的に、第3の工程において得られる球状ポリアルキルシルセ
スキオキサン微粒子分散液中の固形分濃度を高くすることも容易である。
【0077】
なお、第二の混合方法の具体例としては、たとえば、i)空の容器内に、重縮合反応液供給管から重縮合反応液を供給すると共に水性溶液供給管から水性溶液を供給して、容器内にて重縮合反応液と水性溶液とを混合する方法や、ii)3分岐管を用いて重縮合反応液と水性溶液とを混合する方法、などが挙げられる。
【0078】
ここで、上記i)に示す混合方法では、重縮合反応液供給管から供給される重縮合反応液の流量を一定とし、水性溶液供給管から供給される水性溶液の流量を一定とすれば、容器内で混合された混合液の組成は常に一定に保たれる。但し、この方法では、容器の容量が大きくなると局所的な液組成ムラが生じやすいため、このような局所的な液組成ムラをより確実に防ぐためには、上記ii)に示す3分岐管を用いる混合方法がより好ましい。また、当該「流量を一定とする」には、流量が完全に一定である場合のみならず、ポンプを用いた送液時に生じる律動(パルス)により流量が多少ばらつくような場合など、従来公知の送液方法による送液に伴い流量がばらつく場合も含まれる。
【0079】
3分岐管を用いる場合、接続部から3分岐した3つの流路のうちの第一の流路の入口側から接続部側に向けて重縮合反応液を一定の流量で連続的に供給し、3つの流路のうちの第二の流路の入口側から接続部側に向けて水性溶液を一定の流量で連続的に供給すればよい。これにより接続部にて重縮合反応液と水性溶液とが常に一定の比率で混合されるため、接続部にて重縮合反応液と水性溶液とが混合した直後の混合液の組成は常に一定に保たれる。そして、接続部から第三の流路の出口側へと流れた混合液は球状ポリアルキルシルセキスオキサン微粒子分散液として第三の流路の出口側から回収される。なお、3分岐管を用いる場合、重縮合反応液と水性溶液とを接続部にて衝突させると同時に混合する。このような衝突混合は、プレート表面に掘られた三股に分岐した溝状の流路を備えた装置など、3分岐管以外の装置を用いても適宜実施することができる。
【0080】
なお、第二の混合方法において用いる重縮合反応液の総体積量に対する水性溶液の総体積量の体積比率Vr(水性溶液の総体積量/重縮合反応液の総体積量)は、0.19倍〜3.2倍であることが好ましく、0.32倍〜1.6倍であることが好ましい。また、第二の混合方法において用いる重縮合反応液の総質量に対する水性溶液の総質量の質量比率Mr(水性溶液の総質量/重縮合反応液の総質量)は、0.25倍〜4.0倍であることが好ましく、0.40倍〜2.0倍であることが好ましい。
【0081】
また、上述した第二の混合方法の中でも、Y字管、T字管等の3分岐管からなる管型反応器を用いた混合方法が好ましい。この場合、流量の安定性等の観点から、特開2003−221222号公報に開示されるような、接続部に向けて液体を供給する流路(第一の流路および第二の流路)に絞り部が設けられたY字状の管型反応器を用いることが好ましい。
【0082】
図1は、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の製造方法に用いられる反応装置の一例を示す概略模式図であり、
図2は、
図1中に示す管型反応器の断面構造の一例を示す拡大断面図である。
図1に示す反応装置10は、第一の流路110、第二の流路120、第三の流路130およびこれら3つの流路110、120、130の各々の一端が互いに接続される接続部140を備えたY字状の3分岐管型反応器20と、第一の流路110の入口側(接続部140と反対側の端側)に接続された第一ポンプ30と、第二の流路120の入口側(接続部140と反対側の端側)に接続された第二ポンプ32と、第一ポンプ30に接続された第一原料タンク40と、第二ポンプに接続された第二原料タンク42と、第三の流路130の出口側(接続部140と反対側の端側)に接続された回収タンク50とを備えている。
【0083】
図1に示す反応装置10を用いて第三の工程を実施する場合、たとえば、第一原料タンク40に貯蔵された重縮合反応液を第一ポンプ30を介して一定の流量で連続的に第一の流路110へと供給し、第二原料タンク42に貯蔵された水性溶液を第二ポンプ32を介して一定の流量で連続的に第二の流路120へと供給する。これにより、接続部140にて、重縮合反応液と水性溶液とが、衝突すると同時に混合される。そして、重縮合反応液と水性溶液との混合液は、接続部140側から第三の流路130を経て、球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子分散液として回収タンク50内に回収される。なお、第三の流路130から排出された混合液を、さらに静止型の混合器等に通液してさらに撹拌混合してもよい。この場合、管型反応器内での重縮合反応液および水性溶液の流速をより高く設定することができるため、高い生産性を得ることができる。
【0084】
なお、重縮合反応液および水性溶液の3分岐管型反応器20への送液は、ポンプ30、32以外にも、圧送など公知の送液手法を制限なく採用することができる。その中でも、連続的、且つ、均一に重縮合反応液と水性溶液とを衝突混合させることのできる圧送が好ましい。また、ポンプ30、32を使用する場合は、脈動の発生しない多連型往復ポンプやアキュームレータ等の緩衝装置を設置したポンプが好適に用いられる。
【0085】
また、
図1に例示したような3分岐管型反応器20を使用する場合は、接続部140近傍における重縮合反応液および水性溶液の流速をいずれも1.5m/秒以上とすることが好ましく、2.5m/秒以上とすることがより好ましく、3m/秒以上とすることがさらに好ましい。ここで、接続部140近傍における流速とは、より正確には、第一の流路110内においては絞り部112の出口側(接続部140側)における流速を意味し、第二の流路120内においては絞り部114の出口側(接続部140側)における流速を意味する。流速が1.5m/秒よりも小さいと重縮合反応液と水性溶液との衝突混合が不十分になりやすく、得られる球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の粒子径がバラつき、粒度分布が広くなる場合がある。なお、流速の上限は20m/秒以下が好ましく、更に好ましくは15m/秒以下である。流速が20m/秒を超える場合には、重縮合反応液と水性溶液との混合が不十分となり粒度分布が広がる場合がある。
【0086】
また、重縮合反応液の流速に対する水性溶液の流速の比(流速比)は、0.25〜4が好ましく、更に好ましくは0.4〜2である。流速比が0.25未満であると、粒子径が大きくなる傾向があり、粒度分布も広くなる場合がある。また、流速比が4を超えると効果は頭打ちになる傾向にあるし、大量の水性溶液を使用するため経済的でない。
【0087】
また、
図1に示す3分岐管型反応器20において、第一の流路110の中心軸と第二の流路120の中心軸との成す角度は、30〜180度が好ましく、45〜150度がより好ましく、60〜120度がさらに好ましい。なお、角度が180度近傍の場合は、3分岐管型反応器20はY字状では無く、T字状を成す。
【0088】
また、所望の粒径および粒度分布を有する球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を得ることを容易とする観点から、
図2に示すように、第一の流路110内および第二の流路120内には、各々、流速を調整可能な絞り部112、114を設けることが好ましい。この場合、絞り部112、114の流出口側(接続部140側)から、接続部140の中心点Cまでの距離Rは、絞り部112の絞り部径d1、絞り部114の絞り部径d2の1倍〜25倍が好ましく、1〜9倍がより好ましい。また、絞り部112の流出口側(接続部140側)から中心点Cまでの距離Rと、絞り部114の流出口側(接続部140側)から中心点Cまでの距離Rとは等しいことが好ましい。
【0089】
以上により、メジアン径が0.05〜0.3μmである球状ポリアルキルシルセキスオキサン微粒子を含む球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子分散液が得られる。本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の製造方法では、第4の工程として、この球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子分散液に、さらに疎水化剤を配合し上記球状ポリアルキルシルセキスオキサン微粒子の表面を疎水化処理する。前記第3の工程で得られた球状ポリアルキルシルセキスオキサン微粒子分散液から、球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を回収し疎水化処理に供しようとしても、前述の通り球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の分離工程や乾燥工程で、粒子同士が強固に凝集して凝集塊の生成するのが通常であり、これを疎水化しても、粒度分布の幅が狭く、解砕性に優れる粒子を得ることは困難であった。また、特許文献1,2に例示されるように、一般に、ゾル−ゲル法より得られる小粒径の粒子は、微細な一次粒子として高度に分散しているため、ろ過法による粒子の回収が困難であり、遠心分離法や溶媒留去法等が採用されている。しかし、この方法により回収された粒子は、粒子同士が強固に凝集する傾向にある。更に、上記小粒径の粒子は、乾燥時に凝集しやすく、粒子同士が強固に凝集して容易に解砕できない凝集塊の生成を回避できない。かかる凝集塊を乳鉢等で解砕処理しても、一次粒子にまで完全に解すことは困難である。これに対して、上記の如くに球状ポリアルキルシルセキスオキサン微粒子分散液に直接に疎水化剤を配合して疎水化処理すれば、得られる疎水化球状ポリアルキルシルセキスオキサン微粒子は凝集塊を形成してもその解砕性に優れる。
【0090】
上記疎水化処理に用いる疎水化剤は、通常、有機ケイ素化合物が用いられる。係る有機ケイ素化合物としては特に制限されないが、例示するならば、ヘキサメチルジシラザンのようなアルキルシラザン系化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシランのようなアルキルアルコキシシラン系化合物、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシランのようなクロロシラン系化合物、あるいはシリコーンオイル、シリコーンワニスなどを挙げることができる。これらの疎水化剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良く、有機溶剤等で希釈して用いても構わない。
【0091】
上記の疎水化剤のうち、反応性の良さ、取り扱いの容易さ等から、アルキルシラザン系化合物または
アルキルアルコキシシラン系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましく、得られる疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の流動性がよいことから、ヘキサメチルジシラザンを使用することがより好ましい。
【0092】
疎水化剤の使用量は、特に制限されないが、少なすぎると疎水化処理が不十分となる虞があり、多すぎると後処理が煩雑となるため、疎水化処理する球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子100質量部に対して、0.01〜300質量部が好ましく、10〜200質量部とすることがより好ましい。
【0093】
球状ポリアルキルシルセキスオキサン微粒子分散液への疎水化剤の配合方法は特に制限されず、常温、常圧で液体のものであれば、球状ポリアルキルシルセキスオキサン微粒子分散液中に滴下してもよいし、シャワーしてもよい。操作上、簡便であることから滴下が好ましい。
【0094】
処理温度は、特に制限はなく、使用する疎水化剤の反応性を考慮して決定すればよいが、たとえば、0度〜100度とすることができる。また、処理時間は、たとえば、0.1〜72時間とすることができる。しかしながら、処理時間を短縮する観点では、処理温度は高い方が好ましく、具体的には第2の工程で用いた有機溶媒の沸点近傍の温度とすることが好ましい。たとえば、第2の工程で用いる有機溶媒がメタノール(沸点:64.7度)であれば、処理温度を70±5度程度とすることができる。これにより、処理温度を常温とする場合に概ね48〜72時間程度の処理時間が必要なところ、処理温度を第2の工程で用いた有機溶媒の沸点近傍の温度とすることにより処理時間を10時間以下、さらには5時間以下とすることも容易になる。これに加えて、得られる疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の解砕強度を低下させることも容易である。
【0095】
疎水化剤により球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子表面を疎水化処理することにより、得られる疎水化球状ポリアルキルシルセキスオキサン微粒子は球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子分散液の上層部に浮遊するのが一般的である(以下、この液を「粉体浮遊液」という)。粉体浮遊液から疎水化球状ポリアルキルシルセキスオキサン微粒子を回収する方法は、公知の方法を特に制限なく使用することができる。例えば浮遊する粉体をすくい取ることもできるし濾過法を採用しても良いが、操作が簡便であることから濾過法が好ましい。濾過の方法は特に制限されず、減圧濾過や遠心濾過、加圧濾過等、公知の
方法を選択すればよい。濾過で使用する濾紙やフィルター、濾布等は、工業的に入手可能なものであれば特に制限されることはなく、使用する装置に応じて適宜選択すればよい。
【0096】
回収した疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の粉体はそのまま使用することもできるが、不純物の少ない疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子が得られるために、粉体を乾燥して使用することが好ましい。粉体の乾燥方法は特に制限されず、送風乾燥や減圧乾燥等公知の方法から選択できる。その中でも特に減圧乾燥は、解れ易い乾燥粉末が得られるためより好ましい。乾燥温度は、疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子に含まれるアルキル基などの官能基が分解しない温度であれば、特に制限されず、65〜350℃の範囲、特に、80〜250℃の範囲より、好適な温度を適宜設定すればよい。また、乾燥時間は特に制限されないが、2〜48時間にすることにより、十分乾燥した疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を得ることができる。
【0097】
上記方法により得られた疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は、前記したように解砕性に優れる。疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の解砕性は、圧壊強度測定法により評価することができる。具体的には、100℃で15時間真空乾燥した疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の粉末を、目開き1.4mmの篩いにかけ、続いて目開き0.71mmの篩にかけ、目開き0.71mmの篩に残った疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の粉末を測定に使用する。この粉末を上皿天秤に載せ、金属製のヘラで荷重をかけ、粉末が解砕された時点での荷重を記録し、下記数式(3)により解砕強度を計算する。
【0098】
解砕強度(N)=荷重(g)×9.80665×10
−3 数式(3)
この測定は60回繰り返し実施し、その平均値を解砕強度(平均解砕強度)とする。この解砕強度の値が小さいほど、粉末が解れ易いこと示す。本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の解砕強度(平均解砕強度)は、0.20N以下であることが好ましく、0.005〜0.150Nであることがより好ましく、0.005〜0.100Nであることが更に好ましい。
【0099】
即ち、解砕強度が上記範囲の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は、樹脂等に添加され混練される際にかかる混練機又は分散機により剪断力を加えた際に、凝集塊が容易に一次粒子にまで解砕されることを意味にしている。一方、解砕強度が0.20Nより大きいと、疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子同士が強固に凝集した凝集塊が形成されていることを意味し、この凝集塊は、乳鉢等で解砕処理しても、一次粒子にまで完全に解すことは困難で、一次粒子として使用しようとした場合には、別途解砕処理が必要となる。凝集塊を含有する疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を各種の添加剤として使用した場合、樹脂や溶剤等の分散媒体への分散性が低下する。また、分散媒体が樹脂である場合には流動性低下の原因となる。また、凝集塊を含有する疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子をトナー用外添剤として使用した場合には、メジアン径が0.3μmを超える場合と同様に、トナー粒子表面が外添剤粒子により被覆され難い傾向があり、被覆されたとしても外添剤粒子がトナー粒子表面から脱離し易く、またトナー粒子表面から脱離した外添剤粒子は、感光体の損傷、画質不良の原因となる。
【0100】
本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子は、塗料、プラスチック、ゴム、化粧品、紙等の改質用添加剤や半導体製造工程での研磨剤等の種々の用途に好適に使用できるが、特にトナー用外添剤として使用することが最適である。本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子のトナー
用外添剤としての性能は、トナーへの疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の被覆率、および粒子添加量の影響を表す帯電安定性指標、温度や湿度による影響を表す環境安定性指標で評価することができる。なお、いずれの評価も、後述する各実施例で評価されているように擬似トナーを用いて実施できる。
【0101】
また、本実施形態のトナーは、トナー粒子と本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子とを含むものである。ここで、トナー粒子に対して、トナー用外添剤として本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子が外添される。本実施形態のトナーは、トナー用外添剤として本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を用いる点を除けば、その他の材料や製造方法には特に制限は無く、公知の材料あるいは製造方法を適宜利用できる。また、トナー用外添剤としては、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子以外の粒子が本実施形態のトナーに含まれていてもよい。
【0102】
本実施形態のトナーにおいて、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の添加量は、所望の特性向上効果が得られるような添加量であれば特に制限されないが、0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.2〜4.0質量%であることがより好ましい。含有量が0.1質量%未満では、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を添加したことによる転写性や耐久性の改善効果や帯電性の安定化効果が十分に得られない場合がある。また、含有量が5.0質量%を超えると、疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子がトナー粒子表面から脱離したり疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の凝集物が生成しやすくなり、印刷画像やクリーニング性に問題が生じる場合がある。
【0103】
また、トナー粒子は、熱可塑性樹脂と顔料等の色材とを少なくとも含み、その他、必要に応じて帯電制御剤や離型剤等が含まれる。トナー粒子は従来公知のものであれば制限なく利用でき、たとえば、磁性、非磁性の1成分系トナー、2成分系トナーのいずれでも良い。また、負帯電性トナー、正帯電性トナーのいずれでも良く、モノクロ用トナー、カラー用トナーのどちらでも良い。
【0104】
本実施形態のトナーの製造に際しては、トナー用
外添剤として本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を単独で使用しても良いし、目的に応じて、他の添加剤と併用しても良い。例えば、本実施形態の疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子と、他の表面処理された乾式シリカ微粒子や表面処理された酸化チタン微粒子やアルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子等を併用することができる。
【実施例】
【0105】
以下、実施例、及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお作製したサンプルの諸物性は、下記の方法により評価した。
【0106】
(1)メジアン径、及び粒度分布の測定
粒子のメジアン径、及び粒度分布は以下の手順にて測定した。まず、乾燥した疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子0.1gを内径4cm高さ11cmのガラス製容器に投入し、そこに2−プロパノール50gを添加した溶液を得た。次に、超音波分散機のプローブ(先端の内径7mm)の先端より4.5cmを上記溶液に浸し、出力20Wで15分間、超音波分散により分散させることで分散液を得た。続いて、この分散液を用いて、CPS Instruments社遠心沈降粒度分布測定装置DC24000を用
いることによりメジアン径及び粒度分布を測定した。ディスクの回転数は24000rpmに設定し、ポリアルキルシルセスキオキサンの真密度は1.3g/cm
3に設定した。測定前に、平均粒径0.476μmのポリ塩化ビニル粒子を用いて装置の校正を行った。測定された粒子の粒度分布を、個々の粒子の質量について小粒径側から累積分布を描き、累積90%となる粒子径D90を累積10%となるD10で除した、下記数式(4)から得られる値を粒度分布指標と定義した。
粒度分布指標 =(D90/D10) 数式(4)
【0107】
(2)疎水化度の測定
疎水化度の測定は、メタノール滴定法により実施した。まず、水50ml中に疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を0.2g添加した混合液中にて、その全量が湿潤されるまで、混合液を攪拌しながら、ビュレットからメタノールを滴下した。滴下終了時点での混合液中と滴下したメタノールとの総量に対するメタノールの百分率の値を疎水化度とした。疎水化度の値が高いほど疎水性が高く、値が低いほど親水性が高いことを示す。
【0108】
(3)浮遊率の測定
50容量%のメタノール水における疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の浮遊率の測定は、以下の手順で実施した。まず、110mlスクリュー管瓶に、50容量%メタノール水100ml、及び疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子0.5gを加え、振とう機にて30分間混合し、一晩静置した。湿潤して沈降した疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子を含むスラリーをスポイトで除去し、溶液上に浮遊した粉と液を70℃で2時間、120℃で15時間乾燥した。スクリュー瓶
管中に残った残留微粒子を秤量し、仕込み量(0.5g)に対する残留微粒子の質量(g)の百分率を浮遊率とした。
【0109】
(4)飽和水分量の測定
飽和水分量の測定は、下記方法により実施した。疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子10gを120℃、24時間乾燥させた後、シリカゲルの入ったデシケーター内で冷却した。続いて、デシケータ
ー内で冷却した微粒子を、25℃、50%RHの環境下に48時間静置して、微粒子の質量(Dwet)を秤量した。秤量後の微粒子を再び120℃で24時間乾燥し、微粒子の質量(Ddry)を秤量した。調湿前後の質量変化から、下記数式(5)により算出された値を飽和水分量とした。
飽和水分量=((Dwet−Ddry)/Ddry)×100 数式(5)
【0110】
(5)平均円形度
一次粒子の円形度の測定は、FE−SEMにより10万倍の視野で観察して得られた画像データを、画像解析ソフトにより、粒子の周囲長、及び投影面積を求め、既述した数式(2)より算出した。次に、得られた100個の一次粒子の円形度の累積頻度50%における値を平均円形度として求めた。
【0111】
(6)解砕強度の測定
疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の
解砕強度は、下記方法により算出した。まず、100℃で15時間真空乾燥した疎水化球状ポリアルキルシルセスキオキサン微粒子の粉末を、目開き1.4mmの篩いにかけ、続いて目開き0.71mmの篩にかけ、目開き0.71mmの篩に残った粉末を測定に使用した。この
粉末を上皿天秤に載せ、金属製のヘラで荷重をかけ、粉末が解れた時点での荷重を記録し、既述した数式(3)により解砕強度を計算した。
【0112】
(7)トナー被覆率、帯電安定性指標、及び環境安定性指標の評価方法
疑似トナー粒子としてメジアン径6.1μmのスチレンーアクリル樹脂粒子20gと、外添剤粒子として疎水化球状ポリアルキルシルセキスオキサン微粒子0.2g(1質量%)または0.8g(4質量%)とを100mlポリエチレン製容器に入れ、振とう機で60分混合した。これにより、擬似トナー(1質量%)および擬似トナー(4質量%)を得た。
【0113】
(トナー被覆率)
トナー粒子表面を被覆する外添剤粒子の被覆率(トナー被覆率)は、上記擬似トナー(1質量%)を、FE−SEMを用いて1万倍にて観察し、得られた画像データから、画像解析ソフトを使用して、スチレン−アクリル樹脂粒子の投影面積(S1)及びスチレン−アクリル樹脂粒子の表面に被覆した外添剤粒子の投影面積(S2)を求め、下記数式(6)よりトナー粒子表面の被覆率の平均値を算出した。トナー被覆率が高いほど、トナーの転写性や耐久性向上に効果的である。
トナー粒子表面の被覆率(%)= S2/S1×100 数式(6)
【0114】
(帯電安定性指標および環境安定性指標)
帯電安定性指標および環境安定性指標は、以下の手順にて求めた。まず、上記擬似トナー(1質量%)を1.0gづつ秤取り、パウダーテック(株)製フェライトキャリア99gと共に50mlスクリュー管瓶に入れたものを、3本用意し、それぞれ25℃・50%RH、30℃・85%RH(高温高湿条件)、10℃・15%RH(低温低湿条件)の各条件下で一晩調湿し、各試料の帯電量を、京セラケミカル(株)製ブローオフ式帯電量測定装置「TB−203」にて測定した。
【0115】
同様に、上記擬似トナー(4質量%)についても、1.0g秤取り、パウダーテック(株)製フェライトキャリア99gと共に50mlスクリュー管瓶に入れたものを、1本用意し、25℃・50%RH各条件下で一晩調湿し、試料の帯電量を、京セラケミカル(株)製ブローオフ式帯電量測定装置「TB−203」にて測定した。
【0116】
ここで、帯電安定性指標は、25℃・50%RH条件下で一晩調湿した擬似トナー(4質量%)の飽和帯電量(NN4)を、同じく25℃・50%RH条件下で一晩調湿した擬似トナー(1質量%)の飽和帯電量(NN1)で除した値の百分率で算出した(下記数式(7)参照)。
帯電安定性指標=NN4/NN1×100 数式(7)
【0117】
上記帯電安定性指標は、値が高いほど、トナーの帯電量が外添剤粒子の添加量による影響を受けにくいことを意味しており、個々のトナー粒子がもつ帯電量のバラツキが抑えられ、比較的狭い帯電量分布に制御することが可能となり、より高精細な画像形成を達成可能となる。係る疑似トナーの帯電安定性指標は、80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上である。
【0118】
また、環境安定性指標は、低温低湿条件で一晩調湿した擬似トナー(1質量%)の飽和帯電量(LL1)、及び高温高湿条件で一晩調湿した擬似トナー(1質量%)の飽和帯電量(HH
1)を用い、下記数式(8)より算出した。
環境安定性指標=(LL1−HH1)/(LL1+HH1)×2 数式(8)
【0119】
上記環境安定性指標は、値が小さいほど、湿度や温度などの環境変化による帯電量の変化が小さいことを意味する。係る疑似トナーの環境安定性指標は、0.65以下であることが好ましく、より好ましくは0.60以下である。
【0120】
(8)固形分濃度
各実施例および比較例の疎水化球状ポリ
アルキルシルセスキオキサン微粒子を作製する過程で得た球状ポリ
アルキルシルセスキオキサン微粒子分散液10gを秤量瓶に投入し、70℃で24時間の予備乾燥を実施したのち、100℃で24時間真空乾燥して、秤量瓶に残った固形分(球状ポリ
アルキルシルセスキオキサン微粒子)の乾燥重量を測定した。ここで固形分濃度は、下記数式(9)に基づいて求めた。
固形分濃度(%)=(固形分の乾燥重量/10g)×100 数式(9)
【0121】
<実施例1−1>
第1の工程
200mlナスフラスコに、水54.0g、及び触媒として酢酸0.01gを仕込み、30℃で攪拌した。ここにメチルトリメトキシシラン68.0gを加えて1時間撹拌して、原料溶液122.0gを得た。このとき、メチルトリメトキシシランの加水分解反応により生成するメタノール量は48.1gである。なお、当該アルコール量は、100%加水分解した場合における理論計算値であり、以下の各実施例および比較例についても同様である。
【0122】
第2の工程
1000mlナスフラスコに、25%安水2.8g、水128.0g、メタノール383.0gを投入して30℃で撹拌し、アルカリ性水系媒体を調製した。このアルカリ性水系媒体に、第1の工程で得た原料溶液122.0gを1分間かけて滴下した。この原料溶液を滴下後の混合液をそのまま25分撹拌して、微粒子前駆体の重縮合反応を進行させ重縮合反応液635.8gを得た。
【0123】
第3の工程
5000mlナスフラスコに水性溶液として水2500gを投入し、これを25℃で撹拌しながら第2の工程で得た重縮合反応液635.8gを1分間かけて滴下した。重縮合反応液が水に混ざるとすぐに白濁し、球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液3136gを得た。得られた分散液中に含まれる微粒子(固形分濃度)は1.1質量%であった。
【0124】
第4の工程
第3の工程で得た球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子分散液に、疎水化剤としてヘキサメチルジシラザン30.3gを添加して、25℃で48時間攪拌すると液の上層部に疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の粉体が浮遊する、粉体浮遊液が得られた。5分静置して浮かび上がった粉体を吸引濾過で回収し、100℃で24時間減圧乾燥して白色の疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末31.4gを得た。
【0125】
<実施例1−2>
第1の工程で使用するメチルトリメトキシシランを136.0gに変更した以外は、実施例1−1と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。このとき、メチルトリメトキシシランの加水分解反応により生成するメタノール量は96.1gである。
なお、第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は1.4質量%であった。
【0126】
<実施例1−3>
第1の工程で使用するメチルトリメトキシシランを34.0gに変更した以外は、実施例1−1と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。このとき、メチルトリメトキシシランの加水分解反応により生成するメタノール量は24.0gである。
なお、第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は0.7質量%であった。
【0127】
<実施例1−4>
第2の工程で使用する水を100g、メタノールを335gに変更し、第3の工程において水2100gに第2の工程で得た重縮合反応液559.8gを滴下した以外は、実施例1−1と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。第1の工程において、メチルトリメトキシシランの加水分解反応により生成するメタノール量は48.1gである。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
なお、第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は1.3質量%であった。
【0128】
<実施例1−5>
第3の工程で水1680gに第2の工程で得た重縮合反応液を滴下した以外は、実施例1−4と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
なお、第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は1.5質量%であった。
【0129】
<実施例1−6>
第3の工程で水1120gに第2の工程で得た重縮合反応液を滴下した以外は、実施例1−4と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
なお、第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は2.0質量%であった。
【0130】
<実施例1−7>
第1の工程の反応温度を10℃、反応時間を5時間、第2の工程の反応時間を15分とした以外は、実施例1−4と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0131】
<実施例1−8>
第1の工程の反応温度を50℃、反応時間を0.5時間、第2の工程の反応時間を50分とした以外は、実施例1−4と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0132】
<実施例1−9>
第2の工程で使用する25%安水を0.28gに変更して、反応時間を90分に変更し、第3の工程で撹拌した70℃の水2100gに、第2の工程で得た重縮合反応液557.3gを滴下した以外は、実施例1−4と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0133】
<実施例1−10>
第2の工程で使用する水を200g、メタノールを240gに変更し、反応温度を10℃、反応時間を60分に変更した以外は、実施例1−4と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0134】
<実施例1−11>
第2の工程で使用する水を50g、メタノールを390gに変更し、反応温度を50℃、反応時間を15分に変更した以外は、実施例1−4と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0135】
<実施例1−12>
第4の工程で反応時間を15時間とした以外は、実施例1−4と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0136】
<実施例1−13>
第4の工程で反応時間を24時間とした以外は、実施例1−4と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0137】
<実施例1−14>
第4の工程で反応時間を36時間とした以外は、実施例1−4と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0138】
<実施例1−15>
第3の工程において水を70℃で撹拌しながら重縮合反応液を滴下し、第4の工程で反応温度を70℃、反応時間を5時間とした以外は、実施例1−4と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0139】
<実施例1−16>
第2の工程で使用する水を28g、メタノールを168gに変更し、第3の工程で水1300gに第2の工程で得た重縮合反応液320.8gを滴下し、第4の工程において反応温度を70℃、反応時間を5時間とした以外は、実施例1−4と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
なお、第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は2.1質量%であった。
【0140】
<実施例1−17>
第2の工程で使用する水を20g、メタノールを85gに変更し、第3の工程で水880gに第2の工程で得た重縮合反応液227.3gを滴下し、第4の工程において反応温度を70℃、反応時間を5時間とした以外は、実施例1−4と同様に第1の工程〜第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
なお、第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は3.0質量%であった。
【0141】
<実施例1−18>
第1の工程
200mlナスフラスコに、水47.1g、及び触媒として酢酸0.087gを仕込み、30℃で撹拌した。ここにメチルトリエトキシシラン74.8gを加えて90分撹拌し、原料溶液122.0gを得た。このとき、メチルトリエトキシシランの加水分解反応により生成するエタノール量は58.0gである。
【0142】
第2の工程
1000mlナスフラスコに、25%安水22.5g、水80g、メタノール260gを投入して30℃で撹拌し、アルカリ性水系媒体を調製した。ここに第1の工程で得た原料溶液122gを1分間かけて滴下した。
この原料溶液を滴下後の混合液をそのまま20分撹拌して、微粒子前駆体の重縮合反応を進行させ重縮合反応液484.5gを得た。
【0143】
第3の工程
5000mlナスフラスコに水性溶液として水1700gを投入し、これを25℃で撹拌しながら第2の工程で得た重縮合反応液484.5gを1分間かけて滴下した。重縮合反応液が水に混ざるとすぐに白色の混合液が得られた。この混合液を25℃で24時間撹拌し、球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液2184.5gを得た。
【0144】
第4の工程
第3の工程で得た球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子分散液に、疎水化剤としてヘキサメチルジシラザン25.2gを添加して、25℃で48時間撹拌すると液の上層部に疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の粉体が浮遊する、粉体浮遊液が得られた。5分静置して浮かび上がった粉体を吸引ろ過で回収し、100℃で24時間減圧乾燥して白色の疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子26.6gを得た。
【0145】
<実施例1−19>
第1の工程
200mlナスフラスコに、水52.0g、及び触媒として酢酸0.094gを仕込み、30℃で撹拌した。ここにエチルトリメトキシシラン69.9gを加えて90分撹拌し、原料溶液122.0gを得た。このとき、エチルトリメトキシシランの加水分解反応により生成するメタノール量は44.7gである。
【0146】
第2の工程
1000mlナスフラスコに、25%安水24.7g、水130g、メタノール330gを投入して30℃で撹拌し、アルカリ性水系媒体を調製した。ここに第1の工程で得た原料溶液122gを1分間かけて滴下した。
この原料溶液を滴下後の混合液をそのまま20分撹拌して、微粒子前駆体の重縮合反応を進行させ重縮合反応液606.7gを得た。
【0147】
第3の工程
5000mlナスフラスコに水性溶液として水2200gを投入し、これを25℃で撹拌しながら第2の工程で得た重縮合反応液606.7gを1分間かけて滴下した。重縮合反応液が水に混ざるとすぐに白色の混合液が得られた。この混合液を25℃で24時間撹拌することで、球状ポリエチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液2806.7gを得た。
【0148】
第4の工程
第3の工程で得た球状ポリエチルシルセスキオキサン微粒子分散液に、疎水化剤としてヘキサメチルジシラザン34.0gを添加して、25℃で48時間撹拌すると液の上層部に疎水化球状ポリエチルシルセスキオキサン微粒子の粉体が浮遊する、粉体浮遊液が得られた。5分静置して浮かび上がった粉体を吸引ろ過で回収し、100℃で24時間減圧乾燥して白色の疎水化球状ポリエチルシルセスキオキサン微粒子35.8gを得た。
【0149】
<実施例1−20>
第2の工程で使用する水を245g、メタノールを190gに変更して原料溶液を滴下後の混合液を5分撹拌して重縮合反応を進行させ、第3の工程において水2100gに第2の工程で得た重縮合反応液559.8gを滴下した以外は、実施例1−4と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
なお、第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は1.3質量%であった。
【0150】
<実施例1−21>
第3の工程で水400gに第2の工程で得た重縮合反応液559.8gを滴下した以外は、実施例1−4と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は3.5質量%であった。
【0151】
<比較例1−1>
実施例1−1と同様にして第1の工程から第3の工程まで実施し、得られた分散液を40℃で減圧蒸留して150gのメタノールを留去した。液中から分離生成した析出物を、吸引濾過により回収し、得られたケークを100℃で24時間減圧乾燥して球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の粉末を得た。得られた粉末を乳鉢で30分間解砕処理し、各物性を測定した。解砕後の粉末であっても粒子が強固に凝集しており、出力を40Wと通常条件の2倍にして超音波を照射しても均一な2−プロパノール分散液を調製できず、遠心沈降法によるメジアン径、及び粒度分布測定を実施できなかった。また、疑似トナーの調製においても、トナー粒子表面を球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子で被覆できなかった。なお、FE−SEMにより粉末を100000倍の視野で観察し、粉末を構成する一次粒子を無作為に100個抽出して求めた平均粒子径は0.11μmであった。
【0152】
<比較例1−2>
実施例1−1と同様にして得た原料溶液122.0gを、25%安水14gおよび水498gからなる混合液に添加すると、すぐに溶液は白濁した。そのまま30℃で16時間撹拌後に溶液を5分間静置すると、フラスコの底に白色の沈殿物が生成した。この沈殿物を吸引濾過で回収し、得られたケークを100℃で24時間減圧乾燥させて球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の粉末を得た。得られた粉末を乳鉢で30分間解砕処理し、各物性を測定した。解砕後の粉末であっても粒子が強固に凝集しており、出力を40Wと通常条件の2倍にして超音波を照射しても均一な2−プロパノール分散液を調製できず、遠心沈降法によるメジアン径、及び粒度分布測定を実施できなかった。また、疑似トナーの調製においても、トナー粒子表面を球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子で被覆できなかった。なお、FE−SEMにより粉末を100000倍の視野で観察し、粉末を構成する一次粒子を無作為に100個抽出して求めた平均粒子径は0.39μmであった。
【0153】
<比較例1−3>
比較例1−2において、25%安水の量を2.8g、水の量を511gとした以外は同様に実施し、球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の粉末を得た。比較例1−1、比較例1−2の粉末と比べると解砕強度は小さかったが、メジアン径が0.57μmと大きいため、トナー粒子表面を球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子で被覆できなかった。
【0154】
<比較例1−4>
比較例1−2と同様に16時間反応させた反応溶液に、ヘキサメチルジシラザン30.3gを添加して48時間撹拌した。反応液中に生成した沈殿物を吸引濾過で回収して得たケークを100℃で24時間減圧乾燥した。メジアン径が0.39μmと大きく、トナー被覆率は不十分であった。
【0155】
<比較例1−5>
5Lセパラブルフラスコにメタノール1,040g及び15質量%アンモニア水150gを投入し、35℃で攪拌した。ここにテトラメトキシシラン1940gと5質量%アンモニア水700gをそれぞれ液中滴下した。滴下速度は、滴下が5時間で終了するように調節し、滴下終了後に0.5時間の熟成を行なった。続いてヘキサメチルジシラザン230gを添加し、35℃で1時間攪拌して疎水化処理した。得られた疎水性シリカ分散液を、75℃で溶媒留去し、得られたケークを100℃において24時間静置乾燥して疎水性ゾルーゲル法シリカ粒子の粉末を得、各物性を測定した。メジアン径が0.10μm、粒度分布指標が1.6であり、解砕強度は小さかったが、50容量%メタノール水における浮遊率は3質量%と小さく、25℃、50%RHの飽和水分量が7.4質量%と高くなり、疑似トナーの帯電安定
性指標及び環境安定
性指標は悪かった。
【0156】
<比較例1−6>
実施例1−4と同様に第1の工程から第2の工程まで実施し重縮合反応液559.8gを得た。そこに、疎水化剤としてヘキサメチルジシラザン30.3gを添加して25℃で撹拌したが、液中に凝集物が生成し、回収して100℃で24時間真空乾燥したが、独立球状のポリメチルシルセスキオキサン微粒子が得られなかった。
【0157】
<比較例1−7>
実施例1−4において、第1の工程を実施せず、第2の工程において原料溶液122.0gに換えてメチルトリメトキシシラン68.0gを滴下した以外は第2の工程から第4の工程を実施例1−4と同様に実施した。得られた沈殿物を回収して100℃で24時間真空乾燥したが、メジアン径が0.6μmと大きく、トナー被覆率は不十分であった。
【0158】
<実施例2−1>
第1の工程から第2の工程を実施例1−4と同様に実施し、559.8gの重縮合反応液を得た。
【0159】
第3の工程は、
図1に示す反応装置10を用いて実施した。なお、実施例2−1において使用したY字状の3分岐管反応器20は、第一の流路110の中心軸と第二の流路120の中心軸との成す角度(以下、「分岐角度」と称す場合がある)が90度であり、絞り部112(及び絞り部114)の流出口側から中心点Cまでの距離Rと絞り部径d1(及びd2)の比R/d1(及びR/d2)が12.5である。ここで、第一の流路110の入口側から重縮合反応液を接続部140近傍における流速3.5m/秒、第二の流路120の入口側から水性溶液として水を接続部140近傍における流速3.5m/秒(水の流速/重縮合反応液の流速=1、以下、流速比と言う)になるように、それぞれを同時に供給し、接続部140で衝突混合させた。そして、第三の流路130から排出された混合液、すなわち、球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液1119.6gを得た。この分散液に含まれる微粒子は2.6質量%であった。
【0160】
続く第4の工程においては、上記の分散液に疎水化剤としてヘキサメチルジシラザン14.9gを添加して、70℃で3時間反応を実施した。これにより得られた紛体浮遊液から紛体を吸引濾過し、続いて真空乾燥した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末33.0gを得た。
【0161】
<実施例2−2>
第3の工程において、重縮合反応液の流速を1.8m/秒、水の流速1.8m/秒とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0162】
<実施例2−3>
第3の工程において、重縮合反応液の流速を2.6m/秒、水の流速2.6m/秒とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0163】
<実施例2−4>
第3の工程において、重縮合反応液の流速を7.1m/秒、水の流速7.1m/秒とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0164】
<実施例2−5>
第3の工程において、重縮合反応液の流速を14.5m/秒、水の流速14.5m/秒とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0165】
<実施例2−6>
第3の工程において、重縮合反応液の流速を19m/秒、水の流速19m/秒とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0166】
<実施例2−7>
第3の工程において、重縮合反応液の流速を3.5m/秒、水の流速1.4m/秒(流速比0.4)とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
なお、第3の工程では、783.7gの球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子分散液を得た。第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は3.8質量%であった。
【0167】
<実施例2−8>
第3の工程において、重縮合反応液の流速を3.5m/秒、水の流速7.1m/秒(流速比2)とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
なお、第3の工程では、1679.4gの球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子分散液を得た。第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は1.7質量%であった。
【0168】
<実施例2−9>
第3の工程において、重縮合反応液の流速を3.5m/秒、水の流速13m/秒(流速比3.8)とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
なお、第3の工程では、2687.0gの球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子分散液を得た。第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は1.1質量%であった。
【0169】
<実施例2−10>
第3の工程において、第一の流路110の中心軸と第二の流路120の中心軸との成す分岐角度が60度のY字状の3分岐管反応器20を使用した以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0170】
<実施例2−11>
第3の工程において、第一の流路110の中心軸と第二の流路120の中心軸との成す分岐角度が120度のY字状の3分岐管反応器20を使用した以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0171】
<実施例2−12>
第1の工程から第2の工程を実施例1−16と同様に実施した後、第3の工程から第4の工程を実施例2−1と同様に実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0172】
<実施例2−13>
第1の工程から第2の工程を実施例1−17と同様に実施した後、第3の工程から第4の工程を実施例2−1と同様に実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0173】
<実施例2−14>
第3の工程において、R/d1(及びR/d2)が4である3分岐管反応器20を用いた以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0174】
<実施例2−15>
第3の工程において、R/d1(及びR/d2)が20である3分岐管反応器20を用いた以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0175】
<実施例2−16>
第4の工程において、反応温度を25℃、反応時間を48時間とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0176】
<実施例2−17>
第4の工程において、疎水化剤であるヘキサメチルジシラザンの添加量を29.8gとした以外は、実施例2−16と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0177】
<実施例2−18>
第4の工程において、疎水化剤であるヘキサメチルジシラザンの添加量を2.7g、疎水化処理時間を4.5時間とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0178】
<実施例2−19>
第4の工程において、疎水化剤であるヘキサメチルジシラザンの添加量を7.5g、疎水化処理時間を4.5時間とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0179】
<実施例2−20>
第4の工程において、疎水化処理時間を1時間とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0180】
<実施例2−21>
第4の工程において、疎水化処理時間を2時間とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0181】
<実施例2−22>
第4の工程において、疎水化処理時間を5時間とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0182】
<実施例2−23>
第4の工程において、疎水化剤であるヘキサメチルジシラザンの添加量を30.3gとした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0183】
<実施例2−24>
第1の工程から第3の工程までは実施例2−12と同様に実施し、641.6gの球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子分散液を得た。第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は5.3質量%であった。
続いて、第4の工程において、疎水化剤であるヘキサメチルジシラザンの添加量を7.6g、疎水化処理時間を4.5時間とした以外は実施例2−12と同様に実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0184】
<実施例2−25>
第3の工程において、重縮合反応液の流速を3.5m/秒、水の流速1.4m/秒(流速比0.4)とした以外は、実施例2−24と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
なお、第3の工程において、449.1gの球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子分散液を得た。第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は7.5質量%であった。
【0185】
<実施例2−26>
第3の工程において、重縮合反応液の流速を3.5m/秒、水の流速2.5m/秒(流速比0.7)とした以外は、実施例2−24と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
なお、第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は6.1質量%であった。
【0186】
<実施例2−27>
第3の工程において、重縮合反応液の流速を1.4m/秒、水の流速1.4m/秒とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0187】
<実施例2−28>
第3の工程において、重縮合反応液の流速を25m/秒、水の流速25m/秒とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0188】
<実施例2−29>
第3の工程において、重縮合反応液の流速を3.5m/秒、水の流速17.5m/秒(流速比5)とした以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
なお、第3の工程では、3358.8gの球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子分散液を得た。第3の工程で得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液中の微粒子量(固形分濃度)は0.9質量%であった。
【0189】
<実施例2−30>
第4の工程において、疎水化剤であるヘキサメチルジシラザンの添加量を2.7g、疎水化処理時間を4.5時間とした以外は、実施例2−29と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0190】
<実施例2−31>
第3工程において、R/d1(及びR/d2)が30であるY字管反応器を用いた以外は、実施例2−1と同様に第1の工程から第4の工程を実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0191】
<実施例2−32>
第1の工程から第2の工程を実施例1−20と同様に実施した後、第3の工程から第4の工程を実施例2−1と同様に実施した。これにより疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。
【0192】
<比較例2−1>
第2の工程を実施しなかった以外は実施例2−1と同様に実施した。しかし球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子が得られず、各種物性測定が出来なかった。
【0193】
<比較例2−2>
実施例2−1と同様にして第1の工程から第3の工程まで実施し、得られた分散液を40℃で減圧蒸留して150gのメタノールを留去した。液中から分離生成した析出物を、吸引濾過により回収し、得られたケークを100℃で24時間減圧乾燥して球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の粉末を得た。得られた粉末を乳鉢で30分間解砕処理し、各物性を測定した。解砕後の粉末であっても粒子が強固に凝集しており、出力を40Wと通常条件の2倍にして超音波を照射しても均一な2−プロパノール分散液を調製できず、遠心沈降法によるメジアン径、及び粒度分布測定を実施できなかった。また、疑似トナーの調製においても、トナー粒子表面を球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子で被覆できなかった。なお、FE−SEMにより粉末を100000倍の視野で観察し、粉末を構成する一次粒子を無作為に100個抽出して求めた平均粒子径は0.08μmであった。
【0194】
(評価結果等)
上記の各実施例および比較例について得られた微粒子の各種評価結果と、微粒子を製造する際の固形分濃度やその他の製造条件とを表1〜表7に示す。
【0195】
【表1】
【0196】
【表2】
【0197】
【表3】
【0198】
【表4】
【0199】
【表5】
【0200】
【表6】
【0201】
【表7】
【0202】
<実施例3>
実施例2−12の第3の工程において得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液(固形分濃度5.3質量%)に対して、疎水化剤としてヘキサメチルジシラザンを添加し、70℃で所定の時間、撹拌した。続いて、液の上層部(粉体浮遊液)を実施例1−1と同様にして、回収、減圧乾燥を行うことで疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末については、疎水化度および解砕強度を評価した。結果を表8に示す。なお、表8中、上段の値は疎水化度、下段の値は解砕強度である。また、疎水化処理は、表8中に示す処理時間(撹拌時間)の欄に示す値と、HMDS添加量の欄に示す値との組み合わせで実施した。ここで、表8中の「HMDS添加量」は、分散液中の固形分100質量部当たりのヘキサメチルジシラザンの添加量(質量部)を意味する。
【0203】
表8の反応時間1.5
時間・HMDS添加量100質量部の結果と、反応時間4.5時間・HMDS添加量25質量部の結果との比較から、HMDS添加量を1/4としても高い疎水化度を維持しつつ、さらに解砕強度が大幅に低下する(粉末が解れやすくなる)ことが判った。
【0204】
【表8】
【0205】
<実施例4>
実施例2−12の第3の工程において得られた球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子を含む分散液(固形分濃度5.3質量%)に対して、疎水化剤としてヘキサメチルジシラザンを添加し、25℃で所定の時間、撹拌した。続いて、液の上層部(粉体浮遊液)を実施例1−1と同様にして、回収、減圧乾燥を行うことで疎水化球状ポリメチルシルセスキオキサン微粒子の乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末については、疎水化度および解砕強度を評価した。結果を表9に示す。なお、表9中、上段の値は疎水化度、下段の値は解砕強度である。また、疎水化処理は、表9中に示す処理時間(撹拌時間)の欄に示す値と、HMDS添加量の欄に示す値との組み合わせで実施した。ここで、表9中の「HMDS添加量」は、分散液中の固形分100質量部当たりのヘキサメチルジシラザンの添加量(質量部)を意味する。
【0206】
表8の反応時間1.5
時間・HMDS添加量100質量部の結果と、表9の反応時間72時間・HMDS添加量100質量部の結果との比較から、処理温度を25℃から70℃に高くすることで、同等の疎水化度を有し、且つ解砕強度の低い(粉末が解れやすくなる)粉末が得られることが判った。
【0207】
【表9】