特許第6117445号(P6117445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6117445光ファイババンドル構造および光ファイバ接続構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117445
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】光ファイババンドル構造および光ファイバ接続構造
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/04 20060101AFI20170410BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20170410BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20170410BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   G02B6/04 B
   G02B6/02 461
   G02B6/26
   G02B6/42
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-540243(P2016-540243)
(86)(22)【出願日】2015年8月4日
(86)【国際出願番号】JP2015072068
(87)【国際公開番号】WO2016021589
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2016年8月23日
(31)【優先権主張番号】特願2014-162169(P2014-162169)
(32)【優先日】2014年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/革新的光通信インフラの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健吾
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 恒聡
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−286081(JP,A)
【文献】 特開2011−145562(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/121320(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/04
6/255
6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイババンドル構造であって、
複数の光ファイバ心線と、
複数の前記光ファイバ心線を保持するキャピラリと、
を具備し、
前記キャピラリの孔の形状が略円形であり、
前記光ファイバ心線は、信号光用光ファイバと、前記信号光用光ファイバと同径のダミーファイバとからなり、前記ダミーファイバが前記信号光用光ファイバよりも短く、
光ファイババンドル構造の径方向断面において、前記光ファイバ心線が最密配置で配置され、隣り合う光ファイバ心線同士が接触する一の方向をX方向とし、前記X方向と垂直な方向をY方向とした際に、
前記X方向に前記信号光用光ファイバを含む複数の前記光ファイバ心線が整列する信号光用光ファイバ群と、複数の前記ダミーファイバが前記X方向に整列するダミーファイバ群とが、それぞれ前記Y方向に複数段に積層され
前記信号光用光ファイバは前記X方向に所定の間隔で配置されるとともに、前記Y方向に所定の間隔で配置され、前記径方向断面において前記信号光用光ファイバが格子状に配列されていることを特徴とする光ファイババンドル構造。
【請求項2】
前記キャピラリ内には19本の前記光ファイバ心線が略正六角形に最密に配置され
前記キャピラリの孔の内径Dは、前記光ファイバ心線の径をdとしたとき、
5d≦D<5.5dであることを特徴とする請求項1記載の光ファイババンドル構造。
【請求項3】
前記キャピラリ内には37本の前記光ファイバ心線が略正六角形に最密に配置され
前記キャピラリの孔の内径Dは、前記光ファイバ心線の径をdとしたとき、
7d≦D<7.4dであることを特徴とする請求項1記載の光ファイババンドル構造。
【請求項4】
前記信号光用光ファイバ群は、前記信号光用光ファイバと前記ダミーファイバからなり、前記信号光用光ファイバが前記X方向に所定の間隔で配置されることを特徴とする請求項1記載の光ファイババンドル構造。
【請求項5】
マルチコアファイバと光ファイババンドル構造との接続構造であって、
前記マルチコアファイバは、
複数のコアを有し、前記コアが、H方向に所定の間隔で配置されるとともに、前記H方向に略垂直なV方向に所定の間隔で格子状に配置され、
前記光ファイババンドル構造は、
複数の光ファイバ心線と、複数の前記光ファイバ心線を保持するキャピラリと、を具備し、
前記キャピラリの孔の形状が略円形であり、
前記光ファイバ心線は、信号光用光ファイバと、前記信号光用光ファイバと同径のダミーファイバとからなり、
光ファイババンドル構造の径方向断面において、前記光ファイバ心線が最密配置で配置され、隣り合う光ファイバ心線同士が接触する一の方向をX方向とし、前記X方向と垂直な方向をY方向とした際に、前記X方向に前記信号光用光ファイバを含む複数の前記光ファイバ心線が整列する信号光用光ファイバ群と、複数の前記ダミーファイバが前記X方向に整列するダミーファイバ群とが、それぞれ前記Y方向に複数段に積層され、
前記信号光用光ファイバは前記X方向に所定の間隔で配置されるとともに、前記Y方向に所定の間隔で配置され、前記径方向断面において前記信号光用光ファイバが格子状に配列されており、
前記X方向と前記H方向とを対応させるとともに、前記Y方向と前記V方向とを対応させて、前記マルチコアファイバの前記コアと、前記信号光用光ファイバ群の前記信号光用光ファイバのコアとが光接続されることを特徴とする光ファイバ接続構造。
【請求項6】
受発光素子と光ファイババンドル構造との接続構造であって、
前記受発光素子は、
複数の受発光部を有し、前記受発光部が、H方向に所定の間隔で配置されるとともに、前記H方向に略垂直なV方向に所定の間隔で格子状に配置され、
前記光ファイババンドル構造は、
複数の光ファイバ心線と、複数の前記光ファイバ心線を保持するキャピラリと、を具備し、
前記キャピラリの孔の形状が略円形であり、
前記光ファイバ心線は、信号光用光ファイバと、前記信号光用光ファイバと同径のダミーファイバとからなり、
光ファイババンドル構造の径方向断面において、前記光ファイバ心線が最密配置で配置され、隣り合う光ファイバ心線同士が接触する一の方向をX方向とし、前記X方向と垂直な方向をY方向とした際に、前記X方向に前記信号光用光ファイバを含む複数の前記光ファイバ心線が整列する信号光用光ファイバ群と、複数の前記ダミーファイバが前記X方向に整列するダミーファイバ群とが、それぞれ前記Y方向に複数段に積層され、
前記信号光用光ファイバは前記X方向に所定の間隔で配置されるとともに、前記Y方向に所定の間隔で配置され、前記径方向断面において前記信号光用光ファイバが格子状に配列されており、
前記X方向と前記H方向とを対応させるとともに、前記Y方向と前記V方向とを対応させて、前記受発光素子の前記受発光部と、前記信号光用光ファイバ群の前記信号光用光ファイバのコアとが光接続されることを特徴とする光ファイバ接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格子状にコアが配列されたマルチコアファイバ等と接続可能な、光ファイババンドル構造等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信におけるトラフィックの急増により、現状で用いられているシングルコアの光ファイバにおいて伝送容量の限界が近づいている。そこで、さらに通信容量を拡大する手段として、一つのファイバに複数のコアが形成されたマルチコアファイバが提案されている。
【0003】
マルチコアファイバが伝送路として用いられた場合、このマルチコアファイバの各コア部は、他のマルチコアファイバの対応するコア部や、それぞれ別の光ファイバや光素子等と接続されて伝送信号を送受する必要がある。このようなマルチコアファイバとシングルコアファイバとを接続する方法として、マルチコアファイバと、そのマルチコアファイバのコア部に対応する位置にシングルコアの光ファイバが配列されたバンドルファイバとを接続し、伝送信号を送受信する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−47604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、例えば、データセンタ等に使用されるマルチコアファイバとして、コアが複数段に格子状に配置されたものが検討されている。したがって、このようなマルチコアファイバに接続可能なファンアウト機構が要求されている。
【0006】
ファンアウト機構としては、例えば、多連の孔を持つマルチホールキャピラリを用いる方法がある。キャピラリのそれぞれの孔に光ファイバを挿入し、固定することで、光ファイバを所定の位置に配置することができる。
【0007】
しかしながら、このようなマルチホールキャピラリは、穴径及び穴のピッチが±2〜3um程度のばらつきを生じる。このため、必要な穴位置等の寸法精度(±1μm以下)を実現することができない。
【0008】
また、マルチコアファイバの外径は、曲げ許容等の問題からあまり太くする事ができないため、マルチコアファイバのコア間のピッチは40〜50um程度と狭くする必要がある。しかし、マルチホールキャピラリを用いる場合には、隣り合う孔の壁として、最低でも20um程度の厚みが必要であるため、壁の厚みを考慮すると、孔径を20〜30um程度にする必要がある。このため、使用するファイバ径を孔径以下とする必要がある。しかし、このような細径の光ファイバは、細すぎて取り扱い性が非常に悪い。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、格子配列されたコアを有するマルチコアファイバ等と接続することが可能な、光ファイババンドル構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、光ファイババンドル構造であって、複数の光ファイバ心線と、複数の前記光ファイバ心線を保持するキャピラリと、を具備し、前記キャピラリの孔の形状が略円形であり、前記光ファイバ心線は、信号光用光ファイバと、前記信号光用光ファイバと同径のダミーファイバとからなり、前記ダミーファイバが前記信号光用光ファイバよりも短く、光ファイババンドル構造の径方向断面において、前記光ファイバ心線が最密配置で配置され、隣り合う光ファイバ心線同士が接触する一の方向をX方向とし、前記X方向と垂直な方向をY方向とした際に、前記X方向に前記信号光用光ファイバを含む複数の前記光ファイバ心線が整列する信号光用光ファイバ群と、複数の前記ダミーファイバが前記X方向に整列するダミーファイバ群とが、それぞれ前記Y方向に複数段に積層され、前記信号光用光ファイバは前記X方向に所定の間隔で配置されるとともに、前記Y方向に所定の間隔で配置され、前記径方向断面において前記信号光用光ファイバが格子状に配列されていることを特徴とする光ファイババンドル構造である。
【0013】
前記光ファイババンドル構造の前記キャピラリ内には19本の前記光ファイバ心線が略正六角形に最密に配置され、前記キャピラリの孔の内径Dは、前記光ファイバ心線の径をdとしたとき、5d≦D<5.5dであってもよい。
【0014】
前記光ファイババンドル構造の前記キャピラリ内には37本の前記光ファイバ心線が略正六角形に最密に配置され、前記キャピラリの孔の内径Dは、前記光ファイバ心線の径をdとしたとき、7d≦D<7.4dであってもよい。
【0015】
前記信号光用光ファイバ群は、前記信号光用光ファイバと前記ダミーファイバからなり、前記信号光用光ファイバが前記X方向に所定の間隔で配置されてもよい。
【0016】
第1の発明によれば、信号光用光ファイバ群とダミーファイバ群とが積層されるため、信号光用光ファイバ群内での光ファイバの整列方向(X方向)に信号光用光ファイバが配置されるとともに、これと垂直な方向(Y方向)にも信号光用光ファイバが配置されるため、信号光用光ファイバを格子状に配置することができる。このため、格子状のコア配置を持つマルチコアファイバや受発光素子と光接続することができる。
【0017】
また、この際、マルチホールキャピラリを用いないため、孔同士の間の壁厚みを考慮する必要がなく、信号光用光ファイバの径をコアピッチと略一致させることができる。このため、信号光用光ファイバ等の取扱い性にも優れる。
【0018】
また、円形の孔を有するキャピラリにバンドル構造を挿入した際、それぞれの孔のサイズを最適化することで、孔の内部で、バンドル構造を構成する光ファイバの移動を防止することができる。
【0019】
また、信号光用光ファイバ群が、信号光用光ファイバとダミーファイバからなり、信号光用光ファイバ同士の間に、ダミーファイバが配置されることで、信号光用光ファイバのY方向ピッチとX方向ピッチとの関係に対し、本発明の適用範囲を広げることができる。
【0020】
第2の発明は、マルチコアファイバと光ファイババンドル構造との接続構造であって、前記マルチコアファイバは、複数のコアを有し、前記コアが、H方向に所定の間隔で配置されるとともに、前記H方向に略垂直なV方向に所定の間隔で格子状に配置され、前記光ファイババンドル構造は、複数の光ファイバ心線と、複数の前記光ファイバ心線を保持するキャピラリと、を具備し、前記キャピラリの孔の形状が略円形であり、前記光ファイバ心線は、信号光用光ファイバと、前記信号光用光ファイバと同径のダミーファイバとからなり、光ファイババンドル構造の径方向断面において、前記光ファイバ心線が最密配置で配置され、隣り合う光ファイバ心線同士が接触する一の方向をX方向とし、前記X方向と垂直な方向をY方向とした際に、前記X方向に前記信号光用光ファイバを含む複数の前記光ファイバ心線が整列する信号光用光ファイバ群と、複数の前記ダミーファイバが前記X方向に整列するダミーファイバ群とが、それぞれ前記Y方向に複数段に積層され、前記信号光用光ファイバは前記X方向に所定の間隔で配置されるとともに、前記Y方向に所定の間隔で配置され、前記径方向断面において前記信号光用光ファイバが格子状に配列されており、前記X方向と前記H方向とを対応させるとともに、前記Y方向と前記V方向とを対応させて、前記マルチコアファイバの前記コアと、前記信号光用光ファイバ群の前記信号光用光ファイバのコアとが光接続されることを特徴とする光ファイバ接続構造である。
【0021】
また、受発光素子と光ファイババンドル構造との接続構造であって、前記受発光素子は、複数の受発光部を有し、前記受発光部が、H方向に所定の間隔で配置されるとともに、前記H方向に略垂直なV方向に所定の間隔で格子状に配置され、前記光ファイババンドル構造は、複数の光ファイバ心線と、複数の前記光ファイバ心線を保持するキャピラリと、を具備し、前記キャピラリの孔の形状が略円形であり、前記光ファイバ心線は、信号光用光ファイバと、前記信号光用光ファイバと同径のダミーファイバとからなり、光ファイババンドル構造の径方向断面において、前記光ファイバ心線が最密配置で配置され、隣り合う光ファイバ心線同士が接触する一の方向をX方向とし、前記X方向と垂直な方向をY方向とした際に、前記X方向に前記信号光用光ファイバを含む複数の前記光ファイバ心線が整列する信号光用光ファイバ群と、複数の前記ダミーファイバが前記X方向に整列するダミーファイバ群とが、それぞれ前記Y方向に複数段に積層され、前記信号光用光ファイバは前記X方向に所定の間隔で配置されるとともに、前記Y方向に所定の間隔で配置され、前記径方向断面において前記信号光用光ファイバが格子状に配列されており、前記X方向と前記H方向とを対応させるとともに、前記Y方向と前記V方向とを対応させて、前記受発光素子の前記受発光部と、前記信号光用光ファイバ群の前記信号光用光ファイバのコアとが光接続されることを特徴とする光ファイバ接続構造である。
【0022】
第2の発明によれば、格子状のコアを有するマルチコアファイバまたは、格子状の受発光部を有する受発光素子を効率よくファンアウトすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、格子配列されたコアを有するマルチコアファイバ等と接続することが可能な、光ファイババンドル構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】光ファイバ接続構造1を示す図。
図2a】光ファイバ接続構造1を示す断面図であり、図1のA−A線断面。
図2b】光ファイバ接続構造1を示す断面図であり、図1のB−B線断面。
図3】信号光用光ファイバ21のコア配置の一例を示す図。
図4a】信号光用光ファイバ21のコア配置の他の例を示す図。
図4b】信号光用光ファイバ21のコア配置の他の例を示す図。
図5】バンドル構造5を示す断面図。
図6】バンドル構造5aを示す断面図。
図7a】バンドル構造5bを示す断面図。
図7b】バンドル構造5bを示す断面図。
図8a】バンドル構造5cを示す断面図。
図8b】バンドル構造5dを示す断面図。
図9】光ファイバ接続構造1aを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、光ファイバ接続構造1について説明する。図1は光ファイバ接続構造1の側面図、図2aは、図1のA−A線断面図、図2bは、図1のB−B線断面図である。光ファイバ接続構造1は、マルチコアファイバ3と、複数の光ファイバ心線7がバンドルされたバンドル構造5との接続構造である。
【0026】
図2aに示すように、マルチコアファイバ3は、キャピラリ11に挿入されて樹脂等で固定される。マルチコアファイバ3は、複数のコア15が所定の間隔で配置され、周囲をクラッド13で覆われたファイバである。図に示した例では、コア15は、2列に配置され、それぞれの列において、4つのコア15が等間隔で一列に整列する(図中H方向)。また、各列におけるコア15の配列方向とは直交する方向(図中V方向)に、コア15が配列する。すなわち、コア15は、格子状に配列される。なお、各列におけるコア15のピッチ(コア15同士の最短ピッチ)は例えば40〜50μm程度である。
【0027】
図2bに示すように、バンドル構造5は、キャピラリ9に挿入されて樹脂等によって固定される。バンドル構造5では、同一径の光ファイバ心線7が、最密に配置される。なお、本発明において、光ファイバ心線7が最密に配置されるとは、隣り合う光ファイバ心線の中心を結ぶ線が略正三角形を形成するように、隣り合う光ファイバ心線同士が接触するように配置されることをいう。但し、光ファイバ心線7同士の間に、接着剤などの接着層が2μm以下の厚さで形成される場合も、光ファイバ心線7同士が接触するものとする。
【0028】
光ファイバ心線7は、信号光用光ファイバ21とダミー光ファイバ23から構成される。したがって、以下の説明では、信号光用光ファイバ21とダミー光ファイバ23を総称して、光ファイバ心線7と称する。信号光用光ファイバ21は、信号光を伝送する光ファイバである。ダミー光ファイバ23は、信号光の伝送には用いられない光ファイバである。なお、ダミー光ファイバ23は、コアを有さなくてもよく、単一の材質から成るものであってもよい。信号光用光ファイバ21とダミー光ファイバ23は、同一径のものが使用される。
【0029】
なお、マルチコアファイバ3との対向面においては、信号光用光ファイバ21の端面とダミー光ファイバ23の端面は、同一面上に配置される。一方、ダミー光ファイバ23の長さは、信号光用光ファイバ21の長さよりも短い。例えば、キャピラリ9から露出するダミー光ファイバ23の長さは10〜20cm程度であり、キャピラリ9から露出する信号光用光ファイバ21の長さは、1〜2m程度である。すなわち、少なくとも、ダミー光ファイバ23の長さは、信号光用光ファイバ21の長さの半分以下である。
【0030】
バンドル構造5は、信号光用光ファイバ21を含む複数の光ファイバ心線が整列する複数の信号光用光ファイバ群17と、ダミー光ファイバ23からなるダミーファイバ群19が複数段に積層されて構成される。信号光用光ファイバ群17においては、信号光用光ファイバ21が互いに接触する方向(図中X方向)に整列する。同様に、ダミーファイバ群19においては、ダミー光ファイバ23が互いに接触する方向(図中X方向)に整列する。信号光用光ファイバ群17とダミーファイバ群19は、各ファイバ群を構成する光ファイバ心線7の整列方向に垂直な方向(図中Y方向)に積層される。
【0031】
前述した様に、径方向断面において、光ファイバ心線7は最密に配置されている。このため、信号光用光ファイバ群17とダミーファイバ群19は、互いにX方向に半ピッチずれて、一方の群の光ファイバ心線7が、他方の群の光ファイバ心線7の間に嵌りこんで接触する。
【0032】
信号光用光ファイバ群17と信号光用光ファイバ群17の間には、ダミーファイバ群19が配置される。このため、ダミーファイバ群19を挟んで対向するそれぞれの信号光用光ファイバ群17を構成する信号光用光ファイバ21同士のX方向位置が一致する。すなわち、それぞれの信号光用光ファイバ群17の信号光用光ファイバ21は、各ファイバ群における光ファイバ心線7の整列方向(X方向)と直交する方向にも配列される。このように、信号光用光ファイバ21のコア25は、格子状に配列される。
【0033】
信号光用光ファイバ21の本数は、マルチコアファイバ3のコア15の数と同一である。なお、本発明において、信号光用光ファイバ21の本数と、コア15の個数は、図示した例には限られない。
【0034】
また、信号光用光ファイバ21のコア25のピッチ(隣り合う信号光用光ファイバ21同士のコアピッチ)は、マルチコアファイバ3のコア15のピッチとほぼ一致する。すなわち、コア15のピッチと、信号光用光ファイバ21の外径は略一致する。
【0035】
バンドル構造5と、マルチコアファイバ3とは、接着または融着により接続され、信号光用光ファイバ21のコア25とマルチコアファイバ3のコア15とが光接続される。この際、コア25とコア15のモードフィールド径はほぼ一致する。なお、マルチコアファイバ3、信号光用光ファイバ21およびダミー光ファイバ23は例えば石英ガラス製である。
【0036】
次に、信号光用光ファイバ21のコア25の配列についてより詳細に説明する。図3は、信号光用光ファイバ21のコア25の配列を示す図である。前述した様に、信号光用光ファイバ群17では、信号光用光ファイバ21が一列に整列する。また、信号光用光ファイバ群17における、信号光用光ファイバ21の整列方向と直交する方向に、他の信号光用光ファイバ群17の信号光用光ファイバ21が配列する。
【0037】
この際、一つの信号光用光ファイバ群17内におけるコア25間のピッチをPとする。また、複数の信号光用光ファイバ群17にまたがる方向におけるコア25のピッチをPとする。この場合、
=3^(1/2)・P
の関係が成立する。
【0038】
すなわち、図2aにおける、マルチコアファイバ3のH方向をバンドル構造5のX方向に対応させ、マルチコアファイバ3のV方向をバンドル構造5のY方向に対応させた状態で、マルチコアファイバ3のコア15の配列が、上式を満たした場合には、本発明が適用可能となる。
【0039】
また、バンドル構造5における信号光用光ファイバ21の配置を変えることで、上式の関係以外のコア配置にも適用が可能である。例えば、図4aは、ダミーファイバ群19を3段積層し、その上下に信号光用光ファイバ群17を配置した状態を示す図である。
【0040】
この場合には、
=3^(1/2)・P・m (但し、m=1,2,3,・・・・)
の関係が成立する。
【0041】
このように、本発明は、Pが3^(1/2)・Pの整数倍となる場合にも適用が可能である。
【0042】
また、図4bは、信号光用光ファイバ群17が、信号光用光ファイバ21のみではなく、ダミー光ファイバ23を含む場合を示す図である。図示した例では、信号光用光ファイバ群17において、信号光用光ファイバ21とダミー光ファイバ23とが一つ置きに交互に配置される。
【0043】
この場合には、
=3^(1/2)・P/n (但し、n=1,2,3,・・・・)
の関係が成立する。
【0044】
このように、本発明は、Pが3^(1/2)・Pの(1/整数)倍となる場合にも適用が可能である。
【0045】
すなわち、本発明では、信号光用光ファイバ群17の間に挟まれるダミーファイバ群19の段数を適宜設定し(但し奇数段)、また、信号光用光ファイバ群17において、信号光用光ファイバ21で挟まれるダミー光ファイバ23の本数を適宜設定することで、
=3^(1/2)・P・m/n
(但し、m,n=1,2,3,・・・)
の関係が成立する場合に適用が可能である。このように、信号光用光ファイバ群17は、信号光用光ファイバ21を含む複数の光ファイバ心線が整列すれば、信号光用光ファイバ21以外の光ファイバ心線を含んでもよい。
【0046】
次に、バンドル構造5の製造方法の一例について説明する。まず、所定本数の光ファイバ心線7の被覆を除去してキャピラリ9に挿入する。この際、キャピラリ9の端部からは、光ファイバ心線7の先端がそれぞれ同一長さだけ出るように(例えば10mm程度)、光ファイバ心線7をキャピラリ9に挿入する。なお、キャピラリ9は例えば光ファイバ心線7に仮固定される。
【0047】
キャピラリ9の端部から突出する光ファイバ心線7の先端は、あらかじめ容器に溜められた接着剤に浸けられる。接着剤は例えば溶液系の接着剤であり、合成樹脂等の高分子固形分が、水、アルコール、有機溶剤などの溶媒に溶け込んだ液状のものである。このような溶液系接着剤では、溶媒が気化した後に残留する溶質が硬化することで接着される。
【0048】
なお、接着剤としては、通常使用される溶質濃度よりもさらに希釈されたものが望ましい。このようにすることで、接着剤の粘度を下げ、また、残留する溶質量を抑えることができる。このため、光ファイバ心線同士の隙間の接着層を薄くし、光ファイバ心線7同士の間隔をより精度よく一定にすることができる。また、硬化時に接着剤が収縮する事で、光ファイバをより密接に引き寄せ合う効果が得られる。
【0049】
ここで、キャピラリ9内部では、光ファイバ心線7は略最密に近い状態で挿入されるが、光ファイバ心線7の先端が接着剤に浸けられる前の状態では、一部では互いの間に隙間が形成したり、また他の部位では互いが密着したりするなど、完全な最密配置(一定のコア間隔)とすることは困難である。
【0050】
しかし、接着剤の粘度は低く、表面張力(毛細管現象)によって接着剤が光ファイバ心線7同士の隙間に吸い上げられると、互いの表面張力によって光ファイバ心線7同士が密着される。すなわち、光ファイバ心線7同士の間に多少不均一な隙間が形成されていても、その隙間には接着剤が吸い上げられて、光ファイバ心線7同士が密着される。
【0051】
これにより、光ファイバ心線7同士が確実に最密配置となるとともに、この状態で接着剤を硬化させることで互いを接着することができる。
【0052】
このように光ファイバ心線7同士が最密状態で互いに接着された状態で、当該部位をキャピラリ9に接着する。次いで、キャピラリ9より突出する光ファイバ心線7およびキャピラリ9の一部を研磨する。以上によりバンドル構造5が形成される。なお、バンドル構造5の製造方法の詳細は、WO2012/121320に記載されている。
【0053】
なお、最密配置された光ファイバ心線の端面から光を導入し、他方から検出することで、それぞれの光ファイバ心線7の配置を知ることができる。したがって、信号光用光ファイバ21の配置に当たる光ファイバ心線7を残し、ダミー光ファイバ23の配置に当たる光ファイバ心線7を所定長で切断することで、信号光用光ファイバ21とダミー光ファイバ23とを区別することができる。
【0054】
図5は、バンドル構造5をキャピラリ9の孔に挿入した状態を示す図である。前述した様に、バンドル構造5は、光ファイバ心線7を適切な配置で最密配置したものである。ここで、バンドル構造5における光ファイバ心線7の配置がずれてしまうと、マルチコアファイバ3のコア15の配置と異なる配置となる。したがって、最密配置された光ファイバ心線7同士が、接着剤が完全に硬化するまでの間に、他の位置に移動することを防止する必要がある。
【0055】
そこで、本発明では、キャピラリ9の孔の形状(サイズ)を規定することが望ましい。本実施形態では、キャピラリ9の孔は、略矩形(角部にR形状を有するが、光ファイバ心線7の半径に対して十分に小さな曲率半径とする)である。この際、各ファイバ群内での光ファイバ心線7の整列方向(図2bのX方向)を、孔の幅方向とし、これと直交する方向(図2bのY方向)を、孔の高さ方向とする。
【0056】
また、光ファイバ心線7の外径をd、それぞれのファイバ群(それぞれの段)におけるX方向に整列する光ファイバ心線7の最大数をn、Y方向に積層される各ファイバ群の総段数をnとする。
【0057】
この場合、バンドル構造5の幅は、
・d
となる。また、バンドル構造5の高さは、
3^(1/2)/2・(n−1)・d+d
となる。すなわち、
孔の幅a≧n・dかつ、
孔の高さb≧(((n−1)・(3^(1/2))/2)+1)・d
とならなければ、バンドル構造5を孔に挿入することができない。
【0058】
また、孔の幅aが大きくなりすぎると、幅方向の端部に位置する光ファイバ心線7が、隣接する他の段に移動する恐れがある(図中S)。したがって、この移動を防止する必要がある。この場合、
a<(n+1/2)・d
とすれば、光ファイバ心線7が、他段に移動することを防止することができる。
【0059】
また、孔の高さbが大きくなりすぎると、高さ方向の端部に位置する光ファイバ心線7が、他段に移動する恐れがある(図中T)。したがって、この移動を防止する必要がある。この場合、
b<(((n・(3^(1/2)))/2)+1)・d
とすれば、光ファイバ心線7が、他段に移動することを防止することができる。
【0060】
すなわち、
・d≦a<(n+1/2)・d かつ、
(((n−1)・(3^(1/2))/2)+1)・d≦b<(((n・(3^(1/2)))/2)+1)・d
を満たせば、バンドル構造5における光ファイバ心線7の移動を防止することができる。
【0061】
なお、孔は、たとえばその中心軸が、キャピラリ9の中心軸に略一致するように開けられているが、それには限定されない。また、上述した関係は、孔が略矩形である場合には限られない。例えば、図6に示すように、略長円形の孔を有するキャピラリ9aを用いた場合にも適用できる。なお、長円とは、幅方向の両側がそれぞれ半円形状となり、その間が直線で結ばれた角丸長方形を指すものとする。この場合には、長円の長手方向(幅方向)の長さをaとし、長円の短手方向(高さ方向)の長さをbとすれば、上述した関係を満たすことで、バンドル構造5aにおける光ファイバ心線7の位置の移動を防止することができる。
【0062】
また、図7a、図7bに示すように、略円形の孔を有するキャピラリ9bを用いた場合にも適用できる。図7aは、2×4の信号光用光ファイバ21を配置した例を示す図であり、図7bは、3×3の信号光用光ファイバ21を配置した例を示す図である。この場合には、以下のように規定される。キャピラリ9bの孔の内径をDとする。また、図示したように、バンドル構造5bは、19本の光ファイバ心線が略正六角形に最密配置されているとする。この場合、バンドル構造5bの最大径(外接円の径)は、5dとなる。
【0063】
一方、Dが大きくなりすぎると、光ファイバ心線7の移動以外にも、キャピラリ9bとバンドル構造5bとの隙間が大きくなる。したがって、
5d≦D<5.5d
の範囲とすることが望ましい。
【0064】
なお、図示を省略するが、例えば、さらに1層増やして、37本の略正六角形の最密配置をしたバンドル構造の場合、バンドル構造を孔に挿入させ、かつキャピラリ9bとバンドル構造5bとの隙間を適度に保つためには、
7d≦D<7.4d
の範囲とすることが望ましい。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態によれば、格子配列されたコア15を有するマルチコアファイバに対して、ファンアウトが可能なバンドル構造を得ることができる。この際、バンドル構造を構成する各光ファイバ心線7が、最密配置されていることで、各光ファイバ心線7を確実に所望のピッチで配列することができる。したがって、マルチホールキャピラリを用いる必要がない。
【0066】
また、キャピラリの孔のサイズを、バンドル構造に応じて適宜最適化することで、孔内での光ファイバ心線7の移動を防止することができる。
【0067】
また、最密配置内における信号光用光ファイバ21の配置を適宜設定することで、様々な位置関係のコア配置に適用することができる。
【0068】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0069】
例えば、前述した実施形態において、キャピラリ9等は一体のものであったが、バンドル構造を保持することができれば、キャピラリはあらゆる形態のものを適用可能である。
【0070】
例えば、図8aに示すように、キャピラリ9cにバンドル構造5cを挿入してもよい。キャピラリ9cは、底部、側部および蓋部に分離しており、これらを組み合わせることで、空間(孔に相当)が形成される。したがって、バンドル構造5cをこの空間(孔)に挿入することができる。
【0071】
また、図8bに示すように、キャピラリ9dにバンドル構造5dを挿入してもよい。キャピラリ9dは、溝が形成された本体部と蓋部に分離しており、これらを組み合わせることで、溝部によって、空間(孔に相当)が形成される。したがって、バンドル構造5dをこの空間(孔)に挿入することができる。
【0072】
また、本発明にかかる光ファイバ接続構造は、バンドル構造とマルチコアファイバとの接続には限られない。例えば、図9に示す光ファイバ接続構造1aのように、バンドル構造5と受発光素子27とを接続してもよい。このように、受発光素子27の受発光部が格子状に配列していれば、本発明のいずれのバンドル構造も適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1、1a………光ファイバ接続構造
3………マルチコアファイバ
5、5a、5b、5c、5d………バンドル構造
7………光ファイバ心線
9、9a、9b、9c、9d………キャピラリ
11………キャピラリ
13………クラッド
15………コア
17………信号光用光ファイバ群
19………ダミーファイバ群
21………信号光用光ファイバ
23………ダミー光ファイバ
25………コア
27………受発光素子
図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9