特許第6117589号(P6117589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117589
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】ステージ装置及び電子線応用装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/02 20060101AFI20170410BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20170410BHJP
   H01J 37/30 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   H02K41/02 C
   H02K41/03 A
   H01J37/30 Z
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-69943(P2013-69943)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-195342(P2014-195342A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100154313
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100140615
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 弘
(72)【発明者】
【氏名】宮本 松太郎
【審査官】 森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−065956(JP,A)
【文献】 特開2004−095949(JP,A)
【文献】 特開平04−217854(JP,A)
【文献】 特開2003−299339(JP,A)
【文献】 特開2002−359170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/00−41/06
H01J 37/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子コラムが一体に取り付けられる開口部を上面に備えた磁気遮蔽容器内に設置されるステージ装置(1)であって、ステージベース板(11)上に、第1のステージ(12)と第2のステージ(13)を上下段に重ねて配置し、それぞれ第1のリニアモータ(14)と第2のリニアモータ(15)とで互いに直交する方向へ直線移動するように構成されたステージ装置(1)において、
前記ステージベース板(11)の上面に、一対のガイドレール(16,16)が設置され、当該ステージベース板(11)の一側の側辺と前記ガイドレール(16,16)との間に前記第1のリニアモータ(14)の永久磁石により構成されたモータ固定子(14a)がガイドレール(16,16)と平行に配置されているとともに、前記一側の側辺とコーナー部を挟んで隣接する他側の側辺と前記ガイドレール(16,16)との間に前記第2のリニアモータ(15)の永久磁石により構成されたモータ固定子(15a)がガイドレール(16,16)と直交する向きに配置され、
前記第1のステージ(12)は、その底部を前記ガイドレール(16,16)に係合させて両レール上を摺動変位し得るように取り付けられているとともに、その側部に前記第1のリニアモータ(14)のモータ可動子(14b)が接続され、この第1のステージ(12)の上面には前記ガイドレール(16,16)に沿った当該第1のステージ(12)の走行方向とは直交する方向に向けて一対のガイドレール(17,17)が設置され、
前記第2のステージ(13)は、その底部を前記ガイドレール(17,17)に係合させて両レール上を摺動変位し得るように取り付けられているとともに、その上部に試料を保持する試料保持ステージ(18)が設置されており、
前記第2のステージ(13)と前記第2のリニアモータ(15)のモータ可動子(15b)が、当該モータ可動子(15b)に接続したステージ連結ガイド(15d)を、第2のステージ(13)の少なくとも一側の側端部に沿って設けられたリニアガイドレール(13a)に摺動自在に取り付けて接続された構成を有することを特徴とするステージ装置(1)。
【請求項2】
第1のステージ(12)及び/又は第2のステージ(13)をそれぞれ駆動して変位させる一対のリニアモータ(14,15)のモータ固定子(14a,15a)が、それぞれステージ両側のステージベース板(11)上に配置された構成を有することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置(1)。
【請求項3】
ステージベース板(11)上の一方の対向二側辺に沿って第1のステージ(12)を駆動して変位させるリニアモータ(14)のモータ固定子(14a)、他方の対向二側辺に沿って第2のステージ(12)を駆動して変位させるリニアモータ(15)のモータ固定子(15a)がそれぞれ配置されているとともに、これらモータ固定子(14a,15a)は、ステージベース板(11)のコーナー部を挟んで隣接したモータ固定子の端部の磁石同士の極性が異なるように設置された構成を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のステージ装置(1)。
【請求項4】
リニアモータ(14,15)のモータ固定子(14a,15a)を、ステージベース板(11)上に設置するのに代えて、磁性材料により構成された容器(2)内面に近接又は接するように、若しくはモータ固定子(14a、15a)に接する磁性材料からなる部材を介して容器(2)内面に重なるように配置された構成を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のステージ装置。
【請求項5】
リニアモータ(14,15)が、容器開口部(21)のステージベース板(11)上への投影領域の外側に配置された構成を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のステージ装置。
【請求項6】
リニアモータ(14,15)のモータ可動子(14b、15b)の表面に冷却手段(4)を一体に取り付けた構成を有することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のステージ装置(1)。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載のステージ装置(1)を収納した容器(2)を備えた電子線応用装置。
【請求項8】
ステージ装置(1)の第1のステージ(12)の移動方向をステップ軸、第2のステージ(13)の移動方向をスキャン軸とした構成を有することを特徴とする請求項7に記載の電子線応用装置。
【請求項9】
電子コラムが取り付けられる容器(2)の開口部(21)の周縁に下方へ突出した鍔部(21a)を設けた構成を有することを特徴とする請求項7又は8に記載の電子線応用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空中に保持された試料に電子ビームやイオンビームの荷電粒子線(以下、電子線と総称する。)を照射する電子線検査装置や電子線描画装置などの電子線応用装置に装備されるステージ装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走査型電子顕微鏡などの電子線を使った電子線応用装置において、ウェハやマスクなどの試料を保持・移動させるステージ装置が組み込まれる容器は、電子線に対する磁気の影響を最小化するため、容器自体を磁性材料で構成したり、容器を非磁性材料で構成する場合には容器外部又は内部に磁気遮蔽のための磁性材料を一体に設けたりして、容器外部の磁気の影響が容器内部に及ばないように磁気遮蔽(シールド)している。
【0003】
また、ステージ装置自体にも、容器内で磁気の発生や変動が生じないように、基本的にはセラミックスやアルミニウム合金、チタン合金などの非磁性材料で構成するなどして、容器と同様に電子線に対する磁気の影響を最小化するための手段が施されている。
【0004】
従来のステージ装置の駆動方式としては、モータなどの回転運動を直線運動に変換するボールねじ方式が多用されている。この方式では、例えば図15及び図16に示されるように、容器100のステージベース板101上にガイドレール102,102を設置し、このガイドレール102,102上にボールねじ軸103に連結した第1のステージ104を設置するとともに、第1のステージ104上に前記ガイドレール102,102と直交する向きにガイドレール105,105を設置し、このガイドレール105,105上にガイドを介してボールねじ軸106に連結した第2のステージ107を設置し、容器100の外側に設置されたモータ108,109を駆動してボールねじ軸103,106をそれぞれ回転させることで、ガイドレール102,102に沿って第1のステージ104を、ガイドレール105,105に沿って第2のステージ107をスライド移動させることにより、第2のステージ107上に設置された試料保持ステージを所定の位置に変位させるようにステージ装置が構成される。図中、符番110は、試料保持ステージ111の角部を挟んだ両側辺上面に沿って取り付けられたステージミラーである。
【0005】
検査や加工の対象であるウェハなどの試料の微細化に伴い、ステージ装置には、試料を所定の方向へ正確に微少距離だけ変位させたり、所定の距離を速度の斑なく安定的に変位させたりすることが可能な高精度・高性能の機能のものが要求されている。前記図示したボールねじ方式のステージ装置では、電子線を用いた検査や加工の際に、ボールねじ軸を介する運動変換に伴う多数のボール軸受けから発せられる高周波の振動がノイズや外乱として処理信号中に紛れ込み、ステージ装置の運動性能を著しく低下させるという問題がある。
ステージ装置の他の駆動方式として、エアサーボや超音波モータをステージの駆動手段に用いることが挙げられるが、前者はステージ装置が収められる容器が大型化するとともに容器内を真空に保持するために構成部品の加工精度を上げる必要があり、材料コストが高くなりがちであり、後者は塵埃の発生や使用に伴う経時劣化や保守性などに難点がある。
【0006】
一方、ステージの駆動手段として、前記ボールねじ軸などの力の伝達要素を必要としない、所謂直動方式であるリニアモータの使用は、構成の簡素性や運動性能の優位性の面から考えても有用であり、リニアモータをステージの駆動手段として構成された電子線応用装置のステージ装置も実用化されてきている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−123680号公報
【特許文献2】特開2011−65956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子線応用装置のステージ装置を、リニアモータを用いて構成する場合、リニアモータは電磁力により対象物を駆動する装置であるため、リニアモータによる磁力の影響が最小化されるように考慮する必要がある。
【0009】
特許文献1に記載されているように、容器の外部に駆動源であるリニアモータを配置した構成では、容器内部でリニアモータの磁力の影響は殆ど及ばないが、容器を含む装置の小型化が難しく、力の伝達要素などの構造が複雑になってステージの機械特性が低下し、リニアモータを組み込んだステージ装置本来の性能を阻害し低下させてしまう。
【0010】
一方、磁気遮蔽された容器内にリニアモータを組み込んだステージ装置を設置する場合は、以下のような問題がある。
すなわち、試料を保持・移動させるステージは、通常、X軸、Y軸で定義される直交二軸方向に変位可能なステージが使用されるが、占有面積が少なく且つコンパクトになるように、下軸ステージの上に、上軸ステージを重ねるように配置した、上下段の二軸ステージ構成とするのが一般的である。かかる二軸ステージをリニアモータで駆動する場合、上軸ステージを駆動するリニアモータは、上軸ステージとともに下軸ステージ上に設置され、下軸ステージの駆動により、上軸ステージともども変位することになる。
上軸ステージはその上面に設置される試料保持ステージを介して試料を保持しているステージであり、電子ビームの照射によって試料の検査や加工を行う領域に近接配置されているため、下軸ステージ及び上軸ステージが変位することで、電子ビーム照射領域にリニアモータの磁力が直接的に強く影響(磁界の強さと変動磁界)を及ぼし、下軸ステージ上に設置された、上軸ステージを駆動するリニアモータの磁力による影響を受けて、電子ビーム照射領域の磁場変動が大きくなってしまう。
【0011】
容器内にリニアモータを組み込んだステージ装置を設置する場合に、特許文献2に記載されているように、可動子が同一方向に可動するように配置した一対のリニアモータの間に、これと交差する方向に可動子が可動するように一対のリニアモータを配置し、上下に交差配置した下軸ステージと上軸ステージの対向側部を対応位置に配置されたリニアモータの可動子に各々接続してステージ装置を構成すれば、上軸ステージを駆動するリニアモータは電子ビームを照射する領域には近接していないので、リニアモータによる磁力の影響は低減される。しかし、この構成のものは、構造が複雑となって、これを収容する容器も大型にせざるを得ない。構造が複雑なため組み立ては容易ではなく、構成部材の組み付け精度を出すための調整にも手間を要し、このものでは電子線応用装置を低コストで構成することは困難である。
【0012】
また、電子線応用装置の磁気遮蔽された容器内は電子ビームの入射軌道を担保するため真空状態に保持されるが、リニアモータをステージ装置に組み込んだ場合に、モータの励磁コイル部の発熱は、周囲が真空のために断熱状態となってモータ自体を昇温させてその性能や機能を低下させ、また、モータの昇温に伴って周囲の構造物も伝熱や輻射熱によって加熱され、試料の検査や加工に悪影響を与えてしまう。
【0013】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、試料に電子線を照射する電子線応用装置のステージ装置を、リニアモータを用いて簡易且つコンパクトに、且つ試料の検査や加工のプロセスに対してリニアモータの磁力の影響を最小化できるように構成し、これにより電子線応用装置の低コスト化に寄与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述の通り、下軸ステージ上に上軸ステージを駆動するリニアモータを設置して上下段の二軸ステージ構成としたステージ装置において、上軸ステージにリニアモータを設置すると、電子ビームの照射領域にリニアモータの磁力が影響を及ぼし易くなってしまう。そこで、本発明のステージ装置は、電子ビームの照射領域から遠ざけた位置で、且つ下軸ステージの移動時はリニアモータのモータ固定子が不動であるようにリニアモータを設置することで電子ビームの照射領域にリニアモータの磁力が及ぼす影響が極力小さくなるようにし、併せて構成がシンプル且つコンパクトで組み立てや調整が容易となるようにステージ装置を構成した。
【0015】
すなわち、前記課題を解決するため、本発明は、電子コラムが一体に取り付けられる開口部を上面に備えた磁気遮蔽容器内に設置されるステージ装置であって、ステージベース板上に、第1のステージと第2のステージを上下段に重ねて配置し、それぞれ第1のリニアモータと第2のリニアモータとで互いに直交する方向へ直線移動するように構成されたステージ装置において、
前記ステージベース板の上面に、一対のガイドレールが設置され、当該ステージベース板の一側の側辺と前記ガイドレールとの間に前記第1のリニアモータの永久磁石により構成されたモータ固定子がガイドレールと平行に配置されているとともに、前記一側の側辺とコーナー部を挟んで隣接する他側の側辺と前記ガイドレールとの間に前記第2のリニアモータの永久磁石により構成されたモータ固定子がガイドレールと直交する向きに配置され、
前記第1のステージは、その底部を前記ガイドレールに係合させて両レール上を摺動変位し得るように取り付けられているとともに、その側部に前記第1のリニアモータのモータ可動子が接続され、、この第1のステージの上面には前記ガイドレールに沿った当該第1のステージの走行方向とは直交する方向に向けて一対のガイドレールが設置され、
前記第2のステージは、その底部を前記ガイドレールに係合させて両レール上を摺動変位し得るように取り付けられているとともに、その上部に試料を保持する試料保持ステージが設置されており、
前記第2のステージと前記第2のリニアモータのモータ可動子が、当該モータ可動子に接続したステージ連結ガイドが、第2のステージの少なくとも一側の側端部に沿って設けられたリニアガイドレールに摺動自在に取り付けて接続された構成を有することを特徴とする。
【0016】
前記一般的な直交二軸に構成されたステージにおいて、上軸ステージ(第2のステージ)は下軸ステージ(第1のステージ)の可動側に設置される。ここで、上軸ステージの駆動源としてリニアモータを用い、リニアモータの磁気発生源である磁石が設けてある側を、電子ビーム照射領域から遠ざけた位置に配置し、且つ下軸ステージの移動時に不動であるように構成すれば、電子ビーム照射領域においてはリニアモータによる磁力の影響を受け難くなり、正確な試料の検査や加工の精度を担保することができる。
また、上記構成のように、下軸ステージの駆動源にもリニアモータを用い、モータ固定子側を永久磁石として、前記と同様に電子ビーム照射領域から遠ざけた位置に配置すれば、リニアモータの磁力により影響が少なくなって磁気変動がなくなるとともに、リニアモータによるステージ駆動のメリットが両軸に備わることになる。
また、ステージ装置が収容される容器を、その全体を磁性材料で構成し、或いは非磁性材料で構成する場合には容器外部又は内部に磁気遮蔽のための磁性材料を一体に設けて磁気遮蔽構造とし、電子コラムが取り付けられる上面の開口部の周辺を磁性材料で形成することで、容器内の磁力線は磁性材料側である容器周面に流れる状態となり、前記開口部内、特にその中央部には磁力線が流れ難くなり、リニアモータによる磁力の影響を受け難くすることができる。
【0017】
前記構成のステージ装置において、第1のステージ及び/又は第2のステージをそれぞれ駆動して変位させる一対のリニアモータのモータ固定子が、それぞれステージ両側のステージベース板上に配置された構成とすることができる。
これによれば、ステージの両側にそれぞれリニアモータを接続して駆動することで、ステージ移動時の姿勢精度が向上するとともに、モータ1個当たりに必要な駆動力が少なくなってモータの小型化が図れ、また、電子ビーム照射領域に対するリニアモータの磁気分布の対称化が図られて磁力の影響を少なくすることが可能である。第1のステージと第2のステージの何れか一方のみに、その両側にリニアモータを配置して駆動しても同様の効果が期待できる。
【0018】
また、前記構成のステージ装置において、ステージベース板上の一方の対向二側辺に沿って第1のステージを駆動して変位させるリニアモータのモータ固定子、他方の対向二側辺に沿って第2のステージを駆動して変位させるリニアモータのモータ固定子がそれぞれ配置されているとともに、これらモータ固定子は、ステージベース板のコーナー部を挟んで隣接したモータ固定子の端部の磁石同士の極性が異なるように設置された構成とすることができる。
このように、隣り合うリニアモータのモータ固定子の端部の磁石の磁極を異極となる配置とすることで、隣接するモータ固定子の端部間で磁場が形成されて漏れ磁界がなくなり、ステージ装置周辺への磁界の影響を低減させることが可能となる。
【0019】
さらに、前記構成のステージ装置において、リニアモータのモータ固定子を、ステージベース板上に設置するのに代えて、磁性材料により構成された容器内面に近接又は接するように、若しくはモータ固定子に接する磁性材料からなる部材を介して容器内面に重なるように配置された構成とすることができる。
このようにすることで、リニアモータのモータ固定子の磁石による磁力線が磁性材料からなる容器に流れるようになり、容器内部の磁気の影響及び開口部内の電子ビーム照射領域への磁界の影響をより低減させることができる。
【0020】
また、前記構成のステージ装置において、リニアモータが、容器開口部のステージベース板上への投影領域の外側に配置されるように構成することが好ましい。
これによれば、上下段のステージをそれぞれ駆動するリニアモータを、容器開口部のステージベース板上への投影領域の外側に配置して、前記投影領域である電子ビーム照射領域に進入しないように構成することで、電子ビーム照射領域においてはリニアモータによる磁力の影響を受け難くなり、試料の検査や加工の精度が担保されることとなる。
【0021】
またさらに、前記構成のステージ装置において、リニアモータのモータ可動子の表面に冷却手段を一体に取り付けた構成を有することが好ましい。
これによれば、リニアモータの昇温を効果的に抑制して、その性能や機能が低下することを防ぎ、また、周囲の構造物がモータの発熱による伝熱や輻射熱によって加熱されることはなく、リニアモータの発熱によって試料の検査や加工の精度が低下することを防止することができる。
冷却手段としては、例えばモータ可動子の表面に冷却ジャケットを一体に取り付け、モータ固定子側に適宜な冷媒が充填された冷却配管ブロックを設置し、冷却ジャケットと冷却配管ブロックとを一対の可撓性配管で連結して、冷却配管ブロックから冷却ジャケットとの間で冷媒が流通するように構成することができる。
【0022】
また、本発明の電子線応用装置は、前記構成のステージ装置を収納した容器を備えた構成を有することを特徴とする。
すなわち、前記構成のステージ装置を磁気遮蔽された容器の内部に収容し、この容器の内部を真空状態にする真空ポンプなどの排気手段を設け、磁気の影響を受け難い容器の開口部に電子コラムを一体に取り付けて電子線応用装置を構成することができる。
これによれば、運動性能に優れた高精度のステージと磁気の影響を受け難い電子コラムの組み合わせることで、構成が簡素で高性能な電子線応用装置を低コストで構成することが可能となれる。
【0023】
前記構成の電子線応用装置において、ステージ装置の第1のステージの移動方向をステップ軸、第2のステージの移動方向をスキャン軸とした構成とすることが好ましい。
すなわち、直交二軸方向に変位可能なステージにおいて、下軸ステージ上に上軸ステージを重ねて設置した上下段のステージの場合に、上軸ステージの可動質量は必然的に小さくなるため、連続して走行する能力・精度(スキャン能力・精度)は下軸ステージのそれに対して優位となる。一方、短距離移動して停止する能力・精度(ステップ能力・精度)は、可動質量が大きくなっても著しく阻害されない。よって、第1のステージ(下軸ステージ)の移動方向をステップ軸、第2のステージ(上軸ステージ)の移動方向をスキップ軸に設定すれば、スキャンとステップを繰り返す、所謂スキャン方式のステージとして理想的な形態となる。
【0024】
また、電子コラムが取り付けられる容器の開口部の周縁に下方へ突出した鍔部を設けた構成とすれば、容器の開口部内に磁力線がより流れ難くなり、リニアモータの磁力の影響をより低減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明のステージ装置の一実施形態の構成を示す概略平面図である。
図2図1中の矢符A側の側面図(A)と矢符B側の側面図(B)である。
図3】ステージ装置が収容される容器の概略外観図である。
図4】容器の開口部の拡大断面図である。
図5図1のステージ装置を図3の容器に収容した状態の概略平面図である。
図6図5中の矢符A側の透過側面図(A)と矢符B側の透過側面図(B)である。
図7】本発明のステージ装置の他の実施形態の構成を示す概略平面図である。
図8図7中の矢符A側の透過側面図(A)と矢符B側の透過側面図(B)である。
図9】本発明のステージ装置の他の実施形態の構成を示す概略平面図である。
図10図9中の矢符A側の透過側面図(A)と矢符B側の透過側面図(B)である。
図11】本発明のステージ装置の他の実施形態の構成を示す概略平面図である。
図12図11中の矢符A側の透過側面図(A)と矢符B側の透過側面図(B)である。
図13】リニアモータに取り付ける冷却手段の構成を示した図である。
図14図13中のXIV−XIV線断面図である。
図15】従来のボールねじ方式のステージ装置の構成を示す概略平面図である。
図16図16中の矢符A側の透過側面図(A)と矢符B側の透過側面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び図2は本発明のステージ装置の一実施形態を示しており、このステージ装置1は、ステージベース板11上に、ステップ軸ステージ(第1のステージ)12と、スキャン軸ステージ(第2のステージ)13を上下段に重ねて配置し、それぞれステップ軸のリニアモータ14とスキャン軸のリニアモータ15とで、互いに直交する方向へ直線移動するように構成してある。リニアモータ14,15は、ともにモータ固定子が永久磁石、モータ可動子が電磁コイルで構成してある。
【0027】
詳しくは、ステージベース板11は平面視略正方形状を呈し、その上面に一対のガイドレール16,16が適宜な間隔を開けて設置されているとともに、その一側の側辺に、リニアモータ14のモータ固定子14aをガイドレール16,16と平行に配置し、また、前記一側の側辺とコーナー部を挟んで隣接する他側の側辺にリニアモータ15のモータ固定子15aをガイドレール16,16と直交する向きに配置してある。
【0028】
ステップ軸ステージ12は、平面視矩形状を呈し、その底部をガイドレール16,16に係合させて両レール上を摺動変位し得るように取り付けられているとともに、その側部に、リニアモータ14のモータ可動子14bが可動子連結部14cを介して一体に接続されて、リニアモータ14を駆動することで、ガイドレール16,16に沿って走行移動するように設置してある。
【0029】
ステップ軸ステージ12の上面には、ガイドレール16,16と直交する方向、すなわちステップ軸ステージ12の走行方向とは直交する方向に向けて一対のガイドレール17,17が適宜な間隔を開けて設置してある。
【0030】
スキャン軸ステージ13は、平面視正方形状を呈し、その底部をガイドレール17,17に係合させて両レール上を摺動変位し得るように取り付けられているとともに、その側部にリニアガイドレール13aを一体に取り付けてある。
そして、前記リニアモータ15のモータ可動子15bに可動子連結部15cを介して接続していて、ステップ軸ステージ12の走行方向と平行に伸びた動力伝達要素であるステージ連結ガイド15dが前記リニアガイドレール13aに摺動自在に連結してあり、リニアモータ15を駆動することで、その動力がステージ連結ガイド15dを介してスキャン軸ステージ13へと伝達されて、スキャン軸ステージ13がガイドレール17,17に沿ってステップ軸ステージ12上を走行移動するとともに、ステップ軸ステージ12が変位したときは、ステージ連結ガイド15dがリニアガイドレール13aに沿って相対スライドすることで、スキャン軸ステージ13をステップ軸ステージ12と一体に変位せしめるように設けてある。
【0031】
スキャン軸ステージ13上には、試料を保持する試料保持ステージ18が設置されており、この試料保持ステージ18の上面にはステージの位置制御に供される測長計の測定対象(ターゲット)となるステージミラー19,19が載置され、ステージの移動軸である直交二軸方向の測長ができるように設けてある。
【0032】
このように構成されたステージ装置1は、図3に示されるように、磁性材料で構成された概立方体形状の箱体の容器2に収容される。容器2の上面には電子コラム3が一体に取り付けられる開口部21が形成され、この開口部21の周縁には、図4に示されるように、下方へ突出した鍔部21aを設けてある。
そして、容器2内にステージ装置1を設置し、開口部21に電子コラム3を一体に取り付けるとともに、容器2内を真空状態にする真空ポンプなどの排気手段、その他の試料に電子ビームを照射する手段やステージに試料を搬送する手段などを装備して電子線応用装置が構成される。
【0033】
容器2内でステージ装置1は、図5及び図6に示されるように、リニアモータ14,15が、開口部21のステージベース板11上への投影領域の外側に配置され、これにより、電子ビーム照射領域においてはリニアモータによる磁力の影響を受け難くなり、正確な試料の検査や加工の精度を担保することができるようになっている。
【0034】
図7及び図8はステージ装置1の形態を示しており、これは、スキャン軸ステージ13の両側部にリニアガイドレール13a,13aを一体に取り付けるとともに、リニアモータ15のモータ可動子15bに、モータ固定子15aの近傍に設置されたリニアガイド15fによってガイドされた可動子連結部15eを接続し、この可動子連結部15eの両端にステージ連結ガイド15d,15dを取り付け、両ステージ連結ガイド15d,15dを前記リニアガイドレール13a,13aに摺動自在に連結して、スキャン軸ステージ13の両側がステージ連結ガイド15d,15dで支持されるように構成したものである。
これによれば、スキャン軸ステージ13の両側にステージ連結ガイド15d,15dを連結することで、スキャン軸ステージ13の一側の側部にのみステージ連結ガイド15dを連結した片持ち式の前記形態のものよりも、スキャン軸ステージ13を安定して走行させることが可能である。
【0035】
また、図9及び図10はステージ装置1の他の形態を示しており、これは、リニアモータ14,15のモータ固定子14a,15aを、磁性材料により構成された容器2の下面に直に接するように設置したものである。
このようにすることで、リニアモータ14,15のモータ固定子14a,15aの磁石による磁力線が容器2にそのまま流れるようになり、容器2内部の磁気の影響を低減させることが可能である。モータ固定子14a,15aと容器2の内面との間に、磁性材料からなる部材を介在させても同様の効果が期待できる。
【0036】
さらに、図11及び図12はステージ装置1の他の形態を示しており、これは、ステージベース板11上の一方の対向二側辺に沿ってリニアモータ14,14のモータ固定子14a,14a設置するとともに、他方の対向二側辺に沿ってリニアモータ15,15のモータ固定子15a,15aをそれぞれ配置し、それぞれのリニアモータ14,15をステップ軸ステージ12とスキャン軸ステージ13の両側に接続して、両ステージをともに一対のリニアモータ14,15で駆動するように構成したものである。
このようにすることで、ステージ移動時の姿勢精度が向上するとともに、モータの小型化が図れ、また、電子ビーム照射領域に対するリニアモータの磁気分布の対称化が図られて磁力の影響を少なくすることが可能である。
この場合、図11中に示されるように、各モータ固定子14a,15aは、ステージベース板11のコーナー部を挟んで隣接したモータ固定子14a,15aの端部の磁石同士の極性が異なるように配置すれば、隣接するモータ固定子14a,15aの端部間で磁場が形成されて漏れ磁界がなくなり、ステージ装置1周辺への磁界の影響を低減させることができる。
【0037】
図13及び図14は、リニアモータ14,15のモータ可動子14b,15bに取り付ける冷却手段を示しており、この冷却手段4は、モータ可動子14b,15bの表面に一体に取り付けられる冷却ジャケット41と、モータ固定子14a,15a側に設置される、適宜な冷媒の流通集結部である冷却配管ブロック42からなり、冷却ジャケット41と冷却配管ブロック42とを、チューブなどの可撓性を有する適宜な長さで、ステージの動きを阻害しないよう反力が一定になるように一対の可撓性配管43,43で連結して、冷却配管ブロック42と冷却ジャケット41との間で冷媒が流通するようにして、モータ可動子14b,15bが冷却されるように構成したものである。冷却ジャケット41は熱伝導性が良好な材料で形成される。また、冷却配管ブロック42には、容器2の外部から冷媒の供給と排出を可能にする配管(図示せず)が接続される。
【0038】
なお、図示した形態は一例であり、本発明はこれに限定されず、また、上記形態を組み合わせて、他の適宜な形態で構成することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ステージ装置、11 ステージベース板、12 ステップ軸ステージ(第1のステージ)、13 スキャン軸ステージ(第2のステージ)、13a リニアガイドレール、14,15 リニアモータ、14a,15a モータ固定子、14b,15b モータ可動子、14c,15c,15e 可動子連結部、15d ステージ連結ガイド、15f リニアガイド、16,17 ガイドレール、18 試料保持ステージ、19 ステージミラー、2 容器、21 開口部、21a 鍔部、3 電子コラム、4 冷却手段、41 冷却ジャケット、42 冷却配管ブロック、43 可撓性配管
図1
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