特許第6117591号(P6117591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6117591モサプリドと制酸剤とを含有する医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117591
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】モサプリドと制酸剤とを含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5375 20060101AFI20170410BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20170410BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20170410BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   A61K31/5375
   A61K47/02
   A61K9/20
   A61K9/16
   A61K9/14
   A61P1/04
   A61P1/14
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-71113(P2013-71113)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-193832(P2014-193832A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100173635
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 樹里
(72)【発明者】
【氏名】石田 素子
(72)【発明者】
【氏名】宇野 明
【審査官】 小堀 麻子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/019046(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/019043(WO,A1)
【文献】 特開2011−037767(JP,A)
【文献】 特開2011−246428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその塩;および
制酸剤;
を有効成分として含有
前記4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその塩と前記制酸剤との配合比(重量比)が、1:20〜1:80である、前記医薬組成物。
【請求項2】
医薬組成物であって、
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその塩;および
制酸剤;
を有効成分として含有
前記制酸剤の含有量が、前記医薬組成物の全体量に対して20〜80重量%である、前記医薬組成物。
【請求項3】
前記4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその塩が、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド・1クエン酸塩・2水和物である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記制酸剤が、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈生成物、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、鳥賊骨、石決名、ボレイ、アミノ酢酸、ジヒドロキシアミニウムアミノアセテート、ロートエキス、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
変色が抑制された、請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
散剤、顆粒剤または錠剤の形態である、請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその塩を含有する医薬組成物の変色を抑制する方法であって、
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその塩;および
制酸剤;
を1:20〜1:80の配合比(重量比)で混合する工程;
を含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド(以下、単に「モサプリド」とも記載する)またはその塩と、制酸剤とを有効成分として含有する、医薬組成物、および4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその塩を含有する医薬組成物の変色抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モサプリド(mosapride)は、消化管運動促進作用と胃排泄促進作用を有する選択的なセロトニン5−HT受容体作動薬として知られている。特に、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド・1クエン酸塩・2水和物(以下、単に「クエン酸モサプリド」とも記載する)は、「モサプリドクエン酸塩水和物」あるいは「クエン酸モサプリド」の一般名で知られており、代表的な胃腸薬として広く用いられている。
【0003】
ここで、原薬であるクエン酸モサプリドには苦味があり、さらに製剤化した際の安定性にも問題があることから、製剤化の工夫が検討されてきた。例えば、クエン酸モサプリドと、クエン酸モサプリドの分解および着色を促進する特定の製剤化成分とを、両成分が接触しない形態で製剤化する技術(特許文献1)、特定の製剤化成分を配合した噴霧乾燥粒子とクエン酸モサプリドとを混合することにより、安定に保存でき、十分な硬度を有する口腔内速崩壊錠を製造する技術(特許文献2)などが知られている。
【0004】
一方、制酸剤は、胃酸を化学的に中和して胃粘膜を保護する作用を有することが知られており、胃酸過多や消化性潰瘍などに対する医薬として広く用いられている。また、制酸剤として知られる物質は一般的には無機塩化合物であり、例えば、炭酸水素ナトリウム(重曹)、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2006/11638号公報
【特許文献2】特開2011−37767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したように、クエン酸モサプリドを含有する製剤は、保存安定性が低いことが知られており、具体的には、保存中に分解や着色を起こすことが知られている。そこで、製剤にアルミ包装を施すことや、面倒なコーティングを施すことにより保存安定性を保つ努力がなされてきたが、その一方で、製造上の問題やコスト面で問題があった。
【0007】
また、モサプリドまたはその塩および制酸剤は、上記したようにそれぞれ作用効果の異なる胃腸薬であることから、別々に処方することは可能であるが、処方が複数になることは、医師にとっても患者にとっても煩雑であり、服薬コンプライアンスの低下や医療費が増加する点でも問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、モサプリドまたはその塩を含有する組成物に制酸剤を配合することにより、錠剤の変色を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその塩と、制酸剤とを有効成分として含有する、医薬組成物を提供するものである。
【0010】
すなわち、これに限定されるものではないが、本発明は以下の態様の発明を包含する。
(1)4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその塩;および
制酸剤;
を有効成分として含有する、医薬組成物。
(2)前記4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその塩と前記制酸剤との配合比(重量比)が、1:20〜1:80である、(1)に記載の医薬組成物。
(3)前記4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその塩が、4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド・1クエン酸塩・2水和物である、(1)または(2)に記載の医薬組成物。
(4)前記制酸剤が、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈生成物、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、鳥賊骨、石決名、ボレイ、アミノ酢酸、ジヒドロキシアミニウムアミノアセテート、ロートエキス、およびこれらの組合せからなる群から選択される、(1)〜(3)のいずれかに記載の医薬組成物。
(5)前記制酸剤の含有量が、前記医薬組成物の全体量に対して20〜80重量%である、(1)〜(4)のいずれかに記載の医薬組成物。
(6)変色が抑制された、(1)〜(5)のいずれかに記載の医薬組成物。
(7)散剤、顆粒剤または錠剤の形態である、(1)〜(6)のいずれかに記載の医薬組成物。
(8)4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその塩を含有する医薬組成物の変色を抑制する方法であって、
4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミドまたはその塩;および
制酸剤;
を1:20〜1:80の配合比(重量比)で混合する工程;
を含む、上記方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、製剤の保存安定性が改善され、特に変色を抑制することができる点で有利である。また、本発明の当該効果は、モサプリドまたはその塩と制酸剤を混合するだけで得られることから、製造工程の簡略化、さらにはコストダウンの効果も得られる点でも有利である。
【0012】
また、モサプリドまたはその塩および制酸剤は、上記したようにそれぞれ作用効果の異なる胃腸薬であることから、これらを合剤とすることで効能の増強が期待され、さらには、複数の胃腸薬を服用する必要がないことから、医師による処方が簡便になるとともに、服薬コンプライアンスの向上や、医療費の削減に寄与し得る点でも有利である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の医薬組成物は、モサプリドまたはその塩と制酸剤とを有効成分として含有することを特徴とする。ここで、「有効成分として含有する」との用語は、モサプリドまたはその塩と制酸剤とをそれぞれ薬物として有効な量で組成物中に含有させることを意味する。
【0014】
本発明において用いる「4−アミノ−5−クロロ−2−エトキシ−N−[[4−(4−フルオロベンジル)−2−モルホリニル]メチル]ベンズアミド」(モサプリド)は、
下記式(I):
【0015】
【化1】
【0016】
で示される化合物であり、本発明においては、フリー体であってもよく、その塩を用いてもよい。また、ラセミ体および光学活性体のいずれを用いることもできる。
モサプリドの塩は、特に限定されないが、医薬的に許容される塩が好ましく、例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、アジピン酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、メタンスルホン酸、マレイン酸などの有機酸との付加塩、塩酸、硫酸、シュウ酸、リン酸などの無機酸との付加塩などであり、クエン酸塩が特に好ましい。
【0017】
さらに、モサプリドまたはその塩は、溶媒和物、特に水和物を形成していてもよい。本発明の医薬組成物に好ましく用いられるのは、下記式(II)で示されるモサプリド・1クエン酸塩・2水和物である。
【0018】
【化2】
【0019】
本発明の医薬組成物に含まれるモサプリドまたはその塩の含有量は、特に限定されないが、本発明の医薬組成物の全量100重量%に対し、0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。また、モサプリドまたはその塩の投与量は投与対象、投与ルート、剤形、症状などによって異なるが、クエン酸モサプリドに換算した場合に、例えば、成人1日当たり経口投与で7.5〜22.5mg、好ましくは7.5〜15mg、さらに好ましくは15mgであり、単回で投与しても複数回に分けて投与してもよい。
【0020】
本発明において用いる「制酸剤」は、胃内のpHを調整する作用を有する物質であれば特に限定されず、例えば、速効性タイプ(炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなど)や持続性タイプ(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、天然ケイ酸アルミニウム、水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、沈降炭酸カルシウムなど)、持続性と速効性を併せ持つタイプ(合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈生成物)などの種々の制酸剤を目的に合わせて配合することができる。また、制酸剤はアルカリ性であっても中性であってもよく、例えば、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈生成物、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム・炭酸マグネシウム・炭酸カルシウム共沈生成物、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水リン酸水素カルシウム、鳥賊骨、石決名、ボレイ、アミノ酢酸、ジヒドロキシアミニウムアミノアセテート、ロートエキスなどが挙げられ、単独で使用しても複数組み合わせて使用してもよい。特に、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、およびこれらの組合せから選択される制酸剤が好ましい。
【0021】
本発明の医薬組成物に含有させる制酸剤の量は、制酸剤の種類や併用するモサプリドまたはその塩の量に基づいて当業者が適宜決定することができる。例えば、組成物全体量に対する制酸剤の含有量は、20〜80重量%、好ましくは40〜80重量%であり、持続性の制酸剤の場合は20〜80重量%、好ましくは40〜80重量%であり、速効性の制酸剤の場合は26〜80重量%が好ましく、さらに好ましくは40〜80重量%、持続性と速効性の両方を持つ制酸剤の場合は20〜67重量%が好ましく、さらに好ましくは26〜60重量%。速効性、持続性、両方を併せ持つ制酸剤はそれぞれ単独でも数種類組み合わせても良い。モサプリドまたはその塩と制酸剤との配合比(重量比)は、1:20〜1:80、好ましくは1:40〜1:80であり、持続性の制酸剤の場合は、1:20〜1:80、好ましくは1:40〜1:80であり、速効性の制酸剤の場合は、好ましくは1:26〜1:80であり、さらに好ましくは、1:40〜1:80であり、持続性と速効性の両方を持つ制酸剤の場合は好ましくは1:20〜1:67、さらに好ましくは1:26〜1:60である。速効性、持続性、両方を併せ持つ制酸剤それぞれ単独でも数種類組み合わせても良い。
また、制酸剤の投与量も、制酸剤の種類、投与対象、投与ルート、剤形、症状などによって異なるが、例えば、成人1日当たり経口投与で0.3〜4.0g、好ましくは0.4〜3.0g、さらに好ましくは0.6〜3.0gであり、単回で投与しても複数回に分けて投与してもよい。
【0022】
本発明の医薬組成物には、さらに添加剤を配合してもよい。添加剤としては、医薬的に許容されるものであれば特に限定されず、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動化剤、固結防止剤などを使用することができる。
【0023】
賦形剤としては、例えば、D−マンニトール、乳糖水和物などが挙げられる。
結合剤としては、例えば、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられる。
【0024】
崩壊剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウムなどが挙げられる。
【0025】
滑沢剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸などが挙げられる。
【0026】
流動化剤または固結防止剤としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、重質無水ケイ酸、第三リン酸カルシウム、タルクなどを挙げることができる。
さらなる添加剤として、緩衝剤、酸味料、発泡剤、人工甘味料、香料、矯味剤、着色剤、抗酸化剤、界面活性剤、安定化剤などを使用することもできる。
【0027】
また、これらの添加剤は、組み合わせて添加することができる。添加剤の配合量は、本発明の所望の効果が達成される範囲内の量で使用することができる。
1つの態様として、本発明の医薬組成物は、軽質無水ケイ酸または含水二酸化ケイ素を添加剤成分として含有する。該成分は、流動化剤や固結防止剤などとして機能し、特に顆粒剤、散剤、錠剤を調製する場合に有用である。
【0028】
本発明の別の態様として、さらなる活性成分を、本発明の医薬組成物と同時に、連続的にまたは別々に投与してもよい。例えば、Hブロッカー(シメチジン、塩酸ラニチジン、ファモチジンなど)、ムスカリン受容体拮抗薬(ピレンゼピン塩酸塩水和物など)などの胃酸分泌受容体拮抗剤、胃粘膜保護成分(スクラルファート、グリチルリチン酸二カリウムなど)、局所麻酔薬(アミノ安息香酸エチルなど)、平滑筋弛緩薬(塩酸パパベリンなど)、消泡剤(ジメチルポリシロキサンなど)、健胃薬(アロエ、ウコン、ケイヒ、陳皮などの生薬、乾燥酵母、塩酸カルニチン、マレイン酸トリメブチンなど)、消化酵素(ジアスターゼ、リパーゼなど)、胆汁成分(ウルソデオキシコール酸やデヒドロコール酸など)などの消化薬、整腸剤(乳酸菌、酪酸菌、納豆菌など)、プロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールナトリウム、エソメプラゾールなど)を併用することができる。また、これらのさらなる活性成分を組み合わせて、本発明の医薬組成物に配合することもできる。
【0029】
本発明の医薬組成物は、過敏性腸症候群、弛緩性便秘、常習性便秘、慢性便秘、機能性ディスペプシア、急性・慢性胃炎、逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃神経症、老人性イレウス、非びまん性胃食道逆流症、NSAID潰瘍、食道・胆道系疾患における食欲不振、悪心、嘔吐、腹部膨満感、上腹部不快感、腹痛、胸やけ、曖気、統合失調症、うつ病、または不安などの各種疾患または症状の治療および予防に用いることができる。また、本発明の医薬組成物は、消化器系疾患や上記の各種疾患または症状の治療などに伴う種々の消化器機能異常の治療および予防にも有用である。すなわち、本発明の医薬組成物は、消化管運動促進薬または消化管機能改善薬として有用である。好ましくは、本発明の医薬組成物は、機能性ディスペプシア、急性・慢性胃炎、逆流性食道炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃神経症、老人性イレウス、非びまん性胃食道逆流症、NSAID潰瘍、食道・胆道系疾患における食欲不振、悪心、嘔吐、腹部膨満感、上腹部不快感、腹痛、胸やけ、または曖気などの各種疾患または症状の治療および予防に特に有用である。
【0030】
本発明の医薬組成物の投与ルートおよび剤形は、特に限定されないが、固形製剤の経口投与が好ましく、散剤、顆粒剤または錠剤がより好ましく、顆粒剤がさらに好ましい。なお、錠剤としては、例えば、フィルムコート錠、カプセル錠、チュアブル錠、口腔内崩壊錠、持続性錠などの製剤も含まれる。
【0031】
本発明の医薬組成物の製造方法は、粉砕工程、混合工程、造粒工程、成型工程(打錠工程)、フィルムコーティング工程などから、製造する製剤の剤形に従って適宜選択することができる。例えば、散剤や顆粒剤の場合、粉砕工程、混合工程および造粒工程を含むことができ、錠剤の場合は、さらに成型工程、必要に応じてフィルムコーティング工程を含む。
【0032】
粉砕工程は、薬物、および適当な添加剤を製剤分野における慣用の方法を使用して粉砕できれば、装置、手段とも特に制限されない。粉砕装置としては、例えば衝撃式粉砕機、ハンマーミル、ボールミル、ジェット粉砕機、コロイドミルなどが挙げられ、粉砕条件は特に制限されない。
【0033】
混合工程は、製剤分野における慣用の方法を使用することができ、各成分を均一に混合できる方法であれば、装置、手段とも特に制限されない。
造粒工程も、製剤分野における慣用の方法を使用することができ、粉砕工程で得られた粉砕品、および各種添加剤を造粒機に入れ、結合剤液を添加する。造粒工程中に乾燥してもよい。造粒方法として、例えば、流動層造粒法、溶融造粒法、高速攪拌造粒法、解砕(粉砕)造粒法、押出造粒法、転動造粒法、噴霧造粒法、乾式造粒法あるいはそれらの方法により用いられる装置などが挙げられる。
【0034】
乾燥方法は、特に限定されず、製剤分野における慣用の方法を使用することができる。
混合工程では、造粒品と各種添加剤を混合する。
圧縮成型工程(打錠工程)では、混合品を、回転式打錠機、単発式打錠機などを用いて打錠し、打錠品とする。該工程としては、本発明の医薬組成物を成形する方法であれば装置、手段とも特に制限されない。
【0035】
フィルムコーティング工程として、適宜打錠後に錠剤表面にフィルムコーティングを施してもよく、その方法として、製剤分野における慣用の方法を使用することができる。
また、本発明の医薬組成物のその他の態様は、変色が抑制された医薬組成物である。制酸剤を含有させることにより、モサプリドまたはその塩を含有する医薬組成物の変色を抑制させるとともに、長期にわたって安定に保存することが可能になる。ここで、本発明でいう「変色」とは、医薬組成物の色が変わることをいい、その程度は特に制限されないが、医薬組成物が着色すること、さらには、褐変あるいは黄変することをいう。本発明によれば、医薬組成物の変色を長期間抑制することができる。なお、本効果は、例えば、開放して60℃2ヶ月間、より好ましくは60℃4週間の条件下で試験を行うことにより確認することができる。
【0036】
また、別の観点からは、本発明は、モサプリドまたはその塩を含有する医薬組成物の変色を抑制するための、制酸剤を含有する変色抑制剤に関する。医薬組成物全体量に対する変色抑制剤の含有量は、上記したモサプリドまたはその塩と制酸剤との配合比に基づき計算することができる。
【0037】
さらに別の観点からは、本発明は、モサプリドまたはその塩を含有する医薬組成物の変色を抑制する方法に関する。当該方法は、モサプリドまたはその塩に対して制酸剤を1:20〜1:80の配合比(重量比)で混合することを特徴とする。本発明の方法により、モサプリドまたはその塩を含有する医薬組成物の変色を抑制させるとともに、長期にわたって安定に保存することが可能になる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の内容を、本発明の実施例を参照しつつ詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特に記載しない限り、本明細書において数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0039】
実施例1〜5
下記表1の配合量で、クエン酸モサプリド(製品名:Mosapride Citrate、メーカー名:Zhejiang Sanmen Hengkang Pharmaceutical社)とメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(製品名:ノイシリンFH1、メーカー名:富士化学工業)、D−マンニトール(製品名:PEARLITOL 50 C-MANNITOL、メーカー名:ロケット社)、ステアリン酸マグネシウム(製品名:ステアリン酸マグネシウム植物性、メーカー名:太平化学産業)、軽質無水ケイ酸(製品名:アドソリダー101、メーカー名:富士シリシア化学)、ヒドロキシプロピルセルロース(製品名:HPC-L Fine Powder、メーカー名:日本曹達)を混合し、精製水を適量添加しながら混錬することにより造粒した。造粒品を乾燥、整粒し、実施例1〜5の医薬品組成物(顆粒剤)を得た。
【0040】
実施例1〜5の顆粒剤を4℃および60℃開放下で4週間放置し、変色の程度を目視で評価した(++:黄変、+:やや黄変、±:僅かに黄変、−:変化なし)。表1に示されるように、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合した場合、実施例1〜5のすべての実施例において評価後の製剤の色に変化はなく、黄変が完全に抑制できたことが確認された。
【0041】
比較例1および2
比較例1の散剤は、表1に示される配合量で、制酸剤を添加しないことを除き、実施例1〜5と同様の方法で調製した。また、比較例2は、市販のガスモチン(登録商標)散1%を、クエン酸モサプリドの用量が15mgとなる量で計量して使用した。
【0042】
表2に示されるように、制酸剤を配合しない比較例1および2の場合、4℃で4週間放置した場合には製剤の色に変化はなかったものの、60℃開放下で4週間放置した場合には製剤が黄変していることが確認され、制酸剤が製剤の変色抑制に寄与することが明らかとなった。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例6〜9
実施例6〜9の散剤は、表1に示される配合量で、制酸剤として「メタケイ酸アルミン酸マグネシウム」のかわりに「炭酸水素ナトリウム」(製品名:重炭酸ナトリウム局方用P、メーカー名:東ソー)を使用したことを除き、実施例1〜5と同様の方法で調製した。
【0045】
表2に示されるように、持続性制酸剤(メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)と同様に、速効性制酸剤(炭酸水素ナトリウム)の場合にも、製剤の黄変が抑えられることが確認され、十分な変色抑制効果を有することが明らかとなった。
【0046】
また、これらの結果から、持続性制酸剤および速効性制酸剤を併用する場合にも、製剤の変色が抑制されることが期待できる。
【0047】
【表2】
【0048】
処方例1〜4
以下に、散剤、顆粒剤、錠剤の処方例を示す。表3に記載の処方例に従い、常法通り調製して各製剤を調製することができる。
【0049】
【表3】