特許第6117763号(P6117763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6117763
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20170410BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20170410BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   H05H1/46 B
   H01L21/302 101D
   C23C16/511
   H01L21/304 645C
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-238113(P2014-238113)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-100283(P2016-100283A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2015年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 俊彦
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−190449(JP,A)
【文献】 特開2000−260747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00−1/54
H01L 21/302−21/3065
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理空間を画成する処理容器と、
前記処理空間に対向する対向面を有する誘電体と、
前記誘電体の前記対向面とは反対側の面上に設けられたスロット板であって、プラズマを生成するためのマイクロ波を前記誘電体を介して前記処理空間へ放射する複数のスロットが、前記処理容器の中心が延在する方向の線を中心として周方向に沿って配置されたスロット板と、
前記スロット板上に設けられた遅波板であって、前記複数のスロットを覆うように前記を中心として前記スロット板の径方向に放射状に延び、前記複数のスロットの各々へ前記マイクロ波を供給する複数の延出部を有する遅波板と
を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記複数の延出部のうち互いに隣接する延出部によって挟まれる空間に、前記マイクロ波を遮蔽する遮蔽部材が配置されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記遅波板上に設けられた冷却ジャケットをさらに備え、
前記遮蔽部材は、前記冷却ジャケットに取り付けられることで前記空間に配置されることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材は、前記スロット板に取り付けられることで前記空間に配置されることを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記複数の延出部の各々の幅は、前記遅波板を伝播する前記マイクロ波の波長の1/2〜1倍の長さの範囲に設定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記複数の延出部の各々の厚みは、前記複数の延出部の各々の幅よりも短いことを特徴とする請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記複数の延出部の各々の厚みは、前記遅波板を伝播する前記マイクロ波の波長の1/2倍未満の長さに設定されることを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の種々の側面及び実施形態は、プラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造プロセスでは、薄膜の堆積又はエッチング等を目的としたプラズマ処理が広く行われている。高性能かつ高機能な半導体を得るためには、被処理基板の被処理面全面に対し、均一なプラズマ処理を行うことが要求される。
【0003】
近年のプラズマ処理においては、マイクロ波を利用してプラズマを生成するプラズマ処理装置が用いられている。このようなプラズマ処理装置は、複数のスロットが周方向に沿って配置されたスロット板と、スロット板上に設けられた遅波板とを備える。スロット板は、複数のスロットから、プラズマを生成するためのマイクロ波を放射する。スロット板の複数のスロットから放射されたマイクロ波は、スロット板と処理容器内のプラズマ処理空間との間に設けられた誘電体によって、プラズマ処理空間へ導かれる。遅波板は、スロット板の複数のスロットの各々へマイクロ波を供給する。
【0004】
ところで、このようなプラズマ処理装置においては、被処理基板の被処理面全面に対し、均一なプラズマ処理を行うために、遅波板内の電界強度の偏りを抑制することが求められる。この点、スロット板の径方向に沿って遅波板内を伝播するマイクロ波を遅波板の外周に形成された凹凸によって遅波板の中心側へ反射し、マイクロ波の反射波どうしを相殺させる従来技術が存在する。スロット板の径方向に沿って遅波板内を伝播するマイクロ波の反射波どうしが相殺されることによって、スロット板の径方向に沿った遅波板内の電界強度の偏りが改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4554065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術では、スロット板の周方向に沿って配置された複数のスロットから遅波板へ戻るマイクロ波の反射波に起因して遅波板内で発生する、スロット板の周方向に沿った電界強度の偏りを抑制することまでは考慮されていない。
【0007】
すなわち、スロット板の周方向に沿って配置された複数のスロットから遅波板へ戻るマイクロ波の反射波は、スロット板の径方向だけでなくスロット板の周方向へも伝播することが知られている。しかしながら、従来技術のように、スロット板の径方向に沿って遅波板内を伝播するマイクロ波の反射波どうしを相殺させるだけでは、スロット板の周方向に沿って遅波板内を伝播するマイクロ波の反射波が残存するため、残存する反射波どうしが互いに干渉し合う。結果として、遅波板内で発生する、スロット板の周方向に沿った電界強度の偏りが増大する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示するプラズマ処理装置は、1つの実施態様において、処理空間を画成する処理容器と、前記処理空間に対向する対向面を有する誘電体と、前記誘電体の前記対向面とは反対側の面上に設けられたスロット板であって、プラズマを生成するためのマイクロ波を前記誘電体を介して前記処理空間へ放射する複数のスロットが軸線を中心として周方向に沿って配置されたスロット板と、前記スロット板上に設けられた遅波板であって、前記複数のスロットを覆うように前記軸線を中心として前記スロット板の径方向に放射状に延び、前記複数のスロットの各々へ前記マイクロ波を供給する複数の延出部を有する遅波板とを備えた。
【発明の効果】
【0009】
開示するプラズマ処理装置の1つの態様によれば、スロット板の周方向に沿って配置された複数のスロットから遅波板へ戻るマイクロ波の反射波に起因して遅波板内で発生する、スロット板の周方向に沿った電界強度の偏りを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置の概略を示す図である。
図2図2は、一実施形態におけるスロット板を軸線X方向から見た平面図である。
図3図3は、一実施形態における遅波板とスロット板とが組み合わされた状態を示す斜視図である。
図4図4は、一実施形態における遅波板内の電界強度の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、処理空間を画成する処理容器と、処理空間に対向する対向面を有する誘電体と、誘電体の対向面とは反対側の面上に設けられたスロット板であって、プラズマを生成するためのマイクロ波を誘電体を介して処理空間へ放射する複数のスロットが軸線を中心として周方向に沿って配置されたスロット板と、スロット板上に設けられた遅波板であって、複数のスロットを覆うように軸線を中心としてスロット板の径方向に放射状に延び、複数のスロットの各々へマイクロ波を供給する複数の延出部を有する遅波板とを備えた。
【0012】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、複数の延出部のうち互いに隣接する延出部によって挟まれる空間に、マイクロ波を遮蔽する遮蔽部材が配置される。
【0013】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、遅波板上に設けられた冷却ジャケットをさらに備え、遮蔽部材は、冷却ジャケットに取り付けられることで空間に配置される。
【0014】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、遮蔽部材は、スロット板に取り付けられることで空間に配置される。
【0015】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、複数の延出部の各々の幅は、遅波板を伝播するマイクロ波の波長の1/2〜1倍の長さの範囲に設定される。
【0016】
また、開示するプラズマ処理装置は、1つの実施形態において、複数の延出部の各々の厚みは、複数の延出部の各々の幅よりも短い。
【0017】
また、複数の延出部の各々の厚みは、遅波板を伝播するマイクロ波の波長の1/2倍未満の長さに設定される。
【0018】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0019】
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置の概略を示す図である。図1に示すプラズマ処理装置10は、処理容器12、ステージ14、マイクロ波発生器16、アンテナ18、及び誘電体窓20を備えている。
【0020】
処理容器12は、プラズマ処理を行うための処理空間Sを画成している。処理容器12は、側壁12a、及び、底部12bを有する。側壁12aは、略筒形状に形成されている。以下、側壁12aの筒形状の中心において筒形状の延在する軸線Xを仮想的に設定し、軸線Xの延在方向を軸線X方向という。底部12bは、側壁12aの下端側に設けられ、側壁12aの底側開口を覆う。底部12bには、排気用の排気孔12hが設けられている。側壁12aの上端部は開口している。
【0021】
側壁12aの上端部開口は、誘電体窓20によって閉じられている。誘電体窓20と側壁12aの上端部との間にはOリング21が介在している。誘電体窓20は、Oリング21を介して側壁12aの上端部に設けられる。Oリング21により、処理容器12の密閉がより確実なものとなる。ステージ14は、処理空間S内に収容され、被処理基板Wが載置される。誘電体窓20は、処理空間Sに対向する対向面20aを有する。
【0022】
マイクロ波発生器16は、例えば、2.45GHzのマイクロ波を発生する。一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、チューナ22、導波管24、モード変換器26、及び同軸導波管28を更に備えている。
【0023】
マイクロ波発生器16は、チューナ22を介して導波管24に接続されている。導波管24は、例えば、矩形導波管である。導波管24は、モード変換器26に接続されており、モード変換器26は、同軸導波管28の上端に接続されている。
【0024】
同軸導波管28は、軸線Xに沿って延びている。この同軸導波管28は、外側導体28a及び内側導体28bを含んでいる。外側導体28aは、軸線X方向に延びる略円筒形状を有している。内側導体28bは、外側導体28aの内部に設けられている。この内側導体28bは、軸線Xに沿って延びる略円筒形状を有している。
【0025】
マイクロ波発生器16によって発生されたマイクロ波は、チューナ22及び導波管24を介してモード変換器26に導波される。モード変換器26は、マイクロ波のモードを変換して、モード変換後のマイクロ波を同軸導波管28に供給する。同軸導波管28からのマイクロ波は、アンテナ18に供給される。
【0026】
アンテナ18は、マイクロ波発生器16によって発生されるマイクロ波に基づいて、プラズマを生成するためのマイクロ波を放射する。アンテナ18は、スロット板30、遅波板32、及び冷却ジャケット34を有する。アンテナ18は、誘電体窓20の対向面20aの反対側の面20b上に設けられ、プラズマを生成するためのマイクロ波を誘電体窓20を介して処理空間Sへ放射する。
【0027】
スロット板30は、軸線Xに板面が直交する略円板状に形成される。スロット板30は、誘電体窓20の対向面20aの反対側の面20b上に、誘電体窓20と互いに板面を合わせて配置される。図2は、一実施形態におけるスロット板を軸線X方向から見た平面図である。一実施形態においては、図2に示すように、スロット板30は、ラジアルラインスロットアンテナを構成するスロット板である。スロット板30は、導電性を有する金属製の円板状に形成される。スロット板30には、複数のスロット30aが軸線Xを中心として周方向に沿って配置されている。複数のスロット30aは、マイクロ波を誘電体窓20を介して処理空間Sへ放射するスリット状の孔である。また、スロット板30の中央部には、後述する導管36が貫通可能な貫通孔30dが形成される。
【0028】
なお、図2では、複数のスロット30aがスリット状の孔として形成される例を示したが、複数のスロット30aの形状はこれに限定されない。例えば、複数のスロット30aの形状は、円形状でもよく、また、互いに交差する方向に延びる長孔を組み合わせて得られる形状でもよい。
【0029】
図1を再び参照する。遅波板32は、スロット板30上に設けられている。遅波板32は、例えば石英等の誘電体により形成され、スロット板30の複数のスロット30aにマイクロ波を供給する。なお、遅波板32の詳細な構成については、後述する。
【0030】
冷却ジャケット34は、内部に冷媒が通流可能な流路34aが形成されており、冷媒の通流により遅波板32及びスロット板30を冷却する。冷却ジャケット34の表面は、導電性を有する。冷却ジャケット34の上部表面には、外側導体28aの下端が電気的に接続されている。また、内側導体28bの下端は、冷却ジャケット34及び遅波板32の中央部分に形成された孔を通って、スロット板30に電気的に接続されている。
【0031】
同軸導波管28からのマイクロ波は、遅波板32に伝播され、スロット板30のスロット30aから誘電体窓20を介して、処理空間S内に導入される。誘電体窓20は、略円板形状を有しており、例えば石英によって構成される。この誘電体窓20は、処理空間Sとアンテナ18との間に設けられており、一実施形態においては、軸線X方向においてアンテナ18の直下に設けられている。
【0032】
一実施形態においては、同軸導波管28の内側導体28bの内孔には、導管36が通っている。スロット板30の中央部には、導管36が貫通可能な貫通孔30dが形成されている。導管36は、軸線Xに沿って延在しており、ガス供給系38、ガス供給系39、及び、ガス供給系40に接続される。
【0033】
ガス供給系38は、導管36に被処理基板Wを処理するための処理ガスを供給する。ガス供給系38によって供給される処理ガスは、炭素を含む。この処理ガスは、一実施形態では、エッチングガスであり、例えば、CF4ガス、又は、CH2F2ガスである。ガス供給系38は、ガス源38a、弁38b、及び流量制御器38cを含み得る。ガス源38aは、処理ガスのガス源である。弁38bは、ガス源38aからの処理ガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器38cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源38aからの処理ガスの流量を調整する。
【0034】
ガス供給系39は、酸素ガス(O2ガス)を導管36に供給する。ガス供給系39から供給される酸素ガスはクリーニングガスを構成する。ガス供給系39は、ガス源39a、弁39b、及び流量制御器39cを含み得る。ガス源39aは、酸素ガスのガス源である。弁39bは、ガス源39aからのガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器39cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源39aからのガスの流量を調整する。
【0035】
ガス供給系40は、アルゴンガスを導管36に供給する。一実施形態においては、ガス供給系39からのクリーニングガスに加えて、ガス供給系40からアルゴンガスが供給される。ガス供給系40は、ガス源40a、弁40b、及び流量制御器40cを含み得る。ガス源40aは、アルゴンガスのガス源である。弁40bは、ガス源40aからのアルゴンガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器40cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源40aからのアルゴンガスの流量を調整する。
【0036】
一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、更に、インジェクタ41を更に備え得る。インジェクタ41は、導管36からのガスを誘電体窓20に形成された貫通孔20hに供給する。誘電体窓20の貫通孔20hに供給されたガスは、処理空間Sに供給される。以下の説明では、導管36、インジェクタ41、及び、貫通孔20hによって構成されるガス供給経路を、「中央ガス導入部」ということがある。
【0037】
一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、ガス供給部42を更に備え得る。ガス供給部42は、ステージ14と誘電体窓20との間において、軸線Xの周囲からガスを処理空間Sに供給する。以下の説明では、ガス供給部42のことを、「周辺ガス導入部」ということがある。ガス供給部42は、導管42aを含む。導管42aは、誘電体窓20とステージ14との間において軸線Xを中心に環状に延在している。導管42aには、複数のガス供給孔42bが形成されている。複数のガス供給孔42bは、環状に配列され、軸線Xに向けて開口しており、導管42aに供給されたガスを、軸線Xに向けて供給する。このガス供給部42は、導管46を介して、ガス供給系43、ガス供給系44、及びガス供給系45に接続されている。
【0038】
ガス供給系43は、ガス供給部42に被処理基板Wを処理するための処理ガスを供給する。ガス供給系43から供給される処理ガスは、ガス供給系38の処理ガスと同様に、炭素を含む。この処理ガスは、一実施形態では、エッチングガスであり、例えば、CF4ガス、又は、CH2F2ガスである。ガス供給系43は、ガス源43a、弁43b、及び流量制御器43cを含み得る。ガス源43aは、処理ガスのガス源である。弁43bは、ガス源43aからの処理ガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器43cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源43aからの処理ガスの流量を調整する。
【0039】
ガス供給系44は、酸素ガス(O2ガス)をガス供給部42に供給する。ガス供給系44から供給されるガスはクリーニングガスを構成する。ガス供給系44は、ガス源44a、弁44b、及び流量制御器44cを含み得る。ガス源44aは、酸素ガスのガス源である。弁44bは、ガス源44aからのガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器44cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源44aからのガスの流量を調整する。
【0040】
ガス供給系45は、アルゴンガスをガス供給部42に供給する。一実施形態においては、ガス供給系44からのクリーニングガスに加えて、ガス供給系45からアルゴンガスが供給される。ガス供給系45は、ガス源45a、弁45b、及び流量制御器45cを含み得る。ガス源45aは、アルゴンガスのガス源である。弁45bは、ガス源45aからのアルゴンガスの供給及び供給停止を切り替える。流量制御器45cは、例えば、マスフローコントローラであり、ガス源45aからのアルゴンガスの流量を調整する。
【0041】
ステージ14は、軸線X方向において誘電体窓20と対面するように設けられている。このステージ14は、誘電体窓20と当該ステージ14との間に処理空間Sを挟むように設けられている。ステージ14上には、被処理基板Wが載置される。一実施形態においては、ステージ14は、台14a、フォーカスリング14b、及び、静電チャック14cを含む。
【0042】
台14aは、筒状支持部48によって支持されている。筒状支持部48は、絶縁性の材料で構成されており、底部12bから垂直上方に延びている。また、筒状支持部48の外周には、導電性の筒状支持部50が設けられている。筒状支持部50は、筒状支持部48の外周に沿って処理容器12の底部12bから垂直上方に延びている。この筒状支持部50と側壁12aとの間には、環状の排気路51が形成されている。
【0043】
排気路51の上部には、複数の貫通孔が設けられた環状のバッフル板52が取り付けられている。排気孔12hの下部には排気管54を介して排気装置56が接続されている。排気装置56は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有している。排気装置56により、処理容器12内の処理空間Sを所望の真空度まで減圧することができる。
【0044】
台14aは、高周波電極を兼ねている。台14aには、給電棒62及びマッチングユニット60を介して、RFバイアス用の高周波電源58が電気的に接続されている。高周波電源58は、被処理基板Wに引き込むイオンのエネルギーを制御するのに適した一定の周波数、例えば、13.65MHzの高周波電力を所定のパワーで出力する。マッチングユニット60は、高周波電源58側のインピーダンスと、主に電極、プラズマ、処理容器12といった負荷側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容している。この整合器の中に自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。
【0045】
台14aの上面には、静電チャック14cが設けられている。静電チャック14cは、被処理基板Wを静電吸着力で保持する。静電チャック14cの径方向外側には、被処理基板Wの周囲を環状に囲むフォーカスリング14bが設けられている。静電チャック14cは、電極14d、絶縁膜14e、及び、絶縁膜14fを含んでいる。電極14dは、導電膜によって構成されており、絶縁膜14eと絶縁膜14fの間に設けられている。電極14dには、高圧の直流電源64がスイッチ66および被覆線68を介して電気的に接続されている。静電チャック14cは、直流電源64より印加される直流電圧により発生するクーロン力によって、被処理基板Wを吸着保持することができる。
【0046】
台14aの内部には、周方向に延びる環状の冷媒室14gが設けられている。この冷媒室14gには、チラーユニット(図示せず)より配管70,72を介して所定の温度の冷媒、例えば、冷却水が循環供給される。冷媒の温度によって静電チャック14cの上面温度が制御される。伝熱ガス、例えば、Heガスがガス供給管74を介して静電チャック14cの上面と被処理基板Wの裏面との間に供給されており、この静電チャック14cの上面温度により被処理基板Wの温度が制御される。
【0047】
このように構成されたプラズマ処理装置10では、導管36及びインジェクタ41の貫通孔を介して、誘電体窓20の貫通孔20hから処理空間S内に軸線Xに沿ってガスが供給される。また、貫通孔20hよりも下方において、ガス供給部42から軸線Xに向けてガスが供給される。さらに、アンテナ18から誘電体窓20を介して処理空間S及び/又は貫通孔20h内にマイクロ波が導入される。これにより、処理空間S及び/又は貫通孔20hにおいてプラズマが発生する。このように、プラズマ処理装置10によれば、磁場を加えずに、プラズマを発生させることができる。
【0048】
次に、図3を参照して、遅波板32の詳細な構成について説明する。図3は、一実施形態における遅波板とスロット板とが組み合わされた状態を示す斜視図である。図3に示すように、遅波板32は、軸線Xに板面が直交する略歯車形状に形成される。遅波板32は、スロット板30と冷却ジャケット34の板側表面との間に設けられている。遅波板32は、円板状の本体部32aと、本体部32aから延びる複数の延出部32bとを有する。本体部32aの中央部には、同軸導波管28の内側導体28bを配置するための略円筒状の孔が設けられる。この孔の周囲を形成する本体部32aの内径側の端部には、遅波板32の厚み方向に突出するリング状の突出部32cが設けられる。同軸導波管28の内側導体28bと外側導体28aとの隙間を伝播したマイクロ波は、突出部32cを介して本体部32aに入力され、本体部32a内を伝播した後、複数の延出部32bへ入力される。
【0049】
複数の延出部32bは、スロット板30の複数のスロット30aをそれぞれ覆うように軸線Xを中心としてスロット板30の径方向に放射状に延びている。複数の延出部32bは、本体部32aからマイクロ波が入力されると、入力されたマイクロ波をスロット板30の複数のスロット30aの各々へ供給する。そして、複数の延出部32bからスロット板30の複数のスロット30aの各々へ供給されたマイクロ波は、複数のスロット30aから誘電体窓20を介して、処理空間Sへ放射される。そして、処理空間Sで反射されたマイクロ波(以下「マイクロ波の反射波」という)は、スロット板30の複数のスロット30aから複数の延出部32bへ戻り、スロット板30の径方向に沿って複数の延出部32b内を伝播する。
【0050】
また、複数の延出部32bの各々の幅W1は、遅波板32を伝播するマイクロ波の波長の1/2〜1倍の長さの範囲に設定されることが好ましい。また、複数の延出部32bの各々の厚みT1は、複数の延出部32bの各々の幅W1よりも短いことが好ましい。例えば、複数の延出部23の各々の厚みT1は、遅波板32を伝播するマイクロ波の波長の1/2倍未満の長さに設定されることが好ましい。このように複数の延出部32bの各々の形状が設定されることにより、複数の延出部32bの各々を伝播するマイクロ波の分布又はマイクロ波の反射波の分布が基本モードであるTE10モードに固定される。
【0051】
複数の延出部32bのうち互いに隣接する延出部32bによって挟まれる空間32b−1には、遮蔽部材35が配置される。遮蔽部材35は、例えば導体によって空間32b−1の形状に対応する形状に形成され、マイクロ波を遮蔽する。遮蔽部材35が空間32b−1に配置されることにより、延出部32bから空間32b−1へ漏れ出すマイクロ波の反射波が空間32b−1を介して他の延出部32bへ伝播することを抑制することができ、マイクロ波の反射波どうしの干渉がより確実に回避される。
【0052】
遮蔽部材35は、スロット板30に取り付けられることで空間32b−1に配置される。これにより、空間32b−1のうちスロット板30近傍の領域へ漏れ出すマイクロ波の反射波が遮蔽部材35によって効率的に遮断される。
【0053】
図4は、一実施形態における遅波板内の電界強度の分布のシミュレーション結果を示す図である。図4において、色の濃淡は、電界強度の強弱を示している。図4に示すように、遅波板32が、複数のスロット30aを覆う複数の延出部32bを有することで、マイクロ波の反射波がスロット板30の径方向(図4中の矢印方向)に沿って複数の延出部32b内を伝播する。これにより、マイクロ波の反射波がスロット板30の周方向に沿って遅波板32内を伝播する事態が回避され、マイクロ波の反射波どうしの干渉が回避される。このように、マイクロ波の反射波どうしの干渉が回避されることで、図4に示すように、マイクロ波の反射波に起因して遅波板32内で発生する、スロット板30の周方向に沿った電界強度の偏りを抑制することが可能となった。
【0054】
以上、一実施形態のプラズマ処理装置10では、遅波板32が、複数のスロット30aを覆うようにスロット板30の径方向に延びる複数の延出部32bを有することで、複数の延出部32b内でスロット板30の径方向に沿ってマイクロ波の反射波を伝播させることができる。結果として、一実施形態のプラズマ処理装置10によれば、遅波板32内で発生する、スロット板30の周方向に沿った電界強度の偏りを抑制することができる。
【0055】
なお、上記した実施形態では、遮蔽部材35が、スロット板30に取り付けられることで空間32b−1に配置される例を示したが、開示技術はこれに限られない。例えば、遮蔽部材35は、冷却ジャケット34に取り付けられることで空間32b−1に配置されてもよい。これにより、マイクロ波の反射波どうしの干渉より一層抑制することができるとともに、冷却ジャケット34から効率良く空間32b−1の熱を放出することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 プラズマ処理装置
12 処理容器
14 ステージ
16 マイクロ波発生器
18 アンテナ
20 誘電体窓
30 スロット板
30a スロット
32 遅波板
32b 延出部
34 冷却ジャケット
35 遮蔽部材
図1
図2
図3
図4