【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明の制震補強架構柱の接合構造は、柱・梁からなるフレームを有する主構造体の構面外にその構面に平行に配列し、互いに間隔を隔てて立設される支柱と、構面内水平方向に隣接する支柱間に架設されるつなぎ梁と、構面内水平方向に隣接する支柱間に架設される、ブレース本体にダンパーを組み込んだダンパー一体型ブレースを備え、前記支柱が鉛直方向に複数本の支柱材に分離し、上下に分離した支柱材間に両者間の相対水平移動を許容する絶縁装置が介在した、前記主構造体を制震補強するための制震補強架構が前記主構造体の前記フレームから距離を置いた位置に配置され、前記主構造体に接合された制震補強架構付き構造物において、
前記制震補強架構の複数本の支柱の内、少なくともいずれかの支柱の最下層の前記支柱材に対向する前記主構造体の前記柱の前記制震補強架構側の正面に境界面プレートが重なって接合されると共に、この境界面プレートが直接、もしくは間接的に前記最下層の前記支柱材に接合され、前記柱の前記正面と
この正面との間に距離が確保された前記支柱材との間にコンクリートが充填され、このコンクリート中に前記境界面プレートとその前記支柱材への接合部分が埋設され
、
前記最下層の前記支柱材の幅方向両側に、前記支柱材から前記柱側へ張り出し、前記コンクリートの充填領域を仕切る側面プレートが一体化し、この側面プレートは前記柱の、前記正面に交差する側面に重なって前記柱に接合されていることを構成要件とする。
【0012】
制震補強架構1の複数本の支柱2は
図8に示すように主構造体6の構面に平行に、構面内水平方向に互いに間隔を隔てて配列し、各支柱2は鉛直方向に複数本の支柱材21〜23に分離する。上下に分離した支柱材21、22(22、23)間には両者間の相対水平移動を許容しながら、相対水平移動後に原位置に復帰させる絶縁装置5が介在する。同一レベルで水平方向に隣接する支柱材21、21(22、22(23、23))間には両支柱材21、21を互いにつなぎ、相対水平移動時にも両支柱材21、21の軸線が鉛直方向を向くように両支柱材21、21を保持するつなぎ梁3が架設される。
【0013】
レベルを異にして隣接する支柱材21、22(22、23)間にはその隣接する支柱材21、22(22、23)間の相対水平移動時に、支柱材21、22(22、23)間の距離の変化に応じて伸縮し、その相対移動量、または相対速度に応じた減衰力を発生するダンパー42を内蔵したダンパー一体型ブレース(以下、ブレース)4が架設される。「構面内水平方向」は主構造体6の桁行方向を指し、主構造体6のスパン方向は構面外方向になる。
【0014】
制震補強架構1は少なくともいずれかの支柱2において主構造体6の柱61に接合されるが、主構造体6の層間変形時の主構造体6からの水平せん断力を制震補強架構1に伝達させるために、制震補強架構1は
図3、
図9に示すようにつなぎ梁3においても主構造体6の梁やスラブ、壁62等の構造部材に接続スラブ31を介して接合される。接続スラブ31は主構造体6の構造部材とつなぎ梁3との間に構築され、双方に少なくとも水平せん断力の伝達が可能な状態に接合される。
【0015】
請求項1における「制震補強架構柱」の「柱」は支柱2であり、特に最下層の支柱材21を指す。支柱2は主に鉄骨造、または鉄筋コンクリート造(鉄骨鉄筋コンクリート造を含む)である。また請求項1における「制震補強架構1が主構造体6のフレームから距離を置いた位置に配置される」の「フレーム」は主構造体6の制震補強架構1寄りの、構面内方向に平行な構面をなすフレームを指す。
【0016】
前記のように制震補強架構1が主構造体6の層間変形に追従して変形するときにブレース4に内蔵されたダンパー41に減衰力を発生させる上では、少なくともいずれかの支柱2の内、最下層に位置する支柱材21が主構造体6の柱61に接合される必要があるため、支柱2の最下層の支柱材21が、柱61に重なって接合される境界面プレート7を介して柱61に接合される。
【0017】
境界面プレート7は主構造体6のフレームを構成する柱61の制震補強架構1側を向いた正面に重なって接合され、それに対向する制震補強架構1の最下層の支柱材21には直接、接合されるか、または
図1、
図2に示すように境界面プレート7と支柱材21のそれぞれに接合される接合プレート11と連結材211が互いに接合されることにより間接的に接合される。「直接、接合される」とは、境界面プレート7が支柱材21を構成する鉄骨部材(鋼材)に溶接により、またはボルト等を用いて接合されることを言う。
【0018】
請求項1における「境界面プレートと支柱材との接合部分」は直接、接合される場合の両者の接合部分を指し、接合プレート11と連結材211を介して間接的に接合される場合の両者を含む接合部分を指す。境界面プレート7と支柱材21との接合部分は柱61の正面と支柱材21との間に充填されるコンクリート(以下、本項目中、充填コンクリートと言う)8中に埋設され、この充填コンクリート8中への接合部分の埋設と定着により最下層の支柱材21が主構造体6の柱61に剛に接合される。充填コンクリート8中には必要により柱61の軸方向の引張抵抗材としての鉄筋が配筋されることもある。
【0019】
境界面プレート7は主構造体6の柱61の正面(表面)に重なって接合されることで、前記のように柱61の鉛直せん断力を支柱2の最下層の支柱材21に伝達する働きをするため、柱61の軸方向(鉛直方向)には連続した形状をしていることが合理的である。一方、柱61の正面と支柱材21との間には両者を接合する充填コンクリート8の充填のための距離が確保されることで、境界面プレート7を柱61の軸方向に不連続な形状にしなければならない事情はないため、境界面プレート7を柱61の軸方向に連続した形状に形成することが可能であり、
図4、
図5に示すように境界面プレート7に支柱材21の全長に亘る長さを与えることも可能である。
【0020】
図5に示すように境界面プレート7が柱61の軸方向に連続した、例えば長方形状に形成されている場合には、境界面プレート7の連続した長さの範囲で支柱材21の軸方向の伸び変形が柱61に拘束されるため、境界面プレート7による支柱材21の拘束効果が高まり、柱61と支柱材21の一体性も強まる。境界面プレート7が柱61の軸方向に連続しない場合には、不連続の区間において柱61による支柱材21の拘束効果も不連続になるのに対し、連続している場合には、拘束効果が断続しないことによる。
【0021】
また境界面プレート7が重なった柱61の正面には境界面プレート7と充填コンクリート8を介して支柱材21が接合される結果、境界面プレート7が支柱材21の伸び変形を拘束し、鉛直せん断力を伝達するときに軸方向引張力を負担するため、境界面プレート7は柱61の正面を引張力に対して補強する効果も発揮する。特に境界面プレート7が柱61の軸方向に連続した形状をした場合には、柱61の境界面プレート7が重なった面の区間が軸方向に連続して引張力に対して補強されるため、補強効果が不連続になることがなく、補強効果が高い。
【0022】
境界面プレート7の支柱材21側の表面全体と支柱材21との接合部分は充填コンクリート8中に埋設されることで、柱61の鉛直せん断力が支柱材21に伝達されようとするときに、充填コンクリート8との間で付着力と支圧力を発生させる。この付着力と支圧力は柱61の鉛直せん断力に対する抵抗力になるため、これらの力を通じて鉛直せん断力が支柱材21に伝達される。付着力は境界面プレート7の表面と接合部の表面に生じ、支圧力はコンクリート
8中に埋設される接合部分の鉛直せん断力の作用方向に直交する面に生じ、大きさは鉛直せん断力の作用方向への投影面積分になる。
【0023】
特に境界面プレート7の支柱材21側の面に、支柱材21との間で柱61の軸方向のせん断力を伝達するための複数のせん断力伝達部材10が柱61の軸方向に間隔を置いて突設された場合(請求項
5)には、せん断力伝達部材10の表面に生じる付着力と支圧力が鉛直せん断力に対する充填コンクリート8中での抵抗力に加算されるため、柱61からの鉛直せん断力の支柱材21への伝達効果が向上する。境界面プレート7の支柱材21側の面は境界面プレート7の表面である。
【0024】
せん断力伝達部材10の形態は問われないが、例えば軸方向が柱61と支柱材21が対向する方向を向く棒状(ボルト状)、または
図1に示すように柱61の軸方向に直交等、交差する方向を向く面を持つ板(プレート)状の部材が使用される。板状の部材には孔あき鋼板も使用可能であり、その場合、表面が柱61の軸方向に向けられる。
【0025】
せん断力伝達部材10は柱61の軸方向に間隔を置いて複数、支柱材21側へ突設されることで、柱61(支柱材21)の軸方向に分散して充填コンクリート8中に埋設されるため、柱61の鉛直せん断力が柱61の軸方向の全長から均等に、あるいは分散して支柱材21の軸方向に伝達される状態になり、いずれかのせん断力伝達部材10に鉛直せん断力が集中するようなことはない。
【0026】
請求項1では制震補強架構1の支柱材21に対向する柱61の制震補強架構1側の正面(表面)に境界面プレート7が重なって接合されると共に、境界面プレート7が直接、もしくは間接的に支柱材21に接合され、柱61と支柱材21間の充填コンクリート8中に境界面プレート7とその支柱材21への接合部分が埋設されることで、主構造体6の柱61のコンクリートからの鉛直せん断力を境界面プレート7に伝達し、境界面プレート7と充填コンクリート8との接合部分を通じて支柱材21に伝達することができる。
【0027】
柱61の鉛直せん断力が支柱材21に伝達されることで、主構造体6の層間変形時にも制震補強架構1の最下層の支柱材21が主構造体6の柱61に拘束されるため、主構造体6の構面内水平方向に隣接する支柱材21、21間に架設されているブレース4のダンパー42を予定通りに伸縮させることができる結果、ダンパー42に予定通りの減衰力を発生させることが可能になる。
【0028】
境界面プレート7は支柱材21との間で柱61の軸方向のせん断力(鉛直せん断力)の伝達が可能な状態で柱61に接合されれば、境界面プレート7自体の形状と柱61への接合方法は問われず、主構造体6がコンクリート造躯体であれば、既存であるか新設であるか等の条件に応じて決められる。
【0029】
例えば主構造体6が新設のコンクリート造躯体である場合には、境界面プレート7の柱61(コンクリート充填)側に、柱61の軸方向に直交等、交差する方向を向く面を持つ定着プレート等の板を突設し、これを柱61のコンクリート中に埋設することもできる。但し、主構造体6が既存のコンクリート造躯体の場合には柱61側への定着プレートの突設ができないか、困難であるため、
図1等に示すように境界面プレート7を貫通する複数本の棒状(ボルト状)のせん断抵抗材9をコンクリート造躯体である場合の柱61のコンクリート中に埋設させる方法が適切である(請求項
6)。主構造体6の柱61が鉄骨造である場合には、せん断抵抗材9が使用される必要はない。せん断抵抗材9は主に柱61が既存のコンクリート造躯体である場合の柱61のコンクリート中に埋設されるが、新設のコンクリート造躯体の柱61にも使用可能である。
【0030】
せん断抵抗材9も柱61のコンクリート中では表面の付着力とせん断力の作用方向への投影面積分の支圧力をせん断力に対する抵抗力として発揮し、境界面プレート7にその面内方向に係合することで、柱61からの鉛直せん断力を境界面プレート7に伝達する。せん断抵抗材9は柱61のコンクリート中に埋設される区間において柱61の鉛直せん断力を受け、境界面プレート7に係合する部分から境界面プレート7に伝達する。せん断抵抗材9を介して境界面プレート7に伝達された柱61からの鉛直せん断力は境界面プレート7と支柱材21との接合部分と、境界面プレート7に突設された場合の上記のせん断力伝達部材10を介して支柱材21に定着される。
【0031】
せん断抵抗材9は
図7に示すように例えば棒状(ボルト状)の形状をした本体部の軸部91と、軸部91の先端部に形成、または螺合等により接続され、柱61の表面より奥側のコンクリート中に埋設されて定着される定着部92と、軸部91のコンクリートから露出する部分に形成、または螺合等により接続される頭部93を持つ。せん断抵抗材9の定着部92は柱61のコンクリート中に定着される一方、コンクリートから露出する頭部93の少なくとも一部は境界面プレート7の厚さの範囲内に位置し、境界面プレート7に面内方向に係合する。定着部92はコンクリート中に埋設されることで、せん断抵抗材9に生じる軸方向の引き抜き力に抵抗し、境界面プレート7を柱61の表面に接合した状態を維持する。
【0032】
せん断抵抗材9は柱61が主に既存のコンクリート造の場合に柱61のコンクリート中に埋設されるが、その場合、定着部92を含むせん断抵抗材9の本体(軸部91)は柱61のコンクリート中に境界面プレート7側の正面から形成された削孔61a中に挿入される。定着部92は削孔61a内の奥まで挿入され、削孔61a内にモルタル、接着剤等の充填材61bが充填されることにより軸部91と共にコンクリート(充填材61b)中に埋設され、定着される。頭部93はコンクリートの表面側に位置する。
【0033】
定着部92と頭部93はせん断抵抗材9本体である軸部91の一部であることもあるが、コンクリートの削孔61a中にせん断抵抗材9が挿入された後の削孔61a内への充填材61bの充填作業を容易にするために、頭部93は螺合等により軸部91から分離自在に接続されることもある。頭部93が軸部91から分離自在である場合、削孔61a内には頭部93が不在の状態で充填材61bが充填され、充填完了後、頭部93が軸部91に螺合により接続される。定着部92も軸部91の先端部に螺合等により接続されることもある。
【0034】
せん断抵抗材9は頭部93において境界面プレート7に面内方向に係合するが、
図7に示すように頭部93の定着部92側に、削孔61a内に挿入される挿入部94が一体的に形成された場合には、頭部93は削孔61aの周囲のコンクリートにも放射方向に係合することができる。このため、頭部93が挿入部94において柱61のコンクリートから直接、鉛直せん断力を受け、そのまま境界面プレート7に伝達することが可能になり、挿入部94がない場合より鉛直せん断力の伝達効果が高まる。
【0035】
せん断抵抗材9も柱61の軸方向に間隔を置いて複数、配列することで、柱61の軸方向に分散して柱61のコンクリート中に埋設されるため、柱61の鉛直せん断力が柱61の軸方向の全長から均等に、あるいは分散して支柱材21の軸方向に伝達される状態になり、いずれかのせん断抵抗材9に鉛直せん断力が集中するようなことはない。せん断抵抗材9が柱61の軸方向に間隔を置いて配列することで、柱61に接合される支柱材21の全長に亘ってせん断抵抗材9を配列させることができる結果、柱21の鉛直せん断力を支柱材21の全長を通じて支柱材21に伝達させることができ、鉛直せん断力の伝達量が増大するため、鉛直せん断力の伝達効果が向上する。
【0036】
せん断抵抗材9は棒状である場合には、
図1、
図5に示すように境界面プレート7の幅方向に並列して配列可能であり、境界面プレート7の幅方向に並列することで、境界面プレート7の幅方向にも均等に柱61の鉛直せん断力が複数本のせん断抵抗材9に伝達される状態を得ることが可能である。
【0037】
なお、コンクリート造の構造部材の表面に重なるプレートを用いてプレートの面内方向のせん断力が構造部材に伝達されるようにプレートを構造部材に接合する方法として、構造部材の表面にベースプレートを重ね、ベースプレートを貫通するアンカーをその構造部材中に埋設する方法がある(特許第4189292号公報参照)。ここでのアンカーは請求項
6のせん断抵抗材9に相当し得る。この方法によれば、ベースプレートの面内方向に作用するせん断力をベースプレートの挿通孔の内周面からアンカーに伝達し、アンカーから構造部材に伝達することができる(段落0026)。
【0038】
しかしながら、この方法ではベースプレートに接続されるブレースに作用する軸方向力の、ベースプレート面内方向成分を構造部材に伝達することを想定しているため(段落0005、0069、0075)、本発明のように一方の柱61の軸方向力を鉛直せん断力として他方の柱(支柱材21)に伝達させるように両柱を接合するには、本方法をそのまま適用するだけでは十分とは言えず、何らかの追加の工夫を必要とする。
【0039】
この点、請求項1ではコンクリート造躯体である主構造体6の柱61の正面(表面)に重なって接合される境界面プレート7を前記のように柱61の軸方向に連続した形状に形成することが可能であり、連続させることに障害はないため、請求項
6のように複数本のせん断抵抗材9を柱61の軸方向に間隔を置いて配列させることが可能になっている。この結果、前記のように柱61の鉛直せん断力を支柱材21の全長に分散したせん断抵抗材9を通じて支柱材21に伝達させることができるため、柱61と支柱材21との間で十分な鉛直せん断力の伝達を図ることが可能になっている。
【0040】
請求項1ではまた、柱61の正面と支柱材21との間に充填コンクリート8が充填され、境界面プレート7とその支柱材21との接合部分が充填コンクリート8中に埋設されるため、境界面プレート7の表面にせん断力伝達部材10を突設することで(請求項
5)、柱61からの鉛直せん断力をせん断力伝達部材10を介しても支柱材21に伝達することが可能になっている。
【0041】
只、境界面プレート7にせん断力伝達部材10を突設する場合(請求項
5)にも、柱61の表面と充填コンクリート8とは境界面プレート7を介して接合されるに過ぎないため、柱61からの鉛直せん断力の支柱材21への伝達が十分でないこともある。
【0042】
そこで、主構造体6が既存のコンクリート造躯体の場合には、最下層の支柱材21の主構造体6の柱61側に、柱61の、正面に交差する面をなす側面に重なって柱61に接合される側面プレート14を一体化させることで(請求項
1)、鉛直せん断力の支柱材21への伝達を側面プレート14に補わせることもある。側面プレート14は柱61の正面から距離を置いた支柱材21から柱61側へ張り出して柱61の側面に重なることで、柱61と支柱材21間に充填される充填コンクリート8の充填領域を仕切るため、充填コンクリート8のせき板を兼ねる役目も果たす。
【0043】
請求項
1では柱61の側面に重なって接合される側面プレート14が支柱材21の柱61側に一体化することで、境界面プレート7に加え、側面プレート14からも柱61の鉛直せん断力が支柱材21に伝達されるため、柱61と支柱材21の一体性が強まる。この場合には、柱61の側面からも側面プレート14を介して鉛直せん断力が支柱材21に伝達されることで、柱61の正面の境界面プレート7のみから支柱材21に伝達される場合より、鉛直せん断力伝達時の柱61のコンクリートに生じる境界面プレート7からの反力が境界面プレート7と側面プレート14に分散するため、柱61のコンクリートの損傷が生じにくくなる利点もある。
【0044】
側面プレート14の柱61の側面への接合方法も問われないが、側面プレート14は例えば境界面プレート7と同様に、側面プレート14を厚さ方向に貫通し、側面プレート14にその面内方向に係合するせん断抵抗材9が柱61中に定着されることにより柱61に接合される(請求項
2)。柱61の側面は正面の両側の側面である場合と、いずれか片側の側面である場合があるが、側面プレート14の接合による柱61への偏心の影響を回避する上では両側が合理的である。
【0045】
側面プレート14は支柱材21の柱61側には主に溶接、またはボルト接合により一体化させられ、支柱材21から充填コンクリート8の領域を越えて柱61に跨り、柱61の側面に重なる。図面ではH形鋼からなる支柱材21のフランジの柱61側の側面に側面プレート14を溶接している。
【0046】
柱61の側面に主構造体6の壁62が接続している場合のように、側面プレート14を重ねようとする柱61の区間に柱61の側面が露出していないような場合には、壁62の柱61との目地等、壁62と柱61の境界の一部が除去され(斫られ)、柱61の側面が露出させられる。側面プレート14を貫通するせん断抵抗材9は側面プレート14の幅方向(柱61と支柱材21が対向する方向)には、柱61の側面への重なり代(幅)に応じ、1列、または複数列、配置される。
【0047】
柱61からの鉛直せん断力の支柱材21への伝達効果、及び鉛直せん断力伝達時に柱61のコンクリートに生じる境界面プレート7等からの反力の分散効果は側面プレート14の主構造体6側の端部に、柱61の正面の反対側の背面に重なって柱61に接合される背面プレート16を一体化させることで(請求項
3)、更に高まる。背面プレート16が側面プレート14に一体化しなければ、支柱材21への鉛直せん断力の伝達効果は生じないため、背面プレート16が柱61に接合される場合には鉛直せん断力の伝達上、背面プレート16は側面プレート14に一体化することに意味がある。
【0048】
側面プレート14は柱61の側面の幅方向には側面の全幅に跨って重なる場合と、
図1等に示すように柱61の支柱材21寄りの一部の区間にのみ重なる場合があるが、背面プレート16の形状は側面プレート14の柱61への重なり区間に応じて相違する。側面プレート14が柱61の全幅に跨る場合には、背面プレート16は柱61の背面にのみ重なれば側面プレート14に一体化(接合)されるが、側面プレート14が支柱材21寄りの一部の区間にのみ重なる場合には、
図2−(d)に示すように背面プレート16は柱61の背面から柱61の側面に回り込み、側面プレート17を有する形状に形成され、柱61の側面における側面プレート17において側面プレート14に一体化される。
【0049】
側面プレート14に背面プレート16が一体化する場合には、支柱材21に一体化した側面プレート14と背面プレート16が柱61の周方向に連続することで、支柱材21は側面プレート14と背面プレート16を介して柱61を包囲した状態で柱61に接合される。この結果、柱61の鉛直せん断力が側面プレート14と背面プレート16を通じて支柱材21に伝達される状態になるため、鉛直せん断力の支柱材21への伝達効果が更に高まる。また柱61のコンクリートが鉛直せん断力伝達時に各プレートから受ける反力が軽減されるため、柱61のコンクリートに損傷が生じにくくなる。
【0050】
背面プレート16は側面プレート14、または境界面プレート7と同様に、例えば背面プレート16を厚さ方向に貫通し、背面プレート16にその面内方向に係合するせん断抵抗材9が柱61中に定着されることにより柱61に接合される(請求項
4)。この場合もせん断抵抗材9は背面プレート16の幅に応じ、1列、または複数列、配置される。