特許第6118112号(P6118112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118112
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】同軸型マグネトロン及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 23/12 20060101AFI20170410BHJP
   H01J 23/20 20060101ALI20170410BHJP
   H01J 23/00 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   H01J23/12 A
   H01J23/20 B
   H01J23/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-512(P2013-512)
(22)【出願日】2013年1月7日
(65)【公開番号】特開2014-132536(P2014-132536A)
(43)【公開日】2014年7月17日
【審査請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098372
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 保人
(72)【発明者】
【氏名】宮本 洋之
(72)【発明者】
【氏名】小畑 英幸
(72)【発明者】
【氏名】梅田 昭則
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−133362(JP,A)
【文献】 実開昭49−66351(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J23/00−25/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極の外周に、ベーンと共に陽極共振空胴を形成する陽極円筒体と、この陽極円筒体の外周に、上記陽極共振空胴と同軸となる外部空胴を形成する円筒状側面体とを備え、上記円筒状側面体の両端に、それぞれ蓋状構造体が接合され、この両端の蓋状構造体のいずれか一方に入力部が配置され、かつこの両端の蓋状構造体のいずれか一方に上記陽極円筒体の一端がロウ付けにて接合される同軸型マグネトロンにおいて、
上記陽極円筒体が接合されていない他方の蓋状構造体の内面側に、上記両端の蓋状構造体の間隔を調整するための溝又は段差を設け、この他方の蓋状構造体の溝又は段差に、上記陽極円筒体の他端をロウ付けにて接合することを特徴とする同軸型マグネトロン。
【請求項2】
陰極の外周に、ベーンと共に陽極共振空胴を形成する陽極円筒体と、この陽極円筒体の外周に、上記陽極共振空胴と同軸となる外部空胴を形成する円筒状側面体とを備え、上記円筒状側面体の両端に、それぞれ蓋状構造体が接合され、この両端の蓋状構造体のいずれか一方に入力部が配置され、かつこの両端の蓋状構造体のいずれか一方に上記陽極円筒体の一端がロウ付けにて接合される同軸型マグネトロンにおいて、
上記陽極円筒体が接合されていない他方の蓋状構造体に、上記両端の蓋状構造体の間隔を調整するための間隙を設け、この他方の蓋状構造体の間隙に、上記陽極円筒体の他端をロウ付けにて接合することを特徴とする同軸型マグネトロン。
【請求項3】
上記入力部が配置された蓋状構造体の上記陽極円筒体に近接する位置に、冷却用液体を通過させる通路を設けると共に、上記入力部が配置されない蓋状構造体の上記陽極円筒体に近接する位置にも、冷却用液体を通過させる通路を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の同軸型マグネトロン。
【請求項4】
陰極の外周に、ベーンと共に陽極共振空胴を形成する陽極円筒体と、この陽極円筒体の外周に、上記陽極共振空胴と同軸となる外部空胴を形成する円筒状側面体とを備え、上記円筒状側面体の両端に、それぞれ蓋状構造体が接合され、この両端の蓋状構造体のいずれか一方に入力部が配置され、かつこの両端の蓋状構造体のいずれか一方に上記陽極円筒体の一端がロウ付けにて接合される同軸型マグネトロンであって、上記陽極円筒体が接合されていない他方の蓋状構造体の内面側に、上記両端の蓋状構造体の間隔を調整するための溝又は段差を設け、この他方の蓋状構造体の溝又は段差に、上記陽極円筒体の他端をロウ付けにて接合する同軸型マグネトロンの組立方法において、
上記両端の蓋状構造体中心側部材を外周側部材から分離し、この両端の蓋状構造体の外周側部材を上記円筒状側面体に接合した後、上記両端の蓋状構造体の中心側部材をそれぞれの外周側部材に接合することを特徴とする同軸型マグネトロンの組立方法
【請求項5】
陰極の外周に、ベーンと共に陽極共振空胴を形成する陽極円筒体と、この陽極円筒体の外周に、上記陽極共振空胴と同軸となる外部空胴を形成する円筒状側面体とを備え、上記円筒状側面体の両端に、それぞれ蓋状構造体が接合され、この両端の蓋状構造体のいずれか一方に入力部が配置され、かつこの両端の蓋状構造体のいずれか一方に上記陽極円筒体の一端がロウ付けにて接合される同軸型マグネトロンであって、上記陽極円筒体が接合されていない他方の蓋状構造体に、上記両端の蓋状構造体の間隔を調整するための間隙を設け、この他方の蓋状構造体の間隙に、上記陽極円筒体の他端をロウ付けにて接合する同軸型マグネトロンの組立方法において、
上記両端の蓋状構造体の中心側部材を外周側部材から分離し、この両端の蓋状構造体の外周側部材を上記円筒状側面体に接合した後、上記両端の蓋状構造体の中心側部材をそれぞれの外周側部材に接合することを特徴とする同軸型マグネトロンの組立方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を発振するマグネトロン、特に陽極共振空胴の外側に外部空胴を有する同軸型マグネトロンの構造及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、マグネトロンは、簡便な構造で効率良く大出力のマイクロ波を発振可能なことから、様々なアプリケーションや装置に利用されている。その中で、発振周波数を精密に同調させる必要があるものとして、例えば混信を避けるため、精密に周波数を変更して探知を行うレーダや、高いQ特性を持つ狭帯域の共振器に、精密に同調したマイクロ波を投入し、電子に加速電界を加えるLinac等がある。このようなアプリケーション、装置等に使用されるマグネトロンでは、周波数を機械的に可変できる機構を備える必要があり、その1つとして同軸型マグネトロンが実用化されている。
【0003】
図6には、大出力が得られる同軸型マグネトロンの1例が示されており、図6のように、中心に配置された陰極(カソード)1の周囲に、陽極(アノード)として放射状に配置したベーン2及びこのベーン2を接合した陽極円筒3が設けられ、このベーン2及び陽極円筒3により陽極共振空胴50が形成される。また、この陽極円筒3にスロット4が設けられ、この陽極円筒3の周囲に円筒状側面6が配置されることで、陽極共振空胴50と同軸となる外部空胴60が形成される。更に、陰極1の上下に、ポールピース7a,7bが配置され、上記外部空胴60内に、チューニングピストン8が取り付けられ、入力部9に接合される入力側構造体10には、冷却液を通す冷却用通路11が設けられる。
【0004】
上記ポールピース7aは、上部構造体12の一部として取り付けられ、この上部構造体12が上記円筒状側面6に接合されることで、マグネトロンが組み立てられており、上記陽極円筒3は、入力側構造体10に接合されるが、上部構造体12には接合されず、片持ちの状態となる。
【0005】
このような構成によれば、外部からチューニングピストン8の位置を移動させ、外部空胴60のリアクタンスを変化させることにより、マグネトロンの共振周波数、そして発振周波数が調整できる。この結果、マグネトロンの発振周波数を精密に可変し、アプリケーション、装置等の要求する周波数に同調させることが可能となる。このマグネトロンによれば、高出力のマイクロ波を発振することができ、ピーク出力が数MW、平均出力が数kWとなる高出力を得る設計が可能である。
【0006】
ところで、このような非常に高い出力のマグネトロンでは、高い発振効率が得られるとはいえ、陽極損失で発生する熱に対する冷却設計が重要となる。また、上記のベーン2は薄い金属で緻密に製作されているため、オーバーヒートを起こすと、変形して発振特性に影響を及ぼしたり、溶解変形してマグネトロンとしての機能を損なわせたりすることがあった。そのため、高出力のマグネトロンでは、水冷用液体を陽極構造体に近接して流し、冷却する設計が提案されており、図6の場合でも、陽極円筒3の近くに冷却用通路11を設けることで、マグネトロンの冷却を行なっている。
【0007】
下記の特許文献1(特開2004−134160号公報)には、同軸型マグネトロンではないが、冷却用液体を用いるものが示されており、この例では、ベーンが接合された陽極円筒の外壁面の周方向に沿って冷却ジャケットを設け、この冷却ジャケットに冷却液を流す構造となっている。このような構造によれば、ベーン周辺で発生した陽極損失による熱を効率よく液体と熱交換し、ベーンを含む陽極の温度を低減することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−134160号公報
【特許文献2】特開平10−269953号公報
【特許文献3】特開平10−302655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2(特開平10−269953号公報)や特許文献3(特開平10−302655号公報)で示される構造でも分かるように、図6のような同軸型のマグネトロンでは、陽極円筒3の外側に、外部空胴60を設け、チューニングピストン8を上下動させる構成のため、特許文献1のような冷却ジャケットの構造を採用することは不可能であり、マグネトロンの冷却を効率良く行うことができないという問題がある。
【0010】
一方、同軸型マグネトロンでは、上述のように、陽極円筒3が入力側構造体10のみに接合された片持ちの状態となり、陽極円筒3から外部へ良好に放熱できないという問題もあった。即ち、一般に、マグネトロンでは、対向するポールピース7a,7b間のギャップの寸法を厳守するため、図6のように、誤差要因となる陽極円筒3の長さを短めに設定してその一端のみを接合し、上部構造体12側の他端をフリーにする設計が行われる。そして、組立では、入力側構造体10に対する上部構造体12の間隔Laを規定値に正確に一致させながら、この上部構造体12を円筒状側面6に接合することで、ポールピース7a,7b間のギャップを所定の寸法に合わせている。このような理由から、陽極円筒3は入力側構造体10に片持ち状態となり、上部構造体12側がフリーとなる結果、陽極円筒3からの放熱が促進されず、冷却効率を上げることができなかった。
【0011】
なお、上記特許文献2等に示された図では、陽極円筒が上下のポールピースに接触しているが、ポールピース間のギャップを精密に設定する場合は、上述したように、陽極円筒の他端をフリーにする必要がある。
【0012】
また、陽極部分の熱抵抗を減らし、冷却を促進するために、ベーン2や陽極円筒3等の陽極構成部品の断面積を広げることも考えられるが、この場合は、高周波特性に影響を与えることから、限界がある。例えば、陽極円筒3を厚くした場合、スロット4による外部空胴60との結合が適正な結合度とならない問題が生じる。そのため、マグネトロンで得られる最大の発振出力が、上記陽極部分の放熱限度によって制限される。
【0013】
更に、上記のような事情から可能な限りの放熱を得るため、図6に示されるように、入力側構造体10側の陽極円筒3の付け根に冷却用通路11を設け、冷却液を流すことで冷却することが提案されているが、この冷却でも限度がある。
【0014】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、陽極部分からの放熱を促進し、また全体の冷却効率を向上させ、最大発振出力を高めることができる同軸型マグネトロン及びその組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の同軸型マグネトロンは、陰極の外周に、ベーンと共に陽極共振空胴を形成する陽極円筒体と、この陽極円筒体の外周に、上記陽極共振空胴と同軸となる外部空胴を形成する円筒状側面体とを備え、上記円筒状側面体の両端に、それぞれ蓋状構造体が接合され、この両端の蓋状構造体のいずれか一方に入力部が配置され、かつこの両端の蓋状構造体のいずれか一方に上記陽極円筒体の一端がロウ付けにて接合される同軸型マグネトロンにおいて、上記陽極円筒体が接合されていない他方の蓋状構造体の内面側に、上記両端の蓋状構造体の間隔を調整するための溝又は段差を設け、この他方の蓋状構造体の溝又は段差に、上記陽極円筒体の他端をロウ付けにて接合することを特徴とする。
請求項2に係る発明は、陰極の外周に、ベーンと共に陽極共振空胴を形成する陽極円筒体と、この陽極円筒体の外周に、上記陽極共振空胴と同軸となる外部空胴を形成する円筒状側面体とを備え、上記円筒状側面体の両端に、それぞれ蓋状構造体が接合され、この両端の蓋状構造体のいずれか一方に入力部が配置され、かつこの両端の蓋状構造体のいずれか一方に上記陽極円筒体の一端がロウ付けにて接合される同軸型マグネトロンにおいて、上記陽極円筒体が接合されていない他方の蓋状構造体に、上記両端の蓋状構造体の間隔を調整するための間隙を設け、この他方の蓋状構造体の間隙に、上記陽極円筒体の他端をロウ付けにて接合することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、上記入力部が配置された蓋状構造体の上記陽極円筒体に近接する位置に、冷却用液体を通過させる通路を設けると共に、上記入力部が配置されない蓋状構造体の上記陽極円筒体に近接する位置にも、冷却用液体を通過させる通路を設けたことを特徴とする。
請求項4に係る発明の同軸型マグネトロンの組立方法は、陰極の外周に、ベーンと共に陽極共振空胴を形成する陽極円筒体と、この陽極円筒体の外周に、上記陽極共振空胴と同軸となる外部空胴を形成する円筒状側面体とを備え、上記円筒状側面体の両端に、それぞれ蓋状構造体が接合され、この両端の蓋状構造体のいずれか一方に入力部が配置され、かつこの両端の蓋状構造体のいずれか一方に上記陽極円筒体の一端がロウ付けにて接合される同軸型マグネトロンであって、上記陽極円筒体が接合されていない他方の蓋状構造体の内面側に、上記両端の蓋状構造体の間隔を調整するための溝又は段差を設け、この他方の蓋状構造体の溝又は段差に、上記陽極円筒体の他端をロウ付けにて接合する同軸型マグネトロンの組立方法において、上記両端の蓋状構造体中心側部材を外周側部材から分離し、この両端の蓋状構造体の外周側部材を上記円筒状側面体に接合した後、上記両端の蓋状構造体の中心側部材をそれぞれの外周側部材に接合することを特徴とする。
請求項5に係る発明の同軸型マグネトロンの組立方法は、陰極の外周に、ベーンと共に陽極共振空胴を形成する陽極円筒体と、この陽極円筒体の外周に、上記陽極共振空胴と同軸となる外部空胴を形成する円筒状側面体とを備え、上記円筒状側面体の両端に、それぞれ蓋状構造体が接合され、この両端の蓋状構造体のいずれか一方に入力部が配置され、かつこの両端の蓋状構造体のいずれか一方に上記陽極円筒体の一端がロウ付けにて接合される同軸型マグネトロンであって、上記陽極円筒体が接合されていない他方の蓋状構造体に、上記両端の蓋状構造体の間隔を調整するための間隙を設け、この他方の蓋状構造体の間隙に、上記陽極円筒体の他端をロウ付けにて接合する同軸型マグネトロンの組立方法において、上記両端の蓋状構造体の中心側部材を外周側部材から分離し、この両端の蓋状構造体の外周側部材を上記円筒状側面体に接合した後、上記両端の蓋状構造体の中心側部材をそれぞれの外周側部材に接合することを特徴とする同軸型マグネトロンの組立方法。
【0016】
上記請求項1の構成によれば、例えば両端の蓋状構造体が入力部を有する入力側(基部側)構造体と上方(先端側)に配置される上部構造体であるとすると、この上部構造体の内側に設けられた溝又は段差に、陽極円筒体の他端を配置した状態、即ち陽極円筒体の他端(端面)が溝又は段差に対し隙間を持った状態となり、この状態で入力側構造体と上部構造体の間隔を精密に調整することができる。この結果、マグネトロンの特性が所望の値に設定される。そして、2つの蓋状構造体の外周側が円筒状側面体に接合され、かつ上部構造体の溝又は段差が陽極円筒体ロウ付けにて接合されることで、マグネトロンが組み立てられる。このとき、陽極円筒体は、その側面が上部構造体の溝又は段差の側面に接合される。
請求項2の構成の場合も、上部構造体に設けられた間隙に、陽極円筒体の他端を配置することで、入力側構造体と上部構造体の間隔を精密に調整でき、陽極円筒体の側面が上部構造体の間隙の側面にロウ付けにて接合される。上記の溝若しくは段差又は間隙は、側面とこれに接する空間からなる側面空間部ということができ、上部構造体に設けた側面空間部の側面に、陽極円筒の側面を接合することになる。
【0017】
請求項3の構成によれば、冷却用通路が入力側構造体と上部構造体の双方に、例えば陽極円筒体の周に沿って近接して設けられ、これらによって、陽極部分の冷却が効率良く行われる。
請求項4,5の組立方法によれば、陰極を配置する前に、例えばロウ付け等で、入力側構造体と上部構造体の外周側部材に陽極円筒等と共に円筒状側面体を接合し、その後、陰極を取り付けた入力側構造体の中心側部材を、陰極のベーンに対する同心位置を確保しながら、入力側構造体の外周側部材に接合する。この接合は、陰極に与える温度の影響が小さい(昇温の小さい)接合方法であるアーク溶接等で行われ、その後に、上部構造体の中心側部材についても、アーク溶接等でその外周側部材に接合することになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の同軸型マグネトロンによれば、陽極共振空胴の外側にチューニングのための外部空胴を設ける構成であっても、両端の蓋状構造体の間隔を精密に設定した上で、陽極円筒体の両端(上下双方)から放熱を行うことにより、陽極部分からの放熱を促進し、最大発振出力を高めることが可能となる。
【0019】
請求項3の発明によれば、一方の蓋状構造体(入力側構造体)側だけでなく他方の蓋状構造体(上部構造体)の冷却用通路により、陽極部分の冷却を促進しながら全体の冷却効率を向上させることができる。
請求項4,5の発明によれば、陰極のベーンに対する同心位置を良好に確保できると共に、接合時の熱による陰極の劣化を防止した良好な組み立てが可能になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施例に係る同軸型マグネトロンの構成を示す側面断面図である。
図2】第2実施例の同軸型マグネトロンの構成を示す側面断面図である。
図3】第3実施例の同軸型マグネトロンの構成を示す側面断面図である。
図4】第4実施例の同軸型マグネトロンの構成を示す側面断面図である。
図5】第5実施例の同軸型マグネトロンの構成を示す側面断面図である。
図6】従来の同軸型マグネトロンの構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、第1実施例の同軸型マグネトロンの構成が示されており、このマグネトロンは、図6と同様に、中心に陰極(カソード)1が配置され、その周囲に、陽極(アノード)として、放射状のベーン2及びこのベーン2を接合した陽極円筒3が設けられることで、陽極共振空胴50が形成される。上記陽極円筒3には、高周波結合のためのスロット4が設けられ、この陽極円筒3と円筒状側面(体)6との間に、陽極共振空胴50と同軸となる外部空胴60が形成される。上記陰極1の上下には、ポールピース7a,7bが配置され、上記外部空胴60内に、チューニングピストン8が取り付けられ、入力部9に接合される入力側(基部)構造体(蓋状構造体)14には、冷却用通路11が設けられる。
【0022】
そして、実施例では、上部構造体(蓋状構造体)16の内面に、上記陽極円筒3を挿入するための円環状の溝17が陽極円筒3の円周に沿って設けられ、この溝17は、図1に示されるように、陽極円筒3を入れて組み立てたとき、その上部端面が溝底部に接触しないギャップGを持つ深さに形成される。
【0023】
即ち、同軸型マグネトロンでは、外部空胴60が入力側構造体14と上部構造体16により囲まれるため、入力側構造体14と上部構造体16との間隔(距離)Laが変ると、外部空胴60の共振周波数がずれるという不都合があり、また2つのポールピース7a,7b間の間隔Lbが変わると、カソードの耐電圧が低下したり、磁束密度分布が変ってしまったりすることから、上記間隔La及びLbを正確に設定することが重要となる。
【0024】
上記の溝17は、マグネトロンの組立時に、その内部に陽極円筒3を円筒軸方向に移動させ、陽極円筒3の上部端面が入力側構造体14(溝底面)に接触しないようにすることで、入力側構造体14と上部構造体16の間隔Laを良好に調整し、入力側構造体14と上部構造体16との間隔La及びポールピース7aと7bの間隔Lbを精密に保つことができる。
【0025】
そして、第1実施例のマグネトロンは、陰極1及び入力部9を取り付けた入力側(基部)構造体14に、陽極円筒3と円筒状側面6を介して上部構造体16を接合して組み立てることとなり、これらの接合は、例えば高温の炉を用いたロウ付けで行われる。即ち、陽極円筒3と溝17の接合は、それらの間や近傍にロウ材を置き、高温にすることで行われ、図の接合部100に示されるように、主に陽極円筒3の内外の側面が溝17内の両側面に接合される構造となり、このロウ付けでは、熱抵抗の小さい接合が可能となる。このような接合により、マグネトロン(管球)の内部は真空に保たれるように封止される。
【0026】
上記の第1実施例の構成によれば、従来では接合ができなかった陽極円筒3と上部構造体16との接合(熱抵抗の小さい接合)が可能となり、陽極円筒3から上部構造体16への放熱(両端の蓋状構造体への放熱)ができ、冷却効率が向上するという効果がある。
【0027】
図2には、第2実施例の同軸型マグネトロンの構成が示されており、この第2実施例は、両端の蓋状構造体の間隔を調整するための段差を設けたものである。図2に示されるように、上部構造体16には、円周状に段差18が形成され、この段差18の側面に近接して陽極円筒3(の内側面)が配置される。この第2実施例の場合も、陽極円筒3と段差18の間にロウ材を置いて炉内に入れ、高温にすることで、接合部100に示されるように、陽極円筒3の内側面が段差18の側面にロウ付け、接合される。このような第2実施例によっても、陽極円筒3から入力側構造体14と上部構造体16の双方を介して放熱が行われ、冷却効率が高まるという効果がある。
【0028】
図3には、第3実施例の同軸型マグネトロンの構成が示されており、この第3実施例は、両端の蓋状構造体の双方に冷却用通路を設けたものである。図3に示されるように、入力側構造体14の陽極円筒3に近接した位置(付け根位置)に、この陽極円筒3の円周に沿って冷却用通路11を設けると共に、上部構造体16にも、陽極円筒3に近接した位置に、この陽極円筒3の円周に沿って冷却用通路20を設けている。
【0029】
このような第3実施例によれば、上下の冷却用通路11,20に冷却用液体を流すことで、陽極部(ベーン2及び陽極円筒3)或いはポールピース7a,7bからの熱を冷却することができ、陽極部分を含めた全体の冷却効率が向上することになる。即ち、従来では、上部構造体16が陽極円筒3に接合されていないため、上部構造体16に冷却用通路を設けたとしても、有効な冷却が行えなかったが、実施例では、上部構造体16に陽極円筒3が接合され、ベーン2や陽極円筒3で発生した熱を上部構造体16から冷却用通路20の冷却液に良好に伝達することができ、この有効な熱伝導によって、ベーン2、陽極円筒3の温度を効率良く低減することが可能となる。
【0030】
上記実施例では、冷却用通路11,20を陽極円筒3の円周に沿って設けたが、これに限らず、この上下の冷却用通路は、陽極円筒3の近くで、直線状或いは部分的に設けてもよい。
【0031】
図4には、第4実施例の同軸型マグネトロンの構成が示されており、この第4実施例は、両端の蓋状構造体の中心側部材をその外周側部材から分離・分割したものである。図4に示されるように、実施例では、入力側構造体14の中心側部材であるポールピース(部)22aを陰極1及び入力部9と共に、外周側部材14cから分離し、また上部構造体16の中心側部材であるポールピース22bを外周側部材16cから分離する。
【0032】
まず、この実施例では、冷却用通路11を有する入力側構造体14の外周側部材14cと冷却用通路20を有する入力側構造体16の外周側部材16cを、陽極円筒3と円筒状側面6に対し、蓋をするように組み立ててロウ付けにより接合し、同時に上述のように陽極円筒3の上部も溝17に対しロウ付けにより接合する(接合部100)。その後、陰極1及び入力部9を取り付けたポーピース22aを陽極円筒3及びベーン2の内部に挿入配置し、上部構造体16のポールピース22bが取り付けられていない中心部開口から陰極1のベーン2に対する同心位置を確認しながら、このポールピース22aを外周側部材14cに接合する。この接合は、ロウ付けではなく、陰極に与える温度の影響が小さい(昇温の小さい)接合方法であるアーク溶接等で行う。最後に、上部構造体16のポールピース22bを、同様にアーク溶接等で外周側部材16cに接合することで、内部真空で封止されたマグネトロンが組み立てられる。なお、上記アーク溶接は、ポールピース22a及び外周側部材14cの外側表面部を局部加熱し、ポールピース22b及び外周側部材16cの外側表面部を局部加熱することによる溶接・接合となる。
【0033】
このような第4実施例によれば、2つの蓋状構造体の中心側部材であるポールピース22a,22bを外周側部材14c,16cから分離し、これらを後から組み付けることにより、陰極1のベーン2に対する同心位置の確認が可能になる。また、先に、円筒状側面6及び陽極円筒3に対し冷却通路11,20を含む外周側部材14c,16cをロウ付け等、昇温の大きい接合方法で接合し、陰極1を配置した後に、アーク溶接等、昇温の小さい接合方法で接合が可能となるので、この陰極1の劣化を有効に防止することができる。
【0034】
図5には、第5実施例の同軸型マグネトロンの構成が示されており、この第5実施例は、両端の蓋状構造体の間隔を調整するための間隙を設けたものである。図5に示されるように、実施例では、上部構造体16のポールピース24と外側部25との間に、陽極円筒3を挿入できる間隙26が設けられる。この間隙26によっても、陽極円筒3を円筒軸方向に移動させることで、入力側構造体14と上部構造体16の間隔Laを良好に調整し、この間隔La及びポールピース7aとポールピース24の間隔Lbを精密に保つことができ、また接合部100に示されるように、陽極円筒3の内外の側面と間隙26の両側面(24c及び25c)との間をロウ付けすることで、陽極円筒3が上部構造体16へ接合される。このような構造によっても、陽極円筒3から上部構造体16への放熱が促進され、冷却効率が高まる。
【0035】
なお、この第5実施例においても、第4実施例のように、入力側構造体14の中心側部材としてのポールピース22a(例えば鎖線で示す部分)を外周側部材から分離し、また上部構造体16の中心側部材としてのポールピース22bを外周側部材から分離するようにしてもよい。
【0036】
上記各実施例の入力側構造体14及び上部構造体16は、円筒状の陽極の蓋であり、陽極円筒3に沿った円形とされるため、旋盤による加工時に陽極円筒3等と同時に加工でき、各部品加工における作業効率が高いという利点もある。
【0037】
また、各実施例では、上部構造体16側に溝17若しくは段差18又は間隙26を設けたが、両端の蓋状構造体に対する陽極円筒3の接合状態を逆にし、入力側構造体14側に溝17若しくは段差18又は間隙26を設ける構造としてもよい。
【0038】
本発明の同軸型マグネトロンによれば、冷却効率が向上することにより、高出力発生時のベーン2を主とする陽極部品のオーバーヒートによる変形や溶解を防ぐことができ、従来では得られなかった大きなマイクロ波出力を得ることができる。レーダ、Linacを始めとするマイクロ波を利用するアプリケーションや装置としては、高い出力により大きな効果が得られる場合が多く、高冷却、高出力の目的でマグネトロンを大きく設計することが不要となり、産業上に利する効果は大きい。また、高い周波数の同軸型マグネトロンは、空胴共振器のサイズが波長に対応して小さくなるが、その場合に、陽極部品が小型化し、熱容量の減少や熱抵抗の増加が起こり、熱的にはより不利な状況となる。しかし、本発明によれば、効率の良い冷却効果が得られることから、高い周波数の同軸型マグネトロンにも、高出力の設計が行えるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0039】
レーダ、Linac等、マイクロ波を利用するアプリケーションや装置に適用でき、また高周波数、高出力の同軸型マグネトロンに適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1…陰極(カソード)、 2…ベーン、
3…陽極(アノード)円筒、 4…スロット、
6…円筒状側面(体)、
7a,7b,22a,22b,24…ポールピース、
8…チューニングピストン、 9…入力部、
11,20…冷却用通路、 10,14…入力側構造体(蓋状構造体)、
12,16…上部構造体(蓋状構造体)、
14c,16c…外周側部材、 17…溝、
18…段差、 25…外側部、
26…間隙、 50…陽極共振空胴、
60…外部空胴、 100…接合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6