特許第6118149号(P6118149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6118149
(24)【登録日】2017年3月31日
(45)【発行日】2017年4月19日
(54)【発明の名称】ルテニウム膜の形成方法および記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/56 20060101AFI20170410BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 21/8242 20060101ALI20170410BHJP
   H01L 27/108 20060101ALI20170410BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20170410BHJP
【FI】
   C23C16/56
   H01L21/28 B
   H01L21/285 C
   H01L27/10 661
   C23C16/40
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-59021(P2013-59021)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-185353(P2014-185353A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 宏明
(72)【発明者】
【氏名】岩井 隆晃
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第07/102333(WO,A1)
【文献】 特開2003−306472(JP,A)
【文献】 特開2008−266329(JP,A)
【文献】 特開2003−226970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/285
H01L 27/10−27/27/118
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に酸化ルテニウム膜を形成する工程と、
形成された前記酸化ルテニウム膜を還元してルテニウム膜とする工程とを有し、
前記酸化ルテニウム膜を還元する工程は、少なくとも、還元剤として水素を含有するルテニウム化合物ガスを供給することを含むことを特徴とするルテニウム膜の形成方法。
【請求項2】
前記酸化ルテニウム膜を形成する工程は、ルテニウム化合物ガスを用いてCVD法により酸化ルテニウム膜を形成することを特徴とする請求項1に記載のルテニウム膜の形成方法。
【請求項3】
前記酸化ルテニウム膜を形成する工程は、Ruに2個のβ−ジケトン、および、2個の、オレフィン、アミン、ニトリル、およびカルボニルから選ばれる基が配位した以下の(1)式の構造を有するルテニウム化合物を気相状態で基板上に供給し、かつ酸素ガスを基板上に供給して、これらの反応により基板上に酸化ルテニウム膜を形成することを特徴とする請求項2に記載のルテニウム膜の形成方法。
【化1】
ただし、R,Rは、トータルカーボン数が2〜5のアルキル基であり、Rはオレフィン基、アミン基、ニトリル基、およびカルボニル基から選ばれる基である。
【請求項4】
前記酸化ルテニウム膜を形成する工程は、前記ルテニウム化合物ガスと酸素ガスとを同時に供給することを特徴とする請求項3に記載のルテニウム膜の形成方法。
【請求項5】
前記酸化ルテニウム膜を形成する工程は、前記ルテニウム化合物ガスと酸素ガスとをパージを挟んで交互的に供給することを特徴とする請求項3に記載のルテニウム膜の形成方法。
【請求項6】
前記酸化ルテニウム膜を還元する工程において、還元剤として供給される水素を含有するルテニウム化合物ガスは、前記酸化ルテニウム膜を形成する際に用いるルテニウム化合物ガスと同じものであることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のルテニウム膜の形成方法。
【請求項7】
前記酸化ルテニウム膜を還元する工程に用いる前記水素を含有するルテニウム化合物ガスは、Ruに2個のβ−ジケトン、および、2個の、オレフィン、アミン、ニトリル、およびカルボニルから選ばれる基が配位した以下の(1)式の構造を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のルテニウム膜の形成方法。
【化2】
ただし、R,Rは、トータルカーボン数が2〜5のアルキル基であり、Rはオレフィン基、アミン基、ニトリル基、およびカルボニル基から選ばれる基である。
【請求項8】
前記酸化ルテニウム膜を還元する工程は、還元剤として水素を含有するルテニウム化合物ガスを供給し、その後、前記水素を含有するルテニウム化合物ガスを分解する反応ガスを供給することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のルテニウム膜の形成方法。
【請求項9】
前記酸化ルテニウム膜を還元する工程は、還元剤としての水素を含有するルテニウム化合物ガスと、前記水素を含有するルテニウム化合物ガスを分解する反応ガスとをパージを挟んで交互に複数回供給することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のルテニウム膜の形成方法。
【請求項10】
基板上に酸化ルテニウム膜を形成する工程と、
形成された前記酸化ルテニウム膜を還元してルテニウム膜とする工程とを有し、
前記酸化ルテニウム膜を形成する工程は、Ruに2個のβ−ジケトン、および、2個の、オレフィン、アミン、ニトリル、およびカルボニルから選ばれる基が配位した以下の(1)式の構造を有するルテニウム化合物を気相状態で基板上に供給し、かつ酸素ガスを基板上に供給して、これらの反応により基板上に酸化ルテニウム膜を形成し、
前記酸化ルテニウム膜を還元する工程は、還元剤として以下の(1)式の構造を有するルテニウム化合物を用いることを特徴とするルテニウム膜の形成方法。
【化3】
ただし、R,Rは、トータルカーボン数が2〜5のアルキル基であり、Rはオレフィン基、アミン基、ニトリル基、およびカルボニル基から選ばれる基である。
【請求項11】
前記酸化ルテニウム膜を還元する工程は、還元剤として前記(1)式の構造を有するルテニウム化合物ガスを供給し、その後、酸素ガスを供給することを特徴とする請求項10に記載のルテニウム膜の形成方法。
【請求項12】
前記酸化ルテニウム膜を還元する工程は、還元剤としての前記(1)式の構造を有するルテニウム化合物ガスと、酸素ガスとをパージを挟んで交互に複数回供給することを特徴とする請求項10に記載のルテニウム膜の形成方法。
【請求項13】
前記酸化ルテニウム膜を還元する工程における前記(1)式の構造を有するルテニウム化合物ガスと、酸素ガスとの繰り返し供給回数は2〜500回であることを特徴とする請求項12に記載のルテニウム膜の形成方法。
【請求項14】
コンピュータ上で動作し、処理装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項13のいずれかのルテニウム膜の形成方法が行われるように、コンピュータに前記処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルテニウム膜を形成するルテニウム膜の形成方法および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスにおいては、集積回路の高集積化が益々進んでおり、DRAMにおいてもメモリセルの面積を小さくし、かつ記憶容量を大きくすることが要求されている。この要求に対して、MIM(金属−絶縁体−金属)構造のキャパシタが注目されている。このようなMIM構造のキャパシタとしては、絶縁膜(誘電体膜)に、酸化タンタル(Ta25)やチタン酸ストロンチウム(SrTiO)などの高誘電率材料が用いられている。
【0003】
酸化物系高誘電率材料を誘電体膜として用いる場合、熱処理やUV処理などの後処理を施すことで必要とする誘電率を得ているが、このとき、酸化物材料から酸素が脱離することを防止するために、一般には酸素が存在する雰囲気で後処理を行うようにしている。このため、電極材料として従来から用いられているポリシリコンに比べ相対的に酸化されにくい金属材料であるルテニウムが注目されている。
【0004】
一方、DRAMにおける記憶容量を大きくするために、キャパシタの形状を円筒形状や積層型の電極構造とすることが行われているが、このような構造は大きな段差が形成された状態で電極を形成しなければならず、このため膜形成には良好なステップカバレッジ性(段差被覆性)が要求され、そのため、電極の形成方法として本質的にステップカバレッジの高いCVD(Chemical Vapor Deposition)法が用いられている。また、CVD法の一種であり、プリカーサと還元ガスとを交互的に供給するALD(Atomic Layer Deposition)法も検討されている。
【0005】
ルテニウム膜をCVD法で形成する技術として、Ruに2個のβ−ジケトン、および、2個の、オレフィン、アミン、ニトリル、およびカルボニルから選ばれる基が配位した構造を有するルテニウム化合物を用い、これに酸素ガスを添加することにより、加熱された基板上で上記原料を分解してルテニウム膜を形成するものが知られている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7049232号公報
【特許文献2】特許第4746141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、2の技術により十分なステップカバレッジを得難くなってきている。また、ALD法を用いるとステップカバレッジは改善されるがスループットが極端に低下してしまう。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、高いステップカバレッジでスループットを低下させることなくルテニウム膜を形成することができるルテニウム膜の形成方法を提供すること、およびそのようなルテニウム膜の形成方法を実施するためのプログラムを記憶した記憶媒体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、酸化ルテニウム膜は高ステップカバレッジでかつ高スループットで形成することができ、これを還元すれば高ステップカバレッジかつ高スループットでルテニウム膜を形成できることに想到した。また、酸化ルテニウムを還元する際に、通常の還元剤である水素等を用いると体積変化により膜の形態を維持することが困難であるが、還元剤として水素を含有するルテニウム化合物を用いることにより、健全なルテニウム膜が得られることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて完成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、第1に、基板上に酸化ルテニウム膜を形成する工程と、形成された前記酸化ルテニウム膜を還元してルテニウム膜とする工程とを有し、前記酸化ルテニウム膜を還元する工程は、少なくとも、還元剤として水素を含有するルテニウム化合物ガスを供給することを含むことを特徴とするルテニウム膜の形成方法を提供する。
【0011】
上記構成において、前記酸化ルテニウム膜を形成する工程は、ルテニウム化合物ガスを用いてCVD法により酸化ルテニウム膜を形成するものとすることができる。この場合に、前記酸化ルテニウム膜を形成する工程は、Ruに2個のβ−ジケトン、および、2個の、オレフィン、アミン、ニトリル、およびカルボニルから選ばれる基が配位した以下の(1)式の構造を有するルテニウム化合物を気相状態で基板上に供給し、かつ酸素ガスを基板上に供給して、これらの反応により基板上に酸化ルテニウム膜を形成するものとすることができる。
【化1】
ただし、R,Rは、トータルカーボン数が2〜5のアルキル基であり、Rはオレフィン基、アミン基、ニトリル基、およびカルボニル基から選ばれる基である。
【0012】
また、前記酸化ルテニウム膜を形成する工程は、前記ルテニウム化合物ガスと酸素ガスとを同時に供給してもよく、前記ルテニウム化合物ガスと酸素ガスとをパージを挟んで交互的に供給してもよい。
【0013】
前記酸化ルテニウム膜を還元する工程において、還元剤として供給される水素を含有するルテニウム化合物ガスは、前記酸化ルテニウム膜を形成する際に用いるルテニウム化合物ガスと同じものを用いることができる。
【0014】
前記酸化ルテニウム膜を還元する工程に用いる前記水素を含有するルテニウム化合物ガスとしては、Ruに2個のβ−ジケトン、および、2個の、オレフィン、アミン、ニトリル、およびカルボニルから選ばれる基が配位した以下の(1)式の構造を有するものを用いることができる。
【化2】
ただし、R,Rは、トータルカーボン数が2〜5のアルキル基であり、Rはオレフィン基、アミン基、ニトリル基、およびカルボニル基から選ばれる基である。
【0015】
前記酸化ルテニウム膜を還元する工程は、還元剤として水素を含有するルテニウム化合物ガスを供給し、その後、前記水素を含有するルテニウム化合物ガスを分解する反応ガスを供給することにより行うことができる。また、前記酸化ルテニウム膜を還元する工程は、還元剤としての水素を含有するルテニウム化合物ガスと、前記水素を含有するルテニウム化合物ガスを分解する反応ガスとをパージを挟んで交互に複数回供給することにより行ってもよい。
【0016】
本発明は、第2に、基板上に酸化ルテニウム膜を形成する工程と、形成された前記酸化ルテニウム膜を還元してルテニウム膜とする工程とを有し、前記酸化ルテニウム膜を形成する工程は、Ruに2個のβ−ジケトン、および、2個の、オレフィン、アミン、ニトリル、およびカルボニルから選ばれる基が配位した以下の(1)式の構造を有するルテニウム化合物を気相状態で基板上に供給し、かつ酸素ガスを基板上に供給して、これらの反応により基板上に酸化ルテニウム膜を形成し、前記酸化ルテニウム膜を還元する工程は、還元剤として以下の(1)式の構造を有するルテニウム化合物を用いることを特徴とするルテニウム膜の形成方法を提供する。
【化3】
ただし、R,Rは、トータルカーボン数が2〜5のアルキル基であり、Rはオレフィン基、アミン基、ニトリル基、およびカルボニル基から選ばれる基である。
【0017】
上記本発明の第2において、前記酸化ルテニウム膜を還元する工程は、還元剤として前記(1)式の構造を有するルテニウム化合物ガスを供給し、その後、酸素ガスを供給することにより行うことができる。また、前記酸化ルテニウム膜を還元する工程は、還元剤としての前記(1)式の構造を有するルテニウム化合物ガスと、酸素ガスとをパージを挟んで交互に複数回供給することにより行ってもよい。この際の前記(1)式の構造を有するルテニウム化合物ガスと、酸素ガスとの繰り返し供給回数は2〜500回とすることが好ましい。
【0018】
また、本発明は、コンピュータ上で動作し、処理装置を制御するためのプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記本発明の第1または第2のルテニウム膜の形成方法が行われるように、コンピュータに前記処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【0019】
なお、本明細書において、ガスの流量の単位はmL/minを用いているが、ガスは温度および気圧により体積が大きく変化するため、本発明では標準状態に換算した値を用いている。なお、標準状態に換算した流量は通常sccm(Standard Cubic Centimeter per Minutes)で標記されるためsccmを併記している。ここにおける標準状態は、温度0℃(273.15K)、気圧1atm(101325Pa)の状態(STP)である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高ステップカバレッジでかつ高スループットで形成することができる酸化ルテニウム膜を形成した後、水素を含有するルテニウム化合物で酸化ルテニウム膜を還元するので、還元の際の膜の収縮が緩和され、良好なルテニウム膜を高いステップカバレッジでスループットを低下させることなく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のルテニウム膜の形成方法の工程を示すフローチャートである。
図2】本発明をDRAMキャパシタの下部電極に適用する例を説明するための断面図である。
図3】本発明をDRAMキャパシタの上部電極に適用する例を説明するための断面図である。
図4】ALD法で酸化ルテニウム膜を成膜する際の成膜シーケンスを示すタイミングチャートである。
図5】ステップ2の酸化ルテニウム膜を還元してルテニウム膜とする工程の具体例を説明するための図である。
図6図5(c)に示す手法を用いる場合の還元プロセスのモデルを示す図である。
図7】本発明の好ましい実施形態を実施するための処理装置の一例を示す模式図である。
図8】CVD成膜したRuO膜に水素を含有するルテニウム化合物を供給する供給時間を0sec、60sec、120sec、300secと変化させた際の膜のX線回折スペクトルを示す図である。
図9】ルテニウム化合物ガスの供給時間と膜の比抵抗との関係を示す図である。
図10】ルテニウム化合物ガスの供給時間と膜のシート抵抗およびその均一性との関係を示す図である。
図11】処理時間を140sec、280sec、560secと変化させてCVD成膜したRuO膜に、10cycleの交互供給還元を行った後の膜のX線回折スペクトルを示す図である。
図12】RuO膜CVD時間と10cycleの交互供給還元を行った後のRu膜の膜厚および比抵抗との関係を示す図である。
図13】RuO膜CVD時間と10cycleの交互供給還元を行った後のRu膜のシート抵抗およびその均一性との関係を示す図である。
図14】CVD成膜したRuO膜に、10cycleの交互供給還元を行った後の膜の表面および断面のSEM写真である。
図15】CVD成膜したRuO膜に、cycle数を変化させて交互供給還元を行った際におけるサイクル数と還元により得られたRu膜の比抵抗との関係を示す図である。
図16】CVD成膜したRuO膜に、cycle数を変化させて交互供給還元を行った際における結晶性を確認するためのX線回折スペクトルである。
図17】ホールを有するウエハにRuO膜をCVD成膜した後、および引き続き10cycleの交互供給還元を行った後の膜のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
<ルテニウム膜の形成方法全般>
図1は、本発明のルテニウム膜の形成方法の工程を示すフローチャートである。
【0023】
図1に示すように、本発明では、最初に基板上に酸化ルテニウム膜を形成し(ステップ1)、次いでその酸化ルテニウム膜を還元してルテニウム膜とする(ステップ2)。なお、酸化ルテニウムは必ずしも全てがRuOとなるわけではないが、RuOを主体とするものであるため、以下の説明では酸化ルテニウムをRuOとも表記する。
【0024】
基板は特に限定されないが、半導体基板(半導体ウエハ)が典型例として例示される。また、LCD(液晶ディスプレイ)用基板に代表されるFPD(フラットパネルディスプレイ)基板や、セラミックス基板等を用いてもよい。ルテニウム膜をDRAMキャパシタの下部電極として用いる場合には、図2に示すように、基板としてトレンチ101が形成された半導体ウエハ(シリコンウエハ)Wを用い、トレンチ101内に下部電極を形成するための酸化ルテニウム(RuO)膜111を形成する。また、ルテニウム膜をDRAMキャパシタの上部電極として用いる場合には、図3に示すように、基板としてトレンチ101が形成された半導体ウエハ(シリコンウエハ)Wのトレンチ101内に下部電極102および例えばSrTiOからなる誘電体膜103が形成され、さらにその上に例えばTiN膜からなるバリア膜104を形成されたものを用い、バリア膜104の上に上部電極を形成するための酸化ルテニウム(RuO)膜111を形成する。
【0025】
ステップ1の酸化ルテニウム(RuO)膜を形成する際の手法は問わないが、CVD法が好ましい。CVD法で酸化ルテニウム膜を形成する場合には、基板が配置されたチャンバー内にルテニウム化合物ガスと、ルテニウム化合物を還元するためのガス、例えば酸素ガス(Oガス)を同時に供給して、所定厚さの酸化ルテニウム(RuO)膜を形成する。また、CVD法には、ルテニウム化合物ガスとルテニウム化合物を還元するためのガスとを交互に供給して膜形成を行うALD法も含まれる。ALD法で酸化ルテニウム膜を形成する場合には、図4に示すように、ルテニウム化合物ガスと、酸素ガス(Oガス)とを、パージを挟んで交互に供給する。パージはチャンバー内を排気しつつパージガスを導入することにより行われる。パージガスとしては、ArガスやNガス等の不活性ガスを用いることができる。CVD法(ALD法も含む)で酸化ルテニウム(RuO)膜を形成する場合には、処理温度は200〜350℃の範囲が好ましい。ALD法を用いることにより、より低い温度でより不純物の少ない膜を形成することができる。
【0026】
Ru化合物は特に限定されず、従来用いられている種々のものを用いることができ、例えばRu(CP)、Ru(C、Ru(EtCp)、Ru(C−C等を用いることができるが、特に、Ruに2個のβ−ジケトン、および、2個の、オレフィン、アミン、ニトリル、およびカルボニルから選ばれる基が配位した以下の(1)式の構造を有するルテニウム化合物が好適である。
【化1】
ただし、R,Rは、トータルカーボン数が2〜5のアルキル基であり、Rはオレフィン基、アミン基、ニトリル基、およびカルボニル基から選ばれる基である。
【0027】
上記(1)式の構造を有するルテニウム化合物を成膜原料として用い、還元ガスとしてOガスを用い、その量を調整しつつCVD法(ALD法も含む)により酸化ルテニウム(RuO)膜を形成することにより、インキュベーション時間が短くかつ高成膜レートで成膜可能であり、また50以上の高いアスペクト比の凹部への成膜が可能な良好なステップカバレッジを達成することができる。すなわち、上記(1)式の構造を有するルテニウム化合物は、Ruに配位しているオレフィン、アミン、ニトリル、カルボニルなどの基(配位子)が基板への吸着の妨げとなり難く、しかも比較的脱離しやすいため、RuがウエハWに吸着しやすく、インキュベーション時間を短くすることができる。また、このようにRuが基板に吸着しやすいことにより、極めて良好なステップカバレッジを得ることができ、50以上の極めて高いアスペクト比の凹部でも成膜可能である。さらに、酸素ガス(Oガス)により残余のβ−ジケトン(ジケトナート配位子)も分解しやすく、ウエハW上に速やかに酸化ルテニウム(RuO)膜を形成することができるので、高い成膜レートを得ることができる。
【0028】
上記(1)式の構造を有するルテニウム化合物において、β−ジケトンとしては、2,4−ヘキサンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、5−メチル−2,4−ヘプタンジオン、6−メチル−2,4−ヘプタンジオン、および2,4−オクタンジオンのいずれかを挙げることができる。
【0029】
また、上記(1)式の構造のルテニウム化合物において、Rがカルボニルである以下の(2)式の構造を有するものが好ましい。
【化2】
【0030】
このようなルテニウム化合物としては、例えば組成式がC1622Ruである以下の(3)式の構造を有する化合物を好適な例として挙げることができる。
【化3】
【0031】
この(3)式の構造を有する化合物を用いた場合には、化学量論的には以下の反応により酸化ルテニウム(RuO)が形成されると考えられる。
2C1622Ru+39O→2RuO+22HO↑+32CO
【0032】
なお、上記(3)式の構造を有するルテニウム化合物は、2つのβ−ジケトンが有するメチル基とプロピル基の位置が異なる3種の異性体が存在するが、これら異性体の含有率は任意である。
【0033】
上記(1)式の化合物において、Rがカルボニル(CO)である(2)式の構造を有するものは、分子量の小さいカルボニルがウエハWへの吸着の障害にならず、しかもRの基の中では特に脱離しやすいため、ウエハWへの吸着性が極めて高い。このため、インキュベーション時間の短縮する効果およびステップカバレッジを高める効果を一層有効に発揮することができる。
【0034】
上記特許文献1(米国特許第7049232号公報)では、上記(1)式のルテニウム化合物と酸素ガス(Oガス)とを用いたCVD法によりルテニウム膜が形成されることが開示されている。このようなルテニウム化合物として、上記(3)式の組成式がC1622Ruである化合物を用いた場合には以下の反応式によりルテニウム(Ru)が形成されると考えられる。
2C1622Ru+37O→2Ru+22HO↑+32CO
この式は、上記酸化ルテニウム(RuO)の生成反応と比較して供給される酸素の量が異なるだけである。つまり、上記(3)式のルテニウム化合物を用い、強酸化した場合には酸化ルテニウムが形成され、弱酸化した場合にはルテニウムが形成される。したがって、このルテニウム化合物を用いてルテニウム膜を形成するためには、強酸化されないように、酸素ガスの流量(分圧)を低くするか、または成膜圧力を低くする必要があり、ステップカバレッジおよび成膜レートが低くならざるを得ない。これに対して、酸化ルテニウムを形成する場合にはこのような制約はなく、ステップカバレッジ、成膜レート、およびスループットを高くすることができる。
【0035】
ステップ2の酸化ルテニウム膜を還元する工程は、少なくとも、還元剤として水素を含有するルテニウム化合物ガスを供給することを含む。
【0036】
化学的反応のみを考慮すると、酸化ルテニウム(RuO)は水素ガスによって簡単に還元されルテニウムとなる。その際の反応式は以下の通りである。
RuO+2H→Ru+2H
【0037】
しかし、酸化ルテニウム(RuO)膜の密度は6.97g/cmであるのに対して、ルテニウム(Ru)膜の密度は12.45g/cmであることから、酸化ルテニウム(RuO)膜を水素ガスにより還元する場合には、急激な体積減少を引き起こし、連続性の低いルテニウム膜または粉末状のルテニウムに変化する。還元剤としてアンモニアを用いた場合も同様である。
【0038】
このような体積変化を緩和しつつ酸化ルテニウム(RuO)膜を還元するため、還元剤として水素を含有するルテニウム化合物ガスを用いる。水素を含有するルテニウム化合物は、その構造中に含まれる水素により酸化ルテニウム(RuO)を還元するとともに、構造中のルテニウムが膜を補完し、還元にともなう膜の体積減少を緩和することができる。このため、健全なルテニウム膜を得ることができる。したがって、例えば図2図3の酸化ルテニウム(RuO)膜111をこのように還元処理することによりルテニウム(Ru)膜からなるDRAMキャパシタの下部電極または上部電極を形成することができる。
【0039】
水素を含有するルテニウム化合物は特に限定されないが、上述したステップ1の酸化ルテニウムをCVD法で形成する際に用いるルテニウム化合物を用いることが好ましい。ステップ1とステップ2で同じルテニウム化合物を用いることにより工程を簡略化することができる。特に、ステップ1とステップ2で上記(1)式のルテニウム化合物を用いることが好ましい。ステップ1とステップ2はin−situで行ってもよいし、ex−situで行ってもよい。in−situの場合には、同一チャンバーで行ってもよいし、真空搬送室を備えたマルチチャンバ装置を用いて別チャンバーで行ってもよい。
【0040】
ステップ2の際の処理温度は200〜350℃が好ましく、ステップ1をCVD法(ALD法も含む)で行った後に、同一チャンバーでステップ2を行う場合には、ステップ1とステップ2とを同じ温度で行うことが好ましい。
【0041】
このステップ2の酸化ルテニウム膜を還元する工程は、図5(a)に示すように、水素を含有するルテニウム化合物を供給するだけでもよいが、この場合には、供給時間を増加させても、膜の比抵抗がある時間でルテニウム膜としては高い値で飽和してしまう。これはルテニウム膜の結晶性が十分でないことに起因する。ルテニウム膜の結晶性を高めて膜の比抵抗をより低下させるためには、図5(b)に示すように、最初に水素を含有するルテニウム化合物ガスを供給し(ステップ2−1)、その後、チャンバー内のパージを挟んで、水素を含有するルテニウム化合物を分解するための反応ガス、例えば酸素ガスを供給する(ステップ2−2)ことが有効である。これにより水素を含有するルテニウム化合物が分解され、膜中の不純物を少なくして結晶性を高めることができる。より好ましくは、図5(c)に示すように、ステップ2−1とステップ2−2を、チャンバー内のパージを挟んで交互に複数回(サイクル)繰り返すことである。上記(1)式の構造を有するルテニウム化合物を用いた場合に、繰り返し回数(サイクル数)は2〜500回が好ましい。図5(c)に示す手法を用いる場合は、最初に水素を含有するルテニウム化合物ガスを供給する際は供給時間を長くして十分に膜を還元し、その後は、水素を含有するルテニウム化合物ガスの供給時間を短くして行うことが好ましい。
【0042】
図5(c)のようにステップ2−1とステップ2−2を繰り返すことにより、比較的厚い酸化ルテニウム膜でも結晶性の良好なルテニウム膜を得ることができる。この際の還元プロセスのモデルを図6に示す。ここでは便宜上、ステップ2−1とステップ2−2を交互に2回行った場合(すなわち繰り返し回数(サイクル数)2回の場合)を描いている。1回目のステップ2−1においてはルテニウム化合物ガスを長時間供給することで、酸化ルテニウム(RuO)膜は還元され、ルテニウム(Ru)膜となる。続いてチャンバー内のパージ後のステップ2−2において反応ガスである酸素(O)ガスを供給することで結晶表面および内部に吸着したルテニウム化合物ガスをルテニウム(Ru)膜化させる。この時、還元されたルテニウム(Ru)膜の結晶性や連続性は低い。そのため2回目のステップ2−1において、ルテニウム化合物ガスを長時間供給することで、結晶性が低く膜連続性が悪いルテニウム膜の表面および内部にルテニウム化合物ガスを到達させ吸着させる。続いてチャンバー内部パージ後のステップ2−2において反応ガスである酸素(O)ガスを供給することで結晶表面および内部に吸着したルテニウム化合物ガスをルテニウム(Ru)膜化させる。この作業を繰り返すことで、結晶性の高いルテニウム(Ru)膜を作成する。なお、反応ガスとして酸素ガスを用いた例を示したが、水素ガスを用いてもよい。
【0043】
以上のように、酸化ルテニウム膜は高ステップカバレッジでかつ高レートで形成することができるので、これを還元することによりルテニウム膜を高ステップカバレッジでかつ高スループットで得ることができる。
【0044】
<好ましい実施形態>
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
図7は、本発明の好ましい実施形態を実施するための処理装置の一例を示す模式図である。
【0045】
この処理装置100は、気密に構成された略円筒状のチャンバー1を有しており、その中には被処理基板である半導体ウエハW(以下単にウエハと記す)を水平に支持するためのサセプタ2が、後述する排気室の底部からその中央下部に達する円筒状の支持部材3により支持された状態で配置されている。このサセプタ2はAlN等のセラミックスからなっている。また、サセプタ2にはヒーター5が埋め込まれており、このヒーター5にはヒーター電源6が接続されている。一方、サセプタ2の上面近傍には熱電対7が設けられており、熱電対7の信号はヒーターコントローラ8に伝送されるようになっている。そして、ヒーターコントローラ8は熱電対7の信号に応じてヒーター電源6に指令を送信し、ヒーター5の加熱を制御してウエハWを所定の温度に制御するようになっている。なお、サセプタ2には3本のウエハ昇降ピン(図示せず)がサセプタ2の表面に対して突没可能に設けられており、ウエハWを搬送する際に、サセプタ2の表面から突出した状態にされる。
【0046】
チャンバー1の天壁1aには、円形の孔1bが形成されており、そこからチャンバー1内へ突出するようにシャワーヘッド10が嵌め込まれている。シャワーヘッド10は、後述するガス供給機構30から供給されたガスをチャンバー1内に吐出するためのものであり、その上部には、原料ガスが導入される第1の導入路11と、チャンバー1内に還元ガス(分解ガス)としての酸素ガス(Oガス)および希釈ガス(Arガスを例示)を導入する第2の導入路12とを有している。
【0047】
シャワーヘッド10の内部には上下2段に空間13、14が設けられている。上側の空間13には第1の導入路11が繋がっており、この空間13から第1のガス吐出路15がシャワーヘッド10の底面まで延びている。下側の空間14には第2の導入路12が繋がっており、この空間14から第2のガス吐出路16がシャワーヘッド10の底面まで延びている。すなわち、シャワーヘッド10は、成膜原料ガスと酸素ガスとがそれぞれ独立してガス吐出路15および16から吐出するようになっている。
【0048】
チャンバー1の底壁には、下方に向けて突出する排気室21が設けられている。排気室21の側面には排気管22が接続されており、この排気管22には真空ポンプや圧力制御バルブ等を有する排気装置23が接続されている。そしてこの排気装置23を作動させる、圧力制御バルブ(図示せず)の開度を制御することによりチャンバー1内を所定の減圧状態とすることが可能となっている。
【0049】
チャンバー1の側壁には、ウエハWの搬入出を行うための搬入出口24と、この搬入出口24を開閉するゲートバルブ25とが設けられている。また、チャンバー1の壁部には、ヒーター26が設けられており、処理の際にチャンバー1の内壁の温度を制御可能となっている。
【0050】
ガス供給機構30は、Ruに2個のβ−ジケトン、および、2個の、オレフィン、アミン、ニトリル、およびカルボニルから選ばれる基が配位した上記(1)式の構造を有するルテニウム化合物を貯留する原料タンク31を有している。原料タンク31の周囲にはヒーター31aが設けられており、原料タンク31内の原料を適宜の温度に加熱することができるようになっている。
【0051】
原料タンク31には、上方からバブリングガスであるArガスを供給するためのバブリング配管32が原料であるルテニウム化合物に浸漬されるようにして挿入されている。バブリング配管32にはArガス供給源33が接続されており、また、流量制御器としてのマスフローコントローラ34およびその前後のバルブ35が介装されている。また、原料タンク31内には原料ガス送出配管36が上方から挿入されており、この原料ガス送出配管36の他端はシャワーヘッド10の第1の導入路11に接続されている。原料ガス送出配管36にはバルブ37が介装されている。また、原料ガス送出配管36にはルテニウム化合物ガスの凝縮防止のためのヒーター38が設けられている。そして、バブリングガスであるArガスが原料タンク31内のルテニウム化合物に供給されることにより原料タンク31内でルテニウム化合物がバブリングにより気化され、生成されたルテニウム化合物ガスが原料ガスとして、原料ガス送出配管36および第1の導入路11を介してシャワーヘッド10内に供給される。
【0052】
バブリング配管32と原料ガス送出配管36との間は、バイパス配管48により接続されており、この配管48にはバルブ49が介装されている。バブリング配管32および原料ガス送出配管36における配管48接続部分よりも原料タンク31側にはそれぞれバルブ35a,37aが介装されている。そして、バルブ35a,37aを閉じてバルブ49を開くことにより、Arガス供給源33からのArガスを、バブリング配管32、バイパス配管48、原料ガス送出配管36を経て、パージガス等としてチャンバー1内に供給することが可能となっている。
【0053】
なお、バブリングガスやパージガスとしては、Arガスの代わりにNガス等の他の不活性ガスを用いることができる。
【0054】
シャワーヘッド10の第2の導入路12には、還元ガス供給配管40が接続されており、配管40にはバルブ41が設けられている。この還元ガス供給配管40は分岐配管40a,40bに分岐しており、分岐配管40aにはOガスを供給するOガス供給源42が接続され、分岐配管40bには希釈ガスまたはパージガスとしてArガスを供給するArガス供給源43が接続されている。また、分岐配管40aには流量制御器としてのマスフローコントローラ44およびその前後のバルブ45が介装されており、分岐配管40bには流量制御器としてのマスフローコントローラ46およびその前後のバルブ47が介装されている。なお、希釈ガスやパージガスとしては、Arガスの代わりにNガス等の他の不活性ガスを用いることができる。
【0055】
この処理装置100は、各構成部、具体的にはバルブ、電源、ヒーター、ポンプ等を制御する制御部50を有している。この制御部50は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたプロセスコントローラ51と、ユーザーインターフェース52と、記憶部53とを有している。プロセスコントローラ51には処理装置100の各構成部が電気的に接続されて制御される構成となっている。ユーザーインターフェース52は、プロセスコントローラ51に接続されており、オペレータが処理装置100の各構成部を管理するためにコマンドの入力操作などを行うキーボードや、処理装置100の各構成部の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなっている。記憶部53もプロセスコントローラ51に接続されており、この記憶部53には、処理装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラ51の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて処理装置100の各構成部に所定の処理を実行させるための制御プログラムすなわち処理レシピや、各種データベース等が格納されている。処理レシピは記憶部53の中の記憶媒体53aに記憶されている。記憶媒体53aは、ハードディスク等の固定的に設けられているものであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0056】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース52からの指示等にて所定の処理レシピを記憶部53から呼び出してプロセスコントローラ51に実行させることで、プロセスコントローラ51の制御下で、処理装置100での所望の処理が行われる。
【0057】
次に、以上のような処理装置100によるルテニウム膜の形成方法について説明する。
ゲートバルブ25を開け、搬送装置(図示せず)によりウエハWを、搬入出口24を介してチャンバー1内に搬入し、サセプタ2上に載置する。
【0058】
この状態で、最初に、上記ステップ1の酸化ルテニウム(RuO)膜の形成を行う。
酸化ルテニウム(RuO)膜の形成に際しては、チャンバー1内を排気装置23により排気してチャンバー1内を所定の圧力にし、サセプタ2を成膜温度に加熱し、ヒーター31aにより、例えば80〜200℃に加熱されている原料タンク31に配管32からキャリアガスとしてArガスを所定の流量で供給し、上記(1)式の構造を有するルテニウム化合物をバブリングにより気化させ、原料ガスとして、原料ガス送出配管36、第1の導入路11、シャワーヘッド10を介してチャンバー1内へ供給し、還元ガスとしてのOガスをOガス供給源42から分岐配管40a、還元ガス供給配管40、第2の導入路12、シャワーヘッド10を介してチャンバー1内に供給する。
【0059】
このように、上記(1)式の構造を有するルテニウム化合物ガスと還元ガスとしてのOガスがチャンバー1内に供給されることにより、サセプタ2により加熱されたウエハWの表面でこれらが反応して熱CVDによりウエハWに酸化ルテニウム(RuO)膜が成膜される。上記(1)式のルテニウム化合物は、常温で液体であり、蒸気圧が比較的高いため、気相供給が容易である。
【0060】
ステップ1の酸化ルテニウム膜を形成するための温度は、200〜350℃が好ましい。また、チャンバー1内の圧力は5〜100Torr(665〜13330Pa)が好ましく、キャリアガス流量は100〜500mL/min(sccm)(ルテニウム化合物0.5〜14.6mL/min(sccm)相当)が好ましく、還元ガスであるOガス流量は25〜5000mL/min(sccm)が好ましい。
【0061】
また、上記(1)式の構造のルテニウム化合物を用いて、酸化ルテニウム(RuO)膜を確実に形成する観点から、チャンバー内のOガス分圧またはOガス/Ru化合物ガス分圧比を調整することが好ましく、チャンバー内のOガス分圧が5Torr(665Pa)以上またはOガス/Ru化合物ガス分圧比が20以上であることが好ましい。
【0062】
酸化ルテニウム(RuO)膜の形成に際しては、上述のようにルテニウム化合物ガスとOガスとを同時に供給する他、図4に示すように、ALD的手法を用いることができる。パージにはArガス供給源43からのアルゴンガスを用いることができる。また、Arガス供給源33からバブリング配管32、バイパス配管48および原料ガス送出配管36を介してArガスを供給することもできるし、これら両方を用いることもできる。このALD的手法により、低い温度でより不純物の少ない酸化ルテニウム(RuO)膜を得ることができる。
【0063】
以上の手法により、上述したように、極めて良好なステップカバレッジでかつ高い成膜レートで酸化ルテニウム(RuO)膜を形成することができる。
【0064】
酸化ルテニウム(RuO)膜を形成した後、Arガス供給源43および33からチャンバー1内にArガスを供給してチャンバー1内をパージし、ステップ2の酸化ルテニウム(RuO)膜を還元する処理を行う。
【0065】
酸化ルテニウム膜の還元処理に際しては、酸化ルテニウム膜が形成されたウエハWをサセプタ2上に載置されたままの状態とし、サセプタ2を処理温度に加熱する。ステップ2の処理温度は200〜350℃が好ましい。また、効率化の観点から、ステップ1とステップ2との温度が同じ温度になるようにすることが好ましい。
【0066】
そして、図5(a)に示すように、水素を含有するルテニウム化合物を供給するのみで酸化ルテニウム(RuO)膜を還元する場合には、ヒーター31aにより、例えば80〜200℃に加熱されている原料タンク31に配管32からキャリアガスとしてArガスを所定の流量で供給し、上記(1)式の構造を有するルテニウム化合物をバブリングにより気化させ、酸化ルテニウム(RuO)膜を還元するための水素を含有するルテニウム化合物ガスとして、原料ガス送出配管36、第1の導入路11、シャワーヘッド10を介してチャンバー1内へ供給する。
【0067】
このときのチャンバー1内の圧力は5〜10Torr(665〜1333Pa)が好ましく、キャリアガス流量は100〜600mL/min(sccm)(ルテニウム化合物5〜14.6mL/min(sccm)相当)が好ましい。また、ルテニウム化合物の供給時間は60〜300secが好ましい。
【0068】
図5(b)に示すように、最初に水素を含有するルテニウム化合物ガスを供給し、その後、チャンバー内のパージを挟んで、水素を含有するルテニウム化合物を分解するためにOガスを供給する場合には、上記条件でルテニウム化合物ガスを供給した後、チャンバー1内をArガスでパージし、次いで、Oガス供給源42から分岐配管40a、還元ガス供給配管40、第2の導入路12、シャワーヘッド10を介してOガスをチャンバー1内に供給する。
【0069】
このときのチャンバー1内の圧力は5〜10Torr(665〜1333Pa)が好ましく、Oガス流量は500〜2000mL/min(sccm)が好ましい。また、Oガスの供給時間は5〜20secが好ましい。
【0070】
図5(c)に示すように、酸化ルテニウム(RuO)膜の還元処理を、水素を含有するルテニウム化合物ガスの供給と、Oガスの供給とをArガスによるパージを挟んで交互に複数回(サイクル)繰り返す場合には、最初のルテニウム化合物ガスの供給時間が30〜180sec、2回目以降のルテニウム化合物ガスの供給時間が20〜40sec、1回の酸素ガスの供給時間が5〜20secであることが好ましい。また、繰り返し回数(サイクル数)は、2〜500回が好ましい。
【0071】
以上のようにして、酸化ルテニウム(RuO)膜の形成から、還元によるルテニウム(Ru)膜の形成まで一貫して行うことができ、また、酸化ルテニウム(RuO)膜を極めて良好なステップカバレッジでかつ高レートで形成することができるので、これを還元して高ステップカバレッジかつ高スループットでルテニウム(Ru)膜を形成することができる。
【0072】
<実験例>
次に、本発明の実験例について説明する。
最初の例では、Ru化合物として上記(3)式の構造のものを用い、還元ガスとしてOガスを用いてCVD法によりウエハ上にRuO膜を形成し、このRuO膜に水素を含有するRu化合物ガスとして、RuO膜の形成の際と同様の(3)式のルテニウム化合物ガスを流量5mL/min(sccm)で、0〜300secの間で供給時間を変化させて供給して還元処理をおこなった。還元処理のウエハ温度は255℃とした。
【0073】
処理後の膜について、結晶構造の同定をX線回折(XRD)により行った。ルテニウム化合物ガスの供給時間が0sec、60sec、120sec、300secの際の膜のX線回折スペクトルを図8(a)〜(d)に示す。この図に示すように、ルテニウム化合物ガスの供給を行わなかった(0sec)膜は、最も強度が強いピークが28.067度に出現し、RuOが同定されたが、ルテニウム化合物ガスの供給時間を60sec、120sec、300secとした膜は、いずれも最も強度が強いピークが44.039度に出現し、Ruが同定された。このことから、ルテニウム化合物ガスの供給時間を60sec以上行うことにより、RuO膜がRu膜に還元されていることが確認された。また、ルテニウム化合物ガスの供給を行わなかった(0sec)ときのRuO膜と、ルテニウム化合物ガスの供給時間を60sec、120sec、300secとしたときのRu膜ではX線回折のピークは重なることがなく、それぞれが全く別の結晶性を有する膜であることが確認された。
【0074】
次に、ルテニウム化合物ガスの供給時間を変化させた際の膜について比抵抗およびシート抵抗を測定した。図9はルテニウム化合物ガスの供給時間と膜の比抵抗との関係を示す図であり、図10はルテニウム化合物ガスの供給時間と膜のシート抵抗およびその均一性との関係を示す図である。これらの図に示すように、ルテニウム化合物ガスの供給時間を増加させることにより比抵抗およびシート抵抗は低下するが、供給時間120sec以降、それらの値の低下量は飽和し、比抵抗はRu膜としては高い100μΩ・cm程度までしか低下しないことが確認された。これは未だ連続性や結晶性が低いためと推測される。
【0075】
そこで、ルテニウム化合物ガスと反応ガスとしてのOガスとの交互供給による還元処理について検討した。ここでは、Ru化合物として上記(3)式の構造のものを用い、還元ガスとしてOガスを用いて処理時間を140sec、280sec、560secと変化させてCVD処理を行ってウエハ上にRuO膜を形成し、その後、(3)式のルテニウム化合物ガスと反応ガスとしてのOガスとをパージを挟んで10cycle交互供給して還元処理を行った(交互供給還元)。この還元処理の条件は、チャンバー内の圧力を5Torr(665Pa)とし、最初のルテニウム化合物ガスの流通時間を50secとし、チャンバーパージ後に酸素(O)ガス1000sccmを5sec流通し、次いで、再度のチャンバーパージ後に、(1)ルテニウム化合物ガスを20sec流通、(2)チャンバーパージ、(3)酸素(O)ガス1000sccmを5sec流通といった(1)〜(3)を9回繰り返す条件とした。また、この際のウエハ温度は255℃とした。
【0076】
処理後の膜について、結晶構造の同定をX線回折(XRD)により行った。これらのX線回折スペクトルを図11(a)〜(c)に示す。その結果、いずれも最も強度が強いピークが44.039度に出現し、Ruが同定され、RuO膜がRu膜に還元されていることが確認された。
【0077】
次に、このようにして処理時間を変化させてCVD処理したRuO膜を還元処理したRu膜について、比抵抗およびシート抵抗を測定した。図12はRuO膜CVD時間と還元後のRu膜の膜厚および比抵抗との関係を示す図であり、図13はRuO膜CVD時間と還元後のRu膜のシート抵抗およびその均一性との関係を示す図である。図12に示すように、還元後のRu膜の比抵抗は、ルテニウム化合物の供給のみによって還元した場合と比較して低下しており、ルテニウム化合物ガスとOガスとの交互供給還元により、還元後のRu膜の結晶性が向上していることが確認された。またRuO膜CVD時間の増加にともない膜厚が増加しており、かつ膜厚の増加にともない比抵抗が低下するという比抵抗の膜厚依存性が見られるが、膜厚が5nm以上において比抵抗が44μΩ・cm近辺で飽和している。ただし、膜厚3nmにおいても比抵抗が60.66μΩ・cmと低い値であった。また、図13に示すようにシート抵抗も膜厚が増加するに従って低下し、その均一性は膜厚3nmにおいて1σが7%程度、5nm以上で1σが5%程度と良好な均一性が得られた。この均一性は元のRuO膜の均一性を承継しているものと考えられる。
【0078】
図14はこのような還元処理によって得られた膜厚10nmのRu膜の表面および断面の走査型顕微鏡(SEM)写真である。この図に示すように、上記還元処理後の膜が連続状態であり、膜の表面が平坦であることが確認された。また、図14の内容と図11のX線回折(XRD)によるX線回折スペクトルの結果から健全なRu膜が得られることが確認された。
【0079】
次に、Ru化合物として上記(3)式の構造のものを用い、還元ガスとしてOガスを用いて処理時間を560secとしてCVD処理を行ってウエハ上にRuO膜を形成し、その後、(3)式のルテニウム化合物ガスと反応ガスとしてのOガスとをパージを挟んで3、5、10、20cycleとcycle数を変化させて交互供給して還元処理を行った。この還元処理の条件は、チャンバー内の圧力を5Torr(665Pa)とし、最初のルテニウム化合物ガスの流通時間を50secとし、チャンバーパージ後に酸素(O)ガス1000sccmを5sec流通し、次いで、再度のチャンバーパージ後に、(1)ルテニウム化合物ガスを20sec流通、(2)チャンバーパージ、(3)酸素(O)ガス1000sccmを5sec流通といった(1)〜(3)を繰り返す条件とした。また、この際のウエハ温度は255℃とした。
【0080】
還元処理の際のサイクル数と還元により得られたRu膜の比抵抗との関係を図15に示す。また、交互供給還元のサイクル数を変化させて得られたRu膜の結晶性をX線回折(XRD)により確認した結果を図16に示す。図15に示すように、還元処理を行わないRuO膜に比較して、3cycleの還元処理を行ったものでも比抵抗が急激に低下しており、交互供給還元を3cycle行った時点でRu膜に還元されていることがわかる。また、図16に示すX線回折スペクトルから、交互供給還元のcycle数を増加するに従って44.039度に出現するRuのピークが高くなっており、cycle数増加させることにより還元して得られるRu膜の結晶性が向上することが確認された。
【0081】
次に、Ru化合物として上記(3)式の構造のものを用い、還元ガスとしてOガスを用いて処理時間を560secとしてCVD処理を行って、直径80nm、深さ8000nmのホールが形成されたウエハにRuO膜を形成した。その結果、図17のSEM写真に示すように、アスペクト比(A/R)が80に相当する位置までステップカバレッジ(S/C)が100%で膜が形成された。引き続き、(3)式のルテニウム化合物ガスと反応ガスとしてのOガスとをパージを挟んで10cycle交互供給して還元処理を行った。この還元処理の条件は、チャンバー内の圧力を5Torr(665Pa)とし、最初のルテニウム化合物ガスの流通時間を50secとし、チャンバーパージ後に酸素(O)ガス1000sccmを5sec流通し、次いで、再度のチャンバーパージ後に、(1)ルテニウム化合物ガスを20sec流通、(2)チャンバーパージ、(3)酸素(O)ガス1000sccmを5sec流通といった(1)〜(3)を9回繰り返す条件とした。また、この際のウエハ温度は255℃とした。その結果、図17に示すように、還元処理後の膜は、RuO膜に比べ密着性が極端に悪いRu膜特有の特徴が見られ、またモフォロジー的に見ても、Ru膜が得られていると考えられる。また、還元処理後もステップカバレッジ(S/C)が100%となっており、CVDの際のRuO膜のステップカバレッジを維持したまま還元によるRu膜が生成できていると考えられる。
【0082】
<他の適用>
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施の形態においては、酸化ルテニウム(RuO)膜を形成する際に、主に上記(1)式のルテニウム化合物ガスとOガスとを用いてCVD法(ALD法を含む)により形成する例を示したが、上述したようにCVDの際のルテニウム化合物ガスの種類は限定されず、また、酸化ルテニウム(RuO)膜を形成する手法はCVD法に限定されない。また、還元処理の際に用いる水素を含有するルテニウム化合物についても上記(1)式のルテニウム化合物ガスに限定されるものではなく、水素を含有していればよく、またCVDに用いる原料に限定されるものでもない。
【0083】
また、上記実施形態ではルテニウム(Ru)膜をキャパシタ膜であるSrTiO膜の上部または下部電極への適用例を示したが、SrTiO膜以外のZnO、Al、ZrOまたはZnOとAlのラミネート膜などの他のキャパシタ膜の上部または下部電極へ適用することができ、さらに、導電部材としてゲート電極、コンタクトバリア膜等の他の用途への適用も可能である。
【0084】
また、処理装置の構造も上記実施形態のものに限らず、ルテニウム化合物の供給手法についても上記実施形態のようなバブリングに限らず、気化器を用いて供給してもよいし、加熱により蒸気状にして供給することもできる。また、酸化ルテニウム(RuO)膜形成用の装置と、還元処理用の装置とに分けてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1;チャンバー
2;サセプタ
5;ヒーター
10;シャワーヘッド
30;ガス供給機構
31;原料タンク
42;Oガス供給源
50;制御部
51;プロセスコントローラ
53;記憶部
W;半導体ウエハ
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