(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119544
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】レジスト材料及びこれを用いたパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20170417BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20170417BHJP
C08G 79/00 20060101ALI20170417BHJP
C07F 7/28 20060101ALI20170417BHJP
C07F 7/00 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
G03F7/004 531
G03F7/32
G03F7/004
C08G79/00
C07F7/28 B
C07F7/00 A
C07F7/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-209487(P2013-209487)
(22)【出願日】2013年10月4日
(65)【公開番号】特開2015-75500(P2015-75500A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
(72)【発明者】
【氏名】片山 和弘
(72)【発明者】
【氏名】橘 誠一郎
【審査官】
倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−247640(JP,A)
【文献】
特開2011−253185(JP,A)
【文献】
特開2001−092126(JP,A)
【文献】
特開2014−178602(JP,A)
【文献】
特開2014−199429(JP,A)
【文献】
特開2010−085893(JP,A)
【文献】
特開2009−126940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/00;G03F7/004−7/18;7/26−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A−1)で示される金属化合物を(部分)縮合、又は(部分)加水分解縮合して得られる金属化合物に、下記一般式(A−2)で示される二価又は三価のアルコールのみを作用させて得られる金属化合物を含むことを特徴とするレジスト材料。
M(OR1A)4 (A−1)
(式中、Mはチタン、ジルコニウム又はハフニウムから選ばれる元素である。R1Aは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
R2A(OH)m (A−2)
(式中、mは2又は3で、mが2のとき、R2Aは二価の基として、炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基又はアラルキレン基;環状アルキル基、環状アルケニル基又はアリール基置換の直鎖状又は分岐状アルキレン基;又は環状アルキレン基、環状アルケニレン基又はアリーレン基介在の置換の直鎖状又は分岐状アルキレン基であり、これら二価の基は、シアノ基を有していてもよく、あるいはカルボニル基、エステル基、エーテル基、チオール基又はNR基(Rは水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基)が介在していてもよい。mが3のとき、上記二価の基の水素原子が1個脱離した三価の基を示す。)
【請求項2】
更に、酸発生剤を含む請求項1に記載のレジスト材料。
【請求項3】
下記一般式(A−1)で示される金属化合物を(部分)縮合、又は(部分)加水分解縮合して得られる金属化合物に、下記一般式(A−2)で示される二価又は三価のアルコールを作用させて得られる金属化合物と、酸発生剤とを含むことを特徴とするレジスト材料。
M(OR1A)4 (A−1)
(式中、Mはチタン、ジルコニウム又はハフニウムから選ばれる元素である。R1Aは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
R2A(OH)m (A−2)
(式中、mは2又は3で、mが2のとき、R2Aは二価の基として、炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基又はアラルキレン基;環状アルキル基、環状アルケニル基又はアリール基置換の直鎖状又は分岐状アルキレン基;又は環状アルキレン基、環状アルケニレン基又はアリーレン基介在の置換の直鎖状又は分岐状アルキレン基であり、これら二価の基は、シアノ基を有していてもよく、あるいはカルボニル基、エステル基、エーテル基、チオール基又はNR基(Rは水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基)が介在していてもよい。mが3のとき、上記二価の基の水素原子が1個脱離した三価の基を示す。)
【請求項4】
得られた最終金属化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が、500〜100,000である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のレジスト材料。
【請求項5】
更に、有機溶剤を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載のレジスト材料。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
現像液としてアルカリ水を用いて現像することを特徴とする請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
現像液がテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選ばれる1種以上の水溶液であることを特徴とする請求項7に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記高エネルギー線で露光する工程において、波長3〜15nmの真空紫外線を光源として用いることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項10】
前記高エネルギー線で露光する工程において、加速電圧1〜150keVの加速電圧電子ビームを光源として用いることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト材料、特に電子ビーム(EB)露光及び真空紫外光(EUV)露光用ポジ型レジスト材料、及びこれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。特にフラッシュメモリー市場の拡大と記憶容量の増大化が微細化を牽引している。最先端の微細化技術としてはArFリソグラフィーによる65nmノードのデバイスの量産が行われており、次世代のArF液浸リソグラフィーによる45nmノードの量産準備が進行中である。次次世代の32nmノードとしては、水よりも高屈折率の液体と高屈折率レンズ、高屈折率レジスト膜を組み合わせた超高NAレンズによる液浸リソグラフィー、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィー、ArFリソグラフィーの2重露光(ダブルパターニングリソグラフィー)などが候補であり、検討が進められている。
【0003】
ところで、近年では加工寸法が最小線幅として50nmを切ろうとしているが、加工寸法がそのように小さくなった場合には、現像液の表面張力に抗してパターンを維持する構造強度、基板への接着強度等の要因から、加工を行う基板の表面材質によってはレジスト膜厚は100nm以下にする必要がある場合があるが、従来高解像性化学増幅型レジスト膜を形成するために使用されてきたレジスト膜の膜厚が150nmにおいてはラインエッジラフネスの悪化が大きな問題にならなかったにも拘わらず、膜厚が100nm以下になるとラインエッジラフネスが大幅に悪化してしまう問題が発生した。
【0004】
微細化の進行と共に、酸の拡散による像のボケが問題になっている(非特許文献1:SPIE Vol.5039 p1 (2003))。寸法サイズ45nm以降の微細パターンでの解像性を確保するためには、従来提案されている溶解コントラストの向上だけでなく、酸拡散の制御が重要であることが提案されている。しかしながら、化学増幅型レジスト材料は、酸の拡散によって感度とコントラストを上げているため、ポストエクスポージャベーク(PEB)温度や時間を短くして酸拡散を極限まで抑えようとすると感度とコントラストが著しく低下する。
バルキーな酸が発生する酸発生剤を添加して酸拡散を抑えることは有効である。そこで、ポリマーに重合性オレフィンを有するオニウム塩の酸発生剤を共重合することが提案されている。
寸法サイズ16nm以降のレジスト膜のパターン形成においては、酸拡散の観点から化学増幅型レジスト膜ではパターン形成ができないと考えられており、非化学増幅型レジスト材料の開発が望まれている。
【0005】
非化学増幅型レジスト材料として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を挙げることができる。このものは、EBあるいはEUV照射によって主鎖が切断し、分子量が低下することによって有機溶剤の現像液への溶解性が向上するポジ型レジスト材料であるが、環構造を有していないためにエッチング耐性が低いことと露光時のアウトガス量が多いことが欠点である。
【0006】
ハイドロゲンシルセスキオキサン(HSQ)は、EBあるいはEUV照射によって生じたシラノールの縮合反応による架橋によってアルカリ現像液に不溶となるネガ型レジスト材料である。また、塩素置換したカリックスアレーンもネガ型レジスト材料として機能する。これらのネガ型レジスト材料は、架橋前の分子サイズが小さく酸拡散によるボケが無いため、エッジラフネスが小さく解像性が非常に高く、露光装置の解像限界を示すためのパターン転写材料として用いられている。しかしながら、これらの材料はネガレジストであり、ホールパターンを形成しようとすると多層膜マスクの欠陥の影響を受けやすいブライトパターンを使わざるを得ない問題がある。
解像性の高い非化学増幅型のポジ型レジスト材料の開発が望まれているのである。
【0007】
EB描画中のレジスト膜の帯電によって、描画位置がずれる問題が生じている。レジスト膜の帯電を防止するためにレジスト膜上に帯電防止膜を敷くことが提案されている。但しこの場合、帯電防止膜を塗ることによるプロセスのコストアップが問題になる。
【0008】
これまで半導体リソグラフィー用のフォトレジスト材料において、金属が導入されたレジスト材料を用いることは、金属原子が基板に移動することによって半導体の動作不良が起きる可能性があるために不可能であった。しかしながら半導体以外の用途、例えばLCD用レジスト材料(非特許文献2:J.Vac.Sci.Technol.B27(6),Nov/Dec p3164 (2009))として、透明電極ZnOを形成するためのパターン形成材料として、ネオデカン酸亜鉛が用いられている。特許文献1(特表2005−505691号公報)においては、珪素、チタン、ジルコニウム、タンタル、バリウム、ストロンチウム、ハフニウムのアセチルアセトン配位子によるパターン形成例が示されている。更には、特許文献2(米国特許第5534312号明細書)においては、銅、クロム、セリウム、イットリウム、バリウム、アルミニウム等のカルボキシル基を有する配位子、アミノ基を有する配位子による塩を用いたパターン形成例が示されている。パターン形成後に300℃の加熱処理を行うことによってメタル酸化物のパターンを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2005−505691号公報
【特許文献2】米国特許第5534312号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】SPIE Vol.5039 p1 (2003)
【非特許文献2】J.Vac.Sci.Technol.B27(6),Nov/Dec p3164 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、高解像度でありながら高感度であり、なおかつ露光後のパターン形状が良好でラインエッジラフネスが小さいレジスト材料、特には導電性の機能を有して描画中のチャージアップを防止し、毒性が少なく安全性の高い溶剤を用いたポジ型レジスト材料、及びこれを用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明は、下記レジスト材料並びにこれを用いたパターン形成方法を提供する。
〔1〕
下記一般式(A−1)で示される金属化合
物を(部分
)縮合、又は(部分)加水分解縮合して得られる金属化合
物に、下記一般式(A−2)で示される二価又は三価のアルコール
のみを作用させて得られる金属化合物を含むことを特徴とするレジスト材料。
M(OR
1A)
4 (A−1)
(式中、Mはチタン、ジルコニウム又はハフニウムから選ばれる元素である。R
1Aは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
R
2A(OH)
m (A−2)
(式中、mは2又は3で、mが2のとき、R
2Aは二価の基として、炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基又はアラルキレン基;環状アルキル基、環状アルケニル基又はアリール基置換の直鎖状又は分岐状アルキレン基;又は環状アルキレン基、環状アルケニレン基又はアリーレン基介在の置換の直鎖状又は分岐状アルキレン基であり、これら二価の基は、シアノ基を有していてもよく、あるいはカルボニル基、エステル基、エーテル基、チオール基又はNR基(Rは水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基)が介在していてもよい。mが3のとき、上記二価の基の水素原子が1個脱離した三価の基を示す。)
〔2〕
更に、酸発生剤を含む〔1〕に記載のレジスト材料。
〔3〕
下記一般式(A−1)で示される金属化合物を(部分)縮合、又は(部分)加水分解縮合して得られる金属化合物に、下記一般式(A−2)で示される二価又は三価のアルコールを作用させて得られる金属化合物と、酸発生剤とを含むことを特徴とするレジスト材料。
M(OR1A)4 (A−1)
(式中、Mはチタン、ジルコニウム又はハフニウムから選ばれる元素である。R1Aは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
R2A(OH)m (A−2)
(式中、mは2又は3で、mが2のとき、R2Aは二価の基として、炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基又はアラルキレン基;環状アルキル基、環状アルケニル基又はアリール基置換の直鎖状又は分岐状アルキレン基;又は環状アルキレン基、環状アルケニレン基又はアリーレン基介在の置換の直鎖状又は分岐状アルキレン基であり、これら二価の基は、シアノ基を有していてもよく、あるいはカルボニル基、エステル基、エーテル基、チオール基又はNR基(Rは水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基)が介在していてもよい。mが3のとき、上記二価の基の水素原子が1個脱離した三価の基を示す。)
〔4〕
得られた最終金属化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が、500〜100,000である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のレジスト材料。
〔5〕
更に、有機溶剤を含む〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のレジスト材料。
〔
6〕
〔1〕
〜〔5〕のいずれかに記載のレジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。
〔
7〕
現像液としてアルカリ水を用いて現像することを特徴とする〔
6〕に記載のパターン形成方法。
〔
8〕
現像液がテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選ばれる1種以上の水溶液であることを特徴とする〔
7〕に記載のパターン形成方法。
〔
9〕
前記高エネルギー線で露光する工程において、波長3〜15nmの真空紫外線を光源として用いることを特徴とする〔
6〕〜〔
8〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔
10〕
前記高エネルギー線で露光する工程において、加速電圧1〜150keVの加速電圧電子ビームを光源として用いることを特徴とする〔
6〕〜〔
8〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のレジスト材料は、優れた解像性とエッジラフネスが良好な特性を示す。従って、特に超LSI製造用あるいはフォトマスクの微細パターン形成材料、EB、EUV露光用のパターン形成材料として好適なポジ型レジスト材料とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
上述のように、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が進むなか、高解像度で露光後のパターン形状が良好でラインエッジラフネスが小さいレジスト材料が求められていた。
【0015】
本発明者らは、近年要望される高解像度でなおかつラインエッジラフネスの小さいレジスト材料を得るべく鋭意検討を重ねた結果、チタン、ジルコニウム、ハフニウムのアルコキシドの部分縮合物にジオール又はトリオールを配位させたポジ型レジスト材料が有効であることを知見した。
これらの金属はEB、EUVの光に対して吸収が高く、非化学増幅型レジスト材料としては感度が高い特徴を有する。チタン、ジルコニウム、ハフニウムのアルコキシドの部分縮合物にジオール又はトリオールを配位させたレジスト材料は、高エネルギー線の照射によってジオール又はトリオールの配位子が脱離してアルカリ水に可溶となることによってポジ型レジスト材料として機能する。
【0016】
前述の金属のジオール配位の錯体は非化学増幅型の分子レジスト材料であるが、酸拡散による像のボケが発生しないために高解像度である。しかもポリマー型のレジスト材料に比べて分子サイズが小さいために、分子サイズの揺らぎに起因するエッジラフネスの発生が少なく、このため非常にエッジラフネスが小さい特徴を有する。
更には、導電性を有するためにEB描画中の帯電を防止し、特に超LSI製造用あるいはフォトマスクの微細パターン形成材料として好適なレジスト材料、特にはポジ型レジスト材料が得られることを知見し、本発明を完成させたものである。
【0017】
即ち、本発明のレジスト材料は、下記一般式(A−1)で示される出発金属化合物、該金属化合物を(部分)加水分解もしくは縮合、又は(部分)加水分解縮合して得られる中間金属化合物から選ばれる1種以上に、下記一般式(A−2)で示される二価又は三価のアルコールの配位子を作用させて得られる最終金属化合物を含むことを特徴とするレジスト材料である。なお、「(部分)加水分解もしくは縮合」とは、部分加水分解、部分縮合、加水分解又は縮合を意味し、「(部分)加水分解縮合」とは、部分加水分解縮合又は加水分解縮合を意味する。
M(OR
1A)
4 (A−1)
(式中、Mはチタン、ジルコニウム又はハフニウムから選ばれる元素である。R
1Aは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
R
2A(OH)
m (A−2)
(式中、mは2又は3で、mが2のとき、R
2Aは二価の基として、炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基又はアラルキレン基;環状アルキル基、環状アルケニル基又はアリール基置換の直鎖状又は分岐状アルキレン基;又は環状アルキレン基、環状アルケニレン基又はアリーレン基介在の置換の直鎖状又は分岐状アルキレン基であり、これら二価の基は、シアノ基を有していてもよく、あるいはカルボニル基、エステル基、エーテル基、チオール基又はNR基(Rは水素原子又は炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基)が介在していてもよい。mが3のとき、上記二価の基の水素原子が1個脱離した三価の基を示す。)
【0018】
なお、上記R
2Aの定義において、環状アルキル基、環状アルケニル基、環状アリール基が置換したアルキレン基は、該アルキレン基の水素原子がこれら環状アルキル基、環状アルケニル基又はアリール基に置換したものであり、また、環状アルキレン基、環状アルケニレン基又はアリーレン基が介在する直鎖状又は分岐状アルキレン基は、該直鎖状又は分岐状アルキレン基の同一炭素原子に結合する2個の水素原子又は異なった炭素原子の各1個の水素原子が脱離してそこに環状アルキレン基、環状アルケニレン基又はアリーレン基が介在したものである。
【0019】
配位子としては、ジヒドロキシ化合物又はトリヒドロキシ化合物であり、具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール又は下記化合物を挙げることができる。
【0023】
一般式(A−1)のチタン、ジルコニウム、ハフニウムのアルコキシ化合物の(部分)加水分解もしくは縮合、又は(部分)加水分解縮合物の合成方法としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの炭素数1〜6のアルコキシ化合物を原料とし、これの(部分)加水分解もしくは縮合、又は(部分)加水分解縮合、好ましくは部分加水分解もしくは部分加水分解縮合を行う。部分加水分解によってアルコキシ基が残存するチタン、ジルコニウム、ハフニウムの酸化物が合成される。この状態で上記ジオール又はトリオール化合物と混合すると、炭素数1〜6のアルキル基R
1Aが二価又は三価の基R
2Aに置き換わる。この際生じるR
1AOHを反応系外に除くことにより効果的に交換が行われる。
【0024】
この場合、式(A−1)の金属化合物の(部分)加水分解もしくは縮合、(部分)加水分解縮合を行う方法、条件としては、通常の公知の条件が採用し得、金属アルコキシドに水を加えた加水分解乃至縮合反応方法を採用することができる。
また、式(A−1)で示される金属化合物、その(部分)加水分解もしくは縮合、又は(部分)加水分解縮合して得られる金属化合物に、式(A−2)のアルコールを作用させる方法、条件としては、上記によって生じた(部分)加水分解もしくは縮合物、又は(部分)加水分解縮合物、好ましくは上記加水分解によって生じた部分加水分解物又は部分加水分解縮合物に式(A−2)のアルコールを添加し、減圧によって金属アルコキシドから生じたアルコールを系外に排出し、式(A−2)のアルコールを金属に配位させる方法が採用される。
【0025】
得られた最終金属化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量は、500〜100,000、特に700〜50,000であることが好ましい。
【0026】
本発明のレジスト材料としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムのアルコキシドの
(部分)加水分解もしくは縮合、又は(部分)加水分解縮合物、好ましくは部分加水分解物又は部分加水分解縮合物にジオール又はトリオール化合物を配位させた材料を含有することを必須とするが、ジオール又はトリオール化合物に加えて炭素数5以上のアルコールを配位させることもできる。炭素数5以上のアルコールは具体的には下記に例示することができる。
【0028】
本発明のレジスト材料に配合することができる有機溶剤としては、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、1−ヘプタノール、シクロヘキサノール、オクタノール、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、プロピレングリコール、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメトキシメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコール、アリルアルコール、プロパギルアルコール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3−メチル−1−ブチン−3−オール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、グリシドールから選ばれる1種以上を用いることができる。
【0029】
本発明のレジスト材料には酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。酸発生剤から発生したスルホン酸やカルボン酸がメタル酸化物に配位してアルカリ溶解性が高まり、ポジ型レジストとしてのコントラストを高くすることができる。EBやEUV照射中にメタル酸化物から沢山の2次電子が発生し、これが酸発生剤にエネルギー移動して酸発生剤の分解効率を高める。酸発生剤を添加することによってコントラストだけでなく感度を向上させることができる。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。
【0030】
酸発生剤から発生した酸は、ジオール、トリオール配位子と交換して酸が配位したメタル酸化物となる。この配位子の交換反応は化学増幅反応ではないので、交換反応による酸拡散の影響は非常に少ない。しかしながら、露光中に発生する2次電子の拡散による像のボケの影響が大きいため、化学増幅レジストとは異なった拡散の影響を受けることになる。
【0031】
また、本発明は、前記レジスト材料を基板上に塗布する工程と、加熱処理後、高エネルギー線で露光する工程と、現像液を用いて現像する工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。高エネルギー線としては、KrF、ArF、Xe、F
2、Ar
2に挙げられるエキシマレーザー、エキシマランプ、EUV、EBを挙げることができる。露光のエネルギーによってジオール配位子の脱離が起こり、アルカリ水溶液への溶解性が高まることによってポジ型レジスト材料として機能する。
【0032】
この場合、前記高エネルギー線で露光する工程において、波長3〜15nmの真空紫外線や加速電圧1〜150keVの加速電圧電子ビーム、好ましくは5〜120keV、より好ましくは加速電圧50keV以下の加速電圧電子ビーム、特には10keV以下の低加速電圧電子ビームを光源として用いることができる。エキシマレーザーよりも波長が短く、エネルギー密度が高いEUVやEBで露光した方がジオール配位子の脱保護反応の効率が高いため好ましく用いることができる。
【0033】
本発明のレジスト材料を種々の集積回路製造及びマスク製造に用いる場合は、特に限定されないが公知のリソグラフィー技術を適用することができる。
例えば、本発明のレジスト材料を、集積回路製造用の基板あるいは該基板上の被加工層(Si、SiO
2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)や、マスク回路製造用の基板あるいは該基板上の被加工層(Cr、CrO、CrON、MoSi、SiO
2等)上にスピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターコート等の適当な塗布方法により塗布膜厚が0.01〜2.0μmとなるように塗布する。これをホットプレート上で60〜150℃、10秒〜30分間、好ましくは80〜120℃、30秒〜20分間プリベークする。
【0034】
次いで、紫外線、遠紫外線、電子線(EB)、X線、エキシマレーザー、γ線、シンクロトロン放射線、真空紫外線(軟X線;EUV)等の高エネルギー線から選ばれる光源で目的とするパターンを所定のマスクを通じてもしくは直接露光を行う。露光量は1〜1J/cm
2程度、特に10〜500mJ/cm
2、又は0.1〜1mC/cm
2程度、特に0.5〜500μC/cm
2となるように露光することが好ましい。露光後のベーク(PEB)は必ずしも必要ではない。
【0035】
更に、0.1〜5質量%、好ましくは2〜3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリンヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)から選ばれる0.1〜30質量%のアルカリ水溶液により現像を行う。前述の塩基性物質以外にアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、メチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、トリメチルヒドラジン、テトラメチルヒドラジン、エチルヒドラジン、ジエチルヒドラジン、プロピルヒドラジン、ブチルヒドラジン、フェニルヒドラジン、ベンジルヒドラジン、フェネチルヒドラジン、シクロプロピルヒドラジン、シクロペンチルヒドラジン、シクロヘキシルヒドラジン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノ−2−メチルプロパン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン、N−ヘキシルエチレンジアミン、N−シクロヘキシルエチレンジアミン、N−オクチルエチレンジアミン、N−デシルエチレンジアミン、N−ドデシルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、N−イソプロピルジエチレントリアミン、N−(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、トリエチレンテトラミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、トリス(2−アミノエチル)アミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、N,N’−ビス(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N−(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N−(ヒドロキシエチル)トリエチレンテトラミン、ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、4−(2−アミノエチル)モルホリン、ポリエチレンイミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,3−ジアミノペンタン、1,5−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノプロパン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N−エチル−1,3−プロパンジアミン、N−イソプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジイソプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3,3’−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、N−(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、スペルミジン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、N,N’,N”−トリメチルビス(ヘキサメチレン)トリアミン、4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミン、スペルミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,2−ビス(アミノエトキシ)エタン、4,9−ジオキサ−1,12−ドデカンジアミン、4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン、1,3−ジアミノヒドロキシプロパン、4,4’−メチレンジピペリジン、4−(アミノメチル)ピペリジン、ホモピペラジン、3−アミノピロリジン、4−アミノピペリジン、3−(4−アミノブチル)ピペリジン、ポリアリルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロナン、1,5,9−トリメチル−1,5,9−トリアザシクロドデカン、1,4,8,11−テトラメチル−1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、4,4’−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)等を0.1〜30質量%含有するアルカリ水溶液の現像を行ってもよい。現像時間は3秒〜3分間、好ましくは5秒〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより、光を照射した部分は現像液に溶解し、露光されなかった部分は溶解せず、基板上に目的のポジ型のパターンが形成される。現像後純水でリンスし、スピンドライによって乾燥させパターンを得る。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0037】
[合成例A−I]
チタンテトライソプロポキシド284gを2−プロパノール(IPA)500gに溶解し、撹拌しながら脱イオン水27gとIPA500gの混合溶液を室温で2時間かけて滴下した。得られた溶液に2−エチル−1,3−ヘキサンジオール146gを添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を減圧下、30℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところで4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)を1,200g加え、40℃、減圧下でIPAが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物[A−I]のMIBC溶液1,000gを得た。ポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,000であった。
【0038】
[合成例A−II]
チタンテトライソプロポキシド284gをIPA500gに溶解し、撹拌しながら脱イオン水27gとIPA500gの混合溶液を室温で2時間かけて滴下した。得られた溶液に2−メチル−2,4−ペンタンジオール120gを添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を減圧下、30℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところでMIBCを1,200g加え、40℃、減圧下でIPAが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物[A−II]のMIBC溶液1,000gを得た。ポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,100であった。
【0039】
[合成例A−III]
チタンテトラブトキシド340gを1−ブタノール500gに溶解し、撹拌しながら脱イオン水27gと1−ブタノール500gの混合溶液を室温で2時間かけて滴下した。得られた溶液に3−メチル−1,3−ヘキサンジオール132gを添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を減圧下、40℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を1,200g加え、50℃、減圧下で1−ブタノールが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物[A−III]のPGMEA溶液1,000gを得た。ポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,250であった。
【0040】
[合成例A−IV]
チタンテトラブトキシドを部分加水分解を行うことによって得られたチタンテトラブトキシドテトラマー243gを1−ブタノール500gに溶解し、ピナコール130gを添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を減圧下、40℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところでPGMEAを1,200g加え、50℃、減圧下で1−ブタノールが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物[A−IV]のPGMEA溶液1,000gを得た。ポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,150であった。
【0041】
[合成例A−V]
上記のチタンテトラブトキシドテトラマー243gを1−ブタノール500gに溶解し、2,4−ジメチル−2,4−ヘキサンジオール146gを添加し、室温で30分撹拌した。N−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン46gを加え、この溶液を減圧下、50℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところでPGMEAを1,200g加え、50℃、減圧下で1−ブタノールが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物[A−V]のPGMEA溶液1,000gを得た。ポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,100であった。
【0042】
[合成例A−VI]
上記のチタンテトラブトキシドテトラマー243gを1−ブタノール500gに溶解し、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール150gを添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を減圧下、50℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところでPGMEAを1,200g加え、50℃、減圧下で1−ブタノールが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物[A−VI]のPGMEA溶液1,000gを得た。ポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,100であった。
【0043】
[合成例A−VII]
ジルコニウムテトライソプロポキシドの80質量%1−ブタノール溶液480gを1−ブタノール400gに溶解し、撹拌しながら脱イオン水27gと1−ブタノール500gの混合溶液を室温で2時間かけて滴下した。得られた溶液に1,3−ブタンジオール90gを添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を減圧下、30℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところでPGMEAを1,200g加え、40℃、減圧下で1−ブタノールが留出しなくなるまで加熱し、ジルコニウム含有化合物[A−VII]のPGMEA溶液1,000gを得た。ポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,400であった。
【0044】
[合成例A−VIII]
ハフニウムテトライソプロポキシドの80質量%1−ブタノール溶液480gを1−ブタノール400gに溶解し、撹拌しながら脱イオン水27gと1−ブタノール500gの混合溶液を室温で2時間かけて滴下した。得られた溶液に1,3−ブタンジオール90gを添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を減圧下、30℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところでPGMEAを1,200g加え、40℃、減圧下で1−ブタノールが留出しなくなるまで加熱し、ハフニウム含有化合物[A−VIII]のPGMEA溶液1,000gを得た。ポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,500であった。
【0045】
[比較合成例A−I]
チタンテトライソプロポキシド284gをIPA500gに溶解し、撹拌しながら脱イオン水27gとIPA500gの混合溶液を室温で2時間かけて滴下した。この溶液を減圧下、30℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところでMIBCを1,200g加え、40℃、減圧下でIPAが留出しなくなるまで加熱し、チタン含有化合物[比較A−I]のMIBC溶液1,000gを得た。ポリスチレン換算分子量を測定したところMw=1,300であった。
【0046】
[比較合成例A−II]
チタンテトライソプロポキシド284gをIPA500gに溶解し、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール150gを添加し、室温で30分撹拌した。この溶液を減圧下、50℃で濃縮した後、更に60℃まで加熱し、減圧下、留出物が出なくなるまで加熱を続けた。留出物が見られなくなったところでMIBCを1,200g加え、50℃、減圧下で1−ブタノールが留出しなくなるまで加熱し、チタンテトライソプロポキシドの配位子を2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールに変換したチタン含有化合物[比較A−II]のMIBC溶液1,000gを得た。ポリスチレン換算分子量を測定したところMw=280であった。
【0047】
[実施例1〜10、比較例1,2]
上記合成例で得られたジオールが配位したメタル酸化物を、界面活性剤として3M社製のフッ素系界面活性剤FC−4430を100ppm溶解させた溶剤に表1に示される組成で溶解させた溶液を、0.2μmサイズのフィルターで濾過してポジ型レジスト材料を調製した。
【0048】
下記表1中の各組成は次の通りである。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGPE:プロピレングリコールモノプロピルエーテル
MIBC:4−メチル−2−ペンタノール
酸発生剤:PAG1,2(下記構造式参照)
【化5】
【0049】
電子ビーム描画評価
描画評価では、表1に示される組成で溶解させた溶液を、0.2μmサイズのフィルターで濾過して得たポジ型レジスト材料を直径6インチのヘキサメチルジシラザン(HMDS)ベーパープライム処理したSi基板上に、クリーントラックMark 5(東京エレクトロン(株)製)を用いてスピンコートし、ホットプレート上で110℃で60秒間プリベークして40nmのレジスト膜を作製した。これに、(株)日立製作所製HL−800Dを用いてHV電圧50keVで真空チャンバー内描画を行った。描画後直ちにクリーントラックMark 5(東京エレクトロン(株)製)を用いて2.38質量%のTMAH水溶液で20秒間パドル現像を行い、ポジ型のパターンを得た。
得られたレジストパターンを次のように評価した。
100nmのラインアンドスペースを1:1で解像する露光量における、最小の寸法を解像力とし、100nmLSのエッジラフネス(LWR)をSEMで測定した。
レジスト組成とEB露光における感度、解像度の結果を表2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表2の結果より、本発明のレジスト材料は、十分な解像力を有し、エッジラフネスも十分に小さいことがわかった。
一方、比較例1のレジスト材料は、ジオールが配位していないためにアルカリ現像液への未露光部分の溶解阻止性が不十分なためパターン形成ができなかった。比較例2のレジスト材料は、ジオールが配位しているもののチタンの縮合物ではないため分子量が小さすぎて、これも未露光部分の溶解阻止性が不十分なためパターン形成ができなかった。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。