特許第6119874号(P6119874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6119874シリコーン接着剤組成物及び固体撮像デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119874
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】シリコーン接着剤組成物及び固体撮像デバイス
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/04 20060101AFI20170417BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20170417BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170417BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20170417BHJP
   C08G 77/20 20060101ALN20170417BHJP
   C08G 77/50 20060101ALN20170417BHJP
【FI】
   C09J183/04
   C09J11/04
   C09J11/06
   C09J7/00
   !C08G77/20
   !C08G77/50
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-547748(P2015-547748)
(86)(22)【出願日】2014年11月10日
(86)【国際出願番号】JP2014079692
(87)【国際公開番号】WO2015072418
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2016年2月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-233707(P2013-233707)
(32)【優先日】2013年11月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】曽我 恭子
(72)【発明者】
【氏名】菅生 道博
【審査官】 吉田 邦久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−179135(JP,A)
【文献】 特開2012−229333(JP,A)
【文献】 特開2013−082801(JP,A)
【文献】 特開2012−144616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 183/04
C09J 7/00
C09J 11/04
C09J 11/06
C08G 77/20
C08G 77/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非芳香族飽和1価炭化水素基及びアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)1分子内に2個以上のSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のアルケニル基に対する(B)成分中のSiH基のモル比が0.5〜10となる量、
(C)白金系触媒:有効量
を含有してなり、(A)成分の非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサンが、下記(I)〜(III)で示される単位を含む重量平均分子量が2,000〜60,000のオルガノポリシロキサン(A−1)又は該オルガノポリシロキサン(A−1)に下記一般式(1)で示される1種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを上記オルガノポリシロキサン(A−1)の総アルケニル基に対して上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの総SiH基がモル比で0.4〜0.8倍となる量でヒドロシリル化反応させた重量平均分子量が20,000〜400,000の高分子量化したオルガノポリシロキサン(A−2)であることを特徴とするシリコーン接着剤組成物。
(I)R1SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位):50〜99モル%
(II)R23SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位):0〜49モル%
(III)R43SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位):1〜15モル%
(式中、R1〜R3はそれぞれ1価の有機基であり、かつR1〜R3で示される全有機基中の2〜10モル%が炭素数2〜7のアルケニル基であり、R1〜R3で示される全有機基中の40モル%以上は、同一又は異なる、炭素数5〜10の下記環状構造のいずれかを含む非芳香族飽和1価炭化水素基
【化1】

であり、かつ10〜40モル%は、同一又は異なる、炭素数6〜15の置換又は非置換の1価の非環状飽和炭化水素基である。更に、残部が前記アルケニル基、炭素数5〜10の環状飽和1価炭化水素基、炭素数6〜15の非環状飽和1価炭化水素基以外のR1〜R3で示される有機基、及びR4は、同一又は異なる、炭素数1〜7の置換又は非置換の1価炭化水素基である。)
【化2】

(式中、R5〜R7は同一でも異なっていてもよく、アルケニル基を除く炭素数1〜12の1価炭化水素基を示す。nは0〜200の整数である。)
【請求項2】
更に(D)反応制御剤を含有する請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
更に(E)酸化防止剤を含有する請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
更に(F)有機溶剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記(F)有機溶剤は、沸点が120〜240℃の炭化水素溶剤であることを特徴とする請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
シリコンウエハ、固体撮像素子シリコンウエハ、プラスチック基板,セラミック基板及び金属製回路基板のいずれかから選ばれる基板と保護ガラス基板との間に積層される請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
シリコンウエハ、固体撮像素子シリコンウエハ、プラスチック基板,セラミック基板及び金属製回路基板のいずれかから選ばれる基板上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤組成物の硬化物層及び保護ガラス基板を順次積層させた積層物を含む固体撮像デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性、耐熱性、薬品耐性、絶縁性、及び高透過率性を有し、保護ガラスと半導体素子、特にCCDやCMOS等の固体撮像素子シリコン基板と保護ガラスの貼り合わせ用途に好適に用いられるシリコーン接着剤組成物及び固体撮像デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCD,CMOSイメージセンサー向けパッケージ構造は、水分、ほこり等の異物からセンサー部分を守るため、ディスペンス等の印刷法によって塗布される液状又はフィルム状の光硬化型感光性樹脂組成物によって保護ガラスと接着する方法をとっている。
【0003】
このフォトリソグラフィー法による接着剤層の成形は、まず、シリコン基板又はガラス基板上に、感光性接着剤組成物を塗布又は感光性接着剤フィルムを積層し、感光性接着剤層を形成する。次に該感光性接着剤層を露光、ベーク、現像した後、保護ガラス基板(シリコン基板)を密着させ、加熱、加圧により接着剤層と保護ガラスとを接着する。その後、熱硬化、ダイシングすることにより、中空構造型パッケージが得られる。このような感光性樹脂組成物としては、アクリル樹脂、光重合性化合物、及び光重合開始剤を有する感光性樹脂組成物(特許文献1:特開2002−351070号公報)、感光性の変性エポキシ樹脂、光重合開始剤、希釈溶剤、及び熱硬化性化合物を有する感光性樹脂組成物(特許文献2:特開2003−177528号公報)等が知られている。
【0004】
また、単なる熱硬化性の接着剤としては、ポリイミド樹脂、硬化性化合物、及びシランカップリング剤を含む接着性ドライフィルム(特許文献3:特開2003−253220号公報)も開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2記載の感光性樹脂組成物では、接着剤として求められる接着性、熱硬化後の気密封止性、低吸湿性等の特性が不十分であり、かつ露光、ベーク、現像の3工程が製造に必須となるため、高価で生産性が低い欠点を有する。また、特許文献3記載の熱硬化性の接着剤においても、接着性や、耐熱性、耐光性等の特性が不十分である。
【0006】
更に最近では貫通電極(TSV)を用いた3次元実装技術がCMOSイメージセンサー製造の主流となりつつあり、この3次元実装では保護ガラスと接着、熱硬化後のシリコン基板に裏面研削を行い、シリコン基板を100μm以下にまで薄膜化することが必須となる。この際、薄型ウエハが割れることなく研削可能であることが重要となる上、接着基板が大きく反ることが新たに問題となっており、特に8インチ以上の大口径ウエハで顕著となっている。
【0007】
接着基板の反りを抑えるためにエポキシ基含有熱硬化性シリコーン高分子化合物(特許文献4:特開2012−188650号公報)も開示されている。このシリコーン組成物を使用した接着基板は反り量が低くなるものの、高温長時間(例えば50時間以上)の耐熱性試験で分光特性が大きく低下することが問題となっている。同様にシリコーン高分子化合物(特許文献5:特開2012−229333号公報、特許文献6:特開2013−82801号公報)も示されており、良好な接合性、耐熱性、裏面研削性を示すが、熱可塑性であるため永久膜として必要な特性を十分に満たしていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−351070号公報
【特許文献2】特開2003−177528号公報
【特許文献3】特開2003−253220号公報
【特許文献4】特開2012−188650号公報
【特許文献5】特開2012−229333号公報
【特許文献6】特開2013−82801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、露光、ベーク、現像工程が製造に不要であるため、製造コストが安価で生産性が高く、接着剤として求められる接着性、熱硬化後の気密封止性、低吸湿性等の特性が良好で、耐熱性、耐光性等の硬化膜の信頼性が高く、更に3次元実装製造で必要とされる裏面研削後の接着基板の反りを抑えることが可能なシリコーン高分子化合物を用いた付加硬化型のシリコーン接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記のシリコーン接着剤組成物がCCD,CMOSイメージセンサー製造用接着剤として優れていることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
従って、本発明は、下記のシリコーン接着剤組成物及び固体撮像デバイスを提供する。
〔1〕
(A)非芳香族飽和1価炭化水素基及びアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)1分子内に2個以上のSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のアルケニル基に対する(B)成分中のSiH基のモル比が0.5〜10となる量、
(C)白金系触媒:有効量
を含有してなり、(A)成分の非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサンが、下記(I)〜(III)で示される単位を含む重量平均分子量が2,000〜60,000のオルガノポリシロキサン(A−1)又は該オルガノポリシロキサン(A−1)に下記一般式(1)で示される1種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを上記オルガノポリシロキサン(A−1)の総アルケニル基に対して上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの総SiH基がモル比で0.4〜0.8倍となる量でヒドロシリル化反応させた重量平均分子量が20,000〜400,000の高分子量化したオルガノポリシロキサン(A−2)であることを特徴とするシリコーン接着剤組成物。
(I)R1SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位):50〜99モル%
(II)R23SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位):0〜49モル%
(III)R43SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位):1〜15モル%
(式中、R1〜R3はそれぞれ1価の有機基であり、かつR1〜R3で示される全有機基中の2〜10モル%が炭素数2〜7のアルケニル基であり、R1〜R3で示される全有機基中の40モル%以上は、同一又は異なる、炭素数5〜10の下記環状構造のいずれかを含む非芳香族飽和1価炭化水素基
【化1】

であり、かつ10〜40モル%は、同一又は異なる、炭素数6〜15の置換又は非置換の1価の非環状飽和炭化水素基である。更に、残部が前記アルケニル基、炭素数5〜10の環状飽和1価炭化水素基、炭素数6〜15の非環状飽和1価炭化水素基以外のR1〜R3で示される有機基、及びR4は、同一又は異なる、炭素数1〜7の置換又は非置換の1価炭化水素基である。)
【化2】

(式中、R5〜R7は同一でも異なっていてもよく、アルケニル基を除く炭素数1〜12の1価炭化水素基を示す。nは0〜200の整数である。)
〔2〕
更に(D)反応制御剤を含有する〔1〕に記載の接着剤組成物。
〔3〕
更に(E)酸化防止剤を含有する〔1〕又は〔2〕に記載の接着剤組成物。
〔4〕
更に(F)有機溶剤を含有する〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の接着剤組成物。
〔5〕
前記(F)有機溶剤は、沸点が120〜240℃の炭化水素溶剤であることを特徴とする〔4〕に記載の接着剤組成物。
〔6〕
シリコンウエハ、固体撮像素子シリコンウエハ、プラスチック基板,セラミック基板及び金属製回路基板のいずれかから選ばれる基板と保護ガラス基板との間に積層される〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の接着剤組成物。
〔7〕
シリコンウエハ、固体撮像素子シリコンウエハ、プラスチック基板,セラミック基板及び金属製回路基板のいずれかから選ばれる基板上に、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の接着剤組成物の硬化物層及び保護ガラス基板を順次積層させた積層物を含む固体撮像デバイス。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシリコーン接着剤組成物を使用することで、露光、ベーク、現像工程が製造に不要であるため製造コストが安価で生産性が高く、接着剤として求められる接着性、熱硬化後の気密封止性、低吸湿性等の特性が良好で、耐熱性、耐光性等の硬化膜の信頼性も高く、更に3次元実装製造で必要とされる裏面研削後の接着基板の反りを抑えることが可能で、CCD,CMOSイメージセンサー製造に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のシリコーン接着剤組成物について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0014】
<シリコーン接着剤組成物>
本発明のシリコーン接着剤組成物は、
(A)非芳香族飽和1価炭化水素基及びアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子内に2個以上のSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:(A)成分中のアルケニル基に対する(B)成分中のSiH基のモル比が0.5〜10となる量、
(C)白金系触媒:有効量
を含むことを特徴とする。
【0015】
[(A)成分]
本発明の(A)成分は、非芳香族飽和1価炭化水素基及びアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンであり、接着剤組成物に含まれるオルガノポリシロキサンは1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。好ましく用いられるものとして、大きく分けて下記(A−1)、(A−2)の二つが挙げられる。以下、順に説明する。
オルガノポリシロキサン(A−1)
オルガノポリシロキサン(A−1)は、重量平均分子量(Mw)〔GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算値〕が2,000〜60,000であり、下記(I)〜(III)で示される単位を含む非芳香族飽和1価炭化水素基及びアルケニル基含有オルガノポリシロキサンである。
(I)R1SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位):50〜99モル%
(II)R23SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位):0〜49モル%
(III)R43SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位):1〜15モル%
【0016】
上記(I)〜(III)で示される単位のR1〜R4は、それぞれ1価の有機基である。ここで、1価の有機基は下記(i)〜(iv)に示す基からなる。
(i)炭素数5〜10の環状構造を含む非芳香族飽和1価炭化水素基であり、下記に示した、1価及び/又は2価のシクロペンチル骨格、シクロヘキシル骨格、ビシクロ[2.2.1]骨格、ビシクロ[3.1.1]骨格
【化3】

のいずれかを含む炭素数5〜10、特に5〜7の環状構造を含む1価の非芳香族飽和炭化水素基、具体的にはシクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、ノルボルニルエチル基、アダマンチル基等が挙げられる。
(ii)炭素数6〜15の置換(特にハロゲン置換)又は非置換の炭素数6〜15の1価の非環状飽和炭化水素基が挙げられ、具体的にはn−ヘキシル基、オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基等が挙げられ、より好ましくはn−ヘキシル基、n−ドデシル基である。
(iii)炭素数2〜7のアルケニル基、具体的にはビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ノルボルネニル基等が挙げられ、より好ましくはビニル基である。
(iv)炭素数1〜7の置換(特にハロゲン置換)又は非置換の1価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられ、メチル基、プロピル基、フェニル基が好ましい。
【0017】
この場合、特に耐薬品性を発現させる上で、環状構造を含む非芳香族飽和1価炭化水素基(非芳香族環状飽和1価炭化水素基(i))の含有量が重要であり、前記R1〜R3のうち非芳香族環状飽和1価炭化水素基の含有量は、好ましくは40モル%以上であり、特に好ましくは50〜80モル%である。40モル%以上であれば、耐熱性、耐光性に優れたものとなる。
【0018】
また、ポリシロキサンの接合性を向上させるには、非環状飽和1価炭化水素基(ii)の含有量も重要となる。前記R1〜R3のうち炭素数6〜15の置換又は非置換の1価の非環状飽和炭化水素基の含有量は好ましくは10〜40モル%である。10モル%以上であれば、接合性の向上が期待でき、40モル%以下であれば、硬化後の膜が柔らかくなりすぎず適度な硬さとなる。
【0019】
前記R1〜R3で示される全有機基中の2〜10モル%が炭素数2〜7のアルケニル基(iii)であることが好ましく、特に好ましくは4〜8モル%である。2モル%以上であれば硬化時に十分な架橋密度が得られることが期待でき、10モル%以下であれば硬化後の膜が硬くなりすぎることなく適度な硬さとなる。
【0020】
なお、R1〜R3の合計量が100モル%に達しない場合、残りの基は上記(iv)の基であり、またR4も上記(iv)の基であるがR4としては(i)〜(iii)の基を含んでも差し支えない。
【0021】
本発明の(A)成分の非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサンとして好適なオルガノポリシロキサン(A−1)は、上述の通り、T単位を50〜99モル%、D単位を0〜49モル%、M単位を1〜15モル%含む。
【0022】
(A−1)成分の非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサンとしては40℃を超えない温度で固体形状を有するものが取り扱い上好ましい。
【0023】
T単位を50〜99モル%、好ましくは55〜90モル%、更に好ましくは60〜85モル%含むことで、(A)成分の非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは40℃以下で固体になり易く、基板間の接合に好適となる。
【0024】
D単位を49モル%以下、好ましくは45モル%以下、更に好ましくは40モル%以下含むことで、(A)成分の非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは40℃以下で固体となり易く、かつ、接着剤組成物に用いた場合に基板同士を十分に接合できる。
【0025】
また、(A−1)成分の非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサン中には、反応性の末端基、即ちシラノール基等が残存しないことが、後述する熱安定性の観点から好ましい。従って末端にM単位を導入する構造が好ましく、M単位の含有量としては1モル%以上含むことが好ましい。より好ましくは1〜15モル%、更に好ましくは3〜10モル%である。
【0026】
M単位を1〜15モル%含むことで、(A−1)成分の非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサンは反応性末端基を十分低減した構造となる。1モル%以上であれば、シラノール基等の反応性末端基を十分低減した構造とすることができる。また15モル%以下であれば、末端基が多くなりすぎることにより相対的に分子量が小さくなるというおそれもなく、好適である。
【0027】
M単位にて封止されていない分子末端基、即ちシラノール基等が存在する場合、これら反応性末端基の含有量は可能な限り少ない方が好ましい。シラノール基の末端残基が分子内に少量であれば、熱がかかった際に縮合反応による水が生成し、アウトガスの要因となりうることを抑制でき、耐熱性が向上するので好ましい。また、シラノール基のOH基の総量が、全樹脂固形分中の5質量%以下、より好ましくは3質量%以下であることが好ましい。M単位の導入により、このような反応性末端基を所望の量まで減じることができる。
【0028】
上記構造のオルガノポリシロキサンは、原料となる加水分解性シランの加水分解、及び縮合反応を制御しながら行うことにより製造できる。
【0029】
原料として用いることができる加水分解性シランとしては、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、イソプロピルトリクロロシラン、n−ブチルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、n−ペンチルトリクロロシラン、イソペンチルトリクロロシラン、n−ヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、n−オクチルトリクロロシラン、n−デシルトリクロロシラン、n−ドデシルトリクロロシラン、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルトリクロロシラン(下記(C1))、ビシクロ[2.2.1]ノニルトリクロロシラン(下記(C2))、ジメチルジクロロシラン、n−プロピルメチルジクロロシラン、イソプロピルメチルジクロロシラン、n−ブチルメチルジクロロシラン、イソブチルメチルジクロロシラン、n−ヘキシルメチルジクロロシラン、n−オクチルメチルジクロロシラン、n−デシルメチルジクロロシラン、n−ドデシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルメチルジクロロシラン(下記(C3))、ビシクロ[2.2.1]ノニルメチルジクロロシラン(下記(C4))及びこれらの加水分解性基がメトキシ基、エトキシ基であるものが挙げられる。
【0030】
特に環状構造を複数有する下記(C1)〜(C4)は、endo体、exo体の立体異性体が存在するが、これらは問わず使用可能である。
【化4】

(Meはメチル基を示す。)
【0031】
(A)成分の非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサンの分子量の分布は非常に重要である。即ちGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)にて、ポリスチレン標準物質によって作製した検量線にそって得られる重量平均分子量の値で、2,000以上である。非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量が2,000以上であれば、硬化後十分な膜強度のものが得られ、60,000以下であれば非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサンの分子量が再現性よく安定的に合成できる。より好ましい非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサンの重量平均分子量の範囲としては3,000〜50,000程度、更に好ましくは5,000〜30,000程度である。
【0032】
このような分析、解析が可能なGPC装置としては、東ソー(株)製のHLC−8120GPC、HLC−8220GPC、HLC−8230GPCが使用できる(以下、同じ)。
【0033】
オルガノポリシロキサン(A−2)
オルガノポリシロキサン(A−2)は、前記オルガノポリシロキサン(A−1)を原料として高分子量化したものである。
つまり前記(A−1)と、下記一般式(1)
【化5】

(式中、R5〜R7は同一でも異なっていてもよく、アルケニル基を除く炭素数1〜12の1価炭化水素基を示す。nは0〜200の整数である。)
で示される1種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであって、前記アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A−1)の総アルケニル基に対して総SiH基が0.4〜0.8倍となる量の前記式(1)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを、白金系触媒の存在下でヒドロシリル化反応させたものであり、重量平均分子量が20,000〜400,000であるオルガノポリシロキサンである。
【0034】
(A−1)成分の総アルケニル基に対する式(1)成分の総SiH量は、0.4〜0.8倍が好ましい。0.4倍以上であれば分子量の増加は十分であり、樹脂強度が向上する。また、0.8倍以下であれば、接着剤組成物の架橋反応による硬化が可能となる。
【0035】
前記R5〜R7のアルケニル基を除く炭素数1〜12の1価炭化水素基としては、具体的にはメチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が例示される。特に好ましくはメチル基、シクロヘキシル基、フェニル基である。
【0036】
上記一般式(1)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの重合度nは好ましくは0〜200の整数であり、好ましくは20〜150、特に好ましくは40〜120の整数である。nが200以下であれば、合成の際、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A−1)のアルケニル基とのヒドロシリル化反応が進みにくくなるおそれもなく、十分な反応が進行し、また硬化したオルガノポリシロキサンとシリコン基板との密着性も良好となる。
また、上記の範囲内であれば異なるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いて付加反応を行うことも可能である。
【0037】
[高分子量化したオルガノポリシロキサンの製造方法]
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A−1)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(1)との反応は、例えばアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A−1)を有機溶剤に溶解させ、ヒドロシリル化触媒である白金系の金属触媒を添加後、50〜150℃に加熱しながら、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(1)を滴下することで、高分子量化したオルガノポリシロキサンを得ることができる。
【0038】
白金系触媒はSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属触媒が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができるが、通常、白金族金属として(A−1)成分の質量に対して1〜800ppm、特に2〜300ppm程度配合することが好ましい。
これらヒドロシリル化付加反応後のオルガノポリシロキサンの分子量は、接着剤組成物の特性、特に加熱時の熱変形、接着界面でのボイド発生等に影響する。
【0039】
付加反応後の高分子量化したオルガノポリシロキサンの重量平均分子量Mwは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いてポリスチレン標準物質によって作製した検量線にそって得られる重量平均分子量の値で、20,000〜400,000であることが好ましい。上記の重量平均分子量であれば、耐熱性に優れ、かつボイドが発生しないオルガノポリシロキサンとなる。より好ましい重量平均分子量の範囲としては25,000〜300,000程度、更に好ましくは30,000〜150,000程度である。
【0040】
[(B)成分]
(B)成分は架橋剤であり、1分子内に少なくとも2個以上、好ましくは3個以上のSiH基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、直鎖状、分岐状又は環状のものを使用できる。なお、SiH基は1分子内に20個以下であることが好ましい。
【0041】
前記(B)成分としては、下記一般式(2)又は(3)のものを例示することができるが、これらのものに限定されない。
【化6】

(式中、R8はそれぞれ独立して炭素数1〜10、特に1〜7のアルキル基、アリール基、アラルキル基等の1価炭化水素基で、アルケニル基等の脂肪族不飽和結合を有さないことが好ましい。cは0又は1であり、x及びyは整数であり、2c+x≧2、かつx+yは式(2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度が1〜5,000mPa・sとなる数を示し、好ましくはx+y≧4、更に好ましくは200≧x+y≧4の整数を示す。sは2以上の整数、tは0以上の整数で、かつs+t≧3、好ましくは8≧s+t≧3の整数を示す。)
【0042】
前記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの回転粘度計による25℃における粘度は、1〜5,000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは1〜2,000mPa・sであり、更に好ましくは5〜500mPa・sである。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは2種以上の混合物でもよい。
【0043】
前記(B)成分の使用量は、(A)成分中のアルケニル基量に対する(B)成分中のSiH基のモル比(SiH基/アルケニル基)が0.5〜10、特に1〜5の範囲となるように配合することが好ましい。このSiH基とアルケニル基とのモル比が0.5以上であれば、架橋密度が低くなることもなく、組成物が硬化しないといった問題も起こらない。10以下であれば、架橋密度が高くなりすぎることもなく、接合後の耐熱性試験の際に残存SiH基に起因した発泡も抑制できるため好ましい。
【0044】
[(C)成分]
(C)成分は白金系触媒(即ち、白金族金属触媒)であり、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物などが挙げられる。
【0045】
前記(C)成分の添加量は有効量であり、通常前記(A)及び(B)成分の合計に対し、白金分(質量換算)として1〜5,000ppmであり、5〜2,000ppmであることが好ましい。1ppm以上であればシリコーン接着剤組成物の硬化性が低下することもなく、架橋密度が低くなることもない。5,000ppm以下であれば、保存安定性が良好となる。
【0046】
本発明のシリコーン接着剤組成物には、上記(A)、(B)、(C)成分に加え、下記(D)、(E)、(F)成分、その他の成分を含有させることができる。
【0047】
[(D)成分]
(D)成分は反応制御剤であり、シリコーン接着剤組成物を調合ないし基材に塗工する際に、加熱硬化前に処理液が増粘やゲル化を起こさないようにするために必要に応じて任意に添加するものである。
【0048】
具体例としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンなどが挙げられ、好ましいのは1−エチニルシクロヘキサノール、及び3−メチル−1−ブチン−3−オールである。
【0049】
前記(D)成分の配合量は、通常前記(A)及び(B)成分の合計100質量部に対して0〜8.0質量部の範囲であればよく、好ましくは0.01〜8.0質量部、特に0.05〜2.0質量部であることが好ましい。8.0質量部以下であれば、シリコーン接着剤組成物の硬化性が低下することもなく、0.01質量部以上であると反応制御の効果が十分発揮される。
【0050】
[(E)成分]
更に本発明の組成物において、熱安定性を向上させるため(E)成分として酸化防止剤を配合してもよい。
(E)成分の酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、有機リン化合物及び有機硫黄化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0051】
ヒンダードフェノール系化合物;
本発明で用いられるヒンダードフェノール系化合物は、特に限定されるものではないが、以下に挙げるヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:IRGANOX 1330)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(商品名:Sumilizer BHT)、2,5−ジ−t−ブチル−ハイドロキノン(商品名:Nocrac NS−7)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール(商品名:Nocrac M−17)、2,5−ジ−t−アミルハイドロキノン(商品名:Nocrac DAH)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:Nocrac NS−6)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル(商品名:IRGANOX 1222)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:Nocrac 300)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:Nocrac NS−5)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(アデカスタブ AO−40)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(商品名:Sumilizer GM)、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート(商品名:Sumilizer GS)、2,2’−メチレンビス[4−メチル−6−(α−メチル−シクロヘキシル)フェノール]、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)(商品名:シーノックス226M)、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール(商品名:IRGANOX 1520L)、2,2’−エチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:IRGANOX 1076)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(商品名:アデカスタブ AO−30)、テトラキス[メチレン−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシンナメート)]メタン(商品名:アデカスタブ AO−60)、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 245)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(商品名:IRGANOX 565)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(商品名:IRGANOX 1098)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 259)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:IRGANOX 1035)、3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]1,1−ジメチルエチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(商品名:Sumilizer GA−80)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート(商品名:IRGANOX 3114)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム/ポリエチレンワックス混合物(50:50)(商品名:IRGANOX 1425WL)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:IRGANOX 1135)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)(商品名:Sumilizer WX−R)、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン(商品名:Sumilizer GP)等。
【0052】
ヒンダードアミン系化合物;
本発明で用いられるヒンダードアミン系化合物は、特に限定されるものではないが、以下に挙げるヒンダードアミン系化合物が好ましい。
p,p’−ジオクチルジフェニルアミン(商品名:IRGANOX 5057)、フェニル−α−ナフチルアミン(Nocrac PA)、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)(商品名:Nocrac 224,224−S)、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(商品名:Nocrac AW)、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(商品名:Nocrac DP)、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン(商品名:Nocrac White)、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(商品名:Nocrac 810NA)、N,N’−ジアリル−p−フェニレンジアミン(商品名:Nonflex TP)、4,4’(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名:Nocrac CD)、p,p−トルエンスルフォニルアミノジフェニルアミン(商品名:Nocrac TD)、N−フェニル−N’−(3−メタクロリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン(商品名:Nocrac G1)、N−(1−メチルヘプチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(商品名:Ozonon 35)、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン(商品名:Sumilizer BPA)、N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(商品名: Antigene 6C)、アルキル化ジフェニルアミン(商品名:Sumilizer 9A)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物(商品名:Tinuvin 622LD)、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]](商品名:CHIMASSORB 944)、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物(商品名:CHIMASSORB 119FL)、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:TINUVIN 123)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:TINUVIN 770)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(商品名:TINUVIN 144)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(商品名:TINUVIN 765)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:LA−57)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート(商品名:LA−52)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び1−トリデカノールとの混合エステル化物(商品名:LA−62)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール及び1−トリデカノールとの混合エステル化物(商品名:LA−67)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノール及び3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物(商品名:LA−63P)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール及び3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化物(商品名:LA−68LD)、(2,2,6,6−テトラメチレン−4−ピペリジル)−2−プロピレンカルボキシレート(商品名:アデカスタブ LA−82)、(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−プロピレンカルボキシレート(商品名:アデカスタブ LA−87)等。
【0053】
有機リン化合物;
本発明で用いられる有機リン化合物は、特に限定されるものではないが、以下に挙げる有機リン化合物が好ましい。
ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド(商品名:SANKO−HCA)、トリエチルホスファイト(商品名:JP302)、トリ−n−ブチルホスファイト(商品名:304)、トリフェニルホスファイト(商品名:アデカスタブ TPP)、ジフェニルモノオクチルホスファイト(商品名:アデカスタブ C)、トリ(p−クレジル)ホスファイト(商品名:Chelex−PC)、ジフェニルモノデシルホスファイト(商品名:アデカスタブ 135A)、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト(商品名:JPM313)、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト(商品名:JP308)、フェニルジデシルホスファイト(アデカスタブ 517)、トリデシルホスファイト(商品名:アデカスタブ 3010)、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト(商品名:JPP100)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(商品名:アデカスタブ PEP−24G)、トリス(トリデシル)ホスファイト(商品名:JP333E)、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(商品名:アデカスタブ PEP−4C)、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(商品名:アデカスタブ PEP−36)、ビス[2,4−ジ(1−フェニルイソプロピル)フェニル]ペンタエリスリトールジホスファイト(商品名:アデカスタブ PEP−45)、トリラウリルトリチオホスファイト(商品名:JPS312)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(IRGAFOS 168)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(商品名:アデカスタブ 1178)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(商品名:アデカスタブ PEP−8)、トリス(モノ,ジノニルフェニル)ホスファイト(商品名:アデカスタブ 329K)、トリオレイルホスファイト(商品名:Chelex−OL)、トリステアリルホスファイト(商品名:JP318E)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト(商品名:JPH1200)、テトラ(C12−C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト(商品名:アデカスタブ 1500)、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)ジホスファイト(商品名:アデカスタブ 260)、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン−トリホスファイト(商品名:アデカスタブ 522A)、水添ビスフェノールAホスファイトポリマー(HBP)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルオキシ)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスフィン(商品名:P−EPQ)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニルオキシ)4,4’−ビフェニレン−ジ−ホスフィン(商品名:GSY−101P)、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン(商品名:IRGAFOS 12)、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(商品名:アデカスタブ HP−10)等。
【0054】
有機硫黄化合物;
本発明で用いられる有機硫黄化合物は、特に限定されるものではないが、以下に挙げる有機硫黄化合物が好ましい。
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(商品名:Sumilizer TPL−R)、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート(商品名:Sumilizer TPM)、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート(商品名:Sumilizer TPS)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(商品名:Sumilizer TP−D)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート(商品名:Sumilizer TL)、2−メルカプトベンズイミダゾール(商品名:Sumilizer MB)、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオネート(商品名:アデカスタブ AO−503A)、1,3,5−トリス−β−ステアリルチオプロピオニルオキシエチルイソシアヌレート、3,3’−チオビスプロピオン酸ジドデシルエステル(商品名:IRGANOX PS 800FL)、3,3’−チオビスプロピオン酸ジオクデシルエステル(商品名:IRGANOX PS 802FL)等。
【0055】
上記の酸化防止剤の中でも(A)成分の非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサン、(B)成分及び後述する有機溶剤との相溶性を考慮すると、特に好ましくはアデカスタブ AO−60、IRGANOX 1076、IRGANOX 1135、IRGANOX 1520L(以上、商品名)等が挙げられる。
【0056】
(E)成分の添加量としては、(A)成分100質量部に対して0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜3質量部である。これより少ないと十分な効果が得られず、これ以上入れると相溶性が得られない可能性がある。
なお、(E)成分は1種類に限定されるものではなく、複数種類を併用してもよい。
【0057】
また、本発明では、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分に加え、(F)有機溶剤を含有し得る。
【0058】
本発明の接着剤組成物に含まれる(A)オルガノポリシロキサンとしては、前述の非芳香族飽和1価炭化水素基含有オルガノポリシロキサン(A−1)及び高分子量化したオルガノポリシロキサン(A−2)を用いることができ、この場合(F)成分は、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分を溶解し、スピンコート等、公知の塗膜形成方法によって膜厚1〜200μmの薄膜を形成できるものであれば好ましい。この際、より好ましい膜厚は5〜180μm、更に好ましくは30〜150μmであり、このような範囲の膜厚を形成できる(F)有機溶剤が好ましい。
【0059】
このように、(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分を溶解する(F)有機溶剤としては、ケトン、エステル、アルコール等以外のものが使用できる。またエーテル系溶剤でも本発明の接着剤組成物を溶解できるが、作業性や安全性、例えば溶剤の臭気等を考慮すると非芳香族炭化水素が好ましい。
【0060】
このような(F)有機溶剤としては、炭素数4〜15の非芳香族炭化水素化合物が挙げられ、具体例としてペンタン、へキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、イソオクタン、イソノナン、デカン、ウンデカン、イソドデカン、リモネン、ピネン等が挙げられる。
【0061】
これらの中でスピンコート可能、かつ安全性も高い接着剤組成物を与える(F)有機溶剤としては、沸点が120〜240℃の炭化水素溶剤が好ましい。即ち、この観点からイソノナン、デカン、イソデカン、ドデカン、イソドデカンが好ましい。沸点が120℃以上であれば、揮発速度が遅くなりスピンコート時のコーティング性も良好となるため好ましい。また、沸点が240℃以下であれば、炭化水素溶剤を塗工した後の加熱乾燥で揮発し易く、膜内に留まりにくい。そのため、接着剤組成物が基板接合後の加熱プロセスで高温に晒される際にも、接合面での気泡の形成を抑制できるので好ましい。
【0062】
(F)成分の添加量としては、(A)及び(B)成分100質量部に対して10〜1,000質量部、好ましくは20〜200質量部である。これより少ないと接着剤組成物の粘度が高くなりすぎてウエハに塗布できず、これ以上入れると塗布後に十分な膜厚が得られない。
なお、(F)成分は1種類に限定されるものではなく、複数種類を併用してもよい。
【0063】
[その他の成分]
上記成分の他、更に本発明の接着剤組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、通常の接着剤組成物に使用される成分を添加することができる。
【0064】
例えば、塗布性を向上させるため、本発明の接着剤組成物に、公知の界面活性剤を添加してもよい。特に限定されるものではないが、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレインエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのノニオン系界面活性剤、エフトップEF301,EF303,EF352(トーケムプロダクツ)、メガファックF171,F172,F173(大日本インキ化学工業)、フロラードFC430,FC431(住友スリーエム)、アサヒガードAG710,サーフロンS−381,S−382,SC101,SC102,SC103,SC104,SC105,SC106、サーフィノールE1004,KH−10,KH−20,KH−30,KH−40(旭硝子)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341,X−70−092,X−70−093(信越化学工業)、アクリル酸系又はメタクリル酸系ポリフローNo.75,No.95(共栄社油脂化学工業)が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0065】
また、本発明の接着剤組成物はシリコンウエハ等の基板やガラス基板等の基材と基本的に反応しないが、接着剤組成物の接着性を更に高めるため、公知の接着助剤、例えばシランカップリング剤を添加してもよい。
【0066】
このようなシリコーン接着剤組成物を使用することで、露光、ベーク、現像工程が製造に不要であるため製造コストが安価で生産性が高く、接着剤として求められる接着性、熱硬化後の気密封止性、低吸湿性等の特性が良好で、耐熱性、耐光性等の硬化膜の信頼性も高く、更に3次元実装製造で必要とされる裏面研削後の接着基板の反りを抑えることが可能である。
【0067】
次に、上記接着剤組成物を用いた本発明のCCD,CMOSイメージセンサー製造時のシリコンウエハとガラス基板の接合方法について説明する。
まず、上記接着剤組成物を基板上に塗布する。上記基板としては、例えば固体撮像素子シリコンウエハ等が挙げられる。
塗布法としては、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができる。例えば、ディップ法、スピンコート法、ロールコート法等の手法により塗布することができる。
ここで、保護ガラス基板との接合時のアウトガス軽減のために、必要に応じて予備加熱(プリベーク)により溶剤等を予め揮発させておいてもよい。予備加熱は、例えば40〜100℃で行うことができる。
【0068】
このようにして得られた接着剤組成物付のシリコン基板(固体撮像素子シリコンウエハ)を接合装置を用いて、保護ガラス基板と仮接合を行うことができる。仮接合の条件としては、接合温度は好ましくは50〜200℃、より好ましくは70〜150℃、接合前保持時間は好ましくは0〜10分、より好ましくは1〜5分、接合時減圧は好ましくは100mbar以下、より好ましくは10mbar以下の条件である。更に、接合圧力は0.1〜50kN、より好ましくは0.5〜20kNで仮接合を行うことができる。更に必要に応じて仮接合基板を加熱し、組成物を硬化させてもよい。熱硬化温度としては、好ましくは100〜220℃、より好ましくは120〜200℃、硬化時間は好ましくは1〜60分、より好ましくは3〜30分で行うことができる。
【0069】
従って、シリコンウエハ、固体撮像素子シリコンウエハ、プラスチック基板,セラミック基板及び金属製回路基板のいずれかから選ばれる基板上に、本発明に係る接着剤組成物層を形成し、その上に保護ガラス基板を配置した積層物を含み、CCDやCMOSに用いられる固体撮像デバイスを得ることができる。なお、このデバイスの製造に当っては、上記シリコンウエハ等の基板上に接着剤組成物層を形成し、その上に保護ガラス基板を積層するようにしてもよく、あるいは保護ガラス基板上に接着剤組成物層を形成し、その上にシリコンウエハ等の基板を積層するようにしてもよい。
【実施例】
【0070】
以下、合成例及び比較合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。なお、下記例中、Meはメチル基を示し、粘度は回転粘度計による25℃において測定した値であり、重量平均分子量はGPCによるポリスチレン換算値である。
【0071】
[オルガノポリシロキサンの合成]
(合成例1)
撹拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに、水234g(13モル)、トルエン35gを仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにシクロヘキシルトリクロロシラン108.8g(0.5モル)、n−ヘキシルトリクロロシラン65.9g(0.3モル)、ジメチルジクロロシラン6.5g(0.05モル)、メチルビニルジクロロシラン7.1g(0.05モル)、トリメチルクロロシラン10.9g(0.1モル)を仕込み、フラスコ内に撹拌しながら1時間で滴下し、滴下終了後、更に80℃で1時間撹拌熟成を行った。室温まで冷却しながら静置して、分離してきた水相を除去し、引き続き10質量%硫酸ナトリウム水溶液を混合して10分間撹拌後、30分間静置し、分離してきた水相を除去する水洗浄操作をトルエン相が中性になるまで繰り返して反応を停止した。エステルアダプターを取り付け、オルガノポリシロキサンを含むトルエン相を加熱還流してトルエン相から水を除去し、内温が110℃に達してから更に1時間続けた後、室温まで冷却した。得られたオルガノポリシロキサン溶液を濾過して不溶物を除去し、引き続き減圧蒸留によりトルエンを除去して、固体のオルガノポリシロキサン(A−I)115.2gを得た。
【0072】
得られたオルガノポリシロキサン(A−I)は、T単位80モル%とD単位10モル%とM単位10モル%を含み、末端はオルガノポリシロキサン(A−I)100gあたりシラノール基を0.09モル、ビニル基を0.043モル含有する。外観は無色透明固体で重量平均分子量は7,500であった。全有機基中のシクロヘキシル基含有量は38モル%、n−ヘキシル基含有量は23モル%、ビニル基含有量は3.8モル%であった。また、R1〜R3で示される全有機基中の50モル%がシクロヘキシル基、30モル%がn−ヘキシル基、15モル%がメチル基、5モル%がビニル基であった。
【0073】
(合成例2−1)
合成例1と同様な手法で、2Lフラスコに水468g(26モル)、トルエン70gを仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにノルボルニルトリクロロシラン275.6g(1.2モル)、n−ヘキシルトリクロロシラン65.8g(0.3モル)、ジメチルジクロロシラン25.8g(0.2モル)、メチルビニルジクロロシラン14.2g(0.1モル)、トリメチルクロロシラン21.8g(0.2モル)を仕込んだ以外は合成例1と同様に調製し、固体のオルガノポリシロキサン228.8gを得た。
【0074】
得られたオルガノポリシロキサンは、T単位75モル%とD単位15モル%とM単位10モル%を含み、100gあたりシラノール基を0.07モル、ビニル基を0.039モル含有する。外観は無色透明固体で重量平均分子量は9,300であった。全有機基中のノルボルニル基含有量は44モル%、n−ヘキシル基含有量は11モル%、ビニル基含有量は3.7モル%であった。また、R1〜R3で示される全有機基中の57モル%がノルボルニル基であり、14モル%がn−ヘキシル基、24モル%がメチル基、5モル%がビニル基であった。
【0075】
(合成例2−2)
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとして、合成例2−1で得た固形のオルガノポリシロキサン100gをトルエン100gに溶解し、固形分濃度50質量%の溶液を調製した。この溶液に、白金系触媒を樹脂に対して白金原子で20ppm添加し、60℃に加温した状態で、ヒドロシリル基含有化合物として、下記式(4)で示される化合物(SiH当量2,287g/mol)44.6g(この量は、H/Vi比(総アルケニル基に対するSiH基の比率)で0.5に相当する)を滴下したところ、反応による発熱を観測した。100℃で2時間反応を行い、反応を完結させた。その後、減圧留去にて濃縮し、トルエンを留去して反応生成物を固形化し、オルガノポリシロキサン(A−II)を得た。また、この樹脂をGPCにて重量平均分子量Mwを測定したところ41,000であり、100gあたりビニル基を0.019モル含有していた。
【0076】
【化7】
【0077】
(合成例3−1)
合成例1と同様に、1Lフラスコに、水234g(13モル)、トルエン35gを仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにノルボルニルトリクロロシラン160.7g(0.7モル)、n−ドデシルトリクロロシラン45.6g(0.15モル)、メチルビニルジクロロシラン7.1g(0.05モル)、トリメチルクロロシラン10.9g(0.1モル)を仕込んだ以外は合成例1と同様に調製し、固体のオルガノポリシロキサン143.8gを得た。
【0078】
得られたオルガノポリシロキサンは、T単位85モル%とD単位5モル%とM単位10モル%を含み、100gあたりシラノール基を0.1モル、ビニル基を0.034モル含有する。外観は無色透明固体で重量平均分子量は6,100であった。全有機基中のノルボルニル基含有量は56モル%、n−ドデシル基含有量は12モル%、ビニル基含有量は4.0モル%であった。また、R1〜R3で示される全有機基中の74モル%がノルボルニル基であり、16モル%がn−ドデシル基、5モル%がメチル基、5モル%がビニル基であった。
【0079】
(合成例3−2)
アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとして、合成例3−1で得た固形のオルガノポリシロキサン100gを用いて、ヒドロシリル基含有化合物として、下記式(5)で示される化合物(SiH当量1,547g/mol)31.6g(この量は、H/Vi比で0.6に相当する)を用いる以外は、合成例2−2と同様な反応を行い、重量平均分子量46,400のオルガノポリシロキサン(A−III)を得た。この樹脂は100gあたりビニル基を0.02モル含有していた。
【0080】
【化8】
【0081】
(比較合成例1)
合成例1と同様に、1Lフラスコに、水234g(13モル)、トルエン35gを仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにフェニルトリクロロシラン137.5g(0.65モル)、ジフェニルジクロロシラン50.6g(0.2モル)、メチルビニルジクロロシラン7.1g(0.05モル)、トリメチルクロロシラン10.8g(0.1モル)を仕込んだ以外は合成例1と同様に調製して、固形のオルガノポリシロキサン(A−IV)137gを得た。
【0082】
得られたオルガノポリシロキサン(A−IV)は、T単位65モル%とD単位25モル%とM単位10モル%とを含み、末端はオルガノポリシロキサン100gあたりシラノール基を0.01モル、ビニル基を0.034モル含有する。外観は無色透明固体で重量平均分子量は11,700であった。また、R1〜R3で示される全有機基中の92モル%がフェニル基(芳香族不飽和炭化水素基)、4モル%がメチル基、4モル%がビニル基であった。
【0083】
(比較合成例2)
合成例1と同様に、1Lフラスコに、水234g(13モル)、トルエン35gを仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにノルボルニルトリクロロシラン91.8g(0.4モル)、n−ヘキシルトリクロロシラン24.7g(0.15モル)、ジメチルジクロロシラン45.2g(0.35モル)、メチルビニルジクロロシラン7.1g(0.05モル)、トリメチルクロロシラン5.4g(0.05モル)を仕込んだ以外は合成例1と同様に調製し、固体のオルガノポリシロキサン(A−V)143.8gを得た。
【0084】
得られたオルガノポリシロキサンは、T単位55モル%とD単位40モル%とM単位5モル%を含み、100gあたりシラノール基を0.12モル、ビニル基を0.044モル含有する。外観は無色透明固体で重量平均分子量は10,500であった。全有機基中のノルボルニル基含有量は27モル%、n−ヘキシル基含有量は10モル%、ビニル基は3.3モル%であった。また、R1〜R3で示される全有機基中の30モル%がノルボルニル基であり、11モル%がn−ヘキシル基、55モル%がメチル基、4モル%がビニル基であった。
【0085】
[実施例1〜3、比較例1,2]
(A)成分として上記にて合成したオルガノポリシロキサンA−I、A−II、A−IIIと比較オルガノポリシロキサンA−IV、A−Vをベースに(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分をそれぞれ表1に記載した組成で配合し、その後、撹拌、混合、溶解した。特に(B)成分としては、以下に示す(B−I)、(B−II)を使用した。
【0086】
【化9】
【0087】
また、(C)成分として白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業(株)製)、(D)成分としてエチニルシクロヘキサノール、(E)成分としてフェノール系酸化防止剤アデカスタブ AO−60、(F)成分としてイソノナンを使用した。これらの組成物をテフロン(登録商標)製0.2μmフィルターで精密濾過を行って、実施例1〜3までの本発明の接着剤組成物及び比較例1,2までの接着剤組成物を得た。
【0088】
表1の実施例1〜3及び比較例1,2に示した組成物を用い、8インチシリコンウエハに、スピンコータを使用して、表1記載の膜厚で各実施例及び比較例の接着剤組成物をコートした。そして、溶剤を除去するため、ホットプレートにより80℃で5分間プリベークを行った。得られた接着剤組成物付8インチシリコンウエハに、接合装置を用いて、接合温度100℃、接合前保持時間は1分間、接合時減圧は4×10-3mbar、接合圧力は2kNで仮接合を行った。更に本仮接合基板を150℃,5分間熱硬化させ、最終的な接合基板が得られた。
【0089】
次に各評価は以下の方法に従い実施した。
[接着性試験]
8インチのウエハ接合は、EVG社のウエハ接合装置520ISを用いて行った。接合後、室温まで冷却した後の界面の接着状況を目視で確認し、界面での気泡等の異常が発生しなかった場合を○、異常が発生した場合を×で示す。
[裏面研削耐性試験]
グラインダー(DAG810 DISCO製)を用いてシリコン基板の裏面研削を行った。最終基板厚50μmまでグラインドした後、光学顕微鏡にてクラック、剥離等の異常の有無を調べた。異常が発生しなかった場合を○、異常が発生した場合を×で示す。
[耐熱性]
シリコンウエハを裏面研削した後の接合体を空気中230℃又は260℃,3分間ホットプレート上で加温した後、外観異常の有無を調べた。外観異常が発生しなかった場合を良好と評価して(○)で示し、外観異常(剥離)が発生した場合を不良と評価して(×)で示す。
[耐光性]
耐光性試験として以下に示す短期耐光性、長期耐光性試験を行った。
短期耐光性については接着剤組成物を膜厚500μmのガラス基板にスピンコート後、150℃,10分間の熱硬化を行い、初期の透過率(波長400nm)を測定し、次に空気中230℃又は260℃,3分間ホットプレート上で加温し、加温後の透過率(波長400nm)を再度測定し、減衰率(%)=[加温後の透過率(波長400nm)/初期の透過率(波長400nm)]×100を求めた。減衰率90%以上を(○)、90%より低い場合を(×)として評価した。
長期耐光性については接着剤組成物を膜厚500μmのガラス基板にスピンコート後、150℃,10分間の熱硬化を行い、初期の透過率(波長400nm)を測定し、模擬太陽光(波長350nm以下をカット)500万ルクスを照射後の透過率(波長400nm)を再度測定し、減衰率(%)=[照射後の透過率(波長400nm)/初期の透過率(波長400nm)]×100を求めた。減衰率90%以上を(○)、90%より低い場合を(×)として評価した。
[反り性(接合ウエハの反り量)]
接着剤組成物を使用した8インチシリコンウエハ基板と保護ガラス基板の接合熱硬化後の基板を、バック研磨装置を用いてシリコン側を初期725〜100μmまで研磨を実施し、バック研磨後の接合8インチウエハの反り量を測定した。
上記評価結果を表1に記載した。
【0090】
【表1】
【0091】
上記表1の比較例1のようにノルボルニル基を含有しないフェニルシリコーンレジンを使用した場合、耐光性、反り性が悪化し、比較例2のノルボルニル基の含有量が少ない場合は反り性は良好だが耐熱性が低下している。一方、実施例1〜3ではいずれも耐熱性、耐光性、反り性に優れる。つまり本発明の接着剤組成物であれば上記の要求特性を満たせることが示された。
【0092】
以上より、本発明の接着剤組成物であれば、露光、ベーク、現像工程が製造に不要であるため、製造コストが安価で生産性が高く、接着剤として求められる接着性、熱硬化後の気密封止性、低吸湿性等の特性が良好で、耐熱性、耐光性等の硬化膜の信頼性が高く、更に3次元実装製造で必要とされる裏面研削後の接着基板の反りを抑えることが可能となる。
【0093】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。