特許第6119993号(P6119993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6119993
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】連続焼結炉のメッシュベルト
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/24 20060101AFI20170417BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20170417BHJP
   B65G 17/38 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   F27B9/24 E
   B22F3/10 K
   B65G17/38 F
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-177618(P2013-177618)
(22)【出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2015-45475(P2015-45475A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】日立化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】小比田 智之
【審査官】 本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−059846(JP,A)
【文献】 米国特許第05954188(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0240167(US,A1)
【文献】 特開2015−020855(JP,A)
【文献】 実開平01−172510(JP,U)
【文献】 実開平06−078323(JP,U)
【文献】 中国特許出願公開第102991937(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/24
B65G 17/38−17/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に直交する幅方向に延在した状態で該搬送方向に並列され、該搬送方向の前端部および後端部に、前後にラップする屈曲部が形成された複数の螺旋部材と、
前後にラップする前記屈曲部の内側の前記幅方向に延びる空間に挿通されて該屈曲部が係合することで、前後の螺旋部材を連結し、かつ全体を無端状に連結する連結部材と、
を具備し、ワークが1000〜1300℃に加熱される炉内で摩擦駆動される連続焼結炉のメッシュベルトにおいて、
前記搬送方向の前後に隣接する前記連結部材の、一端側の一対の端部どうし、および他端側の一対の端部どうしが、該連結部材の前後の間隔を保持する状態に結合手段によって結合されていること
を特徴とする連続焼結炉のメッシュベルト。
【請求項2】
前記結合手段で結合される前記連結部材における前記一対の端部は、少なくとも、該端部に係合する前記螺旋部材の屈曲部の外側に前側もしくは後側の屈曲部が係合していない端部であることを特徴とする請求項1に記載の連続焼結炉のメッシュベルト。
【請求項3】
前記結合手段は、前記連結部材の前記端部どうしを搬送方向と平行に、かつ互いに対向するように屈曲させて対向する先端どうしを直接固着するか、または搬送方向に延びる結合部材を介して固着する手段であることを特徴とする請求項1または2に記載の連続焼結炉のメッシュベルト。
【請求項4】
前記結合手段は、結合される前記連結部材の前記端部間に架け渡されるリンクであることを特徴とする請求項1または2に記載の連続焼結炉のメッシュベルト。
【請求項5】
搬送方向の前側と後側に並ぶ一対の前記リンクにおいて、搬送方向前側のリンクの後端部が、搬送方向後側のリンクの前端部の外側面を覆う状態に組まれていることを特徴とする請求項4に記載の連続焼結炉のメッシュベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続焼結炉においてワークの搬送手段を構成するメッシュベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
粉末冶金法は、金属粉末等からなる原料粉末を所定形状および寸法に固めた成形体を、溶融しない温度で加熱することにより、粉末粒子を強固に結合して金属製品を製造する技術であり、ニアネットシェイプに造形することができ、かつ、大量生産に向くこと等の特長から、自動車用機械部品や各種産業用の機械部品に適用が進んでいる。上記の成形体の加熱には、トンネル状の炉体の内部において、原料粉末を所定形状に圧縮成形した圧粉体であるワークを入口から出口にわたって所定速度で搬送しながら、いくつかの熱処理工程を経てワークを焼結体とする連続焼結炉が、一般的に広く用いられており、鉄系材料からなる成形体を焼結する場合には、成形体は1000〜1300℃の温度に加熱され焼結される。このような連続焼結炉においては、炉内でワークを搬送する搬送手段のうちの一つとして、耐熱性を有する金属製の無端状メッシュベルトが使用されている(特許文献1等参照)。
【0003】
一般にメッシュベルトは、駆動ローラを含む複数の搬送ローラに巻架され、炉体の内部においては入口から出口まで水平に架設され、出口以降は炉体の下方に引き回されて入口に戻るように配設され、回転する駆動ローラの表面との摩擦により駆動される。図7は従来のメッシュベルトの構造の一例を示しており、このメッシュベルトは、炉内での移動方向であるワーク搬送方向(矢印F方向)に並列された多数の平坦状の螺旋部材70と、螺旋部材70を連結する力骨と呼ばれる多数の連結部材80との組み合わせで帯状に形成される。
【0004】
螺旋部材70は全体の長さ方向が搬送方向に直交する幅方向(矢印W方向)に延在し、2本の螺旋701,702が位相を互いに半ピッチずらして配置されている。螺旋部材70の前端部および後端部には屈曲部71,72が形成され、搬送方向の前後に隣接する螺旋部材70の前後の屈曲部71,72は、幅方向に交互に配置されて前後にラップしている。前後にラップして幅方向に並ぶ屈曲部71,72の内側には、幅方向に延びる貫通孔状の空間が形成され、この空間に連結部材80が挿通されている。連結部材80はジグザグ状のロッドで構成され、螺旋部材70の前後の屈曲部71,72が係合する溝部801が連続的に形成されており、これら溝部801に螺旋部材70の前後の屈曲部71,72が係合することで、螺旋部材70の位置ずれが抑えられるようになっている。このように連結部材80によって前後の螺旋部材70は連結され、かつ全体として無端状に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−014227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記メッシュベルトは、摩擦駆動されることにより、炉内においては搬送方向に引っ張られて移動させられ、その際には、連結部材80は前後の螺旋部材70によって前後方向に変形する応力を受けるとともに、螺旋部材70は前後の連結部材80によって前後に引っ張られる応力を受ける。このため連結部材80は強度を十分にするため螺旋部材70よりも太い鋼材が用いられる。また、引っ張り応力を受ける螺旋部材70は、特に両端部73に偏って負荷がかかりやすく、このため螺旋部材7の両端部73には、破断したり連結部材80から外れたりする不具合が生じやすかった。
【0007】
ところで、図7に示すように、メッシュベルトの幅方向両端縁には、組み立ての収まりをよくするため、螺旋部材70の両端部により、凹部703と凸部704が前後に沿って交互に形成される。ここで、前後に隣接する連結部材80の端部のうち、凸部704を挟む前後一対の端部80a・80bにおいては、図8(b)に示すように、係合する螺旋部材70の前後の屈曲部71,72の外側には屈曲部71,72が係合しておらず、いわば片持ち状態で屈曲部71,72が係合している。これら片持ちの端部80a・80bに係合する螺旋部材70の端部73の屈曲部71,72は、溶接89によって端部80a・80bに固着されて係合状態が保持されるものの、螺旋部材70の端部73に生じる引っ張り応力が連結部材80にバランスよく分散せず、凸部704を形成するこの端部73には、引っ張り応力が特に偏って強く生じる。
【0008】
片持ちの端部80a・80b間の螺旋部材70の端部73は、図8(a)に示すように搬送方向Fに対して傾斜していることから剪断力が発生しやすく、このため螺旋部材70は、図8に示すように溶接部79が引っ張られて破断するか、あるいは他の部分が破断する場合があった。また、螺旋部材70が引っ張られることにより連結部材80の端部80a・80bが変形し、図9(b)の矢印Gで示すように螺旋部材70が連結部材80から外れてしまう場合もあった。特に炉内においては高温環境であるため強度が低下しており、螺旋部材70の破断や連結部材80の変形は起こりやすい。螺旋部材70が破断したり外れたりすると、メッシュベルト全体にかかる負荷のバランスが崩れて円滑な移動が妨げられるため、このような不具合の発生を抑えることが求められた。
【0009】
なお、前後に隣接する連結部材80の端部のうち、凹部703を挟む前後一対の端部80a・80aおよび80b・80bにおいては、係合する螺旋部材70の端部73の屈曲部71,72の両側に屈曲部71,72が係合して両持ち状態であるため、応力は比較的バランスよく分散し、凹部703を形成する螺旋部材70の端部73に強い負荷が偏って生じるといったことは起こりにくい。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、摩擦駆動による搬送時に生じる引っ張り応力によって螺旋部材の端部が破断したり外れたりする不具合の発生を抑えることができる連続焼結炉のメッシュベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の連続焼結炉のメッシュベルトは、搬送方向に直交する幅方向に延在した状態で該搬送方向に並列され、該搬送方向の前端部および後端部に、前後にラップする屈曲部が形成された複数の螺旋部材と、前後にラップする前記屈曲部の内側の前記幅方向に延びる空間に挿通されて該屈曲部が係合することで、前後の螺旋部材を連結し、かつ全体を無端状に連結する連結部材と、を具備し、ワークが1000〜1300℃に加熱される炉内で摩擦駆動される連続焼結炉のメッシュベルトにおいて、前記搬送方向の前後に隣接する前記連結部材の、一端側の一対の端部どうし、および他端側の一対の端部どうしが、該連結部材の前後の間隔を保持する状態に結合手段によって結合されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、連結部材の一端側の一対の端部どうし、および他端側の一対の端部どうしが、該連結部材の前後の間隔を保持する状態に結合手段によって結合されているため、端部どうしが結合された前後の連結部材の間隔は広がらない。このため、摩擦駆動によって螺旋部材が受ける引っ張り応力が緩和されるとともに、結合された連結部材の一対の端部に引っ張り応力が分散する。このため、螺旋部材の端部に強い負荷が偏って生じることが抑えられ、その結果、螺旋部材の端部が破断したり外れたりするといった不具合の発生が抑えられる。
【0013】
本発明は、前記結合手段で結合される前記連結部材における前記一対の端部は、少なくとも、該端部に係合する前記螺旋部材の屈曲部の外側に前側もしくは後側の屈曲部が係合していない端部であることを特徴とする。螺旋部材の屈曲部の外側に前側もしくは後側の屈曲部が係合していない該端部は上記片持ち端部のことであり、従来、特にこの片持ち端部に係合する螺旋部材の端部には強い負荷が偏って生じるものであった。本発明では該端部どうしが結合されることで片持ち状態が解消され、このため、螺旋部材の端部の破断や外れといった不具合が効果的に抑えられる。
【0014】
本発明の前記結合手段は、前記連結部材の前記端部どうしを搬送方向と平行に、かつ互いに対向するように屈曲させて対向する先端どうしを直接固着するか、または搬送方向に延びる結合部材を介して固着する手段であることを特徴とする。この形態では、連結部材の端部どうしを搬送方向と平行に屈曲させており、搬送方向に対し傾斜させないため、搬送方向に沿った引っ張り応力によって該端部に剪断は生じない。また、結合部材も搬送方向と平行であり、搬送方向に対し傾斜させないため、該結合部材に剪断は生じない。したがって直接固着した端部、あるいは結合部材は破断しにくく、螺旋部材の端部の破断等の防止に十分寄与する。
【0015】
また、本発明の前記結合手段は、結合される前記連結部材の前記端部間に架け渡されるリンクであることを特徴とする。
【0016】
結合手段がリンクである場合、搬送方向の前側と後側に並ぶ一対のリンクにおいて、搬送方向前側のリンクの後端部が、搬送方向後側のリンクの前端部の外側面を覆う状態に組まれている形態は、次の点で好ましい。すなわち、メッシュベルトの移動に伴って例えば炉内設置部材にリンクが当たった場合、リンクが前端部から剥がれてしまい、さらには脱落することで、メッシュベルトの移動に支障が出ることが防がれる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、摩擦駆動による搬送時に生じる引っ張り応力によって螺旋部材の端部が破断したり外れたりする不具合の発生を抑えることができる連続焼結炉のメッシュベルトが提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るメッシュベルトを装備した連続焼結炉を模式的に示す側断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るメッシュベルトの一部を示す(a)側面図、 (b)平面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るメッシュベルトの一部を示す(a)側面図、 (b)平面図である。
図4】本発明の第3実施形態に係るメッシュベルトの一部を示す(a)側面図、 (b)平面図である。
図5】本発明の第4実施形態に係るメッシュベルトの一部を示す(a)側面図、 (b)平面図である。
図6】本発明の第5実施形態に係るメッシュベルトの一部を示す(a)側面図、 (b)平面図である。
図7】従来のメッシュベルトの構造の一例を示す(a)側面図、(b)平面図である。
図8】従来のメッシュベルトの螺旋部材に破断が生じることを説明するための図であって、メッシュベルトの一部を示す(a)側面図、(b)平面図である。
図9】従来のメッシュベルトの螺旋部材が連結部材から外れることを説明するための図であって、メッシュベルトの一部を示す(a)側面図、(b)平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
(1)連続焼結炉の基本構成
図1は、一実施形態の連続焼結炉を示している。この連続焼結炉1は、炉内11にワークWの搬送空間が水平に貫通形成されたトンネル状の炉体10と、ワークWを炉内11の搬送上流側から下流側(図1で左側から右側)に沿って搬送する無端状のメッシュベルト60とを主体として構成されている。ワークWは、この場合、原料粉末を所定形状に圧縮成形した圧粉体である。
【0020】
炉体10は金属マッフル等で構成され、その上流端には装入口12が設けられ、下流端には排出口13が設けられている。メッシュベルト60は、装入口12側および排出口13側の搬送ローラ18、19に巻架されており、装入口12から排出口13にわたって水平に架設された搬送部60Aと、排出口13から炉体10の下側を通って装入口12に戻る戻り部60Bとを有している。炉内11のメッシュベルト60は、炉床に設置されたスキッドレール等の図示せぬ支持レール上を摺動しながら搬送方向に移動させられる。
【0021】
メッシュベルト60は、戻り部60Bの装入口12付近に設置された駆動ローラ17によって矢印方向に駆動される。駆動ローラ17の上流側と下流側にはテンションローラ16a,16bが配置されており、メッシュベルト60は、上流側のテンションローラ16aの下側を通って上昇し、駆動ローラ17の上側に巻架されて駆動ローラ17と下流側のテンションローラ16bの間を通り、一旦下方に垂れ下がる弛み部60Cを経て装入口12側の搬送ローラ18に巻架される。メッシュベルト60は、テンションローラ16a,16bによって駆動ローラ17の上側の周面に押さえ付けられることで駆動ローラ17との間に摩擦が生じ、駆動ローラ17が回転することで摩擦駆動され、これにより炉内1の搬送部60Aにおいて装入口1から排出口13に向かって所定速度で移動するよう駆動される。
【0022】
炉体10は、ワークWの搬送上流側から下流に向けて、脱ろう部20、焼結部30、冷却先頭部40、冷却部50が連続して一体的に設けられた構成となっている。ワークWは、炉内11をメッシュベルト60の搬送部60Aによって脱ろう部20、焼結部30、冷却先頭部40、冷却部50の順に通過させられて焼結処理される。
【0023】
ワークWは耐熱性の敷板5に載せられ、敷板5とともに炉体10の装入口12からメッシュベルト60の搬送部60Aに積載されて、まず脱ろう部20に導入される。ワークWは、脱ろう部20において、脱ろう部20に配設された図示せぬ加熱手段によって所定の脱ろう温度(例えば600〜750℃程度)に加熱される。脱ろう部20の加熱手段としては、カップバーナー、直火のガスバーナー、電気式ヒーター、ラジアントチューブバーナー等が挙げられる。
【0024】
脱ろう部20内には、脱ろう用ガスが導入される。脱ろう用ガスは、熱源として例えばプロパンやブタンなどの炭化水素ガスを不完全燃焼させたもので、図示せぬ脱ろう用ガス生成部で生成される。
【0025】
ワークWは脱ろう部20を通過する間に、圧粉体の圧縮成形時に用いられたステアリン酸亜鉛や金属石けん等のろう状の潤滑剤成分が、熱分解されて除去、すなわち脱ろうされる。脱ろうによってワークWから生じる排気ガスは、脱ろう部20に設けられた排気筒23から外部に排出される。
【0026】
メッシュベルト60で搬送されて脱ろう部20を通過したワークWは、接続通路14を経て焼結部30に導入され、焼結部30で所定の焼結温度(例えば1000〜1300℃程度)に加熱される。焼結部30での加熱手段は図示していないが、加熱温度に応じた発熱体(例えば、ニクロム、カンタル、炭化珪素等)が加熱手段として選択され、その加熱手段は焼結部30の炉内11に適宜な密度で配設される。
【0027】
また、焼結部30内には、焼結部30と冷却先頭部40との境界部分に配設された焼結用ガス源31から、焼結部30の下流端に接続された焼結用ガス導入管32を介して雰囲気ガスが導入され、この雰囲気ガスによって焼結部30内は所定圧力に保持される。
【0028】
焼結部30に導入する雰囲気ガスは、窒素ガス、水素ガス、アンモニア分解ガス、エキソサーミックガス(プロパン、ブタン、メタン等の炭化水素ガスと空気を発熱反応させた炭化水素変成ガス)、エンドサーミックガス(エキソサーミックガスと同じ原ガスで、空気/ガス比を低くして加熱分解したガス)等の還元性ガスあるいは非酸化性ガスが選択され、室温の状態で、なおかつ脱水して水分を低減した状態で、焼結部30内に導入される。焼結部30内に導入された雰囲気ガスは、加熱手段33によって焼結温度程度まで加熱される。このため、焼結部30内の温度低下は生じないようになされている。
【0029】
メッシュベルト60によりワークWが焼結部30内を搬送されながら雰囲気ガス中で加熱され、焼結部30の終盤で焼結に必要な加熱処理が完了し、次いでワークWは冷却先頭部40を経て冷却部50に導入される。冷却部50はワークWを冷却するための図示せぬ冷却手段(例えば、炉体10に設けたウォータジャケット)を有しており、ワークWは冷却先頭部40と冷却部50を通過することで、非酸化、非脱炭の状態が確保される温度以下(例えば200℃以下)まで冷却される。冷却先頭部40では温度を緩やかに下げる徐冷が実施されたり、あるいは炉体10にウォータジャケットが装備されて冷却されたりする。
【0030】
冷却部50を通過して焼結処理が最終的に完了したワークWは、冷却部50の下流端に連続して設けられた排出部15に入り、排出部15の下流端に設けられた排出口13から炉体10の外部に排出される。排出されたワークWは回収され、次の工程に移される。
【0031】
以上が一実施形態の連続焼結炉1の基本的な構成および作用である。次いで、本発明に係るメッシュベルト60について説明する。
【0032】
(2)メッシュベルト
図2に示すように、メッシュベルト60は図7で示したものと基本構造は同じであり、同一構成要素には同一の符号を付している。メッシュベルト60は、搬送方向(矢印F方向)に並列された多数の平坦状の螺旋部材70と、螺旋部材70を連結する多数の連結部材80との組み合わせで帯状に形成されている。螺旋部材70および連結部材80は高温環境の炉内11において変形しにくい耐熱性を有する金属で形成され、例えばSUS304、SUS316、SUS310S等のステンレスを材料としたものが用いられる。
【0033】
幅方向(矢印W方向)に延在する螺旋部材70は2本の螺旋701,702が位相を互いに半ピッチずらして配置されて構成されており、前端部および後端部には屈曲部71,72が形成されている。搬送方向の前後に隣接する螺旋部材70の前後の屈曲部71,72は幅方向に交互に配置されて前後にラップしており、ラップする前記屈曲部の内側の前記幅方向に延びる空間に挿通されて前後にラップする屈曲部71,72の内側の幅方向に延びる空間に、連結部材80が挿通されている。前後の螺旋部材70は連結部材80によって連結され、メッシュベルト60全体が無端状に形成される。
【0034】
メッシュベルト60の幅方向両端縁には凹部703と凸部704が前後に沿って交互に形成され、前後に隣接する連結部材80の端部のうち、凸部704を挟む前後一対の端部80a・80bにおいては、係合する螺旋部材70の前後の屈曲部71,72の外側には屈曲部71,72が係合していない。これら一対の端部80a・80bに係合する螺旋部材70の端部73の屈曲部71,72は、溶接89によって端部80a・80bに固着されて係合状態が保持されている。
【0035】
本発明は、搬送方向の前後に隣接する連結部材80の、一端側の一対の端部どうし、および他端側の一対の端部どうしが、連結部材80の前後の間隔を保持する状態に結合手段によって結合されていることを特徴とする。以下、結合手段の実施形態を説明する。
【0036】
(2−1)第1実施形態
図2は第1実施形態のメッシュベルト60を示しており、このメッシュベルト60においては、連結部材80の両端部のうち、上記一対の端部80a・80bから、互いに対向するように搬送方向と平行に直角に屈曲して延長部81が延びており、これら延長部81の対向する先端どうしが、直接溶接によって固着されている。この場合の結合手段は、互いに対向するように直角に屈曲して延ばされた延長部81と溶接部82とで構成される。一対の端部80a・80bが延長部81および溶接部82を介して固着された前後一対の連結部材80は、前後の間隔が延長部81および溶接部82を介して保持される。
【0037】
第1実施形態によれば、連結部材80における両端部の、前後に隣接する一対の片持ち端部80a・80bどうしが、互いに対向するように直角に屈曲して延びる延長部81および溶接部82を介して結合されている。これにより、端部80a・80bどうしが結合された前後の連結部材80の間隔は広がらない。このため、焼結温度(1000〜1300℃)で加熱されながら摩擦駆動されているメッシュベルト60の螺旋部材70が受ける引っ張り応力が緩和されるとともに、結合された連結部材80の端部80a・80bに引っ張り応力が分散する。したがって螺旋部材70の端部73に強い負荷が偏って生じることが抑えられ、その結果、螺旋部材70の端部73が破断したり外れたりするといった不具合の発生が抑えられる。従来では、この連結部材80の一対の端部80a・80bは外側に螺旋部材70の屈曲部71,72が係合していない片持ち状態であったわけであるが、本実施形態では結合されることで片持ち状態が解消されている。このため、螺旋部材70の端部73の破断や外れといった不具合が効果的に抑えられる。
【0038】
また、延長部81はメッシュベルト60の搬送方向と平行に延びており、搬送方向に対し傾斜していないため、搬送方向に沿った引っ張り応力によって延長部81に剪断は生じない。このため連結部材80が離間するように引っ張り応力を受けても延長部81は破断しにくいものとなっている。
【0039】
(2−2)第2実施形態
図3は第2実施形態のメッシュベルト60を示しており、このメッシュベルト60においては、連結部材80の上記一対の端部80a・80bが従来よりもやや長く外側に延ばされ、これら端部80a・80bどうしが、搬送方向に延びる平板状のバー(結合部材)83によって結合されている。このバー83は両端部が溶接等の手段でそれぞれ端部80a・80bに固着されており、バー83によって連結部材80の間隔が保持される。バー83は、螺旋部材70および連結部材80と同じ材料で構成される。
【0040】
第2実施形態によれば、連結部材80の前後一対の端部80a・80bどうしがバー83によって結合され、連結部材80の間隔が保持されていることにより、第1実施形態と同様に螺旋部材70の端部73に強い負荷が偏って生じることが抑えられ、螺旋部材70の端部73が破断したり外れたりするといった不具合の発生が抑えられる。バー83は搬送方向に延びているため剪断は生じず、破断しにくいものとなっており、前後の連結部材80が離間することを効果的に抑えることができる。
【0041】
(2−3)第3実施形態
図4は第3実施形態のメッシュベルト60を示しており、このメッシュベルト60においては、連結部材80の上記一対の端部80a・80b間に、搬送方向に延びる平板状のリンク(結合手段)84が架け渡されている。リンク84の前後の端部には端部80a・80bが挿入可能な挿入孔841が形成されており、この挿入孔841に端部80a・80bが挿入されている。挿入孔841に挿入された端部80a・80bはリンク84から外側に突出し、その突出端は溶融や打圧して潰すなどの手段によって挿入孔841よりも大きな頭部74が形成される。リンク84は頭部74に当接することで端部80a・80bから抜けることが防がれ、リンク84によって連結部材80の間隔が保持される。リンク84は、螺旋部材70および連結部材80と同じ材料で構成される。
【0042】
(2−4)第4実施形態
図5は第4実施形態のメッシュベルト60を示しており、このメッシュベルト60においては、上記リンク84が、第3実施形態のように外側に屈曲部71,72が係合しておらず凸部704を挟む前後一対の端部80a・80b間に架け渡されている構成に加えて、両側に屈曲部71,72が係合しており凹部703を挟む前後一対の端部80a・80a、80b・80b間にも、リンク84が同様に架け渡されている。すなわち全ての連結部材80の前後一対の端部80a・80b、80a・80a、80b・80b間にリンク84が架け渡されている。この場合、連結部材80の各端部80a,80bには、前側のリンク84の後端部と後側のリンク84の前端部が重なった状態で嵌め込まれている。
【0043】
(2−5)第5実施形態
図6は第5実施形態のメッシュベルト60を示しており、このメッシュベルト60においては、上記第4実施形態と同様に全ての連結部材80の前後一対の端部80a・80b、80a・80a、80b・80b間にリンク84が架け渡されているが、リンク84の形状が異なっている。第5実施形態のリンク84は長さ方向中央部がクランク状に屈曲しており、全てのリンク84は、搬送方向の前端部が内側、後端部が外側に配されて、各端部80a,80bに挿入孔841が挿通されている。このようなクランク状のリンク84を使用することにより、搬送方向前側のリンク84の後端部が、搬送方向後側のリンク84の前端部の外側面を覆う状態に組まれる。
【0044】
上記第3〜第5実施形態では、リンク84によって連結部材80の間隔が保持され、これにより螺旋部材70の端部73に強い負荷が偏って生じることが抑えられ、螺旋部材70の端部73が破断したり外れたりするといった不具合の発生が抑えられる。
【0045】
特に第4実施形態では、全ての連結部材80の前後一対の端部80a・80b、80a・80a、80b・80b間にリンク84が架け渡されているため、凹部703を形成する螺旋部材70の端部73も補強されており、メッシュベルト60全体にわたって強度向上が図られるものとなっている。
【0046】
また、第5実施形態では、搬送方向の前側と後側に並ぶ一対のリンク84において、搬送方向前側のリンク84の後端部が搬送方向後側のリンク84の前端部の外側面を覆う状態に組まれた構成となっている。これによりメッシュベルト60の移動に伴って例えば炉内11の各種設置部材にリンク84が当たった場合、リンク84が前端部から剥がれたり、さらには脱落したりするおそれが抑えられ、メッシュベルト60の移動に支障が出ることが防がれるといった利点がある。
【符号の説明】
【0047】
1…連続焼結炉
60…メッシュベルト
70…螺旋部材
71,72…屈曲部
80…連結部材
80a,80b…端部
81…延長部(結合手段)
82…溶接部(結合手段)
83…バー(結合手段、結合部材)
84…リンク(結合手段)
F…搬送方向
X…幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9