(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複合繊維が、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)を鞘成分とし、ポリエステル(B)を芯成分とする芯鞘型複合繊維である請求項1〜3のいずれかに記載のパイルマット。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、パイル糸を構成する繊維が、エチレン含有量が25〜60モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリエステル(B)との複合繊維から主としてなるパイルマットである。
【0013】
まず、上記複合繊維におけるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)について説明する。エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体を鹸化することにより得られるが、鹸化度は95%以上の高鹸化度のものが好ましい。エチレン含有量が25〜60モル%のもの、すなわち、ビニルアルコール成分(未鹸化酢酸ビニル成分を含む)が約40〜75モル%のものが好ましい。エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)中のビニルアルコールの割合が低くなれば、水酸基の減少のために親水性などの特性が低下し、目的とする良好な親水性を有する天然繊維に似た風合いが得られないおそれがある。逆にビニルアルコール成分の割合が多くなりすぎると、溶融成形性が低下すると共にポリエステル(B)と複合紡糸する際に、曳糸性が不良となり、紡糸時又は延伸時の単糸切れ、断糸が多くなるおそれがある。したがって、高鹸化度でエチレン含有量が25〜60%のものが本発明におけるパイル糸を構成する繊維として適している。
【0014】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)と複合されるポリエステル(B)として高融点ポリマーを用いる場合、長時間安定に連続して紡糸するには、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)の溶融成形時の耐熱性を向上させる事が好ましい。そのための手段としてエチレン含有量を適切な範囲に設定することと、さらにエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)中の金属イオン含有量を所定量以下にすることも効果がある。
【0015】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)の熱分解機構としては大きく分けてポリマー主鎖間での橋かけ反応が起こり、ゲル化物が発生していく場合と、主鎖切断、側鎖脱離などの分解が進んでいく機構が混在化して発生すると考えられている。エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)中の金属イオンを除去することにより、溶融紡糸時の熱安定性が飛躍的に向上する。特にNa
+,K
+イオンなどの第I族のアルカリ金属イオンと、Ca
2+、Mg
2+イオンなどの第II族のアルカリ土類金属イオンをそれぞれ100ppm以下とすることにより顕著な効果がある。特に、長時間連続して高温条件で溶融紡糸をする際、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)中にゲル化物が発生してくると紡糸フィルター上にゲル化物が徐々に詰まって堆積する。その結果紡糸パック圧力が急上昇してノズル寿命が短くなるとともに紡糸時の単糸切れ、断糸が頻発する。ゲル化物の堆積がさらに進行するとポリマー配管が詰まりトラブル発生の原因となり好ましくない。エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)中の第I族アルカリ金属イオン、第II族アルカリ土類金属イオンを除去することにより高温での溶融紡糸、特に、250℃以上での溶融紡糸時に長時間連続運転してもゲル化物発生によるトラブルが起こりにくい。これら金属イオンの含有量は、それぞれ50ppm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは10ppm以下である。
【0016】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)の製造方法として、一例を説明すると、メタノールなどの重合溶媒中でエチレンと酢酸ビニルとをラジカル重合触媒下でラジカル重合させる。次いで未反応モノマーを追い出し、苛性ソーダにより鹸化反応を起こさせ、エチレン−ビニルアルコール系共重合体とした後、水中でペレット化した後、水洗して乾燥する。従って工程上どうしてもアルカリ金属やアルカリ土類金属がポリマー中に含有されやすく、通常は数百ppm以上のアルカリ金属、アルカリ土類金属が混入している。
【0017】
アルカリ金属イオン及びアルカリ土類金属イオン含有量をできるだけ低下させる方法としては、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)製造工程中、鹸化処理後ペレット化した後、湿潤状態のペレットを酢酸を含む純水溶液で大量にペレットを洗浄した後、さらに大過剰の純水のみで大量にペレットを洗浄する。またエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)は、エチレンと酢酸ビニルの共重合体を苛性ソーダにより鹸化して製造されるが、前述したようにこの時の鹸化度を95%以上にすることが好ましい。鹸化度が低くなると、ポリマーの結晶性が低下し、強度等の繊維物性が低下してくるのみならず、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)が軟化しやすくなり加工工程でトラブルが発生してくるとともに得られた繊維構造物の風合いも悪くなり好ましくない。
【0018】
次に、上記複合繊維におけるポリエステル(B)について説明する。ポリエステル(B)は、ジカルボン酸成分のうちテレフタル酸成分の他に下記式(I)で表される化合物由来の成分(a)、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)及び脂肪族ジカルボン酸成分(c)の3種が共重合されていることが重要である。原因は明確ではないが、これら3種のジカルボン酸成分の存在によって常圧下での優れた染着率、洗濯堅牢度、耐光堅牢度を確保し、かつ延伸を伴わない高速紡糸手法で製糸を行った場合でも、安定な高速曳糸性を得ることができる。
【0020】
[上記式(I)中、Rは水素、炭素数1〜10個のアルキル基又は2−ヒドロキシエチル基を表し、Xは、金属イオン、4級ホスホニウムイオン又は4級アンモニウムイオンを表す。]
【0021】
ポリエステル(B)は、カチオン染料可染性を得るために、ジカルボン酸成分のうち、共重合成分として上記化学式(I)で表される化合物由来の成分(a)を1.0〜3.5モル%含有する。
【0022】
上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸等のスルホン酸アルカリ金属塩基を有するジカルボン酸成分;5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、5−エチルトリブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの5−テトラアルキルホスホニウムスルホイソフタル酸成分などを挙げることができる。上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)は1種類のみをポリエステル中に共重合させても、また2種以上を共重合させてもよい。上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)を共重合させることにより、従来のポリエステル繊維に比べて繊維内部構造に非晶部分を保有させることができる。その結果、分散染料及びカチオン染料に対して常圧染色が可能で、かつ堅牢度に優れた複合繊維を得ることができる。
【0023】
ジカルボン酸成分のうち上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)の共重合量が1.0モル%未満の場合、カチオン染料で染色したときに鮮明で良好な色調になる複合繊維を得ることができない。一方、上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)の共重合量が3.5モル%を超えると、ポリエステルの増粘が著しくなって紡糸が困難になる。しかもカチオン染料の染着座席の増加により繊維に対するカチオン染料の染着量が過剰になって、色調の鮮明性がむしろ失われる。染色物の鮮明性及び紡糸性等の点から、上記式(I)で表される化合物由来の成分(a)の共重合量は1.2〜3.0モル%であるのが好ましく、1.5〜2.5モル%であるのがより好ましい。
【0024】
また、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)をポリエチレンテレフタレートに共重合した場合、結晶構造の乱れが小さい特徴を有しているため、高い染着率を確保しながら、耐光堅牢性にも優れた繊維を得ることができる。ここで、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)は、シクロヘキサンジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を共重合させることによってポリエステルに導入することができる。
【0025】
シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)を共重合することによって、複合繊維中のポリエステルの結晶構造に乱れが生じ、非晶部の配向は低下する。そのため、カチオン染料及び分散染料の繊維内部への浸透が容易となり、カチオン染料及び分散染料の常圧可染性を向上させることが可能となる。更に、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)は他の脂肪族ジカルボン酸成分に比べ結晶構造の乱れが小さいことから、耐光堅牢性にも優れたものとなる。
【0026】
ポリエステル(B)において、ジカルボン酸成分のうちシクロヘキサンジカルボン酸成分(b)の共重合量が2.0〜10.0モル%であり、好ましくは5.0〜10.0モル%である。ジカルボン酸成分のうち、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)の共重合量が2.0モル%未満の場合、繊維内部における非晶部位の配向度が高くなるため、常圧環境下での染色性が不足し、目的の染着率が得られない。また、ジカルボン酸成分のうち、シクロヘキサンジカルボン酸成分(b)の共重合量が10.0モル%を超えた場合、染着率、洗濯堅牢度、耐光堅牢度など、染色性に関しては良好な品質を確保できる。しかし、延伸を伴わない高速紡糸手法で製糸を行った場合、樹脂のガラス転移温度が低いことと繊維内部における非晶部位の配向度が低いことによって、高速捲取中に自発伸長の発生により安定な高速曳糸性を得ることができず、安定な繊維物性が得られない。
【0027】
本発明に用いられるシクロヘキサンジカルボン酸には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の3種類の位置異性体がある。本発明の効果が得られる点からはどの位置異性体が共重合されていても構わないし、また複数の位置異性体が共重合されていても構わない。また、それぞれの位置異性体にはシス/トランスの異性体があるが、いずれの立体異性体が共重合されていても構わないし、シス/トランス双方の異性体が共重合されていても構わない。シクロヘキサンジカルボン酸誘導体についても同様である。
【0028】
脂肪族ジカルボン酸成分(c)についてもシクロヘキサンジカルボン酸成分(b)と同様に、ポリエステル繊維の結晶構造に乱れが生じ、非晶部の配向が低下するため、カチオン染料及び分散染料の繊維内部への浸透が容易となり、常圧可染性を向上させることが可能となる。ここで、脂肪族ジカルボン酸成分(c)は、脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を共重合させることによってポリエステルに導入することができる。具体的には、脂肪族ジカルボン酸成分(c)をポリエチレンテレフタレートに2.0〜8.0モル%共重合すると、低温セット性にも効果がある。
【0029】
ポリエステル(B)は、ジカルボン酸成分のうち脂肪族ジカルボン酸成分(c)の共重合量が2.0〜8.0モル%であり、好ましくは2.5〜7.0モル%であり、より好ましくは3.0〜6.0モル%である。ジカルボン酸成分のうち、脂肪族ジカルボン酸成分(c)の共重合量が2.0モル%未満では、常圧環境下での分散染料に対する染色性が不足し、目的の染着率が得られない。また、ジカルボン酸成分のうち、脂肪族ジカルボン酸成分(c)特にアジピン酸成分の共重合量が8.0モル%を超えた場合、染着率は高くなるものの、延伸を伴わない高速紡糸手法で製糸を行った場合には繊維内部における非晶部位の配向度が低くなる。そのため高速捲取中での顕著な自発伸長により安定な高速紡糸性を得ることができず安定な繊維物性が得られない。
【0030】
脂肪族ジカルボン酸成分(c)として好ましく用いられるものとしては、アジピン酸成分、セバシン酸成分、デカンジカルボン酸成分などの脂肪族ジカルボン酸成分が例示できる。これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0031】
本発明における複合繊維の常圧可染性や品位を落とすことのない範囲であれば、テレフタル酸成分、シクロヘキサンジカルボン酸成分、及び脂肪族ジカルボン酸成分以外の他のジカルボン酸成分を共重合しても良い。具体的には、イソフタル酸成分やナフタレンジカルボン酸成分等の芳香族ジカルボン酸成分を単独であるいは複数種、合計10.0モル%以下の範囲で共重合してもよい。
【0032】
しかし、これらの成分を共重合することでエステル交換反応、重縮合反応が煩雑になるばかりでなく、共重合量が適正範囲を超えると洗濯堅牢性を低下させることがある。具体的には、イソフタル酸成分をジカルボン酸成分に対して10モル%を越えて共重合すると、本発明の構成要件を満足させたとしても、洗濯堅牢特性を低下させる恐れがあり、5モル%以下での使用が望ましく、0モル%であること(共重合しないこと)がより望ましい。
【0033】
更に、本発明の複合繊維におけるポリエステル(B)には、酸化チタン、硫酸バリウム、硫化亜鉛などの艶消剤、リン酸、亜リン酸などの熱安定剤、あるいは光安定剤、酸化防止剤、酸化ケイ素などの表面処理剤などが添加剤として含まれていてもよい。酸化ケイ素を用いることで、得られる繊維は、減量加工後に繊維表面に微細な凹凸を付与することがでる。更に、熱安定剤を用いることで加熱溶融時やその後の熱処理における熱分解を抑制できる。また、光安定剤を用いることで繊維の使用時の耐光性を高めることができ、表面処理剤を用いることで染色性を高めることも可能である。
【0034】
これら添加剤は、ポリエステル(B)を重合によって得る際に、重合系内にあらかじめ加えておいても良い。ただし、一般に酸化防止剤などは重合末期に添加するほうが好ましく、特に重合系に悪影響を与える場合や、重合条件下で添加剤が失活する場合はそうすることが好ましい。一方、艶消剤、熱安定剤などは重合時に添加するほうが均一に樹脂重合物内に分散しやすいため好ましい。
【0035】
ポリエステル(B)は、固有粘度が0.55〜0.7であることが好ましく、より好ましくは0.58〜0.68であり、さらに好ましくは0.60〜0.65である。固有粘度が0.7を超える場合、繊維化時の高速紡糸性が著しく悪くなる。また、紡糸が可能となり、目標の染着率が得られた場合でも、染色斑や筋が発生するおそれがある。また、固有粘度が0.55未満の場合、紡糸中に断糸しやすく生産性が低下するばかりでなく、得られた繊維の強度も低くなる。更に、紡糸が可能となり、目標の染着率が得られた場合でも、染色斑や筋が発生するおそれがある。
【0036】
本発明における複合繊維のカチオン染料及び分散染料の染着率は、90℃での染着率が80%以上であることが好ましく、且つ95℃での染着率が85%以上であることが好ましい。これらの染着率を下回ると、中〜低分子量染料(SE〜Eタイプ)の易染性染料においても十分な染着率が得られないため好ましくない。
【0037】
本発明における複合繊維は、変退色、添付汚染、液汚染の洗濯堅牢度が4級以上であることが好ましい。変退色、添付汚染、液汚染の洗濯堅牢度のいずれかが3級以下であった場合、取扱い性の点から好ましくない。
【0038】
また、本発明における複合繊維は、耐光堅牢度が4級以上であることが好ましい。耐光堅牢度が3級以下であった場合、取扱い性の点から好ましくない。
【0039】
本発明の複合繊維の断面形状は特に限定されないが、防汚性の観点からは、ポリエステル(B)を芯とし、エチレン-ビニルアルコール系共重合体(A)を鞘とする芯鞘型の断面形状を有することが好ましい。このときの芯成分あるいは鞘成分の形状も特に限定されないが、高速で安定に紡糸しやすい点から、
図1の繊維断面写真に示されるような同心円形状であることが好ましい。
【0040】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリエステル(B)の複合比率は、複合形態や繊維断面形状により適宜設定可能であるが90:10〜10:90(質量比率)であることが好ましく、70:30〜30:70がより好ましい。エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)の複合比率が10質量%未満の場合は、水酸基の減少のために繊維のひとつの特徴である親水性等の特性が失われる。一方、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)の複合比率が90質量%を越える複合繊維は、エチレン−ビニルアルコール系共重合体の特徴が発揮され、親水性、光沢感は十分に満足されるが、繊維物性や染色物の発色性が劣り好ましくない。
【0041】
また複合繊維の断面形状はエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)が繊維表面全体を覆う必要はないが、鮮やかな発色性を有するには、繊維表面の80%以上が屈折率の低いエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0042】
複合繊維に上記ポリエステル(B)を使用することによって鮮やかな発色性が得られる。通常、光沢を有する繊維は発色性が低下し、逆に発色性を優先させると光沢を付与することが難しい。本発明では、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリエステル(B)との複合繊維とすることにより深色性に優れ、光沢をも有する繊維を得ることができる。
【0043】
上記した複合繊維においては、繊維の太さは特に限定されず、任意の太さにすることができるが、発色性、光沢感、風合いに優れた繊維を得るためには複合繊維の単繊維繊度を0.3〜11dtex程度にしておくのが好ましい。また、長繊維のみならず短繊維でも本発明の効果が期待される。
【0044】
本発明の複合繊維の製造方法は、本発明の規定を満足する複合繊維が得られる方法であれば特に制限されるものではない。
図1の繊維断面写真に示される断面形状を有する複合繊維を製造する場合であれば、複合紡糸装置を用いて、ポリエステル(B)が芯部、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)が鞘部に位置するように溶融紡糸することにより製造することができる。また、最終製品に求められる品質や良好な工程通過性を確保するために、最適な紡糸・延伸方法を選択することができる。より具体的には、スピンドロー方式や、紡糸原糸を採取した後に別工程で延伸を行う2−Step方式を採用することもできる。また延伸を行わず非延伸糸のまま引き取り速度が2000m/分以上の速度で捲取る方式においても、任意の糸加工工程を通過させた後に製品化することで、良好な常圧可染性品位を有する該複合繊維製品を得ることができる。
【0045】
本発明の複合繊維の製造方法における紡糸工程でも、通常の溶融紡糸装置を用いて口金より紡出してもよい。また、口金の形状や大きさによって、得られる繊維の断面形状や径を任意に設定することが可能である。
【0046】
上記複合繊維は、常圧環境下で染色できる事で天然繊維に似た良好な風合いと良好な光沢感、吸湿性を有し、且つ濃色性と堅牢性に極めて優れた染色が可能である。また、上記複合繊維は、直接紡糸延伸手法又はその他の一般的な溶融紡糸手法においても安定した品質及び工程性が得られる。具体的には、上記複合繊維は、繊維表面に露出するエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)が部分的に軟化や微膠着を起こさない常圧下染色温度である90℃以下で、カチオン染料及び分散染料に対して濃色性を示し、かつ洗濯堅牢度及び耐光堅牢度に優れる。
【0047】
本発明における上記「パイル糸を構成する繊維が、エチレン含有量が25〜60モル%であるエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリエステル(B)との複合繊維から主としてなる」とは、パイル糸を構成する繊維の50重量%以上、好ましくは60〜100重量%がポリエステル(B)とエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)との複合繊維からなっていることをいう。
【0048】
パイル糸を製造する方法は特に限定されず、例えば、多数本の複合繊維のフィラメントを合わせてマルチフィラメント糸を形成し、このマルチフィラメント糸を複数本組み合わせてそのまま例えば合撚、エアー加工、混繊して所定の太さのパイル糸を製造しても、あるいは上記のマルチフィラメントを熱風を用いるインタレース加工、スタッフィング加工や従来のBCF法(Bulked Continuous Filament法)による捲縮の付与などによって嵩高加工した後、その嵩高加工糸を複数本組み合わせて合撚、エアー加工、混繊などを行ってパイル糸としてもよい。
【0049】
マルチフィラメント糸を複数組み合わせて合撚、エアー加工、混繊などを行ってパイル糸を製造する場合には、同じマルチフィラメント糸同士を組み合わせても、複合繊維のマルチフィラメント糸と他の繊維のマルチフィラメント糸とを組み合わせてもよい。複合繊維のマルチフィラメント糸と他の繊維のマルチフィラメント糸を組み合わせる場合は、該他の繊維のマルチフィラメント糸として、芳香族ポリアミド繊維、脂肪族ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなるマルチフィラメント糸を使用することができる。その場合に、該他のマルチフィラメント糸の割合をパイル糸を構成する繊維の50重量%未満にしておくことが必要であり、特に40重量%以下にするのが好ましい。
【0050】
パイル糸は、上記したマルチフィラメント糸のような長繊維から形成するのがパイル糸における遊び毛がなくなって、パイルマットにしたときに脱毛や抜毛が生じず好ましい。しかしながら、場合によっては、複合繊維からステープルを形成し、これを単独で用いてまたは50重量%未満の他の天然および/または合成繊維と混紡して紡績糸をつくり、この紡績糸からパイル糸を形成して本発明のパイルマットに使用してもよい。パイル糸がフィラメント糸および紡績糸のいずれからなる場合であっても、1本のパイル糸の太さは通常500〜7000dtex程度にしておくのがよい。
【0051】
上記のようにして得られたパイル糸を、次に織布、編布、不織布等の布帛等からなる基材に植え込む。基材の種類、パイル糸の植え込み法、それに用いる装置等は特に限定されず、従来のパイルマットの製造において用いられている基材、方法および製造装置のいずれもが使用できる。パイル糸の基材への植え込み密度は、通常ゲージ間隔が1/5〜1/12の範囲、ステッチが5〜13本の範囲になるようにするのが好ましい。パイル糸の植え込み密度が高くなり過ぎると、塵埃がパイル表面に多くなって踏み付けられたときに微細な塵埃が飛散して周囲の再汚染を招き易くなる。一方パイル糸の植え込み密度が低すぎると、塵埃除去機能が低下し、しかも塵埃が基材の目にまで入り込んでその清掃除去が困難になる。また、必要に応じて、複合繊維から主としてなるパイル糸と共に、他の繊維からなるパイル糸を基材に一緒に植え込んでもよく、それにより複合繊維に基づく上記した種々の優れた特性と、他の繊維に基づく特性を兼ね備えたパイルマットを得ることができる。そして、その場合には、他の繊維からなるパイル糸の割合を40%以下にしておくのが好ましい。
【0052】
植え込んだパイル糸が基材から抜けにくい場合は、パイル糸を植え込んだ基材をそのままパイルマットとして使用してもよいが、一般に、ゴムや樹脂などの裏打ち材を基材の裏面に施して、植え込んだパイル糸を固定して抜けを防止し安定化するのが望ましい。裏打ち材としては、この種のパイルマットにおいて使用されているいずれのものも使用することができ、例えばスチレンブタジン系ゴム、アクリロニトリル系ゴム、ブタジエン系ゴム、クロロプレン系ゴム、イソプレン系ゴム、ポリウレタン系ゴム等の合成ゴム、天然ゴム、ポリ塩化ビニルなどを挙げることができる。これらの重合体による裏打ちは、通常、必要に応じて着色剤、難燃剤、架橋剤、安定剤などの添加剤を含有するそれらの重合体の懸濁液、乳化液、ラテックス、溶液、溶融液などを基材の裏面に施して、乾燥やその他の手段により固化させることにより行う。また、本発明のパイルマットにおいては、必要に応じて、重合体からなる裏打ち材の上に更に他の布帛などを積層してもよい。
【0053】
基材に植え込んだパイル糸は、そのまま切断せずにループパイル状にして使用しても、または切断して房状のカットパイル状にして使用してもよい。パイル糸の毛足(長さ)は、一般に5〜20mm程度、好ましくは8〜15mm程度としておく。
【0054】
上記により得られた本発明のパイルマットは、必要に応じて、除塵効果を高めるための処理剤、湿潤剤、帯電防止剤、難燃剤、防黴剤、殺菌・殺虫剤、光安定剤などの任意の剤を用いて処理してもよい。
【0055】
本発明のパイルマットは、例えば、玄関マット、部屋の入口用マット、浴室用マット、台所用マット、廊下用マット、室内用マット、自動車、鉄道、航空機等の乗り物用マットなどの広範な用途に使用することができ、特に、除塵性、帯電防止性、吸水性、吸湿性が求められる場所で使用する防塵用マットなどに有効に使用することができる。そして、本発明のパイルマットは低温でもカチオン染料に対して優れた染色性を示し、防汚性も優れている。特に洗濯時の再汚染度(DS)(DSについては、以下で説明する)が10%以下である本発明のパイルマットは、洗濯時に汚れの吸着が少ないため黒ずんだ色にならず、いつまでも良好な色調を保つことができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、ジカルボン酸成分及びグリコール成分の共重合量、紡糸性、染色方法、染着率、染着濃度(K/S)、洗濯堅牢度、耐光堅牢度の評価は以下の方法に従った。
【0057】
<ジカルボン酸及びグリコール成分の共重合量>
共重合量は、該ポリエステル繊維を重トリフロロ酢酸溶媒中に0.5g/Lの濃度で溶解し、50℃で500MHz
1H−NMR(日本電子製核磁気共鳴装置LA−500)装置を用いて測定した。
【0058】
<繊度>
JIS L−1013の測定方法に準拠して測定した。
【0059】
<固有粘度 dl/g>
ポリマーの固有粘度:エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)の鹸化物は85%含有フェノールを用い30℃以下でウベローデ型粘度計(林製作所製HRK−3型)を用いて測定した。ポリエステル(B)は、溶媒としてフェノール/テトラクロロエタン(体積比1/1)混合溶媒を用い30℃で測定した。
【0060】
<紡糸性>
以下の基準に従って紡糸性評価を行った。
○:24hrの連続紡糸において、断糸が発生せず、紡糸性が良好であった。
×:24hrの連続紡糸において、紡糸時に断糸が発生し紡糸することができなかった。
【0061】
<染色方法>
得られた繊維の筒編地を精練した後、以下の条件でカチオン染料又は分散染料で染色した。
(カチオン染色)
染料:Cathilon Red CD-FGLH 3.0%omf
助剤:Na
2SO
4 10.0%、CH
3COONa 0.5%、CH
3COOH(50%)
浴比1:50
染色温度×時間:90℃×40分、又は95℃×40分
(分散染色)
染料:Dianix NavyBlue SPH conc5.0%omf
助剤:Disper TL:1.0cc/l、ULTRA MT−N2:1.0cc/l
浴比:1/50
染色温度×時間:90℃×40分、又は95℃×40分
(還元洗浄)
水酸化ナトリウム:1.0g/L
ハイドロサルファイトナトリウム:1.0g/L
アミラジンD:1.0g/L
浴比:1/50
還元洗浄温度×時間:80℃×20分
【0062】
<染着率>
上記染色方法において、染色前の原液及び染色後の残液をそれぞれアセトン水(アセトン/水=1/1混合溶液)で任意の同一倍率に希釈し、各々の吸光度を測定した後に、以下に示す式から染着率を求めた。
吸光度測定器:分光光度計 HITACHI
HITACHI Model 100−40
Spectrophotometer
染着率=(A−B)/A×100(%)
ここで、上記式中のA及びBはそれぞれ以下を示す。
A:原液(アセトン水希釈溶液)吸光度
B:染色残液(アセトン水希釈溶液)吸光度
【0063】
<染着濃度(K/S)>
染着濃度(K/S)は、上記染色後サンプル編地の最大吸収波長における反射率Rを測定し、以下に示すKubelka−Munkの式から求めた。
分光反射率測定器:分光光度計 HITACHI
C−2000S Color Analyzer
K/S=(1−R)
2/2R
【0064】
<洗濯堅牢度>
上記染色後サンプル編地を用いてJIS L−0844の測定方法に準拠して測定した。
【0065】
<耐光堅牢度>
上記染色後サンプル編地を用いてJIS L−0842の測定方法に準拠して測定した。
【0066】
パイルマットの洗濯時の再汚染度(DS)、パイルマットにおける繊維の抜け(抜け毛性)およびパイルマットの外観は、次のようにして測定または評価した。
【0067】
<洗濯時の再汚染度(DS)の測定>
(a)前処理;パイルマットを下記に示した条件下に1回洗濯して前処理した。
(洗濯条件)
洗濯機:National Automatic NA−5050
洗濯液:温度40℃±2℃
洗剤(モノゲン)0.25%
浴比1:100
洗濯時間:10分
すすぎ:40℃×1分を3回
(b)再汚染処理;上記の前処理を施したパイルマットから5×5cmの試験片6枚を取りこれを1組とする。Launder-O-meter型洗濯機付きのコップに汚染液(下記の人工油性汚れ成分と固形汚れ成分を3:1で混合したもの3gおよび洗剤モノゲンペースト7gに水を加えて4リットルにしたもの)150mlとSteel ballを10個を入れて40±2℃に予熱した後、試験片を洗濯機に投入して、20分間回転させて汚染した。汚染後、試験片を洗濯機から取り出して約3リットルの水で1分間水洗し、これを2回繰り返した後、50〜60℃で乾燥した。
【0068】
(人工油性汚れ成分)
ステアリン酸:12.5%
オレイン酸:12.5%
ヤシ硬化油:12.5%
オリーブ油:12.5%
セチルアルコール:8.5%
固形パラフィン(融点60〜61℃):21.5%
コレステロール:5.0%
カーボンブラック(玉川カーボン#LBC):15.0%
【0069】
(固形汚れ成分)
粘土汚れ(ドライクリーニング残渣珪ソウ土吸着物):55%
SiO
2(エロール):17%
Fe
2O
3:0.5%
セメント:17%
n−低級炭化水素(ヘプタン):8.75%
カーボンブラック(玉川カーボン#LBC):1.75%
【0070】
(c)測定;上記で得た試験片を4枚重ね、島津製作所製RC−II型、自動記録式分光光度計でMgOの場合を100とした時の反射率(%)を3回測定してその平均値を採り、下記の式(1)により汚染度(DS)(Degree of Soiling)を算出した。ただし、下記の式(1)において、Roは再汚染前マット(原マット)の反射率であり、Rsは再汚染マットの反射率である。
DS(%) = {(Ro−Rs)/Ro}×100 (1)
【0071】
<パイルマットの抜け毛性の評価>
直径100mmの円筒の長さ方向に沿って棕櫚繊維で作られた幅約30mmのブラシを相対する位置に4個固定し、これを75回転/分のモーターに接触させて回転させてパイルマットに5分間ブラシかけを行って、その際の繊維の抜け(抜け毛性)の状態および切断状態を下記により相対的に評価した。
(抜け毛性の評価基準)
○:繊維維の抜けおよび切断がなかった。
×:繊維の抜けおよび切断が発生した。
【0072】
<パイルマットの外観評価>
下記の評価基準によって行った。
○:DS測定後も外観変化なく良好であった。
×:DS測定後に汚染が認められ、且つ毛抜けおよび繊維切断が発生した。
【0073】
実施例1
重合溶媒としてメタノールを用い、60℃下でエチレンと酢酸ビニルをラジカル重合させ、エチレンの含有量が44モル%のランダム共重合体を作製した。次いで苛性ソーダにより鹸化処理を行い、鹸化度99%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物とした。次いで、湿潤状態のポリマーを酢酸が少量添加されている大過剰の純水で洗浄を繰返した後、さらに大過剰の純水による洗浄を繰返し、ポリマー中のK,Naイオン及びMg,Caイオンの含有量をそれぞれ約10ppm以下にした。次いで、脱水機によりポリマーから水を分離した後、更に100℃以下で真空乾燥を十分に実施して固有粘度が1.05のエチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)を得た。
【0074】
一方、ジカルボン酸成分のうち88.3モル%がテレフタル酸成分であり、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を1.7モル%、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸成分を5.0モル%、アジピン酸成分を5.0モル%それぞれ含んだ全カルボン酸成分とエチレングリコール、及び所定の添加剤とでエステル交換反応及び重縮合反応を行い、固有粘度が0.65のポリエステル(B)を得た。
【0075】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)とポリエステル(B)の複合比率(質量比率)50:50の条件で孔数24個(孔径0.25mmφ)の口金を用いて紡糸温度240℃、単孔吐出量1.39g/分で紡出した。次いで、温度25℃、湿度60%の冷却風を0.4m/秒の速度で紡出糸条に吹付け糸条を60℃以下にした。次いで、紡糸口金下方1.2mの位置に設置した長さ1.0m、入口ガイド径8mm、出口ガイド径10mm、内径30mmφチューブヒーター(内温185℃)に導入してチューブヒーター内で延伸した。次いで、チューブヒーターから出てきた糸条にオイリングノズルで給油し2個の引き取りローラーを介して4000m/分の速度で捲取り、84T/24fの複合繊維フィラメントを得た。
図1は得られた複合繊維の断面写真である。
図1に示すように、得られた複合繊維は同心円状の断面形状を有する芯鞘型複合繊維であった。その時の製糸化条件と紡糸性を表1に示した。また、得られた繊維の染色性を表2に示した。
【0076】
上記のようにして製造された複合繊維の染着率は、90℃で85%、95℃で91%、染着濃度(K/S)は28と良好な常圧可染性を示した。また、洗濯堅牢度、耐光堅牢度についても何ら問題のない品質であった。
【0077】
得られた複合繊維を通常のローラープレート方式の延伸機で2.0倍に延伸した後に合糸して1667dtex/100fのフィラメントをつくり、このマルチフィラメントを熱風流体処理法で捲縮処理して捲縮加工糸にした。この捲縮加工糸を2本合撚して、総繊度3333dtex/本、100T/MZの合撚糸をつくり、これをパイル糸として用いた。
【0078】
一方、基材として、ポリエステル繊維の繊維絡合不織布にバインダー樹脂を含浸させた平均目付160g/m
2の不織布を用い、これに上記で製造したパイル糸をパイル植え込み密度8×8本/inch
2で植え込んだ。次いで、パイル長9mmに切り揃えて整毛を行った後、基材の裏面にニトリル系合成ゴムラテックス液を900g/m
2の割合で塗布し、乾燥および160℃でキュアー処理してゴムにより裏打ちされたパイルマットを作製した。得られたパイルマットの洗濯再汚染度(DS)を上記した方法で測定すると共に、その毛抜け性およびマット外観を併せて上記方法により評価した。その結果を下記の表2に示す。
【0079】
上記複合繊維からなるパイル糸を用いて製造されたパイルマットは、洗濯時の耐再汚染性が極めて高く、抜け毛が少なく、しかも外観が良好であった。
【0080】
実施例2〜10
ポリエステル(B)製造時における、テレフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸及びセバシン酸の共重合量、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)のエチレン含有量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様の手法で紡糸して84T/24fの複合繊維フィラメントを得た。得られた複合繊維フィラメントの物性を表2に示した。いずれも良好な紡糸性、常圧可染性(染着率、K/S、堅牢性)であり、何ら問題のない品質であった。また、洗濯堅牢度、耐光堅牢度についても何ら問題のない品質であった。
【0081】
得られた複合繊維を用い実施例1と同様の手法でパイルマットを作製した。得られたパイルマットの洗濯再汚染度(DS)を上記した方法で測定すると共に、その毛抜け性およびマット外観を併せて上記方法により評価した。その結果を下記の表2に示す。いずれのパイルマットも、洗濯時の耐再汚染性が極めて高く、抜け毛が少なく、しかも外観が良好であった。
【0082】
比較例1
製糸条件を表1に示すように変更して複合繊維フィラメントを製造した以外は実施例1と同様の手法で紡糸して84T/24fの複合繊維フィラメントを得た。複合繊維フィラメントの物性を表2に示した。そして、得られた複合繊維を用い実施例1と同様の手法でパイルマットを作製した。パイルマット特性を表2に示す。
【0083】
比較例1では、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸のいずれもが共重合されていないため染着率、染着濃度が不十分であり、常圧可染性を示さない繊維物性となった。
【0084】
比較例2〜6
製糸条件を表1に示すように変更して実施例1と同様の手法で紡糸を試みたが紡糸は不可能であった。
【0085】
比較例7、8
製糸条件を表1に示すように変更して複合繊維フィラメントを製造した以外は実施例1と同様の手法で紡糸して84T/24fの複合繊維フィラメントを得た。複合繊維フィラメントの物性を表2に示した。そして、得られた複合繊維を用い実施例1と同様の手法でパイルマットを作製した。パイルマット特性を表2に示す。
【0086】
比較例7では、エチレン−ビニルアルコール系共重合体(A)におけるエチレン含有量が高いため、洗濯時耐再汚染度(DS)が高く、繊維の抜けおよび切断が顕著に発生し、外観も劣る結果となった。比較例8では、シクロヘキサンジカルボン酸成分あるいは脂肪族ジカルボン酸成分を共重合していないため染着率、染着濃度が不十分であり、常圧可染性を示さない繊維物性となった。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】