特許第6120300号(P6120300)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6120300セパレータ及びそれを備える電気化学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120300
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】セパレータ及びそれを備える電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20170417BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20170417BHJP
   H01G 9/02 20060101ALI20170417BHJP
   H01M 8/02 20160101ALN20170417BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20170417BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
   H01G11/52
   H01G9/02 301
   !H01M8/02 M
   !H01M8/10
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-535569(P2015-535569)
(86)(22)【出願日】2013年10月4日
(65)【公表番号】特表2015-536030(P2015-536030A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】KR2013008907
(87)【国際公開番号】WO2014054919
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2015年4月2日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0110592
(32)【優先日】2012年10月5日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0118631
(32)【優先日】2013年10月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109841
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 健史
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(73)【特許権者】
【識別番号】510157580
【氏名又は名称】東レバッテリーセパレータフィルム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】キム,ケー−ヤン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ノ−マ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン,スン−ソー
【審査官】 立木 林
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−522843(JP,A)
【文献】 特表2014−505344(JP,A)
【文献】 特開2008−287888(JP,A)
【文献】 特開2004−342572(JP,A)
【文献】 特開2004−323827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14−2/18
H01G 9/02
H01G 11/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータであって、
複数の気孔を有する多孔性基材と、及び
前記多孔性基材の少なくとも一面にコーティングされ、複数の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性コーティング層とを備えてなり、
前記バインダー高分子が、アクリル系共重合体とイソシアネート系架橋剤とによる硬化物を含んでなり、
前記アクリル系共重合体が、
(a)3級アミン基を有する第1単量体ユニット;
(b)2‐(((ブトキシアミノ)カルボニル)オキシ)エチル(メタ)アクリレート、メチル2‐アセトアミド(メタ)アクリレート、2‐(メタ)アクリルアミドグリコール酸、2‐(メタ)アクリルアミド‐2‐メチル‐1‐プロパンスルホン酸、(3‐(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、N‐(メタ)アクリロイルアミド‐エトキシエタノール、3‐(メタ)アクリロイルアミノ‐1‐プロパノール、N‐(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N‐tert‐ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチル(メタ)アクリルアミド、N‐(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N‐(イソプロピル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N‐フェニル(メタ)アクリルアミド、N‐(トリス(ヒドロキシメチル)メチル)(メタ)アクリルアミド、N‐ビニルピロリジノン、N‐N’‐(1,3‐フェニレン)ジマレイミド、N‐N’‐(1,4‐フェニレン)ジマレイミド、N‐N’‐(1,2‐ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N‐N’‐エチレンビス(メタ)アクリルアミド、4‐(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、2‐(ビニルオキシ)エタンニトリル、2‐(ビニルオキシ)プロパンニトリル、シアノメチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート及びシアノプロピル(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも一種の単量体からなることを特徴とする、第2単量体ユニット;
(c)(メタ)アクリル酸、2‐(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3‐(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4‐(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選択された少なくとも一種の単量体からなる第3単量体ユニット;
(d)水酸基を有する(メタ)アクリレートからなる第4単量体ユニット;及び
(e)炭素数が1ないし14であるアルキル基を有し、水酸基を有しない(メタ)アクリレートからなる第5単量体ユニットを含んでなる、共重合体であり、
前記アクリル系共重合体の総重量を基準にして、
前記第1単量体ユニットの含量が0.5ないし20重量部であり、
前記第2単量体ユニットの含量が30ないし60重量部であり、
前記第3単量体ユニットの含量が0.1ないし2重量部であり、
前記第4単量体ユニットの含量が0.5ないし10重量部であり、
前記第5単量体ユニットの含量が8ないし68重量部であることを特徴とする、セパレータ。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体100重量部に対して、前記イソシアネート系架橋剤の含量が0.1ないし10重量部であることを特徴とする、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記第1単量体ユニットが、2‐(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2‐(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3‐(ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、及び3‐(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも一種の単量体からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記第4単量体ユニットが、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6‐ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8‐ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート及び2‐ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも一種の単量体からなることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記第5単量体ユニットが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、sec‐ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2‐エチルブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n‐オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも一種の単量体からなることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記イソシアネート系架橋剤が、4,4‐メチレンビスジシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、メタ‐テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン‐4,4‐ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン‐1,5‐ジイソシアネート(NDI)、3,3‐ジメチル4,4‐ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びフェニレンジイソシアネートからなる群より選択された一種以上のものであるか、或いは、これらのうちの一種のものとポリオールとの反応物であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記バインダー高分子が、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン‐トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアリレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン及びカルボキシルメチルセルロースからなる群より選択された何れか一種または二種以上の混合物をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記無機物粒子の大きさが0.001ないし10μmであることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記無機物粒子が、誘電率定数が5以上の無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、及びこれらの混合物からなる群より選択されたことを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記誘電率定数が5以上の無機物粒子が、BaTiO3、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiy3(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3‐PbTiO3(PMN‐PT)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO2、Y23、Al23、SiC及びTiO2からなる群より選択された少なくとも一種であることを特徴とする、請求項9に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子が、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO43、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO43、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)xy系列ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyzw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(Lixy、0<x<4、0<y<2)、SiS2系列ガラス(LixSiyz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)及びP25系列ガラス(Lixyz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)からなる群より選択された少なくとも一種であることを特徴とする、請求項9又は10に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記無機物粒子100重量部を基準にして、前記バインダー高分子の含量が2ないし30重量部であることを特徴とする、請求項1〜11の何れか一項に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記多孔性コーティング層の厚さが、0.5ないし10μmであることを特徴とする、請求項1〜12の何れか一項に記載のセパレータ。
【請求項14】
前記多孔性基材が、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド及びポリエチレンナフタレンからなる群より選択された少なくとも一種で形成されたことを特徴とする、請求項1〜13の何れか一項に記載のセパレータ。
【請求項15】
電気化学素子であって、
カソードと、アノードと、前記カソードと前記アノードとの間に介在されたセパレータとを備えてなるものであり、
前記セパレータが、請求項1〜14の何れか一項に記載のセパレータであることを特徴とする、電気化学素子。
【請求項16】
前記電気化学素子が、リチウム二次電池であることを特徴とする、請求項15に記載の電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池のような電気化学素子のセパレータ、及びそれを備える電気化学素子に関し、より詳しくは、多孔性基材の表面に無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性コーティング層を含むセパレータ及びそれを備える電気化学素子に関する。
【0002】
本出願は、2012年10月5日出願の韓国特許出願第10−2012−0110592号及び2013年10月4日出願の韓国特許出願第10−2013−0118631号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
近年、エネルギー貯蔵技術に対する関心が高まりつつある。携帯電話、カムコーダー及びノートパソコン、さらには電気自動車のエネルギーまで適用分野が拡がるとともに、電気化学素子の研究と開発に対する努力が次第に具体化されている。電気化学素子はこのような面で最も注目される分野であり、その中でも、充放電可能な二次電池の開発に関心が寄せられている。このような電池の開発において、容量密度及び比エネルギーを向上させるために、新たな電極と電池の設計に対する研究開発が行われている。
【0004】
1990年代の初めに開発されたリチウム二次電池は、水溶液電解液を使用するニッケル‐水素、ニッケル‐カドミウム、硫酸‐鉛電池などの従来型電池に比べて作動電圧が高くエネルギー密度が格段に高いという長所から、現在使用されている二次電池のうち最も脚光を浴びている。しかし、このようなリチウムイオン電池は、有機電解液の使用による発火及び爆発などの安全問題を抱えており、製造し難いという短所がある。近年のリチウムイオン高分子電池は、このようなリチウムイオン電池の弱点を改善して次世代電池の一つに数えられているが、未だ電池の容量がリチウムイオン電池と比べて相対的に小さく、特に低温における放電容量が不十分であるため、その改善が至急に求められている。
【0005】
上記のような電気化学素子は多くのメーカにおいて生産中であるが、それらの安全性特性は相異なる様相を呈している。電気化学素子の安全性の評価及び安全性の確保は最も重要に考慮すべき事項である。特に、電気化学素子の誤作動によりユーザが傷害を被ることはあってはならなく、故に、安全規格は電気化学素子内の発火及び発煙などを厳格に規制している。電気化学素子が過熱し、熱暴走が起きるか又はセパレータが貫通される場合は、爆発が起きる恐れが大きい。特に、電気化学素子のセパレータとして通常使用されるポリオレフィン系多孔性基材は、材料的特性及び延伸を含む製造工程上の特性のため、100度以上の温度で甚だしい熱収縮挙動を見せてカソードとアノードとの間の短絡を起こすという問題がある。
【0006】
このような電気化学素子の安全性問題を解決するため、韓国特許公開第10−2009−0130885号公報には、メタクリル酸エステル‐アクリル酸エステル共重合体をバインダーとして適用して無機充填材を含む多孔層を有する多層多孔膜構造が提示されている。しかし、ここに提示されたアクリル系共重合体組成のバインダーは実用的な代案を提示できていない。特に、上記の文献に提示されている組成では、コーティング厚さが断面基準で4μm以下のコーティングの際、電池の熱的、物理的安定性、特に耐電解液性が悪く、電解液の浸透(swelling)によるコーティング層の脱離(delamination)現象が生じるため、耐久信頼性を確保し難い。
【0007】
一方、韓国特許第10−0923375号公報には、多官能性イソシアネート及びこのような多官能性イソシアネートのイソシアネート基と反応できる官能基を有する反応性重合体を含む熱架橋性接着剤組成物を多孔質基材に支持させて製造するセパレータが提示されている。しかし、上記の文献に提示されている組成では、50℃で7日の硬化時間(curing time)が必要となり、これを生産する場合、硬化のための大規模の追加的な設備投資及び長時間を要するなど、生産効率の面で限界を見せた。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、アクリル系共重合体組成に3級アミン系単量体及び(メタ)アクリル酸単量体を導入し、イソシアネートとの硬化の際に触媒として働かせることで、硬化速度を画期的に短縮して、無機充填材を含む多孔性コーティング層におけるセパレータの物理的安定性及び熱的安定性を確保し、内部短絡に対する耐久信頼性を確保したセパレータ及びそれを備える電気化学素子を提供することを目的とする。
【0009】
上記の課題を達成するため、本発明の一態様によれば、複数(多数)の気孔を有する平面状の多孔性基材;及び前記多孔性基材の少なくとも一面にコーティングされ、複数(多数)の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性コーティング層;を含むセパレータであって、前記バインダー高分子がアクリル系共重合体とイソシアネート系架橋剤との硬化反応の結果物を含み、前記アクリル系共重合体が(a)3級アミン基を有する第1単量体ユニット;(b)3級アミン系以外のアミン基、アミド基、シアノ基及びイミド基から選択された少なくとも一種以上の官能基を有する第2単量体ユニット;(c)カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートからなる第3単量体ユニット;(d)水酸基を有する(メタ)アクリレートからなる第4単量体ユニット;及び(e)炭素数が1ないし14であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートからなる第5単量体ユニットを含む共重合体であり、前記アクリル系共重合体の全体を基準に前記第1単量体ユニットの含量が0.5ないし20重量部、前記第2単量体ユニットの含量が30ないし60重量部、前記第3単量体ユニットの含量が0.1ないし2重量部、前記第4単量体ユニットの含量が0.5ないし10重量部、前記第5単量体ユニットの含量が8ないし68重量部であるセパレータが提供される。
前記アクリル系共重合体100重量部に対する前記イソシアネート系架橋剤の含量は、0.1ないし10重量部であり得る。
【0010】
前記第1単量体ユニットは、2‐(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2‐(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3‐(ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート及び3‐(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも一種の単量体に由来し得る。
【0011】
前記第2単量体ユニットは、2‐(((ブトキシアミノ)カルボニル)オキシ)エチル(メタ)アクリレート、メチル2‐アセトアミド(メタ)アクリレート、2‐(メタ)アクリルアミドグリコール酸、2‐(メタ)アクリルアミド‐2‐メチル‐1‐プロパンスルホン酸、(3‐(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、N‐(メタ)アクリロイルアミド‐エトキシエタノール、3‐(メタ)アクリロイルアミノ‐1‐プロパノール、N‐(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N‐tert‐ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチル(メタ)アクリルアミド、N‐(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N‐(イソプロピル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N‐フェニル(メタ)アクリルアミド、N‐(トリス(ヒドロキシメチル)メチル)(メタ)アクリルアミド、N‐ビニルピロリジノン、N‐N’‐(1,3‐フェニレン)ジマレイミド、N‐N’‐(1,4‐フェニレン)ジマレイミド、N‐N’‐(1,2‐ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N‐N’‐エチレンビス(メタ)アクリルアミド、4‐(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、2‐(ビニルオキシ)エタンニトリル、2‐(ビニルオキシ)プロパンニトリル、シアノメチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート及びシアノプロピル(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも一種の単量体に由来し得る。
【0012】
前記第3単量体ユニットは、(メタ)アクリル酸、2‐(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3‐(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4‐(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選択された少なくとも一種の単量体に由来し得る。
【0013】
前記第4単量体ユニットは、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6‐ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8‐ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート及び2‐ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも一種の単量体に由来し得る。
【0014】
前記第5単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、sec‐ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2‐エチルブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n‐オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレートからなる群より選択された少なくとも一種の単量体に由来し得る。
【0015】
前記イソシアネート系架橋剤は、4,4‐メチレンビスジシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、メタ‐テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン‐4,4‐ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン‐1,5‐ジイソシアネート(NDI)、3,3‐ジメチル4,4‐ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びフェニレンジイソシアネートからなる群より選択された一種以上であるか、またはこれらのうちの一種とポリオールとの反応結果物であり得る。
【0016】
前記バインダー高分子は、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン‐トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアリレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン及びカルボキシルメチルセルロースからなる群より選択された何れか一種またはこれらのうち二種以上の混合物をさらに含むことができる。
前記無機物粒子の大きさは、0.001ないし10μmであり得る。
前記無機物粒子は、誘電率定数が5以上の無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子及びこれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0017】
前記誘電率定数が5以上の無機物粒子は、BaTiO3、Pb(Zr,Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiy3(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3‐PbTiO3(PMN‐PT)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO2、Y23、Al23、SiC及びTiO2からなる群より選択された少なくとも一種であり得る。
【0018】
前記リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子は、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO43、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO43、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、(LiAlTiP)xy系列ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyzw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(Lixy、0<x<4、0<y<2)、SiS2系列ガラス(LixSiyz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、P25系列ガラス(Lixyz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)からなる群より選択された少なくとも一種であり得る。
前記バインダー高分子の含量は、前記無機物粒子100重量部を基準に2ないし30重量部であり得る。
前記多孔性コーティング層の厚さは、0.5ないし10μmであり得る。
【0019】
前記多孔性基材は、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド及びポリエチレンナフタレンからなる群より選択された少なくとも一種で形成することができる。
【0020】
本発明の他の態様によれば、カソード、アノード、前記カソードとアノードとの間に介在されたセパレータを含む電気化学素子であって、前記セパレータが上述したセパレータである電気化学素子が提供される。
前記電気化学素子は、リチウム二次電池であり得る。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、従来のフルオロ系バインダーをアクリル系共重合体バインダーで代替することで、セパレータ製造時の価格競争力を確保し、アクリル系共重合体バインダーの構成成分として硬化促進単量体を導入して架橋効率を増進させることで、電解液内でコーティング層が短時間で脱離する現象を抑制し、物理的安定性及び熱安定性に優れて内部短絡に対する信頼性が卓越したコーティング層が形成されたセパレータを提供することができる。
【0022】
非架橋バインダーは、電解液内で高分子鎖が自由に動くため、鎖が解かれて電解液に溶解される現象を見せる。しかし、架橋されたバインダーでは、架橋された地点が電解液内で自由に動けず、一種のドメインを形成して、電解液内で高分子のマトリクスが維持されて耐電解液性に優れる。したがって、バインダーの架橋度が高いほど電解液内の脱離防止効果は向上し、本発明のアクリル系高分子バインダーの組成を適用すれば、セパレータを製造した後のバインダーの架橋度が90%以上であり、90%以上の架橋度に到達するまでにかかる時間は加温工程で15分以内である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
明細書内に統合されていて明細書の一部を構成する添付図面は、発明の現在の望ましい実施例を例示し、後述される望ましい実施例の詳細な説明と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。
図1】多孔性コーティング層を備えるセパレータを概略的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び請求範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0025】
本発明の一態様によるセパレータは、多数の気孔を有する平面状の多孔性基材;及び前記多孔性基材の少なくとも一面にコーティングされ、多数の無機物粒子とバインダー高分子との混合物で形成された多孔性コーティング層;を含むセパレータであって、前記バインダー高分子はアクリル系共重合体とイソシアネート系架橋剤との硬化反応の結果物を含み、前記アクリル系共重合体は(a)3級アミン基を有する第1単量体ユニット;(b)3級アミン系以外のアミン基、アミド基、シアノ基及びイミド基から選択された少なくとも一種以上の官能基を有する第2単量体ユニット;(c)カルボキシル基を有する(メタ)アクリレートからなる第3単量体ユニット;(d)水酸基を有する(メタ)アクリレートからなる第4単量体ユニット;及び(e)炭素数が1ないし14であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートからなる第5単量体ユニットを含む共重合体であり、前記アクリル系共重合体の全体を基準に前記第1単量体ユニットの含量が0.5ないし20重量部、前記第2単量体ユニットの含量が30ないし60重量部、前記第3単量体ユニットの含量が0.1ないし2重量部、前記第4単量体ユニットの含量が0.5ないし10重量部、前記第5単量体ユニットの含量が8ないし68重量部である。
前記セパレータの多孔性コーティング層を構成するバインダー高分子は、アクリル系共重合体とイソシアネート系架橋剤との硬化反応の結果物を含む。
【0026】
一般に、アクリル系共重合体は電解液に浸漬(swelling)され易い特性を有するが、これは通常の重合方法で製造したアクリル系共重合体の場合、弱い非晶質の高分子が得られるためである。したがって、セパレータの製造の際、アクリル系共重合体のコーティング層は電解液の浸漬が容易であるため、リチウムイオンの通路を十分確保して低い電気抵抗特性を見せる。一方、コーティング層が電解液に浸漬され易いことから耐電解液性が良くないため、多孔性基材からコーティング層が剥離され易く耐久性が悪化するという問題が生じ得る。そこで、本発明の一態様によるセパレータでは、アクリル系共重合体の架橋を通じて非晶質高分子の短所を補完しようとした。一方、ポリオレフィンのような原料を使用する一般的な多孔性基材は、耐熱特性上、120℃以上の高温で脆弱であるため、多孔性基材にコーティングされたアクリル系共重合体の架橋は120℃以下で行われなければならず、アクリル系共重合体の架橋のために低温で長期間の硬化反応が必要となり、生産性の面で限界になり得る。
【0027】
しかし、本発明の一態様によるセパレータのコーティング層を構成するアクリル系共重合体は、3級アミン基を有する第1単量体ユニット及びカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートからなる第3単量体ユニットを含み、これら単量体ユニットがアクリル系共重合体とイソシアネート系架橋剤との硬化反応において触媒作用を果たすことで、ウレタン硬化効率に優れる。
【0028】
前記アクリル系共重合体としては、上述した第1単量体ユニットないし第5単量体ユニットを含む共重合体であれば、ランダム共重合体、ブロック共重合体などすべての共重合体の形態を使用することができる。
【0029】
前記アクリル系共重合体に含まれた第1単量体ユニットないし第5単量体ユニットは、無機物の間または無機物と多孔性基材との間に高い接着力を与える。また、これを用いて形成された多孔性コーティング層は欠陥(defect)が少なく、高いパッキング密度を有する。したがって、本発明の一態様によるセパレータを用いれば、電池の薄膜化を容易に実現でき、外部の衝撃に対する安定性が高く、無機物粒子の脱離現象が改善される。
【0030】
側鎖に3級アミン基を有する第1単量体ユニットは、2‐(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2‐(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3‐(ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート及び3‐(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレートからなる群より選択された一種または二種以上の単量体に由来し得る。
【0031】
側鎖に3級アミン系以外のアミン基、アミド基、シアノ基及びイミド基から選択された少なくとも一種以上の官能基を有する第2単量体ユニットは、2‐(((ブトキシアミノ)カルボニル)オキシ)エチル(メタ)アクリレート、メチル2‐アセトアミド(メタ)アクリレート、2‐(メタ)アクリルアミドグリコール酸、2‐(メタ)アクリルアミド‐2‐メチル‐1‐プロパンスルホン酸、(3‐(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、N‐(メタ)アクリロイルアミド‐エトキシエタノール、3‐(メタ)アクリロイルアミノ‐1‐プロパノール、N‐(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N‐tert‐ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジメチル(メタ)アクリルアミド、N‐(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N‐(イソプロピル)(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N‐フェニル(メタ)アクリルアミド、N‐(トリス(ヒドロキシメチル)メチル)(メタ)アクリルアミド、N‐ビニルピロリジノン、N‐N’‐(1,3‐フェニレン)ジマレイミド、N‐N’‐(1,4‐フェニレン)ジマレイミド、N‐N’‐(1,2‐ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N‐N’‐エチレンビス(メタ)アクリルアミド、4‐(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリル、2‐(ビニルオキシ)エタンニトリル、2‐(ビニルオキシ)プロパンニトリル、シアノメチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート及びシアノプロピル(メタ)アクリレートからなる群より選択された一種または二種以上の単量体に由来し得る。
【0032】
側鎖にカルボキシル基を有する(メタ)アクリレートからなる第3単量体ユニットは、(メタ)アクリル酸、2‐(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3‐(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4‐(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸からなる群より選択された一種または二種以上の単量体に由来し得る。
【0033】
側鎖に水酸基を有する(メタ)アクリレートからなる第4単量体ユニットは、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6‐ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8‐ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート及び2‐ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートからなる群より選択された一種または二種以上の単量体に由来し得る。
【0034】
炭素数が1ないし14であるアルキル基を有する(メタ)アクリレートからなる第5単量体ユニットは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、sec‐ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2‐エチルブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n‐オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレートなどをそれぞれ単独でまたはこれらを二種以上使用した単量体に由来し得る。このとき、前記第5単量体ユニットのアルキル基に含まれた炭素数が14を超えれば、アルキル基が過渡に長くなって非極性度が高くなるため、多孔性コーティング層のパッキング密度が低下する恐れがある。
【0035】
本発明のセパレータにおいて、第1単量体ユニットの含量は共重合体の全体を基準に0.5ないし20重量部であり、より望ましくは1ないし15重量部であり得る。このような含量範囲を満足する場合、アクリル系共重合体とイソシアネート系架橋剤との硬化反応の速度が速まり、多孔性コーティング層のパッキング密度が改善され、アクリル系共重合体の分子量が10万未満に減少することで発生するポリオレフィン多孔性膜との粘着力の低下現象を防止することができる。
【0036】
第2単量体ユニットの含量は、共重合体の全体を基準に30ないし60重量部であり、より望ましくは35ないし55重量部であり得る。このような含量範囲を満足する場合、多孔性コーティング層のパッキング密度と接着力が改善され、電気抵抗が過渡に高くなることを防止することができる。
【0037】
第3単量体ユニットの含量は、共重合体の全体を基準に0.1ないし2重量部であり、より望ましくは0.5ないし1.5重量部であり得る。このような含量範囲を満足する場合、アクリル系共重合体とイソシアネート系架橋剤との硬化反応が促進され、単量体と電解液との副反応が抑制され、電気抵抗が過渡に高くなることを防止することができる。
【0038】
第4単量体ユニットの含量は、共重合体の全体を基準に0.5ないし10重量部であり、より望ましくは1ないし8重量部であり得る。このような含量範囲を満足する場合、イソシアネート系架橋剤と硬化反応を起こす水酸基の含量が適切に調節され、共重合体の接着力の低下を防止して、共重合体内で適切な架橋含量を与えることで電解液内の脱離現象を抑制するため、セパレータの物理的安定性及び熱安定性を向上させることができる。
【0039】
また、第5単量体ユニットの含量は、共重合体の全体を基準に8ないし68重量部であり、より望ましくは20ないし63重量部であり得る。このような含量範囲を満足する場合、多孔性基材との接着力が改善され、多孔性コーティング層のパッキング性を向上させることができる。
【0040】
本発明のセパレータにおいて、前記共重合体は、上述した水酸基を有する(メタ)アクリレートからなる第4単量体ユニットの外に、他の架橋性官能基を有する単量体ユニットをさらに含むことで、バインダー高分子の架橋度を調節してセパレータの物理的及び熱的安定性をさらに増進させることができる。このような追加的な架橋性官能基としては、エポキシ基、オキセタン基、イミダゾール基、オキサゾリン基などが挙げられる。
一方、前記アクリル系共重合体の架橋性官能基は、イソシアネート系架橋剤と硬化反応を起こし、その結果物としてバインダー高分子が得られる。
【0041】
前記イソシアネート系架橋剤としては、4,4‐メチレンビスジシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、メタ‐テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン‐4,4‐ジイソシアネート(MDI)、ナフタレン‐1,5‐ジイソシアネート(NDI)、3,3‐ジメチル4,4‐ビフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)及びフェニレンジイソシアネートからなる群より選択された一種以上であるか、またはこれらのうちの一種とポリオールとの反応結果物などが挙げられる。
【0042】
前記ポリオールは、例えば2ないし4個の水酸基を有するポリオールであって、分子量が約1,000g/mol未満の低分子量ポリオールと、分子量が約1,000g/molないし4,000g/molである高分子量ポリオールとがある。具体的な低分子量ポリオールの例としては、ジオール、トリオール及びテトラオールが挙げられ、エチレングリコール、1,2‐プロピレングリコール、1,4‐ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセロール、ペンタエリスリトール及びソルビトールなどが含まれる。その外、その他のポリオールの例としては、エーテルポリオール、例えばジエチレングリコール及びエトキシ化ビスフェノールAなどがある。
【0043】
また、高分子量ポリオールとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)などのようなポリエーテル系列のポリオール、及びポリブチレンアジペートなどのようなポリエステル系列のポリオールがある。
【0044】
前記イソシアネート系架橋剤の含量は、例えば、前記アクリル系共重合体100重量部に対して0.1ないし10重量部、または1ないし10重量部である。このような含量範囲を満足する場合、バインダー高分子の架橋密度が過度に高くなって取り扱い難くなる問題が防止され、電解液内の脱離現象が短時間で抑制され、物理的安定性が改善された多孔性コーティング層を形成することができる。
【0045】
このようなイソシアネート系架橋剤の外に、エポキシ化合物、オキセタン化合物、アジリジン化合物、メタルキレート剤のような硬化剤を添加して共重合体を互いに架橋させることができる。
【0046】
外にも、上述した共重合体は本発明の目的から逸脱しない限度内で他の単量体ユニットをさらに含むことができる。例えば、セパレータのイオン伝導度を向上させるために、炭素数が1ないし8であるアルコキシジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシトリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシジプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステルのような(メタ)アクリル酸アルキレンオキサイド付加物などをさらに共重合させることができる。
【0047】
また、前記バインダー高分子としては、本発明の目的から逸脱しない限度内で上述したバインダー高分子以外に他のバインダー高分子を混用して使用できることは当業者にとって自明である。
【0048】
このようなバインダー高分子としては、当業界で多孔性コーティング層の形成に通常使用される高分子を使用することができる。特に、ガラス転移温度(glass transition temperature、Tg)が−200ないし200℃である高分子を使用できるが、これは最終的に形成される多孔性コーティング層の柔軟性及び弾性などのような機械的物性を向上させることができるためである。
【0049】
このようなバインダー高分子の非制限的な例としては、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン‐トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリアリレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン及びカルボキシルメチルセルロースなどが挙げられる。
【0050】
本発明のセパレータにおいて、多孔性コーティング層の形成に使用される無機物粒子は電気化学的に安定さえすれば特に制限されない。すなわち、本発明で使用できる無機物粒子は、適用する電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+基準で0〜5V)で酸化及び/または還元反応を起こさないものであれば、特に制限されない。特に、イオン伝達能力のある無機物粒子を使用する場合、電気化学素子内のイオン伝導度を高めて性能向上を図ることができる。
【0051】
また、無機物粒子として誘電率の高い無機物粒子を使用する場合、液体電解質内の電解質塩、例えばリチウム塩の解離度の増加に寄与して電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0052】
上述した理由から、前記無機物粒子は誘電率定数が5以上、望ましくは10以上の高誘電率無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子またはこれらの混合体を含むことが望ましい。誘電率定数が5以上の無機物粒子の非制限的な例としては、BaTiO3、Pb(Zr、Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiy3(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3‐PbTiO3(PMN‐PT)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO2、Y23、Al23、SiC及びTiO2などをそれぞれ単独でまたは二種以上を混合して使用することができる。
【0053】
特に、上述したBaTiO3、Pb(Zr、Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiy3(PLZT、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3‐PbTiO3(PMN‐PT)、ハフニア(HfO2)のような無機物粒子は、誘電率定数が100以上と高誘電率特性を示すだけでなく、一定圧力を印加して引張または圧縮する場合、電荷が発生して両面の間に電位差が発生する圧電性(piezoelectricity)を呈することで、外部衝撃による両電極の内部短絡の発生を防止して電気化学素子の安全性向上を図ることができる。また、上述した高誘電率の無機物粒子とリチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子とを混用する場合、これらの相乗効果は倍加できる。
【0054】
本発明の一態様において、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子とは、リチウム元素を含有するものの、リチウムを貯蔵せず、リチウムイオンを移動させる機能を有する無機物粒子を称する。このようなリチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子は、粒子構造の内部に存在する一種の欠陥(defect)によってリチウムイオンを伝達及び移動させることができるため、電池内のリチウムイオン伝導度が向上し、これにより電池性能の向上を図ることができる。前記リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子の非制限的な例としては、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO43、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO43、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14Li2O‐9Al23‐38TiO2‐39P25などのような(LiAlTiP)xy系列ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、Li3.25Ge0.250.754などのようなリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyzw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、Li3Nなどのようなリチウムナイトライド(Lixy、0<x<4、0<y<2)、Li3PO4‐Li2S‐SiS2などのようなSiS2系列ガラス(LixSiyz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI‐Li2S‐P25などのようなP25系列ガラス(Lixyz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)またはこれらのうちの一種以上の混合物などが挙げられる。
【0055】
本発明の一態様によるセパレータにおいて、多孔性コーティング層の無機物粒子の大きさには制限がないが、均一な厚さのコーティング層を形成し、適切な孔隙率を得るため、0.001ないし10μm範囲であることが望ましい。0.001μm未満の場合は、分散性が低下してセパレータの物性を調節し難く、10μmを超えれば、多孔性コーティング層の厚さが増加して機械的物性が低下する恐れがあり、また、過渡に大きい気孔により電池の充放電時に内部短絡が起きる確率が高くなる。
【0056】
本発明の一態様によるセパレータにコーティングされた多孔性コーティング層のバインダー高分子の含量は、例えば、無機物粒子100重量部を基準に2ないし30重量部、または5ないし15重量部である。このような含量範囲を満足する場合、無機物の脱離のような問題点が防止され、過量のバインダー高分子が多孔性基材の空隙を塞いで抵抗が高くなる現象が起きず、多孔性コーティング層の多孔度を向上させることができる。
【0057】
本発明の一態様によるセパレータにおいて、多孔性コーティング層のパッキング密度Dは、多孔性基材の単位面積(m2)当り1μmの高さでローディングされる多孔性コーティング層の密度で定義できるが、このとき、Dは、例えば0.40×Dinorg≦D≦0.70×Dinorgまたは0.50×Dinorg≦D≦0.70×Dinorgの範囲であり得る。
【0058】
ここで、D=(Sg−Fg)/(St−Ft)であり、Sgは多孔性コーティング層が多孔性基材に形成されたセパレータの単位面積(m2)当り重さ(g)であり、Fgは多孔性基材の単位面積(m2)当り重さ(g)であり、Stは多孔性コーティング層が多孔性基材に形成されたセパレータの厚さ(μm)であり、Ftは多孔性基材の厚さ(μm)であり、Dinorgは使用された無機物粒子の密度(g/m2×μm)である。もし、使用された無機物粒子の種類が二種以上であれば、使用されたそれぞれの無機物粒子の密度と使用分率を反映してDinorgを算出する。
【0059】
Dがこのような範囲を満足する場合、多孔性コーティング層の構造が緩んでしまい多孔性基材の熱収縮の抑制機能が低下するか、又は、機械的衝撃に対する抵抗性が低下するという問題を防止でき、パッキング密度の増加によって物性と多孔性コーティング層の多孔度が向上し、セパレータの電気伝導度が改善できる。
【0060】
無機物粒子とバインダー高分子とで構成される多孔性コーティング層の厚さには特に制限がないが、例えば、0.5ないし10μm、または1ないし7μmの範囲であり得る。
【0061】
また、本発明の一態様によるセパレータにおいて、多数の気孔を有する多孔性基材としては、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルファイド、ポリエチレンナフタレンのうち少なくとも何れか一種で形成された多孔性基材のように、通常電気化学素子の多孔性基材として使用可能なものであれば制限なく使用できる。多孔性基材としては、膜(membrane)や不織布の形態を全て使用することができる。多孔性基材の厚さは特に制限されないが、例えば、5ないし50μmであり得、多孔性基材に存在する気孔の大きさ及び気孔度も特に制限されないが、例えば、それぞれ0.01ないし50μm及び10ないし95%であり得る。
以下、本発明の一態様による多孔性コーティング層がコーティングされたセパレータの製造方法の一例を説明するが、ここに限定されることはない。
【0062】
まず、上述した第1単量体ないし第5単量体の混合物を窒素ガスが還流する反応器に投入し、その後、アセトン、エチルアセテートのような溶剤を投入する。次いで、酸素除去のために窒素ガスをパージングした後、反応器の温度を48ないし52℃に維持し、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のような重合反応開始剤及びノーマルドデシルメルカプタンのような重合調節剤を投入して24ないし48時間重合反応をさせる。反応が完了すれば、アセトンなどで希釈してアクリル系重合体を得る。
次に、このようにして得られたアクリル系共重合体とイソシアネート系架橋剤を溶媒に溶解させ、バインダー高分子溶液を製造する。
【0063】
次いで、バインダー高分子の溶液に無機物粒子を添加して分散させる。溶媒としては、使用しようとするバインダー高分子と溶解度指数が類似し、沸点が低いものを選択することができる。これは均一な混合と、以降の溶媒除去を容易にするためである。使用可能な溶媒の非制限的な例としては、アセトン、テトラハイドロフラン、メチレンクロライド、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、シクロヘキサン、水またはこれらの混合体などが挙げられる。バインダー高分子溶液に無機物粒子を添加した後、無機物粒子の破砕を行うことができる。このとき、破砕時間は1ないし20時間が適切であり、破砕された無機物粒子の粒度は、上述したように、0.001ないし10μmであり得る。破砕方法としては通常の方法を使用でき、例えばボールミル(ball mill)法が使用できる。
【0064】
その後、無機物粒子が分散したバインダー高分子の溶液を10ないし80%の湿度条件で多孔性基材にコーティングし、70ないし100℃の温度条件で5ないし15分、または5ないし10分間乾燥及び硬化反応させる。
【0065】
無機物粒子が分散したバインダー高分子の溶液を多孔性基材上にコーティングする方法としては、当業界に周知の通常のコーティング方法を使用でき、例えば、ディップコーティング、ダイコーティング、ロールコーティング、コンマコーティングまたはこれらの混合方式などの多様な方式を使用できる。また、多孔性コーティング層は多孔性基材の両面共にまたは片面のみに選択的に形成することができる。
【0066】
図1によれば、本発明の一態様によって、多数の気孔を有する多孔性基材1の少なくとも一面に、無機物粒子3とバインダー高分子5との混合物をコーティングし、硬化及び乾燥して形成された多孔性コーティング層を備えたセパレータ10が示されている。
【0067】
このように製造された本発明のセパレータは、電気化学素子のセパレータとして使用することができる。すなわち、カソードとアノードとの間に介在させるセパレータとして本発明の一態様によるセパレータを有用に使用することができる。
【0068】
電気化学素子は、電気化学反応を行うあらゆる素子を含み、具体的には、あらゆる種類の一次、二次電池、燃料電池、太陽電池またはスーパーキャパシタ素子のようなキャパシタなどが挙げられる。特に、前記二次電池のうちリチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池またはリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池が望ましい。
【0069】
電気化学素子は当技術分野で周知の通常の方法で製造でき、例えば、カソードとアノードとの間に上述したセパレータを介在させて組み立てた後、電解液を注入することで製造することができる。
【0070】
本発明の一態様によるセパレータと共に適用される電極としては、特に制限されず、当業界で周知の通常の方法で電極活物質を電極電流集電体に結着した形態で製造することができる。
【0071】
前記電極活物質のうちカソード活物質の非制限的な例としては、従来電気化学素子のカソードに使用される通常のカソード活物質が使用でき、特にリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物、またはこれらを組み合わせたリチウム複合酸化物を使用することができる。アノード活物質の非制限的な例としては、従来電気化学素子のアノードに使用される通常のアノード活物質が使用でき、特にリチウム金属またはリチウム合金、炭素、石油コーク(petroleum coke)、活性化炭素、グラファイトまたはその他炭素類などのようなリチウム吸着物質などを使用することができる。
【0072】
カソード電流集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケル、またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがあり、アノード電流集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケル、銅合金、またはこれらの組合せによって製造されるホイルなどがある。
【0073】
本発明の一態様による電気化学素子で使用できる電解液は、A+-のような構造の塩であり、A+はLi+、Na+、K+のようなアルカリ金属陽イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含み、B-はPF6-、BF4-、Cl-、Br-、I-、ClO4-、AsF6-、CH3CO2-、CF3SO3-、N(CF3SO22-、C(CF2SO23-のような陰イオンまたはこれらの組合せからなるイオンを含む塩を、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ‐ブチロラクトンまたはこれらの混合物からなる有機溶媒に溶解または解離したものであるが、これらに限定されることはない。
【0074】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び求められる物性に応じて、電池製造工程のうち適切な段階において行えばよい。すなわち、電池組立ての前または電池組立ての最終段階などにおいて注入すればよい。
【0075】
本発明の一態様によれば、セパレータを電池に適用する工程は、一般的な工程である巻取(winding)の外、セパレータと電極との積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程を用いることができる。本発明の一態様によるセパレータは、耐剥離性に優れるため、上述した電池組立て工程で無機物粒子が脱離し難い。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0077】
アクリル系共重合体の製造
製造例1
窒素ガスが還流し、容易に温度調節できるように冷却装置を設けた1Lの反応器にエチルアクリレート55.5重量部、アクリロニトリル15重量部、N,N‐ジメチルアクリルアミド20重量部、2‐(ジメチルアミノ)エチルアクリレート5重量部、4‐ヒドロキシブチルアクリレート4重量部、アクリル酸0.5重量部を含む単量体混合物を投入し、次いで溶剤としてアセトン100重量部を投入した。その後、酸素除去のために窒素ガスを1時間パージングした後、温度を50℃に維持した。次いで、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03重量部及び重合調節剤としてノーマルドデシルメルカプタン(DDM)0.05重量部を投入した後、24時間反応させた。反応終了の後、反応結果物をアセトンで希釈して、固形分の濃度が25重量%であって、重量平均分子量が330,000g/molであるアクリル系共重合体を製造した。
【0078】
製造例2ないし9
下記表1に示された含量比(重量比)の単量体を使用して、前記製造例1と同様の方法で製造例2ないし9のアクリル系共重合体を製造した。このようにして製造された共重合体の重量平均分子量を下記表1に示した。また、各単量体の数値は重量部を示す。
【0079】


【表1】
【0080】
表1において、DMAAmはN,N‐ジメチルアクリルアミドであり、ANはアクリロニトリルであり、DMAEAは2‐ジメチルアミノエチルアクリレートであり、DMAPAは3‐ジメチルアミノプロピルアクリレートであり、AAはアクリル酸であり、HBAは4‐ヒドロキシブチルアクリレートであり、EAはエチルアクリレートであり、BAはn‐ブチルアクリレートである。
【0081】
セパレータの製造
実施例1.無機物粒子/バインダー高分子スラリーがコーティングされたセパレータ
製造例1のアクリル系共重合体100重量部とイソシアネート系架橋剤としてトリレンジイソシアネート付加物6.8重量部とをアセトン1,674重量部に溶解させ、6重量%のバインダー高分子溶液を製造した。製造されたバインダー高分子溶液13重量部と無機物粒子であるAl23 15重量部とを混合してバインダー高分子/無機物粒子=5/95の重量比を有するスラリーを製造し、ディップコーティング方式で厚さ12μmのポリエチレン多孔性膜(気孔度45%)の両面にコーティングして、80℃の乾燥オーブンで10分間硬化及び乾燥を行った。最終的に、一面に形成されたコーティング層の厚さが約2μmになるように調節されたセパレータを製造した。
【0082】
実施例2ないし7
下記表2に示された組成のスラリー、乾燥及び硬化温度、時間を適用した点を除き、実施例1と同様の方法でセパレータを製造した。
【0083】
比較例1ないし7
下記表2に示した組成のスラリー、乾燥及び硬化温度、時間を適用した点を除き、実施例1と同様の方法でセパレータを製造した。
【0084】
【表2】
【0085】
試験例1.セパレータの性能評価
製造されたセパレータを50mm×50mmに裁断した後、下記の方法によって接着力、通気度、熱安定性、耐電解液性、多孔性コーティング層のパッキング密度Dを測定し、下記表3に示した。
【0086】
耐電解液性は、前記実施例及び比較例で製造されたセパレータを横1cm×縦5cmの大きさに裁断し、電解液(エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=1/2(体積比)、リチウムヘキサフルオロフォスフェート(LiPF6 1モル)内に浸漬した後、取り出してコーティング層とポリオレフィン多孔性膜との間の界面における分離程度を面積で計算した。
◎:コーティング層と多孔性膜との分離なし
○:コーティング層と多孔性膜との分離5%未満
×:コーティング層と多孔性膜との分離5%以上
【0087】
接着力は、前記実施例及び比較例で製造されたセパレータを長さ100mm、幅15mmに裁断した後、両面テープが貼り付けられたガラス上に付着して試料を用意した。引張試験機(texture analyzer、Stable micro systems社製)を用いてコーティング層とポリオレフィン多孔性膜との界面を引張速度0.3m/minで剥離して値を測定した。各試料は5回以上測定して平均値を求めた。
通気度は、前記実施例及び比較例で製造されたセパレータに対し、空気100mlが前記セパレータを完全に通過するのにかかる時間(s)で評価した。
熱安定性は、前記実施例及び比較例で製造されたセパレータを横5cm×縦5cmの大きさに裁断し、150℃で30分間保管した後、寸法の変化を測定した。
○:横及び縦の寸法変化が30%未満の場合
×:横及び縦の寸法変化が30%以上の場合
【0088】
多孔性コーティング層のパッキング密度Dは、多孔性基材の単位面積(m2)当り1μmの高さでローディングされる多孔性コーティング層の密度であり、下記式で求めた。
D=(Sg−Fg)/(St−Ft)
【0089】
Sgは多孔性コーティング層が多孔性基材に形成されたセパレータの単位面積(m2)当り重さ(g)であり、Fgは多孔性基材の単位面積(m2)当り重さ(g)であり、Stは多孔性コーティング層が多孔性基材に形成されたセパレータの厚さ(μm)であり、Ftは多孔性基材の厚さ(μm)である。
【0090】
電気抵抗は、前記実施例及び比較例で製造されたセパレータに電解液(EC:DMC=1:2体積%、LiPF6 1.0モル)を注入してコイン型半電池を製作し、前記コイン型半電池の抵抗を測定した。
【0091】
【表3】
【0092】
リチウム二次電池の製造
実施例8
アノードの製造
アノード活物質として炭素粉末、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)、導電材としてカーボンブラックをそれぞれ96重量%、3重量%、1重量%にし、溶剤であるN‐メチル‐2ピロリドン(NMP)に添加してアノード混合物スラリーを製造した。前記アノード混合物スラリーを厚さ10μmのアノード集電体である銅(Cu)薄膜に塗布、乾燥し、ロールプレス(roll press)を行ってアノードを製造した。
【0093】
カソードの製造
カソード活物質としてリチウムコバルト複合酸化物92重量%、導電材としてカーボンブラック4重量%、バインダーとしてPVDF 4重量%を溶剤であるN‐メチル‐2ピロリドン(NMP)に添加してカソード混合物スラリーを製造した。前記カソード混合物スラリーを厚さ20μmのカソード集電体のアルミニウム(Al)薄膜に塗布、乾燥し、ロールプレスを行ってカソードを製造した。
【0094】
リチウム二次電池の製造
実施例1で製造されたセパレータを、上記のようにして製造されたアノードとカソードとの間に積層(stacking)方式を用いて組み立て、電解液(エチレンカーボネート(EC)/エチルメチルカーボネート(EMC)=1/2(体積比)、リチウムヘキサフルオロフォスフェート(LiPF6)1モル)を注入してリチウム二次電池を製造した。
【0095】
実施例9ないし14
実施例2ないし7のセパレータをそれぞれ使用した点を除き、実施例8と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0096】
比較例8ないし14
比較例1ないし7のセパレータをそれぞれ使用した点を除き、実施例8と同様の方法でリチウム二次電池を製造した。
【0097】
試験例2.リチウム二次電池の性能評価
ホットボックス(Hot Box)評価
前記実施例8ないし14及び比較例8ないし14で製造されたセパレータを用いて製造した電池を完全に充電した状態で、150℃または160℃で1ないし2時間保管しながら、電池の安全性(爆発)如何を観察し、下記表4に示した。
○:爆発しなかった場合
×:爆発した場合
【0098】
【表4】
【符号の説明】
【0099】
1 多孔性基材
3 無機物粒子
5 バインダー高分子
10 セパレータ
図1