(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6120368
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】多数個取り配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20170417BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20170417BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20170417BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
H05K1/02 G
H01L23/12 D
H05K1/02 J
H05K3/00 X
H05K3/46 Q
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-127199(P2013-127199)
(22)【出願日】2013年6月18日
(65)【公開番号】特開2015-2307(P2015-2307A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年4月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿野 清治
【審査官】
内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−108482(JP,A)
【文献】
特開平10−004153(JP,A)
【文献】
特開2000−012989(JP,A)
【文献】
特開2009−194000(JP,A)
【文献】
特開2002−057249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00 〜 1/02
H05K 3/00
H05K 3/46
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が積層された多層基板と、
上記多層基板の中央部に位置し、境界線によって区切られた配線基板領域が縦横に配列された製品領域と、
上記製品領域の外周に位置し、めっき電極を有する捨て代領域と、
上記絶縁層のうちの第1絶縁層上に形成されて、上記境界線の左右に交互に連続して配置された折り返しパターンからなる蛇行領域を有すると共に、少なくとも一端が上記めっき電極に接続された第1連結導体と、
上記絶縁層のうちの第2絶縁層上に形成されて、上記境界線の左右に交互に連続して配置された折り返しパターンからなる蛇行領域を有すると共に、少なくとも一端が上記めっき電極に接続された第2連結導体と、
上記第1絶縁層上に形成されて一端が上記第1連結導体の折り返しパターンの1つに接続された配線導体と、
上記第2絶縁層上に形成されて一端が上記第2連結導体の折り返しパターンの1つに接続された配線導体とを有する多数個取り配線基板において、
上記第1連結導体と第2連結導体のうちの少なくとも一方は上記配線導体に接続されない折り返しパターンを有し、
上記配線導体に接続されない折り返しパターンは同一配線基板領域内の異なる絶縁層上に形成された折り返しパターンにビアで接続されていることを特徴とする多数個取り配線基板。
【請求項2】
上記第1連結導体を、上記蛇行領域と、上記第1絶縁層上の縦の境界線と横の境界線の交点を囲むループとで形成し、
上記第2連結導体を、上記蛇行領域と、上記第2絶縁層上の縦の境界線と横の境界線の交点を囲むループとで形成し、
上記第1連結導体のループと第2連結導体のループとをビアで接続したことを特徴とする請求項1に記載の多数個取り配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子や水晶振動子などの電子部品を収容するための配線基板となる領域が複数個配列された多数個取り配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、半導体素子や水晶振動子等の電子部品を収容するための電子部品収納用パッケージに用いられる小型の配線基板50を示しており、酸化アルミニウム等のセラミックスからなる絶縁層51a乃至51dを複数積層して成り、上面に電子部品52を収容するためのキャビティ53を有する略四角形状の絶縁基体51と、キャビティ53内の段差54上に設けられた複数の配線導体55と、絶縁層51a乃至51cを貫通し一端が段差54上の配線導体55に接続されたビア56と、ビア56を介して段差上の配線導体55に接続された絶縁基体51の下面57の配線導体55とを有している。
なお、近似の電子装置の配線密度向上の要求に伴い、キャビティ53内に複数の段差54を設け、それぞれの段差54上に複数の配線導体55を設けることが行われている。キャビティ53内に配線導体形成用の段差54を複数設けることにより、より多くの配線導体55を絶縁基体51内に形成することができる。
このような段差54上の配線導体55の露出表面には、配線導体55が酸化腐食するのを防止するとともに配線導体55と電子部品52との電気的な接続を良好なものとするために、例えば厚みが1〜10μm程度のニッケルめっきと厚みが0.1〜3μm程度の金めっきとからなるめっき層58が電解めっき法により被着されている。この段差54上の配線導体55とめっき層58とで内部電極59を構成している。
同様に、下面57の配線導体55にも、配線導体55が酸化腐食するのを防止するとともに外部電気回路基板65の実装パッド66との電気的な接続を良好なものとするために、例えば厚みが1〜10μm程度のニッケルめっきと厚みが0.1〜3μm程度の金めっきとからなるめっき層58が電解めっき法により被着されている。この下面57の配線導体55とめっき層58とで外部電極60を構成している。
【0003】
この配線基板50によれば、絶縁基体51のキャビティ53内に電子部品52を収容するとともに、電子部品52の電極61をキャビティ53内の内部電極59にボンディングワイヤ62を介して電気的に接続し、しかる後、絶縁基体51上面のキャビティ外周63に蓋体64を接合させて電子部品52を気密に収容することによって製品としての電子装置となり、この電子装置は、外部電極60を外部電気回路基板65の実装パッド66に半田を介して接続することにより外部電気回路基板66に実装されるとともに電子部品52の電極61が外部電気回路に電気的に接続される。
【0004】
このような配線基板50は近時の電子装置の小型化の要求に伴い、その大きさが小さなものとなってきており、多数個の配線基板の取り扱いを容易とするために、一枚の広面積のセラミック多層基板に多数個の配線基板を縦横に配置した、いわゆる多数個取り配線基板の形態で製作されている。
【0005】
図10及び
図11は多数個取り配線基板の例を示し
図10は平面図、
図11は
図10のA−A線に沿った断面図である。多数個取り配線基板70は複数の絶縁層71a乃至71dを積層して成るセラミック多層基板71で構成される。セラミック多層基板71の中央部には分割後に配線基板となる複数の配線基板領域72が縦横に配され、外周には分割時に配線基板領域72から切り離される捨て代領域85が形成されている。
配線基板領域72は各々がその上面に電子部品を収容するためのキャビティ73を有するとともに、キャビティ73内に複数の段差74が設けられ、各々の段差74上に複数の配線導体75が設けられている。配線導体75は絶縁層71a乃至71cを貫通するビア76を介して配線基板領域72の下面77の配線導体75に接続されている。なお、
図10、
図11の多数個取り配線基板70では、キャビティ73内に2つの段差74を設け、各々の段差74上にそれぞれ配線導体75を設けている。
捨て代領域85の側面には切り欠き86が形成され、切り欠き86の内壁に沿って導体層からなるめっき電極87が形成されている。このめっき電極87をめっき用電源に接続することにより、めっき層を被着させるすべての配線導体75に電解めっきのための電荷が印加される。
【0006】
各配線導体75の露出表面に電解めっき法によりニッケルめっき層や金めっき層を被着させるには、めっき層を被着させるすべての配線導体75をめっき電極87に接続させる必要がある。
すべての配線導体75をめっき電極87に接続させる例として、特許文献1の
図2および
図3には、すねいく配線16(千鳥配線)等の技術を駆使し、各電極部の入出力端子14を連12のまま同時にめっきを施してから、連12をブレイクあるいは切断により単品20とすることで、このすねいく配線16を分断する技術が記載されている。
【0007】
図12は、特許文献1のすねいく配線を用いて多数個取り配線基板70の各配線導体75をめっき電極87に接続する方法を説明する平面図で、
図12(a)は絶縁層71b上の配線導体75と絶縁層71b上の配線導体75に接続される下面77の配線導体75をめっき電極87に接続する方法を説明するための部分平面図、
図12(b)は絶縁層71c上の配線導体75と絶縁層71c上の配線導体75に接続される下面77の配線導体75をめっき電極87に接続する方法を説明する部分平面図である。
図12(a)において、絶縁層71b外周の捨て代領域85には、四角枠状のめっき用共通導体枠90が形成されている。このめっき用共通導体枠90はめっき電極87に接続されている。隣接する配線基板領域72と配線基板領域72の間には、境界線84の左右に交互に折り返しパターンを描きながら蛇行し、両端がめっき用共通導体枠90に接続された連結導体91が形成されている。
各配線基板領域72の中央には、キャビティ73を形成するための開口92が形成され、開口92の周囲から配線基板領域72の境界線84に伸びる配線導体75が形成されている。配線導体75のうち、捨て代領域85との境界線84に伸びるものは引出し線93を介してめっき用共通導体枠90に接続されている。配線導体75のうち、隣接する配線基板領域72と配線基板領域72との境界線84に伸びるものは、連結導体91に接続されている。
このようにして、絶縁層72b上の配線導体75は、引出し線93、連結導体91、めっき用共通導体枠90を介してめっき電極87に接続される。同様に、
図12(b)に示す絶縁層71c上の配線導体75も引出し線93、めっき用連結導体91、めっき用共通導体枠90を介してめっき電極87に接続される。
また、下面77の配線導体75は、ビア76を介して絶縁層72b上の配線導体75か絶縁層72c上の配線導体75のいずれかに接続されていることより、めっき電極87に接続されることになる。このめっき電極87をめっき用電源に接続することにより、配線導体75の露出面に電解めっきによるめっき金属層が被着される。
【0008】
なお、連結導体91を介して電気的に接続されている各配線基板領域72の隣接する配線導体75同士は、セラミック多層基板71を各配線基板領域72に分割した後、連結導体91が折り返しパターン単位に分断されることにより、それぞれが互いに電気的に独立することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−214832
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
絶縁層71b上の配線導体75と絶縁層71c上の配線導体75とでは、通常配線導体の数、幅、長さ等が異なる。このため、絶縁層71b上の連結導体91とそれに接続される配線導体75で構成される絶縁層71bのめっき用回路の電気抵抗と、絶縁層71c上の連結導体91とそれに接続される配線導体75で構成される絶縁層71cのめっき用回路の電気抵抗とは異なったものとなる。この電気抵抗の差は1つの配線基板領域単位では小さいものであっても、近年の生産効率を向上させる目的で多数の配線基板領域が形成された多数個取り配線基板では、絶縁層71bのめっき用回路の電気抵抗と絶縁層71cのめっき用回路の電気抵抗との差は大きなものになってしまう。
そして、この多数個取り配線基板70を電解めっき浴に浸漬するとともにめっき電極87をめっき用電源に接続することによって、全ての配線導体75にめっき金属層を被着させると、絶縁層71b上の連結導体91に接続された配線導体75に被着されるめっき金属層の厚みと、絶縁層71c上の連結導体91に接続された配線導体75に被着されるめっき金属層の厚みの差が大きなものとなってしまい、全ての配線導体75に所定の厚みのめっき金属層を被着させることが困難であるという問題点を有していた。
【0011】
本発明はかかる従来の問題点に鑑み案出されたものであり、その目的は、各配線導体に被着されるめっき金属層の厚みのばらつきを小さいものとして、全ての配線導体に所定の厚みのめっき金属層を電解めっき法により被着させることが可能な多数個取り配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明の請求項1に記載の多数個取り配線基板は、
複数の絶縁層が積層された多層基板と、
上記多層基板の中央部に位置し、境界線によって区切られた配線基板領域が縦横に配列された製品領域と、
上記製品領域の外周に位置し、めっき電極を有する捨て代領域と、
上記絶縁層のうちの第1絶縁層上に形成されて、上記境界線の左右に交互に連続して配置された折り返しパターンからなる蛇行領域を有すると共に、少なくとも一端が上記めっき電極に接続された第1連結導体と、
上記絶縁層のうちの第2絶縁層上に形成されて、上記境界線の左右に交互に連続して配置された折り返しパターンからなる蛇行領域を有すると共に、少なくとも一端が上記めっき電極に接続された第2連結導体と、
上記第1絶縁層上に形成されて一端が上記第1連結導体の折り返しパターンの1つに接続された配線導体と、
上記第2絶縁層上に形成されて一端が上記第2連結導体の折り返しパターンの1つに接続された配線導体とを有する多数個取り配線基板において、
上記第1連結導体と第2連結導体のうちの少なくとも一方は上記配線導体に接続されない折り返しパターンを有し、
上記配線導体に接続されない折り返しパターンは同一配線基板領域内の異なる絶縁層上に形成された折り返しパターンにビアで接続されていることを特徴とする多数個取り配線基板である。
【0013】
また、上記課題を解決するための本発明の請求項2に記載の多数個取り配線基板は、
上記第1連結導体を、上記蛇行領域と、上記第1絶縁層上の縦の境界線と横の境界線の交点を囲むループとで形成し、
上記第2連結導体を、上記蛇行領域と、上記第2絶縁層上の縦の境界線と横の境界線の交点を囲むループとで形成し、
上記第1連結導体のループと第2連結導体のループとをビアで接続したことを特徴とする請求項1に記載の多数個取り配線基板である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の多数個取り配線基板によれば、第1連結導体と第2連結導体のうちの少なくとも一方は配線導体に接続されない折り返しパターンを有し、上記配線導体に接続されない折り返しパターンは同一配線基板領域内の異なる絶縁層上に形成された折り返しパターンにビアで接続されている。
このため、第1連結導体とそれに接続される配線導体とで構成されるめっき用回路の電気抵抗と、第2連結導体とそれに接続される配線導体とで構成されるめっき用回路の電気抵抗との差をきわめて小さいものとすることができる。したがって、第1絶縁層上の配線導体に被着されるめっき厚みと第2絶縁層上の配線導体に被着されるめっき厚みの差をきわめて小さいものとすることができる。
また、ビアで接続されている第1絶縁層上の折り返しパターンと第2絶縁層上の折り返しパターンの両方に配線導体が接続されていると、多層基板を各配線基板領域に分割した後も、上記ビアを介して同一配線基板領域内の異なる絶縁層上の配線導体同士が分断されず短絡されたままとなる。このためビアで互いに接続される折り返しパターンの少なくとも一方には配線導体を接続させないようにすることにより、多層基板を各配線基板領域に分割した後に上記ビアを介して同一配線基板領域内の異なる絶縁層上の配線導体同士が短絡されたままにならないようにしている。
【0015】
本発明の請求項2に記載の多数個取り配線基板によれば、請求項1に記載の第1連結導体と第2連結導体のそれぞれにループを形成するとともに、第1連結導体のループと第2連結導体のループをビアで接続している。
このため、第1連結導体とそれに接続される第1配線導体とで構成されるめっき用回路の電気抵抗と、第2連結導体とそれに接続される第2配線導体とで構成されるめっき用回路の電気抵抗との差をさらに小さいものとすることができる。したがって、第1絶縁層上の配線導体に被着されるめっき厚みと第2絶縁縁層上の配線導体に被着されるめっき厚みの差をさらに小さいものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態1に係る多数個取り配線基板の平面図
【
図3】
図3(a)は
図1の多数個取り配線基板10の絶縁層1bの部分平面図、
図3(b)は
図1の多数個取り配線基板10の絶縁層1cの部分平面図
【
図4】
図4(a)は
図3(a)の第1連結導体21−1の構成を説明するための部分拡大図、
図4(b)は
図3(b)の第2連結導体21−2の構成を説明するための部分拡大図
【
図5】
図5(a)は本発明の実施形態2に係る多数個取り配線基板10の絶縁層1bの部分平面図、
図5(b)は絶縁層1cの部分平面図
【
図6】
図6(a)は
図5(a)の第1連結導体21−1の構成を説明するための部分拡大図、
図6(b)は
図5(b)の第2連結導体21−2の構成を説明するための部分拡大図
【
図7】本発明の実施形態3に係る多数個取り配線基板の部分拡大図
【
図8】本発明の実施形態1の変形例を示す部分拡大図
【
図9】電子部品収納用パッケージに用いられる小型の配線基板の断面図
【
図12】
図12(a)は
図10の多数個取り配線基板70の絶縁層71bの部分平面図、
図12(b)は
図10の多数個取り配線基板70の絶縁層71cの部分平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態1]
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態の一例を説明する。
図1は本発明の多数個取り配線基板の平面図、
図2は
図1のA−A線に沿った断面図を示し、アルミナ等のセラミックス焼結体からなる複数の絶縁層1a乃至1dが積層されたセラミック多層基板1で構成される。セラミック多層基板1の中央部には分割後に配線基板となる複数の配線基板領域2が縦横に配され、外周には分割時に配線基板領域2から切り離される捨て代領域15が形成されている。配線基板領域2の各々はその上面に電子部品を収容するためのキャビティ3を有するとともに、キャビティ3内に複数の段差4が設けられている。各々の段差4上には、タングステンやモリブデン等の導体ペーストの印刷・焼付けによって形成される複数の配線導体5が設けられている。配線導体5は絶縁層1a乃至1cを貫通するビア6を介して配線基板領域2の下面7の配線導体5に接続されている。
そして、各配線導体5の露出表面には例えば厚みが1〜10μm程度のニッケルめっき層と厚みが0.1〜3μm程度の金めっき層とからなるめっき層8が電解めっき法により被着されている。
なお、
図1、
図2の多数個取り配線基板10では、キャビティ3内に2つの段差4―1、4−2を設け、各々の段差上にそれぞれ第1配線導体5−1、第2配線導体5−2を設けている。
捨て代領域15の側面には切り欠き16が形成され、切り欠き16の内壁に沿って導体層からなるめっき電極17が形成されている。このめっき電極17をめっき用電源に接続することにより、すべての配線導体の露出面に電解めっきのための電荷が印加される。
【0018】
次に、各配線導体5に電解めっき法によりニッケルめっき層や金めっき層を被着させるためにすべての配線導体5をめっき電極17に接続させる本実施例の手順について、
図3、
図4を用いて説明する。
図3(a)は本実施例に係る多数個取り配線基板10の絶縁層1bの部分平面図、
図3(b)は絶縁層1cの部分平面図、
図4(a)は第1連結導体21−1の構成を説明するための部分拡大図、
図4(b)は第2連結導体21−2の構成を説明するための部分拡大図である。
図3(a)において、絶縁層1b外周の捨て代領域15には、四角枠状のめっき用共通導体枠20が形成されている。このめっき用共通導体枠20はめっき電極17に接続されている。隣接する配線基板領域2と配線基板領域2の間には、境界線14の左右に交互に連続して配置された略コの字状の折り返しパターン24からなる蛇行領域を有する第1連結導体21−1が形成され、第1連結導体21−1の両端は引出し線23を介してめっき用共通導体枠20に接続されている。尚、引出し線23の数は
図3に示すように1本でも構わないし、
図6のように2本に分岐する形状でも構わない。
各配線基板領域2の中央には、キャビティ3を形成するための開口22が形成され、開口22の周囲から配線基板領域2の境界線14に伸びる第1配線導体5−1が形成されている。第1配線導体5−1はビア6を介して配線基板領域2の下面7の配線導体5に接続されている。
第1配線導体5−1のうち、捨て代領域15との境界線14に伸びるものは引出し線23を介してめっき用共通導体枠20に接続されている。第1配線導体5−1のうち、隣接する配線基板領域2と配線基板領域2との境界線14に伸びるものは、第1連結導体21−1の折り返しパターン24a(
図4参照)の内の1つに接続されている。
このようにして、第1配線導体5−1と、第1配線導体5−1にビア6を介して接続される下面7の配線導体5とは、引出し線23、第1連結導体21−1、めっき用共通導体枠20を介してめっき電極17に接続される。
同様に、
図3(b)に示す第2配線導体5−2と、第2配線導体5−2にビア6を介して接続される下面7の配線導体5とは、引出し線23、第2連結導体21−2、めっき用共通導体枠20を介してめっき電極17に接続される。
このめっき電極17をめっき用電源に接続することにより、配線導体5の露出面に電解めっきによるめっき層8が被着される。そして、連結導体21−1、21−2を介して電気的に接続されている各配線基板領域2の隣接する配線導体5同士は、セラミック多層基板1を各配線基板領域2に分割した後、連結導体21−1、21−2が折り返しパターン単位に分断されることにより、それぞれが互いに電気的に独立することとなる。
【0019】
多数個取り配線基板10は、
図4(a)に示すように、第1連結導体21−1が、第1配線導体5−1に接続される折り返しパターン24aと、第1配線導体5−1に接続されない折り返しパターン24bを有している。同様に、
図4(b)に示すように、第2連結導体21−2が、第2配線導体5−2に接続される折り返しパターン24cと、第2配線導体5−2に接続されない折り返しパターン24dを有している。そして、第1配線導体5−1に接続されない折り返しパターン24bと第2配線導体5−2に接続されない折り返しパターン24dとは平面視で略同位置に形成されるとともに、ビア25で接続されている。
このため、第1連結導体21−1とそれに接続される第1配線導体5―1とで構成されるめっき用回路と、第2連結導体21−2とそれに接続される第2配線導体5−2とで構成されるめっき用回路をビア25で短絡させているので、上記2つのめっき用回路の電気抵抗の差をきわめて小さいものとすることができる。したがって、第1配線導体5−1に被着されるめっき厚みと第2配線導体5−2に被着されるめっき厚みの差をきわめて小さいものとすることができる。
また、ビア25で接続されている折り返しパターン24bと折り返しパターン24dに配線導体5(5−1、5−2)が接続されていると、セラミック多層基板1を各配線基板領域2に分割した後も、ビア25を介して同一配線基板領域内の異なる絶縁層上の配線導体5−1、5−2同士が分断されず短絡されたままとなる。このためビア25で互いに接続される折り返しパターン24b、24dには配線導体5−1、5−2を接続させないようにすることにより、多層基板1を各配線基板領域2に分割した後にビア25を介して同一配線基板領域内の異なる絶縁層上の配線導体5−1、5−2同士が短絡されたままにならないようにしている。
【0020】
[実施形態2]
実施形態1では、第1連結導体21−1と第2連結導体21−2の両方に、配線導体5に接続されない折り返しパターン24b、24dを形成し、折り返しパターン24b、24d同士をビア25で接続していた。これに対して実施形態2では、
図5乃至
図6のように、第1連結導体21−1は、第1配線導体5−1に接続される折り返しパターン24aと、第1配線導体5−1に接続されない折り返しパターン24bを有しているのに対して、第2連結導体21−2は、第2配線導体5−2に接続される折り返しパターン24cのみを有している。そして、第1配線導体5−1に接続されない折り返しパターン24bは第2配線導体5−2に接続されている折り返しパターン24cにビア25で接続されている。
本実施形態においても、第1連結導体21−1とそれに接続される第1配線導体5―1とで構成されるめっき用回路と、第2連結導体21−2とそれに接続される第2配線導体5−2とで構成されるめっき用回路の電気抵抗の差をきわめて小さいものとすることができ、第1配線導体5−1に被着されるめっき厚みと第2配線導体5−2に被着されるめっき厚みの差をきわめて小さいものとすることができる。
また、本実施形態のように、ビア25で互いに接続される折り返しパターンの一方24bのみに配線導体5−1を接続させないようにすることによっても、多層基板1を各配線基板領域2に分割した後にビア25を介して同一配線基板領域内の異なる絶縁層上の配線導体5−1、5−2同士が短絡されたままにならないようにすることができる。
【0021】
[実施形態3]
実施形態1と実施形態2では、第1連結導体21−1と第2連結導体21−2は、全領域が蛇行領域で形成されていた。これに対して本実施形態では、第1連結導体21−1と第2連結導体21−2を、
図7のように第1蛇行領域26−1、第2蛇行領域26−2と、縦の境界線14yと横の境界線14xの交点27を囲むループ28−1、28−2とで構成し、第1連結導体21−1の第1ループ28−1と第2連結導体21−2の第2ループ28−2をビア29で接続している。
このため、第1連結導体21−1とそれに接続される第1配線導体5−1とで構成されるめっき用回路の電気抵抗と、第2連結導体21−2とそれに接続される第2配線導体5−2とで構成されるめっき用回路の電気抵抗との差をさらに小さいものとすることができる。したがって、第1配線導体5−1に被着されるめっき厚みと第2配線導体5−2に被着されるめっき厚みの差をさらに小さいものとすることができる。
【0022】
(実施例)
まず、
図1乃至
図4に示すめっき前の多数個取り配線基板10を作成した。次に、作成した多数個取り配線基板10の任意の配線基板領域2について、第1内部電極11−1からめっき電極17までの抵抗値と第2内部電極11−2からめっき電極17までの抵抗値を測定した。次に、めっき電極17にめっき用電源を接続して電解めっき法でニッケルめっきを施した後、上記抵抗値を測定した内部電極11−1、11−2に形成されたニッケルめっきの厚みを測定した。結果を表1に示す。
比較例として
図10乃至
図12に示すめっき前の多数個取り配線基板70を作成し、上記の抵抗値を測定した配線基板領域2と同じ位置の配線基板領域72について、絶縁層71b上の内部電極81(第1内部電極11−1に対応)からめっき電極87までの抵抗値と、絶縁層71c上の内部電極81(第2内部電極11−2に対応)からめっき電極87までの抵抗値を測定した。次に、めっき電極87にめっき用電源を接続して電解めっき法でニッケルめっきを施した後、上記抵抗値を測定した内部電極81に形成されたニッケルめっきの厚みを測定した。結果を表1に示す。
【0024】
表1に示すように、実施例の多数個取り配線基板は、比較例に比べて第1内部電極と第2内部電極の抵抗値の差が減少し、第1内部電極に被着されたニッケルめっきの厚みと第2電極に形成されたニッケルめっきの厚みの差が減少していることが確認できた。
【0025】
本実施例ではニッケルめっきを行ったときの厚みばらつきについて説明したが、ニッケルめっきの上に金めっきを行った場合の金めっきの厚みばらつきも低減できる事はいうまでも無い。
【符号の説明】
【0026】
1…セラミック多層基板 1a、1b、1c、1d…絶縁層 2…配線基板領域
3…キャビティ 4、4−1、4−2…段差 5…配線導体 5−1…第1配線導体
5−2…第2配線導体 6…ビア 7…下面 8…めっき層 10…多数個取り配線基板
11−1…第1内部電極 11−2…第2内部電極 12…外部電極
14…境界線 15…捨て代領域 16…切り欠き 17…めっき電極
20…めっき用共通導体枠 21−1…第1連結導体 21−2…第2連結導体
22…開口 23…引出し線 24、24a、24b、24c、24d…折り返しパターン
25…ビア 26−1…第1蛇行領域 26−2…第2蛇行領域 27…交点
28−1…第1ループ 28−2…第2ループ 29…ビア