(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態に係るレジンブレードの整形方法は、保持ステップ(
図2参照)、ドレスステップ(
図3参照)、ブレード形状確認ステップ(
図4参照)、バリ除去ステップ(
図5参照)、及び仕上げ形状確認ステップ(
図6参照)を含む。
【0014】
保持ステップでは、切削装置の保持テーブル(保持手段)に、ドレスボード及び試験片をそれぞれ吸引保持させる。ドレスステップでは、ドレスボードと接触可能な高さに回転するレジンブレードを位置付けた後に、レジンブレードとドレスボードとをスピンドルの軸心方向に相対移動させることで、レジンブレードの先端を平坦に整形する。
【0015】
ブレード形状確認ステップでは、回転するレジンブレードを試験片に切り込ませ、形成された切削痕に基づきレジンブレードの先端の形状を確認する。バリ除去ステップでは、回転するレジンブレードをドレスボードの表面(上面)から所定深さまで切り込ませ、レジンブレードの先端に対応する表裏面に形成されたバリを除去する。
【0016】
仕上げ形状確認ステップでは、回転するレジンブレードを試験片に切り込ませ、形成された切削痕に基づきバリが除去されたか否かを確認する。以下、本実施の形態に係るレジンブレードの整形方法について詳述する。
【0017】
はじめに、本実施の形態に係るレジンブレードの整形方法に使用される切削装置について説明する。
図1は、切削装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、切削装置2は、各構成を支持する基台4を備えている。
【0018】
基台4の上面には、半導体ウェーハ等の被加工物(不図示)を保持するチャックテーブル6が設けられている。チャックテーブル6の上方には、被加工物を切削するブレードユニット8が配置されている。
【0019】
チャックテーブル6の下方には、チャックテーブル6を加工送り方向(X軸方向)に移動させるX軸移動機構(加工送り機構)10が設けられている。X軸移動機構10は、基台4の上面に固定されX軸方向に平行な一対のX軸ガイドレール12を備える。
【0020】
X軸ガイドレール12には、X軸移動テーブル14がスライド可能に設置されている。X軸移動テーブル14の裏面側(下面側)には、ナット(不図示)が固定されており、このナットには、X軸ガイドレール12と平行なX軸ボールネジ16が螺合されている。
【0021】
X軸ボールネジ16の一端部には、X軸パルスモータ18が連結されている。X軸パルスモータ18でX軸ボールネジ16を回転させれば、X軸移動テーブル14は、X軸ガイドレール12に沿ってX軸方向に移動する。
【0022】
X軸移動テーブル14の表面側(上面側)には、支持台20が設けられている。支持台20の中央には、チャックテーブル6が配置されている。チャックテーブル6の周囲には、被加工物を保持する環状のフレーム(不図示)を四方から挟持固定する4個のクランプ22が設けられている。
【0023】
チャックテーブル6は、支持台20の下方に設けられた回転機構(不図示)と連結されており、Z軸(鉛直軸)の周りに回転する。チャックテーブル6の表面は、被加工物を吸引保持する保持面6aとなっている。この保持面6aには、チャックテーブル6の内部に形成された流路(不図示)を通じて吸引源(不図示)の負圧が作用し、被加工物を吸引する吸引力が発生する。
【0024】
X軸移動機構10に隣接して、ブレードユニット8を割り出し送り方向(Y軸方向)に移動させるY軸移動機構(割り出し送り機構)24が設けられている。Y軸移動機構24は、基台4の上面に固定されY軸方向に平行な一対のY軸ガイドレール26を備える。
【0025】
Y軸ガイドレール26には、Y軸移動テーブル28がスライド可能に設置されている。Y軸移動テーブル28は、Y軸ガイドレール26に接する基部28aと、基部28aに対して立設された壁部28bとを備えている。
【0026】
Y軸移動テーブル28の基部28aの裏面側(下面側)には、ナット(不図示)が固定されており、このナットには、Y軸ガイドレール26と平行なY軸ボールネジ30が螺合されている。
【0027】
Y軸ボールネジ30の一端部には、Y軸パルスモータ32が連結されている。Y軸パルスモータ32でY軸ボールネジ30を回転させれば、Y軸移動テーブル28は、Y軸ガイドレール26に沿ってY軸方向に移動する。
【0028】
Y軸移動テーブル28の壁部28bには、ブレードユニット8を鉛直方向(Z軸方向)に移動させるZ軸移動機構34が設けられている。Z軸移動機構34は、壁部28bの側面に固定されZ軸方向に平行な一対のZ軸ガイドレール36を備える。
【0029】
Z軸ガイドレール36には、Z軸移動テーブル38がスライド可能に設置されている。Z軸移動テーブル38の裏面側(壁部28b側)には、ナット(不図示)が固定されており、このナットには、Z軸ガイドレール36と平行なZ軸ボールネジ(不図示)が螺合されている。
【0030】
Z軸ボールネジの一端部には、Z軸パルスモータ40が連結されている。Z軸パルスモータ40でZ軸ボールネジを回転させれば、Z軸移動テーブル38は、Z軸ガイドレール36に沿ってZ軸方向に移動する。
【0031】
Z軸移動テーブル38には、Y軸方向に平行な軸心を備えるスピンドル42(
図3等参照)を回転可能に収容するスピンドルハウジング44が支持されている。スピンドル42の一端側には、円環状のレジンブレード46が装着されている。ここで、レジンブレードとは、レジンを結合材として用いた切削ブレードのことをいう。
【0032】
スピンドル42の他端側には、モータ(不図示)が連結されている。レジンブレード46をこのモータで回転させ、チャックテーブル6に保持された被加工物に切り込ませることで、被加工物は切削される。
【0033】
ところで、上述したレジンブレード46で被加工物を切削し続けると、平坦であったレジンブレード46の先端は摩耗によって変形し、徐々に丸みを帯びてくる。また、レジンブレード46の先端は、偏摩耗することもある。このように変形されたレジンブレード46で被加工物を適切に切削するのは難しいので、変形が許容範囲を超えた段階でレジンブレード46を整形し、先端の形状を回復させる必要がある。
【0034】
本実施の形態の切削装置2は、このレジンブレード46の整形に使用されるドレスボード等を保持する保持テーブル(保持手段)48を、チャックテーブル6と隣接する位置に備えている。
図2は、ドレスボード等を保持する保持テーブル48の構成例、及び保持ステップを模式的に示す斜視図である。
【0035】
保持テーブル48は、略直方体状に形成されており、その上面は、ドレスボード11を吸引保持するドレスボード保持面50と、試験片13を吸引保持する試験片保持面52とに分けられている。
【0036】
ドレスボード保持面50には、ドレスボード11の裏面(下面)11b側を吸引する格子状の吸引溝50aが形成されており、試験片保持面52には、試験片13の裏面(下面)13b側を吸引する格子状の吸引溝52aが形成されている。吸引溝50a及び吸引溝52aは、保持テーブル48の内部に形成された流路(不図示)を通じて吸引源(不図示)と接続されている。
【0037】
この保持テーブル48は、チャックテーブル6と共に支持台20に配置されている。すなわち、保持テーブル48は、X軸移動機構10によって、チャックテーブル6と共に加工送り方向(X軸方向)に移動される。
【0038】
次に、上述した切削装置2を用いて実施されるレジンブレード46の整形方法について説明する。本実施の形態に係るレジンブレード46の整形方法では、まず、切削装置2の保持テーブル48に、ドレスボード11及び試験片13をそれぞれ吸引保持させる保持ステップを実施する。
【0039】
具体的には、
図2に示すように、ドレスボード11の裏面11b側をドレスボード保持面50に接触させるように、ドレスボード11をドレスボード保持面50に載置し、吸引源の負圧を吸引溝50aに作用させる。また、試験片13の裏面13b側を試験片保持面52に接触させるように、試験片13を試験片保持面52に載置し、吸引源の負圧を吸引溝52aに作用させる。
【0040】
ドレスボード保持面50に吸引保持されるドレスボード11は、例えば、ホワイトアランダム(WA)、グリーンカーボランダム(GC)等の砥粒(砥材)を、レジン等の結合材で固めて板状にしたものである。このドレスボード11の表面(上面)11aに回転するレジンブレード46を接触させることで、レジンブレード46の先端を整形できる。
【0041】
試験片保持面52に吸引保持される試験片13は、例えば、シリコン等の材料でなる基板である。この試験片13に回転するレジンブレード46を僅かに切り込ませると、表面(上面)13aにはレジンブレード46の先端の形状に対応する切削痕が形成される。
【0042】
つまり、試験片13の表面13aに形成される切削痕に基づいて、レジンブレード46の先端の形状を確認できる。なお、試験片13の表面13aは鏡面状であることが好ましい。試験片13の表面13aを鏡面状にすることで、形成される切削痕の形状を正確に識別できる。
【0043】
保持ステップの後には、レジンブレードの先端を平坦に整形するドレスステップを実施する。
図3(A)は、ドレスステップを模式的に示す斜視図であり、
図3(B)は、ドレスステップを模式的に示す側面図である。
【0044】
ドレスステップでは、まず、保持テーブル48をX軸移動機構10でX軸方向に移動させると共に、レジンブレード46をY軸移動機構24でY軸方向に移動させ、保持テーブル48に保持されたドレスボード11の外側にレジンブレード46を位置付ける。
【0045】
次に、レジンブレード46をZ軸移動機構34で下降させて、ドレスボード11の表面11aより低い位置にレジンブレード46の先端を位置付ける。そして、回転するレジンブレード46とドレスボード11とを、スピンドル42の軸心方向(Y軸方向)に相対移動させる。
【0046】
これにより、レジンブレード46は、ドレスボード11と接触しながらY軸方向に相対移動する。つまり、レジンブレード46は、ドレスボード11を横切るように相対移動し、ドレスボード11には、
図3(A)に示すようなY軸方向に延びる切削痕11cが形成される。
【0047】
上述した相対移動は、レジンブレード46の切り込み位置や高さ位置を変えて複数回実施されても良い。また、上述した相対移動は、往復移動であることが好ましい。レジンブレード46とドレスボード11とを往復移動させることで、レジンブレード46の先端を適切に平坦化できる。
【0048】
ドレスステップの後には、レジンブレード46の先端の形状を確認するブレード形状確認ステップを実施する。
図4(A)は、ブレード形状確認ステップを模式的に示す側面図であり、
図4(B)及び
図4(C)は、ブレード形状確認ステップで形成された切削痕の例を模式的に示す平面図である。
【0049】
ブレード形状確認ステップでは、まず、保持テーブル48をX軸移動機構10でX軸方向に移動させると共に、レジンブレード46をY軸移動機構24でY軸方向に移動させ、保持テーブル48に保持された試験片13の上方にレジンブレード46を位置付ける。
【0050】
次に、レジンブレード46をZ軸移動機構34で下降させて、試験片13に切り込ませる(チョッパーカット)。これにより、試験片13の表面13aには、
図4(B)及び
図4(C)に示すような切削痕13cが形成される。なお、レジンブレード46の切り込み深さは、切削痕13cを形成できる程度であれば良い。
【0051】
形成された切削痕13cは、レジンブレード46の先端の形状を反映している。そのため、切削痕13cに基づいて、レジンブレード46の先端の形状を確認できる。例えば、
図4(B)に示すような矩形でない切削痕13cは、レジンブレード46の先端が平坦でないことを示す。よって、このような切削痕13cが得られた場合には、ドレスステップを再び実施して、レジンブレード46の先端を平坦に整形する。
【0052】
一方、
図4(C)に示すような略矩形の切削痕13cは、レジンブレード46の先端が十分に平坦化されたことを示す。ただし、
図4(C)に示す切削痕13cの四隅には、レジンブレード46の表面又は裏面に相当する位置から突出した突起部13dが存在している。この突起部13dは、レジンブレード46の先端に対応する表裏面にバリ(突起物)が存在することを示している。
【0053】
そこで、このような場合には、ブレード形状確認ステップの後に、レジンブレード46のバリを除去するバリ除去ステップを実施する。
図5は、バリ除去ステップを模式的に示す側面図である。
【0054】
バリ除去ステップでは、まず、保持テーブル48をX軸移動機構10でX軸方向に移動させると共に、レジンブレード46をY軸移動機構24でY軸方向に移動させ、保持テーブル48に保持されたドレスボード11の上方にレジンブレード46を位置付ける。
【0055】
次に、レジンブレード46をZ軸移動機構34で下降させて、ドレスボード11の表面11aから所定の深さに切り込ませる(チョッパーカット)。これにより、レジンブレード46に形成されたバリが除去される。なお、レジンブレード46の切り込み深さは、バリを適切に除去できる程度であれば良い。
【0056】
バリ除去ステップの後には、レジンブレード46の先端に対応する表裏面からバリが除去されたことを確認する仕上げ形状確認ステップを実施する。
図6(A)は、仕上げ形状確認ステップを模式的に示す側面図であり、
図6(B)は、仕上げ形状確認ステップで形成された切削痕の例を模式的に示す平面図である。
【0057】
仕上げ形状確認ステップは、ブレード形状確認ステップと同様の手順で実施される。すなわち、保持テーブル48をX軸移動機構10でX軸方向に移動させると共に、レジンブレード46をY軸移動機構24でY軸方向に移動させ、保持テーブル48に保持された試験片13の上方にレジンブレード46を位置付ける。
【0058】
次に、レジンブレード46をZ軸移動機構34で下降させて、試験片13に切り込ませる(チョッパーカット)。これにより、試験片13の表面13aには、
図6(B)に示すような切削痕13cが形成される。
【0059】
図6(B)に示す切削痕13cの四隅には、突起部13dが存在しない。これは、バリ除去ステップにおいて、レジンブレード46に形成されたバリが除去されたためである。なお、この仕上げ形状確認ステップにおいて形成される切削痕13cの四隅に突起部13dが存在する場合には、バリ除去ステップを再び実施して、レジンブレード46のバリを除去すれば良い。
【0060】
このように、本実施の形態に係るレジンブレード46の整形方法では、レジンブレード46とドレスボード11とをスピンドル42の軸心方向に相対移動させるドレスステップの後に、回転するレジンブレード46を下降させてドレスボード11の表面(上面)11aから所定深さまで切り込ませるバリ除去ステップを実施する。そのため、ドレスステップでレジンブレード46の表裏面に形成されたバリを、バリ除去ステップで適切に除去することができる。
【0061】
なお、本発明は上記実施の形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施の形態では、ドレスステップ、ブレード形状確認ステップ、バリ除去ステップの順に実施しているが、ドレスステップの後にレジンブレード46の形状を確認する必要がない場合には、ドレスステップに続けてバリ除去ステップを実施しても良い。すなわち、ブレード形状確認ステップを省略しても良い。
【0062】
また、上記実施の形態では、バリ除去ステップの後に仕上げ形状確認ステップを実施しているが、バリ除去ステップの後にレジンブレード46の仕上げ形状を確認する必要がない場合には、仕上げ形状確認ステップを省略しても良い。
【0063】
その他、上記実施の形態に係る構成、方法などは、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。