(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
癌又は自己免疫疾患の治療のための医薬の製造における、CD38に特異的に結合する抗体の使用であって、前記抗体が少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、
a)前記重鎖が配列番号13、14及び15によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続する相補性決定領域(CDR)を含み、前記軽鎖が配列番号16、17及び18によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含むか、又は
b)軽鎖可変領域が配列番号42によって表されるアミノ酸配列を有し、重鎖可変領域が配列番号54によって表されるアミノ酸配列を有し、
前記抗体が、実施例3にしたがい測定した場合に、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不在下でダウディリンパ腫細胞の少なくとも24%を死滅させることができる、使用。
癌又は自己免疫疾患の治療のための医薬の製造における、CD38に特異的に結合する抗体の使用であって、前記抗体が少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、
a)前記重鎖が配列番号19、20及び21によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含み、前記軽鎖が配列番号22、23及び24によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含むか、又は
b)軽鎖可変領域が配列番号44によって表されるアミノ酸配列を有し、重鎖可変領域が配列番号56によって表されるアミノ酸配列を有し、
前記抗体が、実施例3にしたがい測定した場合に、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不在下でダウディリンパ腫細胞の少なくとも24%を死滅させることができる、使用。
癌又は自己免疫疾患の治療のための医薬の製造における、CD38に特異的に結合する抗体の使用であって、前記抗体が少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号66によって表されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が配列番号62によって表されるアミノ酸配列を含む、使用。
癌又は自己免疫疾患の治療のための医薬の製造における、CD38に特異的に結合する抗体の使用であって、前記抗体が少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号66によって表されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が配列番号64によって表されるアミノ酸配列を含む、使用。
CD38に特異的に結合する抗体および医薬として許容される担体又は賦形剤を含む、CD38に関連する疾患の治療のための医薬組成物であって、前記抗体が少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、
a)前記重鎖が配列番号13、14及び15によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含み、前記軽鎖が配列番号16、17及び18によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含むか、又は
b)軽鎖可変領域が配列番号42によって表されるアミノ酸配列を有し、重鎖可変領域が配列番号54によって表されるアミノ酸配列を有し、
前記抗体が、実施例3にしたがい測定した場合に、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不在下でダウディリンパ腫細胞の少なくとも24%を死滅させることができ、
前記CD38に関連する疾患が多発性骨髄腫又はB細胞リンパ腫である、医薬組成物。
CD38に特異的に結合する抗体および医薬として許容される担体又は賦形剤を含む、CD38に関連する疾患の治療のための医薬組成物であって、前記抗体が少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、
a)前記重鎖が配列番号19、20及び21によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含み、前記軽鎖が配列番号22、23及び24によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含むか、又は
b)軽鎖可変領域が配列番号44によって表されるアミノ酸配列を有し、重鎖可変領域が配列番号56によって表されるアミノ酸配列を有し、
前記抗体が、実施例3にしたがい測定した場合に、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不在下でダウディリンパ腫細胞の少なくとも24%を死滅させることができ、
前記CD38に関連する疾患が多発性骨髄腫又はB細胞リンパ腫である、医薬組成物。
CD38に特異的に結合する抗体および医薬として許容される担体又は賦形剤を含む、CD38に関連する疾患の治療のための医薬組成物であって、前記抗体が少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号66によって表されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が配列番号62によって表されるアミノ酸配列を含み、前記CD38に関連する疾患が多発性骨髄腫又はB細胞リンパ腫である、医薬組成物。
CD38に特異的に結合する抗体および医薬として許容される担体又は賦形剤を含む、CD38に関連する疾患の治療のための医薬組成物であって、前記抗体が少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号66によって表されるアミノ酸配列を含み、前記軽鎖が配列番号64によって表されるアミノ酸配列を含み、前記CD38に関連する疾患が多発性骨髄腫又はB細胞リンパ腫である、医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
CD38を特異的に結合することができる新規抗体が、本明細書において提供される。特に、本発明者らは、細胞表面上のCD38に特異的に結合し、アポトーシスによってCD38
+細胞を死滅させる新規抗体を発見した。本発明の一態様において、抗CD38抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC;antibody−dependent cytotoxicity)によってCD38
+細胞も死滅させることができる。別の態様において、本発明の抗CD38抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC;complement−dependent cytotoxicity)によってCD38
+細胞を死滅させることができる。さらに別の態様において、本発明の抗CD38抗体は、上記機序、すなわち、アポトーシス、ADCC及びCDCの少なくとも2つによって、CD38
+細胞を死滅させることができる。特に、好ましい実施形態において、本発明の抗CD38抗体は、アポトーシス、ADCC及びCDCによってCD38
+細胞を死滅させることができる。従って、本発明は、3つの異なる機序によってCD38
+細胞を死滅させることができる第一の抗CD38抗体を提供する。
【0030】
CD38を結合し、CD38
+細胞中でアポトーシス細胞死の引き金を引くことができる抗体は以前に記載されているが(M.Kumagai et al.,1995,J Exp Med,181:1101−1110;E.Todisco et al.2000,Blood,95:535−542)、本発明の抗体は、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不存在下でアポトーシス活性が示されている初めての抗体である。本明細書において使用される「間質」は、結合組織、血管及び炎症性細胞を含む腫瘍の非悪性支持組織を表す。間質細胞は、癌細胞の挙動を与えることができる成長因子及び他の物質(サイトカインを含む。)を産生する。本明細書において使用される「サイトカイン」という用語は、免疫、炎症及び造血を媒介及び制御する小さな分泌タンパク質(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5及びIL−6、IFNγ、IL−3、IL−7及びGM−CSF)を表す。従来技術の抗体は間質細胞又は間質由来のサイトカインの不存在下でアポトーシス細胞死の引き金を引くことができないことが、本明細書において示されている。これに対して、本発明の抗CD38抗体は、同じ条件下で、強力なアポトーシス活性を示す。
【0031】
別の態様において、本発明の抗体は、3×10
−9M又はそれ以下のK
Dで、CD38タンパク質に結合することができる。
【0032】
本明細書において使用される「CD38」という用語は、例えば、Genbank受付番号NP
001766のようなアミノ酸配列を含むII型膜貫通タンパク質を表す。「CD38
+細胞」は、CD38タンパク質を発現する細胞である。好ましくは、CD38
+細胞は哺乳動物の細胞である。
【0033】
本発明の一実施形態において、CD38
+細胞は悪性細胞である。別の実施形態において、CD38
+細胞はB細胞である。好ましい実施形態において、CD38
+細胞は造血器の悪性腫瘍に由来する腫瘍細胞である。より好ましい実施形態において、CD38
+細胞はリンパ腫細胞、白血病細胞又は多発性骨髄腫細胞である。さらなる好ましい実施形態において、CD38
+細胞は、NHL、BL、MM、B−CLL、ALL、TCL、AML、HCL、HL又はCML細胞である。
【0034】
従って、一実施形態において、本発明は、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不存在下で、ダウディリンパ腫細胞の少なくとも24%を死滅させることができる抗CD38抗体を提供する。別の実施形態において、本発明の抗CD38抗体は、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不存在下で、ラモスリンパ腫細胞の少なくとも7%を死滅させることができる。別の実施形態において、本発明の抗CD38抗体は、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不存在下で、MOLP−8多発性骨髄腫細胞の少なくとも11%を死滅させることができる。別の実施形態において、本発明の抗CD38抗体は、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不存在下で、SU−DHL−8リンパ腫細胞の少なくとも36%を死滅させることができる。別の実施形態において、本発明の抗CD38抗体は、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不存在下で、NU−DUL−1リンパ腫細胞の少なくとも27%を死滅させることができる。別の実施形態において、本発明の抗CD38抗体は、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不存在下で、DND−41白血病細胞の少なくとも62%を死滅させることができる。別の実施形態において、本発明の抗CD38抗体は、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不存在下で、JVM−13白血病細胞の少なくとも9%を死滅させることができる。別の実施形態において、本発明の抗CD38抗体は、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不存在下で、HC−1白血病細胞の少なくとも4%を死滅させることができる。
【0035】
抗体
本明細書において、「抗体」という用語は最も広義に使用され、具体的には、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEなどのあらゆるイソタイプのモノクローナル抗体(完全長のモノクローナル抗体を含む。)、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体、キメラ抗体及び抗体断片を包含する。特異的な抗原と反応する抗体は、ファージ若しくは類似のベクター中での組換え抗体のライブラリーの選択などの組換え法によって、又は抗原若しくは抗原をコードする核酸で動物を免疫化することによって作製することができる。
【0036】
典型的なIgG抗体は、ジスルフィド結合によって連結されている2つの同一の重鎖と2つの同一の軽鎖から構成されている。各重鎖及び軽鎖は、定常領域及び可変領域を含有する。各可変領域は、抗原のエピトープを結合するのに主に必要とされる「相補性決定領域」(「CDR」)又は「超可変領域」と称される3つのセグメントを含有する。これらは、通常、N末端から順番に付番され、CDR1、CDR2及びCDR3と称される。可変領域のより高度に保存された部分は、「フレームワーク領域」と称される。
【0037】
本明細書において使用される「V
H」又は「VH」は、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’又はF(ab’)
2断片の重鎖を含む、抗体の免疫グロブリン重鎖の可変領域を表す。「V
L」又は「VL」という表記は、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’又はF(ab’)
2断片の軽鎖を含む、抗体の免疫グロブリン軽鎖の可変領域を表す。
【0038】
「ポリクローナル抗体」とは、1若しくはそれ以上の他の同一でない抗体の間で又は存在下で産生された抗体である。一般に、ポリクローナル抗体は、同一でない抗体を産生する幾つかの他のBリンパ球の存在下で、Bリンパ球から産生される。通常、ポリクローナル抗体は、免疫化された動物から直接得られる。
【0039】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体である。すなわち、該集団を形成する抗体は、僅かな量で存在する可能性がある天然に存在する変異を除いて本質的に同一である。これらの抗体は単一のエピトープに対して誘導され、従って高度に特異的である。
【0040】
「エピトープ」は、抗体が結合する抗原上の部位である。抗原がタンパク質又は多糖などのポリマーである場合には、エピトープは、近接する残基によって、又は抗原性ポリマーの折りたたみによって近接した状態となった近接していない残基によって形成され得る。タンパク質中において、近接するアミノ酸によって形成されるエピトープは、変性溶媒へ曝露されても通例保持されるのに対して、近接していないアミノ酸によって形成されたエピトープは、前記曝露下において通例失われる。
【0041】
本明細書において使用される「K
D」という用語は、特定の抗体/抗原相互作用の解離定数を表す。
【0042】
本発明は、新規マウス抗CD38抗体、本明細書では、軽鎖及び重鎖の両方のアミノ酸配列に関して完全に性質決定されている38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39、CDRの同定、表面アミノ酸の同定及び組換え形態でそれらを発現させるための手段から開始する。抗体38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39の軽鎖及び重鎖の並びにヒト化された様式の一次アミノ酸及びDNA配列が本明細書に開示されている。
【0043】
38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39マウス抗CD38抗体を産生するハイブリドーマ細胞株は、それぞれ、PTA−7667、PTA−7669、PTA−7670、PTA−7666、PTA−7668及びPTA−7671の寄託番号で、2006年6月21日に、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(10801 University Bid,Manassas,VA,20110−2209,USA)に寄託された。
【0044】
本発明の範囲は、これらの配列を含む抗体及び断片に限定されない。代わりに、CD38に特異的に結合し、アポトーシス、ADCC及び/又はCDCによってCD38
+細胞を死滅させることができる全ての抗体及び断片は、本発明の範囲に属する。従って、抗体及び抗体断片は、これらの足場、CDR、軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列において、抗体38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39又はヒト化された誘導体と異なり得、なお本発明の範囲に属する。
【0045】
一実施形態において、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35及び36からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1つ又はそれ以上のCDRを含む抗体又はそのエピトープ結合断片を提供する。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖は配列番号1、2、3、7、8、9、13、14、15、19、20、21、25、26、27、31、32及び33からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含み、並びに前記軽鎖は配列番号4、5、6、10、11、12、16、17、18、22、23、24、28、29、30、34、35及び36からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含む。
【0046】
さらに好ましい実施形態において、本発明の抗体は、配列番号1、2、3、4、5及び6の群から選択されるアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む。さらにより好ましい実施形態において、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号1、2及び3からなるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含み、並びに前記軽鎖が配列番号4、5及び6からなるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含む、38SB13抗体が提供される。
【0047】
別のより好ましい実施形態において、本発明の抗体は、配列番号7、8、9、10、11及び12の群から選択されるアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む。さらにより好ましい実施形態において、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号7、8及び9からなるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含み、並びに前記軽鎖が配列番号10、11及び12からなるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含む、38SB18抗体が提供される。
【0048】
別のより好ましい実施形態において、本発明の抗体は、配列番号13、14、15、16、17及び18の群から選択されるアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む。さらにより好ましい実施形態において、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号13、14及び15からなるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含み、並びに前記軽鎖が配列番号16、17及び18からなるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含む、38SB19抗体が提供される。
【0049】
別のより好ましい実施形態において、本発明の抗体は、配列番号19、20、21、22、23、24の群から選択されるアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む。さらにより好ましい実施形態において、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号19、20及び21からなるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含み、並びに前記軽鎖が配列番号22、23及び24からなるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含む、38SB30抗体が提供される。
【0050】
別のより好ましい実施形態において、本発明の抗体は、配列番号25、26、27、28、29及び30の群から選択されるアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む。さらにより好ましい実施形態において、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号25、26及び27からなるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含み、並びに前記軽鎖が配列番号28、29及び30からなるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含む、38SB31抗体が提供される。
【0051】
別のより好ましい実施形態において、本発明の抗体は、31、32、33、34、35及び36の群から選択されるアミノ酸配列を有する3つのCDRを含む。さらにより好ましい実施形態において、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号31、32及び33からなるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含み、並びに前記軽鎖が配列番号34、35及び36からなるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含む、38SB39抗体が提供される。
【0052】
別の実施形態において、本発明の抗CD38抗体は、配列番号38、40、42、44、46及び48からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
Lを含む。より好ましい実施形態において、配列番号38からなるアミノ酸配列を有するV
Lを含む38SB13抗体が提供される。より好ましい実施形態において、配列番号40からなるアミノ酸配列を有するV
Lを含む38SB18抗体が提供される。より好ましい実施形態において、配列番号42からなるアミノ酸配列を有するV
Lを含む38SB19抗体が提供される。より好ましい実施形態において、配列番号44からなるアミノ酸配列を有するV
Lを含む38SB30抗体が提供される。より好ましい実施形態において、配列番号46からなるアミン酸配列を有するV
Lを含む38SB13抗体が提供される。より好ましい実施形態において、配列番号48からなるアミン酸配列を有するV
Lを含む38SB39抗体が提供される。
【0053】
別の実施形態において、本発明の抗体は、配列番号50、52、54、56、58及び60からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するV
Hを含む。より好ましい実施形態において、配列番号50からなるアミノ酸配列を有するV
Hを含む38SB13抗体が提供される。より好ましい実施形態において、配列番号52からなるアミノ酸配列を有するV
Hを含む38SB18抗体が提供される。より好ましい実施形態において、配列番号54からなるアミノ酸配列を有するV
Hを含む38SB19抗体が提供される。より好ましい実施形態において、配列番号56からなるアミノ酸配列を有するV
Hを含む38SB30抗体が提供される。より好ましい実施形態において、配列番号58からなるアミノ酸配列を有するV
Hを含む38SB31抗体が提供される。より好ましい実施形態において、配列番号60からなるアミノ酸配列を有するV
Hを含む38SB39抗体が提供される。
【0054】
キメラ及びヒト化38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体
本明細書において使用される「キメラ抗体」とは、可変領域が異なる種の定常領域に連結され、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属するように、定常領域又はその一部が改変され、置換され又は交換されている抗体である。「キメラ抗体」とは、定常領域が異なる種の可変領域に連結され、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属するように、可変領域又はその一部が改変され、置換され又は交換されている抗体も表す。キメラ抗体を作製する方法は、本分野において公知である。例えば、Morrison,1985,Science,229:1202;Oi et al.,1986,BioTechniques,4:214;Gillies et al.,1989,J.Immunol.Methods,125:191−202;米国特許第5,807,715号;米国特許第4,816,567号;及び米国特許第4,816,397号(これらの全体が、参照により、本明細書中に組み込まれる。)を参照されたい。
【0055】
本発明の一実施形態において38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39のキメラ様式が提供される。特に、前記キメラ様式は少なくとも1つのヒト定常領域を含有する。より好ましい実施形態において、このヒト定常領域はヒトIgG1/κ定常領域である。
【0056】
本明細書において使用される「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最少配列を含有するキメラ抗体を表す。ヒト化の最終目標は、抗体の完全な抗原結合親和性及び特異性を維持しながら、ヒト中に導入するためのマウス抗体などの異種抗体の免疫原性を低下させることである。ヒト化抗体又は他の哺乳動物による非拒絶のために適合された抗体は、再表面化及びCDR移植などの幾つかの技術を用いて作製され得る。本明細書において使用される再表面化技術は、抗体可変領域の非CDR表面を改変させて標的宿主の公知の抗体の表面に似せるために、分子モデル化、統計解析及び突然変異導入の組み合わせを使用する。CDR移植技術は、例えば、マウス抗体の相補性決定領域をヒトフレームワークドメイン中に置換することを含む。例えば、WO92/22653号を参照されたい。ヒト化されたキメラ抗体は、対応するヒト抗体領域から実質的に又は専ら由来する相補性決定領域(CDR)以外の定常領域及び可変領域並びにヒト以外の哺乳動物から実質的に又は専ら由来するCDRを好ましく有する。
【0057】
抗体の再表面化のための戦略及び方法並びに異なる宿主内での抗体の免疫原性を低下させるための他の方法は、米国特許第5,639,641号(参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。)に開示されている。簡潔に述べれば、好ましい方法において、(1)重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークの表面露出された位置の組を与えるために、抗体重鎖及び軽鎖可変領域のプールの位置併置が作製され(ここで、全ての可変領域に対する併置位置は、少なくとも約98%同一である。);(2)重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークの表念露出されたアミノ酸残基の組が、げっ歯類抗体(又はその断片)に対して確定され;(3)げっ歯類の表面露出されたアミノ酸残基の前記組と最も同一性が近い重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークの表面露出されたアミノ酸残基の組が同定され;(4)げっ歯類抗体の相補性決定領域の何れかの残基の何れかの原子の5オングストローム以内に位置するアミノ酸を除き、工程(2)において確定された重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークの表面露出されたアミノ酸残基の組が、工程(3)において同定された重鎖及び軽鎖可変領域フレームワークの表面露出されたアミノ酸の前記組と置換され;並びに(5)結合特異性を有するヒト化されたげっ歯類抗体が産生される。
【0058】
抗体は、CDR移植(EP0239400;WO91/09967;米国特許第5,530,101号及び米国特許第5,585,089号)、ベニアリング又は再表面化(EP0592106;EP0519596;Padlan E.A.,1991,Molecular Immunology,28(4/5):489−498,1991;Studnicka G.M.et al.,1994,Protein Engineering,7(6):805−814;Roguska M.A.et al.,1994,PNAS91:969−973)及び鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)などの様々な他の技術を用いてヒト化することが可能である。ヒト抗体は、ファージディスプレイ法など、本分野で公知の様々な方法によって作製することが可能である。米国特許第4,444,887号;米国特許第4,716,111号;米国特許第5,545,806号及び米国特許第5,814,318号;並びに国際特許出願公開番号WO98/46645;WO98/50433;WO98/24893;WO98/16654;WO96/34096;WO96/33735;及びWO91/10741も参照されたい(前記参考文献は、それらの全体が、参照により本明細書に組み込まれる。)。
【0059】
本発明は、CD38を認識し、アポトーシス、ADCC及び/又はCDCによってCD38
+細胞を死滅させるヒト化された抗体又はその断片を提供する。さらなる実施形態において、ヒト化された抗体又はそのエピトープ結合断片は、3つの機序全てによって、前記CD38
+細胞を死滅させる能力を有する。さらに別の実施形態において、本発明のヒト化抗体又はそのエピトープ結合断片は、間質細胞又は間質由来のサイトカインの不存在下でさえ、アポトーシスによって、前記CD38
+細胞を死滅させることができる。
【0060】
このようなヒト化抗体の好ましい実施形態は、ヒト化された38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31若しくは38SB39抗体又はこれらのエピトープ結合断片である。
【0061】
より好ましい実施形態において、公知のヒト抗体表面とより密接に似るようにするために、抗体又はその断片の表面露出された残基が軽鎖及び重鎖の両方において置換されている38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体の再表面化された又はヒト化された様式が提供される。本発明のヒト化された38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体又はこれらのエピトープ結合断片は、改善された特性を有する。例えば、ヒト化された38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体又はこれらのエピトープ結合断片は、CD38タンパク質を特異的に認識する。より好ましくは、ヒト化された38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体又はこれらのエピトープ結合断片は、アポトーシス、ADCC及び/又はCDCによって、CD38
+細胞を死滅させるさらなる能力を有する。
【0062】
38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体のヒト化された様式は、軽鎖及び重鎖可変領域の両方のアミノ酸配列、軽鎖及び重鎖可変領域に対する遺伝子のDNA配列、CDRの同定、それらの表面アミノ酸の同定及び組換え形態でそれらを発現させるための手段の開示に関しても、本明細書において完全に性質決定されている。しかしながら、本発明の範囲は、これらの配列を含む抗体及び断片に限定されない。代わりに、CD38に特異的に結合し、アポトーシス、ADCC及び/又はCDCによってCD38
+細胞を死滅させることができる全ての抗体及び断片が、本発明の範囲に属する。好ましくは、このような抗体は、3つの機序の全てによって、CD38
+細胞を死滅させることができる。従って、本発明の抗体及びエピトープ結合抗体断片は、それらの足場、CDR及び/又は軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列において、38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体又はヒト化されたこれらの誘導体と異なることができ、なお本発明の範囲に属する。
【0063】
38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体のCDRはモデル化によって同定され、これらの分子構造が予測された。同じく、CDRはエピトープ認識のために重要であるが、CDRは本発明の抗体及び断片にとって不可欠でない。従って、例えば、本発明の抗体の親和性成熟によって生成される改善された特性を有する抗体及び断片が提供される。
【0064】
38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体の重鎖及び軽鎖可変領域の配列並びにこれらのCDRの配列は以前には公知でなく、本願中に記載されている。このような情報は、38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体のヒト化された様式を作製するために使用することができる。これらのヒト化された抗CD38抗体又はそれらの誘導体は、本発明の細胞結合因子としても使用され得る。
【0065】
従って、一実施形態において、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35及び36からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する1つ又はそれ以上のCDRを含むヒト化抗体又はそのエピトープ結合断片を提供する。好ましい実施形態において、本発明のヒト化抗体は、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖は配列番号1、2、3、7、8、9、13、14、15、19、20、21、25、26、27、31、32及び33からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含み、並びに前記軽鎖は配列番号4、5、6、10、11、12、16、17、18、22、23、24、28、30、34、35及び36からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する3つの連続するCDRを含む。さらなる好ましい実施形態において、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号1、2及び3によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続する相補性決定領域を含み、並びに前記軽鎖が配列番号4、5及び6によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続する相補性決定領域を含む、38SB13のヒト化された様式が提供される。別のさらなる好ましい実施形態において、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号7、8及び9によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続する相補性決定領域を含み、並びに前記軽鎖が配列番号10、11及び12によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続する相補性決定領域を含む、38SB18抗体のヒト化された様式が提供される。別のさらなる好ましい実施形態において、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号13、14及び15によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続する相補性決定領域を含み、並びに前記軽鎖が配列番号16、17及び18によって表されるアミノ酸配列を有する3つの相補性決定領域を含む、38SB19のヒト化された様式が提供される。別のさらなる好ましい実施形態において、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号19、20及び21によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続する相補性決定領域を含み、並びに前記軽鎖が配列番号22、23及び24によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続する相補性決定領域を含む、38SB30のヒト化された様式が提供される。別のさらなる好ましい実施形態において、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号25、26及び27によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続する相補性決定領域を含み、並びに前記軽鎖が配列番号28、29及び30によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続する相補性決定領域を含む、38SB31のヒト化された様式が提供される。別のさらなる好ましい実施形態において、少なくとも1つの重鎖及び少なくとも1つの軽鎖を含み、前記重鎖が配列番号31、32及び33によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続する相補性決定領域を含み、並びに前記軽鎖が配列番号34、35及び36によって表されるアミノ酸配列を有する3つの連続する相補性決定領域を含む、38SB39のヒト化された様式が提供される。
【0066】
一実施形態において、本発明は、配列番号66及び72の群から選択されるアミノ酸配列を有するV
Hを含む、ヒト化された抗体又はその断片を提供する。好ましい実施形態において、配列番号66によって表されるアミノ酸配列を有するV
Hを含むヒト化された38SB19抗体が提供される。別の好ましい実施形態において、配列番号72によって表されるアミノ酸配列を有するV
Hを含むヒト化された38SB31抗体が提供される。
【0067】
別の実施形態において、本発明は、配列番号62、64、68及び70の群から選択されるアミノ酸配列を有するV
Lを含むヒト化抗体又はその断片を提供する。好ましい実施形態において、配列番号62及び64の群から選択されるアミノ酸配列を有するV
Lを含むヒト化された38SB19抗体が提供される。別の好ましい実施形態において、配列番号68及び70の群から選択されるアミノ酸配列を有するV
Lを含むヒト化された38SB31抗体が提供される。
【0068】
本発明のヒト化された38SB19抗体及びそのエピトープ結合断片は、元のマウス残基からヒト抗体28E4中の対応するフレームワーク表面残基へ変更されたマウス表面フレームワーク残基を表す表1A及び1B中の灰色の残基によって規定される1つ又はそれ以上の位置に軽鎖及び/又は重鎖アミノ酸残基中にも置換を含み得る。表1B中のアスタリスクが付された(*)残基は、ヒト化された38SB19重鎖バリアント(配列番号65)中のマウス逆突然変異に対応する。逆突然変異のための残基はCDRに近接しており、米国特許第5,639,641号に記載されているように選択され、又は以前のヒト化の試みにおいて、抗原結合親和性の減少をもたらした残基の選択と同様にして選択された(Roguska et al.,1996,米国特許出願公開2003/0235582及び2005/0118183)。
【0069】
同様に、本発明のヒト化された38SB13、38SB18、38SB30、38SB31及び38SB39抗体又はこれらのエピトープ結合断片は、軽鎖及び/又は重鎖アミノ酸残基中に置換を含むこともできる。
【0070】
ポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞
本発明の抗CD38抗体をコードする核酸が提供される。一実施形態において、核酸分子は抗CD38免疫グロブリンの重鎖及び/又は軽鎖をコードする。好ましい実施形態において、単一の核酸が抗CD38免疫グロブリンの重鎖をコードし、別の核酸分子が抗CD38免疫グロブリンの軽鎖をコードする。
【0071】
本発明の別の態様において、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70及び72の群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが提供される。好ましい実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69及び71からなる群から選択される。本発明は、前記ポリヌクレオチド自体に限定されず、前記ポリヌクレオチドと少なくとも80%の同一性を示す全てのポリヌクレオチドも含む。
【0072】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。一実施形態において、ベクターは抗CD38免疫グロブリンの重鎖をコードするポリヌクレオチドを含有する。別の実施形態において、前記ポリヌクレオチドは抗CD38免疫グロブリンの軽鎖をコードする。本発明は、融合タンパク質、修飾された抗体、抗体断片及びこれらのプローブをコードするポリヌクレオチド分子を含むベクターも提供する。
【0073】
本発明の抗CD38抗体の重鎖及び/又は軽鎖を発現させるために、前記重鎖及び/又は軽鎖及をコードするポリヌクレオチドは、遺伝子が転写及び翻訳配列へ作用可能に連結されるように、発現ベクター中に挿入される。発現ベクターには、プラスミド、YAC、コスミド、レトロウイルス、EBV由来のエピソーム及び前記重鎖及び/又は軽鎖の発現を確保するために便利であることが当業者に知られている全ての他のベクターが含まれる。当業者は、異なるベクター中に又は同じベクター中に、重鎖及び軽鎖をコードするポリヌクレオチドをクローニングできることを認識する。好ましい実施形態において、前記ポリヌクレオチドは、同じベクター中にクローニングされる。
【0074】
本発明のポリヌクレオチド及びこれらの分子を含むベクターは、適切な哺乳動物宿主細胞の形質転換のために使用することができる。形質転換は、ポリヌクレオチドを細胞宿主中に導入するためのあらゆる公知の方法によって実施することができる。このような方法は当業者に周知であり、デキストランによって媒介される形質転換、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレンによって媒介される形質移入、プロトプラスト融合、電気穿孔、リポソーム中へのポリヌクレオチドの封入、微粒子銃注射及び核内へのDNAの直接的微少注入が含まれる。
【0075】
抗体断片
本発明の抗体は、上記完全長の抗体及びそのエピトープ結合断片の両方を含む。本明細書において使用される「抗体断片」には、一般に、「エピトープ結合断片」と称される、完全長抗体によって認識されるエピトープに結合する能力を保持する抗体のあらゆる部分が含まれる。抗体断片の例には、Fab、Fab’及びF(ab’)
2、Fd、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合されたFv(dsFv)及びV
L又はV
H領域の何れかを含む断片が含まれるが、これらに限定されない。一本鎖抗体を含むエピトープ結合断片は、単独で、又は以下のもの:ヒンジ領域、CH
1、CH
2及びCH
3ドメインの全部若しくは一部と組み合わせて可変領域を含み得る。
【0076】
このような断片は、一方又は両方のFab断片又はF(ab’)
2断片を含有し得る。好ましくは、抗体断片は完全な抗体の全ての6つのCDRを含有するが、3つ、4つ又は5つのCDRなどのこのような領域の全てより少ない領域を含有する断片も機能的である。さらに、前記断片は、以下の免疫グロブリンのクラスIgG、IgM、IgA、IgD又はIgE及びこれらのサブクラスの何れか1つの要素であり得、又は何れか1つの要素を組み合わせ得る。
【0077】
Fab及びF(ab’)
2断片は、パパイン(Fab断片)又はペプシン(F(ab’)
2断片)などの酵素を用いて、タンパク質分解性切断によって作製され得る。
【0078】
「一本鎖FV」(「scFv」)断片は、抗体軽鎖可変領域(V
L)の少なくとも1つの断片に連結された抗体重鎖可変領域(V
H)の少なくとも1つの断片を含有するエピトープ結合断片である。一本鎖抗体断片が由来する完全な抗体の標的分子結合特異性を維持するように、一旦、V
L及びV
H領域が連結されたら、リンカーは、V
L及びV
H領域の適切な三次元折りたたみが確実に起こるように選択される短い柔軟なペプチドであり得る。V
L又はV
H配列のカルボキシル末端は、リンカーによって、相補的なV
L又はV
H配列のアミノ酸末端に共有結合され得る。
【0079】
本発明の一本鎖抗体断片は、本明細書中に記載されている完全な抗体の可変又は相補性決定領域(CDR)の少なくとも1つを有するが、抗体の定常ドメインの幾つか又は全部を欠如するアミノ酸配列を含有する。これらの定常ドメインは抗原結合のために必要でないが、完全な抗体の構造の主要な部分を構成する。従って、一本鎖抗体断片は、定常ドメインの一部又は全部を含有する抗体の使用に関連する問題の幾つかを克服し得る。例えば、一本鎖抗体断片は、生物学的分子と重鎖定常領域の間に望ましくない相互作用又は他の望ましくない生物学的活性を有さない傾向がある。さらに、一本鎖抗体断片は、完全な抗体よりかなり小さく、従って、完全な抗体より大きな毛細血管透過性を有し得、一本鎖抗体断片が標的抗原結合部位へより効率的に局在化し、結合できるようにする。また、抗体断片は、原核細胞中において、比較的大規模に作製することができ、従って、抗体断片の産生が促進される。さらに、一本鎖抗体断片の比較的小さなサイズのために、完全な抗体より、レシピエント中での免疫応答を誘発する可能性がより小さくなる。
【0080】
一本鎖抗体断片は、分子クローニング、抗体ファージディスプレイライブラリー又は当業者に周知の類似の技術によって作製され得る。これらのタンパク質は、例えば、真核細胞又は細菌を含む原核細胞中で作製され得る。本発明のエピトープ結合断片は、本分野で公知の様々なファージディスプレイ法を用いて作製することも可能である。ファージディスプレイ法では、機能的抗体ドメインは、これらをコードしているポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面上にディスプレイされる。特に、このようなファージは、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリー(例えば、ヒト又はマウス)から発現されるエピトープ結合ドメインをディスプレイするために使用することが可能である。目的の抗原を結合するエピトープ結合ドメインを発現するファージは、抗原を用いて、例えば、固体表面若しくはビーズに結合若しくは捕捉された標識抗原を用いて、選択又は同定することが可能である。これらの方法で使用されるファージは、典型的には、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質の何れかに組み換え的に融合されたFab、Fv又はジスルフィドで安定化されたFv抗体ドメインとともにファージから発現されたfd及びM13結合ドメインを含む糸状ファージである。
【0081】
本発明のエピトープ結合断片を作製するために使用することが可能なファージディスプレイ法の例には、「Brinkman et al.,1995,J.Immunol.Methods182:41−50;Ames et al.,1995,J.Immunol.Methods,184:177−186;Kettleborough et al.,1994,Eur.J.Immunol.24:952−958;Persic et al.,1997,Gene,187:9−18;Burton et al.,1994,Advances in Immunology57:191−280;WO1992/001047;WO90/02809;WO91/10737;WO92/01047;WO92/18619;WO93/11236;WO95/15982;WO95/20401;並びに米国特許第5,698,426号;米国特許第5,223,409号;米国特許第5,403,484号;米国特許第5,580,717号;米国特許第5,427,908号;米国特許第5,750,753号;米国特許第5,821,047号;米国特許第5,571,698号;米国特許第5,427,908号;米国特許第5,516,637号;米国特許第5,780,225号;米国特許第5,658,727号;米国特許第5,733,743号及び米国特許第5,969,108号(これらの各々は、その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)に開示されているものが含まれる。
【0082】
ファージ選択後、例えば、以下に詳しく記載されているように組換えDNA技術を用いて、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及び細菌を含む選択された宿主中での発現を通じて、エピトープ結合断片を作製するために、断片をコードするファージの領域を単離し、使用することができる。例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)
2断片を組み換え的に作製するための技術は、WO92/22324;Mullinax et al.,1992,BioTechniques12(6):864−869;Sawai et al,1995,AJRI,34:26−34;及びBetter et al,1988,Science,240:1041−1043に開示されているものなど、本分野において公知の方法を用いて使用することも可能である(前記参考文献は、その全体が、参照により組み込まれる。)。一本鎖Fv及び抗体を作製するために使用することができる技術の例には、米国特許第4,946,778号及び米国特許第5,258,498号;Huston et al,1991,Methods in Enzymology,203:46−88;Shu et al.,1993,PNAS 90:7995−7999;Skerra et al,1998,Science 240:1038−1040に記載されているものが含まれる。
【0083】
機能的均等物
抗CD38抗体及びヒト化された抗CD38受容体抗体の機能的均等物も、本発明の範囲に含まれる。「機能的均等物」という用語には、例えば、相同的配列を有する抗体、キメラ抗体、人工の抗体及び修飾された抗体が含まれ、それぞれの機能的均等物は、CD38タンパク質へのその結合能によって定義される。当業者は、「抗体断片」と称される分子の群と「機能的均等物」と称される群に重複が存在することを理解する。機能的均等物を作製する方法は当業者に公知であり、例えば、WO93/21319、EP239,400;WO89/09622;EP338,745;及びEP332,424(これらは、それぞれの全体が、参照により組み込まれる。)に開示されている。
【0084】
相同的配列を有する抗体とは、本発明の抗CD38抗体及びヒト化された抗CD38抗体のアミノ酸配列と配列相同性を有するアミノ酸を有する抗体である。好ましくは、相同性は、本発明の抗CD38抗体及びヒト化された抗CD38抗体の可変領域のアミノ酸配列との相同性である。本明細書においてアミノ酸配列に対して適用される「配列相同性」は、例えば、「Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444−2448」に従うFASTA検索法によって、別のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92、93%又は94%の配列相同性、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%又は99%の配列相同性を有する配列として定義される。
【0085】
人工の抗体には、scFv断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ及びmruが含まれ(Winter,G.andMilstein,C,1991,Nature,349:293−299;Hudson,P.J.,1999,Current Opinion in Immunology,11:548−557による概説を参照されたい。)、これらの各々は抗原結合能を有する。一本鎖Fv断片(scFv)において、抗体のV
H及びV
Lドメインは柔軟なペプチドによって連結される。典型的には、このリンカーペプチドは約15アミノ酸残基の長さである。リンカーがこれよりずっと小さい場合には、例えば、5アミノ酸である場合には、二価のscFv二量体であるダイアボディが形成される。リンカーが3アミノ酸残基未満まで縮小される場合には、トリアボディ及びテトラボディと称される三量体及び四量体構造が形成される。抗体の最も小さな結合単位はCDRであり、典型的には、別々に使用できるのに十分な特異的認識及び結合を有する重鎖のCDR2である。このような断片は、分子認識単位又はmruと称される。幾つかのこのようなmruは、短いリンカーポリペプチドと一緒に連結することができ、従って、単一のmruより高い結合活性を有する人工の結合タンパク質を形成する。
【0086】
本発明の機能的均等物には、修飾された抗体、例えば、分子の何れかの種類の、抗体への共有結合によって修飾された抗体も含まれる。例えば、修飾された抗体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、peg化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク分解性切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への結合などによって修飾された抗体が含まれる。前記共有結合は、抗体が抗イディオタイプ応答を生じるのを妨げない。これらの修飾は、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などの(但し、これらに限定されない。)公知の技術によって実施され得る。さらに、修飾された抗体は、1つ又はそれ以上の非古典的なアミノ酸を含有し得る。
【0087】
機能的均等物は、異なるフレームワーク内の異なる鎖上の異なるCDRを交換することによって作製され得る。従って、例えば、異なる重鎖の置換によって、CDRの所定の組に対して抗体の異なるクラスが可能であり、これにより、例えば、IgG1から4、IgM、IgA1から2、IgD、IgE抗体の種類及びイソタイプが産生され得る。同様に、本発明の範囲に属する人工の抗体は、完全に合成のフレームワーク内にCDRの所定の組を埋めることによって作製され得る。
【0088】
機能的均等物は、本分野において公知の多様な方法を用いる、CDRの特定の組に隣接する可変及び/又は定常領域配列内の変異、欠失及び/又は挿入によって容易に作製され得る。本発明の抗体断片及び機能的均等物は、38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31又は38SB39抗体と比べた場合に、CD38への結合の検出可能な程度を有する分子を包含する。結合の検出可能な程度には、マウス38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31又は38SB39抗体のCD38への結合能の少なくとも10から100%、好ましくは少なくとも50%、60%又は70%、より好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は99%の範囲内の全ての値が含まれる。
【0089】
改良された抗体
CDRは、エピトープ認識及び抗体結合のために最も重要である。しかしながら、抗体がそのコグネートエピトープを認識及び結合する能力を妨害せずに、CDRを含む残基に対して変更を施し得る。例えば、エピトープ認識に対して影響を及ぼさず、エピトープに対する抗体の結合親和性をなお増加させる変化を施し得る。
【0090】
従って、好ましくは増加した親和性で、CD38も特異的に認識及び結合するマウス及びヒト化抗体の両者の改善された様式も、本発明の範囲に含まれる。
【0091】
一次抗体配列の知識、結合及び発現のレベルなどの抗体の特性に基づいて、抗体の配列中の様々な位置に1つ又はそれ以上のアミノ酸の変化を導入する効果が、幾つかの研究によって調査されている(Yang,W.P.etal.,1995,J.Mol.Biol.,254:392−403;Rader,C.etal.,1998,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:8910−8915;Vaughan,T.J.etal.,1998,NatureBiotechnology,16:535−539)。
【0092】
これらの研究では、オリゴヌクレオチドによって媒介される部位特異的変異導入、カセット変異導入、変異性PCR、DNAシャフリング又はE.コリの変異誘発株などの方法を用いて、CDR1,CDR2、CDR3又はフレームワーク領域中の重鎖及び軽鎖遺伝子の配列を変化させることによって、一次抗体の均等物が作製された(Vaughan,T.J.et al.,1998,Nature Biotechnology,16:535−539;Adey,N.B.et al.,1996,Chapter 16,pp.277−291,in“Phage Display of Peptides and Proteins”,Eds.Kay,B.K.et al.,Academic Press)。一次抗体の配列を変化させるこれらの方法は、二次抗体の改善された親和性をもたらした(Gram,H.etal.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:3576−3580;Boder,E.T.etal.,2000,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97:10701−10705;Davies,J.andRiechmann,L.,1996,Immunotechnolgy,2:169−179;Thompson,J.etal.,1996,J.Mol.Biol.,256:77−88;Short,M.K.etal.,2002,J.Biol.Chem.,277:16365−16370;Furukawa,K.etal.,2001,J.Biol.Chem.,276:27622−27628)。
【0093】
抗体の1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を変化させる類似の誘導化された戦略によって、本発明に記載されている抗体配列は、CD38に対する改善された親和性を含む、改善された機能を有する抗CD38抗体を開発するために使用することができる。
【0094】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させる置換、(2)酸化に対する感受性を低下させる置換、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させる置換、並びに(4)このような類縁体の他の物理化学的又は機能的特性を付与又は修飾する置換である。類縁体は、天然に存在するペプチド配列以外の配列の様々な変異タンパク質を含み得る。例えば、単一又は複数のアミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)は、天然に存在する配列中に(好ましくは、分子間接触を形成するポリペプチド表面ドメインの部分中に)作製し得る。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特徴を実質的に変化させるべきではない(例えば、置換アミノ酸は、親配列中に生じるヘリックスを破壊する傾向を示すべきではなく、又は親配列を特徴付ける二次構造の他の種類を崩壊させるべきでない。)。本分野で認められたポリペプチド二次構造及び三次構造の例は、「Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York (1984));Introduction to Protein Structure(C.Branden and J.Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991));及びThornton et al.,1991,Nature 354:105」に記載されており、これらは各々、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0095】
改良された抗体には、動物免疫化、ハイブリドーマ形成及び特異的な特徴を有する抗体に対する選択の標準的技術によって調製された、改良された特徴を有する抗体も含まれる。
【0096】
本発明の改良された抗体には、特に、増強された機能的特性を有する抗体が含まれる。特に興味深いのは、ADCCなどの細胞の細胞傷害性エフェクター機能を媒介するための増強された能力を有する抗体である。このような抗体は、抗体の定常フレームワーク中に単一の又は複数の置換を施して、Fc受容体とのその相互作用を変化させることによって取得され得る。このような変異体を設計するための方法は、例えば、Lazar他(2006,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.103(11):4005−4010)及びOkazaki他(2004,J.Mol.Biol.336(5):1239−49)に見出すことができる。WO03/074679、WO2004/029207、WO2004/099249、WO2006/047350、WO2006/019447、WO2006/105338、WO2007/041635も参照されたい。改良された抗体の作製のために特異的に操作された細胞株を使用することも可能である。特に、これらの株は、グリコシル化経路の変化された制御を有しており、フコシル化が乏しく、又は完全に脱フコシル化されている抗体をもたらす。このような細胞株及びそれらを操作するための方法は、例えば、「Shinkawa et al.(2003,J.Biol.Chem.278(5):3466−3473),Ferrara et al.(2006,J.Biol.Chem.281(8):5032−5036;2006,Biotechnol.Bioeng.93(5):851−61),EP1331266,EP1498490,EP1498491,EP1676910,EP1792987及びWO99/54342」に開示されている。
【0097】
本発明は、細胞傷害性連結体も含む。これらの細胞傷害性連結体は、2つの主要な成分である細胞結合因子及び細胞傷害性因子を含む。
【0098】
本明細書において使用される「細胞結合因子」という用語は、細胞表面上のCD38タンパク質を特異的に認識し、結合する因子を表す。一実施形態において、細胞結合因子は、非特異的な結合から生じる副作用を殆ど伴わずに、標的化された様式で連結体を作用させるように、CD38を特異的に認識する。
【0099】
別の実施形態において、連結体の細胞傷害性薬物部分を細胞に対して作用させるのに十分な時間、及び/又は連結体が細胞によって内部に取り込まれるのに十分な時間、連結体が標的細胞と接触するように、本発明の細胞結合因子はCD38タンパク質も特異的に認識する。
【0100】
好ましい実施形態において、細胞傷害性連結体は、細胞結合因子として、抗CD38抗体を含み、より好ましくは、マウス38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31又は38SB39抗体CD38モノクローナル抗体を含む。別の好ましい実施形態において、細胞結合因子は前記抗CD38抗体のキメラ様式である。より好ましい実施形態において、細胞傷害性連結体は、ヒト化された38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体又はこれらのエピトープ結合断片を含む。38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体は、CD38を特異的に認識することができ、標的化された様式で、細胞傷害性因子を癌細胞などの異常な細胞又は組織へ誘導する。
【0101】
本発明の細胞傷害性連結体の第二の成分は、細胞傷害性因子である。本明細書において使用される「細胞傷害性因子」という用語は、細胞の機能若しくは増殖を低減若しくは遮断し、及び/又は細胞の破壊を引き起こす物質を表す。
【0102】
好ましい実施形態において、細胞傷害性因子は、小薬物、プロドラッグ、タキソイド、DM1又はDM4などのマイタンシノイド、トマイマイシン誘導体、レプトマイシン誘導体、CC−1065又はCC−1065類縁体である。好ましい実施形態において、本発明の細胞結合因子は、直接又は切断可能な若しくは切断不能なリンカーを介して細胞傷害性因子に共有結合されている。
【0103】
細胞結合因子、細胞傷害性因子及びリンカーは、以下でより詳しく論述されている。
【0104】
細胞結合因子
治療剤としての本発明の化合物の有効性は、適切な細胞結合因子の注意深い選択に依存する。細胞結合因子は、現在知られており又は公知となるあらゆる種類のものであり得、ペプチド及び非ペプチドが含まれる。細胞結合因子は、特異的な又は非特異的な様式で、細胞を結合することができるあらゆる化合物であり得る。一般に、これらは、抗体(特に、モノクローナル抗体)、リンホカイン、ホルモン、成長因子、ビタミン、栄養素輸送分子(トランスフェリンなど)又は他のあらゆる細胞結合分子又は物質であり得る。
【0105】
使用可能な細胞結合因子のより具体的な例には、以下のものが含まれる。
【0106】
a)ポリクローナル抗体;
b)モノクローナル抗体;
c)Fab、Fab’及びF(ab’)
2、Fvなどの抗体の断片(Parham,1983,J.Immunol.,131:2895−2902;Spring et al.,1974,J.Immunol.,113:470−478;Nisonoff et al.,1960,Arch.Biochem.Biophys.,89:230−244)。
【0107】
特に、38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39から選択される抗CD38モノクローナル抗体を、本発明の細胞結合因子として使用することができる。同様に、前記細胞結合因子は、38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39モノクローナル抗体の1つのキメラ様式であり得る。好ましくは、ヒト化された抗CD38抗体は、本発明の細胞結合因子として使用される。より好ましくは、ヒト化された抗CD38抗体は、ヒト化された又は再表面化された38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体から選択される。
【0108】
細胞傷害性因子
別の実施形態において、薬物をCD38タンパク質に標的誘導することによって、抗原発現細胞に対して特異的な細胞傷害性を有するプロドラッグを形成するために、ヒト化抗体又はそのエピトープ結合断片は、マイタンシノイドなどの薬物に連結させることができる。このような抗体及び高度に毒性を有する小薬物(例えば、マイタンシノイド、タキサン、トマイマイシン誘導体、レプトマイシン誘導体及びCC−1065類縁体)を含む細胞傷害性連結体は、リンパ腫、白血病及び多発性骨髄腫などの腫瘍の治療ための治療剤として使用することができる。
【0109】
本発明の細胞傷害性連結体中で使用される細胞傷害性因子は、細胞の死をもたらす、又は細胞死を誘導する、又は何らかの様式で、細胞の生存性を減少させるあらゆる化合物であり得る。好ましい細胞傷害性因子には、例えば、以下に定義されている、マイタンシノイド及びマイタンシノイド類縁体、タキソイド、トマイマイシン誘導体、レプトマイシン誘導体、CC−1065及びCC−1065類縁体、ドラスタチン及びドラスタチン類縁体が含まれる。これらの細胞傷害性因子は、本明細書に開示されているような抗体、抗体断片、機能的均等物、改良された抗体及びこれらの類縁体に連結される。
【0110】
細胞傷害性連結体は、インビトロ法によって調製され得る。薬物又はプロドラッグを抗体に連結させるために、連結基が使用される。適切な連結基は本分野において周知であり、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチダーゼ不安定性基及びエステラーゼ不安定性基が含まれる。好ましい連結基は、ジスルフィド基及びチオエーテル基である。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、又は抗体と薬物又はプロドラッグとの間にチオエーテル結合を形成させることによって、連結体を構築することができる。
【0111】
マイタンシノイド
細胞傷害性連結体を形成するために本発明において使用され得る細胞傷害性因子としては、マイタンシノイド及びマイタンシノイド類縁体がある。適切なマイタンシノイドの例には、マイタンシノール及びマイタンシノール類縁体が含まれる。マイタンシノイドは、微小管形成を阻害し、及び哺乳動物細胞に対して高度に毒性である薬物である。
【0112】
適切なマイタンシノール類縁体の例には、修飾された芳香環を有するもの及び他の位置に修飾を有するものが含まれる。このような適切なマイタンシノイドは、米国特許第4,424,219号;米国特許第4,256,746号;米国特許第4,294,757号;米国特許第4,307,016号;米国特許第4,313,946号;米国特許第4,315,929号;米国特許第4,331,598号;米国特許第4,361,650号;米国特許第4,362,663号;米国特許第4,364,866号;米国特許第4,450,254号;米国特許第4,322,348号;米国特許第4,371,533号;米国特許第6,333,410号;米国特許第5,475,092号;米国特許第5,585,499号;米国特許第5,846,545号に開示されている。
【0113】
修飾された芳香環を有するマイタンシノールの適切な類縁体の具体例には、以下のものが含まれる。
(1)C−19−デクロロ(米国特許第4,256,746号)(アンサミトシンP2のLAH還元によって調製される。);
(2)C−20−ヒドロキシ(又はC−20−デメチル)+/−C−19−デクロロ(米国特許第4,361,650号及び米国特許第4,307,016号)(ストレプトミセス(Streptomyces)若しくはアクチノミセス(Actinomyces)を用いた脱メチル化又はLAHを用いた脱塩素化によって調製される。);及び
(3)C−20−デメトキシ、C−20−アシルオキシ(−OCOR)、+/−デクロロ(米国特許第4,294,757号)(塩化アシルを用いたアシル化によって調製される。)。
【0114】
他の位置の修飾を有するマイタンシノールの適切な類縁体の具体例には、以下のものが含まれる。
(1)C−9−SH(米国特許第4,424,219号)(マイタンシノールのH2S又はP2S5との反応によって調製される。);
(2)C−14−アルコキシメチル(デメトキシ/CH2OR)(米国特許第4,331,598号);
(3)C−14−ヒドロキシメチル又はアシルオキシメチル(CH
2OH又はCH
2OAc)(米国特許第4,450,254号)(Nocardiaから調製される。);
(4)C−15−ヒドロキシ/アシルオキシ(米国特許第4,364,866号)(ストレプトミセスによるマイタンシノールの転化によって調製される。);
(5)C−15−メトキシ(米国特許第4,313,946号及び米国特許第4,315,929号)(トレウィア・ヌディフロラ(Trewia nudiflora)から単離される。);
(6)C−18−N−デメチル(米国特許第4,362,633号及び米国特許第4,322,348号)(ストレプトミセスによるマイタンシノールの脱メチル化によって調製される。);及び
(7)4,5−デオキシ(米国特許第4,371,533号)(マイタンシノールの三塩化チタン/LAH還元によって調製される。)。
【0115】
好ましい実施形態において、本発明の細胞傷害性連結体は、以前には、N2’−デアセチル−N2’−(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−マイタンシンと称されていたチオール含有マイタンシノイド(DM1)を細胞傷害性因子として使用する。DM1は、以下の構造式(I)によって表される。
【0117】
別の好ましい実施形態において、本発明の細胞傷害性連結体は、チオール含有マイタンシノイドであるN2’−デアセチル−N−2’−(4−メチル−4−メルカプト−1−オキソペンチル)−マイタンシンを細胞傷害性因子として使用する。DM4は、以下の構造式(II)によって表される。
【0119】
本発明のさらなる実施形態において、硫黄原子を有する炭素原子上にモノアルキル又はジアルキル置換を有するチオール及びジスルフィド含有マイタンシノイドを含む他のマイタンシンを使用し得る。これらには、C−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシ又はC−20デスメチルに、立体障害されたスルフヒドリル基を有するアシル基を有するアシル化されたアミノ酸側鎖を有するマイタンシノイドが含まれ、チオール官能性を有するアシル基の炭素原子は1つ又は2つの置換基を有し、前記置換基は、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル又はアルケニル、3から10個の炭素原子を有する環状アルキル又はアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族若しくはヘテロシクロアルキル基であり、並びに、さらに、置換基の1つはHであり得、及びアシル基はカルボニル官能性と硫黄原子の間に少なくとも3つの炭素原子の直鎖長を有する。
【0120】
このようなさらなるマイタンシンには、式(III)によって表される化合物が含まれる。
【0121】
【化3】
(式中
Y’は、(CR
7R
8)
l(CR
9=CR
10)
p(C≡C)
qA
r(CR
5R
6)
mD
u(CR
11=CR
12)
r(C≡C)
sB
t(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZを表し
(R
1及びR
2は、各々独立に、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル若しくはアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基であり、及びさらにR
2はHであり得;
A、B、Dは、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル又はシクロアルケニル、単純な又は置換された、アリール又は複素環式芳香族若しくはヘテロシクロアルキル基であり;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
11及びR
12は、各々独立に、H、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル若しくはアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基であり;
l、m、n、o、p、q、r、s及びtは、各々独立に0であり、又は1から5の整数であり(但し、何れの一回においても、l、m、n、o、p、q、r、s及びtの少なくとも2つは0でない。);並びに
Zは、H、SR又は−COR(Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル若しくはアルケニル又は単純な若しくは置換されたアリール若しくは複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基である。)である。)
【0122】
式(III)の好ましい実施形態には、
R
1がHであり、R
2がメチルであり、及びZがHである、
R
1及びR
2がメチルであり、並びにZがHである、
R
1がHであり、R
2がメチルであり、及びZが−SCH
3である、
R
1及びR
2がメチルであり、並びにZが−SCH
3である、
式(III)の化合物が含まれる。
【0123】
このようなさらなるマイタンシンには、式(IV−L)、(IV−D)又は(IV−D,L)によって表される化合物も含まれる。
【0124】
【化4】
(式中
Yは、(CR
7R
8)
l(CR
5R
6)
m(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZを表し
(R
1及びR
2は、各々独立に、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル若しくはアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基であり、及びさらにR
2はHであり得;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7及びR
8は、各々独立に、H、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル若しくはアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基であり;
l、m及びnは、各々独立に、1から5の整数であり、及びさらに、nは0であり得;
Zは、H、SR又は−COR(Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する環状アルキル若しくはアルケニル又は単純な若しくは置換されたアリール若しくは複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基である。);並びに
Mayは、C−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシ又はC−20デスメチルに側鎖を有するマイタンシノイドを表す。)
【0125】
式(IV−L)、(IV−D)及び(IV−D
,L)の好ましい実施形態には、
R
1がHであり、R
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7及びR
8が各々Hであり、l及びmが各々1であり、nが0であり、並びにZがHである、
R
1及びR
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7、R
8が各々Hであり、l及びmが1であり、nが0であり、並びにZがHである、
R
1がHであり、R
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7、R
8が各々Hであり、l及びmが各々1であり、nが0であり、並びにZが−SCH
3である、
R
1及びR
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7、R
8が各々Hであり、l及びmが1であり、nが0であり、並びにZが−SCH
3である、
式(IV−L)、(IV−D)及び(IV−D
,L)の化合物が含まれる。
【0126】
好ましくは、細胞傷害性因子は、式(IV−L)によって表される。
【0127】
このようなさらなるマイタンシンには、式(V)によって表される化合物も含まれる。
【0128】
【化5】
(式中、
Yは、(CR
7R
8)
l(CR
5R
6)
m(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZを表し
(R
1及びR
2は、各々独立に、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル若しくはアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基であり、及びさらにR
2はHであり得;
R
3、R
4、R
5、R
8、R
7及びR
8は、各々独立に、H、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル若しくはアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基であり;
l、m及びnは、各々独立に、1から5の整数であり、及びさらに、nは0であり得る。);並びに
Zは、H、SR又は−COR(Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル若しくはアルケニル又は単純な若しくは置換されたアリール若しくは複素環式芳香族若しくはヘテロシクロアルキル基である。)である。)
【0129】
式(V)の好ましい実施形態には、
R
1はHであり、R
2はメチルであり、R
5、R
6、R
7及びR
8は各々Hであり、l及びmは各々1であり、nは0であり、並びにZはHである、
R
1及びR
2はメチルであり、R
5、R
6、R
7及びR
8は各々Hであり、l及びmは1であり、nは0であり、並びにZはHである、
R
1はHであり、R
2はメチルであり、R
5、R
6、R
7、R
8は各々Hであり、l及びmは各々1であり、nは0であり、並びにZは−SCH
3である、
R
1及びR
2はメチルであり、R
5、R
6、R
7及びR
8は各々Hであり、l及びmは1であり、nは0であり、並びにZは−SCH
3である、
式(V)の化合物が含まれる。
【0130】
さらに、このようなさらなるマイタンシンには、式(VI−L)、(VI−D)又は(VI−D,L)によって表される化合物が含まれる。
【0131】
【化6】
(式中
Y
2は、(CR
7R
8)
l(CR
5R
6)
m(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZ
2を表し
(R
1及びR
2は、各々独立に、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル若しくはアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基であり、及びさらにR
2はHであり得;
R
3、R
4、R
5、R
8、R
7及びR
8は、各々独立に、H、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖環状アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル若しくはアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族若しくはヘテロシクロアルキル基であり;
l、m及びnは、各々独立に、1から5の整数であり、及びさらに、nは0であり得;
Z
2は、SR又はCOR(Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル若しくはアルケニル又は単純な若しくは置換されたアリール若しくは複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基である。)である。);並びに
Mayは、マイタンシノイドである。)
【0132】
このようなさらなるマイタンシンには、式(VII)によって表される化合物も含まれる。
【0133】
【化7】
(式中
Y
2’は、(CR
7R
8)
l(CR
9=CR
10)
p(C≡C)
qA
r(CR
5R
6)
mD
u(CR
11=CR
12)
r(C≡C)
sB
t(CR
3R
4)
nCR
1R
2SZ
2を表す
(R
1及びR
2は、各々独立に、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖分岐若しくはアルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する環状アルキル若しくはアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基であり、及びさらにR
2はHであり得;
A、B及びDは、各々独立に、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル又はシクロアルケニル、単純な又は置換された、アリール又は複素環式芳香族若しくはヘテロシクロアルキル基であり;
R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
11及びR
12は、各々独立に、H、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル若しくはアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基であり;
l、m、n、o、p、q、r、s及びtは、各々独立に0であり、又は1から5の整数であり(但し、何れの一回においても、l、m、n、o、p、q、r、s及びtの少なくとも2つは0でない。);及び
Z
2は、SR又は−COR(Rは、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル若しくはアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル若しくはアルケニル又は単純な若しくは置換されたアリール若しくは複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基である。)である。)。)
【0134】
式(VII)の好ましい実施形態には、R
1がHであり、及びR
2がメチルである式(VII)の化合物が含まれる。
【0135】
上記マイタンシノイドは、抗CD38抗体38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31若しくは38SB39又はこれらの相同体若しくは断片に連結させることができ、前記抗体は、マイタンシノイドのC−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシ又はC−20デスメチルに見出されるアシル化されたアミノ酸側鎖のアシル基の上に存在するチオール又はジスルフィド官能基を用いてマイタンシノイドに連結されており、アシル化されたアミノ酸側鎖のアシル基は、1つ又は2つの置換基を有する炭素原子に位置するそのチオール又はジスルフィド官能性を有し、前記置換基はCH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐又は環状アルキル又はアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族若しくはヘテロシクロアルキル基であり、並びにさらに、置換基の1つはHであり得、並びにアシル基はカルボニル官能性と硫黄原子の間に少なくとも3つの炭素原子の直鎖長を有する。
【0136】
本発明の好ましい連結体は、式(VIII)のマイタンシノイドに連結された抗抗CD38抗体38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31若しくは38SB39又はこれらの相同体若しくは断片を含むものである。
【0137】
【化8】
(式中
Y
1’は、(CR
7R
8)
l(CR
9=CR
10)
p(C≡C)
qA
r(CR
5R
6)
mD
u(CR
11=CR
12)
r(C≡C)
sB
t(CR
3R
4)
nCR
1R
2S−を表す
(A、B及びDは、各々独立に、3から10個の炭素原子を有するシクロアルキル又はシクロアルケニル、単純な又は置換された、アリール又は複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基であり;
R
3、R
4、R
5、R
8、R
7、R
8、R
9、R
11及びR
12は、各々独立に、H、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐又は環状アルキル又はアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基であり;並びに
l、m、n、o、p、q、r、s及びtは、各々独立に0であり、又は1から5の整数であり(但し、何れの一回においても、l、m、n、o、p、q、r、s及びtの少なくとも2つは0でない。)。)
【0138】
好ましくは、R
1はHであり、及びR
2はメチルであり、又はR
1及びR
2はメチルである。
【0139】
本発明のさらに好ましい連結体は、式(IX−L)、(IX−D)又は(IX−D,L)のマイタンシノイドに連結された抗CD38抗体38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31若しくは38SB39又はこれらの相同体若しくは断片を含むものである。
【0140】
【化9】
(Y
1は、(CR
7R
8)
l(CR
5R
6)
m(CR
3R
4)
nCR
1R
2S−を表し
(R
1及びR
2は、各々独立に、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐又は環状アルキル又はアルケニル、フェニル、置換されたフェニル、複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基であり、及びさらにR
2はHであり得;
R
3、R
4、R
5、R
8、R
7及びR
8は、各々独立に、H、CH
3、C
2H
5、1から10個の炭素原子を有する直鎖アルキル又はアルケニル、3から10個の炭素原子を有する分岐若しくは環状アルキル又はアルケニル、フェニル、置換されたフェニル又は複素環式芳香族又はヘテロシクロアルキル基であり;
l、m及びnは、各々独立に、1から5の整数であり、及びさらに、nは0であり得る。);並びに
Mayは、C−3、C−14ヒドロキシメチル、C−15ヒドロキシ又はC−20デスメチルに側鎖を有するマイタンシノールを表す。)
【0141】
式(IX−L)、(IX−D)及び(IX−D
,L)の好ましい実施形態には、
R
1がHであり、及びR
2がメチルであり、又はR
1及びR
2がメチルである、
R
1がHであり、R
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7及びR
8が各々Hであり、l及びmが各々1であり、nがOである、
R
1及びR
2がメチルであり;R
5、R
6、R
7及びR
8が各々Hであり;l及びmが1であり;nが0である、
式(IX−L)、(IX−D)及び(IX−D
,L)の化合物が含まれる。
【0142】
好ましくは、細胞傷害性因子は、式(IX−L)によって表される。
【0143】
本発明のさらなる好ましい連結体は、式(X)のマイタンシノイドに連結された抗CD38抗体38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31若しくは38SB39又はこれらの相同体若しくは断片を含むものである。
【0144】
【化10】
(置換基は、上記式(IX)に定義されているとおりである。)
【0145】
特に好ましいのは、R
1がHであり、R
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7及びR
8が各々Hであり、l及びmが各々1であり、並びにnが0である、上記化合物の何れかである。
【0146】
さらに特に好ましいのは、R
1及びR
2がメチルであり、R
5、R
6、R
7、R
8が各々Hであり、l及びmが各々1であり、並びにnが0である、上記化合物の何れかである。
【0147】
さらに、L−アミノアシル立体異性体が好ましい。
【0148】
2004年5月20日に出願された係属中の米国特許出願第10/849,136号に教示されているマイタンシノイドの各々は、本発明の細胞傷害性連結体においても使用され得る。米国特許出願第10/849,136号の開示全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0149】
ジスルフィド含有連結基
38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31又は38SB39抗体などの細胞結合因子にマイタンシノイドを連結するために、マイタンシノイドは連結部分を含む。この連結部分は、特定の部位で完全に活性なマイタンシノイドの放出を可能とする化学的結合を含有する。適切な化学結合は本分野において周知であり、ジスルフィド結合、酸不安定性結合、光不安定性結合、ペプチダーゼ不安定性結合及びエステラーゼ不安定性結合が含まれる。好ましいのは、ジスルフィド結合である。
【0150】
この連結部分は、反応性の化学基も含む。好ましい実施形態において、反応性の化学基は、ジスルフィド結合連結部分を介して、マイタンシノイドに共有結合させることができる。
【0151】
特に好ましい反応性化学基は、N−スクシンイミジルエステル及びN−スルホスクシンイミジルエステルである。
【0152】
反応性化学基を含有する連結部分を含む特に好ましいマイタンシノイドは、連結部分がジスルフィド結合を含有し、及び化学的反応性基がN−スクシンイミジル又はN−スルホスクシンイミジルエステルを含む、マイタンシノールのC−3エステル及びその類縁体である。
【0153】
マイタンシノイド上の多くの位置が、連結部分を化学的に連結するための位置としての役割を果たすことができる。例えば、ヒドロキシル基を有するC−3位置、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14位置、ヒドロキシで修飾されたC−15位置及びヒドロキシ基を有するC−20位は全て、有用であると予想される。しかしながら、C−3位が好ましく、マイタンシノールのC−3位置が特に好ましい。
【0154】
連結部分を有するマイタンシノールのエステルの合成はジスルフィド結合含有連結部分に関して記載されているが、(上述のような)他の化学的結合を有する連結部分も、他のマイタンシノイドと同様に、本発明とともに使用することが可能であることを当業者は理解する。他の化学的結合の具体例には、酸不安定性結合、光不安定性結合、ペプチダーゼ不安定性結合及びエステラーゼ不安定性結合が含まれる。米国特許第5,208,020号の開示(本明細書に組み込まれる。)は、このような結合を有するマイタンシノイドの作製を教示する。
【0155】
反応性基を有するジスルフィド部分を有するマイタンシノイド及びマイタンシノイド誘導体の合成は、米国特許第6,441,163号及び米国特許第6,333,410号並びに米国特許出願10/161,651号(これらの各々は、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0156】
細胞傷害性連結体を作製するために、DM1などの反応性基を含有するマイタンシノイドを、38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31又は38SB39抗体などの抗体と反応させる。これらの連結体は、HPLCによって又はゲルろ過によって精製され得る。
【0157】
このような抗体−マイタンシノイド連結体を作製するための幾つかの優れたスキームが、米国特許第6,333,410号並びに米国特許出願09/867,598号、10/161,651号及び10/024,290号(これらの各々は、その全体が本明細書に組み込まれる。)に提供されている。
【0158】
一般に、水性緩衝液中の抗体の溶液を、反応性基を有するジスルフィド部分を有するマイタンシノイドのモル過剰とともに温置し得る。反応性混合物は、過剰のアミン(エタノールアミン、タウリンなど)の添加によって反応停止させることができる。次いで、ゲルろ過によって、マイタンシノイド−抗体連結体を精製し得る。
【0159】
抗体分子当りの結合されたマイタンシノイド部分の数は、252nmと280nmの吸光度の比を分光光度学的に測定することによって決定することができる。1から10のマイタンシノイド分子/抗体分子の平均が好ましい。
【0160】
マイタンシノイド薬物との抗体の連結体は、インビトロでの様々な望ましくない細胞株の増殖を抑える能力に関して評価することができる。例えば、ヒトリンパ腫細胞株ダウディ、ヒトリンパ腫細胞株ラモス、ヒト多発性骨髄腫細胞株MOLP−8及びヒトT急性リンパ性白血病株MOLT−4などの細胞株は、これらの化合物の細胞傷害性の評価のために容易に使用することができる。評価されるべき細胞を、24時間、化合物に曝露し、公知の方法による直接的なアッセイにおいて、細胞の生存割合を測定することができる。次いで、アッセイの結果から、IC
50値を計算することができる。
【0161】
PEG含有連結基
マイタンシノイドは、米国特許出願10/024,290号に記載されているように、PEG連結基を用いて、細胞結合因子に連結させることもできる。これらのPEG連結基は水及び非水性溶媒の両方に可溶性であり、1つ又はそれ以上の細胞傷害性因子を細胞結合因子に連結するために使用することができる。典型的にはPEG連結基には、一方の末端に位置する官能性スルフヒドリル基又はジスルフィド基及び他方の末端に位置する活性エステルを通じて、リンカーの反対側末端の細胞傷害性因子及び細胞結合因子に結合するヘテロ二官能性PEGリンカーが含まれる。
【0162】
PEG連結基を用いて細胞傷害性連結体を合成する一般的な例として、具体的な詳細に関して米国特許出願10/024,290号が再度参照される。合成は、反応性PEG部分を有する1つ又はそれ以上の細胞傷害性因子の細胞結合因子との反応から始まり、各反応性PEG部分の末端活性エステルが細胞結合因子のアミノ酸残基によって置換され、PEG連結基を通じて細胞結合因子に共有結合された1つ又はそれ以上の細胞傷害性因子を含む細胞傷害性連結体が得られる。
【0163】
タキサン
本発明の細胞傷害性連結体において使用される細胞傷害性因子は、タキサン又はその誘導体でもあり得る。
【0164】
タキサンは、細胞傷害性の天然産物であるパクリタキセル(Taxol)及び半合成誘導体であるドセタキセル(Taxotere)を含む化合物のファミリーであり、2つの化合物は、癌の治療において広く使用されている。タキサンはチュブリンの脱重合を阻害する有糸分裂紡錘体の毒であり、細胞死をもたらす。ドセタキセル及びパクリタキセルは癌の治療において有用な薬剤であるが、それらの抗腫瘍活性は、正常な細胞に対するそれらの非特異的な毒性のために限定される。さらに、パクリタキセル及びドセタキセルそのもののような化合物は、細胞結合因子の連結体中で使用するのに十分に強力ではない。
【0165】
細胞傷害性連結体の調製において使用するための好ましいタキサンは、式(XI)のタキサンである。
【0167】
本発明の細胞傷害性連結体中で使用され得るタキサンを合成するための方法は、抗体などの細胞結合因子へタキサンを連結するための方法とともに、米国特許第5,416,064号、米国特許第5,475,092号、米国特許第6,340,701号、米国特許第6,372,738号及び米国特許第6,436,931号、並びに米国特許出願第10/024,290、10/144,042号、10/207,814、10/210,112及び10/369,563号中で詳しく記載されている。
【0168】
トマイマイシン誘導体
本発明の細胞傷害性は、トマイマイシン誘導体でもあり得る。トマイマイシン誘導体は、ピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン(PBD)であり、DNAの副溝中のグアニンのN2に共有結合することによって生物学的特性を発揮する化合物の公知のクラスである。PBDには、アントラマイシン、ネオトラマイシン及びDC−81などの多数の副溝結合剤が含まれる。
【0169】
高い細胞傷害性を保持し、細胞結合因子へ効果的に連結され得る新規トマイマイシン誘導体は、国際特許出願PCT/IB2007/000142に記載されており、その内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。細胞結合因子−トマイマイシン誘導体複合体は、トマイマイシン誘導体の細胞傷害性作用の全量が望ましくない細胞のみに対して、標的誘導された様式で適用されるようにして、従って、標的とされない健康な細胞に対する損傷に起因する副作用を回避することを可能とする。
【0170】
本発明の細胞傷害性因子は、連結基を介して、38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31又は38SB39抗体などの細胞結合因子に連結された1つ又はそれ以上のトマイマイシン誘導体を含む。連結基は、慣用の方法を通じて、トマイマイシン誘導体に共有結合された化学的部分の一部である。好ましい実施形態において、化学部分は、ジスルフィド結合を介して、トマイマイシン誘導体に共有結合させることができる。
【0171】
本発明において有用なトマイマイシン誘導体は、以下に示されている式(XII)を有する。
【0172】
【化12】
(−−−−は、場合によって存在する単結合を表し;
−−−−は、単結合又は二重結合の何れかを表し;
但し、
−−−−が、単結合を表す場合には、U及びU’(同一又は別異である。)は独立にHを表し、並びにW及びW’(同一又は別異である。)は、OH、−ORなどのエーテル、エステル(例えば、−OCORなどの酢酸エステル)、−OCOORなどの炭酸エステル、−OCONRR’などのカルバミン酸エステル、N10及びC11が環の一部であるような環状カルバミン酸エステル、−NRCONRR’などの尿素、−OCSNHRなどのチオカルバミン酸エステル、N10及びC11が環の一部であるような環状チオカルバミン酸エステル、−SH、−SRなどのスルフィド、−SORなどのスルホキシド、−SOORなどのスルホン、−SO3−などのスルホナート、−NRSOORなどのスルホンアミド、−NRR’などのアミン、N10及びC11が環の一部であるような場合によって環状のアミン、−NROR’などのヒドロキシルアミン誘導体、−NRCORなどのアミド、−N3などのアジド、シアノ、ハロ、トリアルキル又はトリアリールホスホニウム、アミノ酸由来の基からなる群から独立に選択され;好ましくは、W及びW’は、同一又は別異であり、並びにOH、Ome、Oet、NHCONH
2、SMeであり;
並びに、
−−−−が二重結合を表す場合には、、U及びU’は存在せず、並びにW及びW’はHを表し;
・R1、R2、R1’、R2’は同一又は別異であり、並びに1つ若しくはそれ以上のHal、CN、NRR’、CF
3、OR、Aryl、Het、S(O)
qRにより場合によって置換されたハロゲン化物若しくはアルキルから独立に選択され、又はR1及びR2並びにR1’及びR2’は、両者で、それぞれ基=B及び=B’を含有する二重結合を形成する。)
[好ましくは、R1及びR2並びにR1’及びR2’は、両者で、それぞれ、基=B及び=B’を含有する二重結合を形成する。
・B及びB’は同一又は別異であり、並びに1つ若しくはそれ以上のHal、CN、NRR’、CF
3、OR、アリール、Het、S(O)
qRにより場合によって置換されているアルケニルから独立に選択され、又はB及びB’は酸素原子を表す。
好ましくは、B=B’である。
より好ましくは、B=B’は、=CH
2又は=CH−CH
3である。
・X、X’は同一又は別異であり、1つ又はそれ以上の−O−、−NR−、−(C=O)−、−S(O)
q−から独立に選択される。
好ましくは、X=X’である。
より好ましくは、XはX’=Oである。
・A、A’は同一又は別異であり、酸素、窒素又は硫黄原子を場合によって含有するアルキル又はアルケニルから独立に選択され、各々1つ若しくはそれ以上のHal、CN、NRR’、CF
3、OR、S(O)
qR、アリール、Het、アルキル、アルケニルにより、場合によって置換されている。
好ましくは、A=A’である。
より好ましくは、A=A’=置換されていない直鎖アルキルである。
・Y、Y’は同一又は別異であり、H、ORから独立に選択される。
好ましくは、Y=Y’である。
より好ましくは、Y=Y’=Oアルキルであり、より好ましくはOメチルである。
・Tは、−NR−、−O−、−S(O)
q−又は4から10員の、アリール、シクロアルキル、複素環又はヘテロアリールであり(各々、1つ又はそれ以上のHal、CN、NRR’、CF
3、R、OR、S(O)
qR及び/又はリンカーにより、場合によって置換されている。)又は1つ若しくはそれ以上のHal、CN、NRR’、CF
3、OR、S(O)
qR及び/又はリンカーにより場合によって置換された分岐アルキル又は1つ若しくはそれ以上のHal、CN、NRR’、CF
3、OR、S(O)
qR及び/又はリンカーによって置換された直鎖アルキルである。
好ましくは、Tは4から10員のアリール又はヘテロアリールであり、より好ましくは、1つ又はそれ以上のリンカーにより場合によって置換された、フェニル又はピリジルである。
前記リンカーは、連結基を含む。適切な連結基は本分野において周知であり、チオール、スルフィド、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチダーゼ不安定性基及びエステラーゼ不安定性基が含まれる。好ましいのは、ジスルフィド基及びチオエーテル基である。
連結基がチオール−、スルフィド(又はいわゆるチオエーテル−S−)又はジスルフィド(−S−S−)−含有基である場合には、チオール、スルフィド又はジスルフィド基を有する側鎖は直鎖又は分岐の芳香族又は複素環であり得る。当業者は、適切な側鎖を容易に同定することができる。
好ましくは、前記リンカーは、式:
−G−D−(Z)p−S−Z’−である。
(式中、
Gは、単結合若しくは二重結合、−O−、−S−又はNR−であり;
Dは、単結合又は−E−、−E−NR−、−E−NR−F−、−E−O−、−E−O−F−、−E−NR−CO−、−E−NR−CO−F−、−E−CO−、−CO−E−、−E−CO−F、−E−S−、−E−S−F−、−E−NR−C−S−、−E−NR−CS−F−であり;
E及びFは同一又は別異であり、直鎖又は分岐の、−(OCH2CH2)iアルキル(OCH2CH2)j−、−アルキル(OCH2CH2)i−アルキル−、−(OCH2CH2)i−、−(OCH2CH2)iシクロアルキル(OCH2CH2)j−、−(OCH2CH2)i複素環(OCH2CH2)j−、(OCH2CH2)iアリール(OCH2CH2)j−、−(OCH2CH2)iヘテロアリール(OCH2CH2)j−、−アルキル−(OCH2CH2)iアルキル(OCH2CH2)j−、−アルキル−(OCH2CH2)i−、−アルキル−(OCH2CH2)iシクロアルキル(OCH2CH2)j−、−アルキル(OCH2CH2)i複素環(OCH2CH2)j−、−アルキル−(OCH2CH2)iアリール(OCH2CH2)j−、−アルキル(OCH2CH2)iヘテロアリール(OCH2CH2)j−、シクロアルキル−アルキル−、−アルキル−シクロアルキル−、−複素環−アルキル−、−アルキル−複素環−、−アルキル−アリール−、−アリール−アルキル−、−アルキル−ヘテロアリール−、−ヘテロアリール−アルキル−から独立に選択され;
(i及びj(同一又は別異である。)は整数であり、0、1から2000から独立に選択され;
Zは、直鎖又は分岐アルキルであり:
pは、0又は1であり;
Z’は、Hを表し、COR、R20又はSR20などのチオール保護基を表し、R20はH、メチル、アルキル、場合によって置換された、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール若しくは複素環を表し、但し、Z’がHである場合には、前記化合物はPBD部分の1つのイミン結合−NH=上のチオール基−SHの付加から生じる分子内環化によって形成される対応する化合物と平衡状態にある。)。
・n、n’(同一又は別異である。)は、0又は1である。
・qは、0、1又は2である。
・R、R’は同一又は別異であり、H、アルキル、アリールから独立に選択される(各々、Hal、CN、NRR’、CF
3、R、OR、S(O)
qR、アリール、Hetにより場合によって置換されている。)。]
又は医薬として許容されるそれらの塩、水和物若しくは水和された塩若しくはこれらの化合物の多形結晶構造若しくはこれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマー若しくは鏡像異性体である。
【0173】
幾何異性体及び立体異性体を有する一般式(XII)の化合物も、本発明の一部である。
【0174】
式(XII)のトマイマイシン誘導体のN−10,C−11二重結合は、水、アルコール、チオール、一級又は二級アミン、尿素及び他の求核試薬の存在下で、対応するイミン付加物へ、可逆的な様式で容易に転化され得ることが知られている。このプロセスは可逆的であり、非プロトン性有機溶媒中、真空中又は高温で、脱水剤の存在下で、対応するトマイマイシン誘導体を容易に再生することができる(Z.Tozuka,1983,J.Antibiotics,36:276)。
【0175】
従って、一般式(XIII)のトマイマイシン誘導体の可逆的誘導体も、本発明において使用することができる。
【0176】
【化13】
(A、X、Y、n、T、A’、X’、Y’、n’、R1、R2、R1’、R2’は、式(XII)に定義されており、W、W’は同一又は別異であり、OH、−ORなどのエーテル、エステル(例えば、酢酸エステル)、−OCOR、−COOR、−OCOORなどの炭酸エステル、−OCONRR’などのカルバミン酸エステル、N10及びC11が環の一部であるような環状カルバミン酸エステル、−NRCONRR’などの尿素、−OCSNHRなどのチオカルバミン酸エステル、N10及びC11が環の一部であるような環状チオカルバミン酸エステルなど、−SH、−SRなどのスルフィド、−SORなどのスルホキシド、−SOORなどのスルホン、−SO3−などのスルホナート、−NRSOORなどのスルホンアミド、−NRR’などのアミン、N10及びC11が環の一部であるような場合によって環状のアミン、−NROR’などのヒドロキシルアミン誘導体、−NRCOR、−NRCONRR’などのアミド、−N3などのアジド、シアノ、ハロ、トリアルキル又はトリアリールホスホニウム、アミノ酸由来の基からなる群から独立に選択される。)好ましくは、W及びW’は同一又は別異であり、並びにOH、Ome、Oet、NHCONH2、SMeである。)
【0177】
従って、式(XIII)の化合物は、溶媒が水である場合には、水を含む溶媒和物として考えることができ、これらの溶媒和物は特に有用であり得る。
【0178】
好ましい実施形態において、本発明のトマイマイシン誘導体は、以下からなる群から選択される。
8,8’−[1,3−ベンゼンジイルビス(メチレンオキシ)]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−メトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[5−メトキシ−1,3−ベンゼンジイルビス(メチレンオキシ)]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−メトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[1,5−ペンタンジイルビス(オキシ)]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−メトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[1,4−ブタンジイルビス(オキシ)]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−メトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[3−メチル−1,5−ペンタンジイルビス(オキシ)]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−メトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[2,6−ピリジンジイルビス(オキシ)]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−メトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[4−(3−tert−ブトキシカルボニルアミノプロピルオキシ)−2,6−ピリジンジイルビス−(メチレンオキシ)]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−メトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[5−(3−アミノプロピルオキシ)−1,3−ベンゼンジイルビス(メチレンオキシ)]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−メトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[5−(N−メチル−3−tert−ブトキシカルボニルアミノプロピル)−1,3−ベンゼンジイルビス−(メチレンオキシ)]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−メトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−{5−[3−(4−メチル−4−メチルジスルファニル−ペンタノイルアミノ)プロピルオキシ]−1,3−ベンゼンジイルビス(メチレンオキシ)}−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−メトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[5−アセチルチオメチル−1,3−ベンゼンジイルビス(メチレンオキシ−ビス[(S)−2−メチレン−7−メトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
ビス−{2−[(S)−2−メチレン−7−メトキシ−5−オキソ−1,3,,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−8−イルオキシ]−エチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル
8,8’−[3−(2−アセチルチオエチル)−1,5−ペンタンジイルビス(オキシ)]−ビス[(S)−2−メチレン−7−メトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[5−(N−4−メルカプト−4,4−ジメチルブタノイル)アミノ−1,3−ベンゼンジイルビス(メチレンオキシ)]−ビス[7−メトキシ−2−メチレン−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[5−(N−4−メチルジチオ−4,4−ジメチルブタノイル)−アミノ−1,3−ベンゼンジイルビス(メチレンオキシ)]−ビス[7−メトキシ−2−メチレン−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[5−(N−メチル−N−(2−メルカプト−2,2−ジメチルエチル)アミノ−1,3−ベンゼンジイル(メチレンオキシ)]−ビス[7−メトキシ−2−メチレン−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[5−(N−メチル−N−(2−メチルジチオ−2,2−ジメチルエチル)アミノ−1,3−ベンゼンジイル(メチレンオキシ)]−ビス[7−メトキシ−2−メチレン−1,2,3,11a−テトラヒドロ−5H−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(4−(2−(4−メルカプト−4−メチル)−ペンタンアミド−エトキシ)−ピリジン−2,6−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(1−(2−(4−メチル−4−メチルジスルファニル)−ペンタンアミド−エトキシ)−ベンゼン−3,5−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(4−(3−(4−メチル−4−メチルジスルファニル)−ペンタンアミド−プロポキシ)−ピリジン−2,6−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(4−(4−(4−メチル−4−メチルジスルファニル)−ペンタンアミド−ブトキシ)−ピリジン−2,6−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(4−(3−[4−(4−メチル−4−メチルジスルファニル−ペンタノイル)−ピペラジン−1−イル]−プロピル)−ピリジン−2,6−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(1−(3−[4−(4−メチル−4−メチルジスルファニル−ペンタノイル)−ピペラジン−1−イル]−プロピル)−ベンゼン−3,5−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(4−(2−{2−[2−(4−メチル−4−メチルジスルファニル−ペンタノイルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−ピリジン−2,6−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(1−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(4−メチル−4−メチルジスルファニル−ペンタノイルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−ベンゼン−3,5−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(1−(2−{2−[2−(4−メチル−4−メチルジスルファニル−ペンタノイルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−ベンゼン−3,5−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(4−(2−{2−[2−(2−{2−[2−(4−メチル−4−メチルジスルファニル−ペンタノイルアミノ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エトキシ)−ピリジン−2,6−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(1−(2−[メチル−(2−メチル−2−メチルジスルファニル−プロピル)−アミノ]−エトキシ)−ベンゼン−3,5−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(4−(3−[メチル−(4−メチル−4−メチルジスルファニル−ペンタノイル)−アミノ]−プロピル)−ピリジン−2,6−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(4−(3−[メチル−(2−メチル−2−メチルジスルファニル−プロピル)−アミノ]−プロピル)−ピリジン−2,6−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
8,8’−[(1−(4−メチル−4−メチルジスルファニル)−ペンタンアミド)−ベンゼン−3,5−ジメチル)−ジオキシ]−ビス[(S)−2−エト−(E)−イリデン−7−ジメトキシ−1,2,3,11a−テトラヒドロ−ピロロ[2,1−c][1,4]ベンゾジアゼピン−5−オン]
並びに対応するメルカプト誘導体又は医薬として許容されるそれらの塩、水和物若しくは水和された塩若しくはこれらの化合物の多形結晶構造若しくはこれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマー若しくは鏡像異性体である。
【0180】
【化14】
の化合物である。
(式中、X、X’、A、A’、Y、Y’、T、n、n’は、上記定義のとおりである。)
【0181】
式(XII)の化合物は、当業者に周知の多数の方法で調製され得る。化合物は、当業者に理解されているように、例えば、下記の方法の適用若しくは改変又はこれらに対する変形によって合成することができる。適切な修飾及び置換は、当業者に自明及び周知であり、又は科学文献から容易に取得可能である。特に、このような方法は、「R.C.Larock,Comprehensive Organic Transformations,Wiley−VCH Publishers,1999」に見出すことができる。
【0182】
本発明において使用され得るトマイマイシン誘導体を合成するための方法は、国際出願PCT/IB2007/000142号に記載されている。本発明の化合物は、様々な合成経路によって調製され得る。試薬及び出発材料は市販されており、又は当業者によって、周知の技術により容易に合成される(例えば、WO00/12508、WO00/12507、WO2005/040170、WO2005/085260、FR1516743、M.Mori et al.,1986,Tetrahedron、42:3793−3806を参照されたい。)。
【0183】
本発明の連結体分子は、あらゆる技術を用いて形成され得る。本発明のトマイマイシン誘導体は、酸不安定性リンカーを介して、又は光不安定性リンカーによって、抗体又は他の細胞結合因子へ連結され得る。誘導体は、適切な配列を有するペプチドと縮合され、その後、ペプチダーゼ不安定性リンカーを生成させるために、細胞結合因子へ連結することができる。連結体は、第一級ヒドロキシル基を含有するように調製することが可能であり、第一級ヒドロキシル基は、細胞内のエステラーゼによって切断されて、遊離の誘導体を解離させ得る連結体を生成するために、スクシニル化され、細胞結合因子へ連結することができる。好ましくは、誘導体は、遊離の又は保護されたチオール基を含有するように合成され、次いで、1つ又はそれ以上のジスルフィド又はチオール含有誘導体は、ジスルフィド結合又はチオエーテル連結を介して、細胞結合因子へ各々共有結合される。
【0184】
連結の多くの方法が、米国特許第5,416,064号及び米国特許第5,475,092号に教示されている。トマイマイシン誘導体は、遊離のアミノ基を与えるように修飾され、次いで、酸不安定性リンカー又は光不安定性リンカーを介して、抗体又は他の細胞結合因子へ連結され得る。遊離のアミノ基又はカルボキシル基を有するトマイマイシン誘導体は、ペプチドと縮合され、その後、ペプチダーゼ不安定性リンカーを生成させるために、細胞結合因子へ連結することができる。リンカー上に遊離のヒドロキシル基を有するトマイマイシン誘導体は、細胞内のエステラーゼによって切断されて、遊離の薬物を解離させ得る連結体を生成するために、スクシニル化され、細胞結合因子へ連結することができる。最も好ましくは、トマイマイシン誘導体は、遊離の又は保護されたチオール基を生じるように処理され、次いで、ジスルフィド又はチオール含有トマイマイシン二量体は、ジスルフィド結合を介して、細胞結合因子へ連結される。
【0185】
好ましくは、モノクローナル抗体又は細胞結合因子−トマイマイシン誘導体連結体は、上述のようなジスルフィド結合を介して連結されている、トマイマイシン誘導体を送達することができるものである。このような細胞結合連結体は、スクシンイミジルピリジル−ジチオプロピオナート(SPDP)で、モノクローナル抗体を修飾することによるなどの公知の方法によって調製される(Carlsson et al.,1978,Biochem.J.,173:723−737)。生じたチオピリジル基は、次いで、チオール含有トマイマイシン誘導体での処理によって置換されて、ジスルフィド結合された連結体を生成する。あるいは、アリールジチオ−トマイマイシン誘導体の場合には、細胞結合連結体の形成は、予め抗体分子中に導入されたスルフヒドリル基による、トマイマイシン誘導体のアリール−チオールの直接的置換によって実施される。ジスルフィド架橋を介して連結された1から10個のトマイマイシン誘導体薬物を含有する連結体は、何れかの方法によって、容易に調製される。
【0186】
より具体的には、2mMEDTAを含有する0.05Mリン酸カリウム緩衝液、pH7.5中の2.5mg/mLの濃度のジチオ−ニトロピリジル修飾された抗体の溶液が、チオール含有トマイマイシン誘導体(1.3モル当量/ジチオピリジル基)で処理される。修飾された抗体からのチオ−ニトロピリジンの放出は、325nmで分光光度的にモニターされ、約16時間で完了する。抗体−トマイマイシン誘導体連結体は精製され、SephadexG−25又はSephacrylS300のカラムを通したゲルろ過によって、未反応の薬物及び他の低分子量の物質が除去される。抗体分子当りの結合されたトマイマイシン誘導体部分の数は、230nmと275nmの吸光度の比を測定することによって決定することができる。1から10個のトマイマイシン誘導体分子/抗体分子の平均が、この方法によって、ジスルフィド結合を介して連結され得る。
【0187】
抗原を発現する細胞への結合親和性に対する連結の影響は、「Liu et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,93:8618−8623」によって以前に記載された方法を用いて決定することができる。細胞株に対するトマイマイシン誘導体及びそれらの抗体連結体の細胞傷害性は、「Goldmacher et al.,1985,J.Immunol.,135:3648−3651」に記載されているように、細胞増殖曲線の逆外挿によって測定することができる。接着性細胞株に対するこれらの化合物の細胞傷害性は、「Goldmacher et al.,1986,J.Cell Biol.,102:1312−1319」に記載されているクローン原性アッセイによって測定することができる。
【0188】
レプトマイシン誘導体
本発明の細胞傷害性は、レプトマイシン誘導体でもあり得る。本発明において、「レプトマイシン誘導体」は、「Kalesse et al.(2002,Synthesis8:981−1003)」に定義されているレプトマイシンファミリーの一員を表し、レプトマイシンA及びレプトマイシンB、カリスタチン、ラトジャドンA及びラトジャドンBなどのラトジャドン、アンギノマイシンA、B、C、Dなどのアンギノマイシン、カズサマイシン、レプトールスタチン、レプトフラニンA、B、C、Dなどのレプトフラニン類が含まれる。レプトマイシンA及びBの誘導体が好ましい。
【0189】
より具体的には、本発明の誘導体は、式(I)のもの
【0190】
【化15】
(式中、
Ra及びRa’はH又は−Alkであり、好ましくは、Raは−Alk、好ましくはメチルであり、及びRa’はHであり;
R17は、OR、CN、NRR’、ペルフルオロアルキルにより、場合によって置換されたアルキルであり;好ましくは、R17はアルキルであり、より好ましくはメチル又はエチルであり;
R9は、OR、CN、NRR’、ペルフルオロアルキルにより、場合によって置換されたアルキルであり;好ましくは、R9はアルキルで、より好ましくはメチルあり;
Xは、−O−又は−NR−であり;好ましくは、Xは−NR−であり;
Yは−U−、−NR−U−、−O−U−、−NR−CO−U−、−U−NR−CO−、−U−CO−、−CO−U−であり;
好ましくは、Xが−O−である場合には、Yは、−U−、−NR−U−、−U−NR−CO−であり;
Uは、直鎖又は分岐の、−Alk−、−Alk(OCH
2CH
2)
m−、−(OCH
2CH
2)
m−Alk−、−Alk(OCH
2CH
2)
m−Alk−、−(OCH
2CH
2)
m−、−シクロアルキル−、−複素環−、−シクロアルキル−Alk−、−Alk−シクロアルキル−、−複素環−Alk−、−Alk−複素環から選択され;
mは、1ないし2000から選択される整数であり;
好ましくは、Uは、直鎖又は分岐−Alkであり:
Zは、−Alk−であり;
nは、0又は1であり;好ましくは、nは、0であり;
Tは、Hを表し、Ac、R
1若しくはSR
1などのチオール保護基(R
1は、H、メチル、Alk、シクロアルキル、場合によって置換された、アリール又は複素環を表す。)を表し、又はTは、
【0191】
【化16】
(式中、Ra、Ra’、R17、R9、X
、Y、Z、nは、上に定義されているとおりである。)
好ましくは、TはH又はSR
1(R
1はAlk、より好ましくはメチルを表す。)であり;
R、R’(同一又は別異である。)は、H又はアルキルであり;
Alkは、直鎖又は分岐アルキルを表し、好ましくは、Alkは−(CH
2−q(CH
3)
q)
p−(pは1から10の整数を表し、及びqは0から2の整数を表す。)を表し;好ましくは、Alkは、−(CH
2)−又は−C(CH
3)
2−を表す。)
又は医薬として許容されるこれらの塩、水和物若しくは水和された塩若しくはこれらの化合物の多形結晶構造若しくはこれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマー若しくは鏡像異性体である。
【0192】
好ましい化合物は、以下から選択され得る。
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メチルスルファニル−エチル)−アミド
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸]のビス−[(2−メルカプトエチル)−アミド
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メルカプト−エチル)−アミド
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メチルジスルファニル−エチル)−アミド
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メチル−2−メチルジスルファニル−プロピル)−アミド
(2E,10E,12E,16Z,18E)−(R)−6−ヒドロキシ−3,5,7,9,11,15,17−ヘプタメチル−19−((2S,3S)−3−メチル−6−オキソ−3,6−ジヒドロ−2H−ピラン−2−イル)−8−オキソ−ノナデカ−2,10,12,16,18−ペンタエン酸の(2−メルカプト−2−メチル−プロピル)−アミド
又は医薬として許容されるこれらの塩、水和物若しくは水和された塩若しくはこれらの化合物の多形結晶構造若しくはこれらの光学異性体、ラセミ体、ジアステレオマー若しくは鏡像異性体。
【0193】
誘導体を細胞結合因子に連結するために、誘導剤は、ジスルフィド結合、スルフィド(又は、本明細書において、チオエーテル基と称される。)結合、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチダーゼ不安定性基又はエステラーゼ不安定性基などの連結を介して、誘導体が細胞結合因子へ連結できるようにする部分(連結基)を含まなければならない。誘導体は、例えば、ジスルフィド結合、チオエーテル結合、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチダーゼ不安定性基又はエステラーゼ不安定性基を介して、レプトマイシン誘導体を細胞結合因子に連結させるために必要な部分を含有するように調製される。水溶液中での溶解度をさらに増強させるために、連結基はポリエチレングリコールスペーサーを含有することができる。標的とされる細胞の還元的環境が、細胞傷害性の増加を伴って、スルフィド又はジスルフィドの切断及び誘導体の放出をもたらすので、好ましくは、スルフィド又はジスルフィド結合が使用される。
【0194】
本発明の化合物は、様々な合成経路によって調製され得る。試薬及び出発材料は市販されており、又は当業者によって、周知の技術により容易に合成される。本発明の細胞傷害性連結体において使用され得るレプトマイシン誘導体を合成するための方法は、抗体などの細胞結合因子へ前記レプトマイシン誘導体を連結させるための方法と一緒に、欧州特許出願第06290948.6(その内容は、参照により、本明細書に組み込まれている。)に詳しく記載されている。
【0195】
CC−1065類縁体
本発明の細胞傷害性連結体で使用される細胞傷害性因子は、CC−1065又はその誘導体でもあり得る。
【0196】
CC−1065は、ストレプトミセス・ゼレンシス(Streptomyces zelensis)の培養ブロスから単離される強力な抗腫瘍抗生物質である。CC−1065は、ドキソルビシン、メトトレキサート及びビンクリスチンなどの、一般的に使用されている抗癌薬より、インビトロで約1000倍強力である(B.K.Bhuyan et al.,1982,Cancer Res.,42,3532−3537)。CC−1065及びその類縁体は、米国特許第6,372,738号、米国特許第6,340,701号、米国特許第5,846,545号及び米国特許第5,585,499号に開示されている。
【0197】
CC−1065の細胞傷害効力は、そのアルキル化活性及びそのDNA結合活性又はDNA挿入活性と相関付けられている。これらの2つの活性は、分子の別個の部分に存在する。従って、アルキル化活性はシクロプロパピロロインドール(CPI)サブユニット中に含有され、DNA結合活性は2つのピロロインドールサブユニット中に存在する。
【0198】
CC−1065は細胞傷害性因子としてある種の魅力的な特徴を有しているが、治療的な使用に限界を有する。CC−1065のマウスへの投与は、12.5μg/kgの単回静脈内投与から50日後に死亡をもたらす遅延した肝臓毒性を引き起こした(V.L.Reynolds et al.,1986,J.Antibiotics,XXIX:319−334)。このため、遅延毒性を引き起こさない類縁体を開発する努力が促され、CC−1065をモデルとするより単純な類縁体の合成が記載されている(M.A.Warpehoski et al.,1988,J.Med.Chem.,31:590−603)。
【0199】
類縁体の別の系列では、CPI部分がシクロプロパベンゾインドール(CBI)部分によって置換された(D.L.Boger et al.,1990,J.Org.Chem.,55:5823−5833;D.L.Boger et al.,1991,BioOrg.Med.Chem.Lett.,1:115−120)。これらの化合物は、マウス中での遅延毒性を引き起こさずに、親薬物の高いインビトロ効力を維持する。CC−1065のように、これらの化合物は、細胞死を引き起こすために、共有結合的にDNAの副溝に結合するアルキル化剤である。しかしながら、最も有望な類縁体であるアドゼレシン及びカルゼレシンの臨床的評価は、失望的な結果に終わった(B.F.Foster et al.,1996,Investigational New Drugs,13:321−326;I.Wolff et al.,1996,Clin.CancerRes.,2:1717−1723)。これらの薬物は、高い全身毒性のために、乏しい治療効果を示す。
【0200】
CC−1065類縁体の治療的効力は、腫瘍部位への標的化された送達を通じてインビボでの分布を変化させることによって大幅に改善することができ、標的とされていない組織へのより低い毒性をもたらし、従って、より低い全身毒性をもたらす。この最終目標を達成するために、腫瘍細胞を特異的に標的とする細胞結合因子とのCC−1065の類縁体及び誘導体の連結体が記載されている(米国特許第5,475,092号;米国特許第5,585,499号;米国特許第5,846,545号)。これらの連結体は、インビトロにおいて高い標的特異的細胞傷害性を典型的に示し、マウスのヒト腫瘍異種移植モデルでは、卓越した抗腫瘍活性を典型的に示す(R.V.J.Chari et al.,1995,Cancer Res.,55:4079−4084)。
【0201】
最近、水性溶媒中で増強された溶解度を有するCC−1065類縁体のプロドラッグが記載された(欧州特許出願第06290379.4号)。これらのプロドラッグでは、分子のアルキル化部分のフェノール基が、酸性水溶液中での保存時に薬物を安定化し、保護されていない類縁体と比べて増加した水溶性を薬物に付与する官能基で保護されている。保護基は、生理的pHで、容易にインビボで切断されて、対応する活性な薬物を与える。EP06290379.4に記載されているプロドラッグでは、生理的pHで電荷を有し、従って、増大された水溶性を有するフェニルカルバマートを含有するスルホン酸として、フェノール性置換基が保護されている。水溶性をさらに増大させるために、インドリルサブユニットとジスルフィド基などの切断可能な結合との間のリンカー中に、場合によって、ポリエチレングリコールスペーサーを導入することが可能である。このスペーサーの導入は、薬物の効力を変化させない。
【0202】
本発明の細胞傷害性連結体において使用され得るCC−1065類縁体を合成するための方法は、抗体などの細胞結合因子へ前記類縁体を連結させるための方法と一緒に、欧州特許出願第06290379.4(その内容は、参照により、本明細書に組み込まれている。)並びに米国特許第5,475,092、米国特許第5,846,545号、米国特許第5,585,499号、米国特許第6,534,660号及び米国特許第6,586,618号、並びに米国特許出願第10/116,053号及び第10/265,452号に詳しく記載されている。
【0203】
他の薬物
メトトレキサート、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、カリケアマイシン、チュブリシン及びチュブリシン類縁体、デュオカルマイシン及びデュオカルマイシン類縁体、ドラスタチン及びドラスタチン類縁体などの薬物も、本発明の連結体の調製に適している。血清アルブミンなどの中間担体分子を通じて、薬物分子を抗体分子に連結することも可能である。例えば、米国特許出願09/740991号に記載されているようなドキサルビシン及びダウノルビシン化合物も、有用な細胞傷害性因子であり得る。
【0204】
治療的組成物
本発明は、本発明の化合物の治療的有効量及び医薬として許容される担体を含む、哺乳動物中の過剰増殖性疾患又は炎症性疾患又は自己免疫疾患の治療のための治療的組成物にも関する。一実施形態において、前記医薬組成物は、膀胱、乳房、大腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺及び皮膚の癌腫(扁平上皮細胞癌を含む。)を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫などのリンパ球系列の造血器腫瘍;急性及び慢性骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病などの骨髄系列の造血器腫瘍;繊維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉由来の腫瘍;悪性黒色腫、精上皮腫、奇形癌腫、神経芽細胞種及び神経膠腫を含む他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫及びシュワン細胞腫を含む中枢及び末梢神経系の腫瘍;繊維肉腫、横紋筋肉腫及び骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;並びに悪性黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌及び奇形癌腫を含む他の腫瘍、並びにその中でCD38が主に発現されていることが今後決定される他の癌を含む(但し、これらに限定されない。)癌の治療用である。好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物は、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病又は急性リンパ性白血病などの、その中でCD38が発現されている癌及びその中でCD38が主に発現されていることが今後決定される他の癌の治療のために使用される。別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、胃炎、橋本甲状腺炎、強直性脊椎炎、C型肝炎関連クリオグロブリン血症性血管炎、慢性局所性脳炎、類天疱瘡、血友病A、膜性増殖性糸球体腎炎、シェーグレン症候群、成人及び若年性皮膚筋炎、成人多発性筋炎、慢性蕁麻疹、原発性胆汁性肝硬変、突発性血小板減少性紫斑病、視神経脊髄炎、グレーブス甲状腺異常病、類天疱瘡、膜性増殖性糸球体腎炎、チャーグ・ストラウス症候群及び喘息などの自己免疫疾患を治療するために使用することができる。別の実施形態において、前記医薬組成物は、例えば、腎移植拒絶、肝移植拒絶、肺移植拒絶、心臓移植拒絶及び骨髄移植拒絶などの移植拒絶;移植片対宿主病;mV感染、HIV感染、AIDSなどのウイルス感染;並びにジアルジア症、アメーバ症、住血吸虫症及び当業者によって決定されるその他の寄生生物感染症などの寄生生物感染症のような他の疾患に関する。
【0205】
本発明は、
a)本発明の抗体、抗体断片又は抗体連結体の有効量及び;
b)不活性又は生理的に活性であり得る、医薬として許容される担体
を含む、医薬組成物を提供する。
【0206】
本明細書において使用される「医薬として許容される担体」には、生理的に適合性がある、あらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤などが含まれる。適切な担体、希釈剤及び/又は賦形剤の例には、水、生理的食塩水、リン酸緩衝化された生理的食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの1つ又はそれ以上及びこれらの組み合わせが含まれる。多くの場合、組成物中に、糖、ポリアルコール又は塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが好ましい。特に、適切な担体の適切な例には、(1)約1mg/mLから25mg/mLのヒト血清アルブミンを含有する又は含有しないダルベッコのリン酸緩衝化生理的食塩水、pH約7.4、(2)0.9%生理的食塩水(0.9%w/v塩化ナトリウム(NaCl)及び(3)5%(w/v)デキストロースが含まれ、トリプタミンなどの抗酸化剤及びTween20などの安定化剤も含有し得る。
【0207】
本明細書の組成物は、治療されている具体的な疾患に対して必要とされるさらなる治療剤も含有し得る。好ましくは、本発明の抗体、抗体断片又は抗体連結体及び補助的な活性化合物は、互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する。好ましい実施形態において、さらなる治療剤は、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、組織因子(TF)、プロテインC、プロテインS、血小板由来増殖因子(PDGF)、ヘレグリン、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)若しくは血管内皮増殖因子(VEGF)のアンタゴニスト又はHER2受容体、HER3受容体、c−MET及び他の受容体チロシンキナーゼを含む上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、組織因子(TF)、プロテインC、プロテインS、血小板由来増殖因子(PDGF)、ヘレグリン、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)若しくは血管内皮増殖因子(VEGF)に対する受容体のアンタゴニストである。好ましい実施形態において、さらなる治療剤は、CD3、CD14、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD30、CD33、CD36、CD40、CD44、CD52、CD55、CD59、CD56、CD70、CD79、CD80、CD103、CD134、CD137、CD138及びCD152を含む表面抗原分類(CD)の抗原を標的とする薬剤である。好ましい実施形態において、さらなる治療剤は化学療法剤又は免疫調節剤である。
【0208】
本発明の組成物は、様々な形態であり得る。これらには、例えば、液体、半固体及び固体剤形が含まれるが、好ましい形態は、予定される投与の様式及び治療用途に依存する。典型的な好ましい組成物は、注射可能な又は注入可能な液体の形態である。投与の好ましい様式は、非経口(例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下)である。好ましい実施形態において、本発明の組成物は、大量瞬時投与として、又はある期間にわたる連続的注入によって、静脈内に投与される。別の好ましい実施形態において、本発明の組成物は、局所的及び全身的な治療効果を発揮させるために、筋肉内、皮下、関節内、滑膜内、腫瘍内、腫瘍周囲、病変内又は病変周囲経路によって注射される。
【0209】
非経口投与用の無菌組成物は、適切な溶媒中に、必要とされる量で、本発明の抗体、抗体断片又は抗体連結体を取り込ませた後に、精密ろ過による滅菌によって調製することができる。溶媒又はビヒクルとして、水、生理的食塩水、リン酸緩衝化された生理的食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどの及びこれらの組み合わせを使用し得る。多くの場合、組成物中に、糖、ポリアルコール又は塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが好ましい。これらの組成物は、佐剤、特に、湿潤剤、等張化剤、乳化剤、分散剤及び安定化剤も含有し得る。非経口投与用の無菌組成物は、無菌水又は他の何らかの無菌注射可能溶媒中へ、使用時に溶解させ得る無菌固体組成物の形態でも調製し得る。
【0210】
本発明の抗体、抗体断片又は抗体連結体は、経口的に投与することもできる。経口投与用の固体組成物として、錠剤、丸薬、粉末(ゼラチンカプセル、小袋)又は顆粒を使用し得る。これらの組成物において、本発明の活性成分は、デンプン、セルロース、スクロース、ラクトース又はシリカなどの1つ又はそれ以上の不活性希釈剤と、アルゴン流下で混合される。これらの組成物は、希釈剤以外の物質、例えば、ステアリン酸マグネシウム又はタルクなどの1つ以上の潤滑剤、着色剤、コーティング(糖衣錠)又は光沢も含み得る。
【0211】
経口投与用の液体組成物として、水、エタノール、グリセロール、植物油又は液体パラフィンなどの不活性希釈剤を含有する、医薬として許容される溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ及びエリキシルを使用し得る。これらの組成物は、希釈剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、濃縮剤、香味剤及び安定化産物以外の物質を含み得る。
【0212】
投与量は、所望の効果、治療の期間、使用される投与経路に依存し、一般に、投与量は、成人に関しては、経口的に、5mg/日と1000mg/日の間であり、単位投薬量は活性物質の1mgから250mgの範囲である。一般的に、医師は、年齢、体重及び治療されるべき対象に特異的な他の全ての要因に応じて、適切な投与量を決定する。
【0213】
治療的使用法
別の実施形態において、本発明は、CD38を結合し、アポトーシス、ADCC及び/又はCDCによってCD38
+細胞を死滅させることができる抗体を、CD38
+細胞の死滅を必要としている患者に投与することによって、CD38
+細胞を死滅させる方法を提供する。本発明の抗体、抗体断片又は細胞傷害性連結体の種類の何れもが、治療的に使用され得る。従って、本発明は、抗CD38モノクローナル抗体、その断片又はその細胞傷害性連結体の、医薬としての使用を含む。
【0214】
好ましい実施形態において、本発明の抗体、抗体断片又は細胞傷害性連結体は、哺乳動物中の過剰増殖性疾患又は炎症性疾患又は自己免疫性疾患の治療のために使用される。より好ましい実施形態において、上に開示されており、本発明の抗体、抗体断片又は細胞傷害性連結体を含有する医薬組成物の1つは、哺乳動物中の過剰増殖性疾患の治療のために使用される。一実施形態において、疾患は癌である。特に、癌は転移性の癌である。
【0215】
従って、本発明の医薬組成物は、膀胱、乳房、大腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、子宮頸部、甲状腺及び皮膚の癌腫(扁平上皮細胞癌を含む。)を含む癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫などのリンパ球系列の造血器腫瘍;急性及び慢性骨髄性白血病及び前骨髄球性白血病などの骨髄系列の造血器腫瘍;繊維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉由来の腫瘍;悪性黒色腫、精上皮腫、奇形癌腫、神経芽細胞種及び神経膠腫を含む他の腫瘍;星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫及びシュワン細胞腫を含む中枢及び末梢神経系の腫瘍;繊維肉腫、横紋筋肉腫及び骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;並びに悪性黒色腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞癌及び奇形癌腫を含む他の腫瘍、並びにその中でCD38が発現されていることが今後決定される他の癌を含む(但し、これらに限定されない。)様々な癌の治療又は予防において有用である。好ましくは、疾患は、CD38がその中で発現されているNHL、BL、MM、B−CLL、ALL、TCL、AML、HCL、HL又はCMLであり、CD38がその中で主に発現されている今後決定されるべき他の癌である。別の実施形態において、本発明の医薬組成物は、全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、多発性硬化症、クローン病、潰瘍性大腸炎、胃炎、橋本甲状腺炎、強直性脊椎炎、C型肝炎関連クリオグロブリン血症性血管炎、慢性局所性脳炎、類天疱瘡、血友病A、膜性増殖性糸球体腎炎、シェーグレン症候群、成人及び若年性皮膚筋炎、成人多発性筋炎、慢性蕁麻疹、原発性胆汁性肝硬変、突発性血小板減少性紫斑病、視神経脊髄炎、グレーブス甲状腺異常病、類天疱瘡、膜性増殖性糸球体腎炎、チャーグ・ストラウス症候群及び喘息などの自己免疫疾患を治療するために使用することができる。別の実施形態において、前記医薬組成物は、例えば、腎移植拒絶、肝移植拒絶、肺移植拒絶、心臓移植拒絶及び骨髄移植拒絶などの移植拒絶;移植片対宿主病;mV感染、HIV感染、AIDSなどのウイルス感染;並びにジアルジア症、アメーバ症、住血吸虫症及び当業者によって決定されるその他の寄生生物感染症などの寄生生物感染症のような他の疾患に関する。
【0216】
同様に、本発明は、標的細胞又は標的細胞を含有する組織を、本発明の抗体、抗体断片若しくは抗体連結体の有効量と、又は単独で若しくは他の細胞傷害性因子若しくは治療剤と組み合わせて細胞傷害性連結体を含む抗体、抗体断片若しくは治療剤と接触させることを含む、選択された細胞集団の成長を阻害するための方法を提供する。好ましい実施形態において、さらなる治療剤は、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、組織因子(TF)、プロテインC、プロテインS、血小板由来増殖因子(PDGF)、ヘレグリン、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)若しくは血管内皮増殖因子(VEGF)のアンタゴニスト又はHER2受容体、HER3受容体、c−MET及び他の受容体チロシンキナーゼを含む上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、組織因子(TF)、プロテインC、プロテインS、血小板由来増殖因子(PDGF)、ヘレグリン、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)若しくは血管内皮増殖因子(VEGF)に対する受容体のアンタゴニストである。好ましい実施形態において、さらなる治療剤は、CD3、CD14、CD19、CD20、CD22、CD25、CD28、CD30、CD33、CD36、CD40、CD44、CD52、CD55、CD59、CD56、CD70、CD79、CD80、CD103、CD134、CD137、CD138及びCD152を含む表面抗原分類(CD)の抗原を標的とする薬剤である。好ましい実施形態において、さらなる治療剤は化学療法剤又は免疫調節剤である。
【0217】
選択された細胞集団の増殖を阻害する方法は、インビトロ、インビボ又はエキソビボで実施することができる。本明細書において使用される「増殖を阻害する」とは、短期間であるか、又は長期間であるかを問わず、細胞の増殖を遅らせること、細胞の生存性を減少させること、細胞の死を引き起こすこと、細胞を溶解させること及び細胞死を誘導することを意味する。
【0218】
インビトロでの使用の例には、病気に罹患した細胞又は悪性細胞を死滅させるために、同じ患者中への移植の前に自家性骨髄を処理すること、適格性T細胞を死滅させ、及び移植片対宿主病(GVHD)を抑制するためにその移植の前に骨髄を処理すること、標的抗原を発現しない所望のバリアントを除く全ての細胞を死滅させるために、細胞培養物を処理すること、又は望ましくない抗原を発現するバリアントを死滅させることが含まれる。
【0219】
非臨床的なインビトロでの使用の条件は、当業者によって容易に決定される。
【0220】
エキソビボでの臨床的な使用の例は、癌の治療又は自己免疫疾患の治療における自家移植の前に、骨髄から腫瘍細胞若しくはリンパ球系細胞を取り出すこと、又は移植片対宿主病(GVHD)を抑制するために、移植の前に、自家若しくは同種異系の骨髄若しくは組織からT細胞及び他のリンパ球系細胞を取り出すことである。治療は、以下のように実施することができる。患者又は他の個体から骨髄を採取し、次いで、本発明の細胞傷害性因子が添加された血清を含有する培地中で温置する。濃度は、約37℃で約30分から約48時間、約10μMから1pMの範囲である。濃度及び温置の時間の正確な条件、すなわち用量は当業者によって容易に決定される。温置後、血清を含有する培地で骨髄細胞を洗浄し、公知の方法に従って、静脈内注入によって患者に戻される。患者が、骨髄の採取時と処理された細胞の再注入時との間に、切除的化学療法又は全身照射の計画などの他の治療を受ける状況において、処理された骨髄細胞は、標準的な医療機器を用いて、液体窒素中に凍結保存される。
【0221】
臨床的なインビボでの使用に関しては、本発明の抗体、エピトープ結合抗体断片又は細胞傷害性連結体は、無菌性及びエンドトキシンレベルに関して検査された溶液として供給される。細胞傷害性連結体投与の適切なプロトコールの例は、以下のとおりである。各週の静脈内大量瞬時投与として4週間、連結体を毎週与える。大量瞬時投与は、ヒト血清アルブミンの5から10mLを添加することができる正常な生理的食塩水50から100mL中に与えられる。投薬量は、静脈内投与当り10μgから100mg(100ngから1mg/kg/日の範囲)である。より好ましくは、投薬量は50μgから30mgの範囲である。最も好ましくは、投薬量は1mgから20mgの範囲である。治療の4週後に、患者は毎週治療を受け続けることができる。投与経路、賦形剤、希釈剤、投薬量、回数などに関する具体的な臨床プロトコールは、臨床的な状況の保証として、当業者によって決定され得る。
【0222】
診断薬
本発明の抗体又は抗体断片は、インビトロ又はインビボで、生物学的試料中のCD38を検出するためにも使用することができる。一実施形態において、本発明の抗CD38抗体は、組織中の又は組織から得られた細胞中のCD38のレベルを測定するために使用される。好ましい実施形態において、組織は罹患した組織である。前記方法の好ましい実施形態において、組織は腫瘍又はその生検である。前記方法の好ましい実施形態において、まず、組織又はその生検が患者から切り出され、次いで、本発明の抗体又は抗体断片を用いたイムノアッセイにおいて、組織又は生検中のCD38のレベルを測定することができる。別の好ましい実施形態において、CD38のレベルは、凍結し、又は固定することができる組織又はその生検の試料上で測定される。同じ方法は、CD38の細胞表面レベル又はCD38の細胞局在化など、CD38タンパク質の他の特性を決定するために使用することができる。
【0223】
癌を有することが知られた又は癌を有することが疑われている対象中の癌を診断するために、上記方法を使用することが可能であり、前記患者中で測定されたCD38のレベルは、正常な基準対象又は標準のものと比較される。次いで、前記方法は、腫瘍がCD38を発現しているかどうかを決定するために使用することができ、これは、本発明の抗体、抗体断片又は抗体連結体での治療に対して、腫瘍が十分に応答することを示唆し得る。好ましくは、腫瘍は、CD38がその中で発現されているNHL、BL、MM、B−CLL、ALL、TCL、AML、HCL、HL又はCMLであり、CD38がその中で主に発現されている今後決定されるべき他の癌である。
【0224】
さらに、本発明は、研究又は診断用途において使用するためにさらに標識されている、モノクローナル抗体、ヒト化抗体及びこれらのエピトープ結合断片を提供する。好ましい実施形態において、標識は放射線標識、フルオロフォア、発色団、造影剤又は金属イオンである。
【0225】
前記標識された抗体又はそのエピトープ結合断片が、癌又は炎症性疾患又は自己免疫疾患を有することが疑われる対象に投与され、前記対象の体内の標識の分布が測定又はモニターされる、診断方法も提供される。
【0226】
キット
本発明は、例えば、記載されている細胞傷害性連結体と、及び特定の細胞種を死滅させるために細胞傷害性連結体を使用するための指示書とを含むキットも含む。指示書は、インビトロ、インビボ又はエキソビボで、細胞傷害性連結体を使用するための指示を含み得る。
【0227】
典型的には、キットは、細胞傷害性連結体を含有する区画を有する。細胞傷害性連結体は、凍結乾燥された形態、液体形態又はキット中に含められるために修正可能な他の形態であり得る。キットは、キット中の指示書上に記載されている方法を実施するために必要とされるさらなる要素、凍結乾燥された粉末を再構成するための滅菌された溶液、患者に投与する前に、細胞傷害性連結体と組み合わせるためのさらなる因子及び患者への連結体の投与を補助するツールも含有し得る。
【0228】
実施例
ここで、以下の実施例を参照することにより本発明を記載するが、以下の実施例は例示に過ぎず、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0229】
マウスCD38抗体
ヒトCD38の高いレベルを安定的に発現するBalb/cマウスから得られた前B細胞株である300−19細胞(M.G.Reth et al.1985,Nature,317:353−355)を、Balb/cVAFマウスの免疫化のために使用した。ImmnoGen,Inc.で使用された標準的な免疫化プロトコールにより、2から3週ごとに、マウス当り約5×10
6個のCD38発現300−19細胞で、マウスの皮下に免疫した。ハイブリドーマ作製のために屠殺する3日前に、抗原をさらに投与して、免疫化されたマウスに強化免疫を施した。標準的な動物プロトコールに従って、マウスから得た脾臓を集め、RPMI−1640培地中に単一の細胞懸濁液を得るために、2つの凍結された滅菌顕微鏡スライドの間にすり潰した。脾臓細胞をペレット状にし、洗浄し、ポリエチレングリコール−1500(Roche783641)を用いることによって、マウス骨髄腫P3X63Ag8.653細胞(J.F.Kearney et al.1979,JImmunol,123:1548−1550)と融合させた。ヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)を含有するRPMI−1640選択培地(SigmaH−0262)中に、融合された細胞を再懸濁し、37℃(5%CO
2)で、96ウェルの平底培養プレート(Coming−Costar3596、ウェル当り細胞懸濁液200μL)中での増殖に関して選択した。温置の5日後に、各ウェルから、培養上清100μLを除去し、ヒポキサンチン−チミジン(HT)補充物を含有するRPMI−1640培地(SigmaH−0137)100μLと交換した。ハイブリドーマクローンが抗体スクリーニングを行える状態になるまで、37℃(5%CO
2)での温置を継続した。「J.Langone and H.Vunakis(Eds.,Methods in Enzymology,Vol.121,“Immunochemical Techniques,Part I”;Academic Press,Florida)」及び「E.Harlow and D.Lane(“Antibodies:A Laboratory Manual”;1988;Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York)」に記載されているものを含む、免疫化及びハイブリドーマ作製の他の技術も使用することができる。
【0230】
Becton Dickinson FACSCalibur又はFACSArray装置を用いた蛍光活性化細胞選別(FACS)によって、CD38を発現する300−19細胞に結合するが、親300−19細胞には結合しないマウスモノクローナル抗体の分泌に関して、ハイブリドーマから得た培養上清を(FITC又はPE連結抗マウスIgG抗血清を用いて)スクリーニングした。陽性結果が得られたハイブリドーマクローンをサブクローニングし、市販のイソタイプ決定試薬(Roche1493027)を用いて、分泌された各抗CD38抗体のイソタイプを同定した。標準的なプロトコールを用いるプロテインA又はGクロマトグラフィーにより、CD38結合に対して陽性であった計29の抗体を精製し、次いで、さらに性質決定を行った。
【実施例2】
【0231】
抗CD38抗体の結合特性
抗CD38抗体38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39のCD38発現300−19細胞への結合及び親300−19細胞への結合の不存在を示すFACSヒストグラムが
図1に示されている。38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31又は38SB39抗体(10nM)を、2%の正常なヤギ血清を補充した氷冷されたRPMI−1640培地100μL中で、CD38を発現する300−19細胞又は親300−19細胞(1から2×10
5細胞/試料)の何れかとともに3時間温置した。次いで、細胞をペレット状にし、洗浄し、FITC連結ヤギ抗マウスIgG抗体(JacksonLaboratory、100μL、2%の正常なヤギ血清が補充された冷RPMI−1640培地中に6μg/mL)とともに氷上で1時間温置した。細胞を再度ペレット状にし、洗浄し、1%ホルムアルデヒドを含有するPBS200μL中に再懸濁し、CellQuestソフトウェアを備えたFACSCaliburフローサイトメータ(BDBiosciences)を用いて分析した。
【0232】
38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31又は38SB39とともに温置されたCD38発現300−19細胞のFACSヒストグラムは、対応する陰性対照(FITC連結ヤギ抗マウスIgG抗体のみとともに温置された細胞)のものと比べて、強力な蛍光シフトを示した(
図1)。また、これらの抗体の何れかとともに親300−19細胞を温置したときには、有意な蛍光シフトは検出されなかった。陽性対照抗CD38抗体AT13/5(Serotec,MAC1019)を使用すると、類似の結果が得られた。
【0233】
Ramos(ATCCCRL1596)リンパ腫細胞を38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31又は38SB39とともに温置したときにも、強力な蛍光シフトが観察された(
図1)。Ramos細胞への結合に関する38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39の見かけの解離定数(K
D)に対する値は、S字状用量応答曲線に対する非線形回帰法を用いて(GraphPad Prizm,version4,software,San Diego,CA)、
図2に示されているFACS分析曲線から推定した。値は、それぞれ、以下のとおりであった。0.10nM、0.10nM、0.12nM、0.16nM、0.11nM及び3.03nM。
【実施例3】
【0234】
38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体によるラモス及びダウディリンパ腫細胞のアポトーシスの誘導
抗CD38抗体38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗体は、ラモス及びダウディ(ATCCCCL−213)リンパ腫細胞株並びにMOLP−8多発性骨髄腫細胞株(DSMZACC569)のアポトーシスを誘導した。アポトーシスの程度は、アネキシンV(BiosourcePHN1018)のFITC連結物及びTO−PRO−3(InvitrogenT3605)での染色後に、FACS分析によって測定した。アネキシンVは、完全な状態の細胞の細胞膜二重層の外側に位置するホスファチジルセリンを結合するが、内側に位置するホスファチジルセリンを結合しない。健康な正常細胞では、ホスファチジルセリンは膜二重層の内側に発現され、形質膜の内側から外側小葉へのホスファチジルセリンの移行はアポトーシスの最も初期の検出可能なシグナルの1つである。従って、アネキシンVの結合は、アポトーシスの誘導に対するシグナルである。TO−PRO−3は、アポトーシスの後期段階で起こるように膜の完全性が破れたときに、形質膜を貫通することができるに過ぎない単量体のシアニン核酸染色である。
【0235】
10%ウシ胎児血清(FBS)、2mML−グルタミン及び50μg/mLゲンタマイシンが補充されたRMPI−1640培地(以下、完全RMPI−1640培地と表記される。)中、24ウェルプレート中に、指数関数的に増殖している細胞を、約2×10
5細胞/mLで播種した。別段の記載がなければ、一般に、細胞は完全RMPI−1640培地中で増殖させた。5%CO
2を含有する加湿された大気中、37℃で24時間、抗CD38抗体(10nM)とともに細胞を温置した。次いで、細胞をペレット状にして、PBS500μLで2回洗浄し、(アネキシンV−FITCキット中に提供されていた)アネキシンV−FITC5μLを含有する結合緩衝液100μL中に再懸濁し、氷上で15分間温置した。次いで、結合緩衝液及びTO−PRO−3(1μMの最終濃度になるように)400μLを混合物に添加し、FITC及びTO−PRO−3の細胞に付随する蛍光を、FACSによって直ちに測定した。各試料に対して、4,000の現象を収集した。CellQuestソフトウェアを用いて、TO−PRO−3の蛍光(FL4−H;y軸)及びアネキシンV−FITCの蛍光(FL1−H;x軸)に対するドットプロットを作成した。
【0236】
結果が、
図3及び4に示されている。
図3は、様々な抗CD38抗体との24時間の温置後における、ダウディ細胞に対するこのようなドットプロットの例を与える。2つ組みの試料から得られたアネキシンV陽性細胞(TO−PRO−3陽性細胞と陰性細胞の両方を含む。)の平均パーセントがこれらのプロットから求められ、
図4に示されている。予想外のことに、38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39は、強力なアポトーシス活性を示した。非処理細胞の僅か約6%と比べて、これらの抗体の何れかに曝露されたダウディ細胞の30%超がアネキシンV陽性であった(
図3及び4A)。38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39は、10nMの同じ濃度で検査された従来技術のマウスCD38抗体(AT13/5、OKT10、IB4及びSUN−4B7、非処理対照値を差し引いた後、10%未満がアネキシンV陽性)及び本発明者らの研究室で作製された2つの他の抗CD38抗体(38SB7及び38SB23、非処理対照より高くない。すなわち、約6%がアネキシンV陽性)より少なくとも2.4倍強力なアポトーシス活性(非処理対照値を差し引いた後では24%)を示した(
図4A)。AT13/5はSerotec(MCA1019)から購入し、OKT10はハイブリドーマ(ATCCCRL−8022)から作製し、精製した(ATCCCRL−8022)。IB4及びSUN−4B7は、イタリアのTurin大学のF.Malavasi教授から頂いた。同様に、38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗CD38抗体は、従来技術のマウスCD38抗体AT13/5、OKT10、IB4及びSUN−4B7又は2つの他の新しい抗CD38抗体38SB7及び38SB23より(非処理対照値を差し引いた後、2%未満がアネキシンV陽性)、別のリンパ腫細胞株であるラモスに対して、少なくとも3.5倍強力なアポトーシス促進活性を示した(非処理対照値を差し引いた後、7%又はそれ以上がアネキシンV陽性)(
図4B)。最後に、38SB13,38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39抗CD38抗体は、多発性骨髄腫細胞株MOLP−8に対して、強力なアポトーシス促進活性を示した(
図4C)。非処理細胞の約39%と比べて、これらの抗体で処理されたMOLP−8細胞の約50%がアネキシンV陽性であった。これに対して、従来技術のマウスCD38抗体の何れか(AT13/5、OKT10、IB4及びSUN−4B7)又は2つの他の新しい抗CD38抗体38SB7及び38SB23での処理は、アポトーシス細胞の割合に増加をもたらさなかった。
【実施例4】
【0237】
抗C38抗体38SB19抗体の軽鎖及び重鎖のクローニング及び配列決定
38SB19抗体を産生するハイブリドーマ細胞からのRNAの調製
QiagenのRNeasyminiprepキットを用いて、38SB19抗体を産生する5×10
6個のハイブリドーマ細胞から、全RNAの調製物を得た。簡潔に述べると、5×10
6個の細胞をペレット状にし、(1%β−メルカプトエタノールを含有する)RLT緩衝液350μL中に再懸濁した。
【0238】
21.5ゲージの針及び注射器を約10から20回通過させることによって、又は懸濁液がもはや粘性でなくなるまで、懸濁液を均質化した。よく混合された均質化液に、エタノール(70%エタノール水溶液350μL)を添加した。溶液をスピンカラムに移し、2mLの収集管の中に入れ、8000×g超で15秒間遠心した。RPE緩衝液500μLでカラムを2回洗浄し、次いで、新鮮な管に移し、RNアーゼを含まない水30μL及び1分の遠心を用いて溶出した。第二の1分の溶出遠心のために、溶出液(30μL)をカラムに戻した。溶出液30μLの分取試料を水で希釈し、RNA定量のために、260nmでの紫外線吸収を測定するために使用した。
【0239】
逆転写酵素(RT)反応を用いたcDNA調製
InvitrogenのSuperscriptIIキットを用いて、可変領域38SB19抗体cDNAを全RNAから作製した。Qianeasyミニプレップから得られた全RNAの最大5μgを用いて、キットのプロトコールに正確に従った。簡潔に述べると、RNアーゼを含まない無菌蒸留水を用いて、このRNA、ランダムプライマー1μL及びdNTPミックス1μLを12μLとして、65℃で5分間温置した。次いで、少なくとも1分間、この混合物を氷の上に置いた。次に、5×反応緩衝液4μL、0.1MDTT2μL及びRNアーゼOUT1μLを添加し、MJResearchサーマルサイクラー中で、混合物を25℃で2分間温置した。SuprescriptII酵素1μLを添加できるようにサーマルサイクラーを停止し、次いで、25℃でさらに10分間、再開した後、55℃へ50分間シフトした。70℃まで15分間加熱することによって、反応を熱不活化させ、RNアーゼH1μLを添加し、37℃で20分間温置することによって、RNAを除去した。
【0240】
縮重PCR反応
ハイブリドーマ細胞から得られたcDNAに対する第一巡の縮重PCR反応に対する操作は、Wang他(2000)及びCo他(1992)に記載されている方法に基づいた。この巡に対するプライマー(表2)は、pBluescriptIIプラスミド中へのクローニングを促進するために制限部位を含有する。
【0241】
PCR反応成分(表3)を薄壁のPCR管中において、氷上で混合し、次いで、94℃で予め加熱され、停止されたMJリサーチのサーマルサイクラーに移した。反応は、Wang他2000から得られたプログラムを用いて、以下のように実施した。
【0242】
名称:Wang45
94℃、3分
94℃、15秒
94℃、1分
72℃、2分
2へ移動、29回
72℃、6分
4℃、永久
終了
【0243】
次いで、1%低溶融アガロースゲル上でPCR反応混合物を走行させ、300から400塩基対のバンドを切り出し、ZymoDNAミニカラムを用いて精製し、配列決定のために、Agencourtbiosciencesに送った。両方向から38SB19可変領域cDNAを作製するための配列決定プライマーとして、それぞれ、5’及び3’PCRプライマーを使用した。
【0244】
5’末端配列のクローニング
38SB19可変領域軽鎖及び重鎖cDNA配列をクローニングするために使用される縮重プライマーは5’末端配列を変化させるので、完全な配列を解明するために、配列決定のさらなる努力が必要であった。38SB19配列が得られたマウス生殖系列配列に対して、NCBIIgBlastのサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)を検索するために上記方法から得た準備的cDNA配列を使用した。新しいPCR反応がPCRプライマーによる変化を受けていない完全な可変領域cDNAを与えることができるように、マウス抗体のリーダー配列に徐冷するようにPCRプライマーを設計した(表3)。PCR反応、バンド精製及び配列決定は、上述のように行った。
【0245】
配列確認のためのペプチド分析
完全長抗体cDNA配列を得るために、可変領域に対するcDNA配列情報を生殖系列定常領域配列と組み合わせた。次いで、重鎖及び軽鎖の分子量を計算し、マウス38SB19抗体のLC/MS分析によって得られた分子量と比較した。
【0246】
表4は、LC/MSによって測定された値と一緒に、38SB19LC及びHCに対するcDNA配列から計算された質量を与える。分子量の測定は、38SB19軽鎖及び重鎖の両方に対するcDNA配列と合致している。
【実施例5】
【0247】
hu38SB19抗体の組換え発現
hu38SB19に対する可変領域配列は、BlueHeronBiotechnologyによって、コドン最適化され、合成された。この配列には、一重鎖及び直列二重鎖の哺乳動物発現プラスミド中の各定常配列とインフレームにクローニングするための制限酵素部位が隣接している。軽鎖可変領域は、ps38SB19LCZv1.0及びps38SB19v1.00両プラスミド中のEcoRI及びBsiWI部位中にクローニングされる(
図5A及び5C)。重鎖可変領域は、ps38SB19HCNv1.0及びps38SB19v1.00両プラスミド中のHindIII及びApa1部位中にクローニングされる(
図5B及び5C)。これらのプラスミドは、哺乳動物細胞中での一過性の又は安定な形質移入においてhu38SB19を発現させるために使用することができる。他のキメラ抗体及びヒト化抗体を作製するために、類似の発現ベクター構築物を使用した。
【0248】
HEK−293T細胞中でhu38S19を発現させるための一過性形質移入が、BDbiosciencesから得たCaPO
4試薬を用いて行われた。供給されたプロトコールは、発現収率を増大させるために若干改変した。簡潔に述べると、形質移入の24時間前に、ポリエチレンイミン(PEI)で被覆された10cmの組織培養皿の上に、2×10
6個のHEK−293T細胞を播種した。形質移入は、PBSで細胞を洗浄し、培地を、1%UltraLowIgGFBS(Hyclone)を加えたDMEM(Invitrogen)10mLと交換することによって開始した。渦巻き攪拌しながら、溶液A(10μgDNA、Ca
2+溶液86.8μL及び500μLになるようにH
2O)を溶液Bに滴加した。室温で1分間、混合物を温置し、混合物1mLを各10cmプレートに滴加した。形質移入から約16時間後に、培地を、1%UltraLowIgGFBSを加えた新鮮なDMEM10mLと交換した。約24時間後に、2mM酪酸ナトリウムを各10cmプレートに添加した。4日後に、形質移入を採集した。
【0249】
1MTris/HCl緩衝液、pH8.0の1/10容量の添加によって、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーのために上清を調製した。0.22μmフィルター膜を通してpH調整された上清をろ過し、結合緩衝液(PBS、pH7.3)で平衡化されたプロテインAセファロースカラム(HiTrapProteinAHP、1mL、AmershamBiosciences)上に搭載した。DNAなどの細胞材料由来のきょう雑を低下させるために、試料搭載の間に、Q−Sepharoseプレカラム(10mL)をプロテインAカラムの上流に接続した。試料の搭載後、プレカラムを外し、洗浄及び溶出のためにプロテインAカラムの配置を逆にした。280nmの吸収が存在しない、安定なベースラインが得られるまで、結合緩衝液でカラムを洗浄した。0.5mL/分の流速を用いて、0.15MNaCl、pH2.8を含有する0.1M酢酸緩衝液で抗体を溶出した。約0.25mLの画分を集め、1MTris/HCl、pH8.0の1/10容量の添加によって中和した。PBSに対して2回、ピーク画分を一晩透析し、OD
280での吸光度によって、精製された抗体を定量した。若干異なる操作でプロテインGカラムを使用して、ヒト化抗体及びキメラ抗体も精製することが可能である。
【0250】
記載されている全てのキメラ及びヒト化抗CD38抗体は、上述のものと同様の操作で発現され及び精製された。
【実施例6】
【0251】
キメラ抗CD38抗体の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性
ヒトIgG1定常領域を有するキメラ抗体又はヒト化抗体として、幾つかの抗CD38抗体がADCC及び/又はCDC活性を有することが以前に示されているので(J.H.Ellis et al.1995,J Immunol,155:925−937;F.K.Stevenson et al.1991,Blood,77:1071−1079;WO2005/103083)、マウス可変領域及びヒトIgG1/Igκ定常領域からなる38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39のキメラ様式を作製し、ADCC及び/又はCDC活性に関して検査した。標的細胞としてラモス細胞を使用し、及びエフェクター細胞としてヒトナチュラルキラー(NK)細胞を使用して、まず、ADCCに関して、ch38SB13、ch38SB18、ch38SB19、ch38SB30、ch38SB31及びch38SB39を検査した。細胞溶解を測定するために、乳酸脱水素酵素(LDH)放出アッセイを使用した(R.L.Shields et al.,2001,J Biol Chem,276:6591−6604)。
【0252】
NKIsolationKitII(MiltenyiBiotech)に対する改変されたプロトコールを用いて、まず、NK細胞をヒト血液(正常なドナー由来;ResearchBloodComponents,Inc.,Brighton,MAから購入)から単離した。Hankの平衡化された塩溶液(HBSS)で、血液を2から3倍希釈した。希釈された血液25mLを、円錐体チューブ50mL中のFicollPaque25mL上に注意深く重層し、19℃で45分間、400gで遠心した。界面から末梢血単核細胞(PBMC)を集め、新しい50mLのコニカルチューブ中に移し、HBSSで一回洗浄した。NK−単離緩衝液2mL中にPBMCを再懸濁し、次いで、Biotin−AntibodyCocktail(NK−isolation kit、130−091−152、MiltenyiBiotechから)500μLを細胞懸濁液に添加した。Biotin−AntibodyCocktailは、NK細胞を除くリンパ球に結合するビオチン化された抗体を含有する。4℃で10分間、混合物を温置し、次いで、NK−単離緩衝液(PBS、0.1%BSA、1mMEDTA)1.5mL及び抗ビオチンミクロビーズ1mLを添加した。細胞−抗体混合物を、4℃でさらに15分間温置した。次に、NK単離緩衝液50mLで細胞を一回洗浄し、NK単離緩衝液3mL中に再懸濁した。次いで、NK単離緩衝液3mLで、MACSLSカラム(MACSセパレータ機上、MiltenyiBiotech)を事前洗浄した。次いで、LSカラム上に、細胞懸濁物を搭載した。流出物(標識されていない細胞を有する画分)を、新しい50mLコニカルチューブの中に集めた。NK−単離緩衝液3mLで、カラムを3回洗浄した。同じチューブの中に流出物全体を集め、NK単離緩衝液50mLで1回洗浄した。5%ウシ胎児血清、50μg/mLゲンタマイシンが補充されたRPMI−1640の30mL中に、NK細胞を播種した。
【0253】
0.1%BSA、20mMHEPES、pH7.4及び50μg/mLゲンタマイシンが補充されたRPMI−1640培地(以下、RHBP培地と表記)中のch38SB13、ch38SB18、ch38SB19、ch38SB30、ch38SB31及びch38SB39抗体の様々な濃度を、丸底96ウェルプレート中に分取した(50μL/ウェル)。RHBP培地中に、10
6細胞/mLで、標的ラモス細胞を再懸濁し、抗体希釈物を含有する各ウェルに添加した(100μL/ウェル)。標的細胞及び抗体希釈物を含有するプレートを、37℃で30分間温置した。次いで、典型的には標的細胞1:NK細胞3から6の比率で、標的細胞を含有するウェルに、NK細胞(50μL/ウェル)を添加した。NK細胞を加えた対照ウェルに、RHBP培地(50μL/ウェル)を添加した。また、可能な最大LDH放出を測定するために、TritonX−100溶液(RPMI−1640培地、10%TritonX−100)20μLを、抗体なしに、標的細胞のみを含有する3つのウェルに添加した。37℃で4時間、混合物を温置し、次いで、1200rpmで10分間遠心し、上清100μLを新しい平底96ウェルプレートに注意深く移した。CytotoxicityDetectionKit(Roche1644793)から得たLDH反応混合物を各ウェルに添加し(100μL/ウェル)、室温で5から30分間温置した。試料の光学密度を490nmで測定した(OD
490)。TritonX−100処理された試料のOD
490値に対して100%の溶解を割り当て、標的細胞のみを含有する非処理対照試料のOD
490値に0%を割り当てることによって、各試料のパーセント特異的溶解を決定した。NK細胞のみを含有する試料は、無視できるOD
490の読み取りを与えた。
【0254】
ラモス標的細胞及びNKエフェクター細胞を用いて検査を行うと、キメラ抗CD38抗体は極めて強力なADCC活性を示した(
図6)。S字状用量応答曲線を用いた非線形回帰法によって、EC
50値を推測し、ch38SB13に対して0.0013μg/mL、ch38SB18に対して0.0013μg/mL、ch38SB19に対して0.0018μg/mL、ch38SB30に対して0.0022μg/mL、ch38SB31に対して0.0012μg/mL、ch38SB39に対して0.1132μg/mLであることが明らかとなった。キメラ抗CD38抗体も、LP−1(DSMZACC41)多発性骨髄腫細胞に対して強力なADCC活性を示した(EC
50値:ch38SB18に対して0.00056μg/mL;ch38SB19に対して0.00034μg/mL;ch38SB31に対して0.00024μg/mL)(
図7A)。ch38SB19は、ダウディリンパ腫細胞(
図7B)、NALM−6B−ALL細胞DSMZACC128)(
図8A)及びMOLT−4T−ALL細胞(ATTCCRL−1582)(
図8B)をADCCによって効率的に死滅させ、極めて強力なアポトーシス活性を有する抗CD38抗体が様々な造血器の悪性腫瘍に由来する様々な腫瘍細胞に対しても強力なADCC活性を有することを示唆した。また、同じ実験において、非結合IgG1対照抗体(リツキシマブ、Biogenldec)(
図7A、8A及び8B)又はmu38SB19(
図7B)は、有意なADCC活性を持たなかった。
【実施例7】
【0255】
キメラ抗CD38抗体のCDC活性
ch38SB13、ch38SB18、ch38SB19、ch38SB30、ch38SB31及びch38SB39のCDC活性は、(H.Gazzano−Santoro et al.1997,J.Immunol Methods,202:163−171)から改変された方法に基づいて測定した。ヒト補体は、実験の直後に、製造業者の指示通りに精製された滅菌水で再構成された後、RHBP培地で5倍希釈された、凍結乾燥されたヒト補体血清(Sigma−AldrichS1764)であった。RHBP培地中に10
6細胞/mLで懸濁された標的細胞を、平底96ウェル組織培養プレートのウェル中に分注した(50μL/ウェル)。次いで、RHBP培地中の抗CD38抗体の様々な濃度(10nMから0.001nM)の50μLを添加し(試料当り1抗体)、次いで、補体溶液50μL/ウェルを添加した。次いで、5%CO
2を含有する加湿された大気中において、37℃で2時間、プレートを温置し、その後、細胞の生存性を測定するために、RHBP中に希釈された40%AlamarBlue試薬50μL(BiosourceDAL1100)(10%最終)を各ウェルに添加した。Alamar Blueは、生きた細胞の還元能をモニターする。540/590nmで蛍光(相対蛍光単位RFUで)測定する前に、37℃で、5から18時間、プレートを温置した。各試料に対するRFU値からバックグラウンドRFU値(培地のみを有し、一切の細胞を加えていないウェル)を差し引くことによって、バックグラウンド蛍光に対して実験値をまず補正し、次いで、補正されたRFU値を非処理細胞試料の補正されたRFU値で除することによって、各試料に対する特異的な細胞生存性のパーセントを測定した。
【0256】
5%の最終希釈でヒト補体を使用して、Raji−IMG細胞を用いて、キメラ抗CD38抗体試料のCDC活性を検査すると、キメラCD38抗体は、極めて強力なCDC活性を示した(
図9)。Raji−IMGは、Raji細胞(ATCCCCL−86)から誘導された細胞であり、膜補体阻害剤CD55及びCD59のより低いレベルを発現する。
図8に示されているS字状用量応答曲線からの非線形回帰によって、EC
50値を推定した。EC
50値は、以下のとおりである。ch38SB13に関しては0.005μg/mL、ch38SB18に関しては0.0101μg/mL、ch38SB19に関しては0.028μg/mL、ch38SB30に関しては0.020μg/mL、ch38SB31に関しては0.010μg/mL及びch38SB39に関しては0.400μg/mL。キメラ抗CD38抗体は、LP−1多発性骨髄腫細胞に対しても、強力なCDC活性を示した(EC
50値:ch38SB18に関しては0.032μg/mL、ch38SB19に関しては0.030μg/mL、ch38SB31に関しては0.043μg/mL)のに対して、非結合性キメラ対照IgG1(リツキシマブ、Biogenldec)は全くCDC活性を有さなかった(
図10)。ダウディリンパ腫細胞に対してキメラCD38抗体を検査した場合、異なる抗CD38抗体のCDC活性は異なっていた(
図11)。ダウディ細胞の比生存性は、補体の存在下でのch38SB19の1.25μg/mLとの温置後には15%未満であったのに対して、補体の存在下でch38SB18又はch38SB39(1.25μg/mL又はそれ以上の高濃度)とともにそれらを温置した後の、これらの細胞の比生存性には僅かな減少が存在するにすぎなかった(それぞれ、比生存性は85%及び91%であった。)。また、補体の存在下で、ch38SB13、ch38SB30及びch38SB31の1.25μg/mL又はこれより高い濃度とともにダウディ細胞を温置した場合には、比生存性の穏やかな減少が観察されるに過ぎなかった(それぞれ、比生存性は65%、45%及び53%であった。)。
【実施例8】
【0257】
ヒト化抗CD38抗体の結合親和性並びにアポトーシス、ADCC及びCDC活性
ヒト化38SB19の2つの様式(hu38SB19v1.00及びv1.20)及びキメラ38SB19は、ラモス細胞を用いて検査したときに、それぞれ、0.23nM、0.25nM及び0.18nMのK
D値という類似の結合親和性を示した(
図12A)。キメラ及びヒト化38SB19抗体の結合親和性は、ビオチン化されたマウス38SB19抗体の結合との競合能が測定される競合結合アッセイにおいても比較された。ビオチン標識されたマウス38SB19抗体(3×10
−10M)を、ch38SB19、hu38SB19v1.00又はhu38SB19v1.20の様々な濃度と混合した。ラモス細胞とともに、抗体混合物を温置し、FACS分析によるFITC連結ストレプトアビジンを用いて、細胞に結合したビオチン化されたマウス38SB19の量を測定した。hu38SB19v1.00、hu38SB19v1.20及びch38SB19は、ビオチン化されたマウス38SB19の結合と等しく良好に競合し(
図12B)、ヒト化によって、結合親和性が影響を受けないことが再度示された。ダウディ細胞のアポトーシスを誘導する能力に関して、ch38SB19、hu38SB19v1.00及びhu38SB19v1.20(10
−8から10
−11M)を比較すると、これらは同様のアポトーシス活性を示した(
図13)。さらに、hu38SB19v1.00及びv1.20は、LP−1細胞中で、ch38SB19と同様のADCCも示し(
図14)、並びにRaji−IMG及びLP−1細胞中で、ch38SB19と同様のCDC能を示した(
図15)。hu38SB19v1.00は、T細胞急性リンパ芽球性白血病細胞株DND−41(DSMZ525)中で、ch38SB19と同様のCDC活性も示した(
図15)。細胞株の多様な組においてアポトーシスを誘導する能力に関して、hu38SB19v1.00をさらに検査した(
図16)。hu38SB19v1.00(10
−8M)での処理は、B細胞リンパ腫細胞株SU−DHL−8(DSMZACC573)(非処理対照での7%からhu38SB19処理細胞での97%へ)及びNU−DUL−1(DSMZACC579)(非処理対照での10%からhu38SB19処理細胞での37%へ)及びT−ALL細胞株DND−41(非処理対照での7%からhu38SB19処理細胞での69%へ)中にアネキシンV陽性細胞の劇的な増加をもたらした。さらに、hu38SB19v1.00(10−
8M)での処理は、B細胞リンパ球性白血病細胞株JVM−13(DSMZACC19)(非処理対照での8%からhu38SB19処理細胞での17%へ)及び有毛細胞白血病細胞株HC−1(DSMZACC301)(非処理対照での6%からhu38SB19処理細胞での10%へ)中のアネキシンV陽性細胞の割合を増加させた。
【0258】
同様に、ヒト化38SB31の2つの様式(hu38SB31v1.1及びv1.2)並びにキメラ38SB31は、ラモス細胞を用いて検査したときに、それぞれ、0.13nM、0.11nM及び0.12nMのK
D値を有し、類似の結合親和性を示した。キメラ及びヒト化38SB31抗体の結合親和性は、上記のような競合結合アッセイでも比較され、等しく優れた成績を発揮した。幾つかの細胞株中でアポトーシスを誘導する能力に関して、hu38SB31v1.1をさらに検査した。ヒト化抗体は、ラモス、ダウディ、Molp−8及びSU−DHL−8細胞に対して、ch38SB31と同様のアポトーシス活性を示した。さらに、これらの細胞株中で、hu38SB31v1.1は、ch38SB31と同様のADCC及びCDC活性も示した。
【実施例9】
【0259】
38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39のインビボでの有効性
ラモスリンパ腫細胞を用いて確立された免疫欠損マウス(雌のCB.17SCID)中の生存ヒト異種移植腫瘍モデルにおいて、38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31及び38SB39のインビボ抗腫瘍活性を調べた。側方尾静脈を通じて、無血清培地0.1mL中の2×10
6個のラモス細胞を雌のCB.17SCIDマウスに接種した。腫瘍細胞接種から7日後に、体重に基づいて、マウスを7つのグループに無作為に割り当てた。6匹のマウスを有する38SB31処理群及び8匹のマウスを有する38SB39処理群を除き、グループ当り10匹のマウスが存在した。細胞接種から7日後に開始し、連続3週間、週に2回、40mg/kgの用量で、抗体をマウスに静脈内投与した。片方又は両方の後脚が麻痺し、体重の低下が前処理の値から20%を超え、又は動物の病状が重くなり、食物と水を摂取できなくなったら、マウスを屠殺した。38SB13、38SB18、38SB19、38SB30、38SB31又は38SB39での処理は、PBS処理されたマウスと比べて、マウスの生存を有意に延長した(
図17)。PBS処理されたマウスの生存中央値は22日であり、抗体処理されたグループの生存中央値は28から33日の範囲であった。
【0260】
免疫欠損マウス中のさらなるヒト異種移植腫瘍モデルにおいて、mu38SB19及びhu38SB19のインビボでの抗腫瘍活性をさらに調べた。ダウディリンパ腫生存モデルに関しては、側方尾静脈を通じて、無血清培地0.1mL中の5×10
6個のダウディ細胞をSCIDマウスに接種した。研究は、上述のように実施した。mu38SB19又はhu38SB39での処理は、PBS処理されたマウスと比べて、マウスの生存を有意に延長した(
図18)。PBS処理されたマウスの生存中央値は22日であったのに対して、抗体処理されたマウスの生存中央値は47日であった。
【0261】
NCI−H929多発性骨髄腫腫瘍モデルに関しては、10
7個の細胞をSCIDマウスに皮下接種した。6日目に腫瘍がpalpableになった時点で、体重に従って、動物を無作為に10のグループに割り当て、抗体処理を開始した。hu38SB19抗体又は非結合キメラIgG1対照抗体(リツキシマブ、Biogenldec)を、3週連続して、週に2回、40mg/kgの用量で、マウスに静脈内投与した。腫瘍容積をモニターし、腫瘍のサイズが2000mm
3に達したら、又は腫瘍が壊死性になったら、動物を屠殺した。PBS処理群は89日目に、キメラIgG1対照抗体群は84日目に、1000mm
3の平均腫瘍容積に達した(
図19)。hu38SB19での処理は、10匹の動物全てにおいて、腫瘍増殖を完全に抑制した。これに対して、PBS処理群では2匹の動物及びキメラIgG1対照抗体では3匹の動物が腫瘍の退行を示したに過ぎなかった。
【0262】
MOLP−8多発性骨髄腫腫瘍モデルに関しては、10
7個の細胞をSCIDマウスに皮下接種した。4日目に腫瘍が触知可能になった時点で、体重に従って、動物を無作為に10のグループに割り当て、抗体処理を開始した。hu38SB19抗体又はmu38SB19抗体又はキメラIgG1対照抗体を、3週連続して、週に2回、40mg/kgの用量で、マウスに静脈内投与した。腫瘍容積をモニターし、腫瘍のサイズが2000mm
3に達したら、又は腫瘍が壊死性になったら、動物を屠殺した。PBS処理群は22日目に、キメラIgG1対照抗体群は23日目に、500mm
3の平均腫瘍容積に達した(
図20)。これらの群中の腫瘍は何れも退行しなかった。これに対して、hu38SB19又はmu38SB19での処理は、それぞれ、10匹の動物のうち8匹又は10匹の動物のうち6匹に腫瘍の退行をもたらした。
【0263】
【表1】
【0264】
【表2】
【0265】
【表3】
【0266】
【表4】
【0267】
【表5】
【0268】
【表6】