【実施例】
【0022】
以下、本発明による接合材およびその接合材を用いて電子部品を接合する方法の実施例について詳細に説明する。
【0023】
[実施例1]
500mLビーカーに硝酸銀(東洋化学株式会社製)13.4gを入れ、純水72.1gを添加して溶解させることにより、原料液として硝酸銀水溶液を調製した。
【0024】
また、5Lビーカーに1.4Lの純水を入れ、この純水内に窒素を30分間通気させて溶存酸素を除去しながら、40℃まで昇温させた。この純水に保護剤としてソルビン酸(和光純薬工業株式会社製)17.9gを添加した後、安定化剤として28%のアンモニア水(和光純薬工業株式会社製)2.8gを添加した。
【0025】
このアンモニア水を添加した後の水溶液を撹拌しながら、アンモニア水の添加時点(反応開始時)から5分経過後に、還元剤として純度80%の含水ヒドラジン(大塚化学株式会社製)6.0gを添加して、還元液として還元剤含有水溶液を調製した。反応開始時から10分経過後に、液温を40℃に調整した原料液を還元液へ一挙に添加して反応させ、撹拌を終了した。
【0026】
この撹拌を終了した後、30分間熟成して、ソルビン酸で被覆された銀微粒子(銀ナノ粒子)の凝集体を形成させた。この銀微粒子の凝集体を含む液をNo.5Cのろ紙で濾過し、この濾過による回収物を純水で洗浄して、銀微粒子の凝集体を得た。この銀微粒子の凝集体を、真空乾燥機中において80℃で12時間乾燥させ、銀微粒子の凝集体の乾燥粉末を得た。このようにして得られた銀微粒子の凝集体の乾燥粉末を解砕して、2次凝集体の大きさをD
50=2.5μm、D
90=105μmに調整した。
【0027】
このようにして2次凝集体の大きさを調整した銀微粒子の凝集体の乾燥粉末(平均一次粒子径=100nm)91.5gと、粘度およびチクソ性の低下のための分散剤としての2−ブトキシエトキシ酢酸(BEA)(東京化成工業株式会社製)0.95gと、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)(協和発酵ケミカル株式会社製の2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)7.545gと、銅との反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)(関東化学株式会社製のベンゾトリアゾール)0.005gを混合した。
【0028】
このようにして得られた混合物(混合物中の銀微粒子の凝集体の割合は91.5質量%)を、混練脱泡機(EME社製のV−mini300型)により、公転の回転速度1400rpm、自転の回転速度700rpmの混練条件で30秒間混練した後、三本ロール(EXAKT Apparatebaus社製の22851Norderstedt型)により、ギャップを調整しながら10回パスさせて接合材(銀ペースト)を得た。
【0029】
次に、銅基板上に厚さ100μmのメタルマスクを配置し、メタルスキージによる手印刷で上記の接合材(銀ペースト)を10.5mm×10.5mmの大きさで厚さ100μmになるように銅基板上に塗布した。
【0030】
このようにして接合材を塗布した銅基板を、塗布直後と塗布から2時間後にデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製のVHX−900)で(20倍で膜全体が映されるように調整して)観察したところ、塗布直後と塗布から2時間後のいずれも、
図2に示すように、銅基板の表面に凝集物(斑な凸状の凝集物(ブツ))は観察されなかった。
【0031】
その後、接合材を塗布した銅基板(塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板の各々)をホットプレート(アズワン株式会社製)上に設置し、大気雰囲気中において100℃で10分間加熱して予備乾燥することにより、接合材中の気泡やガス成分を除去して予備乾燥膜を形成した。このようにして形成した予備乾燥膜を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製のVHX−900)で観察したところ、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、
図3に示すように、予備乾燥膜にクラックは観察されなかった。
【0032】
次に、(塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板の各々の)銅基板上の予備乾燥膜上に厚さ0.3mmの金めっきが施された(10mm×10mmの大きさの)Siチップを配置し、小型熱プレス機に設置し、大気雰囲気中において6MPaの荷重をかけながら、250℃まで約10秒間で昇温させ、250℃に達した後に15分間保持する本焼成を行って、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によってSiチップを銅基板に接合した。
【0033】
このようにして得られた接合体の接合力を評価するために、接合体の銅基板の両端をメガネレンチで挟んで、30mm×30mmの大きさの中央付近を約90°曲げた後に、元の状態に戻したところ、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、
図4に示すように、銅基板上のSiチップが完全に残っており、接合力が非常に良好であった。
【0034】
[実施例2]
銅との反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)の量を0.006gとした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察し、接合体を作製して接合力を評価したところ、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、銅基板の表面に凝集物は観察されず、予備乾燥膜にクラックは観察されず、接合力も非常に良好であった。
【0035】
[実施例3]
銅との反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)の量を0.004gとした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察し、接合体を作製して接合力を評価したところ、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、銅基板の表面に凝集物は観察されず、予備乾燥膜にクラックは観察されず、接合力も非常に良好であった。
【0036】
[実施例4]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.5gとした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察し、接合体を作製して接合力を評価したところ、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、銅基板の表面に凝集物は観察されず、予備乾燥膜にクラックは観察されず、接合力も非常に良好であった。
【0037】
[比較例1]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.6gとし、反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察し、接合体を作製して接合力を評価した。その結果、塗布直後の銅基板では、銅基板の表面に凝集物は観察されなかったが、塗布から2時間後の銅基板では、
図5に示すように、銅基板の表面に1mm以下程度の大きさの多数の斑な凸状の凝集物が観察され、
図6に示すように、予備乾燥膜にクラックが観察された。また、塗布直後の銅基板では、予備乾燥膜にクラックは観察されず、接合力が非常に良好であった。
【0038】
[比較例2〜4]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.5g、銅との反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)の量をそれぞれ0.05g(比較例2)、0.025g(比較例3)、0.01g(比較例4)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察し、接合体を作製して接合力を評価した。その結果、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、
図7に示すように、銅基板の表面に凝集物は観察されず、
図8に示すように、予備乾燥膜にクラックは観察されなかった。しかし、塗布直後の銅基板を接合した接合体の接合力の評価において、比較例2および3の接合体では、銅基板上のSiチップが全て剥離して、接合力が非常に低く、比較例4の接合体では、
図9に示すように、銅基板上のSiチップの一部が剥離して、接合力が低かった。この結果から、反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)の量が実施例1〜4の場合より多いと、銀の焼結性が低下して、接合力が低下すると考えられる。
【0039】
[比較例5〜7]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.4g(比較例5、6)、8.5g(比較例7)、銅との反応抑止剤としてベンゾトリアゾール(BTA)の代わりにアセチルアセテート(acac)をそれぞれ0.2g(比較例5)、0.15g(比較例6)、0.1g(比較例7)を添加した以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察し、接合体を作製して接合力を評価した。その結果、塗布直後の銅基板では、銅基板の表面に凝集物は観察されなかったが、塗布から2時間後の銅基板では、銅基板の表面に1mm以下程度の大きさの多数の斑な凸状の凝集物が観察された。また、塗布直後の銅基板では、予備乾燥膜にクラックは観察されず、接合力が非常に良好であった。この結果から、銅との反応抑止剤としてベンゾトリアゾール(BTA)の代わりにアセチルアセテート(acac)を使用すると、塗布から2時間後の銅基板では、銅基板の表面に凝集物が生じるのを防止することができないことがわかる。
【0040】
[比較例8]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.6gとし、分散剤として2−ブトキシエトキシ酢酸(BEA)の代わりに2−メトキシエトキシ酢酸(MEA)0.95gを添加し、反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察した。その結果、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、銅基板の表面に1mm以下程度の大きさの多数の斑な凸状の凝集物が観察され、予備乾燥膜にクラックは観察された。
【0041】
[比較例9]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.5gとし、分散剤として2−ブトキシエトキシ酢酸(BEA)の代わりに2−メトキシエトキシ酢酸(MEA)0.95gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察した。その結果、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、銅基板の表面に1mm以下程度の大きさの多数の斑な凸状の凝集物が観察され、予備乾燥膜にクラックは観察された。この結果から、分散剤として2−メトキシエトキシ酢酸(MEA)を使用すると、反応抑止剤の効果が得られないのがわかる。
【0042】
[比較例10]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.4gとし、分散剤として2−ブトキシエトキシ酢酸(BEA)の代わりに2−メトキシエトキシ酢酸(MEA)0.95gを添加し、反応抑止剤としてベンゾトリアゾール(BTA)の代わりにアセチルアセテート(acac)0.2gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察した。その結果、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、銅基板の表面に1mm以下程度の大きさの多数の斑な凸状の凝集物が観察され、予備乾燥膜にクラックは観察された。この結果から、分散剤として2−メトキシエトキシ酢酸(MEA)を使用すると、反応抑止剤の効果が得られないのがわかる。
【0043】
これらの実施例および比較例の接合材の製造条件を表1に示し、観察および評価結果を表2に示す。なお、表2において、銅基板の表面に凝集物が観察されなかった場合を「○」、観察された場合を「×」で示し、銅基板上のSiチップが完全に残っていて接合力が非常に良好な場合を「○」、Siチップの一部が剥離して接合力が低い場合を「△」、Siチップが全て剥離して接合力が非常に低い場合を「×」で示している。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1および表2からわかるように、実施例1〜4の接合材では、塗布直後や塗布から2時間経過後に銅基板の表面に凝集物が生じるのを防止することができるとともに、予備乾燥膜にクラックが生じるのを防止することができ、接合後の曲げ試験の結果も良好であり、接合力が低下するのを防止することができる。