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特許6121804接合材およびその接合材を用いて電子部品を接合する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6121804
(24)【登録日】2017年4月7日
(45)【発行日】2017年4月26日
(54)【発明の名称】接合材およびその接合材を用いて電子部品を接合する方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20170417BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20170417BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20170417BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20170417BHJP
【FI】
   H01B1/22 A
   H01B1/00 M
   B23K20/00 310M
   B23K20/00 310L
   H01L21/52 E
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-118104(P2013-118104)
(22)【出願日】2013年6月4日
(65)【公開番号】特開2014-235942(P2014-235942A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】栗田 哲
(72)【発明者】
【氏名】三好 宏昌
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 圭一
【審査官】 山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−092740(JP,A)
【文献】 特開平10−130508(JP,A)
【文献】 特開平06−290635(JP,A)
【文献】 特開平08−186005(JP,A)
【文献】 特開2011−038128(JP,A)
【文献】 特開2003−335967(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/169076(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/070262(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00−1/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀微粒子と溶剤と分散剤と反応抑止剤を含む銀ペーストからなる接合材において、分散剤が2−ブトキシエトキシ酢酸であり、反応抑止剤がベンゾトリアゾールであり、反応抑止剤の量が銀ペーストに対して0.0025〜0.009質量%であることを特徴とする、接合材。
【請求項2】
前記分散剤の量が前記銀ペーストに対して0.1〜2.0質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の接合材。
【請求項3】
前記溶剤がオクタンジオールであることを特徴とする、請求項1または2に記載の接合材。
【請求項4】
前記銀微粒子が平均一次粒子径1〜200nmの銀微粒子であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の接合材。
【請求項5】
前記銀微粒子が炭素数8以下の有機化合物で被覆されていることを特徴とする、請求項に記載の接合材。
【請求項6】
前記有機化合物がソルビン酸であることを特徴とする、請求項に記載の接合材。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかに記載の接合材を銅基板上に塗布し、その接合材上に電子部品を配置した後、この電子部品に圧力を加えながら加熱することにより、銀接合層を介して電子部品を銅基板に接合することを特徴とする、電子部品の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材およびその接合材を用いて電子部品を接合する方法に関し、特に、銀微粒子を含む銀ペーストからなる接合材およびその接合材を用いてSiチップなどの電子部品を銅基板に接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、銀微粒子を含む銀ペーストを接合材として使用し、被接合物間に接合材を介在させ、被接合物間に圧力を加えながら所定時間加熱して、接合材中の銀を焼結させて、被接合物同士を接合することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような接合材を使用して金属基板上にSiチップなどの電子部品を固定する場合、銀微粒子が溶媒に分散した銀ペーストを基板上に塗布した後、加熱して溶媒を除去することにより、基板上に予備乾燥膜を形成し、この予備乾燥膜上に電子部品を配置した後、電子部品に圧力を加えながら加熱することにより、銀接合層を介して電子部品を基板に接合することができる。
【0004】
しかし、特許文献1の接合方法では、予備乾燥膜は、銀ペーストの分散不良や印刷不良などにより、予備乾燥膜の表面のレベリングが必ずしも良好でないので、電子部品を基板に良好に接合するためには、電子部品に加える圧力を高くして、予備乾燥膜の表面を平坦にする必要がある。そのため、近年のSiチップのように、大きく且つ薄い電子部品では、接合時の荷重を高くすることによりSiチップの表面が反ってしまうという問題がある。
【0005】
このような問題を解消するため、銀微粒子を含む銀ペーストに2−ブトキシエトキシ酢酸や2−メトキシエトキシ酢酸などのエーテル結合を有する構造の粘度調整剤を添加して、平坦な塗膜を形成することができるようにする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−80147号公報(段落番号0014−0020)
【特許文献2】国際公開WO2012/169076号公報(段落番号0009−0016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献2の方法では、銀微粒子を含む銀ペーストに2−ブトキシエトキシ酢酸や2−メトキシエトキシ酢酸などの粘度調整剤を分散剤として添加して、平坦な塗膜を形成することができるようにしており、この銀ペーストによって銅基板に電子部品を接合する場合に、分散剤が銅基板の表面と反応して、銀ペーストが塗布された直後や塗布から所定時間放置した後の銅基板の表面に、斑な凸状の凝集物(ブツ)が生じ、予備乾燥膜にクラックが生じて、このクラック部分が空隙(ボイド)になって接合力が低下し易くなる。
【0008】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、分散剤を添加しても、塗布直後や塗布から所定時間経過後に銅基板の表面に凝集物が生じるのを防止し、予備乾燥膜にクラックが生じて接合力が低下するのを防止することができる、接合材およびその接合材を用いて電子部品を接合する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、銀微粒子と溶剤と分散剤と反応抑止剤を含む銀ペーストからなる接合材において、分散剤として2−ブトキシエトキシ酢酸を使用するとともに、反応抑止剤としてベンゾトリアゾールを使用することにより、分散剤を添加しても、塗布直後や塗布から所定時間経過後に銅基板の表面に凝集物が生じるのを防止し、予備乾燥膜にクラックが生じて接合力が低下するのを防止することができる、接合材およびその接合材を用いて電子部品を接合する方法を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明による接合材は、銀微粒子と溶剤と分散剤と反応抑止剤を含む銀ペーストからなる接合材において、分散剤が2−ブトキシエトキシ酢酸であり、反応抑止剤がベンゾトリアゾールであることを特徴とする。この接合材において、分散剤の量が銀ペーストに対して0.1〜2.0質量%であるのが好ましく、反応抑止剤の量が銀ペーストに対して0.0025〜0.01質量%であるのが好ましい。また、溶剤がオクタンジオールであるのが好ましい。また、銀微粒子が平均一次粒子径1〜200nmの銀微粒子であるのが好ましく、この銀微粒子がソルビン酸などの炭素数8以下の有機化合物で被覆されているのが好ましい。
【0011】
また、本発明による電子部品の接合方法は、上記の接合材を銅基板上に塗布し、その接合材上に電子部品を配置した後、この電子部品に圧力を加えながら加熱することにより、銀接合層を介して電子部品を銅基板に接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、分散剤を添加しても、塗布直後や塗布から所定時間経過後に銅基板の表面に凝集物が生じるのを防止し、予備乾燥膜にクラックが生じて接合力が低下するのを防止することができる、接合材およびその接合材を用いて電子部品を接合する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による電子部品の接合方法の実施の形態により銀接合層を介して電子部品を銅基板に接合した状態を示す断面図である。
図2】実施例1の接合材の塗布から2時間後の銅基板の表面を示すデジタルマイクロスコープ写真である。
図3】実施例1の接合材の塗布から2時間後の銅基板上に形成した予備乾燥膜の表面を示すデジタルマイクロスコープ写真である。
図4】実施例1の接合材の塗布から2時間後の銅基板から得られた接合体を曲げた後に元の状態に戻したときの接合体の表面を示すデジタルマイクロスコープ写真である。
図5】比較例1の接合材の塗布から2時間後の銅基板の表面を示すデジタルマイクロスコープ写真である。
図6】比較例1の接合材の塗布から2時間後の銅基板上に形成した予備乾燥膜の表面を示すデジタルマイクロスコープ写真である。
図7】比較例4の接合材の塗布から2時間後の銅基板の表面を示すデジタルマイクロスコープ写真である。
図8】比較例4の接合材の塗布から2時間後の銅基板上に形成した予備乾燥膜の表面を示すデジタルマイクロスコープ写真である。
図9】比較例4の接合材の塗布から2時間後の銅基板から得られた接合体を曲げた後に元の状態に戻したときの接合体の表面を示すデジタルマイクロスコープ写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による接合材の実施の形態は、(導電粒子としての)銀微粒子と溶剤と分散剤と反応抑止剤を含む銀ペーストからなる接合材において、分散剤として2−ブトキシエトキシ酢酸(BEA)を使用するとともに、反応抑止剤としてベンゾトリアゾール(BTA)を使用する。
【0015】
銀微粒子を含む銀ペーストを基板に塗布して平坦な塗膜を形成するために、銀ペースト中に分散剤として2−ブトキシエトキシ酢酸(BEA)などの酸系の分散剤を添加すると、基板が銅基板である場合には、銀ペーストが塗布された直後や塗布から所定時間放置した後の銅基板の表面に、斑な凸状の凝集物(ブツ)が生じ、予備乾燥膜にクラックが生じて、このクラック部分が空隙(ボイド)になって接合力が低下する。これは、Cuと分散剤が反応して、Cuイオンが銀ペースト中に析出し、そのCuイオンと大気中の酸素とペースト成分が反応して凝集物が生じると考えられる。そのため、本発明による接合材の実施の形態では、Cuとの反応抑止剤として、ベンゾトリアゾール(BTA)のようなCuイオンと錯形成する物質を銀ペーストに添加することにより、銀ペースト中にCuイオンが析出するのを抑えるか、析出したCuイオンを捕捉する。
【0016】
この接合材の実施の形態において、反応抑止剤の量は、銀ペーストに対して0.0025〜0.01質量%であるのが好ましく、0.0025〜0.009質量%であるのがさらに好ましく、0.0025〜0.008質量%であるのが最も好ましい。
【0017】
また、分散剤の量は、銀ペーストに対して0.1〜2.0質量%であるのが好ましく、0.2〜2.0質量%であるのがさらに好ましく、0.5〜2.0質量%であるのが最も好ましい。
【0018】
また、溶剤としてオクタンジオール(ODO)を使用するのが好ましい。
【0019】
さらに、銀微粒子が平均一次粒子径1〜200nmの銀微粒子であるのが好ましく、この銀微粒子がソルビン酸などの炭素数8以下の有機化合物で被覆されているのが好ましい。
【0020】
また、本発明による電子部品の接合方法の実施の形態では、図1に示すように、上記の接合材を銅基板10上に塗布し、その接合材上に電子部品14を配置した後、この電子部品14に圧力を加えながら加熱することにより、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層12を形成し、この銀接合層12を介して電子部品14を銅基板10に接合する。
【0021】
なお、本発明による接合材を製造するために使用する銀微粒子として、2次凝集体の大きさをD50=5μm以下、D90=130μm以下に調整した銀微粒子の凝集体の乾燥粉末を使用するのが好ましい。
【実施例】
【0022】
以下、本発明による接合材およびその接合材を用いて電子部品を接合する方法の実施例について詳細に説明する。
【0023】
[実施例1]
500mLビーカーに硝酸銀(東洋化学株式会社製)13.4gを入れ、純水72.1gを添加して溶解させることにより、原料液として硝酸銀水溶液を調製した。
【0024】
また、5Lビーカーに1.4Lの純水を入れ、この純水内に窒素を30分間通気させて溶存酸素を除去しながら、40℃まで昇温させた。この純水に保護剤としてソルビン酸(和光純薬工業株式会社製)17.9gを添加した後、安定化剤として28%のアンモニア水(和光純薬工業株式会社製)2.8gを添加した。
【0025】
このアンモニア水を添加した後の水溶液を撹拌しながら、アンモニア水の添加時点(反応開始時)から5分経過後に、還元剤として純度80%の含水ヒドラジン(大塚化学株式会社製)6.0gを添加して、還元液として還元剤含有水溶液を調製した。反応開始時から10分経過後に、液温を40℃に調整した原料液を還元液へ一挙に添加して反応させ、撹拌を終了した。
【0026】
この撹拌を終了した後、30分間熟成して、ソルビン酸で被覆された銀微粒子(銀ナノ粒子)の凝集体を形成させた。この銀微粒子の凝集体を含む液をNo.5Cのろ紙で濾過し、この濾過による回収物を純水で洗浄して、銀微粒子の凝集体を得た。この銀微粒子の凝集体を、真空乾燥機中において80℃で12時間乾燥させ、銀微粒子の凝集体の乾燥粉末を得た。このようにして得られた銀微粒子の凝集体の乾燥粉末を解砕して、2次凝集体の大きさをD50=2.5μm、D90=105μmに調整した。
【0027】
このようにして2次凝集体の大きさを調整した銀微粒子の凝集体の乾燥粉末(平均一次粒子径=100nm)91.5gと、粘度およびチクソ性の低下のための分散剤としての2−ブトキシエトキシ酢酸(BEA)(東京化成工業株式会社製)0.95gと、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)(協和発酵ケミカル株式会社製の2−エチル−1,3−ヘキサンジオール)7.545gと、銅との反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)(関東化学株式会社製のベンゾトリアゾール)0.005gを混合した。
【0028】
このようにして得られた混合物(混合物中の銀微粒子の凝集体の割合は91.5質量%)を、混練脱泡機(EME社製のV−mini300型)により、公転の回転速度1400rpm、自転の回転速度700rpmの混練条件で30秒間混練した後、三本ロール(EXAKT Apparatebaus社製の22851Norderstedt型)により、ギャップを調整しながら10回パスさせて接合材(銀ペースト)を得た。
【0029】
次に、銅基板上に厚さ100μmのメタルマスクを配置し、メタルスキージによる手印刷で上記の接合材(銀ペースト)を10.5mm×10.5mmの大きさで厚さ100μmになるように銅基板上に塗布した。
【0030】
このようにして接合材を塗布した銅基板を、塗布直後と塗布から2時間後にデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製のVHX−900)で(20倍で膜全体が映されるように調整して)観察したところ、塗布直後と塗布から2時間後のいずれも、図2に示すように、銅基板の表面に凝集物(斑な凸状の凝集物(ブツ))は観察されなかった。
【0031】
その後、接合材を塗布した銅基板(塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板の各々)をホットプレート(アズワン株式会社製)上に設置し、大気雰囲気中において100℃で10分間加熱して予備乾燥することにより、接合材中の気泡やガス成分を除去して予備乾燥膜を形成した。このようにして形成した予備乾燥膜を、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製のVHX−900)で観察したところ、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、図3に示すように、予備乾燥膜にクラックは観察されなかった。
【0032】
次に、(塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板の各々の)銅基板上の予備乾燥膜上に厚さ0.3mmの金めっきが施された(10mm×10mmの大きさの)Siチップを配置し、小型熱プレス機に設置し、大気雰囲気中において6MPaの荷重をかけながら、250℃まで約10秒間で昇温させ、250℃に達した後に15分間保持する本焼成を行って、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によってSiチップを銅基板に接合した。
【0033】
このようにして得られた接合体の接合力を評価するために、接合体の銅基板の両端をメガネレンチで挟んで、30mm×30mmの大きさの中央付近を約90°曲げた後に、元の状態に戻したところ、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、図4に示すように、銅基板上のSiチップが完全に残っており、接合力が非常に良好であった。
【0034】
[実施例2]
銅との反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)の量を0.006gとした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察し、接合体を作製して接合力を評価したところ、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、銅基板の表面に凝集物は観察されず、予備乾燥膜にクラックは観察されず、接合力も非常に良好であった。
【0035】
[実施例3]
銅との反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)の量を0.004gとした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察し、接合体を作製して接合力を評価したところ、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、銅基板の表面に凝集物は観察されず、予備乾燥膜にクラックは観察されず、接合力も非常に良好であった。
【0036】
[実施例4]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.5gとした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察し、接合体を作製して接合力を評価したところ、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、銅基板の表面に凝集物は観察されず、予備乾燥膜にクラックは観察されず、接合力も非常に良好であった。
【0037】
[比較例1]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.6gとし、反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察し、接合体を作製して接合力を評価した。その結果、塗布直後の銅基板では、銅基板の表面に凝集物は観察されなかったが、塗布から2時間後の銅基板では、図5に示すように、銅基板の表面に1mm以下程度の大きさの多数の斑な凸状の凝集物が観察され、図6に示すように、予備乾燥膜にクラックが観察された。また、塗布直後の銅基板では、予備乾燥膜にクラックは観察されず、接合力が非常に良好であった。
【0038】
[比較例2〜4]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.5g、銅との反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)の量をそれぞれ0.05g(比較例2)、0.025g(比較例3)、0.01g(比較例4)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察し、接合体を作製して接合力を評価した。その結果、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、図7に示すように、銅基板の表面に凝集物は観察されず、図8に示すように、予備乾燥膜にクラックは観察されなかった。しかし、塗布直後の銅基板を接合した接合体の接合力の評価において、比較例2および3の接合体では、銅基板上のSiチップが全て剥離して、接合力が非常に低く、比較例4の接合体では、図9に示すように、銅基板上のSiチップの一部が剥離して、接合力が低かった。この結果から、反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)の量が実施例1〜4の場合より多いと、銀の焼結性が低下して、接合力が低下すると考えられる。
【0039】
[比較例5〜7]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.4g(比較例5、6)、8.5g(比較例7)、銅との反応抑止剤としてベンゾトリアゾール(BTA)の代わりにアセチルアセテート(acac)をそれぞれ0.2g(比較例5)、0.15g(比較例6)、0.1g(比較例7)を添加した以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察し、接合体を作製して接合力を評価した。その結果、塗布直後の銅基板では、銅基板の表面に凝集物は観察されなかったが、塗布から2時間後の銅基板では、銅基板の表面に1mm以下程度の大きさの多数の斑な凸状の凝集物が観察された。また、塗布直後の銅基板では、予備乾燥膜にクラックは観察されず、接合力が非常に良好であった。この結果から、銅との反応抑止剤としてベンゾトリアゾール(BTA)の代わりにアセチルアセテート(acac)を使用すると、塗布から2時間後の銅基板では、銅基板の表面に凝集物が生じるのを防止することができないことがわかる。
【0040】
[比較例8]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.6gとし、分散剤として2−ブトキシエトキシ酢酸(BEA)の代わりに2−メトキシエトキシ酢酸(MEA)0.95gを添加し、反応抑止剤としてのベンゾトリアゾール(BTA)を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察した。その結果、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、銅基板の表面に1mm以下程度の大きさの多数の斑な凸状の凝集物が観察され、予備乾燥膜にクラックは観察された。
【0041】
[比較例9]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.5gとし、分散剤として2−ブトキシエトキシ酢酸(BEA)の代わりに2−メトキシエトキシ酢酸(MEA)0.95gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察した。その結果、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、銅基板の表面に1mm以下程度の大きさの多数の斑な凸状の凝集物が観察され、予備乾燥膜にクラックは観察された。この結果から、分散剤として2−メトキシエトキシ酢酸(MEA)を使用すると、反応抑止剤の効果が得られないのがわかる。
【0042】
[比較例10]
銀微粒子の凝集体の乾燥粉末の量を90.5g、溶剤としてのオクタンジオール(ODO)の量を8.4gとし、分散剤として2−ブトキシエトキシ酢酸(BEA)の代わりに2−メトキシエトキシ酢酸(MEA)0.95gを添加し、反応抑止剤としてベンゾトリアゾール(BTA)の代わりにアセチルアセテート(acac)0.2gを添加した以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、銅基板に塗布して観察し、予備乾燥膜を形成して観察した。その結果、塗布直後の銅基板と塗布から2時間後の銅基板のいずれも、銅基板の表面に1mm以下程度の大きさの多数の斑な凸状の凝集物が観察され、予備乾燥膜にクラックは観察された。この結果から、分散剤として2−メトキシエトキシ酢酸(MEA)を使用すると、反応抑止剤の効果が得られないのがわかる。
【0043】
これらの実施例および比較例の接合材の製造条件を表1に示し、観察および評価結果を表2に示す。なお、表2において、銅基板の表面に凝集物が観察されなかった場合を「○」、観察された場合を「×」で示し、銅基板上のSiチップが完全に残っていて接合力が非常に良好な場合を「○」、Siチップの一部が剥離して接合力が低い場合を「△」、Siチップが全て剥離して接合力が非常に低い場合を「×」で示している。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1および表2からわかるように、実施例1〜4の接合材では、塗布直後や塗布から2時間経過後に銅基板の表面に凝集物が生じるのを防止することができるとともに、予備乾燥膜にクラックが生じるのを防止することができ、接合後の曲げ試験の結果も良好であり、接合力が低下するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 銅基板
12 銀接合層
14 電子部品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9