(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一経路は、前記第二経路の一端に接続し、且つ、前記第二経路の一端を起点として、前記第三の磁気センサと前記第四の磁気センサから遠ざかる方向に延びる経路又は近づく方向に延びる経路であり、
前記第三経路は、前記第二経路の他端に接続し、且つ、前記第二経路の一端を起点として、前記第三の磁気センサと前記第四の磁気センサから遠ざかる方向に延びる経路又は近づく方向に延びる経路であり、
前記第四経路は、前記第五経路の一端に接続し、且つ、前記第五経路の一端を起点として、前記第一の磁気センサと前記第二の磁気センサから遠ざかる方向に延びる経路又は近づく方向に延びる経路であり、
前記第六経路は、前記第五経路の他端に接続し、且つ、前記第五経路の一端を起点として、前記第一の磁気センサと前記第二の磁気センサから遠ざかる方向に延びる経路又は近づく方向に延びる経路であることを特徴とする請求項1または2に記載の電流センサ。
前記第一経路と前記第二経路のなす角度、前記第二経路と前記第三経路のなす角度、前記第四経路と前記第五経路のなす角度及び前記第五経路と前記第六経路のなす角度は90度であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電流センサ。
前記信号処理部は前記第一の磁気センサの出力と前記第二の磁気センサの出力の差分から前記第一の被測定電流の量に基づく信号を生成し、前記第三の磁気センサの出力と前記第四の磁気センサの出力の差分から前記第二の被測定電流の量に基づく信号を生成することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の電流センサ。
前記第一の電流端子と前記第二の電流端子は、平面視で、前記封止部材の側面のうち、前記信号端子を形成するリードフレームが露出する側面に対して直角方向に位置する側面から露出しており、
前記第三の電流端子と前記第四の電流端子は、平面視で、前記封止部材の側面のうち、前記第一の電流端子と前記第二の電流端子が露出する側面と対向する側面から露出している請求項10に記載の電流センサ。
隣接する前記電流経路の前記切欠きは、それぞれ、各相の導体の延存方向に沿って、一対の磁気センサ間の間隔の2倍以上の距離を離して形成されることを特徴とする請求項15に記載の電流センサ。
前記各電流経路はそれぞれ、各相の導体としてのバスバー内に形成され、前記各相の前記バスバーとプリント配線基板は、バスバー基板として一体に形成されていることを特徴とする請求項14から17の何れか1項に記載の電流センサ。
前記バスバー基板には、前記バスバーと基板プリプレグとを貫通する貫通スリットが設けられ、前記貫通スリットの内壁は、前記基板プリプレグにより、前記バスバーが露出しないように形成されていることを特徴とする請求項20に記載の電流センサ。
前記バスバー基板の前記貫通スリットにおいて、前記各磁気センサの感磁部が前記バスバー基板の実装面よりも内側に落とし込まれ、バスバーの厚み中心付近に配置されていることを特徴とする請求項21に記載の電流センサ。
前記バスバー基板において、前記各磁気センサの実装面とは反対側の面に、当該各磁気センサと対向して橋渡しするように配置された磁性材料を備えることを特徴とする請求項18から請求項22の何れか1項に記載の電流センサ。
前記バスバー基板において、前記磁性材料は、穴加工、または切欠き加工によって形成されたバスバー基板の溝を介して、前記磁気センサ近傍まで延びていることを特徴とする請求項23に記載の電流センサ。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0042】
まず、本実施形態の電流センサ1によって実現される電流検出の概念について、
図19を参照して説明する。
【0043】
本実施形態の電流センサ1は、磁束を検出する複数の磁気センサ131a,131b,132a,132bと、第一の被測定電流が流れる第一の電流経路301と、第二の被測定電流が流れる第二の電流経路302と、を備える。
【0044】
本実施形態において、磁気センサ131a,131b,132a,132bは、磁束を検出して、又は、入力磁場に応じて、電気的出力(電流や電圧)を行う素子であればよく、ホール素子、磁気抵抗素子、ホールIC、磁気抵抗IC等が挙げられる。
【0045】
第一の磁気センサ131bは、第一の電流経路301の近傍に配置される。第二の磁気センサ131aは、第一の電流経路301を挟んで第一の磁気センサ131bの反対側に配置される。第三の磁気センサ132bは、第二の電流経路302の近傍に配置される。第四の磁気センサ132aは、第二の電流経路302を挟んで第三の磁気センサ132bの反対側に配置される。
【0046】
第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aは、第二の電流経路302から等しい距離に配置される。つまり、第一の磁気センサ131bと第二の電流経路302との最短距離をL1、第二の磁気センサ131aと第二の電流経路302との最短距離をL2とすると、第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aは、L1=L2となる位置に配置される。
【0047】
第三の磁気センサ132bと第四の磁気センサ132aは、第一の電流経路301から等しい距離に配置される。つまり、第三の磁気センサ132bと第一の電流経路301との最短距離をL3、第四の磁気センサ132aと第一の電流経路301との最短距離をL4とすると、第三の磁気センサ132bと第四の磁気センサ132aは、L3=L4となる位置に配置される。
【0048】
電流センサ1は、第一の磁気センサ131bの出力と第二の磁気センサ131aの出力とから第一の被測定電流の量に基づく信号を生成するとともに、第三の磁気センサ132bの出力と第四の磁気センサ132aの出力とから第二の被測定電流の量に基づく信号を生成する後述の信号処理IC(信号処理部)を備える。信号処理ICは、第一の磁気センサ131bの出力と第二の磁気センサ131aの出力との差分から第一の被測定電流の量に基づく信号を生成する。また、信号処理ICは、第三の磁気センサ132bの出力と第四の磁気センサ132aの出力との差分から第二の被測定電流の量に基づく信号を生成する。
【0049】
第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aは、第二の電流経路302から等しい距離に配置される。このため、第二の電流経路302を流れる第二の被測定電流が第一の磁気センサ131bの位置に生じる磁場は、第二の磁気センサ131aの位置に生じる磁場と等しくなる。第一の磁気センサ131bの出力と第二の磁気センサ131aの出力との差分を計算することにより、第二の被測定電流の影響がキャンセルされる。
【0050】
同様に、第三の磁気センサ132bと第四の磁気センサ132aは、第一の電流経路301から等しい距離に配置される。このため、第一の電流経路301を流れる第一の被測定電流が第三の磁気センサ132bの位置につくる磁場と第四の磁気センサ132aの位置につくる磁場は等しくなる。第三の磁気センサ132bの出力と第四の磁気センサ132aの出力との差分を計算することにより、第二の被測定電流の影響がキャンセルされる。
【0051】
次に、この電流検出を実現するための電流センサ1の概略について、
図1を参照して説明する。
【0052】
本実施形態において、第一の電流経路301は、第一経路301aと、第一経路301aから屈曲する第二経路301bと、第二経路301bからさらに屈曲する第三経路301cと、を有する。第二の電流経路302は、第四経路302aと、第四経路302aから屈曲する第五経路302bと、第五経路302bからさらに内側に屈曲する第六経路302cと、を有する。
【0053】
第二経路301bは、第三の磁気センサ132bと第四の磁気センサ132aとを結ぶ線分に平行な経路であり、第五経路302bは、第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aとを結ぶ線分に平行な経路である。これにより、第二の被測定電流が第一の磁気センサ131bの位置に生じる磁場と第二の磁気センサ131aの位置に生じる磁場は等しくなる。また、第一の被測定電流が第三の磁気センサ132bの位置に生じる磁場と第四の磁気センサ132aの位置に生じる磁場は等しくなる。
【0054】
各経路301a〜301c,302a〜302cは、直線であっても、曲線であっても、それらの組み合わせであってもよい。
【0055】
第一経路301aは、第二経路301bの一端に接続し、且つ、第二経路301bの一端を起点として、第三の磁気センサ132bと第四の磁気センサ132aとから遠ざかる方向に延びる経路または近づく方向に延びる経路であることが好ましい。これにより、第1の経路301aが、第三の磁気センサ132bと第四の磁気センサ132aとに与える磁場の影響が小さくなる。より好ましくは、第一経路301aと第二経路301bとのなす角度は90度である。
【0056】
同様に、第三経路301cは、第二経路301bの他端に接続し、且つ、第二経路301bの一端を起点として、第三の磁気センサ132bと第四の磁気センサ132aから遠ざかる方向に延びる経路または近づく方向に延びる経路であることが好ましい。より好ましくは、第二経路301bと第三経路301cとのなす角度は90度である。
【0057】
第四経路302aは、第五経路302bの一端に接続し、且つ、第五経路302bの一端を起点として、第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aから遠ざかる方向に延びる経路であることが好ましい。これにより、第四経路302aが第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aに与える磁場の影響が小さくなる。より好ましくは、第四経路302aと第五経路302bとのなす角度は90度である。
【0058】
同様に、第六経路302cは、第五経路302bの他端に接続し、且つ、第五経路302bの一端を起点として、第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aから遠ざかる方向に延びる経路であることが好ましい。より好ましくは、第五経路302bと第六経路302cとのなす角度は90度である。
【0059】
また、第一の電流経路301は、第一経路301aから第二経路301bへ左回りに屈曲する場合、さらに左回りに屈曲して第三経路301cがあり、第一経路301aから第二経路301bへ右回りに屈曲する場合、さらに右回りに屈曲して第三経路301cがある。第二の電流経路302についても、第一の電流経路301と同様に形成される。第一の磁気センサ131bは第一の電流経路301に囲まれた領域に配置され、第三の磁気センサ132bは第二の電流経路302に囲まれた領域に配置される。
【0060】
本実施形態において、第一の電流経路301と第二の電流経路302は、第二経路301bと第五経路302bとの間の任意の点に対して、略点対称な位置関係にある。
【0061】
なお、第一の電流経路301と第二の電流経路302との配置の関係が略点対称であれば、各電流経路の形状や、磁気センサの配置は、
図1に示した例に限られず、変更することもできる。
【0062】
第三の磁気センサ132bは、平面視において、第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aとを結んだ線分PP´における第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aとの間の任意の位置で、線分PP´と直交する仮想直線c上に配置される。第一の磁気センサ131bは、第三の磁気センサ132bと同様に、平面視において、第三の磁気センサ132bと第四の磁気センサ132aとを結んだ線分における第三の磁気センサ132bと第四の磁気センサ132aとの間の任意の位置で直交する仮想直線上に配置される。
【0063】
このように、第一の電流経路301と第二の電流経路302の配置の関係が略点対称であり、さらに、第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aとを結ぶ線の中線が、第五経路302bの中央を通るように配置にする。これにより、第二の電流経路302からの電流によって発生する第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aとにおける各磁束(B21、B22)は、それぞれの大きさと向きが同一となる。
【0064】
ここでB21は第二の電流経路302に電流が流れることにより第一の磁気センサ部に発生する磁束であり、B22は第一の電流経路301に電流が流れることにより第二の磁気センサ部に発生する磁束とする。
【0065】
第一の電流経路301からの電流に応じて発生する第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aとにおける磁束をそれぞれ(B1、B1’)とすると、第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aの受ける磁束の差分Φは、B21=B22であることから、下記の式で表される。
B1+B21(第一の磁気センサ)−(−B1’+B22)(第二の磁気センサ)=B1+B1’ (1)
【0066】
上記式(1)から、第二の電流経路からの磁束の干渉をキャンセルすることができ、電流検出の精度が向上する。
【0067】
第三の磁気センサ132bと第四の磁気センサ132aとの磁束の差分についても、上記式(1)で示したものと同様になり、第三の磁気センサ132bおよび第四の磁気センサ132aでは、第五の電流経路からの磁束の干渉をキャンセルすることができ、電流検出の精度が向上する。
【0068】
また、本実施形態において、第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aとの中線が、第五経路302bの中央部を通ることが好ましい。第三の磁気センサ132bと第四の磁気センサ132aとの線分の中線が、第二経路301bの中央部を通ることが好ましい。
【0069】
ここで、中央部は、第五経路302b又は第二経路301bの長さを三等分した場合の中心側の1/3の領域を示す。
【0070】
より好ましくは、第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aとを結ぶ中点から伸びた法線が第五経路302bの中点と交わり、かつ第三の磁気センサ132bと第四の磁気センサ132aとを結ぶ直線の中点から伸びた法線が第二経路301bの中点と交わる位置に配置することである。
【0071】
後述するように、本実施形態の電流センサ1は、磁束を検出する複数の磁気センサ131a,131b,132a,132bと、第一の被測定電流が流れる第一の導体と、第二の被測定電流が流れる第二の導体と、磁気センサ131a,131b,132a,132bからの出力を処理する信号処理ICと、信号端子を形成するリードフレームと、が封止された電流センサである。
【0072】
そして、本実施形態の電流センサ1では、後述する第一の導体は、第一導体部分に隙間を有し、第二の磁気センサ131aを囲むように配置され、第二導体部分(第二経路301bに相当)と接続する第七導体部分(後述する突出部14a_1に相当)を有するのが好ましい。
【0073】
あるいは、後述する第一の導体は、第二導体部分に隙間を有し、第二の磁気センサ131aを囲むように配置され、第一導体部分(第一経路301aに相当)と接続する第八導体部分(後述する突出部14a_2に相当)を有するのが好ましい。
【0074】
または、後述する第一の導体は、第二の磁気センサ131aを囲むように配置され、第二導体部分(第二経路301bに相当)と接続する第十一導体部分と、第一導体部分(第一経路301aに相当)と接続する第十二導体部分とを有し、第十一導体部分と第十二導体部分との間に隙間を有する構成であってもよい。
【0075】
また、後述する第二の導体は、第四導体部分(第四経路302aに相当)に隙間を有し、第四の磁気センサ132aを囲むように配置され、第五導体部分(第五経路302bに相当)と接続する第九導体部分(後述する突出部14b_1に相当)を有するのが好ましい。
【0076】
又は、後述する第二の導体は、第五導体部分と隙間を有し、第四の磁気センサ132aを囲むように配置され、第四導体部分と接続する第十導体部分(後述する突出部14b_2に相当)を有することが好ましい。
【0077】
または、後述する第二の導体は、第二の磁気センサ131aを囲むように配置され、第四導体部分(第四経路302aに相当)と接続する第十三導体部分と、第五導体部分(第五経路302bに相当)と接続する第十四導体部分とを有し、第十三導体部分と第十四導体部分との間に隙間を有する構成であってもよい。
【0078】
電流センサ1は、上述の第七導体部分〜第十導体部分(後述の突出部14a_1,14b_1,14a_2,14b_2)をさらに有することで、第一の磁気センサ131bと第二の磁気センサ131aとが、第一の導体を流れる電流による発熱の影響が同程度となり、第三磁気センサ132bと第四磁気センサ132aにおいても、第二の導体を流れる電流による発熱の影響が同程度となるため、両者に環境温度の差が埋まれず、電流検出の精度がより向上する。
【0079】
本実施形態では、磁気センサ131a,131b及び第一の導体の配置のパターンを、第一のパターンと称す。磁気センサ132a,132b及び第二の導体の配置のパターンを、第二のパターンと称す。この場合、第一のパターンと第二のパターンとは、第二経路301bと、第二経路301bと対向する第五経路302bとの間の任意の点に対して略点対称な位置関係にある。以下、電流センサ1の具体的な実施形態について詳細に説明する。
【0080】
<第1実施形態>
以下、本発明の電流センサの一実施形態を
図2〜
図7を参照して説明する。
実施形態に係る電流センサ1は、例えばホール素子等の磁気センサと信号処理ICからなるハイブリッド構造のICパッケージ型センサである。
【0081】
図2は、第1実施形態に係る電流センサ1の内部構造の一例を示す図である。
【0082】
この電流センサ1は、2つの電流検出チャネルに対応し、各チャネルからの電流に応じて電流検出する。
図2に示すように、電流センサ1は、2つのチャネルの入力に対応する被測定電流端子12a,12bと、導体14a,14bと、磁気センサ131a,131b,132a,132bと、信号処理IC20と、信号端子41a,41bとを備える。この電流センサ1では、各チャネルの磁束密度の検出は、それぞれ、各チャネルに設けられた磁気センサ群、すなわち、一対の磁気センサ131a,131bと、一対の磁気センサ132a,132bとによって行われる。
【0083】
なお、導体14a,14bは、例えば半導体パッケージで使用されるリードフレームの形態で説明する。また、被測定電流端子12a,12bはそれぞれ、対応する導体の被測定電流の入口となる電流端子と、被測定電流の出口となる電流端子とからなる。
【0084】
図2において、信号端子41a,41bの数は、
図2に示した例に限られず、変更することもできる。また、各チャネルに設けられる磁気センサの数は、3つ以上とすることもできる。
【0085】
導体(第一導体)14aは、電流経路に沿って、被測定電流端子12aからの被測定電流Iが流れるように形成されている。この実施形態では、導体14aには、例えば2つのギャップ101a,101bが形成されており、各ギャップ101a,101b内にそれぞれ、磁気センサ131a,131bが配置される。これにより、磁気センサ131a,131bは、導体14aに流れる被測定電流Iに応じて、電流検出を行うようになっている。上述の磁気センサ131a,131b及び第一導体の配置のパターンを、第1のパターンと称す。
【0086】
また、導体(第二導体)14bも、被測定電流端子12bから被測定電流Iが流れるように形成されるように形成されている。そして、導体14bの各ギャップ102a,102b内にはそれぞれ、磁気センサ132a,132bが配置される。これにより、磁気センサ132a,132bは、導体14bに流れる被測定電流Iに応じて、電流検出を行うようになっている。上述の磁気センサ132a,132b及び第二導体の配置のパターンを、第2のパターンと称す。
【0087】
磁気センサ131a,131b,132a,132bとしては、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子、ホールIC、磁気抵抗IC等がある。
【0088】
この実施形態の電流センサ1では、導体14a,14b、磁気センサ131a,131b,132a,132bおよび信号処理IC20は、
図2に示すように、エポキシ樹脂等のモールド樹脂80で封止され、同一の半導体パッケージ(以下、単に「パッケージ」という。)として形成される。
【0089】
本実施形態の電流センサ1において、導体14a,14bでは、それぞれの電流経路に沿って被測定電流I1、I2が流れることになるが、この被測定電流I1の電流が大きくなるに従い導体14aでの発熱が大きくなり、導体14aで囲まれる磁気センサ131bの方が磁気センサ131aに比べて周囲温度が高くなり、磁気センサが有する温度依存性により、磁気センサ131bと磁気センサ131aの出力の差分を取った場合に電流I1の検出誤差が生じ易くなる。測定電流I2の電流が大きくなった場合も同様に、導体14bでの発熱が大きくなり、導体14bで囲まれる磁気センサ132bの方が磁気センサ132aに比べて周囲温度が高くなり、磁気センサ132bと磁気センサ132aの出力の差分を取った場合に電流I2の検出誤差が生じ易くなる。
【0090】
この観点から、本実施形態の電流センサ1では、磁気センサ131aと131bにおける周囲温度に大きな差が出ないよう、磁気センサ131aを発熱源である導体14aで囲むように突出部14a_1(
図2において斜線で示す。第七導体部分に相当)が設けられている。同様にして、磁気センサ132aと132bにおける周囲温度に大きな差が出ないよう、磁気センサ132aを発熱源である導体14bで囲むように突出部14b_1(
図2において斜線で示す。第九導体部分に相当。)が設けられている。
【0091】
電流センサ1において、導体14a,14bに被測定電流Iが流れると、導体14a,14bを流れる電流量および電流方向に応じた磁界が生じる。この実施形態では、磁気センサ131a,131bは、それぞれ各ギャップ101a,101b内に配置される。そして、
図2(平面視)の例では、各磁気センサ131bは、導体14aに囲まれるように配置される。これにより、磁気センサ131bの位置では、導体14aからの被測定電流Iの影響を受けて磁界が強くなり、その結果、磁気センサ131aの位置よりも磁束密度が増加する。
【0092】
また、磁気センサ132a,132bは、各ギャップ102a,102b内に配置され、導体14bに囲まれるように設置される。これにより、磁気センサ132bの位置でも、被測定電流Iからの磁界が強くなり、磁気センサ132aの位置よりも磁束密度が増加する。
【0093】
磁気センサ131a,131bの位置では、被測定電流Iによって形成される磁束の向きが異なるようになっている(負または正側のZ方向)。また、磁気センサ132a,132bの位置でも、被測定電流Iによって形成される磁束の向きが異なるようになっている(正または負側のZ方向)。これにより、各チャネルの電流検出では、磁気センサ131a、131bの出力の差分、磁気センサ132a、132bの出力の差分を行うことで、高い出力が得られると共に均一な外来磁気ノイズをキャンセルすることが可能となっている。
【0094】
磁気センサ131a,131b,132a,132bは、被測定電流Iによって発生する磁束密度を検出し、磁束密度に応じた電気信号を信号処理IC20に出力することになる。
【0095】
図2において、信号処理IC20は、信号端子41a,41bを形成するリードフレーム30の上に配置される。この電流センサ1では、各磁気センサ131a,131b,132a,132bおよび信号処理IC20は、同一のパッケージ内で、それぞれ独立のチップからなるハイブリッド形態で構成される。
【0096】
磁気センサ131a,131bは、導体14aと離間して配置されており、常に導体14aと接触しない状態となっている。これにより、導体14aと磁気センサ131a,131bとの間は電気的に導通せず、絶縁を維持するための隙間(クリアランス)が確保される。また、磁気センサ132a,132bについても、導体14bと離間して配置されており、常に導体14bと接触しない状態となっている。これにより、導体14bと磁気センサ132a,132bとの間でも電気的に導通しない状態となり、絶縁を維持するための隙間(クリアランス)が確保される。
【0097】
図2において、絶縁部材141(
図2において破線で示す。)は、磁気センサ13a,13bを支持するために設けられ、絶縁部材142(
図2において破線で示す。)は、磁気センサ132a,132bを支持するために設けられる。絶縁部材141,142としては、例えば絶縁耐圧の高いポリイミド材からなる絶縁テープが用いられる。なお、この絶縁部材141,142として、ポリイミドテープに限らず、例えば、ポリイミド材やセラミック材、シリコン基材などの絶縁部材に接着剤を塗布した絶縁シートを適用することもできる。
【0098】
磁気センサ131a,131bは、ワイヤ(金属線)60a,60bを介して信号処理IC20と電気的に接続され、磁気センサ132a,132bは、ワイヤ61a,61bを介して信号処理IC20と電気的に接続される。
【0099】
信号処理IC20は、ワイヤ70a,70bを介してそれぞれ、信号端子41a,41bと電気的に接続される。信号端子41a,41bは、信号処理IC20の出力(電流値)を取り出すように構成される。
【0100】
信号処理IC20は、例えばLSI(Large Scale Integration)で構成され、この実施形態では、例えば、メモリ、プロセッサ、バイアス回路、補正回路および増幅回路などを備える。この信号処理IC20の回路構成については、後述で詳細に説明する。
【0101】
図3は、電流センサ1内部の側面の一例を示す図である。
【0102】
絶縁部材141は、導体14aを形成するリードフレーム裏面の一部と接合されて、磁気センサ131a,131b(
図2、
図3参照)を支持するように形成される。また、絶縁部材142は、導体14bを形成するリードフレーム裏面の一部と接合されて、磁気センサ132a,132b(
図2、
図3参照)を支持するように形成される。
【0103】
絶縁部材141,142は、例えば耐圧性の優れたポリイミド材の絶縁テープからなり、
図3に示すような状態で、導体14a,14bを形成するリードフレーム裏面に貼られ、磁気センサ131a,131b,132a,132bを裏面から支持する。磁気センサ131a,131b,132a,132bは、例えばダイアタッチフィルム等の絶縁材を介して、絶縁部材141,142と接着するようにしてもよい。
【0104】
図3において、磁気センサ131aは、導体14aに形成されたギャップ101a内で、導体14aを形成するリードフレームの厚み分落とし込んで配置される。同様に、
図2に示した磁気センサ131b,132a,132bについても、導体14a,14bに形成された各ギャップ101b,102a,102b内で、導体14a,14bを形成するリードフレームの厚み分落とし込んで配置される。これにより、電流センサ1では、磁気センサ131a,131b,132a,132bの各感磁面の高さ位置が、リードフレームの底面から上面までの高さの間(好ましくは、中央)に設定されるため、磁気センサ131a,131b,132a,132bの各感磁面では、被測定電流Iによって発生する磁束をより多く捉えることが可能となり、その結果、電流検出感度が向上する。
【0105】
図4は、電流センサ1のパッケージ外観の一例を示す図であって、
図4Aはパッケージ上面図、
図4Bはパッケージ側面図を示す。
【0106】
図4Aおよび
図4Bに示すように、電流センサ1は、モールド樹脂80で封止されたものとして形成される。
【0107】
被測定電流端子12a,12bおよび信号端子41a,41bは、パッケージの4つの側面から取り出される。
【0108】
次に、電流センサ1を電動機に接続して電動機のベクトル制御を行う場合の概略について、
図5を参照して説明する。
図5は、電流センサ1が電動機202の電流検出を行う場合の様子を示す図であって、
図5Aは従来の適用例と、
図5Bは本実施形態の適用例とを示す。
【0109】
図5Aおよび
図5Bに示す電動機204は、三相(U相,V相,W相)式の誘導電動機である。この電動機204は、ベクトル制御装置205によって、電動機204の二相(U相およびV相)分の電流値、すなわち2チャネル分の電流値を検出してベクトル制御が行われるようになっている。
【0110】
コンバータ部201は、交流電源200からの交流電圧を直流電圧に変換し、インバータ部203は、その直流電圧を交流電圧に変換する。コンデンサ202は、変換された直流電圧を平滑するようになっている。
【0111】
図5Aの例では、U相およびV相の電流値は、2つ電流センサ301,302によって検出されることになるが、
図5Bの例では、U相およびV相の電流値は、本実施形態の電流センサ1によって検出される。これは、1つの電流センサで2チャネル分の電流値を検出できることを意味する。したがって、2チャネル分の電流値を検出する際に必要な電流センサの設置スペースが従来よりも小さくなり、電流センサの省スペース化が実現できる。また2チャネル間の配置が固定されるため、2つの電流センサを使用する場合に比べプリント配線基板に実装した場合の配置誤差による性能への影響を排除することが可能となる。
【0112】
図6は、信号処理IC20の一例の機能ブロック図である。この信号処理IC20は、バイアス回路201、補正回路202および増幅回路203を備える。バイアス回路201は、磁気センサ131a,131b,132a,132bと接続され、磁気センサ131a,131b,132a,132bに電源を供給するようになっている。換言すれば、バイアス回路201は、磁気センサ131a,131b,132a,132bに励起電流を印加(流入)するための回路である。
【0113】
補正回路202は、一対の磁気センサ131a,131bの出力の差分に基づいて、外部で生じる磁界の影響をキャンセル(同相のノイズを相殺)して電流値を算出するようになっている。また、補正回路202は、一対の磁気センサ132a,132bの出力の差分に基づいて、外部で生じる磁界の影響をキャンセルして電流値を算出するようになっている。
【0114】
また、補正回路202は、例えば、動作温度に基づいて、予めメモリに記憶されている温度補正係数に従い磁気センサ131a,131b,132a,132bの出力値を補正するようになっている。このため、温度依存性が少なく高精度な電流検出が可能となる。
【0115】
増幅回路203は、補正回路202からの出力値を増幅するようになっている。
【0116】
次に、磁気センサ131a,131b,132a,132bの位置関係について、
図7を参照して説明する。
【0117】
図7は、磁気センサ131a,131b,132a,132bの位置関係を説明するための図である。
【0118】
図7に示すように、この電流センサ1において、導体14a,14bは、それぞれ、U相,V相のチャネルの入力に対応しており、コの字状の電流経路に沿って被測定電流I1(U相)、I2(V相)が流れるように形成されている。
【0119】
磁気センサ131a,131bは、磁気センサ132a,132bと所定の間隔を隔ててY方向に並行に配置されている。
【0120】
図7では、磁気センサ131a,131b間の間隔、および、磁気センサ132a,132b間の間隔はともに、Pとする。このPは、互いに対向する電流経路を有する導体部(電流Iの流れ方向が互いに異なる導体部)間の間隔と同じである。
【0121】
図7に示すように、磁気センサ131a,131bは、それぞれ、各磁気センサ131a,131bに対して、例えば1/2PだけY方向にずれて配置されている。
【0122】
磁気センサ131a,131bは、導体14bの点Rから等距離rの位置になるように配置される。点Rは、Y方向に形成された導体14bの辺の中点を表している。この場合、磁気センサ131a,131bの各位置において、導体14bを流れる電流I2からの磁束の大きさが同一になるため、磁気センサ131a,131bの差分を取ることで、導体14bからの影響を完全にキャンセルすることができる。すなわち、各チャネル間の相互干渉を回避することができる。
【0123】
また、磁気センサ132a,132bは、導体14aの点Oから等距離rの位置になるように配置される。点Oは、Y方向に形成された導体14aの辺の中点を表している。この場合、磁気センサ132a,132bの各位置でも、導体14aを流れる電流I1からの磁束が同一の値になるため、磁気センサ132a,132bの差分を取ることで、導体14bからの影響を完全にキャンセルすることができる。すなわち、この場合でも、各チャネル間の磁束の相互干渉を回避することができる。
【0124】
以上説明したように、本実施形態の電流センサ1によれば、2チャネル分の電流検出を行うことができる。
【0125】
また、電流センサ1では、各チャネルごとに、磁気センサ131a,131b,132a,132bが相互に逆向きの磁束を検出し、差分検出を行うようにしている。したがって、各チャネルごとに、均一の外来磁気ノイズをキャンセルすることができるため、電流センサ1の電流検出精度を向上させることができる。
【0126】
さらに、電流センサ1では、磁気センサ131a,131b,132a,132bと各チャネルとの位置関係に基づいて、各チャネル間の相互干渉が生じないように、磁気センサ131a,131b,132a,132bの位置決めを行っている。そのため、各チャネル間の磁束の相互干渉を回避することができるため、コアレス電流センサにおいても多チャネル化が可能となる。
【0127】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の電流センサ1Aについて、
図8〜
図9を参照して説明する。
前述の電流センサ1では、各磁気センサおよび信号処理ICのハイブリッド形態を例にとって説明したが、各磁気センサと信号処理ICが、同一のシリコンウェハー上に一体成型されたシリコンモノシリック形態を適用するようにしてもよい。
【0128】
図8は、かかるモノシリック形態で形成された電流センサ1Aの一例として、
図1と同様の導体14a,14bを有する電流センサ1Aを示している。
図9は、
図8と同一の電流センサ1Aの側面の一例を示す図である。
【0129】
図8および
図9において、モノシリック形態以外は、本実施形態において、
図2および
図3に示したものとほぼ同様である。以下では、本実施形態の電流センサ1Aの構成について、
図2および
図3のものとの差異を中心に説明する。
【0130】
図8および
図9の構成例では、導体14aの上に、絶縁材106(例えばダイアタッチフィルム)を介して、信号処理IC120が積層される。この信号処理IC120は、信号端子141a,141bを形成するリードフレームの上に配置される。
【0131】
図8に示すように、4つの磁気センサ131a,131b,132a,132bは、
図2に示したものと同様に、平面視において導体14a,14bの各ギャップ101a,101b,102a,102b内に配置される。そして、磁気センサ131a,131b,132a,132bは、対応する各導体14a,14bに囲まれるように配置され、導体14a,14bを流れる被測定電流Iに応じた磁束を検出するようになっている。
【0132】
しかしながら、この実施形態では、各磁気センサ131a,131b,132a,132bと信号処理IC120が、シリコンウェハー上に一体成型されたシリコンモノシリック形態となっているため、
図9に示すように、信号処理IC120内には、各磁気センサ131a,131b,132a,132bが形成されている。
【0133】
この場合、各磁気センサ131a,131bは、それぞれ、各ギャップ101a,101b上方に配置され、導体14aを流れる被測定電流Iに基づいて発生する磁束を検出する。また、各磁気センサ132a,132bは、それぞれ、各ギャップ102a,102b上方に配置され、導体14bを流れる被測定電流Iに基づいて発生する磁束を検出する。
【0134】
図8および
図9において、電流センサ1Aでは、導体14a,14b、磁気センサ131a,131b,132a,132bおよび信号処理IC20は、エポキシ樹脂等のモールド樹脂180で封止され、同一の半導体パッケージとして形成される。
【0135】
この実施形態では、磁気センサ131a,131b,132a,132bの感磁面の上に、例えば磁性体メッキによって磁性材料80a,80bが形成されている。なお、磁性材料80a,80bの構成例として、フェライトなどの磁性体チップであってもよい。これにより、導体14a,14bに被測定電流Iが流れると、被測定電流Iによって生じる磁束が磁気センサ131a,131b,132a,132bの感磁部に収束されやすくなる。したがって、電流センサ1Aの電流検出感度が向上する。
【0136】
また、この電流センサ1Aにおいても、導体14a,14bに被測定電流Iが流れると、磁気センサ131a,131b,132a,132bは、対応する導体14a,14bを流れる被測定電流Iの向きに応じて、逆向きの磁束を検出する。これにより、第1実施形態のものと同様に、電流検出時には、対応する一対の磁気センサ131a,131b,132a,132bの磁束の差分を利用して、外乱磁界の影響をキャンセルすることが可能となる。
【0137】
また、本実施形態の電流センサ1Aでも、磁気センサ131a,131b,132a,132bは、
図7に示したものと同様に、各チャネル間の磁束の相互干渉が生じないように配置されているので、コアレス電流センサであっても2チャネルの電流を高精度に検出することが可能となる。
【0138】
次に、第2実施形態の変形例について説明する。
【0139】
[変形例1]
図8に示した電流センサ1Aにおいて、信号端子141a,141bを形成するリードフレーム30は、導体14a,14bと同じ高さに設定されているが、導体14a,14bよりも高くなるように構成するようにしても、第2実施形態と同様の効果が得られる。このように構成した電流センサを
図10に示す。
【0140】
図10に示した電流センサにおいて、リードフレーム30は、導体14a,14bよりも高くなるように構成されている。
【0141】
[変形例2]
図8に示した被測定電流端子112a,112bは、導体14a,14bが、信号端子141a,141bを形成するリードフレーム30よりも低くなるように構成するようにしてもよい。このように構成した電流センサを
図11に示す。
【0142】
図11に示した電流センサにおいて、被測定電流端子112a,112bは、
図8に示したものよりも低く設定され、導体114a,114bは、リードフレーム30よりも低くなっている。このようにしても、導体114a,114bは、リードフレーム30と接触しない状態となり、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0143】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態の電流センサ1Bについて、
図12を参照して説明する。
前述の電流センサ1,1Aでは、電流検出機能がICパッケージ内に封止された形態を例にとって説明したが、各構成要素が基板上にディスクリート部品を使って構成されるモジュール形態を適用するようにしてもよい。
【0144】
図12は、かかるモジュール形態で形成された電流センサ1Bの構成例であって、(a)は正面図、(b)は側面図を示す。
【0145】
図12に示すように、電流センサ1Bは、基板300を備えており、この基板300上に、信号用コネクタ301と、信号処理IC302と、2つのチャネル1,2の入力に対応する導体303,305と、磁気センサ304a,304b,306a,306bとを備える。導体303,305はそれぞれ
図1に示した導体14a,14bに相当し、磁気センサ304a,304b,306a,306bはそれぞれ
図2に示した磁気センサ131a,131b,132a,132bに相当する。信号処理IC302は
図2に示した信号処理IC20に相当する。
【0146】
磁気センサ304a,304b,306a,306bの位置関係は、本実施形態においても
図7に示したものと同一である。この場合、磁気センサ304a,304bは、導体305の点Rから等距離rの位置になるように配置される。また、磁気センサ306a,306bは、導体303の点Oから等距離rの位置になるように配置される。これにより、チャネル1,2間の磁束の相互干渉を回避することができる。
【0147】
また、本実施形態の電流センサ1Bでも、第1実施形態のものと同様に、2チャネル分の電流検出を行うことができる。
【0148】
さらに、電流センサ1Bにおいても、各チャネルごとに、磁気センサ304a,304b,306a,306bが相互に逆向きの磁束を検出し、差分検出を行うようにしている。したがって、外来磁気ノイズをキャンセルすることができるため、電流センサ1Bの電流検出精度を向上させることができる。
【0149】
[変形例]
上述した各実施形態に係る電流センサ1〜1Bは例示に過ぎず、以下に示すような変更を行うことが可能である。
【0150】
第1実施形態の突出部14a_1,14b_1は、例えば
図13に示すように形成するようにしてもよい。
図13の突出部(第八導体部分)14a_2は、導体14aの第二導体部分(
図1の第二経路301bに相当)に隙間101aを有し、磁気センサ131aを囲むように配置され、第一導体部分(
図1の第一経路301aに相当)と接続するように形成される。
図13の突出部(第十導体部分)14b_2は、導体14bの第五導体部分(
図1の第五経路302bに相当)と隙間102aを有し、磁気センサ132aを囲むように配置され、第四導体部分(
図1の第四経路302aに相当)と接続するように形成される。このようにしても、第1実施形態に示したものと同様の効果を得ることができる。
【0151】
各実施形態の導体14a,14b,303,305の大きさや形状は、電流センサの仕様に応じて変更するようにしてもよい。導体14a,14b,303,305は、コの字型、又は、Uの字型とすることができる。
【0152】
<第4実施形態>
以上では、三相交流系の各相に2つの磁気センサを設けて、3相分の電流値を検出する場合について言及しなかったが、この実施形態では、3相分の電流値を検出するように電流センサを構成するようにしてもよい。
図14は、第4実施形態の電流センサ500の構成例であって、
図14Aは電流センサ500の内部構造、
図14Bは電流センサ500の側面を示している。この電流センサ500は、例えばホール素子等の磁気センサと信号処理ICとを実装するためのプリント配線基板、および、被測定電流が流れる導体を含むモジュール型の電流センサである(以下の実施形態の説明でも同様である)。
【0153】
図14Aに示す例では、3相(U相,V相,W相)の各相に、2つの磁気センサが設けられている。すなわち、2つの磁気センサ505a,505bがU相に対応して設けられ、2つの磁気センサ506a,506bがV相に対応して設けられ、2つの磁気センサ507a,507bがW相に対応して設けられている。
図14において、各相に対応した2つの磁気センサの位置は、第1実施形態のものと同様に、被測定電流によって形成される磁束の向きが異なるようになっている。
【0154】
図14Aおよび
図14Bにおいて、プリント配線基板501には、各相に対応した上述の磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bと、信号処理IC520とが実装されるとともに、プリント配線が形成される。
各相の導体502,503,504は、例えばバスバーであり、3相インバータ600と3相モータ700とに接続される。例えば、
図14に示した例で説明すると、バスバー502〜504とプリント配線基板501とは一体に形成される。以下ではこれをバスバー基板と称す。
【0155】
この実施形態のバスバー基板は、バスバーの表裏両面は、プリント配線基板501で挟まれている。この場合、バスバー502〜504がプリント配線基板501内に埋め込まれるため、プリント配線基板501の両面に部品を実装できると共に、実装部品とバスバーとの間で高い絶縁耐圧が維持できる。
【0156】
信号処理IC520は、磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bと、コネクタ530と電気的に接続されており、3相分の電流値を算出し、算出した電流値を外部に出力することが可能になっている。この場合、この信号処理IC20でも、第1実施形態(
図6)のものと同様に、バイアス回路201、補正回路202および増幅回路203を備える。例えば、
図14の例では、バイアス回路201は、磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bに励起電流を印加(流入)するための回路である。
【0157】
補正回路202は、各相に対応した一対の磁気センサの出力の差分に基づいて、外部で生じる磁界の影響をキャンセル(同相のノイズを相殺)して電流値を算出するようになっている。また、補正回路202は、一対の各磁気センサの出力の差分に基づいて、外部で生じる磁界の影響をキャンセルして電流値を算出するようになっている。また、補正回路202は、例えば、動作温度に基づいて、予めメモリに記憶されている温度補正係数に従い磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bの出力値を補正するようになっている。このため、温度依存性が少なく高精度な電流検出が可能となる。増幅回路203は、
図6で示したものと同様に、補正回路202からの出力値を増幅するようになっている。
【0158】
[磁気センサの配置]
次に、電流センサ500によって実現される磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bの配置について、
図1および
図14を参照して説明する。
【0159】
磁気センサ505a,505bは、U相のバスバー502の第一の電流経路に対応して配置される。
図1に示したものと同様に、
図14の例では、バスバー502は、第一経路502aと、第一経路502aから屈曲する第二経路502bと、第二経路502bからさらに屈曲する第三経路502cとを有しており、磁気センサ505a,505bは、第三経路502cを挟んで配置される。この磁気センサ505a,505bの配置パターンを、第1のパターンと称す。
【0160】
上述の経路502a〜502cは、切欠き521の形状に沿って形成されており、磁気センサ505aは切欠き521の外側に配置され、磁気センサ505bは切欠き521の内側に配置される。
【0161】
磁気センサ507a,507bは、W相のバスバー504の第三の電流経路に対応して配置される。
図1に示したものと同様に、
図14の例では、バスバー504は、第四経路504aと、第四経路504aから屈曲する第五経路504bと、第五経路504bからさらに屈曲する第六経路504cとを有しており、磁気センサ507a,507bは、第四経路504aを挟んで配置される。この実施形態では、この磁気センサ507a,507bの配置パターンを、第2のパターンと称す。
【0162】
上述の経路504a〜504cは、切欠き541の形状に沿って形成されており、磁気センサ507aは切欠き541の外側に配置され、磁気センサ507bは切欠き541の内側に配置される。
【0163】
第1のパターン(第一の電流経路)と第2のパターン(第二の電流経路)とは、チャネル間の磁束の干渉をなくすために、
図1で示したものと同様に形成される。すなわち、第一の電流経路と第二の電流経路とは、第二経路502bと第五経路504bとの間の任意の点に対して、略点対称な位置関係にある。さらに、磁気センサ507aは、
図14Aの平面視において、磁気センサ505aと磁気センサ505bとを結んだ線分上の任意の位置で、この線分と直交する仮想直線上に配置される。磁気センサ505bも、
図14Aの平面視において、磁気センサ507aと磁気センサ507bとを結んだ線分上の任意の位置で直交する仮想直線上に配置される。
【0164】
図14において、磁気センサ506a,506bは、V相のバスバー503の第三の電流経路に対応して配置される。
図14の例では、バスバー503は、第七経路503aと、第七経路503aから屈曲する第八経路503bと、第八経路503bからさらに屈曲する第九経路503cとを有しており、磁気センサ506a,506bは、第七経路503aを挟んで配置される。この実施形態では、この磁気センサ506a,506bの配置パターンを、第3のパターンと称す。
【0165】
上述の経路503a〜503cは、切欠き531,532の形状に沿って形成されており、磁気センサ506aは切欠き531の内側に配置され、磁気センサ506bは切欠き532の内側に配置される。
【0166】
図14Aに示した磁気センサ506a,506bは、U相およびW相の各相の一対の磁気センサ(505a,505b),(507a,507b)と平行になるように、配置される。この配置を、第3のパターンと称す。
【0167】
このとき、U相の磁気センサ505aとV相の磁気センサ506aとの間の距離が、U相の2つの磁気センサ505a,505bの間の距離dに比べて十分に長くなれば、V相のバスバー503からの電流によって発生する磁束が磁気センサ505a,505bの電流検出に与える影響を無視できるようになる。同様に、W相の磁気センサ507aとV相の磁気センサ506aとの間の距離が、W相の2つの磁気センサ507a,507bの間の距離dに比べて十分に長くなれば、V相のバスバー503からの電流によって発生する磁束が磁気センサ507a,507bの電流検出に与える影響を無視できるようになる。つまり、電流センサ500では、各チャネル間の磁束の相互干渉が低減できるように配置されている。したがって、電流センサ500は、3チャネル分の電流を高精度に検出することができる。
【0168】
図14Aにおいて、例えば、2相分(U相,W相)のバスバー502,504の電流経路は、各相(U相,W相)の一対の磁気センサの間隔dに対し、第一の電流経路と第二の電流経路とがd/2だけY方向(各相の導体の延存方向)にずれて配置され、残りの1相分(V相)のバスバー503の第三の電流経路は、一対の磁気センサの間隔dの2倍以上の距離隔てて配置されるように、Y方向ずれて配置される。これにより、U相とW相との間では、
図1に示したものと同様に、2つの磁気センサの出力の差分を計算することで相互に干渉する磁場の影響をキャンセルすることができる。さらに、U相とV相との間(W相とV相との間も同様)でも、一対の磁気センサの位置において、直線形状の第七経路503aを流れる電流によって生じる磁束の影響が小さくなる。
【0169】
図14Aにおいて、各相の一対の磁気センサ間の間隔をdとすると、隣接する相のバスバーの切欠きは、Y方向に沿って、dの2倍以上の距離を離して形成される。これにより、各相の磁気センサでは、他相に流れる電流の影響を小さくすることが可能になる。
【0170】
図14Bにおいて、バスバー基板501の貫通スリット内において、磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bは、その感磁部がバスバー基板の実装面よりも内側に落とし込まれて配置される。結果として、各磁気センサの感磁部はバスバーの厚み中心付近に配置される。これにより、電流センサ500では、磁気センサ131a,131b,132a,132bの各感磁面では、被測定電流Iによって発生する磁束をより多く捉えることが可能となり、その結果、電流検出感度が向上する。
【0171】
なお、上述した貫通スリットは、バスバー502〜504と基板プリプレグとを貫通し、貫通スリットの内壁は、上記基板プリプレグにより、バスバー502〜504が露出しないように形成されている。これにより、バスバー基板内に実装される部品と、バスバー502〜504との間で高い縁性能を維持することができる。
なお、上記では磁気センサの感磁部をバスバー基板の実装面の内側に落とし込んで配置する例を説明したが、磁気センサをバスバー基板の実装面上に配置してもよい。磁気センサをバスバー基板の実装面上に実装する場合は、バスバー基板の加工が不要となる。
【0172】
図14Bにおいて、バスバー基板において、バスバー502〜504の表裏両面は、プリント配線基板501で挟まれている。これにより、バスバー502〜504がバスバー基板501内に埋め込まれることになり、バスバー基板の両面に部品を実装することができる。
【0173】
<第5実施形態>
第5実施形態の電流センサ500Aにおいて、バスバー502,503,504の形状は変更するようにしてもよい。
【0174】
図15は、かかるバスバー502〜504を含む電流センサ500Aの構成例を示す図である。なお、この電流センサ500Aの構成は、
図14Aおよび
図14Bに示したものとほぼ同様である。本実施形態の以下の説明では、特に記述しない限り、第4実施形態の説明で用いた符号等をそのまま用いる。
【0175】
図15の例では、バスバー502は切欠き521aに伴って電流方向が変わり(例えば、正のY方向→正のX方向→正のY方向→負のX方向→正のY方向など)、バスバー503は切欠き506a,506bに伴って電流方向が変わり(例えば、正のY方向→負のX方向→正のY方向など)、バスバー504は切欠き541aに伴って電流方向が変わるようになっている(例えば、正のY方向→負のX方向→正のY方向→正のX方向→正のY方向など)。
【0176】
このバスバー502〜503でも、磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bは、第4実施形態のものと同様に、各チャネル間の磁束の相互干渉が生じないように配置されているため、電流センサ500Aは、3チャネル分の電流を高精度に検出することができる。
【0177】
<第6実施形態>
第6実施形態の電流センサ500Bでは、
図16に示すようにバスバー502,503,504の形状を変更している。
【0178】
図16は、かかるバスバー502〜504を含む電流センサ500Bの構成例を示す図である。なお、この電流センサ500Bの構成は、
図14Aおよび
図14Bに示したものと、バスバー502〜504の形状を変更した点のみが異なる。本実施形態の以下の説明では、特に記述しない限り、第4実施形態の説明で用いた符号等をそのまま用いる。
【0179】
図16において、図示されていないが、電流センサ500Bは信号処理ICおよびコネクタも備えるものとする。
【0180】
図16の例では、バスバー502は切欠き521b,522b,523bに伴って電流方向が変わり(例えば、正のY方向→負のX方向→正のY方向→正のX方向→正のY方向など)、バスバー503は切欠き531b,532bに伴って電流方向が変わり(例えば、正のY方向→負のX方向、正のY方向→正のX方向など)、バスバー504は切欠き541b,542b,543bに伴って電流方向が変わるようになっている(例えば、正のY方向→正のX方向→正のY方向→負のX方向→正のY方向など)。
【0181】
このバスバー502〜503でも、磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bは、第4実施形態のものと同様に、各チャネル間の磁束の相互干渉が生じないように配置されているため、電流センサ500Bは、3チャネル分の電流を高精度に検出することができる。
【0182】
<第7実施形態>
第7実施形態の電流センサ500Cでは、
図17に示すようにバスバー502,503,504の形状を変更している。さらに、この電流センサ500Cでは、3つの信号処理IC508,509,520を備える。
【0183】
図17は、かかるバスバー502〜504および信号処理IC508,509,520を含む電流センサ500Cの構成例を示す図である。なお、この電流センサ500Cの構成は、
図14Aおよび
図14Bに示したものとほぼ同様である。本実施形態の以下の説明では、特に記述しない限り、第4実施形態の説明で用いた符号等をそのまま用いる。
【0184】
図17の例では、バスバー502は切欠き521c,522cに伴って電流方向が変わり(例えば、正のY方向→負のX方向→正のY方向→正のX方向→正のY方向など)、バスバー503は切欠き531c,532cに伴って電流方向が変わり(例えば、正のY方向→負のX方向→正のY方向→正のX方向→正のY方向など)、バスバー504は切欠き541c,542cに伴って電流方向が変わるようになっている(例えば、正のY方向→正のX方向→正のY方向→負のX方向→正のY方向など)。
【0185】
このバスバー502〜503でも、磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bは、第4実施形態のものと同様に、各チャネル間の磁束の相互干渉が生じないように配置されているため、電流センサ500Cは、3チャネル分の電流を高精度に検出することができる。
【0186】
図17において、信号処理IC508,509,520は、それぞれ、U相、V相、W相の電流値を検出するように構成されている。すなわち、信号処理IC508は、磁気センサ505a,505bの出力の差分に基づいてU相の電流値を検出し、信号処理IC509は、磁気センサ506a,506bの出力の差分に基づいてV相の電流値を検出し、信号処理IC520は、磁気センサ507a,507bの出力の差分に基づいてW相の電流値を検出する。そして、信号処理IC508,509,520は、それぞれコネクタ530と電気的に接続されており、信号処理IC508,509,520の出力はコネクタ530に送出されるようになっている。このようにしても、第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0187】
<第8実施形態>
第8実施形態の電流センサは、磁気センサの実装面とは反対側の面に二つの磁気センサと対向して橋渡しするように配置した磁性材料を備えていることを特徴としている。
図18は、かかる磁性材料514,524,534を含む電流センサ500Dの構成例を示している。なお、磁性材料514,524,534以外の電流センサ500Dの構成は、
図17に示したものと同様である。
【0188】
図18に示した磁性材料514,524,534は、例えば
図8および
図9における磁性材料に相当し、例えば磁性体メッキ、フェライトなどの磁性体チップである。これにより、バスバー502〜504に電流が流れると、この電流によって生じる磁束が磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bの感磁部に収束されやすくなる。また、バスバー基板の裏面から受ける外来磁気ノイズを遮断することができる。したがって、電流センサ500Dの電流検出感度が向上する。
【0189】
図18において、磁性材料514,524,534は、穴加工、または切欠き加工によって形成されたバスバー基板の溝を介して、プリント配線基板の裏面から、磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507b近傍まで延びるような、たとえばE字型の形状に加工されている。これにより、バスバー502〜504に流れる電流によって発生する磁束を磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bに収束させることができ、電流センサ500Dの電流検出感度が向上する。
【0190】
[変形例]
上述した各実施形態に係る電流センサ500〜500Cは例示に過ぎず、以下に示すような変更を行うことが可能である。
【0191】
各実施形態のバスバー(導体)502〜504の大きさや形状は、電流方向を変えることができるのであれば、電流センサの仕様に応じて変更するようにしてもよい。例えば、U字状などにしてもよい。
【0192】
各実施形態の切欠きの形状や、磁気センサの配置は、3チャネル分の電流検出が高精度に行えるのであれば、変更することができる。
【0193】
第8実施形態では、磁性材料514,524,534は、磁気センサの裏面に設けられていたが、各実施形態のバスバー基板において、磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bのパッケージ上面に、各相の二つの磁気センサを橋渡しするように配置されていてもよい。これにより、磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bのパッケージの上面から受ける外来磁気ノイズを遮断することができる。
【0194】
各実施形態の磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bの内部は、磁性体メッキまたは磁性体チップを備えるようにしてもよい。このようにしても、磁気センサ505a,505b,506a,506b,507a,507bへの磁束の収束力が向上し、電流センサの電流検出感度が向上する。