(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板処理装置においては、生産効率向上の観点から、スループットを向上させることが共通の課題となっている。
【0005】
本発明は上述の課題に鑑み、基板の洗浄工程におけるスループットを向上させることができる基板処理装置及び処理基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る基板処理装置は、例えば
図2に示すように、基板Wに接触させて基板Wを洗浄する洗浄装置41と;洗浄装置41を、基板Wの洗浄を行う洗浄位置P3と、基板Wの洗浄を行っていないときに待機する洗浄位置P3から離れた待機位置P1と、の間で移動させる移動装置42と;待機位置P1にて洗浄装置41を事前洗浄する事前洗浄装置50と;基板Wを、基板Wの洗浄が行われる処理位置に、処理位置の外側から搬送する搬送装置70(例えば
図1参照)と;基板Wを処理位置に向けて搬送しながら、洗浄装置41を洗浄位置P3に向けて移動させるように、移動装置42及び搬送装置70を制御する制御部62とを備える。
【0007】
このように構成すると、処理位置への基板の搬送の開始から洗浄装置による基板の洗浄の開始までの時間を短縮することができ、スループットを向上させることができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様に係る基板処理装置は、例えば
図2に示すように、上記本発明の第1の態様に係る基板処理装置において、洗浄位置P3と待機位置P1とは、水平方向及び鉛直方向共に重ならないように設定され;処理位置で、基板Wが搬送装置70(例えば
図1参照)から離れて載置される載置台11sを備え;制御部62は、載置台11sへの基板Wの載置が完了したときに、洗浄装置41の水平方向の移動が完了して洗浄装置41が洗浄位置P3に対して鉛直方向に離れた離間位置P2にあるように、移動装置42及び搬送装置70を制御する。
【0009】
このように構成すると、基板の回転速度が所定の回転速度に到達してから洗浄装置が基板に接触するのが好ましいところ、洗浄装置を離間位置から洗浄位置に向けて移動させることを迅速に開始することができ、スループットを向上させることができる。
【0010】
また、本発明の第3の態様に係る基板処理装置は、例えば
図2に示すように、上記本発明の第1の態様又は第2の態様に係る基板処理装置において、基板Wの洗浄を行うのに差し支えない程度まで洗浄装置41を事前洗浄装置50で事前洗浄するのに要する事前洗浄時間があらかじめ記憶された記憶部63を備え;制御部62は、洗浄装置50の事前洗浄が開始されてから事前洗浄時間が経過していないときは処理位置の外側から処理位置への基板Wの搬送を行わずに、事前洗浄時間が経過したときに処理位置の外側から処理位置への基板Wの搬送を開始するように移動装置42及び搬送装置70(例えば
図1参照)を制御する。
【0011】
このように構成すると、事前洗浄が不十分な洗浄装置によって基板が汚染されることを防ぐことができる。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第4の態様に係る処理基板の製造方法は、例えば
図2及び
図4を参照して示すと、基板Wに接触させて基板Wを洗浄する洗浄装置41を、基板Wの洗浄を行う洗浄位置P3から離れた待機位置P1で、事前洗浄する事前洗浄工程(S12)と;洗浄装置41を、待機位置P1から洗浄位置P3に向けて移動させる洗浄装置移動工程(S16)と;基板Wを、基板Wの洗浄が行われる処理位置に向けて、処理位置の外側から搬送する基板搬送工程(S17)と;基板Wを洗浄する基板処理工程とを備え;洗浄装置移動工程(S16)と基板搬送工程(S17)とが並行して行われるように構成されている。
【0013】
このように構成すると、処理位置への基板の搬送の開始から洗浄装置による基板の洗浄の開始までの時間を短縮することができ、スループットを向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、処理位置への基板の搬送の開始から洗浄装置による基板の洗浄の開始までの時間を短縮することができ、スループットを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0017】
まず
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る基板処理装置100を説明する。
図1は、基板処理装置100の全体構成を示す平面図である。基板処理装置100は、概ね矩形状のハウジング1を備えており、ハウジング1の内部は隔壁1a、1b、1cによって区画されるロード/アンロード部2と、基板を研磨する研磨部3と、研磨後の基板を洗浄する洗浄部4とを備えている。また、基板処理装置100は、各部の動作を制御する制御装置60を備えている。本実施の形態に係る基板処理装置100は、洗浄部4における処理時間を短縮することで、スループットの向上を図ることを旨としている。洗浄部4の詳細な説明に先だって、洗浄部4の周辺の構成を説明する。
【0018】
ロード/アンロード部2は、基板をストックするカセット81と、基板をカセット81から研磨部3へ、あるいは洗浄部4からカセット81へと受け渡す搬送ロボット82を有している。搬送ロボット82は上下に2つのハンドを備えており、例えば、上側のハンドをカセット81に基板を戻すときに使用し、下側のハンドを研磨前の基板を搬送するときに使用して、上下のハンドを使い分けることができるように構成されている。基板は、本実施の形態では、円形平板状の半導体基板であるとして説明する。基板は、典型的には配線パターンに応じた溝が表面に形成された二酸化珪素膜付きの円形基板であり、例えばこの二酸化珪素膜の上にバリアメタルとしてチタンナイトライド膜や窒化タンタル膜が形成され、この上にタングステン膜や銅膜が形成される等、各種の膜が形成されている。
【0019】
研磨部3は、ほぼ同様の構成の4つの研磨装置83を有している。各研磨装置83は、研磨面を有する研磨テーブル83aと、基板を保持することができると共に研磨テーブル83aに対して押圧することができるトップリング83bと、研磨テーブル83aにスラリー等の研磨液やドレッシング液(例えば、水)を供給するための研磨液供給ノズル83cと、研磨テーブル83aのドレッシングを行うためのドレッサ83dと、液体(例えば純水)と気体(例えば窒素)の混合流体を霧状にして、1又は複数のノズルから研磨面に噴射するアトマイザ83eとを有している。また、研磨装置83は、上下に昇降可能なリフタ83fと、上下に昇降可能なプッシャ83gとを有している。そして、搬送ロボット82に隣接する研磨装置83は、搬送ロボット82から基板を受け取り反転させることができる反転機83hを有している。
【0020】
各研磨装置83は、トップリング83bが保持した基板を研磨テーブル83aに接触させ、研磨液供給ノズル83cから研磨テーブル83aに研磨液を供給しながら研磨テーブル83a及びトップリング83bを所定の回転速度で回転させることで、基板の表面を研磨することができるように構成されている。また、各研磨装置83は、研磨された基板をリフタ83fに載置する一方で、研磨テーブル83aの表面をドレッサ83dでドレッシングし、リフタ83fに載置されている基板を、プッシャ83gを介して洗浄部4の搬送装置としてのロボットハンド70に渡すことができるように構成されている。
【0021】
ここで
図2を参照して、洗浄部4(
図1参照)を構成する洗浄機120について説明する。
図2は洗浄機120の概略構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)はローラ11と基板Wとの係合状態を示す部分側面図、(C)は(A)におけるC−C断面図である。洗浄機120は、基板Wを保持する第1の基板保持装置としての固定側保持具10及び第2の基板保持装置としての押付側保持具20と、ガイドピン31と、基板Wを洗浄する洗浄装置としてのロールスポンジ41、45と、ロールスポンジ41を移動させる移動装置42と、事前洗浄装置としてのセルフクリーニング装置50とを備えている。また、洗浄機120は、制御装置60が有する、後述する各種の制御部によって各種制御が行われるように構成されている。なお、
図2(A)は固定側保持具10及び押付側保持具20が基板Wを保持していない解除位置にある状態を示し、
図2(C)は固定側保持具10及び押付側保持具20が基板Wを保持している保持位置にある状態を示している。
【0022】
固定側保持具10は、第1ローラ11A(第1のローラに相当)と、第2ローラ11B(第2のローラに相当)と、第1ローラ11A及び第2ローラ11Bを支持する固定側台15とを有している。第1ローラ11A及び第2ローラ11Bは、同構造を有しており、以下、共通の構造を説明するときは「ローラ11」と総称する。ローラ11は、外観形状が、概ね、円錐から頂点付近を除去した形状を呈している。ローラ11の、円錐から頂部が除去されて形成された切断面は、底面11bに平行な面となっており、この面を頂面11tということとする。ローラ11は、頂面11t及び底面11bの中心を貫く軸線11aが、鉛直になるように固定側台15に取り付けられている。ローラ11は、頂面11tの近傍に、基板Wの厚さよりもやや大きい幅の溝が形成された溝部11gが、軸線11aまわりの全周に形成されている。溝部11gにおける、基板Wの厚さよりもやや大きい幅とは、典型的には、基板Wの側縁部の溝部11gへの抜き差しに支障がなく、基板Wを安定的に保持できる幅である。溝部11gは、基板Wを保持したときに基板Wが容易に離脱することのない深さに形成されている。
【0023】
ローラ11は、溝部11gよりも頂面11t側が頂部11cとなっており、溝部11gよりも底面11b側が傾斜部11sとなっている。頂部11cは、円柱状に形成されており、その高さは溝部11gの高さと概ね同じになっている。傾斜部11sは、側面が、底面11bに近づくに連れて広がっており、ここに円錐の側面の一部が表れている。ローラ11は、本実施の形態ではウレタンで形成されている。このことで、ローラ11は、基板Wの側縁部を保持したときに適度に弾性変形すると共に適度な摩擦を有することとなり、基板Wの保持及び回転を適切に行うことができるように構成されている。なお、
図2(A)の平面図では、固定側保持具10が解除位置にあることを明確に示すために、ローラ11の頂面のみを示し、傾斜部11sは省略している。
【0024】
固定側台15は、概ね直方体状に形成されており、ローラ11を軸線11aまわりに回転させる回転機構(不図示)を内部に有している。回転機構(不図示)は、本実施の形態ではサーボモータが用いられている。固定側台15は、水平方向に長くなるように配置され、上面に第1ローラ11A及び第2ローラ11Bが、所定の距離だけ離れて取り付けられている。第1ローラ11A及び第2ローラ11B間の所定の距離は、基板Wを処理位置に搬送するロボットハンド70(
図1参照)が干渉せず、かつ、基板Wの外周の周長の半分の長さよりも短い間隔である。固定側台15は、処理位置にある基板Wに対して、第1ローラ11A及び第2ローラ11Bが基板Wを保持する固定側保持位置(第1の保持位置に相当)と、基板Wから離れた固定側解除位置(第1の解除位置に相当)との間で、移動することができるように構成されている。第1ローラ11A及び第2ローラ11Bは、固定側台15に連動して固定側保持位置と固定側解除位置との間を移動するので、固定側台15が固定側保持位置あるいは固定側解除位置にあるときは、第1ローラ11A及び第2ローラ11Bもその位置にあることとなる。固定側台15は、固定側保持位置で基板Wを保持しているときは、固定されて動かないように構成されている。この、固定側台15が固定側保持位置にある状態では、固定側台15に取り付けられている各ローラ11(第1ローラ11A及び第2ローラ11B)も位置的に固定されて動かないように構成されている(各ローラ11の軸線11aまわりの回転は可能である)。
【0025】
押付側保持具20は、第3ローラ23A(第3のローラに相当)と、第4ローラ23Bと、第3ローラ23A及び第4ローラ23Bを支持する押付側台25と、押付機26とを有している。第3ローラ23A及び第4ローラ23Bは、第1ローラ11A及び第2ローラ11Bと同構造を有している。したがって、第3ローラ23A及び第4ローラ23Bについても、第1ローラ11A等と共通の構造あるいは性質を説明するときは、ローラ11と総称することとする。第3ローラ23A及び第4ローラ23Bも、概ね円錐状の外観を呈しており、頂面11tと底面11bとの間に、頂部11c、溝部11g、傾斜部11sが形成され、鉛直方向に延びる軸線11aまわりに回転することができるように押付側台25に取り付けられている。押付側保持具20についても、
図2(A)の平面図では、ローラ11の頂面のみを示し、傾斜部11sは省略している。
【0026】
押付側台25は、固定側台15と同様に、ローラ11を軸線11aまわりに回転させる回転機構(不図示であるが、本実施の形態ではサーボモータ)を内部に有し、上面に第3ローラ23A及び第4ローラ23Bが、所定の距離だけ離れて取り付けられている。本実施の形態では、第3ローラ23Aが第2ローラ11Bの対角に、第4ローラ23Bが第1ローラ11Aの対角になるように、それぞれ押付側台25の上面に取り付けられている。押付側台25は、処理位置にある基板Wに対して、第3ローラ23A及び第4ローラ23Bが基板Wを保持する押付側保持位置(第2の保持位置に相当)と、基板Wから離れた押付側解除位置(第2の解除位置に相当)との間で、移動することができるように構成されている。第3ローラ23A及び第4ローラ23Bは、押付側台25に連動して押付側保持位置と押付側解除位置との間を移動するので、押付側台25が押付側保持位置あるいは押付側解除位置にあるときは、第3ローラ23A及び第4ローラ23Bもその位置にあることとなる。
【0027】
押付機26は、押付側保持位置にある第3ローラ23A及び第4ローラ23Bを、基板Wに向けてさらに押し付ける装置である。押付機26は、押付側台25に取り付けられており、押付側台25を平面視において基板W側に移動させようとすることで、間接的に(押付側台25を介して)第3ローラ23A及び第4ローラ23Bを基板Wに向けて押し付けるように構成されている。押付機26は、本実施の形態ではエアシリンダが用いられており、固定側保持位置にある第1ローラ11A及び第2ローラ11B並びに押付側保持位置にある第3ローラ23A及び第4ローラ23Bの各溝部11gが基板Wの側縁部に嵌合しつつ、基板Wに実質的なたわみ力(基板Wの品質に影響を与えるようなたわみ力)が作用しない力で、基板Wに対して第3ローラ23A及び第4ローラ23Bを押し付けることができるように構成されている。押付機26で第3ローラ23A及び第4ローラ23Bが基板Wに押し付けられることにより、4つのローラ11に概ね等しく力が掛かり、安定して基板Wを保持できることとなる。なお、押付機26は、エアシリンダ以外に、例えばばねの力で第3ローラ23A及び第4ローラ23Bを基板Wに押し付ける構成であってもよい。押付機26は、押し付ける力を調節可能にする観点からはエアシリンダを用いることが好ましく、構造の単純化を図る観点からはばねを用いることが好ましい。また、本実施の形態では、第3ローラ23A及び第4ローラ23Bを、基板Wに向けて間接的に押し付ける構成として説明するが、直接的に押し付ける構成とすることもできる。例えば、第3ローラ23A及び第4ローラ23Bを押付側台25に対して相対的に移動可能に構成し、その上で、押付側台25と各ローラ(第3ローラ23A及び第4ローラ23B)との間にばね等の付勢装置を設ける。このような構成とすると、押付側台25を押付側保持位置に固定したときに、付勢装置が作用して第3ローラ23A及び第4ローラ23Bの各々を、基板Wに押し付けることができる。
【0028】
ガイドピン31は、基板Wを、平面視において、処理位置に案内する部材である。つまり、ガイドピン31は、基板Wを真上から垂直に見たときの位置を処理位置に案内する。ガイドピン31は、本実施の形態では、第1ローラ11Aと第3ローラ23Aとの間で第1ローラ11Aの近くに1個と第3ローラ23Aの近くに1個が、第2ローラ11Bと第4ローラ23Bとの間で第2ローラ11Bの近くに1個と第4ローラ23Bの近くに1個の合計4個が設けられている。各ガイドピン31は、本実施の形態では、ポリエーテルエーテルケトンが、厚みのある矩形の板状の基本形状から矩形の1つの角が除去された外観形状を呈している。各ガイドピン31は、厚さ方向を基板Wの周方向に沿わせ、かつ、矩形の角を除去した部分が基板W側かつ上方になるようにして、平面視において処理位置にある基板Wの外周に近接して配置されている。平面視において、各ガイドピン31と基板Wとの近さは、基板Wの鉛直方向への移動を妨げず、水平方向への遊び(移動距離)が極力小さくなるのが好ましい。ガイドピン31は、基板Wに対向する面(厚さに相当する面)が、基板Wに接触した際の接触長さを小さくして摩擦を小さくする観点から、基板W側に凸になるように丸みを帯びている。ガイドピン31の高さは、矩形の角を除去した部分が、ローラ11の溝部11gよりも上方となるように、好ましくはローラ11の頂面11tよりも上方となるように形成されている。ガイドピン31は、基板Wの平面における位置を処理位置に維持することができ、基板平面位置維持部の一形態である。
【0029】
ガイドピン31によって平面における位置を処理位置に維持されている基板Wに対して、固定側台15が固定側解除位置にあり、押付側台25が押付側解除位置にあるとき、基板Wはローラ11の傾斜部11sに載置された状態となる。このように、各ローラ11の傾斜部11sは、協働して載置台として機能し、基板支持部を構成する。基板Wは、傾斜部11sに載置されているとき、各ローラ11の溝部11gよりも下方に位置していることとなる。傾斜部11sに載置されている基板Wは、固定側台15が固定側保持位置に移動しかつ押付側台25が押付側保持位置に移動することで、基板Wの側縁部が傾斜部11sに沿って溝部11gに向かって移動した後に溝部11gに嵌合されることとなる。そして、側縁部が溝部11gに嵌合されたローラ11に保持された基板Wは、ローラ11の軸線11aまわりの回転によってローラ11とは逆方向に回転することとなる。このように、固定側保持具10と押付側保持具20とで、基板回転装置を構成している。なお、
図2(A)の平面図では、各ローラ11が基板Wから完全に離れた状態にあるように示されているが、実際は各ローラ11と基板Wは、上記のとおり、各ローラ11の傾斜部11sが基板Wの下側から外れない状態を保っている。第3ローラ23Aの近傍には、押付側台25が押付側保持位置から押付側解除位置に移動する際に第3ローラ23Aが基板Wから離れたことを検知する検知器としての保持位置センサ33が設けられている。保持位置センサ33は、典型的にはフォトセンサが用いられているが、第3ローラ23Aの基板Wに対する押圧力を検知する構成であってもよい。
【0030】
ロールスポンジ41及びロールスポンジ45は、基板Wの直径よりも長い円柱状のスポンジであり、各ローラ11に保持された基板Wの上方にロールスポンジ41が、下方にロールスポンジ45が、それぞれ長手方向が基板Wと平行になるように配設されている。ロールスポンジ41、45は、典型的には多孔質のPVA製スポンジからなるが発泡ウレタン製のものでもよく、スポンジに形成される孔の平均直径が小さいほどパーティクル除去能力が高くなる。ロールスポンジ41は、円柱状の一端で移動装置42に支持されている。ロールスポンジ45は、円柱状の一端で移動装置46に支持されている。両ロールスポンジ41、45は、それぞれその円柱状の軸線を中心に回転することができるように構成されている。
【0031】
移動装置42及び移動装置46は、それぞれ、支持しているロールスポンジ41、45を軸線まわりに回転させる回転機構(不図示)を有している。移動装置42は、自身の移動に伴って、ロールスポンジ41を、基板Wを洗浄する位置とセルフクリーニング装置50の位置との間で移動させることができるように構成されている。移動装置42は、本実施の形態では、処理位置にある基板Wに対してロールスポンジ41が接触して洗浄する際のロールスポンジ41の位置である洗浄位置P3と、洗浄位置P3の鉛直上方にある離間位置P2との間でロールスポンジ41を垂直移動することができると共に、セルフクリーニング装置50のある待機位置P1と離間位置P2との間でロールスポンジ41を水平移動することができるように構成されている。なお、離間位置P2は、待機位置P1を通る水平な仮想直線と、洗浄位置P3を通る垂直な仮想直線とが交差する点に存在する。他方、移動装置46は、ロールスポンジ45を、基板Wに接触した位置と、基板Wから離れた位置(下方位置)との間で、鉛直方向に移動させることができるように構成されている。洗浄位置P3にあるときのロールスポンジ41の近傍には、ロールスポンジ41が洗浄位置P3にあるか否かを検知するセンサとしての洗浄位置センサ34が設けられている。洗浄位置センサ34は、典型的にはフォトセンサが用いられているが、ロールスポンジ41に圧力センサあるいは変位センサを設け、ロールスポンジ41の圧力あるいは変位を検知する構成であってもよい。
【0032】
セルフクリーニング装置50は、基板Wを洗浄して汚染されたロールスポンジ41を、待機位置P1にて清浄化する装置である。セルフクリーニング装置50によって行われるセルフクリーニングは、基板Wの洗浄に用いられる前に(事前に)ロールスポンジ41自体を清浄にするものであり、事前洗浄に相当する。セルフクリーニング装置50は、洗浄槽51と、洗浄プレート53と、洗浄液ノズル55とを有している。洗浄槽51は、ロールスポンジ41のセルフクリーニングが内部で行われる槽であり、セルフクリーニングで使用された洗浄液を下部に貯留できるように構成されている。また、洗浄槽51は、ロールスポンジ41が待機位置P1と離間位置P2との間を移動する動線の妨げにならないよう、当該動線上は開口している。洗浄プレート53は、ロールスポンジ41に付着した異物を除去するのに適した部材であり、本実施の形態では石英プレートが用いられている。洗浄液ノズル55は、待機位置P1にあるロールスポンジ41に洗浄液を噴出する部材であり、ロールスポンジ41の動線とは反対側の洗浄槽51の壁に近接して配置されている。セルフクリーニング装置50は、待機位置P1にあって軸線まわりに回転しているロールスポンジ41に洗浄液を掛けながらロールスポンジ41を洗浄プレート53に押し付けることで、ロールスポンジ41に付着していた異物を除去して清浄化するように構成されている。
【0033】
次に
図3を参照して、洗浄部4(
図1参照)を構成するロボットハンド70について説明する。
図3はロボットハンド70の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は側面図である。ロボットハンド70は、アーム73と、アーム73の上部に設けられた把持部としてのチャック71とを有している。アーム73は、軸直角断面が矩形に形成された細長い部材であり、平面視において基板Wを把持する方の先端の幅が広い幅広部分73wが形成されている。アーム73の幅広部分73wは、長手方向(アーム73の軸方向)において基板Wの直径よりも大きく(典型的には基板Wの直径よりも一回り大きく)、幅方向(アーム73の軸直角方向)において洗浄機120(
図2参照)への出入口(不図示)の幅よりも小さく形成されている。幅広部分73wは、先端(幅広部分73wではないアーム73が続いている側とは反対側)が先割れ状に形成されている。幅広部分73wには、上面にチャック71が設けられている。チャック71は、幅広部分73wの長手方向に間隔を空けて幅広部分73wの面から上方に突出する2つの突部71a、71bを含んで構成されている。2つの突部71a、71bは、基板Wの外径よりも一回り大きい(接触せずに基板Wを出し入れできる程度の大きさの)仮想外径に沿って湾曲して形成されている。2つの突部71a、71bのうちの先端側の突部71bは、先割れ状の幅広部分73wに対応して分割されている。他方、先端の反対側の方の突部71aには、先端側の突部71bに対して進退する押さえ部材71cが収容されている。チャック71は、押さえ部材71cが突出したときに押さえ部材71cと他方の突部71bとで基板Wの外縁を挟んで把持し、押さえ部材71cが突部71a内に退避したときに2つの突部71a、71b間に対して基板Wを出し入れできるように構成されている。
【0034】
図1に戻って基板処理装置100の構成の説明を続ける。なお、以降の説明において、洗浄機120の構成に言及しているときは
図2を、ロボットハンド70の構成について言及しているときは
図3を、適宜参照することとする。基板処理装置100は、本実施の形態では、上述の洗浄機120及びロボットハンド70をそれぞれ2つずつ備えており、さらに乾燥機75を備えている。乾燥機75は、詳細な説明は省略するが、洗浄機120で洗浄された基板Wをスピンチャックで把持して高速回転させるもの、あるいは表面がリンス液で覆われた基板Wを回転させながら乾燥気体流を基板Wの中心から外縁に移動させるもの等が用いられる。基板処理装置100は、搬送ロボット82に対して遠い側から近づく方向に、洗浄機120A、ロボットハンド70A、洗浄機120B、ロボットハンド70B、乾燥機75の順で直線的に配置されている。洗浄機120A、洗浄機120Bは、同じ構成であるが、配置による区別を容易にするため、参照符号を区別している。ロボットハンド70A、70Bについても同様である。ロボットハンド70Aは、両洗浄機120A、120Bにアクセス可能に構成されている。ロボットハンド70Bは、洗浄機120B及び乾燥機75にアクセス可能に構成されている。乾燥機75には、搬送ロボット82もアクセスできるように構成されている。
【0035】
制御装置60は、研磨部3、洗浄部4、及びロード/アンロード部2の搬送ロボット82の動作を制御する。また、制御装置60は、洗浄機120及びロボットハンド70の制御に関連して、以下のように構成されている。制御装置60は、固定側保持具10、押付側保持具20、移動装置42、46、セルフクリーニング装置50の動作を制御する。また、制御装置60は、保持位置センサ33と信号ケーブルで接続されており、第3ローラ23Aが基板Wから離れたか否かの検知結果を信号として受信できるように構成されている。また、制御装置60は、洗浄位置センサ34と信号ケーブルで接続されており、ロールスポンジ41が洗浄位置P3にあるか否かの検知結果を信号として受信できるように構成されている。
【0036】
また、制御装置60は、
図2(C)に示すように、解除制御部61と、接近制御部62と、記憶部63と、接触制御部64とを有している。解除制御部61は、ローラ11による基板Wの保持及び解除を制御する部位である。接近制御部62は、セルフクリーニング装置50からのロールスポンジ41の移動を制御する部位である。記憶部63は、ロールスポンジ41が洗浄する基板Wの種類や洗浄レベルに応じて、ロールスポンジ41のセルフクリーニングに要する時間(事前洗浄時間)があらかじめ記憶されている。また、記憶部63には、移動装置42によってロールスポンジ41が離間位置P2から洗浄位置P3まで移動するのに要する時間(以下、「移動時間」という。)、及び、各ローラ11の軸線まわりの回転による基板Wの回転の開始から基板Wの回転速度が所定の回転速度に到達するまでの時間(以下「到達時間」という。)が記憶されている。移動時間及び到達時間は、典型的には当該機器に特有の時間である。接触制御部64は、ロールスポンジ41の離間位置P2と洗浄位置P3との間の移動を制御する部位である。なお、
図2(C)では、解除制御部61、接近制御部62、記憶部63、接触制御部64が別々に構成されているように示しているが、これは機能の観点から概念的に別々に表現したものであり、物理的には渾然一体に構成されていてもよい。また、
図2(C)では、解除制御部61、接近制御部62、記憶部63、接触制御部64が1つの筐体に収容されて制御装置60を構成しているように示されているが、これは概念を示しているものであって、物理的にはこれらが分離して配設されていてもよい。
【0037】
引き続き
図1乃至
図3を参照して、基板処理装置100の作用を説明する。以下の作用は、主に制御装置60によって制御される。カセット81に設置された基板を搬送ロボット82によって取り出し、研磨部3の反転機83hに渡す。基板を、反転機83hで反転した後リフタ83fに渡し、トップリング83bをリフタ83fの上方に移動した後リフタ83fで基板を押し上げ、基板をトップリング83bに吸着させる。その後、基板を研磨テーブル83aに接触させ、研磨液供給ノズル83cから研磨テーブル83aに研磨液の供給を開始し、同時に研磨テーブル83a及びトップリング83bを所定の回転速度で回転させ、基板の表面を研磨する。基板の表面を所定量研磨したら、研磨液供給ノズル83cからの研磨液の供給に代えて、純水供給ノズル(不図示)から純水を供給して基板の研磨を行う。純水を供給しながらの基板の研磨を所定時間行ったら、トップリング83bを上昇させて基板を研磨テーブル83aから離し、基板をリフタ83f上に載置する。このとき研磨テーブル83aに貼付されている研磨布をドレッサ83dで研磨し、研磨布をコンディショニングする。基板をリフタ83f上に載置したらリフタ83fを水平にプッシャ83gのある位置まで移動し、プッシャ83gで持ち上げた後、洗浄部4のロボットハンド70Aが基板を受け取る。
【0038】
ロボットハンド70A(以下、単に符号「70」で示す)は、基板Wを受け取ったら、基板Wを洗浄するために、洗浄機120に搬送する(ここでは洗浄機120Aに搬送することとする)。ロボットハンド70によって洗浄機120に搬送された基板Wは、4つのガイドピン31の中に上から進入して、載置台として機能する各ローラ11の傾斜部11sに載置される。ロボットハンド70は、基板Wを傾斜部11sに載置したら、洗浄機120から退避する。本実施の形態では、ガイドピン31及び載置台(傾斜部11s)が設けられているので、基板Wが各ローラ11に保持される前にロボットハンド70が退避することができ、スループットの向上に寄与することとなる。傾斜部11sに載置されている基板Wは、固定側台15が固定側解除位置から固定側保持位置に移動すると共に、押付側台25が押付側解除位置から押付側保持位置に移動することで、各ローラ11に保持され、その後保持された面内で回転される。他方、基板Wの洗浄を行うために、ロールスポンジ41を待機位置P1から洗浄位置P3に移動すると共に、保持されている基板Wの裏面にロールスポンジ45を移動する。上述のように、基板Wを洗浄機120に搬送して洗浄する際に、従来は、まず、ロボットハンド70が基板Wを洗浄機120内に搬送し、ロボットハンド70が洗浄機120から退避した後に、ロールスポンジ41を待機位置P1から洗浄位置P3に向けて移動させていたが、本実施の形態では、スループット向上のため、以下のような制御を行うこととしている。
【0039】
図4は、洗浄機120への基板Wの搬送時の制御のフローチャートである。
図5は、洗浄機120への基板Wの搬送時のロールスポンジ41及び基板Wの位置関係の推移を示す概略図である。
図5では、ロールスポンジ41と基板Wとの位置関係を焦点としているため、各ローラ11等の図示を省略している。以下に説明する洗浄機120への基板Wの搬送時の制御は、主に接近制御部62が司る。洗浄機120では、基板Wが搬入されるまでの間、ロールスポンジ41が、待機位置P1に移動して(S11)、セルフクリーニングが行われている(事前洗浄工程;S12)(
図5(A)参照)。そして、接近制御部62は、セルフクリーニングを開始してから、事前洗浄時間が経過したか否かを判断する(S13)。接近制御部62は、そのとき行われているセルフクリーニングの条件に応じた事前洗浄時間を、あらかじめ記憶部63から取得している。事前洗浄時間が経過したか否かを判断する工程(S13)において、経過していない場合、基板Wを洗浄機120内に搬入する準備が完了したか否かを判断する(S24)。ここで、基板Wを洗浄機120内に搬入する準備が完了している状態とは、基板Wを把持したロボットハンド70が、洗浄機120内にいつでも入ることができる位置にある状態である。基板Wを搬入する準備が完了していない場合は、事前洗浄工程(S12)に戻る。他方、基板Wを搬入する準備が完了している場合も、セルフクリーニングが完了していない状況(工程S13でNo)では、基板Wを洗浄機120内に搬入する手前で待機させて(S25)、事前洗浄工程(S12)に戻る。
【0040】
他方、事前洗浄時間が経過したか否かを判断する工程(S13)において、経過している場合、すなわちセルフクリーニングが完了している場合、基板Wを洗浄機120内に搬入する準備が完了したか否かを判断する(S14)。ここでの判断の内容は、工程(S24)と同じであるが、次に続く工程が異なるため、別の工程として規定している。基板Wを洗浄機120内に搬入する準備が完了したか否かを判断する工程(S14)において、搬入する準備が完了していない場合は、ロールスポンジ41を待機位置P1で待機させ(S15)、基板Wを洗浄機120内に搬入する準備が完了したか否かを判断する工程(S14)に戻る。基板Wの搬入準備が完了するまでロールスポンジ41を待機位置P1で待機させている際、典型的にはロールスポンジ41のセルフクリーニングが継続して行われている。
【0041】
他方、基板Wを洗浄機120内に搬入する準備が完了したか否かを判断する工程(S14)において、搬入する準備が完了している場合、接近制御部62は、待機位置P1にあるロールスポンジ41を、差し当たり洗浄位置P3よりも手前にある離間位置P2に向けて移動させる(洗浄装置移動工程;S16)と共に、洗浄機120の外で待機している基板Wを処理位置に向けて洗浄機120内に搬送する(基板搬送工程;S17)(
図5(B)参照)。典型的には、洗浄装置移動工程(S16)と基板搬送工程(S17)とが同時に開始されるが、同時に開始されなくても少なくとも洗浄装置移動工程(S16)と基板搬送工程(S17)とが並行して行われる時間があれば、その時間の分だけ搬送時間も含めた基板Wの洗浄に要する合計時間を短縮することができる。洗浄装置移動工程(S16)と基板搬送工程(S17)とが同時に開始されない場合、短縮する時間を最大にする観点から、ロボットハンド70で搬送されてきた基板Wが各ローラ11の傾斜部11sに載置されたときに、ロールスポンジ41が離間位置P2に到達していることが好ましい(
図5(C)参照)。なお、洗浄装置移動工程(S16)と基板搬送工程(S17)とが同時に開始されない場合、基板搬送工程(S17)が開始された後に洗浄装置移動工程(S16)が開始されることとしてもよい。基板Wが各ローラ11の傾斜部11sに載置されたら、ロボットハンド70は退避する(
図5(D)参照)。
【0042】
基板Wの洗浄を行う際は、ロールスポンジ41を基板Wに接触させるので、離間位置P2にあるロールスポンジ41を洗浄位置P3に移動させることとなる。ところが、基板Wの洗浄時に必要な所定の回転速度まで基板Wの回転速度が上昇しないうちにロールスポンジ41が基板Wに接すると、ディフェクトの増加等の洗浄性能に悪影響が及ぶ可能性が高くなる。このため、従来は、上述の悪影響が及ぶのを回避するべく、基板回転装置に回転させられた基板Wの回転速度が所定の回転速度まで上昇した後に、ロールスポンジ41の洗浄位置P3に向けての移動を開始させていたが、本実施の形態では、スループット向上のため、以下のような制御を行うこととしている。
【0043】
図6は、基板Wへのロールスポンジ41の接触の制御のフローチャートである。以下に説明する基板Wへのロールスポンジ41の接触の制御は、主に接触制御部64が司る。ロボットハンド70によって各ローラ11の傾斜部11sに載置された基板Wは、解除制御部61が、固定側解除位置にある固定側台15を固定側保持位置に移動させると共に、押付側解除位置にある押付側台25を押付側保持位置に移動させることで、各ローラ11の溝部11gに側縁部が導かれて各ローラ11によって保持される(S31)。押付側台25が押付側保持位置に移動した後、押付機26が基板W側に付勢されることで、各ローラ11による基板Wの保持がより安定することとなる。押付側台25が押付側保持位置にあるうちは、押付機26による付勢が維持されている。そして、接触制御部64は、ロールスポンジ41が離間位置P2にあるか否かを判断する(S32)。ロールスポンジ41が離間位置P2にない場合、再びロールスポンジ41が離間位置P2にあるか否かを判断する工程(S32)に戻る。他方、ロールスポンジ41が離間位置P2にある場合、移動時間が到達時間以上か否かを判断する(S33)。移動時間及び到達時間は、前述のとおり、記憶部63に記憶されている。
【0044】
移動時間が到達時間以上か否かを判断する工程(S33)において、移動時間が到達時間以上の場合、接触制御部64は、ロールスポンジ41の離間位置P2から洗浄位置P3に向けての移動を開始させ(洗浄装置接近工程;S34)、所定の回転速度を目指して基板Wの回転を開始させる(回転速度上昇工程;S35)。典型的には、ロールスポンジ41の移動開始と基板Wの回転開始とが同時に行われるが、移動時間と到達時間との差より短い時間の範囲内で、ロールスポンジ41の移動開始よりも基板Wの回転開始を遅らせてもよい。
【0045】
他方、移動時間が到達時間以上か否かを判断する工程(S33)において、移動時間が到達時間未満の場合、接触制御部64は、まず、所定の回転速度を目指して基板Wの回転を開始させる(回転速度上昇工程;S44)。そして、接触制御部64は、基板Wの回転を開始させてから、到達時間と移動時間との差(以下「差分時間」という。)が経過したか否かを判断する(S45)。差分時間が経過していないときは、再び差分時間が経過したか否かを判断する工程(S45)に戻る。他方、差分時間が経過したときは、ロールスポンジ41の離間位置P2から洗浄位置P3に向けての移動を開始させる(洗浄装置接近工程;S46)。ロールスポンジ41の移動開始(S46)は、基板Wの回転を開始させてから基板Wの洗浄を開始するまでの時間の短縮を最大にする観点から、差分時間が経過後に遅滞なく行われることとするのが好ましい。
【0046】
移動時間が到達時間以上の場合も未満の場合も、ロールスポンジ41の離間位置P2から洗浄位置P3への移動と、基板Wの回転速度の上昇とが並行して行われることで、移動時間等も含めた基板Wの洗浄に要する合計時間を短縮することができ、スループットを向上させることができる。また、いずれの場合も、上述のロールスポンジ41の移動開始及び基板Wの回転開始の制御により、基板Wの回転速度が所定の回転速度に到達した後に、ロールスポンジ41が基板Wに接触することとなる。このことにより、ディフェクトの増加等の悪影響が基板Wに及ぶことが抑制される。なお、接触制御部64は、ロールスポンジ41が洗浄位置P3に到達したときにロールスポンジ45が基板Wの裏面に接触するように、移動装置46を制御する。また、仮に、何らかのトラブルにより、基板Wが所定の回転速度に達する前にロールスポンジ41が基板Wに接触したことを洗浄位置センサ34が検知したら、接触制御部64は、ロールスポンジ41を直ちに基板Wから離すように移動させることで、ディフェクトの増加等の悪影響を抑制することとしている。所定の回転速度に到達した基板Wに対して、ロールスポンジ41が、洗浄位置P3に到達することにより接触したら、基板Wの洗浄が行われる(基板処理工程;S36)。次に、接触制御部64は、基板Wの洗浄が終了したか否かを判断する(S37)。基板Wの洗浄が終了していないときは、基板Wを洗浄する工程(S36)に戻る。他方、基板Wの洗浄が終了したときは、基板Wの回転速度を所定の回転速度に維持したまま、ロールスポンジ41の離間位置P2へ向けての移動を開始する(S38)。このとき、ロールスポンジ45も、基板Wの裏面から離すように併せて移動する。
【0047】
ロールスポンジ41の移動を開始したら(S38)、接触制御部64は、ロールスポンジ41が基板Wから離れたことを洗浄位置センサ34が検知したか否かを判断する(S39)。ロールスポンジ41が基板Wから離れていない場合は、ロールスポンジ41が基板Wから離れたことを検知したか否かを判断する工程(S39)に戻る。他方、ロールスポンジ41が基板Wから離れた場合、接触制御部64は、基板Wの回転速度を低下させ(S50)、ついには基板Wの回転を停止させる(S51)。このように、ロールスポンジ41が基板Wから離れた後に、基板Wの回転速度を所定の回転速度から低下させることとしているので、ディフェクトの増加等の悪影響を低減することができる。なお、
図6のフローチャートにおいて、機器に固有の移動時間及び到達時間はあらかじめ記憶部63に記憶されて分かっているので、移動時間が到達時間以上か否かを判断する工程(S33)を省略すると共に、そこから2つに分かれたフロー(S34〜S35、S44〜S46)のうちの当該機器に適用されない方のフローを省略して、制御の負担を軽減してもよい。
【0048】
基板Wの洗浄が終了し、基板Wの回転が停止したら、各ローラ11による基板Wの保持を解除して、次工程のモジュールに基板Wを搬送するのであるが、従来、基板Wの保持を解除したときに、基板Wを跳ね上げて損傷させてしまうことがあった。本発明者らは、鋭意研究を行った結果、典型的には、押付側台25の押付側解除位置への移動が、固定側台15の固定側解除位置への移動よりも先に開始されたときに、基板Wを跳ね上げてしまう場合があることを突き止めた。このことは、先に固定側台15が固定側解除位置に移動すると、押付機26によって基板W側に押し付けられた第3ローラ23A及び第4ローラ23Bが、基板Wをガイドピン31に押し付けることとなり、ガイドピン31に押し付けられた基板Wがたわみ、たわんだ基板Wの弾性エネルギーが放出されることで、基板Wが跳ね上げられるために生じると推察される。さらに、たとえ固定側台15の固定側解除位置への移動と、押付側台25の押付側解除位置への移動とが同時に開始しても基板Wを跳ね上げ得ることが分かった。それは、両者が僅かに離れた状態では、押付機26による押し付け力が第3ローラ23A及び第4ローラ23Bに残ることがあり、第3ローラ23A及び第4ローラ23Bが基板Wをガイドピン31に押し付けることに起因すると推察される。本実施の形態では、スループットの低下を抑制しつつ基板Wの跳ね上がりを回避するため、以下のような制御を行うこととしている。
【0049】
図7は、基板Wの保持を解除する制御のフローチャートである。以下に説明する基板Wの保持を解除する制御は、主に解除制御部61が司る。基板Wが保持されて(基板保持工程;S61(
図6における工程S31〜S51に相当))、基板Wの洗浄が行われたら(基板処理工程;S62(
図6における工程S36に相当))、基板Wの回転が停止したか否かを判断する(S63)。基板Wの回転が停止していなければ、基板Wの回転が停止したか否かを判断する工程(S63)に戻る。他方、基板Wの回転が停止している場合、解除制御部61は、まず、押付側台25の押付側解除位置に向けた移動を開始させる(押し付け側解除開始工程;S64)。
【0050】
解除制御部61は、押付側台25の押付側解除位置に向けた移動を開始させたら、第3ローラ23Aが基板Wを保持した位置から離れたことを保持位置センサ33が検知したか否かを判断する(S65)。第3ローラ23Aが基板Wから離れていない場合は、第3ローラ23Aが基板Wから離れたことを検知したか否かを判断する工程(S65)に戻る。他方、第3ローラ23Aが基板Wから離れた場合、解除制御部61は、固定側台15の固定側解除位置へ向けた移動を開始させる(固定側解除開始工程;S66)。このとき、既に押付側台25は押付側解除位置に向けた移動を開始しており、押付機26が基板Wに押し付けられていないので、固定側台15が固定側解除位置に向けて移動しても、基板Wがガイドピン31に押し付けられることがなく、基板Wが跳ね上げられることがない。なお、スループット向上のために、固定側台15の固定側解除位置へ向けた移動は、第3ローラ23Aが基板Wから離れた後、遅滞なく行われることとするのが好ましい。
【0051】
押付側台25が押付側解除位置に移動し、固定側台15が固定側解除位置に移動すると、基板Wは、各ローラ11に保持されていないアンクランプの状態となる(S67)。アンクランプの状態の基板Wは、ガイドピン31によって水平方向の移動が制限されているため、平面における位置は処理位置に維持されており、鉛直方向の位置は処理位置よりも下方に移動してローラ11の傾斜部11sに載置された状態となっている。各ローラ11の傾斜部11sに載置されている基板Wは、ロボットハンド70に把持されて洗浄機120の外に搬出され、次工程のモジュール(例えば洗浄機120B)に搬送される。なお、押付側台25の押付側解除位置への移動及び固定側台15の固定側解除位置への移動を開始する前に、各ローラ11に保持されている基板Wを把持できる位置にロボットハンド70を移動させ、基板Wがアンクランプの状態となったときに、基板Wが傾斜部11sではなくロボットハンド70に載置されることとしてもよい。この場合、傾斜部11sに代えて、ロボットハンド70が載置台(基板支持部)となる。また、ガイドピン31に代えて、ロボットハンド70の突部71b、71aが、基板Wの平面における位置を処理位置に維持する機能を発揮することとなる。つまり、ロボットハンド70の突部71b、71aが基板平面位置維持部に相当することとなる。
【0052】
以上で説明したように、本実施の形態に係る基板処理装置100によれば、基板Wの洗浄(処理)を行う際、基板Wの跳ね上がりを回避しつつ、搬送時間を含めた基板Wの洗浄に要する時間を短縮することができ、スループットを向上させることができる。上述した制御を行う洗浄機120では、1時間あたりの基板Wの処理枚数を、概ね7〜10%増加させることができる。
【0053】
以上の説明では、押付側保持具20が、第3ローラ23Aに加えて第4ローラ23Bを有していることとしたが、固定側台15が有する2つのローラ11A、11Bと協働して基板Wを保持して回転させることができれば、第4ローラ23Bを省略して第3ローラ23Aのみを有することとしてもよい。逆に、基板Wを安定的に保持して回転させる観点から、押付側保持具20が3つ以上のローラ11を有することとしてもよく、及び/又は固定側保持具10が3つ以上のローラ11を有することとしてもよい。いずれの場合も、各ローラにより基板Wは平面的に静定に保持されるように構成するとよい。第1ローラ11A、第2ローラ11B、及び第3ローラ23Aの3つのローラ11で保持するときは、基板Wは静定に保持されることになる。このとき、3つのローラ11は、第3ローラ23Aが二等辺三角形の頂点に位置するように配置するとよい。
図2(A)に示すように、4つのローラ11で保持するときは、固定側台15と押付側台25のいずれかを、平面視において回動するように構成するとよい。すなわち、回動させるべき一方の台の長手方向中央部に回動軸を設け、その回動軸まわりに回動するように構成するとよい。このような構成により、基板Wを静定に保持することができる。また、第3ローラ23Aと第4ローラ23Bを押付側台25に対して相対的に移動可能とし、各ローラ11に付勢装置を設けることにより、基板Wの保持を静定とすることができる。このように静定に保持する構成にすれば、基板Wを各ローラ11により無理なく保持することができる。また、基板Wに作用する各ローラ11による力を均一にすることができる。さらに追加のローラ11を設ける場合も、同様にして静定保持の構成とするとよい。
【0054】
以上の説明では、洗浄装置がロールスポンジ41、45であるとしたが、ペンシル型のスポンジ等、ロールスポンジ41、45以外のものであってもよい。また、洗浄装置(ロールスポンジ)が基板Wの両面に配設されて基板Wの両面が洗浄されることとしたが、片面(典型的には回路形成面で、本実施の形態では上面)のみ洗浄されることとしてもよい。このとき、洗浄しない方の面には洗浄装置を設けなくてよい。
【0055】
以上の説明では、載置台(基板支持部)が、ローラ11の傾斜部11sに形成されることでローラ11と一体に構成されているとしたが、ローラ11と別体に構成されていてもよい。
【0056】
以上の説明では、事前洗浄工程が、セルフクリーニング装置50を用いて自動で行われることとしたが、手動で行われることとしてもよい。