(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記評価用シリコンウェーハのシリコンウェーハ中のドーパント濃度は、前記シリコン層中のドーパント濃度よりも高い、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシリコンウェーハ加工量の評価方法。
請求項1〜7に記載のシリコンウェーハの加工量の評価方法により、前記評価用シリコンウェーハの表面および裏面のシリコン層の加工量を評価し、評価された表面および裏面の加工量に差異が存在する場合には、前記減厚加工処理の加工条件を調整して、前記差異が相殺される加工条件の下で、シリコンウェーハの表面に対して前記減厚加工処理を施すことを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、エッチング処理により同じ深さを有する凹部をシリコンウェーハ表面内に均一に形成することは難しく、その結果、研磨量の測定結果のばらつきが大きくなる。
また、一般的に、静電容量方式の平坦度測定器(WaferSight)などにより、研磨処理後のウェーハ厚み測定が行われているが、研磨量を1μm以下の精度で正確に評価することは困難である。
さらに、評価用ウェーハの表面には実際の製品ウェーハには存在しない凹部が形成されるため、両面研磨処理を施す際に評価用ウェーハ表面に負荷される研磨圧力は製品ウェーハのものと異なることから、評価用ウェーハを用いて得られたウェーハ研磨量の評価結果は実際の製品のそれとは相違するため、ウェーハ製造工程の両面研磨処理に反映させることができないことも問題となる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ウェーハの厚みを減じる加工処理(以下、「減厚加工処理」と称する)における加工量を高精度に評価できるシリコンウェーハ加工量の評価方法およびこの方法に供する評価用シリコンウェーハを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者らは、上記課題を解決する方途について鋭意検討した結果、測定対象の厚みを高精度に測定可能な光学式厚み測定手段を利用し、該光学式厚み測定手段により厚み測定が可能なシリコン層がシリコンウェーハ上に形成された評価用シリコンウェーハを作製し、該評価用シリコンウェーハのシリコン層に対して施された減厚加工処理前後の厚みを上記光学式厚み測定手段により測定し、該厚み測定結果に基づくことによって、減厚加工処理における加工量を高精度に評価することが可能であることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0009】
即ち、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)シリコンウェーハに施す減厚加工処理における加工量を評価するに当たり、シリコンウェーハの表裏面に、光学式厚み測定手段により厚み測定が可能なシリコン層を形成した評価用シリコンウェーハを作製し、次いで該評価用シリコンウェーハのシリコン層の厚みを前記光学式厚み測定手段により測定した後、前記シリコン層に対して前記減厚加工処理を施し、続いて該減厚加工処理後のシリコン層の厚みを前記光学式厚み測定手段により測定し、前記シリコン層に対する加工処理前後の厚み測定結果に基づいて前記減厚加工処理における加工量を評価し、前記シリコン層は、エピタキシャル層であ
り、前記シリコン層の厚みの測定は、前記評価用シリコンウェーハの表面および裏面のそれぞれについて個別に行うことを特徴とするシリコンウェーハ加工量の評価方法。
【0011】
(2)前記加工処理は、研磨処理またはエッチング処理である、
前記(1)に記載のシリコンウェーハ加工量の評価方法。
【0012】
(3)前記加工処理は両面研磨処理である、
前記(1)または
(2)のいずれかに記載のシリコンウェーハ加工量の評価方法。
【0013】
(4)前記光学式厚み測定手段は、FTIR法もしくは分光エリプソメータ法である、
前記(1)〜
(3)のいずれか一項に記載のシリコンウェーハ加工量の評価方法。
【0015】
(5)前記減厚加工処理前のシリコン層の厚みは、前記加工量よりも大きい、
前記(1)〜
(4)のいずれか一項に記載のシリコンウェーハ加工量の評価方法。
【0016】
(6)前記評価用シリコンウェーハのシリコンウェーハ中のドーパント濃度は、前記シリコン層中のドーパント濃度よりも高い、
前記(1)〜
(5)のいずれか一項に記載のシリコンウェーハ加工量の評価方法。
【0017】
(7)前記評価用シリコンウェーハのシリコンウェーハ中のドーパント濃度は1×10
18atoms/cm
3以上の範囲に調整され、前記シリコン層中のドーパント濃度は1×10
17atoms/cm
3以下の範囲に調整される、
前記(1)〜
(6)のいずれか一項に記載のシリコンウェーハ加工量の評価方法。
【0023】
(8)上記(1)〜(7)に記載のシリコンウェーハの加工量の評価方法により、前記評価用シリコンウェーハの表面および裏面のシリコン層の加工量を評価し、評価された表面および裏面の加工量に差異が存在する場合には、前記減厚加工処理の加工条件を調整して、前記差異が相殺される加工条件の下で、シリコンウェーハの表面に対して前記減厚加工処理を施すことを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、評価用シリコンウェーハにおける、加工前後のシリコン層の厚みを高精度に求めることができるため、減厚加工処理前後のシリコン層の厚み測定結果に基づいて、減厚加工処理における加工量を高精度に求めることができる。
また、評価用シリコンウェーハは、実際の製品ウェーハの表層に類似のシリコン層を有しているため、減厚加工処理において評価用シリコンウェーハの表面が置かれる環境が実際の製品ウェーハの場合とほぼ同じになる。これにより、各減厚加工処理種に対応する加工量評価を正確かつ簡便に行うことができ、評価用シリコンウェーハを用いて得られたウェーハ加工量の評価結果を実際のウェーハ製造工程の減厚加工処理工程に反映させることができる。
更に、シリコンウェーハの表裏面にシリコン層を有する評価用シリコンウェーハを作製して用いることにより、両面研磨処理における研磨量の評価を表面と裏面のそれぞれについて個別に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(評価用シリコンウェーハ)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明のシリコンウェーハ加工量の評価方法を説明するに当たり、まず、本発明の評価方法に用いる評価用シリコンウェーハから説明する。
図1(a)は、本発明による評価用シリコンウェーハを示す図である。この評価用シリコンウェーハ1は、シリコンウェーハに施す減厚加工処理における加工量を評価するためのものであって、シリコンウェーハ11の表面上に、上記加工量よりも大きな厚みを有し、光学式厚み測定手段により厚み測定が可能なシリコン層12を有することが肝要である。
【0027】
本発明において、「減厚加工処理」とは、シリコンウェーハの製造工程おける両面研磨処理等の研磨処理、エッチング処理、洗浄等、ウェーハの厚みを機械的または化学的に減じる全ての処理を意味しており、「加工量」とは、これらの減厚加工処理による減厚代を意味している。
また、「光学式厚み測定手段」とは、シリコン表面に光を入射し、その反射光の情報に基づいて厚み測定可能な手段のことを意味し、具体的には、フーリエ変換型赤外分光(Fourier Transform Infrared Spectroscopy,FTIR)法または分光エリプソメータ法などが挙げられる。
【0028】
図2は、FTIR法によるシリコン層12の厚み測定の原理を示している。FTIR法では、評価用シリコンウェーハ1のシリコン層12の表面S2に赤外線である入射光L1を照射し、シリコン層12の表面S2にて反射する反射光L2と、シリコンウェーハ11とシリコン層12との界面(即ちシリコンウェーハ11の表面)S1にて反射する反射光L3とを検出器(図示せず)に入射させ、反射光L2とL3との光路差を測定することによりシリコン層12の厚みを得ることができる。
【0029】
一方、分光エリプソメータ法は、偏光状態が既知の入射光を測定対象膜の表面上に斜めから照射し、膜表面や膜内で反射・干渉した反射偏光の偏光状態を取得して偏光解析することにより測定対象膜の厚みを測定する手法である。半導体分野では、主に酸化膜、窒化膜、フォトレジスト膜などの薄膜の厚み測定に使用され、1μm以下の厚み測定に適している。このため、分光エリプソメータ法は、シリコン活性層の厚みが1μm以下のSOIウェーハを評価用ウェーハとした場合の評価に適している。なお、活性層厚みが5μmを超えると測定誤差を招く虞がある。
【0030】
これらの測定方法を用いることにより、光学的な原理に基づいて測定対象の厚みを非接触、非破壊で高精度に測定することができるため、前記測定対象を前記シリコン層12とすることによって、このシリコン層12に施す減厚加工処理における加工量を高精度に評価することが可能となる。
【0031】
ここで、評価用シリコンウェーハ1としては、エピタキシャルウェーハまたはSOIウェーハを用い、エピタキシャルウェーハにおけるエピタキシャル層またはSOIウェーハにおけるSOI層がシリコン層12に対応する。FTIR法は数十μm程度の厚み測定が可能であるため、エピタキシャルウェーハを評価用シリコンウェーハとして使用する場合に適している。分光エリプソメータ法は測定対象厚みが5μmを超えると測定誤差を招く虞があるため、SOI層厚みが1μm以下のSOIウェーハを評価用シリコンウェーハ1として使用する場合に適している。このように光学式厚み測定手段を適用することによって、エピタキシャル層またはSOI層の厚みを正確に把握でき、シリコン層12に施す減厚加工処理における加工量が正確に測定される。
【0032】
更に、
図1(a)に示した評価用シリコンウェーハ1は、表面のみにシリコン層12を有しているが、
図1(b)に示すように、シリコン層12がシリコンウェーハ11の表裏面に形成された評価用シリコンウェーハ2とすることもできる。この評価用シリコンウェーハ2を用いることにより、上述した両面研磨処理における研磨量の評価を、表面と裏面のそれぞれについて個別に行うことができる。この評価用シリコン2として、シリコンウェーハの表裏面にエピタキシャル層が形成されたエピタキシャルウェーハや、SIMOX法によりシリコンウェーハの表裏面にSOI層が形成されたSOIウェーハを用いることができる。
【0033】
なお、エピタキシャルウェーハを評価用シリコンウェーハ2として使用する場合、シリコンウェーハ11とシリコン層12の抵抗率の差が小さいと、FTIR法によりエピタキシャル層であるシリコン層12の厚み測定が困難となるため、シリコンウェーハ11のドーパント濃度をシリコン層12よりも高くすることが有効となる。以下、評価用シリコンウェーハ1(および2)の各構成について説明する。
【0034】
シリコンウェーハ11は、評価用シリコンウェーハ1(または2)の基板として用いられ、例えばCZ法等によって育成されたシリコン単結晶をスライスして、ラッピング工程、エッチング工程およびポリッシング工程を経て最終洗浄したポリッシュドウェーハとすることができる。このシリコンウェーハ11は、シリコン層12が形成される表面が少なくとも研磨されていることが好ましく、両面研磨処理における表裏面の研磨量を評価したい場合には、ウェーハの表裏面に対して鏡面研磨処理が施されたポリッシュドウェーハを用いることができる。
【0035】
シリコン層12は、シリコンウェーハ11の表面上に形成されており、減厚加工処理において加工処理が施される層である。このシリコン層12としては、ポリッシュドウェーハ上に形成されたエピタキシャル層または貼り合わせ法やSIMOX(Separation by IMplanted OXygen)法により形成されたSOI(Silicon On Insulator)ウェーハにおけるSOI層が適合する。
【0036】
上述のように、シリコン層12の厚みを測定可能とするために、シリコン層12の表面に入射された光の一部がシリコン層12の表面で反射させ、残りの入射光を、シリコン層12を透過させてシリコンウェーハ11とシリコン層12との界面にて入射光L1を反射させる必要があり、この要件を満足させるために、シリコンウェーハ11およびシリコン層12にドーパントを添加し、シリコンウェーハ11のドーパント濃度をシリコン層12よりも高めることが有効である。
そこで、シリコンウェーハ11およびシリコン層12にドーパントを添加することができる。このドーパントの種類は特に限定されず、ホウ素やリン、ヒ素、アンチモン等を用いることができる。
【0037】
ここで、シリコンウェーハ11のドーパント濃度は、1×10
18atoms/cm
3以上の範囲に調整されていることが好ましい。これにより、シリコン層12を透過する光が、シリコンウェーハ11とシリコン層12との界面S1にて効果的に反射させることができる。より好ましくは1×10
18atoms/cm
3以上1×10
19atoms/cm
3以下である。
【0038】
一方、シリコン層12のドーパント濃度は、シリコンウェーハ11よりも低いことが必要であり、1×10
17atoms/cm
3以下の範囲に調整されていることが好ましい。これにより、入射光L1の一部をシリコン層12中に透過させつつ、シリコン層12の表面S2にて、入射光L1の残りを効果的に反射させることができる。より好ましくは1×10
15atoms/cm
3以上1×10
17atoms/cm
3以下である。
【0039】
また、減厚加工処理における加工量の評価は、減厚加工処理前後のシリコン層12の厚み測定結果に基づいて行うため、シリコン層12の厚みは、減厚加工処理における加工量よりも大きいことが必要である。実際の減厚加工処理における加工量は、0.5μm以上20μm以下程度であるため、シリコン層12の厚みは0.5μm以上20μm以下とすることが好ましい。
【0040】
更に、評価用シリコンウェーハを製品のシリコンウェーハとして再生することを考えた場合に、評価用ウェーハ1または2上に形成されたシリコン層12を除去するのみで、基板として用いたシリコンウェーハ11をポリッシュドウェーハの材料として再生し、減厚加工処理後のシリコンウェーハ11に対して、エッチング処理およびポリッシング処理を施すことによりポリッシュドウェーハを得ることができる。
【0041】
以上の評価用シリコンウェーハを用いて、該評価用シリコンウェーハのシリコン層に対して減厚加工処理を施し、加工前後のシリコン層の厚みを光学的厚み手段により高精度に測定することができるため、減厚加工処理前後のシリコン層の厚み測定結果に基づいて、減厚加工処理における加工量を高精度に評価することができる。
また、評価用シリコンウェーハは、実際の製品ウェーハの表層に類似のシリコン層を有しているため、減厚加工処理に評価用シリコンウェーハの表面が置かれる環境が実際の製品ウェーハの場合とほぼ同じになる。これにより、各減厚加工処理種に対応する加工量評価を正確かつ簡便に行うことができ、評価用シリコンウェーハを用いて得られたウェーハ加工量の評価結果を実際のウェーハ製造工程の減厚加工処理工程に反映させることができる。
更に、シリコンウェーハの表裏面にシリコン層を有する評価用シリコンウェーハを作製して用いることにより、両面研磨処理における研磨量の評価を表面と裏面のそれぞれについて個別に行うことができる。
【0042】
(シリコンウェーハ加工量の評価方法)
次に、本発明によるシリコンウェーハ加工量の評価方法について説明する。
図3は、本発明によるシリコンウェーハ加工量の評価方法のフローチャートである。本発明によるシリコンウェーハ加工量の評価方法は、シリコンウェーハ11の表面上に、光学式厚み測定手段により厚み測定が可能なシリコン層12を形成した評価用シリコンウェーハ1を作製し(ステップS1)、次いで評価用シリコンウェーハ1のシリコン層12の厚みを光学式厚み測定手段により測定した後(ステップS2)、シリコン層12に対して減厚加工処理を施し(ステップS3)、続いて減厚加工処理後のシリコン層12の厚みを光学式厚み測定手段により測定し(ステップS4)、シリコン層12に対する加工処理前後の厚み測定結果に基づいて減厚加工処理における加工量を評価する(ステップS5)。以下、上記工程の各々について説明する。
【0043】
まず、ステップS1において、評価用シリコンウェーハ1(または2)を作製する。上述のように、評価用シリコンウェーハ1は、シリコンウェーハ11上に、光学的厚み測定手段により厚み測定が可能なシリコン層12を有する。この評価用シリコンウェーハ1として、シリコンウェーハ上にシリコンエピタキシャル層を有するエピタキシャルウェーハや、シリコンウェーハ上に絶縁酸化膜とSOI層が順次設けられたSOIウェーハとすることができる。以下にエピタキシャルウェーハおよびSOIウェーハの製造方法について簡単に説明する。
【0044】
ここで、評価用シリコンウェーハ1としてエピタキシャルウェーハを用いる場合には、例えば枚様式のエピタキシャル成長炉にシリコンウェーハ11を導入し、該シリコンウェーハ11を1200℃程度に加熱し、シリコンソースガスとしてトリクロロシラン、ドーパントガスとしてジボランをキャリアガスとしての水素ガスとともにシリコンウェーハ11上に所定の時間供給する。これにより、シリコンウェーハ11上にエピタキシャル層が形成され、エピタキシャルウェーハを得ることができる。こうして得られたエピタキシャルウェーハを評価用シリコンウェーハ1とする。
【0045】
ドーパントの種類は特に限定されず、ホウ素やリン、ヒ素、アンチモン等を用いることができ、ドーパントガスとしては、これらの原子を含む、例えばジボラン(B
2H
6)やフォスフィン(PH
3)等を用いることができる。
【0046】
ここで、FTIR法または分光エリプソメータ法によるエピタキシャル層の厚み測定を可能とするために、ドーパントガスの濃度および流量を調整してエピタキシャル層のドーパント濃度をシリコンウェーハ11よりも小さく必要があり、1×10
18atoms/cm
3以上に調整することが好ましい。これにより、シリコン層12を透過する光が、シリコンウェーハ11とシリコン層12との界面S1にて確実に反射することになる。より好ましくは1×10
18atoms/cm
3以上1×10
19atoms/cm
3以下である。
【0047】
また、エピタキシャル層のドーパント濃度は、好ましくは1×10
17atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
15atoms/cm
3以上1×10
17atoms/cm
3以下である。これにより、入射光L1の一部をシリコン層12中に透過させつつ、シリコン層12の表面S2にて、入射光L1の残りを確実に反射することになる。
【0048】
更に、実際のウェーハ製造工程における減厚加工処理における加工量は0.5μm以上20μm以下程度であるため、成長させるエピタキシャル層の膜厚は、0.5μm以上20μm以下とすることが好ましい。
【0049】
更にまた、両面研磨処理における研磨量を評価する場合には、シリコンウェーハ11の表面にエピタキシャル層を形成した後、ウェーハ11を上下に反転させ、ウェーハ11の裏面上にもエピタキシャル層を形成して評価用シリコンウェーハ2を得ることができる。
【0050】
こうして、評価用シリコンウェーハとしてのエピタキシャルウェーハを作製することができる。
【0051】
一方、評価用シリコンウェーハとしてSOIウェーハを用いることもできる。このSOIウェーハを製造する方法としては、貼り合わせ法とSIMOX(Separation by IMplanted OXygen)法とが存在する。貼り合わせ法は、表面酸化されたシリコン支持基板と、デバイスを製造する活性基板を貼り合わせて1200℃程度の高温にて熱処理を施し、支持基板の酸化膜と活性基板のシリコンを結合させることによりSOIウェーハが得られる。
【0052】
一方、SIMOX法は、イオン注入機により酸素イオンをシリコンウェーハ11の所定の深さに注入した後、高温熱処理により酸化物層を形成するとともに該酸化物層上に形成されたSOI層の結晶性を回復させることによりSOIウェーハが得られる。
こうして、評価用シリコンウェーハとしてのSOIウェーハを作製することができる。
【0053】
また、上述のような意図的に作製した評価用シリコンウェーハを用いる代わりに、製品ウェーハとして製造され、規格外品となったエピタキシャルウェーハ、SOIウェーハを評価用シリコンウェーハとして用いることもできる。
【0054】
次に、ステップS2において、シリコン層12の減厚加工処理前の厚みT
iを光学的厚み測定手段により測定する。本発明においては、光学的厚み測定手段としては、FTIR法または分光エリプソメータ法を用いる。上述の原理に従うこれらの測定方法を用いることにより、評価用シリコンウェーハ1のシリコン層12の厚みを高精度に測定することができる。シリコン層12の厚み測定は、評価用シリコンウェーハ1または2の所定の位置で行うが、厚み測定をウェーハ面内の全体に亘って行うことにより、シリコン層12の厚みおよび加工量のウェーハ面内のプロファイルを得ることができる。
【0055】
続いて、ステップS3において、シリコン層12に対して減厚加工処理を施す。ここで、減厚加工処理は、実際のウェーハ製造工程おける両面研磨処理等の研磨処理、エッチング処理、洗浄等、ウェーハの厚みを減じる全ての処理を意味している。以下に研磨処理の一例として両面研磨処理およびエッチング処理を行う場合について説明する。
【0056】
図4は、両面研磨処理装置100の一例を示す図である。まず、キャリア26の小穴25に嵌め込んだ評価用シリコンウェーハ2を、上研磨布23を固定した上定盤21と、下研磨布24を固定した下定盤22とで挟み込み、上定盤21および下定盤22を互いに逆向きの方向に回転させ、中心ギア27を用いてキャリア26を矢印の方向に回転させる。こうして、評価用シリコンウェーハ2の両面を同時に研磨することができる。両面研磨を行う際には、研磨量の設定を行い、該研磨量が達成されるように、研磨圧力、研磨時間、定盤の回転速度、キャリアプレートの形状等を調整する。
【0057】
また、評価用シリコンウェーハ2は、ラッピング工程後に加工歪除去を目的に実施するエッチング量の評価や、仕上げ研磨後にパーティクル除去を目的に行う洗浄によるエッチング量の評価などに適用することができる。
【0058】
エッチング処理には、酸エッチングまたはアルカリエッチングが存在し、目的に応じて適切に選択すればよい。酸エッチングは、シリコンウェーハに対して選択エッチング性がなく、表面粗さが小さいためミクロな形状精度が向上し、かつエッチング能率の高い利点がある。この酸エッチングのエッチング液には、フッ酸(HF)と硝酸(HNO
3)の混酸を水(H
2O)或いは酢酸(CH
3COOH)で希釈した3成分素によるエッチング液が主として用いられている。
【0059】
一方、アルカリエッチングは、平坦度に優れマクロな形状精度が向上し、かつ金属汚染が少なく、酸エッチングにおけるNO
xのような有害副産物の問題や取扱い上の危険性もない利点がある。このアルカリエッチングのエッチング液には、水酸化カリウム(KOH)や水酸化ナトリウム(NaOH)の水溶液を用いる。
【0060】
これらのエッチング処理を行う際には、エッチング量の設定を行い、該エッチング量が達成されるように、エッチング液の選択、エッチング液の濃度、処理時間等を調整する。
【0061】
続いて、減厚加工処理後のシリコン層12の厚みT
fを光学的厚み測定手段により測定する。この測定は、ステップS2にて厚みを測定した同一の位置にて行い、ステップS2においてウェーハ面内の複数の位置にて測定した場合には各々の位置にて測定する。
【0062】
最後に、減厚加工処理前後のシリコン層12の厚み測定結果に基づいて、減厚加工処理における加工量を評価する。上述のステップS2およびS4において、減厚加工処理前後のシリコン層12の厚みT
iおよびT
fが測定されているため、それらの差T
f−T
iを求めることにより測定位置での加工量を評価することができる。ここで、ステップS2およびS4における厚み測定をウェーハ面内全域に亘って行っている場合には、加工量のウェーハ面内プロファイルを得ることができる。
【0063】
また、評価用シリコンウェーハ1(または2)は、実際の製品ウェーハの表層に類似のシリコン層12を有しているため、減厚加工処理に評価用シリコンウェーハ1(または2)の表面が置かれる環境が実際の製品ウェーハの場合とほぼ同じになる。これにより、各減厚加工処理種に対応する加工量評価を正確かつ簡便に行うことができ、評価用シリコンウェーハ1(または2)を用いて得られたウェーハ加工量の評価結果を実際のウェーハ製造工程の減厚加工処理工程に反映させることができる。
【0064】
更に、こうして得られた加工量の評価を、ステップS3におけるシリコン層12に対する減厚加工処理の処理条件にフィードバックすることにより、加工精度の向上を図ることができる。例えば、ステップS3において両面研磨処理を行い、設定された研磨量と、ステップS5において評価された研磨量とに差異が存在する場合には、両面研磨処理の研磨条件を調整して差異を相殺することができる。具体的には、ウェーハ面内において一律に厚みの調整を行う場合には、研磨圧力、研磨時間を調整し、ウェーハ面内の研磨量をウェーハ中心部や周縁部など部分的に調整したい場合には、定盤の回転速度の調整やキャリアプレートの形状を変更すればよい。
【0065】
このように、評価用シリコンウェーハのシリコン層に対して減厚加工処理を施し、加工前後のシリコン層の厚みを光学的厚み手段により高精度に測定することができるため、減厚加工処理前後のシリコン層の厚み測定結果に基づいて、減厚加工処理における加工量を高精度に評価することができる。
【実施例】
【0066】
(発明例1)
以下、本発明の実施例について説明する。
10バッチの片面研磨処理を行った片面研磨装置に対して、ウェーハ加工量の評価を行った。まず、評価用シリコンウェーハ1としてエピタキシャルウェーハを用い、加工処理として片面研磨処理を採用し、
図2に示したステップS1〜S5に従って、シリコンウェーハの研磨量を評価した。まず、エピタキシャルウェーハの基材ウェーハとして、直径300mm、ドーパントとしてホウ素を1.3×10
19atoms/cm
3含む、表裏面が鏡面研磨されたシリコンウェーハ11を用意した。このシリコンウェーハ11を枚葉式のエピタキシャル成長炉に導入し、ドーパントとしてホウ素を1.008×10
16atoms/cm
3含む、シリコン層12としてのシリコンエピタキシャル層をシリコンウェーハ11上に形成し、
図1(a)に示した評価用シリコンウェーハ1を作製した(ステップS1)。次いで、この評価用シリコンウェーハ1のエピタキシャル層の厚みを、FTIR法により測定した。この測定は、ウェーハ周縁部の1点から周縁部の他の1点まで、ウェーハ径方向に沿った21点にて行った(ステップS2)。続いて、評価用シリコンウェーハ1を片面研磨装置に導入し、評価用シリコンウェーハ1のエピタキシャル層に対して、仕上げ研磨としての片面研磨処理を施した(ステップS3)。即ち、ウェーハ裏面側を研磨ヘッド(上定盤)下面に貼り付け支持し、次いで研磨ヘッド及び下定盤を互いに反対方向に回転させ、下定盤に貼付したスウェード製の研磨布にウェーハ表面側を押し当て、ウェーハ中心における研磨取り代量が0.2μmとなるように研磨時間を調整して研磨した。その際、研磨布には研磨液を供給し、研磨液としては、砥粒として微粒コロイダルシリカを含むKOHを主剤とするアルカリ水溶液を用いた。その後、片面研磨処理後のエピタキシャル層の厚みをFTIR法により測定した(ステップS4)。その際、厚みの測定は、ウェーハ周縁部の1点から周縁部の他の1点まで、ウェーハ径方向に沿った21点にて行った。片面研磨処理前後のウェーハ面内におけるエピタキシャル層の厚みを
図5(a)に示す。最後に、片面研磨処理前後のエピタキシャル層の厚みの変化から、ウェーハ面内における研磨量を求めた。得られた研磨量を
図5(b)に示す。
【0067】
図5(a)から、片面研磨処理前においてはエピタキシャル層の厚みは2.95μm程度であるのに対して、片面研磨処理後には2.7μm程度に厚みが低減されていることが分かる。片面研磨処理前後のエピタキシャル層の厚みから得られる研磨量を見ると、
図5(b)に示すように、片面研磨処理における研磨量は、ウェーハの中心部に比べて周縁部にて大きいことが分かる。この結果から、当該片面研磨装置を使用して製品ウェーハを製造するために片面研磨処理を行う際は、ウェーハ周縁部の研磨量を低減するように、研磨条件(圧力、定盤回転速度など)を調整すればよいことが分かる。
【0068】
(発明例2)
10バッチの片面研磨処理を行った両面研磨装置に対して、ウェーハ加工量の評価を行った。評価用シリコンウェーハ2として、表裏面にエピタキシャル膜を形成した以外は、発明例1と同条件のエピタキシャルウェーハを用い、加工処理として両面研磨処理を採用し、発明例1と同様に、
図2に示したステップS1〜S5に従って、シリコンウェーハ研磨量の評価を行った。ここで、ステップS2およびS4におけるエピタキシャル層の厚み測定およびステップS5における研磨量の評価は、ウェーハ2の表裏面について行った。また、ステップS2において、ウェーハ周縁部の1点から周縁部の他の1点まで、ウェーハ径方向に沿った11点にて行った。更に、ステップS3における両面研磨処理は、サンギア方式の両面研磨装置を用いて、以下のように行った。即ちまず、キャリアプレート内に、評価用シリコンウェーハ2を装填し、ポリウレタン製の研磨布を貼付した上下定盤間にウェーハを挟み込んで上下定盤を互いに反対方向に回転させ、ウェーハ中心における研磨取り代量が0.2μmとなるように研磨時間を調整してウェーハ2の表裏面を同時に研磨した。ここで、研磨布には研磨液を供給し、研磨液としては、砥粒として微粒コロイダルシリカを含むKOHを主剤とするアルカリ水溶液を用いた。それ以外の処理は発明例1と全て同一である。両面研磨処理前後のエピタキシャル層の厚みを
図6(a)および(b)に示す。ここで、(a)は表面側の結果であり、(b)は裏面側の結果である。また、両面研磨処理における研磨量を
図6(c)および(d)に示す。ここで、ここで、(c)は表面側の結果であり、(d)は裏面側の結果である。
【0069】
図6(a)および(b)から、表面の研磨量は0.25〜0.30μm程度であり、設定値に近い研磨量が達成されているが、裏面の研磨量は0.04〜0.10程度と設定値よりもかなり小さく、表面と裏面とで研磨量が大きく相違していることが分かる。また、
図6(c)および(d)から、表面および裏面の双方において、ウェーハの中心部に比べて周縁部の研磨量が大きいことが分かる。この結果から、ウェーハの表面および裏面の研磨量を等しくするように、表面の研磨量を低減するか、あるいは裏面の研磨量を増加させればよく、具体的には研磨圧力および研磨時間などを調整することが有効となる。また、表裏両面について、周縁部の研磨量が大きいため、定盤の回転速度とキャリアプレートの調整が有効である。
このように、シリコンウェーハの表裏面にエピタキシャル層を有する評価用シリコンウェーハを用いることにより、両面研磨処理における研磨量を表面および裏面のそれぞれについて個別に評価できることが分かる。