【文献】
TAKAHASHI, Yukari et al.,Dalton Transactions,2011年 5月28日,40(20),pp.5563-5568
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、導電性フィルムの導電層を形成する有機系材料として、導電性ポリマーとカーボンナノチューブが知られている。これらの材料は室温、大気圧下で基材上に導電層を塗膜として形成することができるため、簡易なプロセスで導電層を形成することができる。また、屈曲性に富むため、柔軟なフィルム上に導電層を形成する場合であっても、フィルムの屈曲性に追従することができる。さらに、基材としてポリマーフィルムを用いた場合には導電層を連続形成できることから、プロセスコストの低減が可能である。これらの導電層は、膜厚を薄くすることによって透明性を向上させることができ、特にカーボンナノチューブは黒色のためニュートラルな色調を得ることができる。
【0003】
導電層を形成する導電性ポリマーとして、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することが、加工し易さと曲げ特性のポリマーの長所を有する透明電極の開発のために検討されてきた。このような導電性高分子を用いた透明電極フィルムは、ドーピングにより高い導電性を得ることができ、被覆膜の密着性及び曲げ特性に優れている。しかし、導電性高分子を用いたフィルムの電気伝導度(electrical
conductivity)は、透明電極に適用し得る程度には十分ではなく、また導電性高分子を用いた透明フィルムは透明性が低い。
【0004】
一方で、導電性ポリマーに代替し得る素材としてカーボンナノチューブが開発されている。カーボンナノチューブは、多様な分野で用いられているが、特に、優れた電気伝導性を示す電極材料への応用について、研究が活発になされている。カーボンナノチューブは炭素を原料とし、螺旋形状にしたグラフェンシートを回転させて形成されたチューブ形状をしている。従来技術としては、現在、炭素を原料とした材料には、ダイヤモンド、グラファイト、フラーレンがある。これらのカーボンベースの材料に比較して、カーボンナノチューブは密度が低く、高い強度、安定性、電気特性を示し、それゆえに、多くの分野で相当の注目を集めている。特に、カーボンナノチューブの電気的特性を有する電界放出素子、発光素子、ディスプレイ素材などのみならず、汎用素材として用いるために複合材料としても開発が進められている。しかし、カーボンナノチューブは、導電性はまだ実用手に十分な性能に達していないためカーボンナノチューブの導電性を向上する手段が各種検討されている(特許文献1,2)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本願発明の導電性フィルムについて説明する。
図1に示すように本願発明の導電性フィルム1は、透明基板上2に透明導電層3を形成したものである。
【0014】
(1)透明基板
本願発明に用いる透明基板はガラス及びプラスチック基板が好ましい。プラスチック基板材料としては、無着色で透明性が高く、耐熱性が高く、耐薬品性及びガス遮断性に優れ、かつ低コストの材料が好適である。好適な材料としては、例えば、ポリエステル類(例、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など)、スチレン類(例、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)など)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルホン(PSF)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、透明ポリイミド(PI)、シクロオレフィンコポリマー(商品名アートンなど)及び脂環式ポリオレフィン(商品名ゼオノアなど)などが用いられる。なかでも、化学的安定性とコストの点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、脂環式ポリオレフィンが特に好ましい。なお、これらのプラスチック基板の構造やその組成においては特に限定されず、本願発明の固体接合型光電変換素子を構成するに値するものであれば、利用することができる。また、ガラス基板材料としては、可視光線透過率80%を超えるものであればく、例えば、白板ガラス、ソーダガラス、硼珪酸ガラス等からなる無機質製基板がある。
【0015】
プラスチック基板の耐熱性は、ガラス転移温度(Tg)が100℃以上、及び、線熱膨張係数が40ppm/℃以下の少なくともいずれかの物性を満たすことが好ましい。なお、プラスチック基板のTg及び線膨張係数は、JIS K 7121に記載のプラスチックの転移温度測定方法、及び、JIS K 7197に記載のプラスチックの熱機械分析による線膨張率試験方法により測定する。プラスチックフィルムのTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。このような耐熱性に優れる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン(株)製 ゼオノア1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報の化合物:162℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報の化合物:300℃以上)、ポリイミド等が挙げられ(括弧内はTgを示す)、これらは本願発明における基材として好適である。なかでも、特に透明性が求められる用途には、脂環式ポレオレフィンを使用することが好ましい。
【0016】
(2)有機無機混成ペロブスカイト化合物
有機無機混成ペロブスカイト化合物とは、単一の分子スケール・コンポジット内に有機・無機両成分に特徴的な望ましい物理特性を組み合わせた(有機無機混成の)ペロブスカイト化合物をいう。ペロブスカイトの基本的構造形態は、ABX
3構造であり、頂点共有BX
6八面体の三次元ネットワークを有する。ABX
3構造のB成分は、Xアニオンの八面体配位をとることができる金属カチオンである。Aカチオンは、BX
6八面体間の12の配位孔に位置し、一般に無機カチオンである。Aを無機カチオンから有機カチオンに置換することにより、有機無機混成ペロブスカイト化合物を形成する。
【0017】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Aは、下記一般式(1)または(2)のいずれかに示す化合物であり、特に、一般式(1)の化合物が好ましい。
CH
3NH
3M
1X
3 (1)
(式中、M
1は、2価の金属イオンであり、Xは、F,Cl,Br,Iである。)
(R
1NH
3)
2M
1X
4 (2)
(式中、R
1は炭素数2以上のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基または芳香族複素環基であり、M
1は、2価の金属イオンであり、Xは、F,Cl,Br,Iである。)
【0018】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物における無機枠組みは、頂点を共有する金属ハロゲン化物八面体の層を有する。陽イオン性有機層からの正の電荷と平衡をとるため、陰イオン性金属ハロゲン化物層(例えば、M
1X
32-,M
1X
42-)は一般に2価の金属である。本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Aの陰イオン性金属ハロゲン化物層を構成する金属は、具体的には、M
1(例、Cu
2+,Ni
2+,Mn
2+,Fe
2+、Co
2+、Pd
2+、Ge
2+、Sn
2+、Pb
2+、Eu
2+)である。
【0019】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物の陰イオン性金属ハロゲン化物層を構成するハロゲン化物は、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、またはこれらの組合せである。このハロゲン化物は、臭化物、ヨウ化物が好ましい。
【0020】
本願発明の上記一般式(2)のR
1としては、炭素数2〜40の置換または未置換のアルキル基、直鎖、分岐または環状のアルキル鎖(好ましくは炭素数2〜30であり、より好ましくは炭素数2〜20であり、炭素数2〜18がもっとも好ましい)。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、イコサニル基、ドコサニル基、トリアコンタニル基、テトラアコンタニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0021】
炭素数2〜40の置換または未置換のアラルキル基としては、アリール基で置換されている低級アルキル基を意味し、アルキル部が直鎖状または分岐鎖状で、好ましい炭素数が1〜5、より好ましくは1であり、アリール部が好ましい炭素数が6〜10、より好ましくは6〜8である。具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0022】
アルケニル基は、好ましくは炭素数3〜30であり、より好ましくは炭素数3〜20であり、炭素数3〜12が最も好ましい。例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、オレイル基、アリル基等が挙げられる。アルキニル基としては、アセチレニル、プロパルギル基、3−ペンチニル基、2−ヘキシルニル、2−デカニルを挙げることが出来る。
【0023】
アリール基としては、好ましくは炭素数6〜30の単環または二環のアリール基(例えばフェニル、ナフチル等が挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20のフェニル基または炭素数10〜24のナフチル基であり、更に好ましくは炭素数6〜12のフェニル基または炭素数10〜16のナフチル基である。例えばフェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。一般式(1)において、複素環基としては、例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0024】
芳香族複素環基としては、例えばフリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等が挙げられる。これらの基は更に置換基を有していてもよい。
【0025】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物Aの具体例としては、CH
3NH
3SnI
3、CH
3NH
3SnBr
3、(CH
3(CH
2)
nCHCH
3NH
3)
2SnI
4[n=5〜8]、(C
6H
5C
2H
4NH
3)
2SnBr
4、CH
3NH
3PbBr
3がある。
【0026】
本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物は、前駆体溶液を用いた自己組織化反応により合成することができる。本願発明の有機無機混成ペロブスカイト化合物の被膜あるいは吸着体は、ペロブスカイト化合物を有機溶剤に溶解した後、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等の塗布方法によって支持体上に形成されたカーボンナノチューブ層の表面に被覆あるいは吸着させることにより形成できる。 又、ペロブスカイト化合物を溶解した有機溶剤にカーボンナノチューブを分散した後、グラビア塗布法、バー塗布法、印刷法、スプレー法、スピンコーティング法、ディップ法、ダイコート法等の塗布方法により支持体上に塗布することにより形成できる。
【0027】
(3)有機無機混成ペロブスカイトの溶液
本願発明に用いる有機無機混成ペロブスカイトの溶液を調製するための溶剤としては、有機無機混成ペロブスカイトを溶解できるものであれば特に限定するものではない。エステル類(例、メチルホルメート、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等)、ケトン類(例、γ-ブチロラクトン、Nメチル-2-ピロリドン、アセトン、ジメチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等)、エーテル類(例、ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等)、アルコール類(例、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、メトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール等)、グリコールエーテル(セロソルブ)類(例、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル等)、アミド系溶剤(例、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、ニトリル系溶剤(例、アセトニトリル、イソブチロニトリル、プロピオニトリル、メトキシアセトニトリル等)、カーボート系剤(例、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、ハロゲン化炭化水素(例、塩化メチレン、ジクロロメタン、クロロホルム等)、炭化水素(例、n−ペンタン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ジメチルスルホキシドがある。これらは分岐構造若しくは環状構造を有していてもよい。エステル類、ケトン類、エーテル類およびアルコール類の官能基(即ち、−O−、−CO−、−COO−、−OH)のいずれかを二つ以上有していてもよい。エステル類、ケトン類、エーテル類およびアルコール類の炭化水素部分における水素原子は、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)で置換されていてもよい。
【0028】
(4)カーボンナノチューブ
本願発明のカーボンナノチューブは、金属性カーボンナノチューブを50%以上含むカーボンナノチューブが好ましい。以下、本願発明に用いられるカーボンナノチューブについて説明する。カーボンナノチューブは、マルチウォールカーボンナノチューブ(多層カーボンナノチューブ;MWCT)、シングルウォールカーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ;SWCT)のいずれであってもよい。各々単独に用いても、混合してもよい。また、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンナノビーズを用いても良い。
カーボンナノチューブは、その伝導度によって金属性カーボンナノチューブと半導体性カーボンナノチューブに分類されるが用途に応じて、半導体性と金属性の混合比率を調整することが好ましい。導電性用途としてカーボンナノチューブ層を用いる場合には、金属性カーボンナノチューブの比率が高いほうが好ましく、半導体用途としてカーボンナノチューブ層を用いる場合には、半導体性カーボンナノチューブの比率が高いほうが好ましい。本願発明では光電変換素子の光電変換率を向上させるため、金属性
カーボンナノチューブ の割合が多い方が好ましい。本願発明のカーボンナノチューブは、さらに金属などが内包されていてもよい。また、フラーレンが内包されたピーポッドナノチューブを用いても良い。カーボンナノチューブは、任意の方法、例えばアーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法、スーパーグロス法などによって合成することができる。
【0029】
本願発明に用いられるカーボンナノチューブは、表面を官能基で修飾されていてもよい。 官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基が好ましい。これらの官能基は、上記易接着層との化学反応により、カーボンナノチューブ層と易接着層との密着性をより高めることに効果がある。これらの官能基は、任意の方法を利用して導入することが可能であり(例えば、特開2005−41835号公報を参照。)、官能基の導入量としては、用途に応じて適宜調整することが好ましい。
【0030】
本願発明に用いられるカーボンナノチューブは、高い機械強度を与えてカーボンナノチューブ層含有構造体の特性を高める観点から、架橋されていることも好ましい。カーボンナノチューブの架橋については、カーボンナノチューブ表面に導入したヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基を利用して架橋剤と反応させる方法が好ましい。架橋反応としては、エステル化、エーテル化、アミド化反応が好適に用いられる(例えば、特開2005−41835号公報を参照。)。架橋密度は、用途に応じて調整することが好ましい。本願発明に用いられるカーボンナノチューブの直径としては、0.3nm以上100nm以下であることが好ましい。より好ましくは、1nm以上30nm以下である。本願発明に用いられるカーボンナノチューブの長さとしては、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0031】
本願発明のカーボンナノチューブ層含有構造体の製造方法は、透明支持体上にカーボンナノチューブ層を塗布することで作製することができる。この際に用いる、カーボンナノチューブを含有する塗布液については、用途に応じて、適宜、粘度、表面張力などの物性を調整することが好ましい。カーボンナノチューブを含有する塗布液の塗布に関しては、原崎勇次著、「コーティング方式」、慎書店1979年10月発行に示されているリバースコータ、グラビアコータ、ロッドコータ、エアドクタコータ、スピンコート、スプレー塗布などをはじめ、任意の塗布装置を用いることができる。カーボンナノチューブ層の厚さは、特に限定されないが、0.001〜10μmが好ましい。
【0032】
本願発明のカーボンナノチューブ塗布液には、界面活性剤、高分子バインダー、溶媒を含んでいる。カーボンナノチューブ表面積が大いため、カーボンナノチューブは凝集し、表面積の現象によってエネルギー的に安定化しようとする傾向がある。即ち、カーボンナノチューブは束(rope)の形態で凝集し、表面エネルギーが低下するように、表面積を減少させて安定化しようとする傾向を示す。カーボンナノチューブの凝集は、カーボンナノチューブが安定であれば解消する。したがって、カーボンナノチューブ等の凝集する傾向を示すナノサイズの物質は、均一に分散させることが重要である。カーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ分散液は、超音波分散法等により分散させる。
【0033】
(5)界面活性剤
カーボンナノチューブは、界面活性剤等の分散剤、分散媒を含有させて用いられる。本発明でいう分散剤は、分散媒中におけるカーボンナノチューブの分散性を向上させる機能を有する剤をいう。分散剤を用いることで分散媒中で安定に分散した分散域が得られる。通常、バインダー材料として分類されるような高分子などもカーボンナノチューブの分散能があれば分散剤として含む。
【0034】
上記分散剤として用いることができる界面活性剤としては、イオン性界面活性剤のものと非イオン性界面活性剤のものに分けられるが、本発明ではいずれの界面活性剤を用いることも可能である。イオン性界面活性剤としては、例えば以下のような界面活性剤があげられる。かかる界面活性剤は単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
イオン性界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤および陰イオン性界面活性剤にわけられる。陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などがあげられる。両イオン性界面活性剤としては、アルキルベタイン系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤がある。陰イオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン酸塩等の芳香族スルホン酸系界面活性剤、モノソープ系アニオン性界面活性剤、エーテルサルフェート系界面活性剤、フォスフェート系界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤であり、中でも、分散能、分散安定能、高濃度化に優れることから、芳香環を含むもの、すなわち芳香族系イオン性界面活性剤が好ましく、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩、ドデシルフェニルエーテルスルホン塩等の芳香族スルホン酸系界面活性剤等の芳香族系イオン性界面活性剤が好ましい。
【0036】
非イオン性界面活性剤としては、例えば以下のような界面活性剤をあげられる。かかる界面活性剤は単独でもしくは2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
非イオン性界面活性剤の例としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの糖エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレン樹脂酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエチルなどの脂肪酸エステル系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリプロピレングリコールなどのエーテル系界面活性剤、ポリオキシアルキレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルジブチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキルビスフェニルエーテル、ポリオキシアルキルクミルフェニルエーテル等の芳香族系非イオン性界面活性剤があげられる。中でも、分散能、分散安定能、高濃度化に優れることから、芳香族系非イオン性界面活性剤が好ましく、中でもポリオキシエチレンフェニルエーテルが好ましい。
【0038】
界面活性剤以外にも各種高分子材料も分散剤として用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩等の水溶性ポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(Na−CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アミロース、シクロアミロース、キトサン等の糖類ポリマー、
ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマーおよびそれらの誘導体が使用できる。
【0039】
(6)高分子バインダー
バインダーとしては、従来より、導電性塗料に使用されている各種の有機および無機バインダー、すなわち透明な有機または無機ポリマーまたはその前駆体が使用できる。
【0040】
有機バインダーは熱可塑性、熱硬化性、あるいは紫外線、電子線などの放射線硬化性のいずれであってもよい。適当な有機バインダーの例としては、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリアミド系(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン66、ナイロン6、10等)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、シリコーン系ポリマー、ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等)、ポリケトン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアセタール、フッ素樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラニン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、セルロース系ポリマー、蛋白質類(ゼラチン、カゼイン等)、キチン、ポリペプチド、多糖類、ポリヌクレオチドなど有機ポリマー、ならびこれらのポリマーの前駆体(モノマー、オリゴマー)がある。これらは単に溶剤の蒸発により、あるいは熱硬化または光もしくは放射線照射による硬化により有機ポリマー系透明被膜(マトリックス)を形成することができる。
【0041】
有機ポリマー系バインダーとして好ましいのは、放射線もしくは光によりラジカル重合硬化可能な不飽和結合を有する化合物であり、これはビニル基ないしビニリデン基を有するモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーである。この種のモノマーとしてはスチレン誘導体(スチレン、メチルスチレン等)、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそれらの誘導体(アルキルアクリートもしくはメタクリレート、アリルアクリレートもしくはメタクリレート等)、酢酸ビニル、アクリロニトリル、イタコン酸等がある。オリゴマーあるいはポリマーは、主鎖に二重結合を有する化合物または直鎖の両末端にアクリロイルもしくはメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。この種のラジカル重合硬化性バインダーは、高硬度で耐擦過性に優れ、透明度の高い導電フィルム膜を形成することができる。
【0042】
無機ポリマー系バインダーの例としては、シリカ、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物のゾル、あるいは無機ポリマーの前駆体となる加水分解または熱分解性の有機リン化合物および有機ボロン化合物、ならびに有機シラン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機鉛化合物、有機アルカリ土類金属化合物などの有機金属化合物がある。加水分解性または熱分解性の有機金属化合物の具体的例は、アルコキシドまたはその部分加水分解物、酢酸塩などの低級カルボン酸塩、アセチルアセトンなどの金属錯体である。
【0043】
これらの1種もしくは2種以上の無機ポリマー系バインダーを焼成すると、酸化物または複合酸化物からなるガラス質の無機ポリマー系透明被膜(マトリックス)を形成することができる。無機ポリマー系マトリックスは、一般にガラス質であり、高硬度で耐擦過性に優れ、透明性も高い。
【0044】
なお、本願発明では、カーボンナノチューブ以外の炭素材料、例えば、フラーレン、グラファイト等をカーボンナノチューブの代わりに使用することもできる。
【実施例】
【0045】
次に本願発明の効果を奏する実施態様を実施例として示す。
【0046】
[1] 実施例1
(1)有機無機混成ペロブスカイト化合物A〔CH
3NH
3SnI
3〕の合成
三口フラスコ内に、メチルアミン〔CH
3NH
2〕1gとメタノール〔CH
3OH〕100mlを入れ、窒素バブリングを行いながら沃化水素酸〔HI〕を加えてpHを3〜4程度に調整した後、マグネッチックスターラーにより1時間撹拌した。この溶液をエバポレーターで蒸留した後、40℃で乾燥し、再精製することにより沃化メチルアミン〔CH
3NH
3I〕を合成した。次に合成した沃化メチルアミン〔CH
3NH
3I〕と沃化錫〔SnI
2〕をモル比1:1の割合で、ジメチルホルムアルデヒド〔(CH
3)
2NCHO〕に5重量%濃度となるように混合して溶解し、有機無機混成ペロブスカイト化合物〔CH
3NH
3SnI
3〕のジメチルホルムアルデヒド〔(CH
3)
2NCHO〕溶液を調製した。
【0047】
(2)カーボンナノチューブ分散液1の調製
Aldrich製のカーボンナノチューブCG200(製品願号724777)を0.2重量%、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.05重量%になるようにエタノールを20%含む水溶液に添加し、マイクロテック・ニチオン株式会社製の超音波ホモジナイザーNR−300Mを用い低温保存下20kHzで1時間分散し、カーボンナノチューブの均一分散液1を調整した。
【0048】
(3)カーボンナノチューブ分散液2の調製
上記で調整した5重量%濃度の有機無機混成ペロブスカイト化合物A〔CH
3NH
3SnI
3〕のジメチルホルムアルデヒド〔(CH
3)
2NCHO〕溶液中に、Aldrich製のカーボンナノチューブCG200(製品願号724777)を0.2重量%添加し、マイクロテック・ニチオン株式会社製の超音波ホモジナイザーNR−300Mを用い低温保存下20kHzで1時間分散してカーボンナノチューブの均一分散液2を調整した。
【0049】
(4)導電層の作製
透明基板(ポリエチレンナフタレートフィルム,厚み200μm)上に、前記で調整したカーボンナノチューブ分散液1を約20ml/m
2でワイヤーバーにより塗布し、80℃で30分間乾燥させ、カーボンナノチューブからなる導電層1を作製した。次に、カーボンナノチューブ層を形成した導電性基板上に、有機無機混成ペロブスカイト化合物〔CH
3NH
3SnI
3〕のジメチルホルムアルデヒド〔(CH
3)
2NCHO〕溶液を0.2μmフィルター付きのシリンジで所定量滴下し、60度の熱風循環式オーブン中で10分間加熱乾燥して、ペロブスカイト化合物を吸着させたカーボンナノチューブ導電層2を作製した
【0050】
(5)導電性の測定
上記カーボンナノチューブ導電層1、2のシート抵抗を、四端子法を用いて評価した。シート抵抗測定用四端子ケーブル(SR4-A、アステラテック株式会社製)をソースメータ(2400型ソースメータ、Keithley社製)に接続し、四端子抵抗測定モードにて測定した結果、カーボンナノチューブ導電層1で3000Ω/□、ペロブスカイト化合物を吸着させたカーボンナノチューブ導電層2で800Ω/□を示し、ペロブスカイト化合物をカーボンナノチューブ吸着させることにより、導電層が大幅に向上することがわかる。
【0051】
[2]
参考例
1
透明基板(ポリエチレンナフタレートフィルム,厚み200μm)上に、前記で調整したカーボンナノチューブ分散液2を約20ml/m2でワイヤーバーにより塗布し、80℃で30分間乾燥させ、ペロブスカイト化合物を吸着させたカーボンナノチューブからなる導電層を作製した。実施例1と同様に導電性を測定した結果、500Ω/□を示した。最初にペロブスカイト化合物をカーボンナノチューブに吸着させた後、塗膜を形成
した場合でも、実施例1と同等の導電性が得られることがわかる。