【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の発泡積層体が、優れた断熱性と発泡外観を示すと共に、経済性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、少なくとも(A)層/紙基材/(B)層を含み、(A)層が発泡層である発泡積層体であって、(A)層が、JIS K6922−1(1997年)により測定された密度が910kg/m
3以上930kg/m
3以下である高圧法低密度ポリエチレン(a)、(B)層がJIS K6922−1(1997年)により測定された密度が935kg/m
3以上970kg/m
3以下であるポリエチレン系樹脂(b)から構成され、下記(i)〜(iii)を満たすことを特徴とする発泡積層体に関するものである。
【0010】
(i)紙基材の坪量(g/m
2)に対する発泡後の(A)層の厚み(μm)の比が2.8以上5.0以下である。
【0011】
(ii)紙基材の坪量(g/m
2)が160以上400以下である。
【0012】
(iii)高圧法低密度ポリエチレン(a)及びポリエチレン系樹脂(b)を積層した後の紙基材の水分量が22g/m
2以上40g/m
2以下である。
【0013】
さらに、高圧法低密度ポリエチレン(a)及びポリエチレン系樹脂(b)を積層した後の紙基材の水分量が25g/m
2以上30/m
2以下であることを特徴とする発泡積層体に関するものである。
【0014】
また、(A)層の発泡前の厚み(μm)が80以上150以下であることを特徴とする発泡積層体に関するものである。
【0015】
また、ポリエチレン系樹脂(b)が、JIS K 6922−1(1997年)により測定された密度が945kg/m
3以上970kg/m
3以下であることを特徴とする発泡積層体に関するものである。
【0016】
また、ポリエチレン系樹脂(b)が、JIS K 6922−1(1997年)により測定された密度が950kg/m
3以上965kg/m
3以下であることを特徴とする発泡積層体に関するものである。
【0017】
また、ポリエチレン系樹脂(b)が、高密度ポリエチレン(c)10〜90重量%、及び高圧法低密度ポリエチレン(d)10〜90重量%から成るエチレン系樹脂組成物(e)であることを特徴とする発泡積層体に関するものである。
【0018】
また、本発明の発泡積層体からなる容器に関するものである。
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明の積層体を構成する高圧法低密度ポリエチレン(a)は、従来公知の高圧法ラジカル重合法により得ることができる。
【0021】
高圧法低密度ポリエチレン(a)のJIS K6922−1(1997年)により測定した密度(以下、単に密度と略す。)は、断熱性及び発泡外観に優れるため、910〜930kg/m
3の範囲であり、より好ましくは914〜926kg/m
3、さらに好ましくは916〜924kg/m
3の範囲である。高圧法低密度ポリエチレン(a)の密度が910kg/m
3未満では、発泡外観に劣るため好ましくなく、930kg/m
3を超える範囲では、断熱性に劣るため好ましくない。
【0022】
また、高圧法低密度ポリエチレン(a)のJIS K6922−1(1997年)により測定したメルトマスフローレート(以下、単にMFRと略す。)は、10〜30g/10分の範囲であると、断熱性及び発泡外観に優れるため好ましく、より好ましくは12〜30g/10分、更に好ましくは13〜24g/10分、最も好ましくは13〜18g/10分の範囲である。
【0023】
本発明を構成する高圧法低密度ポリエチレン(a)には、エチレン・α−オレフィン共重合体などの他のポリオレフィンを配合してもよい。
【0024】
本発明の積層体を構成する高圧法低密度ポリエチレン(a)にポリオレフィンを混合する時は、高圧法低密度ポリエチレン(a)のペレットとポリオレフィンのペレットを固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練した混合物の方が、品質の安定した製品が得られるので好ましい。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はポリオレフィン系樹脂の融点〜300℃程度が好ましい。
【0025】
また、本発明の積層体を構成する高圧法低密度ポリエチレン(a)には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
【0026】
本発明の積層体を構成するポリエチレン系樹脂(b)の密度は、断熱性、発泡の安定性に優れることから、935〜970kg/m
3の範囲であり、より好ましくは945〜970kg/m
3、最も好ましくは950〜965kg/m
3である。ポリエチレン系樹脂(b)の密度が935kg/m
3未満では、断熱性に劣るため好ましくなく、970kg/m
3を超える範囲では、発泡外観に劣るため好ましくない。
【0027】
本発明の積層体を構成するポリエチレン系樹脂(b)としては、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、又はこれらの組成物を用いることができ、その分子鎖の形態は直鎖状でもよく、炭素数6以上の長鎖分岐を有していてもよい。このようなポリエチレン系樹脂(b)は、特に限定されるものではなく、前記密度範囲を外れなければよい。
【0028】
エチレン単独重合体としては、低圧法エチレン単独重合体、高圧法低密度ポリエチレンが例示することができる。低圧法エチレン単独重合体は、従来公知の低圧イオン重合法により得ることができる。また、高圧法低密度ポリエチレンは、従来公知の高圧ラジカル重合法により得ることができる。
【0029】
エチレン・α−オレフィン共重合体に用いるα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上が用いられる。
【0030】
エチレン・α−オレフィン共重合体を得るための方法は特に限定するものではなく、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができる。このような共重合体は、市販品の中から便宜選択することができる。
【0031】
これらの中で、ラミネート成形性に優れることから、高密度ポリエチレン(c)10〜90重量%と高圧法低密度ポリエチレン(d)90〜10重量%から成るエチレン系樹脂組成物(e)であることが好ましい。
【0032】
また、高密度ポリエチレン(c)において、エチレン系樹脂組成物(e)のラミネート加工性に優れることから、MFRは6〜100g/10分の範囲が好ましく、より好ましくは8〜60g/10分の範囲である。
【0033】
さらに、高密度ポリエチレン(c)において、エチレン系樹脂組成物(e)のラミネート加工性、生産性に優れるため、密度は935〜980kg/m
3の範囲が好ましく、より好ましくは945〜975kg/m
3の範囲である。
【0034】
高圧法低密度ポリエチレン(d)において、エチレン系樹脂組成物(e)の押出ラミネート加工性に優れるため、MFRは0.1〜20g/10分の範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜10g/10分、最も好ましくは1〜4g/10分の範囲である。
【0035】
また、高圧法低密度ポリエチレン(d)において、エチレン系樹脂組成物(e)の製膜安定性に優れることから、密度は910〜935kg/m
3の範囲が好ましい。
【0036】
エチレン系樹脂組成物(e)のMFRは、ラミネート成形性に優れるため、1〜50g/10分の範囲が好ましく、さらに好ましくは3〜20g/10分の範囲である。
【0037】
また、本発明を構成するポリエチレン系樹脂(b)には、ポリプロピレンなどの他のポリオレフィンを配合してもよく、これらのポリオレフィンの配合比は1〜30重量%がラミネート成形性と積層体外観の点から好ましい。
【0038】
本発明の積層体を構成するポリエチレン系樹脂(b)にポリオレフィンを混合する時は、ポリエチレン系樹脂(b)のペレットとポリオレフィンのペレットを固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練した混合物の方が、品質の安定した製品が得られるので好ましい。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はポリエチレン系樹脂の融点〜300℃程度が好ましい。
【0039】
さらに、本発明を構成するポリエチレン系樹脂(b)には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
【0040】
本発明の積層体を構成する(A)層の発泡前の厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に制限はないが、発泡外観に優れることから、80〜150μmの範囲が好ましく、より好ましくは、80〜120μm、更に好ましくは、80〜100μmである。
【0041】
(B)層の厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に制限はないが、発泡性に優れ、破損などの問題が小さいことから、30μm〜5mmの厚みであることが好ましく、経済性の観点から、30〜150μmの範囲が最も好適である。
【0042】
本発明の積層体を構成する紙基材は、断熱性・経済性に優れることから、紙基材の坪量は160〜400g/m
2である。紙の坪量が160g/m
2未満では、断熱性に劣るため好ましくなく、400g/m
2を超える範囲では、経済性に劣るため好ましくない。発泡厚みに優れることから、好ましくは、250〜350g/m
2である。
【0043】
本発明の積層体を構成する紙基材に含まれる水分は、加熱により(A)層を発泡させるものであり、本発明の目的が達成される限りにおいて特に制限はないが、その水分量は20〜35g/m
2が(A)層の発泡外観に優れるため好ましく、さらに好ましくは24〜30g/m
2である。
【0044】
また、断熱性に優れることから、高圧法低密度ポリエチレン(a)及びポリエチレン系樹脂(b)を積層した後の紙基材の水分量は22〜40g/m
2であり、発泡厚み及び発泡外観に優れることから、25〜30g/m
2が好ましい。高圧法低密度ポリエチレン(a)及びポリエチレン系樹脂(b)を積層した後の紙基材の水分量が22g/m
2未満では、断熱性に劣るため好ましくなく、40g/m
2を超える範囲では、発泡外観に劣るため好ましくない。
【0045】
本発明の積層体を得る手法として、高圧法低密度ポリエチレン(a)及びポリエチレン系樹脂(b)を押出ラミネート加工し、加熱発泡することにより得る手法、(A)層となる発泡体を紙へ接着させ、ポリエチレン系樹脂(b)を押出ラミネート加工により得る手法が例示できる。加工が容易なことから、高圧法低密度ポリエチレン(a)とポリエチレン系樹脂(b)をタンデムラミネート加工し、加熱発泡することにより得る手法が好ましい。
【0046】
押出ラミネート成形法により積層体を得る手法として、シングルラミネート加工法、タンデムラミネート加工法、サンドウィッチラミネート加工法、共押出ラミネート加工法などの各種押出ラミネート加工法を例示することができる。押出ラミネート法における樹脂の温度は260〜350℃の範囲が好ましく、冷却ロールの表面温度は10〜50℃の範囲が好ましい。
【0047】
また、押出ラミネート加工において、ポリエチレン系樹脂を溶融状態で押出し層とした直後に、該層の基材接着面を含酸素気体又は含オゾン気体に曝し、基材と貼り合わせる手法を用いると、基材層との接着性に優れることから好ましい。含オゾン気体により熱可塑製樹脂と基材との接着性を向上させる場合は、オゾンガスの処理量としては、ダイより押出された熱可塑製樹脂よりなるフィルム1m
2当たり0.5mg以上のオゾンを吹き付けることが好ましい。
【0048】
加熱発泡により本発明の積層体を得る手法における押出ラミネート加工法は、熱可塑製樹脂層と基材層との接着性をさらに向上させるため、ポリエチレン系樹脂が発泡しない程度の温度、例えば3〜60℃の温度で10時間以上熱処理することができる。また必要に応じて、紙基材の接着面に対してコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などの公知の表面処理を施してもよい。また、必要であれば紙基材にアンカーコート剤を塗布しても良い。
【0049】
本発明の発泡積層体を得る手法として、発泡積層体の断熱性及び経済性に優れるため、ポリエチレン系樹脂と基材層を積層する前に、紙基材の片面、若しくは両面に水を塗布することが好ましい。
【0050】
水分を塗布する手法は、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、ロールコート装置、リップコート装置、スプレー装置、ダイコート装置、グラビア装置、ダンプニング装置などを用いた手法が例示することができる。水の塗布量が均一になるため、ダンプニング装置を用いた手法が好ましい。
【0051】
このようなダンプニング装置は、例えば、鈴木産業(株)より商品名「ハイローターS」が、ニッカ(株)より商品名「WEKOローターダンプニング」が、東機エレクトロニクス(株)より商品名「TSD−3000」が販売されている。特に、水の塗布ムラがなく品質が安定することから、「ハイローターS」を用いることが好ましい。
【0052】
本発明における水の塗布量は、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はないが、高圧法低密度ポリエチレン(a)の発泡倍率が高くでき、かつ、紙基材と高圧法低密度ポリエチレン(a)及び/またはポリエチレン系樹脂(b)との接着強度が低下しないことから、1.5〜30g/m
2が好ましく、15〜25g/m
2以下がより好ましい。
【0053】
加熱発泡により本発明の積層体を得る手法における加熱方法としては、熱風、電熱、電子線の他、積層体を容器状に成形し、高温の物体を内填して充填物の熱を利用するなど、任意の手段を使用できる。加熱は、オーブン内で回分式に行う手法、コンベアなどにより連続的に行う手法などにより行うことができる。
【0054】
加熱温度、加熱時間は、使用する基材、および熱可塑性樹脂の種類に依存して変化するが、一般的に加熱温度は110〜200℃であり、加熱時間は10秒〜5分間である。
【0055】
本発明の積層体を構成する(A)層の発泡後の厚みは、断熱性に優れるため、900μm以上が好ましく、より好ましくは1000μm以上、最も好ましくは1100μm以上である。
【0056】
紙の坪量(g/m
2)に対する(A)層の発泡後の厚み(μm)の比は、発泡外観及び経済性に優れることから、2.8〜5.0の範囲であり、より好ましくは3.0〜4.5、さらに好ましくは3.0〜4.0である。紙の坪量に対する(A)層の発泡後の厚みの比が2.8未満では、経済性に劣るため好ましくなく、5.0を超える範囲では、発泡外観に劣るため好ましくない。
【0057】
本発明の積層体は、少なくとも(A)層/紙基材/(B)層が積層されてなることを特徴とするものであり、(A)層、紙基材、(B)層はこの順に隣接して存在している。(A)層と紙基材と(B)層の3成分のみからなるものだけでなく他の成分、例えば(C)層を含んでいてもよい。具体的には、(A)層/紙基材/(B)層、(A)層/紙基材/(B)層/(A)層、(B)層/紙基材/(A)層/(B)層、(A)層/紙基材/(B)層/(B)層、(A)層/(A)層/紙基材/(B)層、(A)層/紙基材/(B)層/(C)層、(B)層/紙基材/(A)層/(C)層、(C)層/(B)層/紙基材/(A)層/(B)層/(C)層、(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(B)層/(A)層、(B)層/紙基材/(A)層/(C)層/(A)層/(B)層などが例示される。
【0058】
(C)層としては、合成高分子重合体から形成される層や織布、不織布、金属箔、紙類、セロファン等が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロース系樹脂など合成高分子重合体から形成される層等が挙げられる。更に、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにアルミ蒸着、アルミナ蒸着、二酸化珪素蒸着、アクリル処理されたものでもよい。また、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにウレタン系インキ等を用い印刷されたものでもよい。金属箔としては、アルミ箔、銅箔などが例示でき、また、紙類としてはクラフト紙、上質紙、伸張紙、グラシン紙、カップ原紙や印画紙原紙等の板紙などが挙げられる。