(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ジラウロイルパーオキサイドの含有量は、前記回路接続材料に含まれるラジカル重合性物質の総量100質量部に対して10〜40質量部である、請求項1に記載の回路接続材料。
前記第一のラジカル重合性物質の含有量は、前記ジラウロイルパーオキサイドの含有量100質量部に対して30〜100質量部である、請求項1又は2に記載の回路接続材料。
第一の基板及び該基板の主面上に形成された第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の基板及び該基板の主面上に形成された第二の回路電極を有し、該第二の回路電極と前記第一の回路電極とが対向するように配置された第二の回路部材との間に請求項1〜7のいずれか一項に記載の回路接続材料を介在させ、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが電気的に接続されるように前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材を加圧する工程、を備える、回路接続構造体の製造方法。
前記ジラウロイルパーオキサイドの含有量は、前記接着剤組成物に含まれるラジカル重合性物質の総量100質量部に対して10〜40質量部である、請求項10に記載の接着剤組成物。
前記第一のラジカル重合性物質の含有量は、前記ジラウロイルパーオキサイドの含有量100質量部に対して30〜100質量部である、請求項10又は11に記載の接着剤組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようにタッチパネルセンサのベースが樹脂フィルムである場合や耐熱性の低い部材が存在する場合、タッチパネルのセンサと回路部材との接続にはラジカル硬化型接着剤であってもさらなる低温化が求められる。
【0008】
ラジカル硬化型接着剤の低温活性を向上させるためにラジカル重合開始剤の配合量を増やすことが考えられる。しかし、そのような方法によって接着強度を確保した回路接続構造体では高温高湿環境下において対向する電極間の接続抵抗値が上昇してしまう場合があることが、本発明者らの検討により判明した。
【0009】
本発明は、回路部材同士を120℃付近の低温で接続した場合であっても、十分な接着強度を有し、高温高湿環境下でも対向する電極間の接続抵抗が十分低く維持されている接続信頼性に優れた回路接続構造体を得ることができる回路接続材料、接着剤組成物及び接着剤シートを提供することを目的とする。また、本発明は、十分な接着強度を有し、高温高湿環境下でも対向する電極間の接続抵抗が十分低く維持されている接続信頼性に優れた回路接続構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ラジカル重合性物質及びラジカル重合開始剤を含有し、相対向する回路電極を有する回路部材同士を接続するための回路接続材料であって、ラジカル重合性物質として下記一般式(1)で表される第一のラジカル重合性物質と、(メタ)アクリロイル基を2以上有する、第一のラジカル重合性物質以外の第二のラジカル重合性物質とを含有し、ラジカル重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイドを含有する回路接続材料を提供する。
【0011】
【化1】
式(1)中、X
1及びX
2は同一でも異なってもよく、アクリロイル基[CH
2=CH−C(=O)−]、メタクリロイル基[CH
2=C(CH
3)−C(=O)−]又は水素原子[H−]を表し、少なくとも一方はアクリロイル基又はメタクリロイル基であり、nは8〜15の整数を表す。
【0012】
上記本発明に係る回路接続材料によれば、120℃付近の低温で回路部材同士を接続した場合であっても、十分な接着強度を有し、高温高湿環境下でも対向する電極間の接続抵抗が十分低く維持されている接続信頼性に優れた回路接続構造体を得ることができる。
【0013】
本発明に係る回路接続材料におけるジラウロイルパーオキサイドの含有量は、回路接続材料に含まれるラジカル重合性物質の総量100質量部に対して10〜40質量部であることが好ましい。ジラウロイルパーオキサイドの含有量をかかる数値範囲内とすることにより、回路部材同士を十分な接着強度で接続できるとともに、高温高湿環境下における接続抵抗値の上昇を十分抑制することができる。
【0014】
また、第一のラジカル重合性物質の含有量は、ジラウロイルパーオキサイドの含有量100質量部に対して30〜100質量部であることが好ましい。第一のラジカル重合性物質の含有量をかかる数値範囲内とすることにより、回路部材同士を十分な接着強度で接続できるとともに、高温高湿環境下における接続抵抗値の上昇を十分抑制することができる。
【0015】
本発明に係る回路接続材料は熱可塑性樹脂をさらに含むことが好ましい。この場合、回路接続材料の取扱い性が向上するとともに、硬化時の応力緩和に優れる回路接続材料を実現できる。
【0016】
熱可塑性樹脂は、ポリエステルウレタン樹脂であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る回路接続材料はリン酸エステル構造を有する第三のラジカル重合性物質をさらに含むことが好ましい。この場合、金属等の無機物表面に対する接着強度を向上させることができる。
【0018】
第三のラジカル重合性物質は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0019】
【化2】
式(2)中、Rはメチル基又は水素原子を表し、nは1〜2の整数を表す。
【0020】
また、本発明は、第一の基板及び該基板の主面上に形成された第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の基板及び該基板の主面上に形成された第二の回路電極を有し、第二の回路電極と第一の回路電極とが対向するように配置され、第二の回路電極が第一の回路電極と電気的に接続されている第二の回路部材と、第一の回路部材及び第二の回路部材の間に介在する接続部とを備え、接続部は、上記本発明に係る回路接続材料の硬化物である回路接続構造体を提供する。
【0021】
本発明の回路接続構造体は、接続部が上記本発明に係る回路接続材料の硬化物であることにより、十分な接着強度を有し、高温高湿環境下でも対向する電極間の接続抵抗が十分低く維持されている優れた接続信頼性を有することができる。また、本発明の回路接続構造体は、接続部を低温で形成することができるため、耐熱性の低い部材を有していても熱による影響を小さくすることができる。
【0022】
また、本発明は、第一の基板及び該基板の主面上に形成された第一の回路電極を有する第一の回路部材と、第二の基板及び該基板の主面上に形成された第二の回路電極を有し、第二の回路電極と前記第一の回路電極とが対向するように配置された第二の回路部材との間に上記本発明に係る回路接続材料を介在させ、第一の回路電極と第二の回路電極とが電気的に接続されるように第一の回路部材及び第二の回路部材を加圧する工程、を備える回路接続構造体の製造方法を提供する。
【0023】
本発明の回路接続構造体の製造方法によれば、本発明に係る回路接続材料によって回路部材同士を接続することにより、低温短時間の接続条件であっても、十分な接着強度を有し、高温高湿環境下でも対向する電極間の接続抵抗が十分低く維持されている接続信頼性に優れた回路接続構造体を得ることができる。
【0024】
また、本発明は、ラジカル重合性物質及びラジカル重合開始剤を含有する接着剤組成物であって、ラジカル重合性物質として下記一般式(1)で表される第一のラジカル重合性物質と、(メタ)アクリロイル基を2以上有する、第一のラジカル重合性物質以外の第二のラジカル重合性物質とを含有し、ラジカル重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイドを含有する接着剤組成物を提供する。
【0025】
【化3】
式(1)中、X
1及びX
2は同一でも異なってもよく、アクリロイル基[CH
2=CH−C(=O)−]、メタクリロイル基[CH
2=C(CH
3)−C(=O)−]又は水素原子[H−]を表し、少なくとも一方はアクリロイル基又はメタクリロイル基であり、nは8〜15の整数を表す。
【0026】
上記本発明に係る接着剤組成物によれば、低温短時間であっても十分な接着強度を発現することができる。
【0027】
本発明に係る接着剤組成物におけるジラウロイルパーオキサイドの含有量は、接着剤組成物に含まれるラジカル重合性物質の総量100質量部に対して10〜40質量部であることが好ましい。ジラウロイルパーオキサイドの含有量を係る数値範囲内とすることにより、低温短時間であっても十分な接着強度を発現することができるとともに、ジラウロイルパーオキサイドの結晶化を十分抑制することができる。
【0028】
また、第一のラジカル重合性物質の含有量は、ジラウロイルパーオキサイドの含有量100質量部に対して30〜100質量部であることが好ましい。第一のラジカル重合性物質の含有量を係る数値範囲内とすることにより、低温短時間であっても十分な接着強度を発現することができるとともに、ジラウロイルパーオキサイドの結晶化を十分抑制することができる。
【0029】
本発明に係る接着剤組成物は熱可塑性樹脂をさらに含むことが好ましい。この場合、接着剤組成物の取扱い性が向上するとともに、硬化時の応力緩和に優れる接着剤組成物を実現できる。
【0030】
熱可塑性樹脂は、ポリエステルウレタン樹脂であることが好ましい。
【0031】
本発明に係る接着剤組成物はリン酸エステル構造を有する第三のラジカル重合性物質をさらに含むことが好ましい。この場合、金属等の無機物表面に対する接着強度を向上させることができる。
【0032】
第三のラジカル重合性物質は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0033】
【化4】
式(2)中、Rはメチル基又は水素原子を表し、nは1〜2の整数を表す。
【0034】
また、本発明は、支持フィルムと、該支持フィルム上に設けられた、本発明に係る接着剤組成物からなるフィルム状接着剤と、を備える接着剤シートを提供する。
【0035】
本発明に係る接着剤シートによれば、本発明に係る接着剤組成物からなるフィルム状接着剤を有することにより、低温短時間であっても十分な接着強度を発現することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、回路部材同士を120℃付近の低温で接続した場合であっても、十分な接着強度を有し、高温高湿環境下でも対向する電極間の接続抵抗が十分低く維持されている接続信頼性に優れた回路接続構造体を得ることができる回路接続材料、接着剤組成物及び接着剤シートを提供することができる。また、本発明によれば、十分な接着強度を有し、高温高湿環境下でも対向する電極間の接続抵抗が十分低く維持されている接続信頼性に優れた回路接続構造体及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面の寸法比率は、図示された比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及びそれに対応する「メタクリロイル基」を意味する。
【0039】
本実施形態に係る接着剤組成物は、ラジカル重合性物質及びラジカル重合開始剤を含有し、ラジカル重合性物質として下記一般式(1)で表される第一のラジカル重合性物質と、(メタ)アクリロイル基を2以上有する、第一のラジカル重合性物質以外の第二のラジカル重合性物質とを含有し、ラジカル重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイドを含有する。
【0040】
【化5】
式(1)中、X
1及びX
2は同一でも異なってもよく、アクリロイル基[CH
2=CH−C(=O)−]、メタクリロイル基[CH
2=C(CH
3)−C(=O)−]又は水素原子[H−]を表し、少なくとも一方はアクリロイル基又はメタクリロイル基であり、nは8〜15の整数を表す。
【0041】
以下、相対向する回路電極を有する回路部材同士を接続するための回路接続材料として本実施形態に係る接着剤組成物を適用する場合について説明する。
【0042】
第一のラジカル重合性物質は、上記一般式(1)で表されるように、特定の長さの炭化水素骨格(メチレン鎖)を備え、かつ1以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。具体的には、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,9−デカンジオールジメタクリレート、1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,8−オクタンジオールジメタクリレート、1,11−ウンデカンジオールジアクリレート、1,11−ウンデカンジオールジメタクリレート、1,12−ドデカンジオールジアクリレート、1,12−デカンジオールジメタクリレート、1,13−トリデカンジオールジアクリレート、1,13−トリデカンジオールジメタクリレート、1,14−テトラデカンジオールジアクリレート、1,14−テトラデカンジオールジメタクリレート、1,15−ペンタデカンジオールジアクリレート、1,15−ペンタデカンジオールジメタクリレート等が挙げられる。
【0043】
上記一般式(1)で表される化合物は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
第二のラジカル重合性物質としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
また、第二のラジカル重合性物質は、回路接続材料の耐熱性を向上させる観点から、ジシクロペンテニル基、トリシクロデカニル基及びトリアジン環のうちの一種以上を有することが好ましい。
【0046】
第二のラジカル重合性物質は、モノマーに限らずオリゴマー又はポリマーを用いてもよい。このようなラジカル重合性物質としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0047】
上述した第二のラジカル重合性物質は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
本実施形態に係る回路接続材料は、リン酸エステル構造を有する第三のラジカル重合性物質を更に含有することができる。この場合、金属等の無機物表面に対する接着強度を向上させることができる。
【0049】
第三のラジカル重合性物質としては、下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。下記一般式(2)で表される化合物としては、例えば、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−(メタ)アリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等が挙げられる。これらの化合物は、例えば、無水リン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物として得ることができる。
【0050】
【化6】
式(2)中、Rはメチル基又は水素原子を表し、nは1〜2の整数を表す。
【0051】
第三のラジカル重合性物質は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
本実施形態の回路接続材料には、上述した第一、第二及び第三のラジカル重合性物質以外のラジカル重合性物質を含有させてもよい。このようなラジカル重合性物質としては、特に限定されるものではないが、単官能(メタ)アクリレート等を用いることができる。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、環構造を有する単官能(メタ)アクリレート、ウレタン基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0053】
環構造を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、アクロイルモルフォリン、メタクロイルモルフォリン、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレート、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル−アクリレート、テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イル−メタクリレート、1−(シクロヘキシロキシ)エチルアクリレート、1−(シクロヘキシロキシ)エチルメタリレート、1−(シクロヘキシロキシ)プロピルアクリレート、1−(シクロヘキシロキシ)プロピルメタリレート、1−(シクロヘキシロキシ)エチルメタリレート、1−(シクロヘキシロキシ)ブチルアクリレート、1−(シクロヘキシロキシ)ブチルメタリレート、1−(シクロヘキシロキシ)ペンチルアクリレート、1−(シクロヘキシロキシ)ペンチルメタリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェノキシメチルアクリレート、フェノキシメチルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシプロピルメタクリレート、フェノキシブチルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、δ−バレロラクトンアクリレート等を用いることができる。
【0054】
ウレタン基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコール等のポリオールと、ポリイシシアネート及び水酸基含有アクリル化合物との反応物として得られものが挙げられる。このような化合物は接着性に優れるため好ましい。
【0055】
本実施形態に係る回路接続材料におけるラジカル重合性物質の合計含有量は、回路接続材料全量を100質量部としたときに20〜70質量部が好ましく、30〜65質量部がより好ましい。
【0056】
本実施形態に係る回路接続材料はラジカル重合開始剤としてジラウロイルパーオキサイドを含有するが、回路を接続する条件等に応じて、ジラウロイルパーオキサイド以外のラジカル重合開始剤を適宜併用することができる。
【0057】
ジラウロイルパーオキサイド以外のラジカル重合開始剤としては、一般にラジカル重合において用いられるラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば、加熱により遊離ラジカルを発生する過酸化化合物、アゾ系化合物等を使用することができる。具体的には、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類等から選定することができる。
【0058】
ジアシルパーオキサイド類としては、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0059】
パーオキシジカーボネート類としては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0060】
パーオキシエステル類としては、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0061】
パーオキシケタール類としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0062】
ジアルキルパーオキサイド類としては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0063】
ハイドロパーオキサイド類としては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0064】
上記のラジカル重合開始剤は一種をジラウロイルパーオキサイドと併用してもよく、二種以上を組み合わせてジラウロイルパーオキサイドと併用してもよい。
【0065】
本実施形態に係る回路接続材料においては、保存性が向上する観点から、ラジカル重合開始剤をポリウレタン系又はポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものを含有することが好ましい。
【0066】
また、本実施形態に係る回路接続材料においては、ラジカル重合開始剤と、分解促進剤又は分解抑制剤とを混合して用いてもよい。
【0067】
本実施形態に係る回路接続材料におけるジラウロイルパーオキサイドの含有量は、回路接続材料に含まれるラジカル重合性物質の総量100質量部に対して10〜40質量部が好ましく、15〜35質量部がより好ましく、20〜30質量部がさらに好ましい。ジラウロイルパーオキサイドの含有量を上記の数値範囲内とすることにより、回路部材同士を十分な接着強度で接続しつつ、高温高湿環境下における接続抵抗値の上昇を十分抑制することができる。
【0068】
本実施形態に係る回路接続材料における第一のラジカル重合性物質の含有量は、ジラウロイルパーオキサイドの含有量100質量部に対して30〜100質量部が好ましく、50〜80質量部がより好ましい。第一のラジカル重合性物質の含有量を上記の数値範囲内とすることにより、回路部材同士を十分な接着強度で接続しつつ、高温高湿環境下における接続抵抗値の上昇を十分抑制することができる。
【0069】
本実施形態に係る回路接続材料は、取扱い性の向上及び硬化時の応力緩和に優れる点で、熱可塑性樹脂を更に含有することが好ましい。
【0070】
熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、キシレン樹脂、ポリイソシアネート樹脂等が使用できる。
【0071】
フェノキシ樹脂は、二官能フェノール類とエピハロヒドリンを高分子量まで反応させるか、又は二官能エポキシ樹脂と二官能フェノール類を重付加反応させることにより得ることができる。
【0072】
また、熱可塑性樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の共重合体を用いることができる。
【0073】
熱可塑性樹脂は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
上記の熱可塑性樹脂の中でも、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【0075】
熱可塑性樹脂は、ラジカル重合性官能基(例えば(メタ)アクリロイル基等)で変性されていてもよく、この場合、熱可塑性樹脂を硬化系に組み入れることができる。
【0076】
また、熱可塑性樹脂は、水酸基等の極性基を有すると接着性が向上するため好ましい。水酸基を有する熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、フェノール樹脂等を好ましく使用することができる。これらの水酸基含有樹脂を用いることにより、硬化時の応力緩和の効果と、接着性がさらに向上する効果とを得ることができる。水酸基含有樹脂は、エポキシ基含有エラストマー、ラジカル重合性官能基等によって変性されていてもよい。特に、ラジカル重合性官能基で変性したものは耐熱性が向上するため好ましい。
【0077】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、10000以上であることが好ましく、10000〜1000000であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が、10000以上であると、フィルム状に成形する際の製膜性が向上する傾向にあり、一方、1000000以下であると、溶剤への溶解性や他の成分との相溶性が向上して、フィルム状に成形するための塗工液を調整することが容易となる傾向がある。なお、本明細書で規定する重量平均分子量とは、以下の条件に従ってゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
【0078】
[GPC測定条件]
使用機器:日立L−6000型[(株)日立製作所]
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440(計3本)[日立化成株式会社製]
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/min
検出器:L−3300RI[(株)日立製作所]
【0079】
また、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40℃以上が好ましい。
【0080】
本実施形態においては、熱可塑性樹脂としてポリエステルウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0081】
ポリエステルウレタン樹脂は、例えば、ポリエステルポリオールと、ジイソシアネートとの反応により得ることができる。ポリエステルウレタン樹脂はウレタン基及びエステル基をその主鎖中に有することが好ましい。
【0082】
ポリエステルポリオールは、複数のエステル基及び複数の水酸基を有する重合体である。ポリエステルポリオールは、例えば、ジカルボン酸とジオールとの反応により得られる。ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバチン酸等の芳香族、脂肪族ジカルボン酸などが好ましい。ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールのようなグリコール類が好ましい。
【0083】
ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の、芳香族、脂環族又は脂肪族のジイソシアネートが好適に用いられる。
【0084】
ポリエステルウレタン樹脂は、アニオン性を有することが好ましい。これにより、接着強度が更に向上する。アニオン性を有するポリエステルウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールとジイソシアネートとの反応の際に、側鎖にスルホン酸基やカルボキシル基を有するジオールやジアミン類を共重合することで得られる。すなわち、ポリエステルウレタン樹脂は、スルホン酸基又はカルボキシル基を有することが好ましい。
【0085】
ポリエステルウレタン樹脂は、ベンゼン環等を含む芳香族基、シクロヘキサン環等を含む環状脂肪族基などを有することが好ましい。
【0086】
ポリエステルウレタン樹脂は、2種以上を混合して用いることができる。例えば、芳香族ポリエステルポリオールと脂肪族ジイソシアネートとの反応により得られるものと、脂肪族ポリエステルポリオールと芳香族ジイソシアネートとの反応により得られるものとを組み合わせることができる。
【0087】
ポリエステルウレタン樹脂のTgは50℃以上であることが好ましい。ポリエステルウレタン樹脂は、ポリエステルポリオール又はジイソシアネートの種類、重量平均分子量等を適宜調整することにより、そのガラス転移温度を50℃以上とすることができる。
【0088】
ポリエステルウレタン樹脂は、重量平均分子量が5000〜100000であることが好ましい。重量平均分子量が5000以上であると、フィルム状に成形する際の製膜性が向上する傾向にあり、重量平均分子量が100000以下とすると、溶剤への溶解性や相溶性が向上して、フィルム状に成形するための塗工液を調整することが容易となる傾向がある。
【0089】
ポリエステルウレタン樹脂は、ラジカル重合性基を有する不飽和二重結合及びエポキシ基のうち少なくとも一方を有していることが好ましい。これにより、回路接続材料を硬化するときに、接着剤組成物中のエポキシ樹脂又はラジカル重合性物質が反応して、回路接続材料の硬化物の弾性率や耐熱性を向上させることができる。したがって、エポキシ基を有するポリエステルウレタン樹脂を用いる場合は、回路接続材料が後述する熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
【0090】
本実施形態に係る回路接続材料における熱可塑性樹脂の含有量は、回路接続材料全量を100質量部としたときに30〜80質量部が好ましく、35〜70質量部がより好ましい。
【0091】
本実施形態に係る回路接続材料は熱硬化性樹脂を含有することができる。
【0092】
熱硬化性樹脂としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が使用できる。この場合、熱硬化性樹脂の硬化剤及び/又は硬化促進剤を更に配合することができる。硬化剤は潜在性硬化剤が好ましい。
【0093】
エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物であれば特に制限なく用いられる。ビスフェノールA、F、D等のビスフェノールのグリシジルエーテルであるビスフェノール型エポキシ樹脂、並びに、フェノールノボラック又はクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂が代表的なエポキシ樹脂である。その他の例として、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、及び複素環式エポキシ樹脂が挙げられる。これらは一種を単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0094】
不純物イオン(Na
+、Cl
−等)濃度又は加水分解性塩素が300ppm以下であるエポキシ樹脂を用いることが、エレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0095】
本実施形態に係る回路接続材料は、アミノキシル構造を有する化合物をさらに含有することができる。この場合、回路接続材料の保存安定性をより向上させることができる。
【0096】
本実施形態に係る回路接続材料は、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類等の重合禁止剤を含有してもよい。
【0097】
本実施形態に係る回路接続材料は導電性粒子を含有してもよい。導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子、カーボンなどが挙げられる。また、Ni等の遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆したものでもよい。十分なポットライフを得るためには、表層はNi、Cu等の遷移金属類ではなく、Au、Ag、白金族の貴金属類とすることが好ましく、Auがより好ましい。また、ガラス、セラミック、プラスチック等の非導電性粒子の表面を前記した導電性物質で被覆する等の方法により、非導電性粒子表面に導通層を形成し、さらに最外層を貴金属類で構成したものや、熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。
【0098】
本実施形態に係る回路接続材料は、導電性粒子を含有せずとも接続時に相対向する回路電極の直接接触により接続を得ることができるものであるが、導電性粒子をさらに含有すると、より安定した接続を得ることができる。
【0099】
本実施形態に係る回路接続材料における導電性粒子の含有量は、回路接続材料の用途により適宜設定されるが、例えば、導電性粒子を含む回路接続材料100体積部に対して0.1〜30体積部の範囲とすることができる。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには、導電性粒子の含有量が0.1〜10体積部であることが好ましい。
【0100】
本実施形態に係る回路接続材料は、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤等を含有することができる。
【0101】
本実施形態に係る回路接続材料に充填材を含有させることで、接続信頼性等の向上を図ることができる。なお、回路接続材料が導電性粒子を含有する場合、充填材の最大径が導電性粒子の粒径未満であることが好ましい。本実施形態に係る回路接続材料における充填材の含有量は、配合による効果を十分に得る観点から、回路接続材料100体積部に対して5〜60体積部の範囲とすることができる。
【0102】
カップリング剤としては、ビニル基、アクリロイル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群より選択される1種以上の官能基を有する化合物が、接着性の向上の点から好ましい。
【0103】
本実施形態に係る回路接続材料によれば、回路部材同士を120℃付近の低温で接続した場合であっても、十分な接着強度を有し、高温高湿環境下でも対向する電極間の接続抵抗が十分低く維持されている接続信頼性に優れた回路接続構造体を得ることができる。
【0104】
本実施形態に係る回路接続材料が上記の効果を奏することができる理由について本発明者らは以下のとおり推察する。まず、ジラウロイルパーオキサイドを多く含む回路接続材料を用いて接続された回路接続構造体は、高温高湿での信頼性試験後に接続部に気泡が多発し、特に狭ピッチでの接続信頼性が悪化することが本発明者らによって確認されている。そのため、高温高湿環境下で接続した電極間の接続抵抗値が上昇する要因として、回路接続材料に大量に含有されたジラウロイルパーオキサイドが材料表面で結晶化もしくは局在化することが考えられる。本実施形態に係る回路接続材料においては、ジラウロイルパーオキサイドと上記一般式(1)で表されるラジカル重合性物質(第一のラジカル重合性物質)とを併用することにより、低温接続時の接着強度が確保されるようにジラウロイルパーオキサイドを配合した場合であっても、特定の構造を有する第一のラジカル重合性物質によってにジラウロイルパーオキサイドの結晶化もしくは局在化が有効に抑制されたため、接着強度と接続抵抗の安定性とを両立できたと本発明者らは考えている。
【0105】
次に、本発明に係る接着剤シートについて図面を参照しながら説明する。
【0106】
図1は、本発明に係る接着剤シートの一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示す接着剤シート4は、支持フィルム1と、支持フィルム上に設けられたフィルム状接着剤2と、フィルム状接着剤2の支持フィルム1とは反対側の面上に設けられた保護フィルム3とを備える。
【0107】
フィルム状接着剤2は、上述した本実施形態に係る回路接続材料と同様の成分を含む本発明に係る接着剤組成物からなり、接着剤成分5と接着剤成分5中に分散している導電性粒子7とを含む。ここで接着剤成分とは、接着剤組成物から導電性粒子を除いた成分をいう。
【0108】
支持フィルム1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエチレンイソフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリアミドフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、合成ゴム系フィルム、液晶ポリマーフィルム等の各種フィルムを使用することが可能である。上記のフィルムは、必要に応じて表面にコロナ放電処理、アンカーコート処理、帯電防止処理などが施されたものであってもよい。
【0109】
また、フィルム状接着剤2が支持フィルム1から容易に剥離されるように、支持フィルム1の表面には剥離処理剤がコーティングされていてもよい。剥離処理剤としては、シリコーン樹脂、シリコーンと有機系樹脂との共重合体、アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、長鎖アルキル基を有する樹脂、フルオロアルキル基を有する樹脂、セラック樹脂などの各種剥離処理剤を用いることができる。
【0110】
支持フィルム1の厚さは、作製された接着剤シート4の保管、使用時の利便性等を考慮して、4〜200μmとすることが好ましく、材料コスト、生産性等を考慮して、15〜75μmとすることがより好ましい。
【0111】
フィルム状接着剤2は、支持フィルム1上に塗工装置を用いて、本発明に係る接着剤組成物を含有する塗工溶液を塗布し、所定時間、熱風乾燥させることにより作成することができる。本実施形態においては、本発明に係る接着剤組成物がフィルム形成材として上述した熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
【0112】
フィルム状接着剤2は2層以上で構成されてもよい。例えば、導電性粒子を含有する層と、導電性粒子を含まない層との2層の構成とした場合、ポットライフの向上を図ることができる。
【0113】
保護フィルム3としては、支持フィルム1と同様のフィルムが挙げられる。保護フィルムの厚さは、作製された接着剤シート4の保管、使用時の利便性等を考慮して、4〜200μmとすることが好ましく、材料コスト、生産性等を考慮して、15〜75μmとすることがより好ましい。
【0114】
接着剤シート4は、支持フィルム1上にフィルム状接着剤2を形成した後、その上に保護フィルム3を従来公知のラミネータ等を使用して貼り合わせることで作製することができる。
【0115】
次に、本発明に係る回路接続構造体及びその製造方法について説明する。
【0116】
図2は、回路接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。
図2に示す接続構造体100は、第一の回路基板21及び該基板の主面21a上に形成された第一の回路電極(第一の接続端子)22を有する第一の回路部材20と、第二の回路基板31及び該基板の主面31a上に形成された第二の回路電極(第二の接続端子)32を有する第二の回路部材30と、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間に介在してこれらを接着している接続部10とを備える。第二の回路部材30は、第二の回路電極32が第一の回路電極22と対向するように第一の回路部材20と対向配置されている。
【0117】
接続部10は、本実施形態に係る回路接続材料を第一の回路部材20と第二の回路部材30との間に介在させ、その状態で第一の回路部材20及び第二の回路部材30を加圧することにより形成されたものであり、本実施形態に係る回路接続材料の硬化物である。なお、本実施形態では、導電性粒子を含む回路接続材料を用いて接続部10を形成した場合の一例を示しており、接続部10は、導電性粒子以外の成分に由来する絶縁層11と、絶縁層11内に分散している導電性粒子7とから構成される。
【0118】
対向する第一の回路電極22及び第二の回路電極32は、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。一方、同一の回路基板上に形成された第一の回路電極22同士、及び第二の回路電極32同士は絶縁されている。
【0119】
第一の回路基板31及び第二の回路基板21としては、半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板等の基板などが挙げられる。通常、回路部材には多数の接続端子が設けられているが、接続端子は場合によっては単数でもよい。
【0120】
回路基板として、より具体的には、半導体、ガラス及びセラミック等の無機材料の基板、プラスチック基板、ガラス/エポキシ基板等が挙げられる。回路基板は、これらの材料が組み合わされたものであってもよい。
【0121】
プラスチック基板としては、ポリイミドフィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム及びポリエステルフィルムが挙げられる。低価格、軽量化の観点からは、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又はポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましい。
【0122】
第一の回路電極及び第二の回路電極は、銅等の金属から形成される。より良好な電気的接続を得るためには、第一の回路電極及び第二の回路電極の少なくとも一方の表面を、金、銀、錫及び白金族から選ばれる一種以上の金属にすることが好ましい。例えば、銅/ニッケル/金のように複数の金属を組み合わせて多層構成としてもよい。この場合、金層を最表面層とすることができる。
【0123】
また、第一の回路部材20及び第二の回路部材30のうち一方は、ガラス基板又はプラスチック基板を回路基板として有し、ITO等から形成された接続端子を有する液晶ディスプレイパネルであってもよい。また、第一の回路部材20及び第二の回路部材30のうち一方は、ポリイミドフィルムを回路基板として有するフレキシブルプリント配線板(FPC)、テープキュリアパッケージ(TCP)若しくはチップオンフィルム(COF)、又は半導体基板を回路基板として有する半導体シリコンチップであってもよい。これらの各種の回路部材を、必要により適宜組み合わせて接続構造体が構成される。
【0124】
なお、回路電極を設けた基板は、回路接続材料による接続工程の前に予め加熱処理することが好ましい。これにより、接続時の加熱に伴って発生する揮発成分が接続に影響することを防止することができる。
【0125】
回路接続構造体100は、例えば、第一の回路部材20、本実施形態に係る回路接続材料及び第二の回路部材30を、この順で、第一の接続端子22及び第二の接続端子32が相対峙するように重ね合わせ、その状態で加圧あるいは更に加熱することにより形成される。
【0126】
圧力は、被着体に損傷を与えない範囲であれば、特に制限は受けないが、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。加熱温度は、特に制限は受けないが、100〜200℃が好ましい。これらの加圧及び加熱は、0.5秒〜100秒間の範囲で行うことが好ましく、130〜180℃、3MPa、10秒の加熱でも接着させることが可能である。
【0127】
さらに、
図3を参照しながら、本実施形態に係る回路接続構造体の製造方法について説明する。本実施形態においては、まず、上述した第一の回路部材20と、本実施形態に係る回路接続材料をフィルム状に成形してなるフィルム状接着剤40とを用意する(
図3(a)参照)。本実施形態においては回路接続材料が導電性粒子7を含んでいる。接着剤成分5は、回路接続材料から導電性粒子を除いた成分を示す。なお、回路接続材料が導電性粒子7を含有しない場合でも、その回路接続材料は絶縁性接着剤として異方導電性接着に使用できる。
【0128】
次に、フィルム状接着剤40を第一の回路部材20の回路電極22が形成されている面上に載せる。次に、フィルム状接着剤40を、
図3(a)の矢印A及びB方向に加圧し、フィルム状接着剤40を第一の回路部材20に仮接続する(
図3(b)参照)。このとき、加熱しながら加圧してもよい。但し、加熱温度はフィルム状接着剤40中の接着剤組成物の硬化温度よりも低い温度とする。仮接続時の加熱温度は、好ましくは50〜120℃であり、より好ましくは60〜110℃である。また、仮接続時の圧力は、0.1〜3MPaであることが好ましい。
【0129】
本実施形態においては、上述した本実施形態に係る接着剤シート4を用いて第一の回路部材上にフィルム状接着剤を配置することができる。具体的には、接着剤シート4から保護フィルム3を剥がして露出したフィルム状接着剤2を、ラミネータを用いて第一の回路部材20に貼り合わせる。貼付後、支持フィルム1は剥離される。
【0130】
続いて、
図3(c)に示すように、第二の回路部材30を、第二の回路電極を第一の回路部材20に向けるようにしてフィルム状接着剤40上に載せる。このとき第一及び第二の回路電極が相対向するよう位置合わせをしてから、第二の回路部材の上から加熱、加圧することで第二の回路部材を仮固定することができる。こうすることで続く本接続時の電極の位置ずれを抑制することができる。仮固定時の加熱温度はフィルム状接着剤40中の接着剤組成物の硬化温度よりも低い温度とし、スループット短縮のため位置合わせから仮固定完了までの時間は5秒以下であることが好ましい。なお、仮固定時の加熱温度は、好ましくは50〜120℃であり、より好ましくは60〜110℃である。また、仮固定時の圧力は、0.1〜3MPaであることが好ましい。
【0131】
そして、フィルム状接着剤40を加熱しながら、
図3(c)の矢印A及びB方向に第一及び第二の回路部材20、30を介して加圧する。このときの加熱温度は、重合反応が開始可能な温度とする。本実施形態においては、接続条件は先に述べた通り、圧力0.1〜10MPa、接続時間0.5秒〜120秒間とすることができる。また、必要に応じて、後硬化を行ってもよい。
【0132】
こうして、フィルム状接着剤40が硬化し、
図2に示すような回路接続構造体が得られる。
【0133】
本実施形態に係る回路接続構造体の製造方法によれば、本実施形態に係る回路接続材料からなるフィルム状接着剤40を用いることにより、上記の低温条件で接続した場合であっても、回路部材20,30同士を十分な接着強度で接着できるとともに、電気的に接続した回路電極間の接続抵抗を十分に低減することができ、さらには高温高湿環境下に長期間おかれた場合であっても接続抵抗の増大が十分に抑制された回路接続構造体を得ることができる。
【0134】
本実施形態に係る接着剤組成物及び接着剤シートは、低温で十分な接着強度が得られるとともにラジカル重合開始剤に起因する不具合を十分低減できることから、耐熱性の低い材質を含む部材の接着に好適である。
【実施例】
【0135】
[接着剤シートの作製]
(実施例1)
熱可塑性樹脂としてポリエステルウレタン樹脂(UR−8200、東洋紡製、30%溶液)を不揮発分換算で40質量部、エチレン酢酸ビニル共重合体(EV40W、三井デュポンポリケミカル製、20%溶液)を不揮発分換算で10質量部、第一のラジカル重合性物質として1,10−デカンジオールジアクリレート(A−DOD−N、新中村化学工業製)を5質量部、第二のラジカル重合性物質として、ウレタンアクリレートオリゴマー(UA5500、新中村化学工業製)のトルエン溶解品70質量%溶液を不揮発分換算で33質量部、第三のラジカル重合性物質として2−メタクリロキシエチルアシッドホスフェート(P−2M、共栄社化学製)を2質量部、ラジカル重合開始剤としてジラウロイルパーキサイド(パーロイルL、日油製)を10質量部、及び、ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.04μmの金層(金めっき)を設けた平均粒径10μmの導電性粒子を5質量部混合した。この混合溶液をアプリケータで支持フィルムとしてのPETフィルム上に塗布し、70℃10分の熱風乾燥により、厚み20μmのフィルム状接着剤を形成し、接着剤シートを得た。
【0136】
(実施例2)
1,10−デカンジオールジアクリレート(A−DOD−N)に代えて、1,10−デカンジオールジメタクリレート(DOD−N、新中村化学工業製)を5質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤シートを得た。
【0137】
(実施例3)
1,10−デカンジオールジアクリレート(A−DOD−N)に代えて、1,9−ノナンジオールジアクリレート(A−NOD−N、新中村化学工業製)を5質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤シートを得た。
【0138】
(実施例4)
1,10−デカンジオールジアクリレート(A−DOD−N)に代えて、1,9−ノナンジオールジメタクリレート(NOD−N、新中村化学工業製)を5質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤シートを得た。
【0139】
(実施例5)
1,10−デカンジオールジアクリレート(A−DOD−N)の配合量を8質量部に変更し、ウレタンアクリレートオリゴマー(UA5500)の配合量を30質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤シートを得た。
【0140】
(実施例6)
ウレタンアクリレートオリゴマー(UA5500)の配合量を27質量部に変更し、第二のラジカル重合性物質として更にイソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(M−215、東亞合成製)を3質量部配合し、ジラウロイルパーキサイドの配合量を13質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤シートを得た。
【0141】
(実施例7)
ウレタンアクリレートオリゴマー(UA5500)の配合量を30質量部に変更し、第二のラジカル重合性物質として更にイソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(M−215、東亞合成製)を3質量部配合し、ジラウロイルパーオキサイドの配合量を7質量部に変更し、ラジカル重合開始剤として更にジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート(HTP−65W、化薬アクゾ製、20%溶液)を不揮発分換算で3質量部配合こと以外は、実施例1と同様にして接着剤シートを得た。
【0142】
(比較例1)
1,10−デカンジオールジアクリレート(A−DOD−N)を配合せず、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(M−215、東亞合成製)を5質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤シートを得た。
【0143】
(比較例2)
1,10−デカンジオールジアクリレート(A−DOD−N)を配合せず、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(M−315、東亞合成製)を5質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤シートを得た。
【0144】
(比較例3)
1,10−デカンジオールジアクリレート(A−DOD−N)を配合せず、ジシクロペンタジエン型ジアクリレート(DCP−A、共栄社化学製)を5質量部配合したこと以外は、実施例1と同様にして接着剤シートを得た。
【0145】
実施例及び比較例におけるフィルム状接着剤の組成を表1に示す。表中の単位は質量部である。また、フィルム状接着剤におけるジラウロイルパーオキサイド及び第一のラジカル重合性物質(上記一般式(1)で表される化合物)の含有量について、ラジカル重合性物質の総量100質量部に対するジラウロイルパーオキサイドの割合(質量部)と、ジラウロイルパーオキサイド100質量部に対する第一のラジカル重合性物質の割合(質量部)とをそれぞれ表2に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
[回路接続構造体の作製]
実施例1〜7及び比較例1〜3の接着剤シートをそれぞれ用いて、厚み75μmのポリイミド上に直接形成された、ライン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmの銅回路、銅表面には厚み0.1μmの錫めっきを施したフレキシブル回路板(FPC)と、二酸化珪素によって表面を覆われたPETフィルム、又は銀ペーストによって表面を覆われたPETフィルムとを、130℃−2MPa−10秒、幅2.0mmで接続した。この際、予め上記のPETフィルム上に、接着剤シートのフィルム状接着剤の接着面を貼り付けた後、70℃、1MPa、2秒間加熱加圧して仮接続し、その後、接着剤シートから支持フィルムであるPETフィルムを剥離してFPCと接続した。
【0149】
接着強度の評価には二酸化珪素表面のPETフィルムとFPCとの回路接続構造体(FPC−SiO
2PETフィルム)を、接続抵抗の評価には銀ペースト表面のPETフィルムとFPCとの回路接続構造体(FPC−AgペーストPETフィルム)を用いた。
【0150】
[接着強度の測定]
作製した回路接続構造体(FPC−SiO
2PETフィルム)の接着強度をJIS−Z0237に準じた90度剥離法により測定した。接着強度の測定装置として、東洋ボールドウィン(株)製「テンシロンUTM−4」(商品名)(剥離速度50mm/min、25℃)を使用した。得られた結果を表3に示す。
【0151】
[接続抵抗の測定]
作製した回路接続構造体(FPC−AgペーストPETフィルム)の対向する電極間の抵抗値を接続直後、及び85℃/85%RHの環境下で250時間保持する信頼性試験後にそれぞれマルチメーターで測定した。抵抗値は対向する回路電極間の抵抗値37点の平均値と最大値を測定した。得られた結果を表3に示す。
【0152】
【表3】
【0153】
表3に示したように、実施例1〜7の接着剤シートによれば、接着強度が5N/cm以上であるとともに、信頼性試験後の抵抗値の最大値が平均値の2倍以内である回路接続構造体が得られた。一方、比較例1〜3の接着剤シートは、接着強度は良好であるものの、回路接続構造体の信頼性試験後の接続抵抗のばらつきが大きくなり、接続信頼性が不十分であった。また、実施例の接着剤シートは比較例と比べて、フィルム状接着剤表面におけるジラウロイルパーオキサイドの結晶化が軽減されていた。