(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単位格子の3本の結晶軸のうちの少なくとも2本の結晶軸の長さが、5.20〜5.80Å、10.70〜11.30Åおよび11.65〜12.85Åのいずれかの範囲内である無機結晶からなる結晶核剤と、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物とを含有してなる結晶性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の結晶性樹脂組成物は、単位格子の3本の結晶軸のうちの少なくとも2本の結晶軸の長さが、5.20〜5.80Å、10.70〜11.30Åおよび11.65〜12.85Åのいずれかの範囲内である無機結晶からなる結晶核剤と、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物とを含有してなるものである。
【0012】
本発明の結晶性樹脂組成物で用いられる結晶核剤は、無機結晶であって、その単位格子の3本の結晶軸のうちの少なくとも2本の結晶軸の長さが、5.20〜5.80Å、10.70〜11.30Åおよび11.65〜12.85Åのいずれかの範囲内であるものである。なお、本発明において、結晶の単位格子の結晶軸の長さは、X線回折により格子定数として求められる値である。
【0013】
結晶核剤として用いられる無機結晶の結晶系は、特に限定されず、三斜晶、単斜晶、斜方晶、六方晶、三方晶、正方晶、および立方晶のいずれであってもよいが、斜方晶、六方晶、三方晶、正方晶、および立方晶のいずれかであることが好ましく、斜方晶であることが最も好ましい。
【0014】
無機結晶の単位格子の3本の結晶軸のうちの少なくとも2本の結晶軸の長さは、5.20〜5.80Å、10.70〜11.30Åおよび11.65〜12.85Åのいずれかの範囲内である必要がある。結晶軸の長さがこの条件を満たす無機結晶を結晶核剤として用いることにより、結晶化速度の改良効果が得られる上に、得られる結晶性樹脂組成物の結晶化度を高くすることができる。
【0015】
結晶核剤として用いられうる無機結晶を構成する無機化合物は、前述の結晶軸に関する条件を満たすものである限りにおいて特に限定されない。本発明で無機結晶を構成するものとして用いられうる無機化合物の具体例としては、アルミナ(θ−アルミナ)、酸化ビスマス、酸化スズ、アルミン酸マグネシウム、ヨウ素酸ナトリウム、ゲルマン酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、酢酸亜鉛、ケイ酸亜鉛カリウム、リン酸カルシウムを挙げることができる。なお、結晶核剤は、1種を単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0016】
結晶核剤の比表面積は特に限定されるものではないが、得られる結晶性樹脂組成物の結晶速度と結晶化度を高める観点からは、大きな比表面積を有する結晶核剤が好適である。具体的には、結晶核剤のBET比表面積の値が、1m
2/g以上であることが好ましく、3m
2/g以上であることがより好ましく、5m
2/g以上であることがさらに好ましい。
【0017】
本発明の結晶性樹脂組成物で用いられるシンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物は、ジシクロペンタジエンを主たる単量体として開環重合を行い、得られる開環重合体中に存在する炭素−炭素二重結合の少なくとも一部を水素化(水素添加)することにより得ることができる。但し、最終的に得られるジシクロペンタジエン開環重合体水素化物にシンジオタクチック立体規則性を付与するために、開環重合を行うにあたり、得られる開環重合体にシンジオタクチック立体規則性を付与できる開環重合触媒を選定する必要がある。
【0018】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物は、シンジオタクチック立体規則性を有するものであれば、その立体規則性の程度は特に限定されないが、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の結晶性を高めて耐熱性を特に良好なものとする観点からは、より立体規則性の程度が高いものが好ましい。より具体的には、ジシクロペンタジエンを開環重合して、次いで水素化して得られる繰り返し単位についてのラセモ・ダイアッドの割合が、51%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが特に好ましい。ラセモ・ダイアッドの割合が高いものほど、すなわち、シンジオタクチック立体規則性の高いものほど、高い融点を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物となる。なお、ラセモ・ダイアッドの割合は、
13C−NMRスペクトル分析で測定し、定量することができる。具体的な定量の方法としては、オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、150℃でinverse−gated decoupling法を適用して
13C−NMR測定を行い、オルトジクロロベンゼン−d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比からラセモ・ダイアッドの割合を決定する方法を挙げることができる。
【0019】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を得るために単量体として用いられるジシクロペンタジエンには、エンド体およびエキソ体の立体異性体が存在するが、そのどちらも単量体として用いることが可能であり、一方の異性体を単独で用いてもよいし、エンド体およびエキソ体が任意の割合で存在する異性体混合物を用いることもできる。但し、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の結晶性を高めて耐熱性を特に良好なものとする観点からは、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましく、例えば、エンド体またはエキソ体の割合が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが特に好ましい。なお、割合を高くする立体異性体は、合成容易性の観点から、エンド体であることが好ましい。
【0020】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を得るために用いる単量体は、ジシクロペンタジエンが主たる単量体となる限りにおいて、ジシクロペンタジエンと共重合可能な化合物を含んでいてもよい。このような化合物の例としては、ジシクロペンタジエン以外のノルボルネン類や、直鎖または環状のオレフィンもしくはジエン類を挙げることができる。但し、単量体におけるジシクロペンタジエン以外の化合物の含有量は、10重量%以下とすることが好ましく、5重量%以下とすることがより好ましい。
【0021】
開環重合触媒は、ジシクロペンタジエンを開環重合させることができるものであって、目的とするジシクロペンタジエン開環重合体水素化物にシンジオタクチック立体規則性を付与できるものであれば、特に限定されない。好ましく用いられる開環重合触媒としては、下記の式(1)で表される金属化合物を含んでなる開環重合触媒を挙げることができる。
【0022】
M(NR
1)X
4−a(OR
2)
a・L
b (1)
【0023】
(式(1)中、Mは周期律表第6族の遷移金属原子から選択される金属原子であり、R
1は3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、または−CH
2R
3で表される基であり、R
2は置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基であり、Xはハロゲン原子、アルキル基、アリール基およびアルキルシリル基から選択される基であり、Lは電子供与性の中性配位子であり、aは0または1であり、bは0〜2の整数である。R
3は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。)
【0024】
式(1)で表される金属化合物を構成する金属原子(式(1)中のM)は、周期律表第6族の遷移金属原子(クロム、モリブデン、タングステン)から選択される。なかでも、モリブデンまたはタングステンが好適に用いられ、タングステンが特に好適に用いられる。
【0025】
式(1)で表される金属化合物は、金属イミド結合を含んでなるものである。金属イミド結合を構成する窒素原子上の置換基(式(1)中のR
1)は、3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、または−CH
2R
3(但し、R
3は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。)で表される基である。3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基が有しうる置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などのアルコキシ基;などが挙げられ、さらに、3,4,5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合したものであってもよい。3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の具体例としては、無置換フェニル基や、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基などの一置換フェニル基;3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基などの二置換フェニル基;3,4,5−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基などの三置換フェニル基;2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基などの置換基を有していてもよい2−ナフチル基;を挙げることができる。
【0026】
式(1)で表される金属化合物において、窒素原子上の置換基(式(1)中のR
1)として用いられ得る、−CH
2R
3で表される基において、R
3は水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基を表す。このR
3で表される基となり得る、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は、特に限定されないが、通常1〜20、好ましくは1〜10である。また、このアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。このアルキル基が有し得る置換基は、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基;を挙げることができる。
【0027】
式(1)で表される金属化合物において、窒素原子上の置換基(式(1)中のR
1)として用いられ得る、置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、およびこれらの基の水素原子が他の置換基に置き換わってなるアリール基などが挙げられる。また、このアリール基の置換基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基;を挙げることができる。
【0028】
R
3で表される基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などの炭素数が1〜20のアルキル基が特に好適に用いられる。
【0029】
式(1)で表される金属化合物は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基およびアルキルシリル基から選択される基を3個または4個有してなる。すなわち、式(1)において、Xは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基およびアルキルシリル基から選択される基を表す。なお、式(1)で表される金属化合物においてXで表される基が2以上あるとき、それらの基は互いに結合していてもよい。
【0030】
Xで表される基となり得るハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。また、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、ネオフィル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基などが挙げられる。アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0031】
式(1)で表される金属化合物は、1個の金属アルコキシド結合または1個の金属アリールオキシド結合を有するものであってもよい。この金属アルコキシド結合または金属アリールオキシド結合を構成する酸素原子上の置換基(式(1)中のR
2)は、置換基を有していてもよいアルキル基および置換基を有していてもよいアリール基から選択される基である。このR
2で表される基となり得る、置換基を有していてもよいアルキル基や置換基を有していてもよいアリール基としては、前述のR
3で表される基におけるものと同様のものを用いることができる。
【0032】
式(1)で表される金属化合物は、1個または2個の電子供与性の中性配位子を有するものであってもよい。この電子供与性の中性配位子(式(1)中のL)としては、例えば、周期律表第14族または第15族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられる。その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジンなどのアミン類;を挙げることができる。これらのなかでも、エーテル類が特に好適に用いられる。
【0033】
開環重合触媒として、特に好適に用いられる式(1)で表される金属化合物としては、フェニルイミド基を有するタングステン化合物(式(1)中のMがタングステン原子で、かつ、R
1がフェニル基である化合物)を挙げることができ、そのなかでも、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド・テトラヒドロフラン錯体が特に好適である。
【0034】
式(1)で表される金属化合物は、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物と、3,4,5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類、または一置換メチルイソシアナート類と、電子供与性の中性配位子(L)、および必要に応じてアルコール類、金属アルコキシド、金属アリールオキシドを混合することなど(例えば、特開平5−345817号公報に記載された方法)により合成することができる。合成された式(1)で表される金属化合物は、結晶化などにより精製・単離したものを用いてもよいし、精製することなく、触媒合成溶液をそのまま開環重合触媒として使用することもできる。
【0035】
開環重合触媒として用いる式(1)で表される金属化合物の使用量は、(金属化合物:用いる単量体全体)のモル比が、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:500〜1,000,000、より好ましくは1:1,000〜1:500,000でとなる量で用いる。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となるおそれがあり、少なすぎると十分な重合活性が得られない場合がある。
【0036】
式(1)で表される金属化合物を開環重合触媒として用いるにあたっては、式(1)で表される金属化合物を単独で使用することもできるが、重合活性を高くする観点からは式(1)で表される金属化合物と有機金属還元剤とを併用することが好ましい。用いられ得る有機金属還元剤としては、炭素数1〜20の炭化水素基を有する周期律表第1、2、12、13、14族の有機金属化合物を挙げることができる。そのなかでも、有機リチウム、有機マグネシウム、有機亜鉛、有機アルミニウム、または有機スズが好ましく用いられ、有機アルミニウムまたは有機スズが特に好ましく用いられる。有機リチウムとしては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウムなどを挙げることができる。有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミドなどを挙げることができる。有機亜鉛としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛などを挙げることができる。有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシドなどを挙げることができる。有機スズとしては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズなどを挙げることができる。有機金属還元剤の使用量は、式(1)で表される金属化合物に対して、0.1〜100モル倍が好ましく、0.2〜50モル倍がより好ましく、0.5〜20モル倍が特に好ましい。使用量が少なすぎると重合活性が向上しない場合があり、多すぎると副反応が起こりやすくなるおそれがある。
【0037】
開環重合体を得るための重合反応は、通常、有機溶媒中で行う。用いる有機溶媒は、生じる開環重合体やその水素添加物が所定の条件で溶解もしくは分散させることが可能であり、重合反応や水素化反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類;またはこれらの混合溶媒を挙げることができる。これらの溶媒のなかでも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類が好ましく用いられる。
【0038】
開環重合反応は、単量体と、式(1)で表される金属化合物と、必要に応じて有機金属還元剤とを混合することにより開始することができる。これらの成分を添加する順序は、特に限定されない。例えば、単量体に式(1)で表される金属化合物と有機金属還元剤との混合物を添加して混合してもよいし、有機金属還元剤に単量体と式(1)で表される金属化合物との混合物を添加して混合してもよく、また、単量体と有機金属還元剤との混合物に式(1)で表される金属化合物を添加して混合してもよい。また、各成分を混合するにあたっては、それぞれの成分の全量を一度に添加してもよいし、複数回に分けて添加してもよく、比較的に長い時間(例えば1分間以上)にわたって連続的に添加することもできる。
【0039】
有機溶媒中の重合反応時における単量体の濃度は、特に限定されないが、1〜50重量%であることが好ましく、2〜45重量%であることがより好ましく、3〜40重量%が特に好ましい。単量体の濃度が低すぎると重合体の生産性が悪くなるおそれがあり、高すぎる場合は重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素化反応が困難となる場合がある。
【0040】
重合反応系には、活性調整剤を添加してもよい。活性調整剤は、開環重合触媒の安定化、重合反応の速度および重合体の分子量分布を調整する目的で使用することができる。活性調整剤は、官能基を有する有機化合物であれば特に制限されないが、含酸素、含窒素、含りん有機化合物が好ましい。具体的には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フラン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチルアセテートなどのエステル類;アセトニトリルベンゾニトリルなどのニトリル類;トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、N,N−ジエチルアニリンなどのアミン類;ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2−t−ブチルピリジンなどのピリジン類;トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフェ−ト、トリメチルホスフェ−トなどのホスフィン類;トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフェ−ト、トリメチルホスフェ−トなどのホスフィン類;トリフェニルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド類;などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの活性調整剤は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。添加する活性調整剤の量は、特に限定されないが、通常、開環重合触媒として用いる金属化合物に対して0.01〜100モル%の間で選択すればよい。
【0041】
また、重合反応系には、開環重合体の分子量を調整するために分子量調整剤を添加してもよい。分子量調整剤としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレートなどの酸素含有ビニル化合物;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエン;を挙げることができる。添加する分子量調整剤の量は目的とする分子量に応じて決定すればよいが、通常、用いる単量体に対して、0.1〜50モル%の範囲で選択すればよい。
【0042】
重合温度は特に制限はないが、通常、−78℃〜+200℃の範囲であり、好ましくは−30℃〜+180℃の範囲である。重合時間は、特に制限はなく、反応規模にも依存するが、通常1分間から1000時間の範囲である。
【0043】
上述したような式(1)で表される金属化合物を含む開環重合触媒を用いて、上述したような条件でジシクロペンタジエンの開環重合反応を行うことにより、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体を得ることができる。水素化反応の条件を適切に設定すれば、水素化反応で開環重合体のタクチシチーが変化することはないので、このシンジオタクチック立体規則性を有する開環重合体を水素化反応に供することにより、目的のシンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を得ることができる。なお、開環重合体のシンジオタクチック立体規則性の度合いは、開環重合触媒の種類を選択することなどにより、調節することが可能である。
【0044】
水素化反応に供する開環重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算で1,000〜1,000,000であることが好ましく、2,000〜500,000であることがより好ましい。このような重量平均分子量を有する開環重合体を水素化反応に供することによって、特に成形加工性と耐熱性とのバランスに優れたジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を得ることができる。開環重合体の重量平均分子量は、重合時に用いる分子量調整剤の添加量などを調節することにより、調節することができる。
【0045】
水素化反応に供する開環重合体の分子量分布〔ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量と重量平均分子量との比(Mw/Mn)〕は、特に限定されないが、通常1.0〜4.0であり、好ましくは1.5〜3.5である。このような分子量分布を有する開環重合体を水素化反応に供することによって、特に成形加工性に優れたジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を得ることができる。開環重合体の分子量分布は、重合反応時における単量体の添加方法や単量体の濃度により、調節することができる。
【0046】
開環重合体の水素化反応は、水素化触媒の存在下で、反応系内に水素を供給することにより行うことができる。水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化に際して一般に使用されているものであれば使用可能であり、特に制限されないが、例えば、次のようなものが挙げられる。
【0047】
均一系触媒としては、遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒系、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウムなどの組み合わせが挙げられる。さらに、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムなどの貴金属錯体触媒を挙げることができる。
【0048】
不均一触媒としては、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、またはこれらの金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた固体触媒、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどの触媒系が挙げられる。
【0049】
水素化反応は、通常、不活性有機溶媒中で行う。このような不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂環族炭化水素;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;などが挙げられる。不活性有機溶媒は、通常は、重合反応に用いる溶媒と同じでよく、重合反応液にそのまま水素化触媒を添加して反応させればよい。
【0050】
水素化反応は、使用する水素化触媒系によっても適する条件範囲が異なるが、反応温度は通常−20℃〜+250℃、好ましくは−10℃〜+220℃、より好ましくは0℃〜200℃である。水素化温度が低すぎると反応速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると副反応が起こる場合がある。水素圧力は、通常0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜15MPa、より好ましくは0.1〜10MPaである。水素圧力が低すぎると水素化速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となる点において装置上の制約が生じる。反応時間は所望の水素化率とできれば特に限定されないが、通常0.1〜10時間である。水素化反応後は、常法に従って目的のジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を回収すればよく、回収にあたっては、ろ過などの手法により、触媒残渣を除去することができる。
【0051】
開環重合体の水素化反応における水素化率(水素化された主鎖二重結合の割合)は、特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高くなるほど、最終的に得られるジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の耐熱性が良好なものとなる。
【0052】
本発明の結晶性樹脂組成物は、例えば以上のようにして得られるシンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物と、前述の特定の条件を満たす無機結晶からなる結晶核剤とを混合することにより得ることができる。ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物に対する結晶核剤の混合量は、特に限定されず、任意の量とすることができるが、本発明の結晶性樹脂組成物では、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物100重量部に対する結晶核剤の含有量は、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましい。このような含有量となるように、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物と結晶核剤とを混合することにより、得られる結晶性樹脂組成物の結晶化度をより高いものとすることができる。
【0053】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物と結晶核剤とを混合する方法は、特に限定されず、任意の混合方法を適用できるが、溶融混合法、すなわち、溶融したジシクロペンタジエン開環重合体水素化物と結晶核剤とを混合(混練)する方法が好適である。ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を溶融させる場合のその加熱温度は、特に限定されないが、溶融させるジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の融点をTm(℃)とした場合に、Tm(℃)以上であることが好ましく、Tm+5〜Tm+100(℃)であることがより好ましく、Tm+10〜Tm+60(℃)であることがさらに好ましい。
【0054】
混合を溶融混合で行う場合の混合装置は、特に限定されず、任意の混合装置を用いることができ、例えば、二軸混練機などを用いることができる。
【0055】
本発明の結晶性樹脂組成物は、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物および結晶核剤のみからなるものであってよいが、本発明を逸脱しない範囲で、さらに他の成分を含有していてもよい。そのような他の成分の例としては、滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、無機充填剤、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、難燃剤、ワックスを挙げることができる。ただし、得られる成形体の変色や汚染を防止する観点からは、本発明の結晶性樹脂組成物は、ワックスを含有しないものであることが好ましい。
【0056】
本発明の結晶性樹脂組成物は、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形などの溶融成形法を適用することによって、所望の形状に成形することができる。また、本発明の結晶性樹脂組成物を用いて得られる成形体は、本発明の結晶性樹脂組成物の優れた耐熱性を活かせる用途に好適であり、例えば、コネクター、リレー、コンデンサ、センサー、アンテナ、ICトレイ、シャーシ、コイル封止、モーターケース、電源ボックスなどの電子部品;大型液晶表示装置のバックライトの光源、照明器具、携帯電話などの小型電子機器の液晶ディスプレイのバックライトの光源、道路交通表示板などの電光表示板の光源として用いられるLEDの反射体;車両用灯具のリフレクタ;自動車用モーターケース、センサケース、モジュール部品ケースなどの自動車部品;光学レンズ鏡筒;フレキシブルプリント基板;プリント配線板積層用離型フィルム;太陽電池用基板;電子レンジ、炊飯器、電動ジャーポット、乾燥洗濯機、食器洗い機、エアコンなどの家電部品;包装用、梱包用フィルム;食品用シート、トレイ;LEDモールド材;ポンプケーシング、インペラ、配管継ぎ手、浴室パネルなどの住設部品などとして用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0058】
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
【0059】
〔分子量測定〕
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム HLC−8220(東ソー社製)で、Hタイプカラム(東ソー社製)を用い、テトラヒドロフランを溶媒として40℃で測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
【0060】
〔開環重合体の主鎖の炭素−炭素二重結合のシス/トランス比の測定〕
1H−NMR測定により求めた。
【0061】
〔開環重合体水素化物の水素化率の測定〕
1H−NMR測定により求めた。
【0062】
〔開環重合体水素化物のメソ/ラセモ比の測定〕
オルトジクロロベンゼン−d
4を溶媒として、150℃でinverse−gated decoupling法を適用して
13C−NMR測定を行い、オルトジクロロベンゼン−d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比から求めた。
【0063】
〔示差走査熱量測定〕
示差走査熱量計装置(日立ハイテクサイエンス社製高感度型示差走査熱量計「EXSTAR X−DSC7000」)を用いて測定した。なお、温度と熱量の標準物質としてインジウム、スズ、鉛を用い校正した。
【0064】
〔開環重合体水素化物の融点の測定〕
試料となる開環重合体水素化物の結晶を、示差走査熱量計内で加熱することで完全に融解させた後、10℃/分の降温条件で室温まで冷却させ、次いで、10℃/分の昇温条件で320℃まで示差走査熱量測定を行ったときの結晶融解ピークの吸熱極大での温度を、その試料の融点であるとした。
【0065】
〔溶融結晶化温度測定(結晶化速度の評価)〕
組成物の結晶化速度を評価するための指標として、結晶化速度と強く相関することが知られている溶融結晶化温度を測定した。具体的には、試料となる組成物を320℃まで加熱した後、10℃/分の降温条件で示差走査熱量測定を行ったときの溶融結晶化温度を、その試料の溶融結晶化温度であるとした。溶融結晶化温度が高いものほど、結晶化速度が速い。
【0066】
〔溶融結晶化熱量測定(結晶化度の評価)〕
結晶した組成物の結晶化度を評価するための指標として、溶融結晶化熱量を測定した。具体的には、試料となる組成物を320℃まで加熱した後、10℃/分の降温条件で示差走査熱量測定を行ったときの溶融結晶化ピークの発熱量を、その試料の溶融結晶化熱量であるとした。溶融結晶化熱量が大きいものほど、結晶化度が高い。
【0067】
[製造例]
攪拌機付きガラス製反応器に、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド・テトラヒドロフランを0.060部およびシクロヘキサン1.0部を添加した。さらにジエチルアルミニウムエトキシド0.047部をヘキサン0.50部に溶解した溶液を添加して、これを室温で30分間反応させた。得られた混合物に、ジシクロペンタジエン7.5部、シクロヘキサン27.0部、1−オクテン5.0部を添加し、50℃において重合反応を行った。重合反応開始後、徐々に溶液の粘度が上昇した。3時間重合反応させた後、重合反応液に大量のイソプロピルアルコールを注いで沈殿物を凝集させ、濾別洗浄後、40℃で24時間減圧乾燥した。得られたジシクロペンタジエン開環重合体の収量は7.4部であり、その重量平均分子量は29,700であった。また、ジシクロペンタジエン開環重合体の主鎖の炭素−炭素二重結合のシス/トランス比は、93/7であった。次に、攪拌機付きオートクレーブに、得られたジシクロペンタジエン開環重合体3.0gおよびシクロヘキサン47gを加えた。そして、シクロヘキサン10mlにクロロヒドリドカルボニルビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム0.00165gを分散させたものをさらに添加し、水素圧4.0MPa、160℃で8時間水素化反応を行った。この水素化反応液を多量のアセトンに注いで生成したジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を完全に析出させ、濾別洗浄後、40℃で24時間減圧乾燥した。得られたジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の水素化率は99%以上であった。また、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物のメソ/ラセモ比は10/90(ラセモ・ダイアッドの割合90%)であり、シンジオタクチック立体規則性を有するものであった。また、減圧乾燥したジシクロペンタジエン開環重合体水素化物をそのまま試料として用いて測定された融点は265℃であった。
【0068】
〔実施例1〕
製造例で得られたシンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物100部を小型二軸混練機(パーカーコーポレーション社製「HK−20D」)に投入し、そこに、結晶核剤として、結晶核剤A0.2部を投入した。そして、混練機内部温度280℃、スクリュー回転数100回転/分、フィーダー回転数35回転/分の条件で、混練機内での樹脂滞留時間が60秒となるように、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物と結晶核剤とを混練した。混練後、得られたストランドは水で冷却した。なお、結晶核剤Aは、平均粒径0.014μm、BET比表面積130m
2/g、かさ比重0.15g/cm
3のθ−アルミナ(大明化学工業社製「TM−100」)であり、その結晶系は斜方晶で、3本の結晶軸の長さを表す格子定数a、b、およびcは、それぞれ、5.62Å、2.91Å、および11.79Åである。各実施例および各比較例で用いた結晶核剤として用いた結晶の詳細については、表1にまとめて示した。以上のように得られた実施例1の結晶性樹脂組成物については、示差走査熱量測定により、溶融結晶化温度および溶融結晶化熱量を測定した。各実施例および各比較例における、結晶核剤の種類、結晶核剤の添加量、溶融結晶化温度、および溶融結晶化熱量は、表2にまとめて示した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
〔実施例2〜10および比較例1〜7〕
結晶核剤の種類および添加量を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、結晶性樹脂組成物を得て、その溶融結晶化温度および溶融結晶化熱量を測定した。各実施例および各比較例における、結晶核剤の種類、結晶核剤の添加量、溶融結晶化温度、および溶融結晶化熱量は、表2にまとめて示したとおりである。
【0072】
表2に示した結果から明らかなように、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物に結晶軸の長さが特定の条件を満たす無機結晶からなる結晶核剤を添加して得た本発明の結晶性樹脂組成物(実施例1〜10)は、いずれも溶融結晶化温度が高く、かつ、溶融結晶化熱量が大きいものであることから、結晶化速度が速く、しかも、結晶化度が高いものであるといえる。一方、結晶核剤を添加していないシンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(比較例1)は、溶融結晶化温度が低く、かつ、溶融結晶化熱量が小さいものであることから、結晶化速度が遅く、しかも、結晶化度が低いものであるといえる。また、結晶軸の長さが特定の条件を満たさない無機結晶からなる結晶核剤を用いた結晶性樹脂組成物(比較例2〜7)は、いずれも溶融結晶化熱量が小さいものであることから、結晶化度が低いものであるといえ、しかも、溶融結晶化温度が低くなる場合もあることから、結晶化速度が遅くなる場合もあるといえる。