特許第6123899号(P6123899)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6123899板状体の加工方法、および電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6123899
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】板状体の加工方法、および電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/10 20060101AFI20170424BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   B24B9/10 Z
   B24B9/10 D
   B24B9/00 601C
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-530839(P2015-530839)
(86)(22)【出願日】2014年7月30日
(86)【国際出願番号】JP2014070062
(87)【国際公開番号】WO2015019916
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2016年2月10日
(31)【優先権主張番号】特願2013-164252(P2013-164252)
(32)【優先日】2013年8月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】立山 優貴
(72)【発明者】
【氏名】我妻 明
(72)【発明者】
【氏名】中西 正直
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/090787(WO,A1)
【文献】 特開2009−283545(JP,A)
【文献】 特開2010−205861(JP,A)
【文献】 特開平08−197400(JP,A)
【文献】 特開2001−009691(JP,A)
【文献】 特開2009−078326(JP,A)
【文献】 特開平11−262848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/00 − 9/10
B24D 3/06 − 3/14
C03C 19/00
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体の外周の少なくとも一部を弾性砥石によって面取りする面取り工程を有する板状体の加工方法であって、
前記板状体は、基板および該基板と剥離可能に結合する補強板を有する積層体であり、
前記補強板は、前記基板と剥離可能に結合する中間膜、および該中間膜を介して前記基板を支持する支持板を有し、
前記面取り工程において、前記弾性砥石の弾性変形によって前記弾性砥石の砥粒が前記基板と前記支持板との間に入り込むことで、前記基板における前記中間膜側の主面と側面との境界部、および、前記支持板における前記中間膜側の主面と側面との境界部が面取りされる、板状体の加工方法。
【請求項2】
前記面取り工程の前に、金属のボンドまたはセラミックのボンドを含む砥石によって前記板状体の外周の少なくとも一部を研削する研削工程をさらに有し、
前記面取り工程は、前記板状体の前記砥石によって研削された部分を前記弾性砥石によって面取りするものであり、
前記砥石は、円柱状または円錐台状であり、外周に前記板状体を研削する砥粒面を有し、該砥粒面に研削溝を有しない、請求項1に記載の板状体の加工方法。
【請求項3】
記砥石は、記研削工程において、前記板状体の主面に対して垂直または斜めの回転軸を中心に回転させられると共に前記板状体の外周に沿って相対的に移動させられ、
相対的な累積移動距離に応じて、前記砥石と前記板状体との前記板状体の主面に対して垂直な方向における相対位置が変更される、請求項2に記載の板状体の加工方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載された加工方法によって加工された積層体の基板上に機能膜を形成する工程と、
前記機能膜が形成された前記基板と前記補強板とを剥離する工程とを有する、電子デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記電子デバイスは画像表示装置である、請求項に記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体の加工方法、電子デバイスの製造方法、および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
板状体の外周部の加工には、例えば金属のボンドを含む砥石が用いられる(例えば特許文献1参照)。砥石は、円柱状であって、外周に板状体を研削する砥粒面を有する。砥石の中心軸は板状体の主面に対して垂直とされる。砥石は、その中心軸を中心に回転させられると共に板状体の外周に沿って相対的に移動させられ、板状体の外周の少なくとも一部を研削する。砥石は、断面V字状の研削溝を砥粒面に有し、研削溝の壁面で板状体を研削する。ここで、断面V字状の研削溝とは、研削溝の底部が尖ったものだけでなく、平たいものや丸いものを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2001−9689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
研削溝の壁面で板状体を研削するとき、板状体の主面と側面との境界部にクラックが発生しやすい。このクラックは、板状体の強度低下の原因になりうる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、板状体の強度を向上した板状体の加工方法の提供を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
板状体の外周の少なくとも一部を弾性砥石によって面取りする面取り工程を有する板状体の加工方法であって、
前記板状体は、基板および該基板と剥離可能に結合する補強板を有する積層体であり、
前記補強板は、前記基板と剥離可能に結合する中間膜、および該中間膜を介して前記基板を支持する支持板を有し、
前記面取り工程において、前記弾性砥石の弾性変形によって前記弾性砥石の砥粒が前記基板と前記支持板との間に入り込むことで、前記基板における前記中間膜側の主面と側面との境界部、および、前記支持板における前記中間膜側の主面と側面との境界部が面取りされる、板状体の加工方法が提供される。

【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、板状体の強度を向上した板状体の加工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1実施形態による加工前の積層体を示す側面図である。
図2図2は、図1の積層体を砥石によって研削する研削工程を示す図である。
図3図3は、図2の積層体を弾性砥石によって面取りする面取り工程を示す図である。
図4図4は、図3の積層体を用いたTFT基板作製工程を示す図である。
図5図5は、図3の積層体を用いたCF基板作製工程を示す図である。
図6図6は、図4のTFT基板と図5のCF基板との組み立て工程を示す図である。
図7図7は、図4の工程後または図5の工程後に行われる、剥離工程を示す図である。
図8図8は、図3の積層体を用いた有機EL素子形成工程を示す図である。
図9図9は、図8の工程後に行われる、貼り合わせ工程を示す図である。
図10図10は、図8の工程後に行われる、剥離工程を示す図である。
図11図11は、図3の積層体を用いた太陽電池素子形成工程を示す図である。
図12図12は、図11の工程後に行われる、剥離工程を示す図である。
図13図13は、本発明の第2実施形態による研削工程を示す図である。
図14図14は、本発明の第2実施形態による面取り工程を示す図である。
図15図15は、図3の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して、説明を省略する。尚、本実施形態の板状体は、複数の層によって構成される積層体であるが、1つの層によって構成される単板でもよい。また、本実施形態の積層体は、積層体を構成する複数の層のうち所定の層同士の間で剥離可能なものであるが、剥離困難なものでもよく、例えば液晶ディスプレイでもよい。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態による加工前の積層体を示す側面図である。加工前の積層体10は、例えば図1に示すようにガラス基板11およびガラス基板11と剥離可能に結合する補強板12を備える。積層体10は、後述の加工方法で加工された後、製品の製造に用いられる。1つの製品の製造に、複数の積層体10が用いられてもよい。製品としては、例えば画像表示装置、太陽電池、薄膜2次電池などの電子デバイスが挙げられる。画像表示装置としては、例えば液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイなどが挙げられる。
【0011】
ガラス基板11は、製品の一部となるものであって、ガラス基板11上には、製品の製造工程において、製品の種類に応じた機能膜が形成される。機能膜は、1つの層および複数の層のいずれで構成されてもよい。
【0012】
ガラス基板11のガラスとしては、例えば無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスなどが挙げられる。酸化物系ガラスは、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40質量%〜90質量%のガラスが好ましい。ガラス基板11のガラスは、製品の種類に応じて選択される。例えば、液晶ディスプレイの場合、アルカリ金属成分を実質的に含まないガラス(無アルカリガラス)が用いられる。
【0013】
ガラス基板11の厚さは、例えば0.3mm以下であり、より好ましくは0.1mm以下、さらに好ましくは0.05mm以下である。また、ガラス基板11の厚さは、成形性の観点から、好ましくは0.01mm以上である。
【0014】
補強板12は、補強板12とガラス基板11との剥離操作が行われるまで、ガラス基板11と結合し、ガラス基板11を補強する。補強板12の厚さは、ガラス基板11の厚さよりも厚くてよい。補強板12は、製品の製造工程の途中で、ガラス基板11から剥離され、製品の一部とはならない。
【0015】
補強板12は、熱処理による反りや剥離を防止するため、ガラス基板11との熱膨張差の小さいものが好ましい。そのため、補強板12はガラス板を含むものが好ましく、ガラス基板11のガラスと、補強板12のガラスとは同種のガラスであることが好ましい。
【0016】
補強板12は、例えば、ガラス基板11と剥離可能に結合する中間膜としての有機膜13、および有機膜13を介してガラス基板11を支持する支持板14を含む。有機膜13とガラス基板11とは、その間に作用するファンデルワールス力などにより剥離可能に結合される。
【0017】
有機膜13は、有機膜13とガラス基板11との剥離操作が行われるまで、ガラス基板11の位置ずれを防止する。有機膜13は剥離操作によってガラス基板11から容易に剥離する。剥離操作によるガラス基板11の破損を防止できる。
【0018】
有機膜13は、支持板14との結合力がガラス基板11との結合力よりも相対的に高くなるように形成される。剥離操作時に意図しない有機膜13と支持板14との剥離が防止できる。
【0019】
有機膜13は、例えば、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、またはポリイミドシリコーン樹脂などで形成される。耐熱性や剥離性の観点から、シリコーン樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂が好ましい。
【0020】
シリコーン樹脂は、日本国特開2011−46174号公報に開示のものが好ましい。具体的には、シリコーン樹脂は、下記線状オルガノポリシロキサン(a)と下記線状オルガノポリシロキサン(b)とを含む硬化性シリコーン樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。
【0021】
線状オルガノポリシロキサン(a)は、アルケニル基を1分子あたり少なくとも2個有するものである。
【0022】
線状オルガノポリシロキサン(b)は、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子あたり少なくとも3個有するものであって、かつ、ケイ素原子に結合した水素原子の少なくとも1個を分子末端に有するものである。
【0023】
硬化性シリコーン樹脂組成物における全アルケニル基に対する全ケイ素原子に結合した水素原子のモル比(水素原子/アルケニル基)は、0.7〜1.05であることが好ましい。
【0024】
硬化性シリコーン樹脂組成物は、ケイ素元素に結合した水素原子とアルケニル基との反応を促進する触媒などの添加物を含んでよい。触媒としては、例えば白金系、パラジウム系、ロジウム系などが挙げられる。
【0025】
有機膜13は、支持板14との結合力がガラス基板11との結合力よりも相対的に高くなるように形成されればよい。有機膜13の形成方法としては、下記の(1)〜(3)の方法がある。
【0026】
(1)支持板14上に塗布した樹脂組成物を硬化させて有機膜13を形成した後、有機膜13を介してガラス基板11と支持板14とを圧着する。支持板14と有機膜13の結合力が、ガラス基板11と有機膜13の結合力よりも高くなりやすい。
【0027】
(2)所定の基材上に塗布した樹脂組成物を硬化させて有機膜13を形成した後、所定の基材から有機膜13を剥離し、有機膜13を介してガラス基板11と支持板14とを圧着する。結合力に差を付けるため、ガラス基板11および支持板14の少なくとも一方の表面を予め表面処理してよい。
【0028】
(3)ガラス基板11と支持板14との間に挟んだ樹脂組成物を硬化させて有機膜13を形成する。結合力に差を付けるため、ガラス基板11および支持板14の少なくとも一方の表面を予め表面処理してよい。
【0029】
上記(1)及び(2)の方法における圧着は、クリーン度の高い環境下で実施されてよい。圧着時の周辺の気圧は、大気圧でもよいが、空気の噛み込みを抑制するため、大気圧よりも低い負圧であることが好ましい。圧着の方式としては、ロール式、プレス式などがある。圧着温度は、室温よりも高い温度でもよいが、有機膜の劣化を防止するため、室温であってよい。
【0030】
樹脂組成物は、縮合反応型、付加反応型、紫外線硬化型、電子線硬化型のいずれの仕組みで硬化するものでもよい。付加反応型の樹脂組成物は、硬化しやすく、剥離性に優れ、耐熱性も高いため、特に好ましい。
【0031】
また、樹脂組成物は、溶剤型、エマルジョン型、無溶剤型のいずれの形態で使用されるものでよいが、生産性、環境特性の観点で、無溶剤型が好ましい。また、無溶剤型の樹脂組成物は、硬化時に発泡しうる溶剤を含まないため、欠陥の少ない有機膜13が得られる。
【0032】
樹脂組成物の塗布方法としては、例えばスプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法などがある。これらの塗布方法は、樹脂組成物の種類に応じて適宜選択される。
【0033】
有機膜13の厚さは、好ましくは100μm以下である。有機膜13の厚さが100μmを超えると、有機膜13の材料費が高く、また、有機膜13にクラックが生じやすい。クラックが生じる原因としては、(1)樹脂組成物の乾燥収縮、(2)樹脂組成物の硬化収縮、(3)ガラスと樹脂との熱膨張差が挙げられる。(1)は樹脂組成物が溶剤を含む場合に生じる。溶剤が蒸発して樹脂組成物が収縮するとき、その収縮が樹脂組成物を支持する基板によって妨げられ、応力が生じ、クラックが生じる。(2)の場合、硬化反応による水などの生成物が脱けることによって、クラックが生じる。(3)の場合、乾燥後、冷却時に、樹脂の熱収縮がガラスの熱収縮よりも著しく大きいために、クラックが生じる。有機膜13の厚さは、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。
【0034】
また、有機膜13の厚さは、好ましくは1μm以上である。有機膜13に異物が埋没できる。硬化前、樹脂組成物は流動性を有するので、樹脂組成物に異物が埋没する。硬化後、積層前に、有機膜13とガラス基板11との間に異物が入る場合、有機膜13が弾性変形することによって有機膜13に異物が埋没する。
【0035】
有機膜13の外形は、有機膜13がガラス基板11の全体を支持できるように、図1に示すようにガラス基板11の外形と同一か、ガラス基板11の外形よりも大きいことが好ましい。有機膜13の外形がガラス基板11の外形よりも大きいと、有機膜13のガラス基板11からはみ出す部分を撓み変形させることで補強板12とガラス基板11との剥離が徐々に行われ、剥離が円滑に行われる。
【0036】
尚、本実施形態の有機膜13は、1種類の有機膜からなるが、複数種類の有機膜からなっていてもよい。この場合、「中間膜の厚さ」は全ての有機膜の合計の厚さを意味する。
【0037】
支持板14は、有機膜13を介してガラス基板11を支持する。支持板14は、ガラス基板11との熱膨張差の小さいガラス板であることが好ましい。
【0038】
支持板14としてのガラス板の厚さは、好ましくは0.7mm以下である。また、支持板14としてのガラス板の厚さは、ガラス基板11の補強のため、好ましくは0.4mm以上である。
【0039】
支持板14の外形は、支持板14が有機膜13の全体を支持できるように、図1に示すように有機膜13の外形と同一であるか、有機膜13の外形よりも大きいことが好ましい。
【0040】
尚、本実施形態の支持板14は、ガラス板のみからなる単板であるが、ガラス板および樹脂膜からなる複合板でもよい。
【0041】
図2は、図1の積層体を砥石によって研削する研削工程を示す図である。図3は、図2の積層体を弾性砥石によって面取りする面取り工程を示す図である。図15は、図3の一部拡大図である。
【0042】
積層体10の加工方法は、研削工程(図2参照)と、面取り工程(図3および図15参照)とを有する。研削工程は、積層体を所望の寸法に整えると共に、ガラス基板の側面、有機膜の側面、および支持板の側面を面一にする工程である。面取り工程は、研削工程によって得られる積層体を面取りする工程である。
【0043】
研削工程では、砥石20によって積層体10の外周の少なくとも一部を研削し、積層体10Aを得る。図2に示す積層体10Aは、図1に示す積層体10を砥石20によって研削したものである。
【0044】
砥石20は、円柱状(円盤状を含む)であって、外周に積層体10を研削する砥粒面を有する。砥粒面は、全体又は一部が若干の湾曲形状をしていてもよい。砥石20の中心軸は例えば積層体10の主面に対して垂直とされ、砥石20の中心軸上に回転軸が配設される。砥石20は、その中心軸を中心に回転させられると共に積層体10の外周に沿って相対的に移動させられ、積層体10の外周の少なくとも一部を研削する。砥石20および積層体10が相対的に移動させられるとき、どちらが移動させられてもよく、両方が移動させられてもよい。
【0045】
砥石20のボンドは、金属またはセラミックを含む。金属のボンドを含む砥石としては、メタルボンド砥石、電着砥石が挙げられる。メタルボンド砥石は、金属粉末および砥粒を焼結したものである。電着砥石は、メッキ層に砥粒を固着させたものである。砥石20のボンドは、金属を含む場合、例えば銅、鉄、タングステン、スズ、およびニッケルから選ばれる少なくとも1種類を含む。セラミックスのボンドを含む砥石としては、ビトリファイドボンド砥石が挙げられる。金属のボンドまたはセラミックスのボンドを含む砥石20を用いると、研削効率が良く、積層体を所望の寸法に整える時間が短い。
【0046】
砥石20の砥粒は、例えばダイヤモンド、CBN(Cubic boron nitride)、炭化ケイ素、アルミナ、ガーネット、天然石(例えば軽石)から選ばれる少なくとも1種類を含む。
【0047】
研削工程によって得られる積層体10Aは、加工前の積層体10と同様に、ガラス基板11Aおよび補強板12Aを有する。この補強板12Aは、加工前の補強板12と同様に、有機膜13Aおよび支持板14Aを有する。
【0048】
ガラス基板11Aの側面、有機膜13Aの側面、および支持板14Aの側面は砥石20によって面一とされ、積層体10Aの側面は積層体10Aの主面に対して垂直とされる。
【0049】
研削工程において、積層体10Aの主面と側面との境界部15A、16Aには、クラックが発生しやすい。
【0050】
面取り工程では、積層体10Aの砥石20によって研削された部分を弾性砥石30によって面取りし、積層体10Bを得る。図3に示す積層体10Bは、図2に示す積層体10Aを弾性砥石30によって面取りしたものである。
【0051】
弾性砥石30は、円柱状であって、外周に積層体10Aを研削する砥粒面を有する。砥粒面は、全体又は一部が若干の湾曲形状をしていてもよい。弾性砥石30は、積層体10Aが挿入される凹部を砥粒面に有してよい。弾性砥石30の中心軸は積層体10Aの主面に対して垂直とされ、弾性砥石30の中心軸上に回転軸が配設される。弾性砥石30は、その中心軸を中心に回転させられる共に積層体10Aの外周に沿って相対的に移動させられ、積層体10Aの砥石20によって研削された部分を研削する。弾性砥石30および積層体10Aが相対的に移動させられるとき、どちらが移動させられてもよく、両方が移動させられてもよい。
【0052】
弾性砥石30は、積層体10Aの主面と垂直な方向に積層体10Aに押し付けられ、積層体10Aの側面に面接触するように弾性変形する。弾性砥石30のボンドは、弾性を有する材料を含み、例えばフェノール、エポキシ、ポリイミド、シリコーン、ポリウレタン、ブチルゴム、天然ゴムから選ばれる少なくとも1種類を含む。弾性砥石30の砥粒は、例えばダイヤモンド、CBN(Cubic boron nitride)、炭化ケイ素、アルミナ、ガーネット、天然石(例えば軽石)から選ばれる少なくとも1種類を含む。
【0053】
弾性砥石30は、図2に示す積層体10Aの主面と側面との境界部15A、16Aを削り、図3に示す面取り部15B、16Bを作成する。面取り部15B、16Bは、丸みを帯びた曲面であってよい。
【0054】
ところで、本実施形態では、研削工程で用いられる砥石20が研削溝を砥粒面に有しない。この砥粒面には凹凸がない。よって、従来のように砥石が断面V字状の研削溝を有する場合と異なり、研削工程によって得られる積層体10Aの側面が積層体10Aの主面に対して垂直となり、積層体10Aの側面と主面との境界部15A、16Aよりも外側に突出した部分がない。そのため、面取り工程において境界部15A、16Aに応力が集中しやすく、境界部15A、16Aが弾性砥石30によって集中的に削られやすい。研削工程によって境界部15A、16Aに形成されたクラックが効率的に除去でき、面取り工程によって得られる積層体10Bの強度が向上する。
【0055】
また、砥石20が研削溝を有しないことで別の効果が得られる。例えば、本実施形態によれば、研削工程においてガラス基板および支持板が有機膜近傍において欠けにくく、欠片によるメタボンド砥石の損傷が制限できる。従来のように断面V字状の研削溝が存在すると、研削工程においてガラス基板および支持板の少なくとも一方が尖鋭化し、材料の異なる有機膜近傍において欠けやすい。また、その欠片によって砥石が損傷しやすい。また、本実施形態によれば、研削溝がない分、砥石の製造コストが低減できる。
【0056】
また、砥石20が研削溝を有しないため、砥石20と積層体10との相対的な累積移動距離に応じて、砥石20と積層体10との積層体10の主面に対して垂直な方向(図2において上下方向)における相対位置が変更されてよい。この変更は、1枚以上の積層体10を研削する研削工程において行われる。例えば、この変更は、所定枚数の積層体10を加工する度に行われる。この変更の前後で、得られる積層体10Aの形状は変わらない。砥石20に研削溝が存在しないためである。この変更によって、砥石20における積層体10との接触位置が変更され、砥石20の偏摩耗が防止できる。
【0057】
尚、本実施形態では、砥石20と積層体10との相対位置の変更を、一の積層体10の加工後であって別の積層体10の加工前に行うが、一の積層体10の加工途中で行ってもよい。砥石20と積層体10との相対的な累積移動距離の起算時は、砥石20の使用開始時でもよいし、ユーザの指定した時点でもよい。
【0058】
面取り工程によって得られる積層体10Bは、加工前の積層体10と同様に、ガラス基板11Bおよび補強板12Bを有する。この補強板12Bは、加工前の補強板12と同様に、有機膜13Bおよび支持板14Bを有する。
【0059】
本実施形態では、面取り工程で用いられる弾性砥石30が有機膜13Bを選択的に削る。有機膜13Bは、ガラス基板11Bおよび支持板14Bよりも柔らかく、選択的に削られる。図15に示すように、ガラス基板11Bを削る砥粒30a−1および支持板14Bを削る砥粒30a−2が押し返されるのに対し、有機膜13Bを削る砥粒30a−3は有機膜13Bに入り込む。これは、弾性砥石30の弾性変形によって可能である。このように、弾性砥石30の弾性変形によって弾性砥石30の砥粒30a−3がガラス基板11Bと支持板14Bとの間に入り込む。その結果、ガラス基板11Bにおける有機膜13B側の主面と側面との境界部に面取り部18Bが形成され、支持板14Bにおける有機膜13B側の主面と側面との境界部に面取り部19Bが形成される。面取り部18B、19Bは、丸みを帯びた曲面であってよい。
【0060】
面取り部18B、19B同士の間の隙間は外方に向けて拡開する。そのため、後述の剥離工程において面取り部18B、19B同士の間に外方から刃先が挿入しやすい。刃先を挿入することによってガラス基板11Bと支持板14Bとが離れ、結合力の低いガラス基板11Bと有機膜13Bとの間に剥離起点が形成される。
【0061】
面取り部18B、19Bが形成されるため、研削工程においてガラス基板11Aの境界部18Aおよび支持板14Aの境界部19Aに発生しうるクラックやチッピングが面取り工程において除去できる。これにより、面取り工程によって得られるガラス基板11Bの端面強度や支持板14Bの端面強度が向上し、剥離操作時にガラス基板11Bの破損や支持板14Bの破損が抑制できる。
【0062】
次に、上記加工方法によって得られる積層体10Bを用いた電子デバイスの製造方法について説明する。電子デバイスの製造方法は、積層体10Bのガラス基板11B上に機能膜を形成する工程と、機能膜を形成したガラス基板11Bと補強板12Bとを剥離する工程とを有する。以下、具体例について説明する。
【0063】
液晶ディスプレイの製造方法は、例えば、TFT基板作製工程(図4参照)、CF基板作製工程(図5参照)、組み立て工程(図6参照)、および剥離工程(図7参照)を有する。
【0064】
TFT基板作製工程では、図4に示すように、積層体10Bのガラス基板11B上に薄膜トランジスタ(TFT)41などを形成してTFT基板42を作製する。TFT基板42は、ガラス基板11Bおよび薄膜トランジスタ41などを含む。TFT基板42の作製方法は、一般的なものであるので、説明を省略する。
【0065】
CF基板作製工程では、図5に示すように、別の積層体10Bのガラス基板11B上にカラーフィルタ43などを形成してCF基板44を作製する。CF基板44は、ガラス基板11Bおよびカラーフィルタ43などを含む。CF基板44の作製方法は、一般的なものであるので、説明を省略する。
【0066】
組み立て工程は、図6に示すように、TFT基板42とCF基板44との間に液晶材45を封止する工程を有する。TFT基板42とCF基板44との間に液晶材45を注入する方法は、減圧注入法、滴下注入法のいずれでもよい。
【0067】
剥離工程では、図7に示すように、ガラス基板11Bと補強板12Bとを剥離する。ガラス基板11Bは液晶ディスプレイの一部となり、補強板12Bは液晶ディスプレイの一部とならない。剥離工程は、本実施形態では組み立て工程の後に行われるが、TFT基板作製工程およびCF基板作製工程の後であればよく、組み立て工程の前、または、組み立て工程の途中で行われてもよい。
【0068】
尚、本実施形態では、薄膜トランジスタ41およびカラーフィルタ43をそれぞれ別の積層体10Bのガラス基板11B上に形成したが、いずれかを単板のガラス基上に形成してもよい。
【0069】
有機ELディスプレイ(OLED)の製造方法は、例えば、有機EL素子形成工程(図8参照)、貼り合わせ工程(図9参照)、および剥離工程(図10参照)を有する。
【0070】
有機EL素子形成工程では、図8に示すように、積層体10Bのガラス基板11B上に有機EL素子51を形成する。有機EL素子51は、例えば、透明電極層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層などからなる。有機EL素子51の形成方法は、一般的な方法であるので、説明を省略する。
【0071】
貼り合わせ工程では、図9に示すように、有機EL素子51が形成されたガラス基板11Bと対向基板52とを貼り合わせる。
【0072】
剥離工程では、図10に示すように、ガラス基板11Bと補強板12Bとを剥離する。ガラス基板11Bは有機ELディスプレイの一部となり、補強板12Bは有機ELディスプレイの一部とならない。剥離工程は、本実施形態では貼り合わせ工程の後に行われるが、有機EL素子形成工程の後に行われればよく、貼り合わせ工程の前、または、貼り合わせ工程の途中で行われてもよい。
【0073】
太陽電池の製造方法は、太陽電池素子形成工程(図11参照)、および剥離工程(図12参照)を有する。
【0074】
太陽電池素子形成工程では、図11に示すように、積層体10Bのガラス基板11B上に太陽電池素子61を形成する。太陽電池素子61は、例えば、透明電極層、半導体層などからなる。太陽電池素子61の形成方法は、一般的な方法であるので、説明を省略する。
【0075】
剥離工程では、図12に示すように、ガラス基板11Bと補強板12Bとを剥離する。ガラス基板11Bは太陽電池の一部となり、補強板12Bは太陽電池の一部とならない。剥離工程は、太陽電池素子形成工程の後に行われてよい。
【0076】
[第2実施形態]
第2実施形態の積層体の加工方法は、砥石が円錐台状である点で、上記第1実施形態の積層体の加工方法とは異なる。以下、相違点を中心に説明する。
【0077】
積層体10の加工方法は、研削工程(図13参照)と、面取り工程(図14参照)とを有する。
【0078】
研削工程では、砥石120によって積層体10の外周の少なくとも一部を研削し、積層体110Aを得る。図13に示す積層体110Aは、図1に示す積層体10を砥石120によって研削したものである。
【0079】
砥石120は、円錐台状であって、外周に積層体10を研削する砥粒面を有する。砥石120の中心軸は例えば積層体10の主面に対して垂直とされ、砥石120の中心軸上に回転軸が配設される。砥石120は、その中心軸を中心に回転させられると共に積層体10の外周に沿って相対的に移動させられ、積層体10の外周の少なくとも一部を研削する。
【0080】
研削工程によって得られる積層体110Aは、加工前の積層体10と同様に、ガラス基板111Aおよび補強板112Aを有する。この補強板112Aは、加工前の補強板12と同様に、有機膜113Aおよび支持板114Aを有する。
【0081】
ガラス基板111Aの側面、有機膜113Aの側面、および支持板114Aの側面は砥石120によって面一とされ、積層体110Aの側面は積層体110Aの主面に対して斜めとされる。支持板114Aは、ガラス基板111Aよりも外側に突出し、ガラス基板111Aの側面を保護する。積層体110Aの主面に対して垂直な位置決めピンなどの物体が積層体110Aの側面に当たるとき、支持板114Aの側面に物体が当たり、ガラス基板111Aの側面には物体が当たらない。よって、製品の一部となるガラス基板111Aの破損が防止できる。
【0082】
研削工程において、積層体110Aの主面と側面との境界部115A、116Aには、クラックが発生しやすい。境界部115A、116Aのうち、尖鋭化される境界部において、クラックがより発生しやすい。本実施形態では、支持板114Aの主面と側面の境界部116Aが尖鋭化され、境界部116Aにおいてクラックがより発生しやすい。
【0083】
面取り工程では、積層体110Aの砥石120によって研削された部分を弾性砥石130によって面取りし、積層体110Bを得る。図14に示す積層体110Bは、図13に示す積層体110Aを弾性砥石130によって面取りしたものである。
【0084】
弾性砥石130は、その形状が円錐台状である点を除き、図3に示す弾性砥石30と同様に構成される。尚、弾性砥石130は、円柱状であってもよい。弾性砥石130は、積層体110Aの主面と垂直な方向に積層体110Aに押し付けられ、積層体110Aの側面に面接触するように弾性変形する。
【0085】
弾性砥石130は、図13に示す積層体110Aの主面と側面との境界部115A、116Aを削り、図14に示す面取り部115B、116Bを作成する。面取り部115B、116Bは、丸みを帯びた曲面であってよい。
【0086】
本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、砥石120が研削溝を砥粒面に有しない。この砥粒面には凹凸がない。よって、従来のように砥石が断面V字状の研削溝を有する場合と異なり、研削工程によって得られる積層体110Aの側面が積層体110Aの主面に対して斜めとなる。そのため、積層体110Aの側面と主面との境界部115A、116Aの一方(本実施形態では境界部116A)よりも外側に突出した部分がない。よって、面取り工程において上記一方の境界部116Aに応力が集中しやすく、上記一方の境界部116Aが弾性砥石130によって集中的に削られやすい。研削工程によって境界部116Aに形成されたクラックが効率的に除去でき、面取り工程によって得られる積層体110Bの強度が向上する。
【0087】
また、砥石120が研削溝を有しないことで別の効果が得られる。例えば、研削溝がない分、砥石の製造コストが低減できる。また、第1実施形態と同様に、砥石120と積層体110との相対的な累積移動距離に応じて、砥石120と積層体110との積層体110の主面に対して垂直な方向(図13において上下方向)における相対位置が変更できる。その結果、砥石120の偏摩耗が防止できる。尚、本実施形態では、砥石120と積層体110とが接触するように、積層体110の主面と垂直な方向とは別の方向(図13において左右方向)における砥石120と積層体110との相対位置も同時に変更される。
【0088】
面取り工程によって得られる積層体110Bは、加工前の積層体10と同様に、ガラス基板111Bおよび補強板112Bを有する。この補強板112Bは、加工前の補強板12と同様に、有機膜113Bおよび支持板114Bを有する。支持板114Bは、ガラス基板111Bよりも外側に突出し、ガラス基板111Bの側面を保護する。積層体110Bの主面に対して垂直な位置決めピンなどの物体が積層体110Bの側面に当たるとき、支持板114Bの側面に物体が当たり、ガラス基板111Bの側面には物体が当たらない。よって、製品の一部となるガラス基板111Bの破損が防止できる。
【0089】
また、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、弾性砥石130の弾性変形によって弾性砥石130の砥粒がガラス基板111Bと支持板114Bとの間に入り込む。その結果、ガラス基板111Bにおける有機膜113B側の主面と側面との境界部に面取り部118Bが形成され、支持板114Bにおける有機膜113B側の主面と側面との境界部に面取り部119Bが形成される。面取り部118B、119Bは、丸みを帯びた曲面であってよい。
【0090】
面取り部118B、119B同士の間の隙間は外方に向けて拡開する。そのため、剥離工程において面取り部118B、119B同士の間に外方から刃先が挿入しやすい。刃先の挿入によって、結合力の低いガラス基板111Bと有機膜113Bとの間に剥離起点が形成される。
【0091】
面取り部118B、119Bが形成されるため、研削工程においてガラス基板111Aの境界部118Aおよび支持板114Aの境界部119Aに発生しうるクラックやチッピングが面取り工程において除去できる。これにより、面取り工程によって得られるガラス基板111Bの端面強度や支持板114Bの端面強度が向上し、剥離操作時にガラス基板111Bの破損や支持板114Bの破損が抑制できる。
【0092】
上記加工方法によって得られる積層体110Bは、図3に示す積層体10Bと同様に、電子デバイスの製造に用いられる。
【0093】
以上、積層体の加工方法などの実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されず、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0094】
例えば、上記実施形態では、補強板の中間膜として有機膜が用いられるが、無機膜が用いられてもよい。無機膜は、例えばメタルシリサイド、窒化物、炭化物、および炭窒化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0095】
メタルシリサイドは、例えばW、Fe、Mn、Mg、Mo、Cr、Ru、Re、Co、Ni、Ta、Ti、Zr、およびBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むものであり、好ましくはタングステンシリサイドである。
【0096】
窒化物は、例えばSi、Hf、Zr、Ta、Ti、Nb、Na、Co、Al、Zn、Pb、Mg、Sn、In、B、Cr、Mo、およびBaからなる群から選択される少なくとも1種を含むものであり、好ましくは窒化アルミニウム、窒化チタン、または窒化ケイ素である。
【0097】
炭化物は、例えばTi、W、Si、Zr、およびNbからなる群から選択される少なくとも1種を含むものであり、好ましくは炭化ケイ素である。
【0098】
炭窒化物は、例えばTi、W、Si、Zr、およびNbからなる群から選択される少なくとも1種を含むものであり、好ましくは炭窒化ケイ素である。
【0099】
メタルシリサイド、窒化物、炭化物、および炭窒化物は、その材料に含まれるSi、NまたはCと、その材料に含まれる他の元素との間の電気陰性度の差が小さく、分極が小さい。そのため、無機膜と水との反応性が低く、無機膜の表面に水酸基が生じにくい。よって、無機膜とガラス基板との離型性が良好に保たれる。
【0100】
中間膜としての無機膜は、ガラス基板や支持板よりも柔らかいことが好ましい。面取り工程において無機膜が選択的に削られ、ガラス基板における無機膜側の主面と側面との境界部、および支持板における無機膜側の主面と側面との境界部が面取りできる。尚、中間膜としての無機膜がガラス基板や支持板よりも脆い場合も同様の効果が得られる。
【0101】
また、上記実施形態の補強板は中間膜と支持板とを有するが、中間膜は無くてもよい。例えば、補強板はガラス板のみで構成され、補強板としてのガラス板とガラス基板11とが直接接触していてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、基板としてガラス基板が用いられるが、セラミック基板、樹脂基板、金属基板などが用いられてもよい。同様に、上記実施形態では支持板としてガラス板が用いられるが、セラミック板、樹脂板、金属板などが用いられてもよい。
【0103】
また、上記実施形態の面取り工程に供される積層体は、研削溝のない砥石によって研削されたものであるが、研削溝付きの砥石によって研削されたものでもよいし、切断器によって切断されたものでもよい。いずれの場合も、面取り工程において、基板における中間膜側の主面と側面との境界部、および、支持板における中間膜側の主面と側面との境界部が面取りできる。
【0104】
また、上記実施形態の研削工程は、面取り工程の前に行われるものであるが、面取り工程を前提としないものでもよい。研削溝のない砥石と板状体との相対的な累積移動距離に応じて、砥石と板状体との板状体の主面と垂直な方向における相対位置を変更すれば、砥石の偏摩耗が抑制できる。
【0105】
また、図2に示す砥石20の中心軸は、積層体10の主面に対して垂直とされるが、斜めとされてもよい。この場合、図13に示す積層体110Aと同じ形状のものが研削工程によって得られる。また、この場合、砥石20と積層体10との相対的な累積移動距離に応じて、砥石20と積層体10との積層体10の主面に対して垂直な方向における相対位置が変更されてよい。砥石20の偏摩耗が防止できる。尚、この場合、砥石20と積層体10とが接触するように、第2実施形態と同様に、積層体10の主面に対して垂直な方向とは別の方向における砥石20と積層体10との相対位置も同時に変更される。
【0106】
本出願は、2013年8月7日出願の日本特許出願2013−164252に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0107】
10、10A、10B 積層体
11、11A、11B ガラス基板
12、12A、12B 補強板
13、13A、13B 有機膜
14、14A、14B 支持板
18A、19A 境界部
18B、19B 面取り部
20 砥石
30 弾性砥石
30a−1、30a−2、30a−3 砥粒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15