(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記乾燥加熱炉が、乾燥加熱ロータリーキルンであり、該乾燥加熱ロータリーキルンによる乾燥加熱を1100℃以上1150℃以下で行う請求項1から4のいずれかに記載の酸化亜鉛鉱の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、亜鉛製錬所における亜鉛地金の原料として、粗酸化亜鉛等の亜鉛含有鉱から不純物を分離除去して得た酸化亜鉛鉱が広く用いられている。
【0003】
粗酸化亜鉛は、例えば、鉄鋼業における高炉や電気炉等の製鋼炉から発生する鉄鋼ダストから還元焙焼処理を経て得ることができる。資源リサイクルの促進の観点からは、鉄鋼ダストの亜鉛原料としての再利用は望ましいものである。しかし、一方で特にこのような鉄鋼ダスト由来の粗酸化亜鉛には、その主成分である酸化亜鉛以外に、フッ素等のハロゲンが不純物として含有されている。
【0004】
鉄鋼ダスト中の鉄と亜鉛を分離させる方法の一例として、ロータリーキルンを用いた還元培焼法がある。この方法では、亜鉛はキルン炉内で還元され、次いで、金属亜鉛として揮発する。気体として一旦ガス側に分離された金属亜鉛は速やかに周辺の酸素と反応して酸化亜鉛となって固形化した後、ハロゲン、キルンよりキャリーオーバーした鉄鋼ダスト、亜鉛と同様な挙動の有価金属等と混合した粒子状粗酸化亜鉛として電気集塵機等で捕集される。
【0005】
最終製品である亜鉛における上記の不純物の濃度は当然に極めて低いものであることが求められる。酸化亜鉛鉱をISP製錬法や電解製錬法を採用している亜鉛製錬の原料として用いるためには、それぞれの製錬法で許容される値にまで、酸化亜鉛鉱のハロゲン濃度を低減する必要がある。粗酸化亜鉛からのハロゲンの分離除去処理としては、粗酸化亜鉛をアルカリ洗浄する方法(特許文献1参照)、乾燥加熱炉で分解させる方法(特許文献2参照)、原料の二酸化ケイ素含有量の調整によるフッ素分解揮発量の増量調整方法(特許文献3参照)等がある。しかし、塩素とフッ素の精製原理が本質的に異なること、粗酸化亜鉛ダスト中には未反応のままキャリーオーバーした鉄鋼ダストが含まれていること等の理由により、工業的にはこれらの方法を組み合わせた形態による分離除去処理が一般的に行われている。
【0006】
しかし、複数の分離除去処理を組み合わせたトータルプロセスとなっている従来の酸化亜鉛鉱の製造プロセスにおいて、その最終生成物である酸化亜鉛鉱のハロゲン濃度を厳密に管理することは極めて困難であった。特に、電解製錬向け酸化亜鉛鉱については、電解採取工程で使用されるアルミニウム製パーマネントカソードの腐食進行を抑制するために、酸化亜鉛鉱のフッ素濃度を0.05質量%未満にまで低減する必要がある。このような高精度のハロゲン除去処理を行うためには酸化亜鉛鉱の生産性をある程度犠牲にすることも容認せざるをえないのが現状であり、酸化亜鉛鉱の生産プロセスにおいては、このようなフッ素成分の分離処理方法のさらなる改善が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、酸化亜鉛鉱の製造において、酸化亜鉛鉱の生産性を維持したまま、酸化亜鉛鉱のフッ素濃度を、極めて低い濃度にまで容易に低減することができる酸化亜鉛鉱の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
粗酸化亜鉛から酸化亜鉛鉱を製造するトータルプロセスにおいて、乾燥加熱処理によって排出される排ガスダストは、従来洗浄してハロゲンを低減した後、乾燥加熱工程その他に繰り返して再処理されている。本発明者らはこの乾燥加熱処理によって排出される排ガスダストの洗浄後のケーキのフッ素濃度を測定し、その濃度が所定の基準濃度以内であるか否かを判断基準として、排ガスダストを製造ラインへ繰り返して循環投入するか、或いは、製造ラインから排出するかを判断するという処理を行うことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
(1) フッ素を含有する原料鉱から酸化亜鉛鉱を製造する酸化亜鉛鉱の製造方法であって、還元焙焼工程後の粗酸化亜鉛に湿式処理を施して、前記フッ素を除去する湿式工程と、前記湿式工程後の粗酸化亜鉛ケーキを乾燥加熱炉で乾燥する乾燥加熱工程と、前記乾燥加熱工程で発生した排ガスダストを洗浄して排ガスダストケーキを得て、該排ガスダストケーキの全フッ素濃度の測定を行う排ガスダスト洗浄工程と、を備え、前記洗浄後の排ガスダストケーキを、処理系外へ排出するか、或いは、前記乾燥加熱炉又はその上流側へ循環投入するかを、下記(i)から(iii)の判断基準に従って決定する運転制御を行うことにより、前記酸化亜鉛鉱のフッ素濃度を0.05質量%以下に維持する酸化亜鉛鉱の製造方法。
(i) 初期状態においては、前記排ガスダストケーキは、前記乾燥加熱炉又はその上流側への循環投入を行う。
(ii) 前記循環投入の継続中においては、前記全フッ素濃度が、所定の上限判別濃度を超えた場合に、前記排ガスダストケーキの処理系外への排出を開始する。
(iii) 前記処理系外への排出の継続中においては、前記全フッ素濃度が、前記上限判別濃度よりも低い濃度として設定される所定の下限判別濃度未満となった場合に、前記処理系外への排出を中止して、前記排ガスダストケーキの前記循環投入を開始する。
【0011】
(2) 前記下限判別濃度及び上限判別濃度を、それぞれ2.5質量%から3.5質量%の範囲内で個別に設定する(1)に記載の酸化亜鉛鉱の製造方法。
【0012】
(3) 前記下限判別濃度を2.5質量%とし、前記上限判別濃度を3.5質量%とする(1)又は(2)に記載の酸化亜鉛鉱の製造方法。
【0013】
(4) 前記還元焙焼工程後の粗酸化亜鉛中のフッ素濃度が0.2質量%以上0.3質量%未満である(1)から(3)のいずれかに記載の酸化亜鉛鉱の製造方法。
【0014】
(5) 前記乾燥加熱炉が、乾燥加熱ロータリーキルンであり、該乾燥加熱ロータリーキルンによる乾燥加熱を1100℃以上1150℃以下で行う(1)から(4)のいずれかに記載の酸化亜鉛鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フッ素を含有する原料鉱から酸化亜鉛鉱を製造するプロセスにおいて、還元焙焼炉から回収される粗酸化亜鉛中に含有されているフッ素濃度を容易に管理することが可能であり、且つ、精製後の酸化亜鉛鉱のフッ素濃度を、例えば、電解製錬向け酸化亜鉛鉱に求められるような極めて低い濃度に容易に調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
<全体プロセス>
図1に示すように、本実施例の酸化亜鉛鉱の製造方法は、鉄鋼ダスト等を還元焙焼して粗酸化亜鉛を得る還元焙焼工程S10、還元焙焼工程S10で得た粗酸化亜鉛から、ハロゲン等を処理液中に分離除去して粗酸化亜鉛ケーキを得る湿式工程S20、及び、湿式工程S20で得た粗酸化亜鉛ケーキを乾燥加熱して酸化亜鉛鉱を得る乾燥加熱工程S30、乾燥加熱工程S30で発生した排ガスダストを洗浄して洗浄後の排ガスダストケーキを得る排ガスダスト洗浄工程S40と、を備える全体プロセスである。
【0019】
本実施例の酸化亜鉛鉱の製造方法は、特に排ガスダスト洗浄工程S40において得ることのできる洗浄後の排ガスダストケーキのフッ素濃度の推移に着目し、当該濃度が所定範囲内にあるか否かによって、該排ガスダストのシステム内での処理方法を適宜最適化することによって、酸化亜鉛鉱のフッ素濃度を制御する点にある。この方法によれば、フッ素除去のための追加コストを最小現に抑えつつ酸化亜鉛鉱のフッ素濃度を極めて低い範囲に調整することができる。例えば、電解製錬向け酸化亜鉛焼鉱として好ましく用いることができる極めてハロゲン濃度が低い酸化亜鉛鉱を高い生産性で得ることができる。又、本発明の製造方法によれば、原材料である粗酸化亜鉛の最終製品への利用率を高めることができ、その点においても酸化亜鉛鉱の生産性の向上に寄与することができる。
【0020】
<還元焙焼工程>
鉄鋼ダスト等から粗酸化亜鉛を回収する還元焙焼工程S10を行う具体的な方法としては、還元焙焼ロータリーキルン(RRK)による還元焙焼法を採用するのが一般的である。以下、還元焙焼工程S10に投入する粗酸化亜鉛の原材料として、鉄鋼ダストを用い、RRKによって還元焙焼を行う場合について説明する。この場合において、鉄鋼ダストは必要に応じて予め大きさ5〜10mm程度のペレットに成形され、石炭、コークス等の炭素質還元剤と石灰石等とともにRRKに連続的に装入される。RRKの炉内は重油の燃焼と装入した炭素質還元剤の燃焼により、被処理物の最高温度が1100〜1200℃程度にコントロールされている。この炉内で鉄鋼ダストは還元焙焼され、揮発した金属亜鉛は炉内で再酸化されて粉状の酸化亜鉛となる。鉄鋼ダスト中に少量含まれる鉛についても、同様に還元焙焼され、揮発した金属鉛は炉内で再酸化されて粉状の酸化鉛となる。尚、例えばハロゲンが多量に存在する場合は一部の金属亜鉛及び鉛は、ハロゲン化合物として揮発する。粉状の酸化亜鉛及び酸化鉛は、RRKからの排出ガスとともに集塵機に導入され、捕捉されて粗酸化亜鉛として回収される。一方、揮発せずに炉内に残った還元焙焼残渣は、還元された鉄分が多く含有されるため、還元鉄ペレットと称する製品としてキルン排出端より回収され、鉄鋼メーカーに鉄原料として払いだされる。
【0021】
鉄鋼ダストから還元焙焼工程によって得る粗酸化亜鉛には、一般的には8〜20質量%程度のハロゲン等の不純物が含有されている。本実施例の還元焙焼工程S10においては、還元焙焼処理後の粗酸化亜鉛中のフッ素濃度が0.3質量%未満となるように調整することが好ましい。鉄鋼ダストの組成や造粒状態、CaO等の添加剤混合量をキルン内風速や攪拌状態を鑑みて十分に調整することによって酸化亜鉛鉱中のフッ素濃度を0.3質量%未満とすることができる。本実施例においては、後の湿式工程S20に投入する粗酸化亜鉛のフッ素濃度を上記範囲に調整し、且つ、後に詳細を説明する通り、各工程における処理条件等を本発明特有の各範囲に調整することにより、電解製錬法による亜鉛製錬にも好ましく用いることができるフッ素濃度が0.05質量%未満の低ハロゲンの酸化亜鉛鉱を、従来よりも低コストで効率よく製造することができる。
【0022】
尚、上記還元焙焼法によって、揮発せずにキルン中に残った還元焙焼残渣は、還元された鉄分が多く含有されるため、還元鉄ペレットと称する製品としてキルン排出端より回収され、鉄鋼メーカーに鉄原料として払いだされる。
【0023】
<湿式工程>
粗酸化亜鉛に含有されるフッ素等の不純物を処理液中に分離抽出し、更に固液分離処理によって、粗酸化亜鉛から不純物を水洗浄法により除去して酸化亜鉛ケーキを得る湿式処理は、以下の処理工程によって行うことができる。
【0024】
還元焙焼工程S10により鉄鋼ダストから回収された粗酸化亜鉛は、工業用水等でレパルプされる。回収は、電気集塵機等で行うことができる。又、このレパルプについてはアルカリ溶液を使用する必要はない。スラリーとなった粗酸化亜鉛はpH調整及び凝集処理を行い、その後、1次脱水を行う。pHは6〜7程度の弱酸性溶液に調整してカドミウムを溶離、凝集は凝集剤等を利用して沈降性を高める。この1次脱水後、工業用水で希釈し、更に2次脱水を行う。この2度の洗浄脱水により、酸化亜鉛ケーキのハロゲン濃度は、フッ素濃度について0.6質量%未満、塩素濃度については、1.0質量%未満にまで低減することが好ましい。
【0025】
例えば、この湿式処理をpH6.5程度の低pH処理液によって粗酸化亜鉛から主にカドミウムを除去する第1の湿式処理と、pH8.5程度の高pH処理液によって、粗酸化亜鉛から主にフッ素化合物を除去する第2の湿式処理とに分けて、段階的に行うことにより各元素毎の除去率を高めることもできる。
【0026】
フッ素等の不純物が処理液中に除去された状態において、固液分離により、不純物が分配された処理液をスラリーから除去する。これにより、粗酸化亜鉛スラリーが高濃度の酸化亜鉛ケーキとなる。尚、固液分離のための脱水処理については、シックナー等の重力沈降式スラリー濃縮装置や真空脱水機等の水分強制脱水装置を用いることができる。
【0027】
<乾燥加熱工程>
湿式工程S20で得た酸化亜鉛ケーキを、乾燥加熱ロータリーキルン(DRK)等の加熱炉に装入して焼成・造粒する乾燥加熱工程S30により、フッ素濃度を更に低減させつつ、酸化亜鉛鉱を造粒することができる。
【0028】
乾燥加熱温度については、焼鉱温度が1100℃以上1150℃以下となるように維持管理することが好ましい。ここで、酸化亜鉛ケーキ中に尚残留するフッ素の形態は、揮発性(例えば塩化フッ化鉛(PbFCl))と不揮発性(例えば2フッ化カルシウム(CaF
2))の形態がある。このうち揮発性物質(PbFCl)は焼鉱の温度を上記温度範囲内に維持することによりほぼ全量が揮発され、揮発性の塩素とフッ素は、ほぼ全量が排ガスダスト洗浄工程S40内の排ガス処理設備に排出される。一方、不揮発性物質(CaF
2)は極めて安定な化合物であるため、DRK内で分解揮発することはなく酸化亜鉛鉱に固定される。
【0029】
<排ガスダスト洗浄工程>
乾燥加熱工程S30で発生した排ガスダストを洗浄して洗浄後の排ガスダストケーキを得るための排ガスダスト洗浄工程S40を行うための洗浄設備としては、洗浄塔、湿式電気集塵機の組み合わせが一般的である。又、これらの設備で回収された洗浄後の排ガスダストケーキを、乾燥加熱工程S30のDRK等の上流工程に繰り返して循環投入することにより、金属資源の有効利用を図る処理が従来より行われている。
【0030】
図2に示す通り、排ガスダスト洗浄工程S40においては、洗浄ST41、固液分離ST42により排ガスダストケーキを得て、濃度測定ST43により排ガスダストケーキの全フッ素濃度の測定を順次行う。
【0031】
上述のように、洗浄後の排ガスダストケーキを、乾燥加熱工程S30において用いられるDRK等に循環投入する場合には、投入する排ガスダストケーキの全フッ素濃度を所定の低濃度範囲内に制御することによって、酸化亜鉛鉱のフッ素濃度を一般に必要とされる範囲にまで低減することができる。具体的には、湿式工程S20に投入する原料の粗酸化亜鉛の平均フッ素濃度を0.3質量%以下とすることが好ましい。
【0032】
本実施例の製造方法によってISP製錬向けの酸化亜鉛鉱を製造する場合であれば、還元焙焼工程から産出する酸化亜鉛ケーキの平均フッ素濃度が0.3質量%以下とすることにより、洗浄後の排ガスダストケーキの全量を、乾燥加熱工程S30に用いるDRKに循環投入したとしても、ISP製錬用の酸化亜鉛焼鉱に求められる0.6質量%未満程度にまでフッ素濃度を十分に低減することができる。
【0033】
一方、本実施例の製造方法によって電解製錬向け酸化亜鉛鉱を製造する場合には、洗浄後の排ガスダストケーキの全フッ素濃度が3.5質量%を超えた場合に、2フッ化カルシウム濃度が増加し、還元焙焼工程から産出する酸化亜鉛ケーキのフッ素濃度を0.3質量%以下に調整した場合であっても、著しく揮発性が悪化し、電解製錬向け酸化亜鉛鉱として求められる製品規格、即ち、フッ素濃度を0.05質量%未満とすることができなくなる。
【0034】
上記の2フッ化カルシウム濃度の増加は、排ガスダスト洗浄水中のpH調整剤に含まれるCaと、DRKから揮発回収されたフッ素が一定比率で結合して、2フッ化カルシウムを形成するものと考えられる。尚、排ガスダスト洗浄水は、水溶性フッ素を液中に溶解分離し、又、同時にカドミウムを排ガスダスト洗浄水中の浮遊固形物質に固定することにより、洗浄水側への分配を制御してミストとして系外に排出されることを抑制する必要があり、そのためにpHを8.0〜8.5程度で制御する必要がある。この排ガスダスト洗浄水のpH調整剤としては廉価なソーダ灰が一般に使用されている。
【0035】
上述の通り、揮発性フッ素(PbFCl等)は、ほぼ全量が乾燥加熱処理によって揮発するため、酸化亜鉛鉱のフッ素濃度を制御するためには、DRK中の2フッ化カルシウム濃度を把握することが重要である。一方、この成分量の特定を機器分析装置等で迅速に把握することは困難である。しかし、本発明における新たな知見によれば、排ガスダスト洗浄工程S40における洗浄処理後の排ガスダストケーキの全フッ素濃度をその代替指標として管理調整することによって、DRK中の2フッ化カルシウム濃度、更には、最終生成物である酸化亜鉛鉱のフッ素濃度を好ましい態様で制御することができる。上記洗浄処理後の排ガスダストケーキのフッ素濃度を3.5質量%以下に適宜制御することによって、酸化亜鉛鉱のフッ素濃度の十分な低減が可能となる。
【0036】
具体的な制御方法としては、
図3に示す通り、濃度測定ST43によって測定した洗浄処理後の排ガスダストケーキの全フッ素濃度(F)が、所定の上限値(max)を超えた場合には、別槽への仮受け等により、製造プロセス内での循環投入処理を中断して、当該排ガスダストケーキを処理系から抜き出して、処理系の外へ排出する処理を行う。又、上記フッ素濃度(F)が所定の下限値(min)を下回る場合には、上記の抜き出しを中止し、系内での循環投入処理を行う。これらの操作を繰り返すことにより、低ハロゲンの酸化亜鉛鉱を効率よく簡単な制御で生産することができる。
【0037】
尚、上記の抜き出し処理により系外に排出したフッ素含有祖酸化亜鉛ダストについては、不純物対応力の高い原料(例えばISP向け酸化亜鉛鉱製造時の原料)として再使用することも可能である。
【0038】
以上の工程を備える本実施例の製造方法によれば、投資額が高く新たな廃棄物を生むフッ素精製設備の設置が不要となり、高品質の電解製錬向け酸化亜鉛鉱を製造することができる。
【0039】
又、本実施例の製造方法によれば、排ガスダストケーキの抜き取り制御の最適化は、原材料の最終製品への利用率を高めることにも寄与するため、酸化亜鉛鉱の生産性を高めることもできる。
【0040】
<排水処理工程>
排水処理工程S50は、湿式工程S20において粗酸化亜鉛から分離されたフッ素やカドミウムを高濃度で含有する廃液から、フッ素及びカドミウムを除去し、更に、廃液中に微量含まれる重金属を中和処理により抽出し、最終的にpHを調整して無害の排水とする工程である。
【0041】
湿式工程S20において分離された廃液中には粗酸化亜鉛から極微量溶出した亜鉛及び/又は鉛成分も含有している。この重金属成分の回収のために上述の通り中和処理を行う。この中和処理は一般に消石灰を添加することにより行う。この消石灰の添加方法は、固体状の消石灰を直接湿式処理液に添加する方法や、消石灰を液体状に溶解した溶解液を湿式処理液に添加する方法等が使用できる。又、消石灰の添加量は、添加後の中和処理液のpHを測定することで調整することもできる。
【0042】
尚、この中和処理により回収された亜鉛化合物或いは鉛化合物を含有する中和処理澱物は、湿式処理工程に繰り返して用いられ、還元焙焼工程から得られる酸化亜鉛スラリーとともに湿式処理され、DRKにて焼成及び造粒を行い、酸化亜鉛鉱に固定させる方法が一般的に行われている。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例)
まず、還元焙焼工程により粗酸化亜鉛を回収した。このとき、粗酸化亜鉛のフッ素濃度が0.2〜0.3質量%の範囲となるようにRRKの操業条件を適宜調整した。
【0045】
次に、上記の粗酸化亜鉛を、DRKに投入し、1100〜1150℃の範囲で乾燥加熱処理を行った。このDRKから回収した排ガスダストを洗浄し、洗浄後の排ガスダストケーキについて、当該排ガスダストケーキ中の全フッ素濃度が3.5質量%以下である場合には、当該排ガスダストケーキをDRKに循環投入し、全フッ素濃度が3.5質量%を超過した場合には、循環投入を行わずに当該排ガスダストケーキを抜き出して処理系の外に排出するという運転制御を行なった。
【0046】
実施例の製造方法により製造された酸化亜鉛鉱のフッ素濃度は0.02〜0.03質量%程度であった。
【0047】
尚、実施例の製造方法における運転制御の結果、排ガスダストケーキの抜き取り量は、原料粗酸化亜鉛の全投入量に対する割合で4〜6%となった。
【0048】
(比較例)
排ガスダストケーキの抜き取りについての運転制御の条件の他は、上記実施例と同一条件の製造プロセスにおいて、酸化亜鉛鉱を製造した。排ガスダストの抜き取りについての運転制御については、排ガスダストケーキを全量抜き取って、処理系の外に排出することとした。
【0049】
比較例の製造方法により製造された酸化亜鉛焼鉱のフッ素濃度は0.01〜0.02質量%程度であった。
【0050】
尚、比較例の製造方法における運転制御の結果、抜き取られた排ガスダストケーキの全フッ素濃度は、0.5〜1.0質量%程度であり、排ガスダストケーキの抜き取り量は、原料酸化亜鉛の全投入量に対する割合で25〜30%となった。
【0051】
そして、比較例の酸化亜鉛鉱の生産量を100としたときの、実施例の酸化亜鉛鉱の生産量は120〜125であった。
【0052】
次に、実施例の製造方法において、排ガスダストケーキ中の全フッ素濃度の測定のみを行い、上記制御は行わず常に全量の排ガスダストケーキをDRKに循環投入して、酸化亜鉛鉱を製造した。そして、DRKに循環投入する排ガスダストケーキの全フッ素濃度と、当該濃度の排ガスダストケーキの全量を循環投入した場合に製造される祖酸化亜鉛焼鉱のフッ素濃度との相関関係を検証した。その結果、DRKに循環投入する排ガスダストケーキの全フッ素濃度と、当該濃度の排ガスダストケーキを循環投入した場合に製造される酸化亜鉛鉱のフッ素濃度との間には、概ね
図4に示すような相関関係があることが分かった。
【0053】
図4より、排ガスダストケーキの全フッ素濃度が3.5%(上限判別濃度)未満の場合には、排ガスダストケーキをDRKに循環投入し、排ガスダストケーキの全フッ素濃度が3.5%(上限判別濃度)以上の場合には、排ガスダストケーキを処理系外に排出することとすれば、酸化亜鉛鉱のフッ素濃度を概ね0.02%〜0.03%の範囲に制御可能であることがわかる。又、実操業においては、製造物の濃度のバラツキや、制御の効果が処理系内に行き渡るまでのタイムラグ等のリスク要因を考慮に入れる必要があり、確実に酸化亜鉛鉱のフッ素濃度を、0.05%以下に制御するために上限及び下限判別濃度を決める必要がある。
【0054】
又、
図4より、排ガスダストケーキの全フッ素濃度が2.5%(下限判別濃度)に達した場合には、排ガスダストの循環投入を再開することにより、酸化亜鉛鉱のフッ素濃度を十分に低く抑えたまま、本発明の製造方法の高い生産性を維持することができることがわかる。
【0055】
上記実施例、及び比較例より、本発明の製造方法によれば、特段の追加設備の設置を伴わずに、低コストで、酸化亜鉛鉱のフッ素濃度を、極めて低い濃度にまで低減することができることが分る。
【0056】
又、更に、本発明の製造方法によれば、原材料である粗酸化亜鉛の利用率の向上という点においても、酸化亜鉛鉱の生産性を向上できる製造方法であることが分る。