(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線等の活性光線の照射によって硬化する樹脂組成物が、接着剤、コーティング剤等として各種の分野で用いられるようになってきている。この種の光硬化性樹脂組成物のひとつとして、ポリエン化合物とポリチオール化合物とを成分とする樹脂組成物が知られている(特許文献1〜特許文献5を参照)。
ポリエンとポリチオールとを成分とする樹脂組成物は、可視光域(400〜800nm)の優れた透明性、接着性、空気下での表面の硬化性(以下、表面硬化性という)を有することから、ガラス及び透明プラスチック用等の接着剤として、光学部品や電子部品等の各種分野で用いられている。
近年のオプトエレクトロニクス分野では、機器の高性能化に伴い、より高い接着性を有する接着剤の要求が高まっている。一般に高い接着強さが得られる光硬化性組成物としてはアクリル系の原料を主体とする組成物が知られている。このアクリル系光硬化性樹脂組成物は、空気中の酸素により硬化阻害を受けることが知られており、表面を良好に硬化させる目的で、硬化時に窒素置換を行う、あるいは高照度で露光を行い、迅速に硬化を行う等の配慮が必要であった。一方、アクリル系接着剤は、プリント基板、或いはガラス、透光性樹脂等の基材上に金属箔を形成した電気部材に使用される銅やニッケル等の金属箔(被着対象)に対しては、強固な接着性が得られず、基板や電気部材分野への応用は困難とされてきた。
より高い接着強さが得られる光硬化性組成物として、ポリエン、ポリチオールを原料とする硬化性組成物が提案されている(特許文献6参照)。
一方、耐熱性の向上を目的としてイソシアヌール酸系トリエン化合物を用いたトリエンとチオール系硬化物が開示されている(特許文献7、8を参照)。該硬化物において、トリエン化合物としては、アリルアルコール誘導体が挙げられ、特にメルカプト基を有する化合物との反応性の観点からトリアリルイソシアヌレートが使用されている。
また、接着力を高めるためにポリエン、ポリチオールを原料とする硬化性組成物に種々の添加剤を配合した組成物が提案されている(特許文献9参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリエン、ポリチオールを原料とする特許文献6記載の硬化性組成物にあっては、その硬化樹脂のガラス転移温度が、20℃未満であるため、加熱工程を要する基板分野において、高い接着性が得られず、また、トリエン化合物としてトリアリルイソシアヌレートを使用する特許文献7、8記載のトリエンとチオール系硬化剤組成物にあっても、接着力が充分でないという課題があった。
また、種々の添加剤が配合されたポリエン、ポリチオールを原料とする特許文献9記載の硬化性組成物にあっては、接着力が充分ではない上に効果の出る被着体が限定されているという課題があった。
本発明の目的は、ガラスだけでなく、銅、アルミニウム、PET、PC等の従来は光硬化性組成物の難被着材とされてきた材料に対して高い接着性を示し、且つ電子部品、光学部品、精密機構部品、液晶表示部材等の分野へ適用可能なポリエン系又はポリエン−ポリチオール系の硬化性樹脂組成物、及びそれを用いた接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ポリエン系又はポリエン−ポリチオール系の硬化性樹脂組成物において、ポリエン化合物を、トリアジントリオン環に不飽和結合基が長鎖の連結基を介して結合した特定の構造のものとすることにより、硬化性樹脂組成物を光硬化させると、優れた接着特性と優れた光学特性とを両立できる硬化物又は硬化塗膜を形成できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は第1観点として、式(1):
【化1】
(式中、n1、n2、及びn3はそれぞれ独立して2〜4の整数を表す。R
1〜R
9はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。)で表されるポリエン化合物を含む硬化性樹脂組成物、
第2観点として、R
1〜R
9がそれぞれ水素原子を表す第1観点に記載の硬化性樹脂組成物、
第3観点として、更にチオール化合物を含む第1観点又は第2観点に記載の硬化性樹脂組成物、
第4観点として、上記チオール化合物が分子内に2〜6個のチオール基を有する化合物である第3観点に記載の硬化性樹脂組成物、
第5観点として、上記チオール化合物が脂肪族チオールである第3観点又は第4観点のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物、
第6観点として、上記チオール化合物が脂肪族メルカプトカルボン酸と多価アルコールとの反応により得られるものである第3観点乃至第5観点のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物、
第7観点として、上記多価アルコールが脂肪族多価アルコール又は2価若しくは3価のヒドロキシアルキルイソシアヌレートである第6観点に記載の硬化性樹脂組成物、
第8観点として、更に光重合開始剤を含む第1観点乃至第7観点のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物、及び
第9観点として、上記光重合開始剤がラジカル光重合開始剤である第8観点に記載の硬化性樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0006】
式(1)で表されるポリエン化合物は、不飽和結合基が長鎖の側鎖を介してトリアジントリオン環に結合しているという構造であることにより、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物又は硬化塗膜は、その粘弾性のうち粘性項が増加することから、高い接着強度を有することができる。それ故、該ポリエン化合物に加えチオール化合物をも含む硬化性樹脂組成物より得られる該硬化物又は硬化塗膜は、優れた光学特性を有すると同時に、高い接着強度を達成することができ、よって、該硬化性樹脂組成物は、ガラスだけでなく、従来難被着材料とされた銅、アルミニウム、PET、PC等においても透光性材料への接着に好適に使用できるものである。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、低い温度で行うことができるUV照射によってその硬化が行われることから、熱に弱い材料(基材)に対する接着に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、ポリエン系又はポリエン−ポリチオール系の硬化性樹脂組成物、該樹脂組成物からなる接着剤、該接着剤を用いて接着した接着体および光学部材に関するものであり、本発明において用語「ポリ」とは二官能性以上の多官能性を示すものである。
従来、ポリエン−ポリチオール系樹脂組成物からなる接着剤において、ポリエン化合物としては、特にメルカプト基を有する化合物との反応性の観点からトリアリルイソシアヌレートが使用されているが、各種被着体との接着力の観点からは必ずしも充分ではなかった。
一方、本発明では、式(1)に示すように、トリアジントリオン環に置換した不飽和結合基との間の側鎖を長鎖化することによって、式(1)で表される化合物を含む組成物の硬化体、及び、式(1)で表される化合物とチオール化合物とを含む組成物の硬化体の粘弾性を制御し接着力を向上させたものである。すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物硬化体の粘弾性において、ポリエン化合物の側鎖長鎖化により粘性項の寄与が増加するため、各種被着体との接着強度が向上したものと推測される。
【0008】
本発明の不飽和結合を含有した液状ポリエン化合物を用いた光硬化材料は速硬化性、透明性、硬化収縮が小さい等の特徴を持ち電子部品、光学部品、精密機構部品の被覆や接着に用いることができる。例えば携帯電話機やカメラのレンズ、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)などの光学素子、液晶パネル、バイオチップ、カメラのレンズやプリズムなどの部品、パソコンなどのハードディスクの磁気部品、CD、DVDプレイヤーのピックアップ(ディスクから反射してくる光情報を取り込む部分)、スピーカーのコーンとコイル、モーターの磁石、回路基板、電子部品、自動車などのエンジン内部の部品等の接着に用いることができる。
また、本発明の硬化性樹脂組成物は、アルミニウム等の金属、プラスチックなどに印刷するインキ材料向けとしては、クレジットカード、会員証などのカード類、電化製品やOA機器のスイッチ、キーボードへの印刷用インキ、CD、DVD等へのインクジェットプリンター用インキへの適用が挙げられ、更には、3次元CADと組み合わせて樹脂を硬化し複雑な立体物をつくる技術や、工業製品のモデル製作等の光造形への適用、光ファイバーのコーティング、接着、光導波路、厚膜レジスト(MEMS用)などへの適用が挙げられる。
【0009】
本発明の硬化性樹脂組成物は式(1)で表されるポリエン化合物を含む硬化性樹脂組成物である。
式(1)中で、n1、n2、及びn3はそれぞれ独立して2〜4の整数を表し、即ちエチレン基、プロピレン基、又はブチレン基を表す。R
1乃至R
9はそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1〜10のアルキル基を表す。
【0010】
上記炭素原子数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、1−メチル−シクロプロピル基、2−メチル−シクロプロピル基、n−ペンチル基、1−メチル−n−ブチル基、2−メチル−n−ブチル基、3−メチル−n−ブチル基、1,1−ジメチル−n−プロピル基、1,2−ジメチル−n−プロピル基、2,2−ジメチル−n−プロピル基、1−エチル−n−プロピル基、シクロペンチル基、1−メチル−シクロブチル基、2−メチル−シクロブチル基、3−メチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロプロピル基、2,3−ジメチル−シクロプロピル基、1−エチル−シクロプロピル基、2−エチル−シクロプロピル基、n−ヘキシル基、1−メチル−n−ペンチル基、2−メチル−n−ペンチル基、3−メチル−n−ペンチル基、4−メチル−n−ペンチル基、1,1−ジメチル−n−ブチル基、1,2−ジメチル−n−ブチル基、1,3−ジメチル−n−ブチル基、2,2−ジメチル−n−ブチル基、2,3−ジメチル−n−ブチル基、3,3−ジメチル−n−ブチル基、1−エチル−n−ブチル基、2−エチル−n−ブチル基、1,1,2−トリメチル−n−プロピル基、1,2,2−トリメチル−n−プロピル基、1−エチル−1−メチル−n−プロピル基、1−エチル−2−メチル−n−プロピル基、シクロヘキシル基、1−メチル−シクロペンチル基、2−メチル−シクロペンチル基、3−メチル−シクロペンチル基、1−エチル−シクロブチル基、2−エチル−シクロブチル基、3−エチル−シクロブチル基、1,2−ジメチル−シクロブチル基、1,3−ジメチル−シクロブチル基、2,2−ジメチル−シクロブチル基、2,3−ジメチル−シクロブチル基、2,4−ジメチル−シクロブチル基、3,3−ジメチル−シクロブチル基、1−n−プロピル−シクロプロピル基、2−n−プロピル−シクロプロピル基、1−i−プロピル−シクロプロピル基、2−i−プロピル−シクロプロピル基、1,2,2−トリメチル−シクロプロピル基、1,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、2,2,3−トリメチル−シクロプロピル基、1−エチル−2−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−1−メチル−シクロプロピル基、2−エチル−2−メチル−シクロプロピル基及び2−エチル−3−メチル−シクロプロピル基等が挙げられる。
【0011】
式(1)のポリエン化合物はR
1〜R
9が全て水素原子である場合が好ましく用いることができる。
式(1)のポリエン化合物は例えば以下に例示される。
【0012】
【化2】
本発明に用いられるポリエン化合物は、上記式(1−2)を例にとれば、以下の方法で得ることができる。他のポリエン化合物も同様の方法で得ることができる。
【化3】
上記反応ではイソシアヌール酸を水酸化ナトリウムでイソシアヌール酸Na塩に変換する。この反応は、水溶媒中で、0〜100℃、1〜10時間で行うことができる。更にイソシアヌール酸Na塩と脱離基を有するアルケンを反応させて、アルケン置換イソシアヌール酸を得る。この反応は例えばDMF(ジメチルホルムアミド)等の溶媒中で、0〜150℃、1〜10時間で行うことができる。式中Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基、ニトロベンゼンスルホニルオキシ基、アセチルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基等の脱離基である。
また、イソシアヌール酸と脱離基を有するアルケンを直接反応させることによってもアルケン置換イソシアヌール酸を得ることができる。この反応はDMF等の溶媒を用い、水素化ナトリウム、炭酸カリウム、t−ブトキシカリウム、トリエチルアミン等の塩基を用い、室温(例えば20℃)〜溶媒の沸点温度で0〜100時間で行われる。
【0013】
本発明に用いられるチオール化合物は、1分子中にチオール基を少なくとも2個有する化合物を用いることができる。好ましくは1分子中に2〜6個のチオール基を有する化合物を用いることができる。
上記チオール化合物は脂肪族チオールであり、脂肪族メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル化反応により得ることができる。
上記多価アルコールとしては脂肪族多価アルコールや、2価又は3価のヒドロキシアルキルイソシアヌレートが挙げられる。
脂肪族メルカプトカルボン酸としては炭素原子数1〜10のメルカプトカルボン酸であり、例えばチオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。
脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルイソシアヌレートは、炭素原子数2〜6の直鎖又は分岐を有するアルキル基を有するヒドロキシアルキルイソシアヌレートが用いられる。例えばトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートは好ましく用いることができる。
【0014】
このようなチオール化合物としては、トリメチロールプロパントリメルカプトプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラメルカプトプロピオン酸エステル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリメルカプトプロピオン酸エステル等が挙げられる。
本発明において、ポリエン化合物とチオール化合物との配合割合は、モル比で5:1〜1:5、好ましくは3:1〜0.9:1の範囲、更に好ましくは1:1の範囲で用いることができる。
【0015】
光重合開始剤は、紫外線や可視光線等の活性光線により増感させて樹脂組成物の光硬化を促進するために配合するものであり、公知の各種光重合開始剤が使用可能である。光重合開始剤はラジカル光重合開始剤を用いることができる。
具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p−クロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルサルファイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキシド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]等が例示できる。この中で樹脂との相溶性や硬化時の黄変が少ないなどの観点から、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(ラジカル光重合開始剤)が好ましいが、これに限定されるものではない。
前記の光重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。光重合開始剤の配合量は、ポリエン化合物とチオール化合物の合計量100質量部に対して、0.001〜20質量部、好ましくは0.1〜15質量部である。
【0016】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤や酸化防止剤、光安定化剤、硬化促進剤、染料、充填剤、顔料、チキソトロピー付与剤、可塑剤、界面活性剤、滑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えることができる。
本発明におけるポリエン化合物、チオール化合物の混合物は、予め反応させて、プレポリマーとして使用することができる。予め反応させてプレポリマーを製造する方法としては、ポリエン化合物、チオール化合物の混合物を単に加熱する方法(1)や、有機過酸化物等を少量添加して加熱する方法(2)、少量の光重合開始剤を添加して紫外線を照射する方法(3)等があげられるが、反応速度の制御の面からは、方法(1)が好ましい。反応させる温度としては反応速度の制御の点で5℃から70℃が好ましい。
【実施例】
【0017】
(合成例1)トリス(3−ブテニル)イソシアヌレートの合成
反応器に500gのイソシアヌル酸と2000mlの水を加えたスラリーに、968gの48%水酸化ナトリウム溶液を滴下して、60〜70℃の温度で3時間反応後、水を留去、メタノール洗浄、そして乾燥してイソシアヌル酸ナトリウム760gの白色結晶として得た。攪拌機、冷却器を取り付けた反応器に溶剤としてジメチルホルムアミド1107mlを入れ、415gのイソシアヌル酸ナトリウムと875gの4−ブロモ−1−ブテンを90〜98℃で8時間反応させた後、無機塩を濾別、トルエン抽出、水洗、乾燥、溶媒留去してトリス(3−ブテニル)イソシアヌレート404gの朱色油状物として得た。この粗物はシリカゲルクロマトグラフィーで精製して透明油状物348gを得ることができる。得られたポリエン化合物は、トリス(3−ブテニル)イソシアヌレートあった。このポリエン化合物を(1−1)とした。
1H−NMR(270MHz、CDCl
3):δ=5.85〜5.79(m、3H)、5.07〜5.00(m、6H)、3.98〜3.89(m、6H)、2.44〜2.36(m、6H)、
13C−NMR(67MHz、CDCl
3):δ=148.6、134.0、117.3、41.9、32.1
【0018】
(合成例2)トリス(4−ペンテニル)イソシアヌレートの合成
反応器に396gのイソシアヌル酸と1585mlの水を加えたスラリーに、768gの48%水酸化ナトリウム溶液を滴下して、60〜65℃の温度で2時間反応後、水を留去、メタノール洗浄、そして乾燥してイソシアヌル酸ナトリウム596gの白色結晶として得た。さらに同様の操作を繰り返し、イソシアヌル酸ナトリウム609gの白色結晶として得た。攪拌機、冷却器を取り付けた反応器に溶剤としてジメチルホルムアミド2500mlを入れ、1004gのイソシアヌル酸ナトリウムと2306gの5−ブロモ−1−ペンテンを120〜125℃で8時間反応させた後、無機塩を濾別、トルエン抽出、水洗、乾燥、溶媒留去してトリス(4−ペンテニル)イソシアヌレート1484gの茶色油状物として得た。この粗物はシリカゲルクロマトグラフィーで精製して透明油状物1210gを得ることができる。得られたポリエン化合物は、トリス(4−ペンテニル)イソシアヌレートあった。このポリエン化合物を(1−2)とした。
1H−NMR(600MHz、CDCl
3):δ=5.85〜5.78(m、3H)、5.07〜4.98(m、6H)、3.90〜3.87(m、6H)、2.13〜2.10(m、6H)、1.78〜1.73(m、6H)
13C−NMR(150MHz、CDCl
3):δ=148.8、137.2、115.2、42.5、30.7、26.6
【0019】
(合成例3)トリス(5−ヘキセニル)イソシアヌレートの合成
反応器に500gのイソシアヌル酸と2000mlの水を加えたスラリーに、968gの48%水酸化ナトリウム溶液を滴下して、60〜70℃の温度で3時間反応後、水を留去、メタノール洗浄、そして乾燥してイソシアヌル酸ナトリウム760gの白色結晶として得た。攪拌機、冷却器を取り付けた反応器に溶剤としてジメチルホルムアミド728mlを入れ、279gのイソシアヌル酸ナトリウムと701gの6−ブロモ−1−ヘキセンを120〜125℃で3時間反応させた後、無機塩を濾別、トルエン抽出、水洗、乾燥、溶媒留去してトリス(5−ヘキセニル)イソシアヌレート541gの茶色油状物として得た。この粗物はシリカゲルクロマトグラフィーで精製して透明油状物401gを得ることができる。得られたポリエン化合物は、トリス(5−ヘキセニル)イソシアヌレートあった。このポリエン化合物を(1−3)とした。
1H−NMR(600MHz、CDCl
3):δ=5.82〜5.75(m、3H)、5.03〜4.94(m、6H)、3.88〜3.86(m、6H)、2.11〜2.09(m、6H)、1.67〜1.59(m、6H)、1.45〜1.40(m、6H)
13C−NMR(150MHz、CDCl
3):δ=148.8、138.1、114.7、42.7、33.2、27.1、25.9
【0020】
一方、ポリエン化合物として、トリアリルイソシアヌレート(Aldrich社製)を準備した。このポリエン化合物を(1−4)とした。
【0021】
〔ポリチオール化合物の準備〕
SC有機化学株式会社製の以下のポリチオール化合物を準備した。
・トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(TMMP)
・トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート(TEMPIC)
・ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(PEMP)
・ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)(DPMP)
〔光重合開始剤の準備〕
BASF社製Irgacure184(成分は1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)を準備した。
〔重合禁止剤の準備〕
和光純薬工業株式会社製N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(NPHA A1)を準備した。
〔光硬化性樹脂組成物の光硬化性試験〕
各組成物の光硬化性を確認するため、フォトDSCを使用して硬化終了までの照射量を測定した。共通の配合として、光重合開始剤Irgacure184をポリエン及びポリチオール化合物の総量に対して、1phr添加した。ここでphrはポリエン化合物とチオール化合物の合計100質量部に対する光重合開始剤の質量割合である。また、重合禁止剤NPHA A1をポリエン化合物に対して2000ppm添加した。
【0022】
(フォトDSCの測定条件)
光源:キセノンランプ、365nmバンドパスフィルターを使用した。
照度:5mW/cm
2(365nm検出)。
装置名:DSC204F1 Phoenix(ネッチ社製)。
【表1】
〔接着性試験/180度引き剥がし試験〕
【0023】
(試験片の調製)
剛性被着材として白ガラス(BK7)、たわみ性被着材として銅箔(古川サーキットフォイル株式会社製電解銅箔、平滑面を接着面とした)、アルミニウム箔(日本製箔株式会社製)、PETフィルム(東レ株式会社製ルミラーS10)、PCフィルム(ポリカーボネートフィルム、株式会社インターナショナル・ケミカル製)を準備した。各被着材は、接着前にエタノールにより脱脂処理した。
表2、表4に従い各成分を配合した実施例1〜6及び比較例1〜2の各接着剤はその後、白ガラス(BK7)基材の中央へ長さ方向にそって各接着剤液を塗布し、スペーサーとしてガラスビーズ(径は100μm)を接着剤塗布面に1cm
2当たり数個添加し接着スペースを設け、この上に各基材フィルム(各たわみ性被着材)を静かに被せた。この試験片を上下逆にしてから1kgの円柱状の重りを転がして膜厚を整えた。試験片からフローした余分な接着剤液を拭き取り、白ガラス面よりUV照射し(露光量:約1000±50mJ/cm
2、85秒)、接着剤を硬化させた。
【0024】
(180 度引き剥がし試験の条件)
試験方法:JIS K6854−2に従う。
試験片 :幅25mm
試験速度:50mm/min
引剥がし距離:100mm
試験温度:23±1℃
測定数 :n=3
装置名 :5582型万能材料試験機(インストロン社製)
【0025】
180度引き剥がし試験結果を表3、表5に記載した。
試験は各接着剤を用いてガラスとアルミニウム箔の間の180度引き剥がし試験、ガラスと銅箔の間の180度引き剥がし試験、ガラスとPETフィルムの間の180度引き剥がし試験、ガラスとPCフィルムの間の180度引き剥がし試験をそれぞれ行った。
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
【表5】