(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
隣接する底部と上部の高低差が5μm以下の微細構造が基材フィルム上に形成されており、前記微細構造上に未硬化の熱硬化性樹脂が塗布された積層フィルムであって、前記熱硬化性樹脂の硬化開始温度をT4℃とした場合、前記基材のガラス転移温度以上T4℃以下における基材フィルムの貯蔵弾性率が0.1〜300MPaの範囲内であることを特徴とする積層フィルム。
基材フィルム上に形成された微細構造が紫外線硬化樹脂よりなる層からなり、前記基材フィルムと前記紫外線硬化樹脂よりなる層との剥離力が前記紫外線硬化樹脂で作製した微細構造と硬化した熱硬化性樹脂との剥離力より相対的に高いことを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【背景技術】
【0002】
光の波長より小さい周期を有する微細な凹凸からなる微細構造は反射防止機能を発現するため、そのような微細構造をレンズの曲面に形成することが提案されている(特許文献1)。レンズ表面などの3次元的な曲面上に微細構造を形成した成形体の製造方法としては、あらかじめ微細構造を形成した金属、酸化物、樹脂からなる可撓性膜を被成形体の曲面に沿って接合する製造方法が知られている(特許文献2)。この方法では厚さ10〜100μmの可撓性膜を製品表面に接合するため、凹凸構造について10μm以下の寸法精度を必要とする製品には、寸法誤差が生じてしまうため適用し難いという問題がある。また、可撓性膜の厚さを10μm以下にした場合は可撓性膜のハンドリング性が極めて悪くなるため実用することは現実的ではない。
【0003】
一方、基板上に微細構造を形成する方法としてナノインプリントがある。ナノインプリントは基板や成形体上に形成された微細構造をモールドとして使用し、モールドを熱や紫外線によって硬化する転写用樹脂を介して基板に貼り付けた状態で転写用樹脂を硬化させ、モールドを剥離することで基板上に微細構造の反転構造を形成する方法である。ナノインプリントを利用して曲面上に微細構造を形成する場合は、PET(ポリエチレンテレフタレート)などのフレキシブルなフィルムモールドを使用することが提案されている(非特許文献1)。しかしこの製造方法は、フィルムが弾性変形して被成形体の曲面に追従する必要があるため、被成形体の曲率によって、フィルムが追従できずに微細構造が形成できない問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するため、塑性変形して3次元立体面に追従し、微細構造を形成する積層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明は、隣接する底部と上部の高低差が5μm以下の微細構造が基材フィルム上に形成されており、前記微細構造上に熱可塑性樹脂よりなる層が形成された積層フィルムであって、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度をT1℃、基材の貯蔵弾性率が300Maとなる温度をT2℃、基材の貯蔵弾性率が0.1MPaとなる温度をT3℃としたときに、T1+20℃がT2℃以下の場合はT2℃において、或いは、T1+20℃がT2℃以上T3℃以下の場合はT1+20℃において、基材の破断伸びが100%以上であることを特徴とする積層フィルムである。
ここで、本発明における「微細構造」とは、互いに隣接するトップとボトムの高さの差が0.05μm〜5μm以下であり、互いに隣接するトップ間の距離が0.05μm〜10μmの凹凸構造である。
【0008】
また、基材フィルム上に形成された微細構造が紫外線硬化樹脂よりなる層からなり、前記基材フィルムと前記紫外線硬化樹脂との剥離力が、前記紫外線硬化樹脂で作製した微細構造と熱可塑性樹脂よりなる層との剥離力より相対的に高いことが好ましい。
【0009】
さらに、T1+20℃がT2℃以下の場合はT2℃において、或いは、T1+20℃がT2℃以上T3℃以下の場合はT1+20℃において、前記紫外線硬化樹脂の貯蔵弾性率が0.1〜300MPaであるのが好ましい。
【0010】
また別の本発明は、隣接する底部と上部の高低差が5μm以下の微細構造が基材フィルム上に形成されており、前記微細構造上に未硬化の熱硬化性樹脂が塗布された積層フィルムであって、前記熱硬化性樹脂の硬化開始温度をT4℃とした場合、前記基材のガラス転移温度以上T4℃以下における基材フィルムの貯蔵弾性率が0.1〜300MPaの範囲内である積層フィルムである。
【0011】
また、基材フィルム上に形成された微細構造が紫外線硬化樹脂よりなる層からなり、前記基材フィルムと紫外線硬化樹脂よりなる層との剥離力が、紫外線硬化樹脂で作製した微細構造と硬化した熱硬化性樹脂との剥離力より相対的に高いことが好ましい。
【0012】
さらに、前記基材のガラス転移温度以上T4℃以下における紫外線硬化樹脂の貯蔵弾性率が0.1〜300MPaであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
基材フィルム上に形成する微細構造は公知のリソグラフィ技術を用いて作製可能なため、様々な形状の微細構造を作製して使用することができる。積層フィルムは塑性変形しながら被成形体の3次元立体面に追従し、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂からなる微細構造を3次元立体面上に形成する。従って、積層フィルムが被成形体に追従する際の延伸分布を考慮することで、目的とする微細構造を形成した成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】微細構造上に転写用樹脂を設ける工程および本発明の積層フィルムを示す図である。
【
図2】紫外線硬化樹脂を用いた微細構造の形成工程を示す図である。
【
図3】熱プレスによる微細構造の形成工程を示す図である。
【
図4】実施例における基材フィルム上に形成されたモスアイ構造の反転構造の断面SEM写真である。
【
図5】実施例4におけるアクリル製レンズ上に形成されたモスアイ構造の断面SEM写真である。
【
図6】実施例4におけるモスアイ構造形成前後におけるアクリル製レンズの反射率測定結果を示す図である。
【
図7】実施例9におけるモスアイ構造形成前後におけるニッケル板の反射率測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
本発明は、基材フィルム上に微細構造を形成する工程と、前記微細構造上に転写用樹脂5となる熱可塑性樹脂層を形成する工程または未硬化の熱硬化性樹脂を塗布する工程とから得られる積層フィルムであって、例えば3次元立体面を表面とする被成形体に該フィルムを延伸しつつ沿わせて貼り合わせるために、基材フィルムの貯蔵弾性率と破断伸びを特定範囲に規定したものである。
図1に本発明の積層フィルムの構成および後述する製造工程を示す。本発明は、隣接する底部と上部の高低差が5μm以下の微細構造4が基材フィルム1上に形成されており、前記微細構造4の上に転写用樹脂5として熱可塑性樹脂よりなる層または未硬化の熱硬化性樹脂が塗布された層が形成された積層フィルムである。微細構造4は、基材フィルム1に直接設けられていても良いし、例えば後述する紫外線硬化性樹脂2よりなる層に設けられていても良い。
図1では後者の態様を図示している。
なお、これらの図において図示される各部の大きさ、厚さ、寸法等は、実際の微細構造の形成工程における大きさ、厚さ、寸法とは異なる。
【0016】
本発明において、基材フィルム1は前記転写用樹脂5が熱可塑性樹脂であるか未硬化の熱硬化性樹脂であるかによって特性が異なったものを用いる。
【0017】
まず、前記転写用樹脂が熱可塑性樹脂である場合は、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度をT1℃、基材の貯蔵弾性率が300MPaとなる温度をT2℃、基材の貯蔵弾性率が0.1MPaとなる温度をT3℃としたときに、T1+20℃がT2℃以下の場合はT2℃、或いは、T1+20℃がT2℃以上T3℃以下の場合はT1+20℃において、基材の破断伸びが100%以上とする必要がある。積層フィルムをT2℃以下で被成形体に貼り付ける場合は、被成形体への貼り付け時に積層フィルムが充分に延伸することができず、微細構造4を被成形体に接着させることができないことがある。一方、T3℃以上で貼り付ける場合は、加熱により軟化した前記積層体の基材フィルム1がフィルム形状を保持できないことがある。
上記の積層フィルムを用いる際に、貼り付け工程を、T1+20℃で行う必要は必ずしもないが、該温度で上記の条件を満足した積層フィルムであれば多くの被成形体への微細形状の付与が容易に行われることが期待できる。
【0018】
一方、前記転写用樹脂が未硬化の熱硬化性樹脂である場合は、前記熱硬化性樹脂の硬化開始温度をT4℃とした場合、前記基材のガラス転移温度以上T4℃以下における基材フィルムの貯蔵弾性率が0.1〜300MPaの範囲内であることが必要である。この場合において、被成形体への貼り付けは基材のガラス転移温度以上T4℃以下で行われるのは当然である。ガラス転移温度より低い温度では、基材を延伸することができないし、T4℃より高い温度では、貼り合せ中に熱硬化性樹脂の硬化反応が進行してしまい、微細形状を被成形体表面に接着できなくなる。また、前記温度範囲において基材フィルムの貯蔵弾性率が0.1〜300MPaの範囲内であることが必要である。基材フィルムの貯蔵弾性率が0.1未満であると、前記積層体の基材フィルム1が柔らかすぎてフィルム形状を保持できないことがある。基材フィルムの貯蔵弾性率が300MPaを超えていると、被成形体への貼り付け時に積層フィルムが充分に延伸することができず、微細構造4を被成形体7に接着させることができないことがある。
【0019】
基材フィルム1は無延伸のフィルムを用いるのが好ましい。これは被成形体に微細構造を有する積層フィルムを貼り付ける場合において、基材フィルム1を延伸しながら3次元立体面を有する被成形体の表面に追従させるためである。貼り付け工程の前に既に延伸されたフィルムを用いた場合では、一般にフィルムの素材の結晶性が高まるため、基材フィルム1が伸びにくくなり被成形体への追従が困難になる。さらに、基材フィルム1の延伸方向と非延伸方向での伸び率が異なってくるため、基材フィルム1を等方的に伸ばすことが困難になる等の問題が生じやすい。
【0020】
また、基材フィルム1の材料としては、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネートなどが例示できる。基材フィルム1の材料は、被成形体の大きさ、形状に応じて適宜選択すればよい。転写用樹脂5が熱可塑性樹脂の場合はゴム入りアクリル系樹脂を用いるのが加工性の観点から好ましい。転写用樹脂5が未硬化の熱硬化性樹脂の場合は、軟質ポリ塩化ビニルを用いるのが、熱硬化性樹脂の硬化開始温度T4℃以下の、より低温で延伸させやすい点で好ましい。
【0021】
図2に紫外線硬化樹脂を用いた基材フィルム1上への微細構造4の形成工程を示す。該工程はいわゆる光ナノインプリントと呼ばれる方法である。基材フィルム1上の微細構造4は紫外線硬化樹脂2を基材フィルム1上に塗布し、紫外線硬化樹脂2側から微細構造の反転型3を押し当て、紫外線照射により硬化させることで得ることができる。紫外線照射は硬化に寄与する波長に対して、基材フィルム1と反転型3で透過率の高いどちらか一方向からあるいは両方から照射すればよい。
【0022】
また
図3に熱プレスによる基材フィルム上への微細構造の形成工程を示す。該工程はいわゆる熱ナノインプリントと呼ばれる方法である。基材フィルム1上から微細構造4の反転形状を有する反転型3を加熱したのち、圧力をかけることで基材フィルム1上に微細構造4を形成することができる。さらに基材フィルム1を押し出し成形で作製する場合は、ロール表面形状を微細構造4の反転形状としておくことで、押し出し成形時に基材フィルム1の表面に微細構造4を形成することができる。基材フィルム1の表面に微細構造4を形成する方法は、必要とする面積、構造の大きさ、フィルムの物性等を鑑み、適宜選択すればよい。
【0023】
微細構造4の反転形状を有する反転型3は、公知技術を用いて作製することができる。例えば、マスク露光法、電子線リソグラフィ法、干渉露光法などがある。また大きな面積に対応することができる、自己組織化といわれるアルミの陽極酸化、微粒子配置なども利用できる。微細構造の反転型3の作製は、必要とする面積、微細構造の大きさに応じ、適宜選択すればよい。
【0024】
微細構造の形成に紫外線硬化樹脂2を用いる場合、紫外線硬化樹脂の硬化後の貯蔵弾性率は0.1〜300MPaであることが好ましく、より好ましくは0.1〜10MPaである。なぜなら、被成形体に微細構造を有する積層フィルムを貼り付ける場合において、紫外線硬化樹脂2と基材フィルム1との弾性率を近い値にすることで、紫外線硬化樹脂2と基材フィルム1が剥離するのを防ぐことができるためである。紫外線硬化樹脂2の貯蔵弾性率が前記範囲外の場合、被成形体に微細構造を貼り付ける工程において、基材フィルム1と紫外線硬化樹脂2にかかる応力差により、基材フィルム1と紫外線硬化樹脂2が剥離する問題が生じやすい。
また、紫外線硬化樹脂2を基材フィルム1上に塗布する前に、紫外線硬化樹脂2を塗布する基材フィルム1の表面にコロナ処理等の易接着処理を施しても良い。これにより紫外線硬化性樹脂2と基材フィルム1の剥離をいっそう防止することができる。
【0025】
形成する微細構造としては、モスアイ構造、ラインアンドスペース構造、ピラー構造、ホール構造などのフォトニック結晶、回折格子などが挙げられる。ここで、微細構造とは、互いに隣接するトップとボトムの高さの差が0.05μm〜5μm以下であり、互いに隣接するトップ間の距離が0.05μm〜10μmの凹凸構造である。
【0026】
次に、微細構造上に転写用樹脂5を設ける工程について説明する。
図1のように、微細構造4上に転写用樹脂5を設ける工程は、転写用樹脂5が熱可塑性樹脂の場合と未硬化の熱硬化性樹脂の場合とでは異なる。
【0027】
転写用樹脂5が熱可塑性樹脂の場合、まず熱可塑性樹脂に対して可溶な溶剤を用いて溶解させた溶液6を作製する。溶液6をスピンコート、バーコート、スプレーコートなどの装置を用いて微細構造4上に均一に塗布した後、溶液6から前記溶剤を蒸発させる事で微細構造4の凹凸に転写用樹脂5が充填し、平滑な転写用樹脂5の薄膜が得られる。また、前記溶剤は微細構造4を形成する材料に対して不要な溶剤を選択する必要がある。これは、溶液6中の前記溶剤が微細構造4を溶解するのを防ぐためである。熱可塑性樹脂にはアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネートなどが例示でき、前記熱可塑性樹脂を溶解させる溶剤にはケトン、エステル、塩素化溶剤などを用いることができる。
【0028】
転写用樹脂5が未硬化の熱硬化性樹脂の場合、希釈剤を添加して粘性を低下させた溶液6を作製する。溶液6をスピンコート、バーコート、スプレーコートなどの装置を用いて微細構造4上に均一に塗布した後、溶液6から前記溶剤を蒸発させることで微細構造4の凹凸に転写用樹脂5が充填し、平滑な転写用樹脂5の薄膜が得られる。熱硬化性樹脂にはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが例示でき、希釈剤にはメタノールなどの前記熱硬化性樹脂と非反応な溶液を用いることができる。
【0029】
基材フィルム1と紫外線硬化樹脂2との間の剥離力は、前記紫外線硬化樹脂で作製した微細構造4と転写用樹脂5との間の剥離力より高い必要がある。そのため、転写用樹脂5を微細構造4上に塗布する前に、フッ素系の離型剤を微細構造4上に塗布してもよく、前記離型剤を添加した溶液6を微細構造4上に塗布しても良い。これは成形体に貼り付けた積層フィルムから微細構造4を形成した基材フィルム1を剥離する工程において、前記積層フィルムの基材フィルム1と転写用樹脂5の離型性を上げるためである。
【実施例】
【0030】
微細構造には周期300nm、高さ300nmのモスアイ構造を持つニッケル型(協同インターナショナル製)、基材フィルムにはポリ塩化ビニルフィルム(タフニール、日本ウェーブロック社製、以下PVC)およびゴム入りアクリル系フィルム(以下RT)を使用した。ゴム入りアクリル系フィルムとしては、厚さを150μmとした他は特開2009−228000に開示される実施例1に記載のフィルムと同等のものを用いた。
【0031】
アクリル系紫外線硬化樹脂(UVX4332、東亜合成製)を介してニッケル型を基材フィルムに貼り付け、紫外線照射した。ニッケル型を基材フィルムから剥離すると、硬化した紫外線硬化樹脂からなるモスアイ構造の反転構造を基材フィルム上に得ることができた(
図4参照)。
【0032】
<転写用樹脂が熱可塑性樹脂の場合>
上記により得られたモスアイ構造の反転構造を微細構造として有する基材フィルムの微細構造上に、メチルイソブチルケトンを溶剤として5wt%に希釈したPMMA(パラペットGH、クラレ製)をスピンコートにより塗布し、70℃に加温して溶剤を蒸発させて積層フィルムを得た。なお、転写用樹脂として使用したPMMAのガラス転移温度は90℃である。
【0033】
モスアイ構造の反転構造を表面に形成する基材フィルムと熱可塑性樹脂からなる積層体を真空圧空成形機(布施真空製)内で100〜180℃まで加熱し、300kPaでアクリル製レンズ(φ60mm)に貼り付けた。前記積層体を貼り付けたアクリル製レンズを室温まで冷却した後、基材フィルムを剥離するとアクリル製レンズの表面にPMMAからなるモスアイ構造の形成が確認された。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
<比較例>
実施例1と同じ微細構造、紫外線硬化樹脂、アクリル製レンズを用い、基材フィルム1に2軸延伸したPETフィルム(東洋紡エステル、A4300、東洋紡績製)を用いて100〜180℃で真空圧空成形を実施した。該温度における基材フィルムの破断伸びは、MD方向に最大95%、TD方向に最大60%であった。この結果、何れの温度でも基材フィルムが破断し、微細構造を形成することはできなかった。
【0036】
実施例4で得られたアクリル製レンズの表面にモスアイ構造(
図5)を形成した成形体を観察した結果、レンズの天頂部から裾部にかけてモスアイ構造が0〜30%延伸していた。また、
図6のように、モスアイ形成前後でのアクリル製レンズの表面反射率を顕微分光装置(ラムダビジョン製)で測定し、モスアイ構造の形成による反射率の低減を確認した。
【0037】
<転写用樹脂が未硬化の熱硬化性樹脂の場合>
上記により得られたモスアイ構造の反転構造を微細構造として有する基材フィルムの微細構造上に、メタノールで30wt%に希釈したエポキシ樹脂(jER828、三菱化学製)をスピンコートにより塗布し、20℃で放置してメタノールを蒸発させた。なお、エポキシ樹脂の重合開始温度は70℃である。
【0038】
モスアイ構造の反転構造を表面に形成する基材フィルムと未硬化の熱硬化性樹脂からなる積層フィルムを真空圧空成形機(NGF―0406−T、FVF製)内で60、80℃まで加熱し、300kPaで被成形体に貼り付けた。被成形体には、ガラス、シリコンウェハ、ステンレス板、ニッケル板、アクリル製レンズを使用した。前記積層フィルムを被成形体に貼り付けた状態で80℃、3時間加熱した。基材フィルムを被成形体から剥離し、被成形体の微細構造形成面に硬化したエポキシ樹脂からなるモスアイ構造の形成有無を確認した。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
実施例9で得られたニッケル基板にモスアイ構造を形成した成形体に対して、モスアイ構造形成前後での表面反射率を顕微分光装置(ラムダビジョン製)で測定した結果を
図7に示す。これより、モスアイ構造形成による反射率の低減を確認した。