特許第6127030号(P6127030)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6127030光ケーブル及び光ケーブルの外被除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127030
(24)【登録日】2017年4月14日
(45)【発行日】2017年5月10日
(54)【発明の名称】光ケーブル及び光ケーブルの外被除去方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20170424BHJP
   G02B 6/245 20060101ALI20170424BHJP
【FI】
   G02B6/44 366
   G02B6/245
   G02B6/44 381
   G02B6/44 336
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-169411(P2014-169411)
(22)【出願日】2014年8月22日
(65)【公開番号】特開2016-45352(P2016-45352A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】梶 智晃
(72)【発明者】
【氏名】塩原 悟
(72)【発明者】
【氏名】山中 正義
(72)【発明者】
【氏名】飯生 博成
(72)【発明者】
【氏名】倉本 圭太
(72)【発明者】
【氏名】中谷内 勝司
(72)【発明者】
【氏名】高見沢 和俊
(72)【発明者】
【氏名】青柳 雄二
【審査官】 里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−258889(JP,A)
【文献】 特開2012−181300(JP,A)
【文献】 特開2002−243999(JP,A)
【文献】 特開2006−286303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02−6/036
G02B 6/10
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に光ファイバを有する内層ケーブルと、
前記内層ケーブルの周囲に配置された押え巻きテープと、
前記押え巻きテープの周囲に配置された外被であって、忌避成分を含有する忌避層と、前記忌避層の外表面に形成された保護層とを有する外被と、
を有し、
前記押え巻きテープが、前記忌避層の内面全面を内側から覆いつつ、前記忌避層の内面に接着されていること
を特徴とする光ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の光ケーブルであって、
前記外被の内部で巻き回された前記押え巻きテープが広がろうとする力によって、前記押え巻きテープが前記忌避層の内面に接着されていることを特徴とする光ケーブル。
【請求項3】
請求項1に記載の光ケーブルであって、
前記押え巻きテープと前記忌避層の内面との間が熱融着されていることを特徴とする光ケーブル。
【請求項4】
請求項1に記載の光ケーブルであって、
前記押え巻きテープの少なくとも一部が前記忌避層の内面に食い込んでいることを特徴とする光ケーブル。
【請求項5】
請求項1に記載の光ケーブルであって、
前記押え巻きテープと前記忌避層の内面との間が接着剤により接着されていることを特徴とする光ケーブル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光ケーブルであって、
前記内層ケーブルは、インドアケーブルであることを特徴とする光ケーブル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の光ケーブルであって、
前記内層ケーブルと前記押え巻きテープとの間に、繊維材料から構成された介在層が配置されていることを特徴とする光ケーブル。
【請求項8】
内部に光ファイバを有する内層ケーブルと、
前記内層ケーブルの周囲に配置された押え巻きテープと、
前記押え巻きテープの周囲に配置された外被であって、忌避成分を含有する忌避層と、前記忌避層の外表面に形成された保護層とを有する外被と、
を有し、
前記押え巻きテープが、前記忌避層の内面に接着されており、
前記内層ケーブルと前記押え巻きテープとの間に、繊維材料から構成された介在層が配置されており、
前記介在層は、前記内層ケーブルの周囲に前記繊維材料を螺旋状に配置して構成されていることを特徴とする光ケーブル。
【請求項9】
請求項7に記載の光ケーブルであって、
前記介在層は、前記内層ケーブルに縦添えさせた前記繊維材料に紐を螺旋状に巻き付けることにより構成されていることを特徴とする光ケーブル。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の光ケーブルであって、
前記押え巻きテープの内側にメタル線が配置されていることを特徴とする光ケーブル。
【請求項11】
(1)内部に光ファイバを有する内層ケーブルと、
前記内層ケーブルの周囲に配置された押え巻きテープと、
前記押え巻きテープの周囲に配置された外被であって、忌避成分を含有する忌避層と、前記忌避層の外表面に形成された保護層とを有する外被と、
を有する光ケーブルの周方向に沿って前記外被及び前記押え巻きテープを切断すること、及び、
(2)前記外被の内面に前記押え巻きテープを接着させた状態で、前記外被及び前記押え巻きテープを除去すること
を行うことを特徴とする光ケーブルの外被除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブル及び光ケーブルの外被除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鼠や栗鼠などの小動物やカラスなどの鳥獣、蟻などの虫から光ケーブルを保護する鳥虫獣対策(咬害対策)として、光ケーブルの外装に金属や硬質材などの防護層を設けて光ケーブルの機械的な強度を高める対策が一般的に行われている。但し、このような防護層を設けた場合、光ケーブルが高コストになり、また、光ケーブルの可撓性が損なわれて施工性が低下するおそれがある。
【0003】
そこで、光ケーブルの外被の構成材料に、防鼠剤や防虫剤などの忌避成分を含有させることが提案されている(特許文献1参照)。また、特許文献1には、辛味成分を添加した外被の表面(外側)にコーティングを施して、耐候性及び耐摩耗性を向上させることも提案されている。
なお、咬害対策として、防鼠剤を添加した保護管を所定のルートに布設し、この保護管の中に咬害対策を施していないケーブルを布設することも提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−37526号公報
【特許文献2】特開2002−271934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ケーブルの外被の構成材料に忌避成分を含有させた場合、作業者が外被を素手で触れてしまうと、作業者の手がかぶれてしまうおそれがある。特許文献1の光ケーブルの表面にはコーティング層が形成されているものの、光ケーブルの外被を切り裂いて光ファイバを口出ししたときに、光ファイバの長手方向に沿って切り裂かれた外被の切り口に作業者が触れてしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、外被の構成材料に忌避成分を含有させた光ケーブルであって、作業者が作業中に忌避成分に触れにくい光ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、内部に光ファイバを有する内層ケーブルと、前記内層ケーブルの周囲に配置された押え巻きテープと、前記押え巻きテープの周囲に配置された外被であって、忌避成分を含有する忌避層と、前記忌避層の外表面に形成された保護層とを有する外被と、を有し、前記押え巻きテープが前記忌避層の内面に接着されていることを特徴とする光ケーブルである。
【0008】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者が作業中に忌避成分に触れにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、光ケーブル1の断面図である。
図2図2A及び図2Bは、ケーブル1を製造する製造装置の説明図である。
図3図3A図3Cは、光ケーブル1の口出し作業の説明図である。
図4図4は、別の光ケーブルの断面図である。
図5図5は、更に別の光ケーブル1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
内部に光ファイバを有する内層ケーブルと、前記内層ケーブルの周囲に配置された押え巻きテープと、前記押え巻きテープの周囲に配置された外被であって、忌避成分を含有する忌避層と、前記忌避層の外表面に形成された保護層とを有する外被と、を有し、前記押え巻きテープが前記忌避層の内面に接着されていることを特徴とする光ケーブルが明らかとなる。
このような光ケーブルによれば、作業者が作業中に忌避成分に触れにくくなる。
【0013】
前記外被の内部で巻き回された前記押え巻きテープが広がろうとする力によって、前記押え巻きテープが前記忌避層の内面に接着されていることが望ましい。また、前記押え巻きテープと前記忌避層の内面との間が熱融着されていることが望ましい。また、前記押え巻きテープの少なくとも一部が前記忌避層の内面に食い込んでいることが望ましい。また、前記押え巻きテープと前記忌避層の内面との間が接着剤により接着されていることが望ましい。これにより、作業者が作業中に忌避成分に触れにくくなる。
【0014】
前記内層ケーブルと前記押え巻きテープとの間に、繊維材料から構成された介在層が配置されていることが望ましい。これにより、内層ケーブルの損傷を抑制できる。
【0015】
前記介在層は、前記内層ケーブルの周囲に前記繊維材料を螺旋状に配置して構成されていることが望ましい。これにより、内層ケーブルの損傷をより抑制できる。
【0016】
前記介在層は、前記内層ケーブルに縦添えさせた前記繊維材料に紐を螺旋状に巻き付けることにより構成されていることが望ましい。これにより、内層ケーブルの損傷をより抑制できる。
【0017】
前記押え巻きテープの内側にメタル線が配置されていることが望ましい。これにより、光ケーブルに内層ケーブルだけでなく、メタル線も配置できる。
【0018】
(1)内部に光ファイバを有する内層ケーブルと、前記内層ケーブルの周囲に配置された押え巻きテープと、前記押え巻きテープの周囲に配置された外被であって、忌避成分を含有する忌避層と、前記忌避層の外表面に形成された保護層とを有する外被と、を有する光ケーブルの周方向に沿って前記外被及び前記押え巻きテープを切断すること、及び、(2)前記外被の内面に前記押え巻きテープを接着させた状態で、前記外被及び前記押え巻きテープを除去することを行うことを特徴とする光ケーブルの外被除去方法が明らかとなる。
このような光ケーブルの外被除去方法によれば、作業者が作業中に忌避成分に触れにくくなる。
【0019】
===光ケーブル===
<構成>
図1は、光ケーブル1の断面図である。光ケーブル1は、内層ケーブル2と、介在層4と、押え巻きテープ6と、外被8とを有する。後述するように、外被8は、忌避成分を有する忌避層8Aと、忌避層8Aの外表面に形成された保護層8Bとを有し、押え巻きテープ6は、忌避層8Aの内面に接着されている(忌避層8Aの内面にくっついている)。なお、「接着」とは、2つの物体(ここでは押え巻きテープ6と忌避層8A)がくっつくことを意味する。接着剤を用いて2つの物体をくっつけた場合だけでなく、接着剤を用いずに2つの物体をくっつけた場合も「接着」に含まれる。
【0020】
内層ケーブル2は、内部に光ファイバ2Aを有するケーブルである。内層ケーブル2の光ファイバ2Aは、ゴム若しくはプラスチックなどからなる外被構成材料によって被覆されている。ここでは、内層ケーブル2として、インドアケーブルが採用されている。
【0021】
内層ケーブル2の内部の光ファイバ2Aは、例えば光ファイバ心線である。内層ケーブル2の内部の光ファイバ2Aは、1本でも良いし、複数本でも良い。内層ケーブル2の内部に複数の光ファイバ2Aを配置する場合には、複数の光ファイバ2Aが光ファイバテープで構成されていても良い。内層ケーブル2は、光ファイバ2Aの他に、抗張力体(テンションメンバ)や引き裂き紐などを内部に有していても良い。
【0022】
介在層4は、内層ケーブル2の外側と押え巻きテープ6の内側との間に配置された繊維材料から構成される層である。介在層4は、作業者が光ケーブル1の外被8を切断工具で切断する際に(後述)、内層ケーブル2が切断工具の刃で損傷することを抑制する機能を有する。
【0023】
介在層4を構成する繊維材料は、プラスチック繊維又はガラス繊維から構成されている。ここでは、介在層4を構成する繊維材料として、プラスチック繊維であるPPヤーン(PP:ポリプロピレン)が採用されている。但し、介在層4を構成する繊維材料として、他のプラスチックヤーンも使用可能である。また、介在層4を構成する繊維材料として、ガラス繊維であるガラスヤーンも使用可能である。
【0024】
介在層4を構成する繊維材料の耐熱性は、外被8の耐熱性よりも高いことが好ましい。これにより、外被8の押出成形時の熱による繊維材料の溶融や変形を抑制することができる。
【0025】
図中の介在層4は、4本の介在物4A(ここでは4本のPPヤーン)から構成されている。4本のPPヤーンは、内層ケーブル2の外周を一方向に螺旋状に巻き付けられている。内層ケーブル2の外周に繊維材料を螺旋状に巻き付けることによって、内層ケーブル2の露出を少なくし、内層ケーブル2が切断工具の刃で損傷することをより抑制できる。
【0026】
介在層4を構成する複数の介在物4Aは、光ケーブル1の周方向に等間隔で配置されていることが好ましいが、異なる間隔で配置されても良い。周方向に隣接する介在物4Aが互いに一部重なるように配置されることが好ましい。これにより、内層ケーブル2の露出を抑制できる。但し、隣接する介在物4Aが周方向に離間していても良い。
介在層4を構成する介在物4A(例えばPPヤーン)が、螺旋状に巻き付けられるのではなく、縦添えされていても良い。但し、介在物4Aを内層ケーブル2に縦添えさせた場合には、介在物4Aを螺旋状に巻き付けた場合と比べると介在物4Aの位置が安定しない。そこで、内層ケーブル2に縦添えした介在物4Aの周囲に紐を螺旋状に巻き付けることが望ましい。これにより、介在物4Aの位置が安定する。巻き付ける紐としては、ナイロン紐、毛糸、木綿紐、ポリエステル紐及びアラミド繊維などが好適に使用される。
また、介在層4を構成する介在物4Aの本数は、4本に限らず、他の本数でも良い。
【0027】
介在層4を構成する介在物4Aは、光ケーブル1の径方向の寸法よりも、光ケーブル1の周方向の寸法が長いことが望ましい。介在物4Aがこのような形状であれば、内層ケーブル2の外周を覆いやすくなる。介在物4Aの断面形状は、楕円形状でも良いし、矩形(若しくはテープ状)でも良い。
【0028】
内層ケーブル2の外側と押え巻きテープ6の内側との間に介在層4を配置しなくても良い。この場合、内層ケーブル2の周囲には、押え巻きテープ6が直接配置されることになる。
【0029】
押え巻きテープ6は、内層ケーブル2の周囲に配置され、外被8の内面(忌避層8Aの内面)を内側から覆う部材である。ここでは、押え巻きテープ6は、介在層4を介しながら内層ケーブル2の周囲に配置されている。押え巻きテープ6が外被8の内面を内側から覆うことにより、作業者が外被8を除去する際に、作業者が忌避層8Aに触れにくくなる。
【0030】
押え巻きテープ6には、ポリイミドテープ、ポリエステルテープ、ポリプロピレンテープ、ポリエチレンテープ等が使用される。この他、押え巻きテープ6として不織布を利用することができる。この場合、不織布は、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等をテープ状に形成したものが使用される。押え巻きテープ6は、不織布にポリエステルフィルム等のフィルムを貼り合わせたものでも良い。ここでは、押え巻きテープ6として、ポリエステルテープが採用されている。
【0031】
外被8は、押え巻きテープ6の周囲を被覆するシース材から構成される部位である。ここでは、外被8を構成するシース材として難燃性ポリオレフィン系樹脂が採用されており、外被8の厚さは約2.0mmである。なお、シース材としては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ナイロン(商標登録)、フッ化エチレン又はポリプロピレン(PP)等の樹脂が使用可能である。
【0032】
外被8は、忌避層8Aと、保護層8Bとを有する。
忌避層8Aは、忌避成分を含有する層である。外被8に忌避成分が含有されるため、例えば鳥虫獣が光ケーブル1を試し噛みすると、忌避層8Aから鳥虫獣の嫌がる匂いや成分が出て鳥虫獣が光ケーブル1から退き、光ファイバ2Aの断線などを防ぐ。ここでは、忌避層8Aとして、防鼠効果を有する辛味成分であるカプサイシンを有効成分濃度0.1%以上で含有した難燃性ポリオレフィン系樹脂が採用されており、忌避層8Aの厚さは約1.5mmである。忌避成分を構成する辛味成分としては、ピペリン、シャビシン、ピペリジン、サンショオール、サンショアミド、ゼラニオール、ジンゲロール、ジンゲロン、ショウガオール等が使用可能である。なお、こしょう、山椒、生姜、辛子、わさびなどの辛味材料をシース材に練り込むことによって、忌避層8Aが構成されても良い。
また、忌避層8Aには、忌避成分として防虫・殺虫成分が含有されていても良い。例えば、有機リン系殺虫剤として、クロールピリホス、ダイアジノン、フォスメット、マラチオンが使用可能である。また、有機塩素系殺虫剤として、DDT、TDE、メトキシクロール、リンデン、クロルデンが使用可能である。また、カルバメート系殺虫剤やピレトリン殺虫剤などが使用可能である。
【0033】
保護層8Bは、忌避層8Aの外表面に形成された層である。保護層8Bには忌避成分が含まれていない。保護層8Bが忌避層8Aの外表面に形成されることによって、作業者が外被8を除去する際に、作業者が忌避成分に触れにくくなる。ここでは、保護層8Bとして、忌避層8Aの主成分と同じ難燃性ポリオレフィン系樹脂が採用されており、保護層8Bの厚さは約0.5mmである。なお、忌避層8Aの主成分とは異なる材料で保護層8Bを構成しても良い。
保護層8Bは、忌避層8Aと同様に、押出成形によって形成される。但し、忌避層8Aを押出成形によって形成した後、忌避層8Aの外側をコーティングすることによって保護層8Bを形成しても良い。例えば、フッ素樹脂コーティング、ウレタン樹脂コーティング、ナイロンコーティング、塩化ビニルコーティング、ポリエチレンコーティング等のコーティングを施すことによって、忌避層8Aを形成することが可能である。
保護層8Bは、作業者が外被8に接触することを防ぐ機能だけでなく、光ケーブル1の耐候性や耐摩擦性を向上させる機能を有することが好ましい。
【0034】
本実施形態では、押え巻きテープ6が外被8の内面(忌避層8Aの内面)に接着されている。これにより、作業者が光ケーブル1の外被8を除去する際に(後述)、押え巻きテープ6が外被8と一緒に除去されるため、作業者が忌避層8Aの内面に触れにくくなる。ここでは、押え巻きテープ6と忌避層8Aを軟化点まで熱することによって押え巻きテープ6と忌避層8Aとを熱融着させることによって、押え巻きテープ6が外被8の内面(忌避層8Aの内面)に接着されている。この熱融着では、外被8(忌避層8A又は保護層8B)の押出成形時の熱を利用しても良い。
【0035】
熱融着の代わりに、押え巻きテープ6の一部を忌避層8Aに食い込ませることによって、押え巻きテープ6を忌避層8Aの内面に接着させても良い。この場合には、忌避層8Aを形成するときの樹脂の押出圧を調整することによって、押え巻きテープ6の皺を樹脂に食い込ませて、若しくは押え巻きテープ6の繊維を樹脂に食い込ませて、押え巻きテープ6と忌避層8Aの内面との間を物理的に接着させることができる。
【0036】
また、接着剤によって、押え巻きテープ6と忌避層8Aの内面との間を化学的に接着させても良い。この場合には、押え巻きテープ6の周囲に接着剤を塗布した状態で押え巻きテープ6の周囲に忌避層8Aとなる樹脂を形成すると良い。
【0037】
更に別の方法として、内層ケーブル2の周囲に渦巻き状に巻き回された押え巻きテープ6が広がろうとする力によって(押え巻きテープ6のバネ力によって)、押え巻きテープ6を忌避層8Aの内面に接着させる方法もある。
図2A及び図2Bは、この方法でケーブル1を製造する製造装置の説明図である。図2Aに示すように、介在層4を構成する介在物4Aを螺旋状に巻いた内層ケーブル2と、押え巻きテープ6とが押出機に供給される。図2Bに示すように、介在物4Aを螺旋状に巻いた内層ケーブル2の周囲に押え巻きテープ6が渦巻き状に巻き回される。渦巻き状の押え巻きテープ6は、不図示の工具(テープフォーマ)によって、下流側ほど外径が絞られて先細になっている。押え巻きテープ6には加熱による癖付けは施されていないため、テープフォーマ(押え巻きテープ6を先細の渦巻き状に絞る不図示の工具)を押え巻きテープ6が通過すると、押え巻きテープ6は元の状態に広がろうとするが、ここでは、押え巻きテープ6を渦巻き状に巻き回した直後に(押え巻きテープ6が広がってしまう前に)、押え巻きテープ6を巻いた内層ケーブル2を押出機に送り出して、押え巻きテープ6の周囲に樹脂(忌避層8A)を形成する。なお、押え巻きテープ6が先細に巻き回されているため、不図示のテープフォーマを通過した押え巻きテープ6はすぐに元の状態に広がりにくい状態になるので、押え巻きテープ6が広がってしまう前に樹脂(忌避層8A)を形成することが容易になる。これにより、押え巻きテープ6が広がろうとする力によって(押え巻きテープ6のバネ力によって)、押え巻きテープ6を忌避層8Aの内面に接着できる。
【0038】
本実施形態では、忌避層8Aの内面を押え巻きテープ6で覆うだけなので、光ケーブル1の製造工程が簡潔なものになる。仮に押え巻きテープ6ではなく樹脂で忌避層8Aの内面を覆うとすると、光ケーブル1の製造工程が増えてしまい、また、樹脂の押出圧の調整などが必要になってしまい、樹脂の使用量が増えるため光ケーブル1の材料費が上がり、光ケーブル1が高コストになってしまう。
【0039】
<口出し作業方法(外被除去方法)>
図3A図3Cは、光ケーブル1の口出し作業の説明図である。
【0040】
まず、作業者は、図3Aに示すように、光ケーブル1の外被8及び押え巻きテープ6を切断工具10で周方向に沿って切断し、外被8及び押え巻きテープ6を輪切りにする。切断工具10としては、刃の挿入深さを調整可能であり、刃の対向する位置にガイドが設けられているものが好ましい。例えば、切断工具10として、ジェフコム株式会社製の同軸ケーブルストリッパCCS−600や、IDEAL製のCoaxial cable stripper等が使用可能である。
【0041】
本実施形態では、外被8の忌避層8Aの内面に押え巻きテープ6が接着されている。このため、外被8とともに押え巻きテープ6を切断することが容易になっている。
【0042】
また、本実施形態では、内層ケーブル2(インドアケーブル)の周囲には介在層4を構成する繊維材料が配置されている。このため、切断工具10の刃が押え巻きテープ6よりも内側に達しても、内層ケーブル2の損傷が抑制される。更に、本実施形態では、介在層4を構成する繊維材料が、内層ケーブル2の周囲に螺旋状に配置されている。これにより、内層ケーブル2の露出面積が小さくなるため、切断工具10の刃が内層ケーブル2に接する可能性が低減され、内層ケーブル2の損傷をより抑制できる。このように内層ケーブル2の周囲に介在層4が配置されているため、外被8とともに押え巻きテープ6を切断することが容易になり、安全な作業が可能になるという効果もある。
【0043】
なお、外被8の表面には保護層8Bが形成されるため、作業者が切断作業時に光ケーブル1を掴んでも、作業者が忌避層8Aに接触せずに済む。
【0044】
次に、作業者は、図3Bに示すように、光ケーブル1の長手方向に沿って外被8を引き抜き、外被8を除去する。外被8の外表面には保護層8Bがあるので、作業者が外被8を引き抜くときに光ケーブル1を掴んでも、作業者が忌避層8Aに接触せずに済む。また、外被8の内面に押え巻きテープ6が接着された状態で、外被8が引き抜かれるため、作業者が忌避層8Aに触れにくくなっている。
【0045】
本実施形態では、光ケーブル1の周方向に沿って外被8を切断しているため(図3A参照)、図3Bに示すように、切断面が、光ケーブル1の周方向になる。このため、切断面が光ケーブル1(光ファイバ2A)の長手方向に沿っている場合と比べると、忌避層8Aの切り口の露出が少ない。したがって、光ケーブル1の周方向に沿って外被8を切断することによって、作業者が忌避層8Aに触れにくくなる。なお、仮に光ケーブル1の外被8がケーブル長手方向に沿って切断されてしまうと(外被8が切り裂かれてしまうと)、外被の切り口が長いため、作業者が切り口に触れやすくなってしまう。
【0046】
最後に、作業者は、図3Cに示すように、内層ケーブル2(インドアケーブル)のノッチに沿って内層ケーブル2を切り裂いて、内層ケーブル2の光ファイバ2Aを口出しする。本実施形態の内層ケーブル2の外被構成材料には忌避層8Aは含まれていないので、光ファイバ2Aの長手方向に沿って内層ケーブル2を切り裂いても、問題は生じない。
【0047】
<実施例>
・実施例1
細径低摩擦インドアケーブルの周囲に、介在層4として4本のPPヤーン3000デニールを一方向に螺旋状に巻き付け、押え巻きテープ6としてポリエステルテープを採用し、押え巻きテープ6の周囲に外被8を配置して、図1の構成の光ケーブル1を作成した。外被8を構成するシース材として難燃性ポリオレフィン系樹脂が採用されている。外被8の忌避層8Aには、防鼠効果を有する辛味成分であるカプサイシンを有効成分濃度0.1%以上で含有した難燃性ポリオレフィン系樹脂が採用されており、忌避層8Aの厚さは約1.5mmである。保護層8Bには、忌避層8Aの主成分と同じ難燃性ポリオレフィン系樹脂が採用されており、忌避成分は含まれておらず、保護層8Bの厚さは約0.5mmである。
押え巻きテープ6は、熱融着によって、忌避層8Aの内面に接着されている。また、押え巻きテープ6は、厚さの異なる4種類(0.016mm、0.019mm、0.025mm及び0.030mm)をそれぞれ用いた。
比較例として、熱融着を施さなかった光ケーブルを作成した。
【0048】
光ケーブルの評価方法として、口出し作業で外被8(及び押え巻きテープ6)を輪切りにして外被8を除去した際に、押え巻きテープ6が外被8の内面に接着されたまま外被8が引き抜かれるかどうかを基準に評価を行った。3種類の口出し長さ(50mm、100mm、500mm)でそれぞれ評価を行った。なお、光ケーブルを輪切りにする際には、切断工具10の刃の挿入深さは、押え巻きテープ6の厚さに応じて適宜調整されている。評価結果は、次の表1に示す通りである。
【表1】
【0049】
表1では、押え巻きテープ6が外被8の内面に接着されたまま外被8が引き抜かれたものを○印で示している。また、押え巻きテープ6を除去できずに残ってしまったものを×印で示している。
表1に示す通り、押え巻きテープ6が忌避層8Aの内面に融着されていれば、口出し長さによらず、外被8を除去する際に、押え巻きテープ6が外被8の内面に接着されたまま外被8を引き抜くことが可能であることが確認された。なお、外被8とともに押え巻きテープ6を輪切りにする切断作業を容易にするには、押え巻きテープ6の厚さが0.025mm以下であることが望ましいことが確認された。
【0050】
・実施例2
実施例1と同様に、介在層4として4本のPPヤーン3000デニールを一方向に螺旋状に巻き付けて、図1の構成の光ケーブル1を作成した。比較例として、介在層4であるPPヤーンを螺旋状ではなく、縦添えで配置して(インドアケーブルの長手方向に沿って配置して)、光ケーブルを作成した。
次に、光ケーブルを500mmで切断し、光ケーブルをエポキシ樹脂で固定し、ケーブル長手方向の位置がそれぞれ異なる10箇所で光ケーブルを切断し、それぞれの断面において、インドアケーブルの露出率(インドアケーブルの周長に対する介在層4の存在する領域の周長の割合)を評価した。なお、インドアケーブルの露出率が低ければ、光ケーブルの外被8(及び押え巻きテープ6)を輪切りする際に、インドアケーブルを損傷させにくくなると考えられる。評価結果は、次の表2に示す通りである。
【表2】
【0051】
表2の比較例に示す通り、PPヤーンを縦添えした場合、PPヤーンの位置が安定せず、インドアケーブルの一部が露出することが確認された。一方、表2の実施例2に示す通り、PPヤーンを螺旋状に巻き付けた場合、PPヤーンの位置が安定し、更にインドアケーブルの露出を抑制できることが確認された。
この評価結果から、介在層4を構成する繊維材料をインドアケーブル(内層ケーブル)の周囲に螺旋状に配置することが望ましいことが確認された。但し、繊維材料をインドアケーブルに縦添えさせた場合であっても、インドアケーブルの外周の少なくとも一部が覆われるため、介在層4を設けない場合と比べればインドアケーブルを損傷させにくくなると考えられる。
【0052】
・実施例3
上記の比較例と同様に、介在層4であるPPヤーンを螺旋状ではなく、縦添えで配置して(インドアケーブルの長手方向に沿って配置して)、更に縦添えしたPPヤーンの周囲に紐を螺旋状に巻き付けて、光ケーブルを作成した。そして、上記の実施例2と同様に、実施例3の光ケーブルを評価した。評価結果は、次の表3に示す通りである。
【表3】
【0053】
表3の実施例3に示す通り、紐を螺旋状に巻き付けた場合、PPヤーンの位置が安定し、更にインドアケーブルの露出を抑制できることが確認された。なお、既に表2の比較例で示した通り、インドアケーブルに紐を素巻きしていない場合には、インドアケーブルの一部が露出することが確認された。
この評価結果から、介在層4を構成する繊維材料をインドアケーブル(内層ケーブル)の周囲に縦添えさせる場合には、インドアケーブルに縦添えした介在物の周囲に紐を螺旋状に巻き付けることが望ましいことが確認された。
【0054】
===その他===
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【0055】
<光ケーブル1について>
前述の実施形態によれば、押え巻きテープ6の内側には、内層ケーブル2(インドアケーブル)と介在層4だけが配置されていた。但し、他の部材が押え巻きテープ6の内側に配置されても良い。
図4は、別の光ケーブル1の断面図である。この光ケーブル1は、2本のメタル線3を有する。ここでは、撚られた2本のメタル線3が内層ケーブル2に縦添えされている。但し、2本のメタル線3が撚られていなくても良い。押え巻きテープ6の内側にメタル線3を配置する場合、図4に示すように、メタル線3の周囲に介在層4を配置することが望ましい。これにより、外被8(及び押え巻きテープ6)を輪切りにする際に、メタル線3が切断工具10の刃によって損傷することを抑制できる。また、この場合においても、介在層4を構成する複数の介在物4Aを内層ケーブル2及びメタル線3の周囲に螺旋状に巻き付ければ、内層ケーブル2及びメタル線3の露出を少なくし、内層ケーブル2及びメタル線3が切断工具10の刃で損傷することをより抑制できる。なお、内層ケーブル2とメタル線3とを一緒に介在物4Aで巻き付けても良いし、内層ケーブル2とメタル線3を別々に介在物4で巻き付けても良い。
【0056】
また、前述の実施形態によれば、光ケーブル1の内層ケーブル2(インドアケーブル)と押え巻きテープ6との間に、繊維材料から構成された介在層4が配置されていた。但し、図5に示すように、光ケーブル1が介在層4を備えていなくても良い。この場合、外被8(及び押え巻きテープ6)を輪切りにする際に、切断工具10の刃が内層ケーブル2の周囲に接触し、内層ケーブル2を損傷させるおそれがある。このため、光ファイバ2Aを損傷させない程度に内層ケーブル2が損傷することが許容されるのであれば、光ケーブル1が介在層4を備えていなくても良い。
【符号の説明】
【0057】
1 光ケーブル、2 内層ケーブル、2A 光ファイバ、
3 メタル線、4 介在層、4A 介在物、6 押え巻きテープ、
8 外被、8A 忌避層、8B 保護層、
10 切断工具
図1
図2
図3
図4
図5