特許第6127253号(P6127253)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127253
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】中性子発生装置
(51)【国際特許分類】
   G21K 5/08 20060101AFI20170508BHJP
   G21K 5/02 20060101ALI20170508BHJP
   H05H 3/06 20060101ALI20170508BHJP
   H05H 6/00 20060101ALI20170508BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   G21K5/08 N
   G21K5/02 N
   H05H3/06
   H05H6/00
   A61N5/10 H
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-267702(P2012-267702)
(22)【出願日】2012年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-115123(P2014-115123A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】久利 修平
(72)【発明者】
【氏名】松下 出
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利治
(72)【発明者】
【氏名】堀池 寛
(72)【発明者】
【氏名】村田 勲
(72)【発明者】
【氏名】帆足 英二
(72)【発明者】
【氏名】土井 幸子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 逸郎
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−010700(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/073966(WO,A1)
【文献】 特開2007−010689(JP,A)
【文献】 特公昭42−012030(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21K 5/08
A61N 5/10
G21K 5/02
G21K 5/04
H05H 3/06
H05H 6/00
G21G 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に液体金属を吐出するノズルの吐出口が配置され、且つ、所定位置に陽子ビームの照射位置が設定されると共に少なくとも当該照射位置を含む一定領域が炭素材料、炭素繊維複合材料、SiC、SiC繊維複合材料若しくはその混合物又はアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金の軽元素材料から構成され且つその内部に液体金属が流れる樋状の流路と、
前記流路に設けられた、リチウムとの共存性を有する金属材料からなる薄板状のライナーと、
を備え
前記ライナーは、前記吐出口にだけ固定され、熱膨張により前記流路に対してスライド可能であること
を特徴とする中性子発生装置。
【請求項2】
更に、前記吐出口配置される位置は、前記流路の底面から上側の位置であって、所定速度で液体金属を吐出した場合に前記陽子ビームの照射位置より下流域まで当該液体金属の噴流を飛ばせる位置であることを特徴とする請求項1に記載の中性子発生装置。
【請求項3】
前記流路及びノズルが気密チャンバー内に収納されており、当該チャンバーが炭素材料、炭素繊維複合材料、SiC、SiC繊維複合材料若しくはその混合物又はアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金の軽元素材料により構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の中性子発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体金属に陽子ビームを照射して中性子を発生させる中性子発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、ホウ素中性子捕捉療法(Boron neutron capture therapy; BNCT)が癌細胞を選択的に殺傷できる技術として注目されている。BNCTでは、ターゲットとして液体リチウム等の液体金属を用い、このターゲットに陽子を照射することで中性子を発生させる中性子発生装置が用いられる。前記液体リチウムの循環装置は、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0003】
当該特許文献1に記載の液体リチウムの循環装置は、2段階縮流ノズルから液体リチウムの噴流を略水平の流路上に流す構造であり、流路は上部開放コ字型断面矩形流路(樋状)であって気密チャンバー内に収納されている。これらチャンバーや流路はSUS304製であるが、実際にBNCTで用いる場合には低放射化フェライト鋼などのリチウムとの共立性のある金属材料を用いることが予定される。なお、この特許文献1に記載の液体リチウムの循環装置は、実験装置であるため中性子照射装置は設けられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】IFMIF液体金属リチウムターゲット流に関する実験研究 堀池、近藤、金村他 J.Plasma Fusion Res. Vol.84, No.9 (2008) 600-605
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の液体リチウム循環装置において流路を流れる液体リチウムに中性子を照射すると、フェライト鋼、ステンレス鋼等金属材料は中性子照射に伴い、中性子線の阻止能の関係から二次γ線が多く発生するという問題点があった。この発明はかかる問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る中性子発生装置は、所定位置に陽子ビームの照射位置が設定されると共に少なくとも当該照射位置を含む一定領域が炭素材料、炭素繊維複合材料、SiC、SiC繊維複合材料若しくはその混合物又はアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金などの軽元素材料(以下、「炭素系材料等」という)から構成され且つその内部に液体金属が流れる樋状の流路を備えたことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、陽子ビームの照射位置を含む部分が少なくとも炭素材料又はその化合物により構成されているため、中性子照射に伴う二次γ線の発生量が抑止される。流路全体を炭素系材料等で構成することも含まれる。前記照射位置は、例えば中性子線が透過し散乱する半径約0.2mの領域を含む。なお、ノズルの吐出口は流路の底面と同一面上に配置しても良いし、当該吐出口を底面の少し上側に配置しても良い。更に、中性子発生装置は略水平方向から略垂直方向に設置できるものとする。
【0008】
また、上記中性子発生装置において、前記液体金属の吐出口を、前記流路の底面から上側であって、所定速度で液体金属を吐出した場合に前記陽子ビームの照射位置より下流域まで当該液体金属の噴流を飛ばせる位置に設けるのが好ましい。
【0009】
このようにすれば、陽子ビーム照射位置において液体金属の噴流が空中にあることから、流路の当該照射位置を炭素系材料等で構成しても、液体金属のターゲットの流動状況が流路の表面状態に左右されることはない。
【0010】
また、上記中性子発生装置において、前記流路及びノズルが気密チャンバー内に収納されており、当該チャンバーが炭素材料、炭素繊維複合材料、SiC、SiC繊維複合材料若しくはその混合物又はアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金などの軽元素材料により構成するのが好ましい。
【0011】
更に、上記中性子発生装置において、前記流路に、低放射化金属などリチウムと共存性のある金属材料からなり且つ薄板状のライナーを設けるようにするのが好ましい。当該ライナーは、前記流路に対してスライド可能に設置するのが好ましい。
【0012】
更に、上記中性子発生装置において、前記流路を構成する炭素材料又はその化合物は、黒鉛粒子を焼結して成形したものとするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施の形態にかかる中性子発生装置を示す構成図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3図1に示した中性子発生装置の吐出口の拡大図である。
図4図3の一部拡大図である。
図5図1のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、この発明の実施の形態にかかる中性子発生装置を示す構成図である。図2(a)は、図1のA−A断面図であり、(b)はその一部断面図である。図3は、吐出口の拡大図、図4図3の拡大図である。図5は、図1のB−B断面図である。この中性子発生装置100は、ハニカム板又は複数の多孔質板を有する整流部1と、整流部1に接続され且つ吐出した液体リチウム噴流が流れる流路2と、当該流路2を収納するチャンバー3とを備える。
【0015】
このチャンバー3の下流端部31は漏斗状に絞られており、その先は配管を通じてタンク(図示省略)に接続されている。チャンバー3の略中央上部には陽子ビームを入射する陽子ビーム入射管4が設けられている。また、チャンバー3には、内部のエアやガスを吸引する真空排気ポート5が設けられている。チャンバー3の下流端部31の近傍は、熱による伸縮を吸収するためベローズ7を装着した伸縮可能な構造となっている。また、チャンバー3内は、前記真空排気ポート5から真空引きされるため、整流部1との取り合い部分等は気密性が高く処理される。また、チャンバー3は、図2及び図5に示すように、断面が半円形形状あるいは矩形断面でリブ補強を施した形状である。
【0016】
チャンバー3は、C/Cコンポジット、グラファイトシート、SiC、SiC繊維複合材、炭素繊維強化プラスチック、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金などの軽元素材料等から成形する。チャンバー3を炭素系材料等により構成することで、二次γ線の発生量を抑え低放射化を実現できる。特にチャンバー3は治療を受ける患者との距離が近いため、二次ガンマ線の発生量を抑える構造材を用いるのが好ましい。また、2枚の鋼板の間に類似素材からなる波板体又はハニカム構造体を配した2重構造材、波状中芯を2枚の鋼板で挟んだ段ボール構造材等、あるいはそれらの組合せから構成しても良い(図示省略)。
【0017】
前記流路2は、流路断面が矩形の樋状であり、その一端21はチャンバー3の一端32側で整流部1と接続し、他端22はチャンバー3の下流端部31の近傍に位置する。流路2はチャンバー3内で支持部材(図示省略)により底部33に支持される。流路2は、図2図4に示すように、水平方向に対して僅かに傾斜しており、循環停止時に液体リチウムが流路2から最終的に流れ落ちるようにしてある。流路2のうち、陽子ビーム入射管4の直下の位置が、陽子ビームの照射位置となる。
【0018】
流路2は、炭素材料、炭素繊維複合材料、SiC、SiC繊維複合材料若しくはその混合物又はアルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金などの軽元素材料から構成される。特に、中性子阻止能が小さく吸収断面積が小さい素材により構成するのが好ましい。具体的には、流路2は、数μm〜数10μmの黒鉛粒子を冷間静水圧プレス(CIP:Cold Isostatic Press)により当該樋状に予備成形し、炉内で1400℃にて所定時間加熱し、焼結することで製作する。またはSiC繊維複合材を使用し、流路2の底面23は機械加工により所定の表面粗さに平滑化する。また、側壁部24も機械加工により所定の表面粗さに平滑化するのが好ましい。これら炭素系材料により構成することで、中性子による二次ガンマ線の発生抑止の効果が得られる。流路2を炭素系材料により構成することで、低放射化フェライト鋼で問題となる照射硬化、照射脆化が生じず、流路2の交換等のメンテナンス負荷が軽減される。
【0019】
流路2の表面には、ライナー8を設けてもよい。このライナー8は、低放射化フェライト鋼などリチウムと共存性が高く放射化されにくい金属の薄板からなり、流路2の底面23、側壁部24及び上端面25に被覆されている。ライナー8は、2次ガンマ線の発生を抑止するために薄いものを用いるのが好ましい。具体的には、0.2mm〜1.0mmとするのが良い。ライナー8は、リチウム粒子がカーボン組織の中に入り込むのを防止するので、流路2の割れを防止できる。また、ライナー8の表面粗さは、液体リチウムが滑らかに流れるようにRa0.4〜Ra1.6程度とする。また、ライナー8は、流路2に対して固定するのではなく、流路2の長手方向に当該流路2に対して相対的にスライドする構造とする。
【0020】
また、整流部1の先端は、2段階縮流ノズル11となる。このノズル11は、低放射化フェライト鋼により構成される。ノズル11は前記流路2の端部に乗った形となり、ノズル11と流路2の底面23との間には、流路2との線膨張係数の違いから多少の隙間など熱膨張差吸収構造を設ける。この隙間Sは、垂直方向が0.5mm程度、水平方向は整流部1の長さによるが1mm〜3mm程度である。また、ノズル11の吐出口12は帯状であり、その下側部分は山形の溝13が形成されている。この溝13により吐出口12の下縁部分12aが鋭角になり、液体リチウムの吐出後の自由表面の乱れを抑止する。また、ノズル11の末縁部分12bも流路2の底面23に対して鋭角に突出している。例えば、山形の溝13の斜面角度αは、底面23に対して45°となる。
【0021】
ライナー8の端部81は、流路2の底面23から折れ曲がって上方に傾斜し、前記山形の溝13の頂部13bに至る。ライナー8の端部81により、ノズル11と底面23との隙間Sがカバーされるので、吐出した液体リチウムが当該隙間Sに入り込むのが防止される。また、ライナー8の端部を溝13にのみ固定することで、ライナー8の端部が吐出口12から離れることなく、且つライナー8が当該端部を基点として流路2の上を熱膨張によりスライドすることになる。
【0022】
吐出口12の下縁部分12aの高さhは、ノズル11から所定流速(10m/s以上の高流速)で液体リチウムを吐出した際に、陽子ビーム照射位置において液体リチウムの噴流が空中にある状態にできる高さとする。例えば、当該高さhは流速20m/sに対し3mmである。また、前記陽子ビーム入射管4の位置は、ノズル11の吐出口12から50mm〜350mmとする。この位置関係において、液体リチウムをノズル11から流速20m/sで吐出すると、液体リチウムの主流部分が底面23から浮いた状態で膜流となって噴射され、陽子ビームの照射位置において液体リチウムの膜流からなるターゲットが形成されることになる。
【0023】
また、熱サイクルにより金属のライナー8に微小な変形が生じても、液体リチウムが空中を飛んでおり、着地地点ではすでに陽子ビームを照射した後になるため、当該微小変形の影響は受けない。
【0024】
次に、この中性子発生装置100の動作について説明する。ポンプ(図示省略)により整流部1に液体リチウムを導入すると、液体リチウムはハニカム及び多孔質板によりその流れが整えられ、ノズル11の吐出口12から吐出される。ノズル11から吐出する際の液体リチウム噴流の速度は所定値まで高められる。また、ノズル11の吐出口12の下端部分12aは流路2の底面23から例えば3mm上方に位置しているので、液体リチウムの噴流は、膜状となって流路2の底面23から浮いた状態で空中を飛ぶ。この速度で吐出した液体リチウムの噴流は、重力により自由落下しながら前記陽子ビーム入射管4の位置よりも更に下流まで飛び、その先で流路2の底面23に近づきながら、最後は底面23に到達して流路上を流れる。
【0025】
このとき、前記底面23にはライナー8が配され、このライナー8の表面に液体リチウムの噴流が当たり、その下の炭素系材料からなる面には当たらないので、炭素粒子、素材粒界の間に液体リチウムが含侵して膨張収縮により流路2に割れを生じさせたりするのを防止できる。また、ライナー8は金属であり、流路2が炭素系材料でありこれらは線膨張率が異なる。ライナー8と底面23とは互いに拘束しあう構造とではなく、機器の昇温降温による熱サイクルによっても応力が生じないスライド構造となっているため、ライナー8に変形などが生じることがなく、流路2に割れが生じることがない。また、当該ライナー8は液体リチウムの噴流が底面23に直接噴き付けられるのを防止することにあるから、ライナー8が剥がれても当該ライナー8による炭素系素材部分の割れ防止効果は確保される。更に、ライナー8は流路2に対して固定した構造ではないため、その交換が容易である。
【0026】
また、流路2に対して液体リチウム噴流を噴出させた場合、噴流が中空にあるので底面23には直接あたらないが、側面壁24には常に液体リチウム噴流が噴き付けられている状態になる。しかし、側面壁24も前記ライナー8により被覆されているので、液体リチウムが炭素系粒子の間に入り込むことが防止され、側面壁24の割れが防止される。特に側面壁24の割れを防止することで、流路2から液体リチウムが漏れて外部へこぼれ落ちることを防止できる。
【0027】
更に、ライナー8は上端面25にも配置されているので、当該上端面25においても流路2の割れと外部へのこぼれが防止されることになる。また、液体リチウムの噴流は、運転開始時など吐出時の流速が低いときは吐出口12から液体リチウムが底面23上のライナー8に当たりながら、徐々に遠くまで空中を飛ぶようになる。このように、吐出の際の液体リチウムのこぼれ及び初期段階での噴出で液体リチウムが吐出口12手前でこぼれたとしても、液体リチウムが炭素粒子内に含浸するのを防止できる。
【0028】
また、流路2の底面23から浮いた状態で液体リチウム噴流が形成され、これが陽子ビーム照射のターゲットになるところ、このターゲットに陽子ビームを照射することで中性子が発生し、この中性子がターゲットの下に位置するライナー8に照射される。ここで僅かながら二次ガンマ線が発生するが、ライナー8自体を薄板で形成しているため、流路全体を構造材用金属で構成した場合に比べて発生する二次ガンマ線の量は極めて低くなる。これは、中性子の照射を受ける患者に対して好ましいことである。
【0029】
また、炭素材料は放射化し難いため、廃棄物量削減効果もある。そして、低放射化フェライト鋼で課題となっていた照射硬化・照射脆化が起こりにくいため、流路2が初期の機械的特性を維持しやすく、また交換等のメンテナンス頻度も少なくなる。更に、ライナー8に金属材料を用いているが、ライナー8は機械的強度を受け持つ部材ではないため、照射硬化や照射脆化が起きても亀裂が生じる等しない限り交換の必要性はない。また、ライナー8のみであれば、交換後の放射性廃棄物としての体積が小さいので、処分しやすい。
【0030】
ターゲットで発生した中性子は、流路2及びチャンバー3を通過してその下方に進む。
【0031】
以上、この発明の中性子発生装置100によれば、中性子の生成と照射に起因した二次γ線の発生量を最小限にできる。また、照射硬化や照射脆化に伴う安全上のリスクを最小限にできる。このため、交換などのメンテナンスの頻度が下がり、ランニングコストが下がる。
【0032】
なお、流路2のうち陽子ビームの照射位置を含む一部分のみを炭素材料で構成しても良い(図示省略)。例えば、低放射化フェライト鋼で製作した流路に黒鉛粒子のCIP材を嵌め込むように設ければよい。CIP材を嵌め込む位置は、流路2の吐出口12側の端部から350mmの範囲としても良い。また、上記ライナー8は省略しても良い。この場合、黒鉛粒子の間に液体リチウムが含浸して表面に微小凹凸等が生じても、陽子ビームの照射位置において液体リチウムの膜流が飛んでいる状態であれば、当該ターゲット表面の状態が影響を受けることはない。
【0033】
吐出口12の下縁部分12aの高さhをなくし、底面23(ライナー8の表面)と同じ高さとすることもできる(図示省略)。この場合、液体リチウムは、流路2の底面23をバックウォールとして流れるようになる。
【0034】
また、上記実施の形態では中性子発生装置100全体を水平方向に設置した構成例を示したが、装置全体を略垂直方向に設置しても良い。具体的には、流路2が直立している垂直流路となる場合、リチウム噴流の平坦性を保持する機能と陽子ビームの突き抜け抑止壁としての機能とが当該流路2の主たる機能となる。
【0035】
そして、ターゲットに陽子ビームを照射することで中性子が発生する。この中性子は、ターゲット近傍に立っている患者の患部に照射される。このように略垂直方向に中性子発生装置100を設置した場合には、患者が立ち姿勢または座り姿勢で治療を受けることができる。
【符号の説明】
【0036】
100 中性子発生装置
1 整流部
2 流路
23 底面
24 側壁部
3 チャンバー
4 陽子ビーム入射管
5 真空排気ポート
8 ライナー
図1
図2
図3
図4
図5