特許第6127941号(P6127941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6127941
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】はんだ接合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/14 20060101AFI20170508BHJP
   B23K 35/40 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   B23K35/14 A
   B23K35/40 340D
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-248018(P2013-248018)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-104746(P2015-104746A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099597
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 賢二
(74)【代理人】
【識別番号】100119208
【弁理士】
【氏名又は名称】岩永 勇二
(74)【代理人】
【識別番号】100124235
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100124246
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 和光
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】小田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】佐川 英之
(72)【発明者】
【氏名】黒木 一真
(72)【発明者】
【氏名】黒田 洋光
(72)【発明者】
【氏名】田中 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】沼田 浩明
【審査官】 大畑 通隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−161821(JP,A)
【文献】 特開昭62−001856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
C23C 10/00−12/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Znを主成分として含有するZn系金属材と、前記Zn系金属材上に設けられたAlを主成分として含有するAl系金属材と、前記Al系金属材上に設けられたCuを主成分として含有するCu系金属材と、前記Cu系金属材上に設けられた、銅よりも酸素との親和性が高い金属及び酸素を含有するアモルファス層を有する表面処理層とを備えたはんだ接合材料。
【請求項2】
前記はんだ接合材料は板状であり、前記Zn系金属材の片面若しくは両面に、前記Al系金属材、前記Cu系金属材、及び前記表面処理層が設けられている請求項1に記載のはんだ接合材料。
【請求項3】
前記はんだ接合材料は線状であり、前記Zn系金属材の外周に前記Al系金属材が被覆され、前記Al系金属材の外周に前記Cu系金属材が被覆され、前記Cu系金属材の外周に前記表面処理層が被覆されている請求項1に記載のはんだ接合材料。
【請求項4】
前記アモルファス層は、前記Cu系金属材から拡散した銅をさらに含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のはんだ接合材料。
【請求項5】
前記表面処理層は、前記アモルファス層の下に、さらに、銅及び銅よりも酸素との親和性が高い金属、又は、銅、銅よりも酸素との親和性が高い金属及び酸素を含有する拡散層を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のはんだ接合材料。
【請求項6】
前記銅よりも酸素との親和性が高い金属は、亜鉛である請求項1〜5のいずれか1項に記載のはんだ接合材料。
【請求項7】
前記表面処理層の厚さは、3nm以上100nm以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載のはんだ接合材料。
【請求項8】
Znを主成分として含有するZn系金属材上にAlを主成分として含有するAl系金属材を設ける工程と、前記Al系金属材上にCuを主成分として含有するCu系金属材を設ける工程と、前記Cu系金属材の表面に、銅よりも酸素との親和性が高い金属からなる層を形成し、形成された当該層を、30℃以上300℃以下の温度で、5秒以上60分以下の時間で大気中で加熱処理することによって、表面処理層を形成する工程とを含み、
前記表面処理層の厚さは、3nm以上100nm以下であるはんだ接合材料の製造方法。
【請求項9】
前記銅よりも酸素との親和性が高い金属は、亜鉛である請求項8に記載のはんだ接合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ接合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電機・電子機器の部品の電気的接合に使用されている接合材料であるはんだには、従来、鉛が含まれていた。しかし、環境への意識が高まる中、2003年頃から、人体への有害性が指摘される鉛の使用を規制する動きが欧州を中心に広がっており、鉛を含有しない、鉛フリー代替材料の開発が進められてきている。
【0003】
はんだは、融点により高温、中温、低温の3種類に分けられる。このうち、鉛フリーの中温はんだ及び低温はんだは、既に実用化されているが、鉛フリー高温はんだについては、市場要求(260℃耐熱性、高熱電導性、接合信頼性、低コスト)のすべてを満たすものが存在していなかった。
【0004】
そこで、市場要求のすべてを満たす鉛フリー高温はんだの開発が求められており、開発されたものとして、特許文献1に記載の鉛フリー接合材料がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−71347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の鉛フリー接合材料は、優れた特性を有するものであるが、最外層にCuを用いた場合、保管時にCu酸化膜が表面に成長する。Cu酸化膜の存在は接合時の濡れを阻害する為、接合性を悪化させる。このため、接合時にCu酸化膜を還元する雰囲気(例えば水素やギ酸)で行なうことを好ましくは必要とするので、接合時の作業性に改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、接合時にCu酸化膜の還元雰囲気で行なう必要の無い鉛フリー高温はんだ接合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、下記[1]〜[10]のはんだ接合材料及びその製造方法を提供する。
【0009】
[1]Znを主成分として含有するZn系金属材と、前記Zn系金属材上に設けられたAlを主成分として含有するAl系金属材と、前記Al系金属材上に設けられたCuを主成分として含有するCu系金属材と、前記Cu系金属材上に設けられた、銅よりも酸素との親和性が高い金属及び酸素を含有するアモルファス層を有する表面処理層とを備えたはんだ接合材料。
[2]前記はんだ接合材料は板状であり、前記Zn系金属材の片面若しくは両面に、前記Al系金属材、前記Cu系金属材、及び前記表面処理層が設けられている前記[1]に記載のはんだ接合材料。
[3]前記はんだ接合材料は線状であり、前記Zn系金属材の外周に前記Al系金属材が被覆され、前記Al系金属材の外周に前記Cu系金属材が被覆され、前記Cu系金属材の外周に前記表面処理層が被覆されている前記[1]に記載のはんだ接合材料。
[4]前記アモルファス層は、前記Cu系金属材から拡散した銅をさらに含有する前記[1]〜[3]の何れか1つに記載のはんだ接合材料。
[5]前記表面処理層は、前記アモルファス層の下に、さらに、銅及び銅よりも酸素との親和性が高い金属、又は、銅、銅よりも酸素との親和性が高い金属及び酸素を含有する拡散層を有する前記[1]〜[4]の何れか1つに記載のはんだ接合材料。
[6]前記銅よりも酸素との親和性が高い金属は、亜鉛である前記[1]〜[5]の何れか1つに記載のはんだ接合材料。
[7]前記表面処理層の厚さは、3nm以上100nm以下である前記[1]〜[6]の何れか1つに記載のはんだ接合材料。
[8]Znを主成分として含有するZn系金属材上にAlを主成分として含有するAl系金属材を設ける工程と、前記Al系金属材上にCuを主成分として含有するCu系金属材を設ける工程と、前記Cu系金属材の表面に、銅よりも酸素との親和性が高い金属からなる層を形成し、形成された当該層を、30℃以上300℃以下の温度で、5秒以上60分以下の時間で加熱処理することによって、表面処理層を形成する工程とを含むはんだ接合材料の製造方法。
[9]前記銅よりも酸素との親和性が高い金属は、亜鉛である前記[8]に記載のはんだ接合材料の製造方法。
[10]前記表面処理層の厚さは、3nm以上100nm以下である前記[8]又は前記[9]に記載のはんだ接合材料の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、接合時にCu酸化膜の還元雰囲気で行なう必要の無い鉛フリー高温はんだ接合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るはんだ接合材料を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係るはんだ接合材料を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の第3の実施の形態に係るはんだ接合材料を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の第4の実施の形態に係るはんだ接合材料を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の実施例3に係る試料の恒温(100℃)保持試験における3600時間試験品の、表層からスパッタを繰り返しながら深さ方向のオージェ元素分析を行った結果を示すグラフである。
図6】本発明の実施例3及び比較例1,4,5に係る試料の恒温(100℃)保持試験における、表層からの酸素進入深さ(酸化膜厚さ)の時間変化を示すグラフ図である。
図7】本発明の実施例3に係る試料のRHEED分析結果を示す電子線の回折像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(はんだ接合材料の構成)
本発明の実施の形態に係るはんだ接合材料は、Znを主成分として含有するZn系金属材と、前記Zn系金属材上に設けられたAlを主成分として含有するAl系金属材と、前記Al系金属材上に設けられたCuを主成分として含有するCu系金属材と、前記Cu系金属材上に設けられた、銅よりも酸素との親和性が高い金属及び酸素を含有するアモルファス層を有する表面処理層とを備える。実施形態としては、主に板状のものと線状のものがあり、以下に板状はんだ接合材料(第1及び第2の実施形態)及び線状はんだ接合材料(第3及び第4の実施形態)についてそれぞれ説明する。
【0013】
〔第1及び第2の実施形態〕
本発明の第1及び第2の実施形態に係るはんだ接合材料は板状であり、平角状の断面を有するZn系金属板の向かい合う一対の両面に、Al系金属板、Cu系金属板、及び表面処理層が順に設けられている。Zn系金属板の両面に設ける場合に限られず、Zn系金属板の片面にのみ、Al系金属板、Cu系金属板、及び表面処理層を順に設ける構成であってもよい。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るはんだ接合材料を模式的に示す断面図である。また、図2は、本発明の第2の実施の形態に係るはんだ接合材料を模式的に示す断面図である。
【0015】
図1に示される板状はんだ接合材料10は、表面処理層4を設けた以外は前述の特許文献1に記載の図4に示される構成と同じであり、中央にZn系金属板1(以下、単にZn板と記載することがある)、その両面にAl系金属板2(以下、単にAl板と記載することがある)、各Al系金属板2上にCu系金属板3(以下、単にCu板と記載することがある)、各Cu系金属板3上に表面処理層4を備えた積層材である。
【0016】
Zn板1は、Znを主成分(最も多く含まれる成分、以下同じ)としており、Znが90質量%以上であることが好ましい。すなわち、Zn単体、又は不純物が10質量%以下のZn合金が好ましい。
【0017】
Al板2は、Alを主成分としており、Alが90質量%以上であることが好ましい。すなわち、Al単体、又は不純物が10質量%以下のAl合金が好ましい。
【0018】
Cu板3は、Cuを主成分としており、Cuが90質量%以上であることが好ましい。すなわち、Cu単体、又は不純物が10質量%以下のCu合金が好ましい。例えば、無酸素銅、タフピッチ銅等の純銅や、3〜15質量ppmの硫黄と、2〜30質量ppmの酸素と、5〜55質量ppmのTiとを含む希薄銅合金等を使用することができる。
【0019】
Cu/Al/Zn/Al/Cuの5層構造については、溶融時に十分な液相を生じさせ、濡れを向上させる目的から5層構造の総厚は20μm以上が望ましい。また、接合部の熱抵抗を下げ、信頼性確保するため、5層構造の総厚は300μm以下にすることが望ましい。
【0020】
(Alの合計の層厚)/(Znの層厚)は、1/60〜1/3であることが望ましい。また、382〜420℃の接合温度範囲内で、積層材全体を均一に溶融させるため、Al、Zn、Alの層厚比は、Al:Zn:Al=1:6:1〜1:60:1の比率にすることが望ましい。さらに、溶融組織の均一性の観点から、Al:Zn:Al=1:8:1〜1:30:1の範囲がより望ましい。
【0021】
また、CuはZnとAlの酸化を防止する機能を持たせるため、一定以上の厚さが必要となる。一方、Cuは、ZnとAlが反応し溶融したZn−Al合金内に溶融し、Zn−Al−Cu合金を構成することになるが、元素CuがZn−Al合金の硬さや融点に与える影響を最小限にとどめることが望ましい。そのため、CuはZnとAlに比べて薄い必要がある。層厚比は(Al+Zn+Al):(Cu+Cu)=1:0.0002〜0.2の比率にすることが望ましく、1:0.0005〜0.1の比率にすることがより望ましい。
【0022】
表面処理層4は、銅よりも酸素との親和性が高い金属及び酸素を含有するアモルファス層を有する。或いは、表面処理層4は、銅よりも酸素との親和性が高い金属、酸素、及びCu板3から拡散した銅を含有するアモルファス層を有する。
【0023】
なお、表面処理層は、第2の実施形態(板状はんだ接合材料20)として図2に示されるように、アモルファス層7と、アモルファス層7の下に形成された、銅及び銅よりも酸素との親和性が高い金属を含有する、好ましくは、銅、銅よりも酸素との親和性が高い金属及び酸素を含有する拡散層6とを有する表面処理層5であってもよい。なお、拡散層6は、結晶性の層である点においてアモルファス層7と相違する。
【0024】
表面処理層4(アモルファス層)及びアモルファス層7を構成する、銅よりも酸素との親和性が高い金属としては、亜鉛が好ましい。亜鉛以外には、例えば、Ti,Mg,Zr,Al,Fe,Sn,Mn等を挙げることができる。とりわけ、リサイクルの観点から、銅の製造時に酸化除去し易いTi、Mg及びZrが好ましい。拡散層6を構成する、銅よりも酸素との親和性が高い金属についても、アモルファス層を構成する、銅よりも酸素との親和性が高い金属の場合と同様であり、同じ金属を使用することが好ましい。
【0025】
元素がランダムに配置されるアモルファス層は、元素が規則正しく配列した結晶質層と比較して緻密な構造と考えられるため、このアモルファス層が、銅素材の酸化の原因である表面処理層の表面への銅の拡散、及び銅素材中への酸素の侵入を抑制ないし低減させる。その結果、アモルファス層は、銅及び酸素が結合することを阻止するバリア層として機能すると考えられる。
【0026】
このアモルファス層を形成するためには、酸素と銅以外の他の金属とが優先的に結合することが必要であり、そのアモルファス層の形成を促進するためには、銅よりも酸素との親和性が高い金属(例えば、亜鉛)がCu板3の表面に配置されていることが好ましい。
【0027】
表面処理層4及び5は、異種元素が界面で接するため、異種元素界面で、通常なだらかな濃度変化を示すものであり、表面処理層の厚さの定義が難しい。そこで、本発明においては、表面処理層の厚さを、「銅よりも酸素との親和性が高い金属及び酸素、並びに場合に応じて銅を含有する層の厚さであり、かつ、その層を構成する元素のいずれをも元素含有比率としての原子濃度(at%)として2at%以上含有する層の厚さ」と定義する。
【0028】
表面処理層4の厚さは、加熱処理条件にもよるが、3nm以上100nm以下が好ましい。より好ましくは、5nm以上70nm以下であり、さらに好ましくは、6nm以上50nm以下である。また、表面処理層5の厚さは、拡散層6の厚さとアモルファス層7の厚さとの合計で6nm以上100nm以下が好ましい。
【0029】
拡散層6を有する場合、拡散層6の厚さは、その下限値としては特に制限はなく、Cu板3が被覆されていればよく、実用上、下限の被覆厚さは3nm程度であることが好ましい。また、拡散層6の厚さの上限値は、80nm以下が好ましい。80nmを超えると、高い耐食性の発現に寄与するアモルファス層7が安定して形成されにくくなることがある。アモルファス層7の厚さとしては、特に制限はないが、3nm以上が好ましい。
【0030】
(はんだ接合材料の製造方法)
次に、本実施の形態に係る板状はんだ接合材料の製造方法について説明する。
Cu/Al/Zn/Al/Cuの5層構造については、特許文献1(特開2012−71347号公報)に記載の製造方法により製造できるため、説明を省略する。
【0031】
Cu/Al/Zn/Al/Cuの5層構造を作製後、Cu板3の表面に、銅よりも酸素との親和性が高い金属、例えば、亜鉛である場合には、最終製品のサイズ及び形状にて、電解めっきでZn層を形成する。その後、そのまま30℃以上300℃以下の温度で5秒以上60分以下の時間の条件で大気中にて加熱することで表面処理層4(アモルファス層)が形成される。Zn層の厚さは、3nm以上100nm以下が好ましく、5nm以上70nm以下がより好ましく、6nm以上50nm以下がさらに好ましい。これにより、少なくとも亜鉛及び酸素を含有するアモルファス層を有する表面処理層4を備えた板状はんだ接合材料が得られる。つまり、Cu板3の表面に、亜鉛を被覆して所定の加熱処理を施すだけの簡易な手法により表面処理層4(アモルファス層)を形成することができる。
【0032】
本発明の板状はんだ接合材料の製造方法では、上述のように、被覆層を、30℃以上300℃以下の温度で、5秒以上60分以下の時間で加熱処理することが好ましく、40℃以上150℃以下の温度で、20秒以上30分以下の時間で加熱処理することがより好ましく、50℃以上100℃以下の温度で、30秒以上15分以下の時間で加熱処理することがさらに好ましい。また、Zn層の形成は、めっき法を好ましく用いることができる。めっき法のほか、スパッタ法、真空蒸着法、クラッド法等を用いることもできる。
【0033】
また、その他の実施の形態として、最終製品サイズ及び形状に加工する前に、予め亜鉛からなるめっきを行い、その後、最終製品サイズ、形状に加工した後、加熱処理を行ない、表面処理層4(アモルファス層)を形成する方法で製造したものであってもよい。
【0034】
また、拡散層6は、例えば、表面処理層5のアモルファス層7を形成する前に、Cu板3の表面に、亜鉛を被覆し、50℃以上の温度で雰囲気加熱、或いは、油浴、塩浴中で保持することにより製造することができる。また、通電による抵抗発熱を利用して製造することもできる。拡散層6の形成後、その表面に、前述の表面処理層4(アモルファス層)の形成方法と同様にして、アモルファス層7を形成する。
【0035】
〔第3及び第4の実施形態〕
本発明の第3及び第4の実施形態に係るはんだ接合材料は線状であり、円形状の断面を有する前記Zn系金属線の外周に前記Al系金属層が被覆され、前記Al系金属層の外周に前記Cu系金属層が被覆され、前記Cu系金属層の外周に前記表面処理層が被覆されている。
【0036】
図3は、本発明の第3の実施の形態に係るはんだ接合材料を模式的に示す断面図である。また、図4は、本発明の第4の実施の形態に係るはんだ接合材料を模式的に示す断面図である。
【0037】
図3に示される線状はんだ接合材料30は、Zn系金属線11(以下、単にZn線と記載することがある)と、Zn線11の外周に被覆されたAl系金属層12(以下、単にAl層と記載することがある)と、Al層12の外周に被覆されたCu系金属層13(以下、単にCu層と記載することがある)と、Cu層13の外周に被覆された表面処理層14とを備える。
【0038】
表面処理層は、第4の実施形態(線状はんだ接合材料40)として図4に示されるように、アモルファス層17と、アモルファス層17の下に形成された、銅及び銅よりも酸素との親和性が高い金属を含有する、好ましくは、銅、銅よりも酸素との親和性が高い金属及び酸素を含有する拡散層16とを有する表面処理層15であってもよい。
【0039】
Zn線11、Al層12、Cu層13、表面処理層14、拡散層16及びアモルファス層17の材質は、第1の実施の形態におけるZn板1、Al板2、Cu板3、表面処理層4、拡散層6及びアモルファス層7の材質と同様である。
【0040】
Al層12の層厚は、Zn線11の直径を1とすると、1/80〜1/15であることが好ましく、1/55〜1/18であることがより好ましい。Cu層13の層厚は、Zn線11の直径を1とすると、1/45以下であることが好ましく、1/90以下であることがより好ましい。
【0041】
表面処理層14及び15の厚さは、第1の実施の形態における表面処理層4及び5の厚さと同様である。また、拡散層16及びアモルファス層17の厚さも、第1の実施の形態における拡散層6及びアモルファス層7の厚さと同様である。
【0042】
なお、図3,4においては断面形状が円形状の実施形態を図示したが、これに限られず、楕円形状、平角形状等、種々の実施形態が可能である。
【0043】
(はんだ接合材料の製造方法)
次に、本実施の形態に係る線状はんだ接合材料の製造方法について説明する。
Zn線11の外周に、Al層12を形成し、Al層12上にさらにCu層13を形成する。形成方法としては、特開2012−161821号公報に記載されるようなスパッタリングや蒸着が挙げられる。その後、Cu層13上に電解めっきによりZn層を形成し、前述の表面処理層4(アモルファス層)の形成方法と同様の方法により加熱処理を行ない、表面処理層14(アモルファス層)を形成する。表面処理層15(拡散層16、アモルファス層17)の形成方法についても、前述の表面処理層5(拡散層6、アモルファス層7)の形成方法と同様である。これにより、線状はんだ接合材料30,40を製造することができる。
【0044】
(用途)
本発明の実施の形態に係る鉛フリー高温はんだ接合材料は、様々な構造の半導体装置のダイボンディング材料、リード材、封止用材料、絶縁基板の接合材料として使用できる。適用例としては、オルタネータ用ダイオード、IGBTモジュール、RFモジュール等のフロントエンドモジュール、自動車用パワーモジュール、LED、リチウムイオン電池の保護回路用MOSFET、DBC基板やDBA基板などのセラミック基板が挙げられる。また、自動車用熱交換器等に用いられるアルミニウムブレージングシートのAl合金上に積層されるろう材として適用することも出来る。
【0045】
(実施の形態の効果)
本発明の実施の形態によれば、表面処理層の表面への銅の拡散、及びCu系金属材への酸素の侵入を抑制ないし低減させるバリア層として機能する表面処理層4,5或いは14,15を所定の層構成を有する接合材表面に形成したことにより、耐酸化性を有し、保管時にCu系金属材の表面に酸化膜が成長するのを抑制できるため、はんだ接合時にCu酸化膜の還元雰囲気で行なう必要の無い鉛フリー高温はんだ接合材料を提供することができる。還元雰囲気で行なう必要が無くなるため、はんだ接合の作業効率が向上する。また、水素やギ酸を使用せずに済むので低コスト化及び作業環境の安全性の向上が可能となる。
【0046】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ制限されるものではない。
【実施例】
【0047】
本発明におけるはんだ接合材料のCu系金属材(Cu板)及びCu系金属材上の表面処理層に相当する部分のみを試料として作製し、評価を行なった。但し、本評価のCu板の厚さはCu/Al/Zn/Al/Cuの5層構造で好ましいCu厚より厚いものを使用した。実施例1〜5及び比較例1〜5の試料の構成を表1に示す。また、後述する評価項目についての評価結果も表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
実施例1〜5及び比較例1〜5の詳細については、後述するが、表1における実施例1〜5の試料は、概略として、タフピッチ銅からなる平板上に、亜鉛めっきからなる被覆層を電解めっきにより厚さを変えて形成し(0.002〜0.08μm)、その後、大気中で焼鈍をして作製したものである。
【0050】
また、比較例1の試料は、Cu系金属材(Cu板)の特性に及ぼす亜鉛層の厚さの影響を評価すべく、厚さを変化させた亜鉛層を形成し、その後、実施例1と同様の加熱処理をしたものである。比較例2及び3の試料は、Cu系金属材(Cu板)の特性に及ぼす加熱処理条件の影響を評価すべく、加熱処理条件を変化させ(比較例2)、又は加熱処理をせずに(比較例3)、作製したものである。
【0051】
さらに、比較例4及び5の試料として、タフピッチ銅(比較例4)、及びCu−30質量%Zn合金(比較例5)を用意した。
【0052】
表1において、アモルファス層の存在の確認は、RHEED分析(Reflection High Energy Electron Diffraction)により行った。アモルファス層の存在を示すハローパターンが確認できたものを「有」、結晶質の構造を示す電子線の回折斑点が確認できたものを「無」とした。
【0053】
なお、表1において、作製した試料の外観評価、耐食性の評価、及び総合評価は、以下のようにして行った。
【0054】
「外観」は、100℃に設定した恒温槽において、大気中で1000時間まで保持する恒温保持試験、及び温度85℃×湿度85%の試験槽中で100時間保持する試験を実施し、評価した。試験前後の色、光沢の変化で判断し、最も変化の少ないものを◎(合格)、最も変化が大きく外観上劣化したものを×(不合格)、その中間を○(合格)、△(不合格)とした。
【0055】
「耐酸化性」は、100℃に設定した恒温槽において、大気中で1000時間まで保持し、試験後に計測された酸化膜の増加量により評価した。初期(試験前)と比較して最も変化が少ないものを◎(合格)、最も変化が大きく、劣化していたものを×(不合格)とし、その中間をその変化の程度に応じてそれぞれ○(合格)、△(不合格)とした。定量的な基準としては、初期(試験前)の酸化膜の厚さと比較し、1000時間後の酸化膜の厚さが3倍以上となったものは、外観の変化によらず全て×とした。
【0056】
「総合評価」は、これらの項目を総合的に評価して、◎、○を合格、△、×を不合格と判断した。
【0057】
以下に、実施例1〜5及び比較例1〜5の詳細を示す。
【0058】
[実施例1]
純Cu(タフピッチ銅;以下TPCと記載する)からなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.002μmの亜鉛からなる被覆層を形成し、その後、50℃の温度で10分間、大気中で加熱処理して、表面処理層を備えた試料を作製した。作製した試料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)から構成される表面処理層が、0.003μmの厚さに形成されていることを確認した。
【0059】
[実施例2]
実施例2では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.005μmのZn層を形成し、その後、50℃の温度で1時間、大気中で加熱処理した試料を作製した。作製した試料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)から構成される表面処理層が、0.006μmの厚さに形成されていることを確認した。
【0060】
[実施例3]
実施例3では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.008μmのZn層を形成し、その後、100℃の温度で5分間、大気中で加熱処理した試料を作製した。作製した試料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)から構成される表面処理層が、0.01μmの厚さに形成されていることを確認した。
【0061】
[実施例4]
実施例4では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.04μmのZn層を形成し、その後、120℃の温度で10分間、大気中で加熱処理した試料を作製した。作製した試料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)から構成される表面処理層が、0.05μmの厚さに形成されていることを確認した。
【0062】
[実施例5]
実施例5では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.08μmのZn層を形成し、その後、300℃の温度で5秒間、大気中で加熱処理した試料を作製した。作製した試料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)から構成される表面処理層が、0.1μmの厚さに形成されていることを確認した。
【0063】
[比較例1]
比較例1では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.95μmのZn層を形成し、その後、100℃の温度で5分間、大気中で加熱処理した試料を作製した。作製した試料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)から構成される表面処理層が、1μmの厚さに形成されていることを確認した。
【0064】
[比較例2]
比較例2では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.01μmのZn層を形成し、その後、400℃の温度で60秒間、大気中で加熱処理した試料を作製した。作製した試料に対し、表面から深さ方向のオージェ分析を行うことで、亜鉛(Zn)、酸素(O)及び銅(Cu)から構成される表面処理層が、0.02μmの厚さに形成されていることを確認した。
【0065】
[比較例3]
比較例3では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を用意し、その表面に、電解めっきにより厚さ0.02μmのZn層を形成し、試料を作製した。
【0066】
[比較例4]
比較例4では、TPCからなる厚さ0.5mmの平板を評価試料とした。
【0067】
[比較例5]
比較例5では、Cu−30質量%Zn合金(黄銅)の厚さ0.5mmの平板を評価試料とした。
【0068】
図5は、実施例3に係る試料の恒温(100℃)保持試験における1000時間試験品の、表層からスパッタを繰り返しながら深さ方向のオージェ元素分析を行った結果を示すグラフである。横軸は表面からの深さ(nm)、縦軸は原子濃度(at%)を表し、実線は酸素の含有比率としての原子濃度(at%)、長い破線は亜鉛の原子濃度、破線は銅の原子濃度を示している。酸素進入深さは、表面から8nm程度であり、特に深さ0〜3nmの表層部位における平均元素含有比率を(深さ0〜3nmでの各元素の最大原子濃度+最小原子濃度)/2と定義すると、実施例3では、亜鉛(Zn)が60at%、酸素(O)が33at%、銅(Cu)が7at%であった。
【0069】
また、他の実施例を含めると、上記平均元素含有比率は、亜鉛(Zn)が35〜68at%、酸素(O)が30〜60at%、銅(Cu)が0〜15at%の範囲にあることがわかった。
【0070】
一方、比較例1の試料は、亜鉛(Zn)が33at%、酸素(O)が41at%、銅(Cu)が26at%であり、比較例5の試料は、亜鉛(Zn)が5at%、酸素(O)が46at%、銅(Cu)が49at%であった。
【0071】
図6は、実施例3及び比較例1,4,5に係る試料の恒温(100℃)保持試験における、表層からの酸素進入深さ(酸化膜厚さ)の時間変化を示すグラフ図である。酸素進入深さは、各時間保持したサンプル表面から、スパッタを繰り返しながら、深さ方向にオージェ分析を行うことで求めた。図6において、横軸は100℃等温保持時間(h)、縦軸は酸素進入深さ(nm)を表し、実線は実施例3、破線は比較例4及び5の酸素進入深さを示している。なお、比較例1は点で示されている。
【0072】
実施例3では、図5に示すように、3600時間保持経過後の状態で、表面近傍での酸素濃度が増加しているものの、その進入深さは試験前と殆ど変化せず約0.01μm以下であり、実施例3の試料は高い耐酸化性を示した。
【0073】
一方、図6に示すように、恒温保持試験前の比較例4(タフピッチ銅)及び比較例5では酸素を含む層の厚さが表面から約0.006μm程度と、恒温保持試験前の実施例3と同程度の深さであったが、3600時間保持試験後の比較例4では、表面近傍での酸素濃度が恒温保持試験前に比較して顕著に増加し、さらに、比較例4の酸素進入深さは約0.036μmと試験前の5倍以上となり、比較例5の酸素進入深さは約0.078μmと試験前の13倍となった。また試験後の比較例4及び比較例5では外観上も赤茶系に変色しており、明らかに酸素を含む層が厚く形成されていると判断することができた。また、TPCに0.95μmのZn層を形成した比較例1は1000時間保持試験後に既に酸素進入深さが約0.080μmに達していた。
【0074】
耐酸化性に優れた実施例3の表面をRHEED分析した結果を図7に示す。電子線の回折像は、ハローパターンを示しており、表1にも示すとおり、表面にアモルファス層が形成されていることがわかった。一方、耐酸化性に劣る比較例4は、銅及び酸素で構成される結晶質であることが確認された。
【0075】
また、表1によれば、厚さを0.003〜0.1μmに変化させた表面処理層をもち、かつ、その表面処理層がアモルファス構造を有している実施例1〜5の外観及び耐酸化性の評価は良好であった。特に、表面処理層の厚さが0.006〜0.05μmの場合、優れた特性を示した。
【0076】
以上の結果から、実施例1〜5に示す構造は、表面酸化の進行がなく、100℃×1000時間にも及ぶ恒温保持試験、及び、85℃×85%の環境でも安定した表面状態を保っていることが確認された。
【0077】
一方、同じくZn系の表面処理層を持つ比較例1〜3であっても、良好な特性が得られない場合が認められた。比較例1のように、亜鉛の厚さが厚い場合、比較例2のようにめっき後に過剰な加熱処理を行った場合、比較例3のようにめっき後の加熱処理を実施していない場合等、表層にアモルファスが形成されないものはいずれも、耐酸化性の評価結果は不合格となった。
【0078】
コスト(経済性)に関して、実施例1〜5は、材料そのものの耐酸化性に優れているが材料コストが高い貴金属コーティング等を必要とせず、安価なZnを使用し、しかもその厚さが極めて薄いため、生産性と経済性に極めて優れている。
【0079】
次に、板状はんだ接合材料を作製し、評価を行なった。
【0080】
Cu/Al/Zn/Al/Cuの各層厚が2/16/164/16/2μmであり、総厚が200μmである5層構造を作製した。この5層構造の両Cu表面上に、実施例1〜5及び比較例1〜3の表面処理をすることにより、実施例6〜10及び比較例6〜8の板状はんだ接合材料を作製した。また、比較例9は表面処理を施さないことで、比較例10は最表層にCu−Zn合金を使用して、板状はんだ接合材料を作製した。
【0081】
接合性評価用部材は、5mm角のSiチップとCuフレームを5.5mm角の実施例6〜10及び比較例6〜10の板状はんだ接合材料を用いて接合させて作製した。SiチップとCuフレームは、NiあるいはNi/AgあるいはNi/Auでメタライズしたものを使用した。接合条件は、接合温度385℃以上、接合時間2分以上、荷重1g以上とした。接合雰囲気は、比較の為に、大気、N+4%H+100ppmO雰囲気にて実施した。
【0082】
接合性の評価は超音波探傷にて実施し、ボイド率が10%を下回った場合を〇(合格)、10%以上の場合を×(不合格)と判定した。ボイドを信頼性の評価基準とした理由は、ボイドが存在すると、応力がかかった際にボイド周辺から優先的にクラックが進展し、信頼性に大きな影響を与える為である。
【0083】
【表2】
【0084】
実施例6〜10について接合性を評価した所、大気、N+4%H+100ppmO雰囲気のいずれにおいてもボイド率10%を下回る良好な結果が得られた。表面処理層(アモルファス層)が酸化を抑制した為と考えられる。
【0085】
比較例6〜8では、いずれの雰囲気においてもボイド率10%以上であった。最表層のZn層が厚い為、最表面はZnであり、このZnが酸化することによって、表面に膜を形成して濡れを阻害した為である。
【0086】
比較例9では、N+4%H+100ppmO雰囲気にてボイド率10%を下回る良好な接合が得られたが、大気ではボイド率10%以上の接合であった。N+4%H+100ppmO雰囲気では酸化したCuが還元される為、良好な濡れが得られたが、大気ではCuの酸化により表面に膜を形成されて濡れを阻害した為である。
【0087】
比較例10では、いずれの雰囲気においても比較例6〜8に比べて良好ではあったが、ボイド率10%以上であった。Cu−Zn合金中のZnの成分が酸化し、このZnに膜を形成して濡れを阻害した為である。
【0088】
なお、本発明は、上記実施の形態、上記実施例に限定されず種々に変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0089】
1:Zn板、2:Al板、3:Cu板
4:表面処理層(アモルファス層)
5:表面処理層、6:拡散層、7:アモルファス層
10,20:板状はんだ接合材料
11:Zn線、12:Al層、13:Cu層
14:表面処理層(アモルファス層)
15:表面処理層、16:拡散層、17:アモルファス層
30,40:線状はんだ接合材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7