(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第2のレジスト材料に用いる第2の有機溶剤がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ヘプタノン、γ−ブチロラクトンから選ばれる1種以上を含む単独又は混合溶剤であり、第1ネガパターンの加熱後の膜に30秒間、該溶剤に触れた時の膜減りが10nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
第1及び第2のレジスト膜のネガパターンを得るための有機溶剤の現像液が、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【背景技術】
【0002】
最近、1回目の露光と現像でパターンを形成し、2回目の露光で1回目のパターンの丁度間にパターンを形成するダブルパターニングプロセスが注目されている。ダブルパターニングの方法としては多くのプロセスが提案されている。例えば、1回目の露光と現像でラインとスペースが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクを加工し、その上にハードマスクをもう1層敷いて1回目の露光のスペース部分にフォトレジスト膜の露光と現像でラインパターンを形成してハードマスクをドライエッチングで加工し、初めのパターンのピッチの半分のラインアンドスペースパターンを形成する方法である。また、1回目の露光と現像でスペースとラインが1:3の間隔のフォトレジストパターンを形成し、ドライエッチングで下層のハードマスクを加工し、その上にフォトレジスト膜を塗布してハードマスクが残っている部分に2回目のスペースパターンを露光し、ハードマスクをドライエッチングで加工する。いずれも2回のドライエッチングでハードマスクを加工する。
【0003】
ポジ型レジスト材料を用いて露光、アルカリ現像後のパターンを酸と熱によって有機溶媒とアルカリ現像液に不溶化させ、その上にポジ型レジスト材料を塗布して露光とアルカリ現像によって第2のパターンを形成する方法が特開2009−63989号公報(特許文献1)に示されている。ポジ型レジスト材料を用いて露光、アルカリ現像後のパターンを光照射と熱によって有機溶媒とアルカリ現像液に不溶化させ、その上にポジ型レジスト材料を塗布して露光とアルカリ現像によって第2のパターンを形成する方法が特開2009−93150号公報(特許文献2)に示されている。どちらの方法でも第1のポジレジストパターンを不溶化させて第2のポジパターンとを組み合わせてパターンを形成するダブルパターニング方法である。
【0004】
ラインパターンに比べてトレンチパターンやホールパターンは微細化が困難である。従来法で細かなホールを形成するために、ポジ型レジスト膜にホールパターンマスクを組み合わせてアンダー露光で形成しようとすると、露光マージンが極めて狭くなってしまう。そこで、大きなサイズのホールを形成し、サーマルフローやRELACS
TM法等で現像後のホールをシュリンクする方法が提案されている。しかしながら、現像後のパターンサイズとシュリンク後のサイズの差が大きく、シュリンク量が大きいほど制御精度が低下する問題がある。また、ホールシュリンク法ではホールのサイズは縮小可能であるがピッチを狭くすることはできない。
【0005】
Direct self assembly(DSA)技術を使うとホールのシュリンクが可能である。DSA材料としてはポリスチレンとポリメタクリレートのブロック共重合ポリマーを用いる。但し、DSAは真円のホールパターンをシュリンクさせることはできるが、長軸のホールやトレンチパターンにこれを適用すると並んだホールが形成され、オリジナルの形が変形されてシュリンクが行われる欠点がある。
【0006】
近年、有機溶剤現像が再び脚光を浴びている。ポジティブトーンでは達成できない非常に微細なホールパターンをネガティブトーンの露光で解像するために、解像性の高いポジ型レジスト材料を用いた有機溶剤現像でネガ型パターンを形成するのである。更に、アルカリ現像と有機溶剤現像の2回の現像を組み合わせることにより、2倍の解像力を得る検討も進められている。
有機溶剤によるネガティブトーン現像用のArFレジスト組成物としては、従来型のポジ型ArFレジスト組成物を用いることができ、特許第4554665号公報(特許文献3)にパターン形成方法が示されている。
【0007】
ネガティブ現像で長軸のホールを形成しようとすると、楕円形になってしまう。これは光の干渉の影響による。長方形のホールパターンを形成しようとした場合、楕円形のホールは好ましくない。
【0008】
1回目のポジレジストパターンを加熱によって有機溶剤とアルカリ現像液に対して不溶化させ、2回目のレジスト材料を塗布して1回目のポジパターンの間に2回目のポジパターンを形成してピッチを半分にする方法が提案されている(Proc. SPIE Vol. 6923, p.69230G−1 (2008):非特許文献1)。1回目と2回目のパターンを直交させるとホールパターンを形成することができ、1回目と2回目のラインのピッチを変えることによって長方形のホールを形成することができる。しかしながら、1回目と2回目の両方共にポジ型レジスト材料を用いるので、細いトレンチパターンを形成することは光学コントラスト的に不利であるし、直交部分のコーナーが丸くなってしまう問題がある。
【0009】
特開2010−152299号公報(特許文献4)には、アルカリ現像後のポジ型レジスト材料を加熱によってアルカリ現像性を維持したまま有機溶剤に対して不溶化させ、その上にアルカリ微溶の膜を塗布して現像を行うことによってアルカリ微溶の膜表面だけを溶解させてこれを残し、ポジレジストパターンをアルカリ現像液に溶解させるイメージ反転技術が提案されている。この中で、有機溶剤に不溶化するための技術として、ベースポリマーに7−オキサノルボルナンを有するメタクリレートを用いることが示されている。
【0010】
密集の繰り返しパターンに対して超解像技術を用いた場合、孤立パターンとの粗密(プロキシミティー)バイアスが問題になる。強い超解像技術を使えば使うほど密集パターンの解像力が向上するが、粗密バイアスが拡大する。特にホールパターンにおける粗密バイアスの増加は深刻な問題である。粗密バイアスを抑えるために、一般的にはマスクパターンの寸法にバイアスを付けることが行われている。粗密バイアスはレジスト材料の特性、即ち溶解コントラストや酸拡散によっても変わるために、レジスト材料の種類毎にマスクの粗密バイアスが変化するので、レジスト材料の種類毎に粗密バイアスを変えたマスクを用いることになり、マスク製作の負担が増している。そこで、強い超解像照明で密集ホールパターンのみを解像させ、パターンの上に1回目のポジレジストパターンを溶解させないアルコール溶媒のネガレジスト材料を塗布し、不必要なホール部分を露光、現像することによって閉塞させて密集パターンと孤立パターンの両方を作製する方法(Pack and unpack;PAU)が提案されている(非特許文献2:Proc. SPIE Vol. 5753, p.171 (2005))。この方法の問題点は、1回目の露光と2回目の露光の位置ズレが挙げられ、この点については文献の著者も指摘している。また、2回目の現像で塞がれないホールパターンは2回現像されることになり、これによる寸法変化も問題として挙げられる。また、この方法だと1回目の露光にはポジ型レジスト材料を使うことになるが、前述の通りポジ型レジスト材料を使った場合、ホールパターンにおける解像性と寸法制御性が悪い問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のパターン形成方法は、上述したように、被加工基板上に、酸によって脱離する酸不安定基を持つ構造を有する繰り返し単位を有し、上記酸不安定基の脱離によって有機溶剤現像液に不溶性になる樹脂、高エネルギー線の露光により酸を発生する光酸発生剤及び第1の有機溶剤を含有する第1の化学増幅型レジスト材料を塗布し、プリベークにより不要な溶剤を除去し、該レジスト膜に高エネルギー線をパターン照射し、露光後加熱(PEB)し、前記有機溶剤現像液で現像してネガ型パターンを得、該工程で得られた第1ネガパターンを加熱して第2のレジスト材料に使用される第2の有機溶剤に対する耐性を与え、第2のレジスト材料を塗布、プリベーク、露光、PEB、有機溶剤による現像の工程を経て第1のネガパターンと異なるネガパターンを形成し、第1レジスト材料によるネガパターンと第2レジスト材料によるネガパターンを同時に形成する。
【0021】
ここで第1ネガレジスト材料を現像後のベークによって第2レジスト材料用の第2有機溶剤に不溶な状態にするためには、架橋反応を起こすことが必要である。第2レジスト材料の現像液よりも第2レジスト材料に用いられる第2有機溶剤の方が溶解性が高く、従って第2レジスト材料に用いられる溶剤に不溶となる架橋特性が必要となる。
【0022】
上記架橋形成は第1レジスト材料のベース樹脂中のエステル基、環状エーテル等の求電子性部分構造による。酸と加熱により、エステル交換、ラクトン環の開環とエステル化及びエーテル化、環状エーテルの開環とエーテル化及びエステル化等の反応により架橋反応が進行する。
本発明に係るパターン形成方法に用いられる第1のレジスト材料のベース樹脂に使用される高分子化合物としては、ラクトン環を有する繰り返し単位、特には7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位、好ましくは下記一般式(1)で示される繰り返し単位aを有するものが有利に使用できる。このものはエステル基と環状エーテルの両方を単一繰り返し単位内に有するために、架橋反応の反応性が高い。更に、この単位は密着性単位として使用されるものであり、ベース樹脂に更に追加の構成を加えなくても本発明の方法が好ましく適用可能である。なお、第2の有機溶剤現像に用いる第2ネガレジスト材料用には7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位は必須の単位ではない。
【0023】
【化3】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基を示す。R
2は単結合、又は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよいが、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基の場合、式中のエステル基に連結した炭素原子は1級又は2級である。R
3、R
4、R
5は水素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はシアノ基である。aは0<a<1.0の範囲である。)
【0024】
ここで、炭素数1〜6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基、シクロペンチレン基、n−ヘキシレン基、シクロヘキシレン基が挙げられる。
【0025】
また、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0026】
一般式(1)で示される繰り返し単位aを得るためのモノマーとしては、下記式Maで示される。
【化4】
(式中、R
1〜R
5は上記の通りである。)
【0027】
上記繰り返し単位aを得るためのモノマーMaとしては、具体的には下記に例示することができる。
【化5】
【0028】
本態様の工程では、露光と有機溶剤現像によって第1のネガパターン形成後、酸と加熱によって酸不安定基を脱保護すると共に架橋し、その上に第2のレジスト材料を塗布し、有機溶剤の現像によってネガパターンを形成する。
第1のパターンは、酸不安定基を有する繰り返し単位の該酸不安定基の脱保護によって有機溶剤の現像液に不溶化し、7−オキサノルボルナン環の架橋によって第2レジスト材料の溶剤ネガパターンを形成するための有機溶剤の現像液に不溶化する膜になる。よって、有機溶剤現像液で現像、その後に加熱した第1のパターン上に第2のレジスト材料を塗布しても、第1のパターンと第2のレジスト材料とミキシングしない。
【0029】
オキシランやオキセタンを有する繰り返し単位を有する高分子化合物を第1レジスト材料用ベース樹脂として用いた場合、オキシラン環やオキセタン環は、酸による開裂反応の速度が非常に速いために、90〜130℃程度のポストエクスポージュアベーク(PEB)等のレジストプロセスの温度でカルボキシル基との架橋が進行し、脱保護によって発生したカルボキシル基を置換してしまうために有機溶剤によるネガパターンが形成されない。一方、7−オキサノルボルナン環の1,4−エポキシ結合は、オキシラン環やオキセタン環に比べて酸による開裂反応の反応性が低いために、PEBによる加熱温度領域では架橋が進行しない。7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位は、現像までのプロセスでは酸に対して安定で、親水性基として密着性やアルカリ溶解性向上のための機能を発揮する。しかしながら、現像後の加熱により7−オキサノルボルナン環の1,4−エポキシ結合が開環して架橋反応が進行する。
【0030】
本発明のパターン形成方法に用いる有機溶剤現像によるネガパターン形成用レジスト材料に用いるベース樹脂としては、上記一般式(1)で示される架橋性の繰り返し単位aと、下記一般式(2)中b及び/又はcで示される酸不安定基を有する繰り返し単位を含む高分子化合物を使用することが好ましい。
【化6】
(式中、R
6、R
8は水素原子又はメチル基を示す。R
7、R
10は酸不安定基である。Yは単結合又は−C(=O)−O−R
11−であり、R
11は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基で、エーテル基又はエステル基を有していてもよく、又はナフチレン基である。Zは単結合又は−C(=O)−O−であり、R
9は炭素数1〜15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基もしくは該アルキレン基から水素原子が1個脱離した3価の基で、エーテル基又はエステル基を有していてもよく、又はナフチレン基もしくはナフチレン基から水素原子が1個脱離した3価の基である。nは1又は2、bは0≦b<1.0、cは0≦c<1.0、0<b+c<1.0の範囲である。)
【0031】
ここで、一般式(2)で示される繰り返し単位b、cを得るためのモノマーは、下記式Mb、Mcで示される。
【化7】
(式中、R
6〜R
10、Y、Z、nは上記の通りである。)
【0032】
繰り返しモノマーMbのYを変えた構造は、具体的には下記に例示することができる。ここでR
6、R
7は前述の通りである。
【化8】
【0033】
繰り返しモノマーMcは、具体的には下記に例示することができる。ここでR
8、R
10は前述の通りである。
【化9】
【0041】
一般式(2)中、R
7、R
10で示される酸不安定基は種々選定されるが、特に下記式(AL−10)、(AL−11)で示される基、下記式(AL−12)で示される3級アルキル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等が挙げられる。
【化17】
【0042】
式(AL−10)、(AL−11)において、R
51、R
54は炭素数1〜40、特に1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよい。R
52、R
53は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよく、a5は0〜10、特に1〜5の整数である。R
52とR
53、R
52とR
54、又はR
53とR
54はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子又は炭素原子と酸素原子と共に炭素数3〜20、好ましくは4〜16の環、特に脂環を形成してもよい。
式(AL−12)において、R
55、R
56、R
57はそれぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよい。あるいはR
55とR
56、R
55とR
57、又はR
56とR
57はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20、好ましくは4〜16の環、特に脂環を形成してもよい。
【0043】
式(AL−10)で示される基を具体的に例示すると、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等、また下記式(AL−10)−1〜(AL−10)−10で示される置換基が挙げられる。
【0045】
式(AL−10)−1〜(AL−10)−10中、R
58は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。R
59は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R
60は炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。a5は上記の通りである。
【0046】
前記式(AL−11)で示されるアセタール基を下記式(AL−11)−1〜(AL−11)−112に例示する。
【化19】
【0052】
また、酸不安定基として、下記一般式(AL−11a)あるいは(AL−11b)で示される基が挙げられ、該酸不安定基によってベース樹脂が分子間あるいは分子内架橋されていてもよい。
【化25】
【0053】
上記式中、R
61、R
62は水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。又は、R
61とR
62は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR
61、R
62は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R
63は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、b5、d5は0又は1〜10の整数、好ましくは0又は1〜5の整数、c5は1〜7の整数である。Aは、(c5+1)価の炭素数1〜50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ環基を示し、これらの基は酸素、硫黄、窒素等のヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−を示す。
この場合、好ましくはAは2〜4価の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、又は炭素数6〜30のアリーレン基であり、これらの基は酸素、硫黄、窒素等のヘテロ原子を介在していてもよく、またその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、c5は好ましくは1〜3の整数である。
【0054】
一般式(AL−11a)、(AL−11b)で示される架橋型アセタール基は、具体的には下記式(AL−11)−113〜(AL−11)−120のものが挙げられる。
【化26】
【0055】
次に、前記式(AL−12)で示される3級アルキル基としては、tert−ブチル基、トリエチルカルビル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、tert−アミル基等、あるいは下記一般式(AL−12)−1〜(AL−12)−16で示される基を挙げることができる。
【化27】
【0056】
上記式中、R
64は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示し、R
64同士が結合して環を形成してもよい。R
65、R
67は水素原子、又はメチル基、エチル基を示す。R
66は炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。
【0057】
更に、酸不安定基として、下記式(AL−12)−17に示す基が挙げられ、2価以上のアルキレン基、又はアリーレン基であるR
68を含む該酸不安定基によってベース樹脂が分子内あるいは分子間架橋されていてもよい。式(AL−12)−17のR
64は前述と同様、R
68は単結合、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又はアリーレン基を示し、酸素原子や硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。b6は0〜3の整数である。
【化28】
【0058】
なお、上述したR
64、R
65、R
66、R
67は酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を有していてもよく、具体的には下記式(AL−13)−1〜(AL−13)−7に示すことができる。
【化29】
【0059】
特に、上記式(AL−12)の酸不安定基としては、下記式(AL−12)−19に示されるエキソ体構造を有するものが好ましい。
【化30】
(式中、R
69は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。R
70〜R
75及びR
78、R
79はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキル基等の1価炭化水素基を示し、R
76、R
77は水素原子を示す。あるいは、R
70とR
71、R
72とR
74、R
72とR
75、R
73とR
75、R
73とR
79、R
74とR
78、R
76とR
77、又はR
77とR
78は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環(特に脂環)を形成していてもよく、その場合には環の形成に関与するものは炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基等の2価炭化水素基を示す。またR
70とR
79、R
76とR
79、又はR
72とR
74は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。また、本式により、鏡像体も表す。)
【0060】
ここで、式(AL−12)−19に示すエキソ体構造を有する下記繰り返し単位
【化31】
を得るためのエステル体のモノマーとしては、特開2000−327633号公報に示されている。R
6は上記の通りである。具体的には下記に示すものを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0062】
更に、上記式(AL−12)の酸不安定基としては、下記式(AL−12)−20に示されるフランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基を有する酸不安定基を挙げることができる。
【化33】
(式中、R
80、R
81はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。又は、R
80、R
81は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の脂肪族炭化水素環を形成してもよい。R
82はフランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基から選ばれる2価の基を示す。R
83は水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。)
【0063】
フランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基を有する酸不安定基で置換された繰り返し単位
【化34】
を得るためのモノマーとしては、下記に例示される。なお、R
6は上記の通りである。また、下記式中Meはメチル基、Acはアセチル基を示す。
【化35】
【0065】
式(AL−12)で示される3級アルキル基の酸不安定基として、環に直結した分岐アルキル基を有する場合、有機溶剤への溶解性が高い。このような酸不安定基は下記に例示することができる。
【化37】
【0067】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料のベース樹脂となる高分子化合物は、一般式(2)の繰り返し単位b及び/又はcの酸不安定基を有する繰り返し単位を有することが好ましいが、更にはヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、ラクトン環、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸エステル基、ジスルホン基、カーボネート基等の密着性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位dを共重合させてもよい。これらの中で、ラクトン環を密着性基として有するものが最も好ましく用いられる。
繰り返し単位dを得るためのモノマーとしては、具体的に下記に挙げることができる。
【0082】
更に、下記一般式で示されるスルホニウム塩(e1)〜(e3)のいずれかを共重合することもできる。
【化53】
(式中、R
20、R
24、R
28は水素原子又はメチル基、R
21は単結合、フェニレン基、−O−R
33−、又は−C(=O)−Y
1−R
33−である。Y
1は酸素原子又はNH、R
33は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R
22、R
23、R
25、R
26、R
27、R
29、R
30、R
31は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Z
0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R
32−、又は−C(=O)−Z
1−R
32−である。Z
1は酸素原子又はNH、R
32は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M
-は非求核性対向イオンを表す。)
【0083】
上記繰り返し単位以外には、特開2008−281980号公報に記載の非脱離性炭化水素基を有する繰り返し単位fを挙げることができる。特開2008−281980号に記載されていない非脱離性炭化水素基としてはインデン類、アセナフチレン類、ノルボルナジエン類を重合体として挙げることができる。非脱離性炭化水素を有する繰り返し単位を共重合することによって、有機溶剤現像液への溶解性を向上させることができる。
【0084】
第1パターン形成用レジストの上記繰り返し単位a、b、c、d、e1、e2、e3、fにおいて、繰り返し単位の比率は、0<a<1.0、0≦b<1.0、0≦c<1.0、0<b+c<1.0、0≦d≦0.9、0≦e1≦0.4、0≦e2≦0.4、0≦e3≦0.4、0≦e1+e2+e3≦0.4、0≦f≦0.6、好ましくは0.1≦a≦0.9、0≦b≦0.9、0≦c≦0.9、0<b+c<1.0、0≦d≦0.9、0≦e1≦0.3、0≦e2≦0.3、0≦e3≦0.3、0≦e1+e2+e3≦0.3、0≦f≦0.5の範囲である。
なお、a+b+c+d+e1+e2+e3+f=1である。
【0085】
ここで、例えばa+b=1とは、繰り返し単位a、bを含む高分子化合物において、繰り返し単位a、bの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%であることを示し、a+b<1とは、繰り返し単位a、bの合計量が全繰り返し単位の合計量に対して100モル%未満でa、b以外に他の繰り返し単位c等を有していることを示す。
【0086】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジストのベース樹脂となる高分子化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜500,000、特に2,000〜30,000であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎるとレジスト材料現像後の熱架橋における架橋効率が低下するものとなり、大きすぎると有機溶剤現像液への溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じやすくなる可能性がある。
【0087】
更に、本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト材料のベース樹脂となる高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりするおそれがある。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなりやすいことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト材料を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
また、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーをブレンドすることも可能である。
【0088】
これら高分子化合物を合成するには、1つの方法としては繰り返し単位a〜fを得るための不飽和結合を有するモノマーを有機溶剤中、ラジカル開始剤を加え加熱重合を行う方法があり、これにより高分子化合物を得ることができる。重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、酸不安定基を酸触媒によって一旦脱離し、その後、保護化あるいは部分保護化してもよい。
【0089】
第2パターン形成用レジスト材料としては、有機溶剤現像後の加熱によって有機溶剤に不溶化するプロセスは必ずしも必要ではなく、従って、第2レジスト材料のベース樹脂として用いる高分子化合物において、繰り返し単位aは必ずしも必要ではないため、この場合aの範囲は0≦a<1.0である。繰り返し単位a以外の繰り返し単位としては第1パターン用レジスト材料と同じ範囲を適用することができる。
この場合、第2レジスト材料のベース樹脂が、カルボキシル基及び/又はヒドロキシ基の水素原子が酸不安定基で置換されている一般式(2)で示される繰り返し単位を有していることが好ましい。
【0090】
また、第2のレジスト材料に用いる溶剤がプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ヘプタノン、γ−ブチロラクトンから選ばれる1種以上を含む単独又は混合溶剤である。
【0091】
この場合、上記第1ネガパターンの加熱後の膜に30秒間、上記第2レジスト材料の溶剤に触れた時の膜減りが10nm以下、より好ましくは5nm以下、更には2nm以下あることが好ましい。ここで、上記第1ネガパターンの加熱は130〜300℃、特に140〜250℃で3〜300秒間、特に5〜200秒間行うことが確実な架橋を行う上で好ましい。第1レジスト材料のベース樹脂として、上記7−オキサノルボルナン環を有する繰り返し単位を含むことで、かかる膜減りを達成し得る。
【0092】
本発明のパターン形成方法に用いられる第1及び第2レジスト材料は、有機溶剤、高エネルギー線に感応して酸を発生する化合物(酸発生剤)、必要に応じて溶解制御剤、塩基性化合物、界面活性剤、その他の成分を含有することができる。繰り返し単位e1〜e3で示される酸発生剤の繰り返し単位として有しているポリマーをベースとしている場合は、必ずしも酸発生剤を添加する必要はない。
【0093】
本発明のパターン形成方法に用いられる第1及び第2のレジスト材料、特には化学増幅型レジスト材料に使用される有機溶剤としては、ベース樹脂、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では、これらの有機溶剤の中でもレジスト成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0094】
なお、有機溶剤の使用量は、ベース樹脂100質量部に対し、200〜3,000質量部、特に400〜2,000質量部とすることが好ましい。
【0095】
本発明の第1のレジスト材料、第2のレジスト材料には、本発明のパターン形成方法に用いる化学増幅型レジスト材料を機能させるために酸発生剤を含んでもよく、例えば、活性光線又は放射線に感応して酸を発生する化合物(光酸発生剤)を含有してもよい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。
【0096】
酸発生剤の添加量は、ベース樹脂100質量部に対して好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは0.5〜40質量部である。0.1質量部より少ないと露光時の酸発生量が少なく、感度及び解像力が劣る場合があり、50質量部を超えるとレジストの透過率が低下し、解像力が劣る場合がある。なお、上記式e1〜e3に示されるように酸発生剤の繰り返し単位を有するベースポリマーを用いた場合は添加型の酸発生剤は必ずしも必須の成分ではない。
【0097】
本発明の材料には、クエンチャーとしてアミン類などの塩基性化合物を添加することもできる。
塩基性化合物としては、酸発生剤から発生した酸をトラップし、酸の拡散を制御してコントラストを向上させる効果があり、特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]に記載の1級、2級、3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物あるいは特許第3790649号公報に記載のカルバメート基を有する化合物を挙げることができる。
また、特開2008−158339号公報に記載されているα位がフッ素化されていないスルホン酸、及び特許第3991462号公報に記載のカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩をクエンチャーとして併用することもできる。α位がフッ素化されていないスルホン酸及びカルボン酸のオニウム塩系のクエンチャーは塩基性がないが、α位がフッ素化された超強酸と塩交換することによってα位がフッ素化されたスルホン酸を中和することによってクエンチャーとして働く。
【0098】
なお、クエンチャーの配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.001〜15質量部、特に0.01〜10質量部が好適である。配合量が0.001質量部より少ないと配合効果が少なく、15質量部を超えると感度が低下しすぎる場合がある。
【0099】
特開2008−239918号公報に記載のポリマー型のクエンチャーを添加することもできる。このものは、コート後のレジスト表面に配向することによってパターン後のレジストの矩形性を高める。ポリマー型のクエンチャーは、ネガレジスト膜の場合の頭張りやブリッジを低減させる効果がある。
【0100】
スピンコート後のレジスト膜表面の撥水性を向上させるための高分子化合物を添加することもできる。この添加剤はトップコートを用いない液浸リソグラフィーに用いることができる。このような添加剤は特定構造の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有し、特開2007−297590号公報、特開2008−111103号公報に例示されている。レジスト材料に添加される撥水性向上剤は、現像液の有機溶剤に溶解する必要がある。前述の特定の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する撥水性向上剤は、現像液への溶解性が良好である。撥水性の添加剤として、アミノ基やアミン塩を繰り返し単位として共重合した高分子化合物は、PEB中の酸の蒸発を防いで現像後のホールパターンの開口不良を防止する効果が高い。撥水性向上剤の添加量は、レジスト材料のベース樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0101】
本発明のパターン形成に用いられるレジスト材料、特には化学増幅型レジスト材料には、更に、塗布性を向上させる等のための界面活性剤を加えることができる。
【0102】
界面活性剤は特開2008−111103号公報の段落[0165]〜[0166]、溶解制御剤は特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]、アセチレンアルコール類は特開2008−122932号公報の段落[0179]〜[0182]に記載のものを用いることができる。
【0103】
本発明のパターン形成方法に用いられる界面活性剤の添加量としては、レジスト材料中のベース樹脂100質量部に対して2質量部以下、好ましくは1質量部以下である。
【0104】
本発明に係るパターニング方法は、まず上記第1のレジスト材料を基板上に塗布してレジスト膜を形成する。この場合、
図1(A)に示したように、本発明においては基板10上に形成した被加工基板20に直接又は中間介在層を介して第1レジスト材料による第1レジスト膜30を形成するが、レジスト膜の厚さとしては、10〜1,000nm、特に20〜500nmであることが好ましい。このレジスト膜は、露光前に加熱(プリベーク)を行うが、この条件としては60〜180℃、特に70〜150℃で10〜300秒間、特に15〜200秒間行うことが好ましい。
なお、基板10としては、シリコン基板が一般的に用いられる。被加工基板20としては、SiO
2、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が挙げられる。中間介在層としては、SiO
2、SiN、SiON、p−Si等のハードマスク、カーボン膜による下層膜と珪素含有中間膜、有機反射防止膜等が挙げられる。
【0105】
次いで、
図1(B)に示すように露光を行う。ここで、露光は波長140〜250nmの高エネルギー線、その中でもArFエキシマレーザーによる193nmの露光が最も好ましく用いられる。露光は大気中や窒素気流中のドライ雰囲気でもよいし、水中の液浸露光であってもよい。ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶媒として純水、又はアルカン等の屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを45nmノードまで延命させるための重要な技術である。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するための露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜を形成させてもよい。
【0106】
液浸露光に用いられる保護膜は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有するポリマーと、炭素数4以上のアルコール、炭素数8〜12のエーテル及びこれらの混合物から選ばれる溶剤を含む組成物から形成することが好ましい。
なお、保護膜形成用材料にアミン化合物を配合することが好ましい。アミン化合物としては、上記塩基性化合物として詳述したものの中から選定することができる。アミン化合物の配合量は、保護膜用のベース樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.02〜8質量部が好ましい。レジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。アミン含有の保護膜を適用させることによって、ネガレジスト膜の頭張りを防止することができる。
【0107】
露光における露光量は1〜200mJ/cm
2程度、好ましくは10〜100mJ/cm
2程度となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜120℃、1〜3分間ポストエクスポージュアベーク(PEB)する。
【0108】
更に、有機溶剤の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより、基板上に目的の第1ネガパターン30aが形成される(
図1(C)参照)。
【0109】
次いで、上記パターン中の高分子化合物(ベース樹脂)の該高分子化合物を架橋し、架橋第1ネガパターン30bを形成する(
図1(D)参照)。この場合、加熱による架橋が必要である。
この場合、加熱は、上述したように、130〜300℃、特に140〜250℃で3〜300秒間、特に5〜200秒間行うことが、確実な架橋を行う上で好ましい。
【0110】
次に、
図2(E)に示したように、架橋第1ネガパターン30bを覆って第2のレジスト材料を塗布する。この場合、第2レジスト膜40の厚さは任意に選択することができるが、通常、10〜300nm、特に20〜200nmであることが好ましい。
【0111】
次いで、
図2(F)に示したように、2回目の露光を行い、PEB後に
図2(G)に示したように、有機溶剤によって現像を行い、ネガパターンを形成する。1回目のネガパターンは有機溶剤現像液に不溶であるので、2回目の有機溶剤現像によって1回目のネガレジストパターンは保持される。その後、
図2(H)に示したように、被加工基板20を架橋第1ネガパターン30b及び第2ネガパターン40aをマスクとしてドライエッチングする。
この場合、第1及び第2のレジスト膜のネガパターンを得るための有機溶剤の現像液が、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0112】
第1ネガパターンと第2ネガパターンの組み合わせ方としては、
図3に示すように、直交したラインを組み合わせた場合を挙げることができる。この場合、1:1パターンのネガパターンと、1:1パターンをオーバー露光して作製したネガパターンを組み合わせると長方形のホールパターンが形成される。1回目と2回目のネガパターンが1:1の場合は正方形のホールパターンとなる。
【0113】
第1ネガパターンと第2ネガパターンを直交させずに異なる方向に形成することも可能である。この場合、
図4に示すように、第1ネガパターンと第2ネガパターンとが接している場合や、それぞれが離れている場合がある。
【0114】
図5に示すように、第1ネガラインが、第2ネガパターンの楕円形ホールを分割する場合も考えられる。この場合、非常に狭いピッチのホールパターンが形成される。
【0115】
図6では第1ネガパターンの間に第2ネガパターンが形成されている。この場合は、ネガパターンとネガパターンの間には非常に狭いトレンチパターンが形成可能であり、ピッチを半分にすることが可能である。
【0116】
図7に示すように、有機溶剤によるネガ現像によって密集ホールパターンが形成され、ベークによって第2レジスト材料の溶剤に不溶の膜にしてその上に第2レジスト材料を塗布、有機溶剤によるネガパターンを形成して
図8に示されるように部分的に第1のホールパターンを塞ぐことによってランダム配置のホールパターンを形成することができる。
図8のパターンを更にベークして第2レジスト材料を不溶化し、その上に第3のレジスト材料を塗布してパターンを形成することも可能である。同様の方法で第4、第5のレジストパターンを形成することも可能である。
【実施例】
【0117】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)はGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0118】
レジスト材料の調製
下記高分子化合物(レジストポリマー)を用いて、下記表1,2に示す組成で溶解させた溶液を0.2μmサイズのフィルターで濾過してそれぞれ第1レジスト溶液、第2レジスト溶液を調製した。
表中の各組成は次の通りである。
【0119】
酸発生剤:PAG1(下記構造式参照)
【化54】
【0120】
レジストポリマー1
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.76
【化55】
【0121】
レジストポリマー2
分子量(Mw)=7,300
分散度(Mw/Mn)=1.67
【化56】
【0122】
レジストポリマー3
分子量(Mw)=7,800
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化57】
【0123】
レジストポリマー4
分子量(Mw)=7,200
分散度(Mw/Mn)=1.82
【化58】
【0124】
レジストポリマー5
分子量(Mw)=8,300
分散度(Mw/Mn)=1.78
【化59】
【0125】
レジストポリマー6
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化60】
【0126】
レジストポリマー7
分子量(Mw)=9,100
分散度(Mw/Mn)=1.83
【化61】
【0127】
レジストポリマー8
分子量(Mw)=8,500
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化62】
【0128】
レジストポリマー9
分子量(Mw)=8,600
分散度(Mw/Mn)=1.76
【化63】
【0129】
レジストポリマー10
分子量(Mw)=5,900
分散度(Mw/Mn)=1.99
【化64】
【0130】
塩基性化合物:Quencher1,2、Quencher3(ポリマー型クエンチャー)(下記構造式参照)
【化65】
【0131】
撥水性ポリマー1(下記構造式参照)
【化66】
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
CyH(シクロヘキサノン)
GBL(γ−ブチロラクトン)
EL(乳酸エチル)
【0132】
[実施例、比較例]
高温ベークによる溶剤溶解性測定
下記表1に示す組成で調製した第1レジスト材料を、シリコンウエハーにARC−29A(日産化学工業(株)製)を90nmの膜厚で成膜した基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを100nmにした。ArFエキシマレーザースキャナー((株)ニコン製、NSR−305B、NA0.68、σ0.85、通常照明)でウエハー全面を30mJ/cm
2の露光量で露光を行い、100℃で60秒間ベークにより脱保護反応を行った。その後、場合によっては表3記載の温度で溶剤不溶のためのベークを60秒間行い、表3記載の有機溶剤を30秒間ディスペンスし、スピンドライと100℃で60秒間ベークによって有機溶剤を乾燥させ、膜厚計で有機溶剤ディスペンス前後の膜厚を測定し、有機溶剤ディスペンスによる膜厚減少量を求めた。比較例1−4では、プリベーク後のレジスト膜に波長172nm、放射照度10mWのXe
2エキシマランプで100mJ/cm
2の光を照射した後に表3記載の温度で60秒間ベークし、有機溶剤ディスペンスによる膜厚減少量を求めた。
【0133】
ArF露光パターニング評価
実施例2−1〜2−11、比較例2−2では、下記表1に示す組成で調製した第1レジスト材料を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−101(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを100nmにした。
これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、ダイポール35度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、Y方向のラインアンドスペースパターンのマスク)を用いて露光を行い、露光後表4に示される温度で60秒間ベーク(PEB)し、表4記載の有機溶剤で30秒間現像し、ジイソアミルエーテルでリンスし、ピッチ100nm、ライン幅50nmの第1のネガ型のパターンを得、次いで185℃で60秒間ベークを行った。次いで、表2に示す組成で調製した第2レジスト材料を塗布して、100nmの第2レジスト膜を形成し、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、ダイポール35度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、X方向のラインアンドスペースパターンのマスク)を用いて第1のレジストパターンと重なる位置に露光を行い、露光後表4に示される温度で60秒間ベーク(PEB)し、表4記載の有機溶剤で30秒間現像し、ジイソアミルエーテルでリンスし、ピッチ100nm、ライン幅50nmの第2のネガ型のパターンを得、第1のY方向ラインと第2のX方向ラインとが直交した井桁パターンを形成した。
比較例2−1では、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、ダイポール35度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)を用いてY方向のラインアンドスペースパターンのマスクとX方向のラインアンドスペースのマスクの2回の露光をそれぞれが重なる位置に連続して行い、PEBの後有機溶剤を用いて30秒間現像し、ジイソアミルエーテルでリンスした。
比較例2−3では、上記方法でY方向のラインアンドスペースのマスクを用いて露光を行い、PEB後2.38質量%のTMAHアルカリ現像液で現像してポジパターンを得た。次いで、波長172nm、放射照度10mWのXe
2エキシマランプで100mJ/cm
2の光を照射した後に185℃で60秒間ベークし、ポジパターンを不溶化させた。次にレジストを塗布、X方向のラインを露光し、PEB、アルカリ現像によってポジパターンを得、井桁パターンを形成した。結果を表4に示す。
【0134】
Y方向のパターンと、X方向のパターンが直交した四角形のホールパターンが形成されているかどうか、Y方向の第1のパターンのライン幅が保持されているかどうかを(株)日立ハイテクノロジーズ製TDSEM(CG−4000)で観察し、測定した。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
表3の結果から、繰り返し単位aを有するポリマーを含有するレジスト材料は、脱保護反応後の高温ベークによって有機溶剤に不溶の膜が形成された。X方向のラインとY方向のラインの2回のダブルパターニングを行った表4における実施例2−1〜2−11では、1回目のパターンの溶剤不溶化のためにX方向のラインとY方向のラインスペース寸法が同程度となっており、四角形なホールが形成された。溶剤不溶化が十分ではない比較例2−2では1回目のスペース寸法が大きくなってしまい、コーナーが丸いホールが形成された。X方向のラインとY方向のラインの2回の露光を連続して行い、1回のPEBと現像によってホールパターンを形成した場合は比較例2−1に示すように丸いホールが形成された。比較例2−3ではアルカリ現像によるポジパターンを光照射とベークによって不溶化させ、その上にポジレジストを塗布してアルカリ現像を行った場合も1回目のスペースが広くなってしまい、コーナーが丸いホールが形成された。
【0140】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。