特許第6128033号(P6128033)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6128033含フッ素アルコール化合物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128033
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】含フッ素アルコール化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/336 20060101AFI20170508BHJP
   C07F 7/21 20060101ALI20170508BHJP
   C09D 5/16 20060101ALN20170508BHJP
   C09D 201/00 20060101ALN20170508BHJP
   C09D 7/12 20060101ALN20170508BHJP
【FI】
   C08G65/336
   C07F7/21CSP
   !C09D5/16
   !C09D201/00
   !C09D7/12
【請求項の数】12
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2014-67437(P2014-67437)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-189843(P2015-189843A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】坂野 安則
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−007124(JP,A)
【文献】 特開2012−197395(JP,A)
【文献】 特開2012−046583(JP,A)
【文献】 特開2013−237824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00−65/48
C07F 7/00−7/30
C09D 5/00−5/46
7/00−7/14
201/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)で表される含フッ素アルコール化合物。
【化1】
(式中、R2は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基と酸素原子によって構成される分子量400〜20,000の2価のパーフルオロポリエーテル基であり、Z1は独立に炭素数1〜20の酸素原子、窒素原子及びケイ素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。Q2は独立に少なくとも(b+1)個のケイ素原子を含む(b+1)価の連結基である。Z2は独立に炭素数1〜200の酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。R1は独立に水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、R2は独立に炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、Z2とR1及び/又はZ2とR2はそれぞれ結合してR1,R2と結合する炭素原子と共に環状構造をなしていてもよく、またR1とR2が結合してそれぞれに結合する炭素原子と共にZ2を含んだ環状構造をなしていてもよい。bは独立に1〜10の整数である。)
【請求項2】
一般式(2)中の下記式
−Z2−CHR2−OH
で示される基が、下記式
−Z3−OCH2CH(CH3)−OH
(式中、Z3は炭素数1〜199の酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中に環状構造をなしていてもよく、また隣接するR1とZ3が結合してR1と結合する炭素原子と共に環状構造をなしていてもよい。)
で示される基である請求項1記載の含フッ素アルコール化合物。
【請求項3】
一般式(2)中の下記式
−Z2−CHR2−OH
で示される基が、下記式
−CH2−[OC36n−OCH2CH(CH3)−OH
(式中、nは0〜64の整数である。)
で示される基である請求項2記載の含フッ素アルコール化合物。
【請求項4】
一般式(2)中のZ1が、下記式
−CH2CH2
−CH2CH2CH2
−CH2CH2CH2CH2
−CH2OCH2CH2
−CH2OCH2CH2CH2
【化2】
で示される基から選ばれるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の含フッ素アルコール化合物。
【請求項5】
一般式(2)中のQ2が、下記式
【化3】
(式中、bは前述の通りであり、(b+1)個の各ユニットの結合手は、Z1及び[ ]で括られたb個のCH2のいずれかの基と結合する。)
で示される基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の含フッ素アルコール化合物。
【請求項6】
下記一般式(9)で表される請求項1記載の含フッ素アルコール化合物。
【化4】
(式中、R2、Q2、Z1、bは前述の通りであり、nは0〜64の整数である。)
【請求項7】
下記一般式(1)で表される含フッ素アルコール化合物。
【化5】
(式中、Rf1は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基と酸素原子によって構成される分子量400〜20,000の1価のパーフルオロポリエーテル基であり、Z1は独立に炭素数1〜20の酸素原子、窒素原子及びケイ素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。Q1は少なくとも(a+b)個のケイ素原子を含む(a+b)価の連結基である。R1は独立に水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、R2は独立に炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、Z2’は独立に炭素数1〜200の酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよく、途中環状構造を含んでいる2価の炭化水素基であり、Z2’とR1及び/又はZ2’とR2はそれぞれ結合してR1,R2と結合する炭素原子と共に環状構造をなしているか、あるいは、R1とR2が結合してそれぞれに結合する炭素原子と共にZ2’を含んだ環状構造をなしているものである。aは1〜10の整数であり、bは独立に1〜10の整数である。)
【請求項8】
一般式(1)において、Z2’を含む環状構造が、下記式
【化6】
(式中、結合手は、OHとCHR1又はCHR2とCH2に結合する。)
【化7】
(式中、結合手は、OHとCH2に結合する。)
で示される構造のいずれかである請求項7記載の含フッ素アルコール化合物。
【請求項9】
一般式(1)中のZ1が、下記式
−CH2CH2
−CH2CH2CH2
−CH2CH2CH2CH2
−CH2OCH2CH2
−CH2OCH2CH2CH2
【化8】
で示される基から選ばれるものである請求項7又は8に記載の含フッ素アルコール化合物。
【請求項10】
一般式(1)中のQ1が、下記式
【化9】
(式中、a、bは前述の通りであり、(a+b)個の各ユニットの結合手は、[ ]で括られたa個のZ1及びb個のCH2のいずれかの基と結合する。)
で示される基である請求項7〜9のいずれか1項に記載の含フッ素アルコール化合物。
【請求項11】
下記一般式(4)
[H]b−Q2−Z1−Rf2−Z1−Q2−[H]b (4)
(式中、Q2、R2、Z1、bは前述の通りであり、[ ]で括られたb個のHはすべてそれぞれ2構造中のケイ素原子と結合している。)
で表される含フッ素化合物と、下記一般式(5)
CH2=CR1−Z2−CHR2−OH (5)
(式中、R1、R2、Z2は前述の通りである。)
で表される末端不飽和基含有アルコールとをヒドロシリル化反応させることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の含フッ素アルコール化合物の製造方法。
【請求項12】
下記一般式(3)
[Rf1−Z1a−Q1−[H]b (3)
(式中、Q1、Rf1、Z1、a、bは前述の通りであり、[ ]で括られたa個のZ1及びb個のHはすべてそれぞれQ1構造中のケイ素原子と結合している。)
で表される含フッ素化合物と、下記一般式(5’)
CH2=CR1−Z2’−CHR2−OH (5’)
(式中、R1、R2、Z2’は前述の通りである。)
で表される末端不飽和基含有アルコールとをヒドロシリル化反応させることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の含フッ素アルコール化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素アルコール化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成形体等の表面を保護する手段として、ハードコート処理が広く一般に用いられている。これは成形体の表面に硬質の硬化樹脂層(ハードコート層)を形成し、傷つき難くするものである。ハードコート層を構成する材料としては、熱硬化性樹脂や紫外線もしくは電子線硬化型樹脂、更にはその両方の機能を持つ樹脂が多く使用されている。
【0003】
一方、樹脂成形品の利用分野の拡大や高付加価値化の流れに伴い、硬化樹脂層(ハードコート層)に対する高機能化の要望が高まっており、その一つとして、ハードコート層への防汚性の付与が求められている。これはハードコート層の表面に撥水性、撥油性などの性質を付与することにより、汚れ難く、あるいは汚れても容易に取り除くことができるようにするものである。
【0004】
ハードコート層に防汚性を付与する方法としては、一旦形成されたハードコート層表面に含フッ素防汚剤を塗工及び/又は定着させる方法が広く用いられているが、含フッ素硬化性成分を硬化前の硬化樹脂組成物に添加し、これを塗布硬化させることでハードコート層の形成と防汚性の付与を同時に行う方法についても検討されてきた。例えば、特開平6−211945号公報(特許文献1)には、アクリル系の硬化性樹脂組成物にフルオロアルキルアクリレートを添加、硬化させることで防汚性を付与したハードコート層の製造が示されている。
【0005】
本発明者は、このような硬化性樹脂組成物に防汚性を付与できるフッ素化合物として、様々な開発を進めており、例えば、特開2013−237824号公報(特許文献2)には、含フッ素アルコール化合物を熱硬化性樹脂に配合することで防汚性を付与する方法を提案している。また、本発明者は、例えば、特開2010−53114号公報(特許文献3)、特開2010−138112号公報(特許文献4)、特開2010−285501号公報(特許文献5)に示す光硬化可能なフッ素化合物を提案している。これらの光硬化可能なフッ素化合物を合成する手法としては、含フッ素アルコールとイソシアネート基を有するアクリル化合物を反応させる方法が優れている。
【0006】
近年、こうした硬化性樹脂への配合を目的とした含フッ素アルコール化合物及び含フッ素アルコール化合物より合成される含フッ素アクリル化合物の高機能化への要求が高まっており、溶解性と反応性に優れた含フッ素アルコール化合物が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−211945号公報
【特許文献2】特開2013−237824号公報
【特許文献3】特開2010−53114号公報
【特許文献4】特開2010−138112号公報
【特許文献5】特開2010−285501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、溶解性と反応性に優れた含フッ素アルコール化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、このような含フッ素アルコール化合物として、特開2010−53114号公報(特許文献3)、特開2010−138112号公報(特許文献4)、特開2010−285501号公報(特許文献5)等において、目的化合物の中間体として複数のSi−H基を有するパーフルオロポリエーテル基に、末端に不飽和結合を有するアルコール化合物をヒドロシリル化により付加させる手法を提案し、具体的には、以下のような1級や3級のアルコール末端を導入することを例示している。
−CH2CH2CH2OH
−CH2CH2CH2OCH2CH2OH
【化1】
【0010】
ここで、−CH2OH型の1級アルコール末端を導入した含フッ素アルコール化合物の場合、加熱や経時変化によって容易に増粘し、溶解性が低下してしまう場合があり、一方で、3級のアルコール末端の場合、1級の場合と比較して条件によっては反応速度がきわめて遅くなることがあった。特にアクリル基を有するイソシアネート化合物との反応では、近年、毒性に対する懸念から触媒活性の高いスズ系触媒を使用することが困難となってきており、より安全だが触媒活性の低いチタン系、ジルコニウム系などの触媒に移行している。しかし、これらの触媒による3級アルコールとイソシアネートの反応では反応速度差はさらに大きくなる傾向にある。
このためアルコール末端の安定性と反応性を両立させた新規の含フッ素アルコール化合物が求められていた。
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために更なる検討を重ねた結果、下記一般式(1)又は(2)
【化2】
(式中、Rf1は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基と酸素原子によって構成される分子量400〜20,000の1価のパーフルオロポリエーテル基であり、Rf2は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基と酸素原子によって構成される分子量400〜20,000の2価のパーフルオロポリエーテル基であり、Z1は独立に炭素数1〜20の酸素原子、窒素原子及びケイ素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。Q1は少なくとも(a+b)個のケイ素原子を含む(a+b)価の連結基であり、Q2は独立に少なくとも(b+1)個のケイ素原子を含む(b+1)価の連結基である。Z2は独立に炭素数1〜200の酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。R1は独立に水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、R2は独立に炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、Z2とR1及び/又はZ2とR2はそれぞれ結合してR1,R2と結合する炭素原子と共に環状構造をなしていてもよく、またR1とR2が結合してそれぞれに結合する炭素原子と共にZ2を含んだ環状構造をなしていてもよい。aは1〜10の整数であり、bは独立に1〜10の整数である。)
で表される2級のアルコール末端を有する含フッ素アルコール化合物が、1級のアルコール末端の含フッ素化合物と比較して加熱や経時変化による増粘が少なく、3級のアルコール末端の含フッ素化合物を用いた場合よりも反応速度が十分速く、上記要求を満たすことを見出し、本発明をなすに至った。
【0012】
従って、本発明は、下記の含フッ素アルコール化合物及びその製造方法を提供する。
〔1〕
下記一般式(2)で表される含フッ素アルコール化合物。
【化3】
(式中、R2は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基と酸素原子によって構成される分子量400〜20,000の2価のパーフルオロポリエーテル基であり、Z1は独立に炭素数1〜20の酸素原子、窒素原子及びケイ素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。Q2は独立に少なくとも(b+1)個のケイ素原子を含む(b+1)価の連結基である。Z2は独立に炭素数1〜200の酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。R1は独立に水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、R2は独立に炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、Z2とR1及び/又はZ2とR2はそれぞれ結合してR1,R2と結合する炭素原子と共に環状構造をなしていてもよく、またR1とR2が結合してそれぞれに結合する炭素原子と共にZ2を含んだ環状構造をなしていてもよい。bは独立に1〜10の整数である。)
〔2〕
一般式(2)中の下記式
−Z2−CHR2−OH
で示される基が、下記式
−Z3−OCH2CH(CH3)−OH
(式中、Z3は炭素数1〜199の酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中に環状構造をなしていてもよく、また隣接するR1とZ3が結合してR1と結合する炭素原子と共に環状構造をなしていてもよい。)
で示される基である〔1〕記載の含フッ素アルコール化合物。
〔3〕
一般式(2)中の下記式
−Z2−CHR2−OH
で示される基が、下記式
−CH2−[OC36n−OCH2CH(CH3)−OH
(式中、nは0〜64の整数である。)
で示される基である〔2〕記載の含フッ素アルコール化合物。
〔4〕
一般式(2)中のZ1が、下記式
−CH2CH2
−CH2CH2CH2
−CH2CH2CH2CH2
−CH2OCH2CH2
−CH2OCH2CH2CH2
【化32】
で示される基から選ばれるものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の含フッ素アルコール化合物。
〔5〕
一般式(2)中のQ2が、下記式
【化33】
(式中、bは前述の通りであり、(b+1)個の各ユニットの結合手は、Z1及び[ ]で括られたb個のCH2のいずれかの基と結合する。)
で示される基である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の含フッ素アルコール化合物。

下記一般式(9)で表される〔1〕記載の含フッ素アルコール化合物。
【化4】
(式中、R2、Q2、Z1、bは前述の通りであり、nは0〜64の整数である。)
〔7〕
下記一般式(1)で表される含フッ素アルコール化合物。
【化34】
(式中、Rf1は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基と酸素原子によって構成される分子量400〜20,000の1価のパーフルオロポリエーテル基であり、Z1は独立に炭素数1〜20の酸素原子、窒素原子及びケイ素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。Q1は少なくとも(a+b)個のケイ素原子を含む(a+b)価の連結基である。R1は独立に水素原子又は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、R2は独立に炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、Z2’は独立に炭素数1〜200の酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよく、途中環状構造を含んでいる2価の炭化水素基であり、Z2’とR1及び/又はZ2’とR2はそれぞれ結合してR1,R2と結合する炭素原子と共に環状構造をなしているか、あるいは、R1とR2が結合してそれぞれに結合する炭素原子と共にZ2’を含んだ環状構造をなしているものである。aは1〜10の整数であり、bは独立に1〜10の整数である。)
〔8〕
一般式(1)において、Z2’を含む環状構造が、下記式
【化35】
(式中、結合手は、OHとCHR1又はCHR2とCH2に結合する。)
【化36】
(式中、結合手は、OHとCH2に結合する。)
で示される構造のいずれかである〔7〕記載の含フッ素アルコール化合物。
〔9〕
一般式(1)中のZ1が、下記式
−CH2CH2
−CH2CH2CH2
−CH2CH2CH2CH2
−CH2OCH2CH2
−CH2OCH2CH2CH2
【化37】
で示される基から選ばれるものである〔7〕又は〔8〕に記載の含フッ素アルコール化合物。
〔10〕
一般式(1)中のQ1が、下記式
【化38】
(式中、a、bは前述の通りであり、(a+b)個の各ユニットの結合手は、[ ]で括られたa個のZ1及びb個のCH2のいずれかの基と結合する。)
で示される基である〔7〕〜〔9〕のいずれかに記載の含フッ素アルコール化合物。
11
下記一般式(4)
[H]b−Q2−Z1−Rf2−Z1−Q2−[H]b (4)
(式中、Q2、R2、Z1、bは前述の通りであり、[ ]で括られたb個のHはすべてそれぞれ2構造中のケイ素原子と結合している。)
で表される含フッ素化合物と、下記一般式(5)
CH2=CR1−Z2−CHR2−OH (5)
(式中、R1、R2、Z2は前述の通りである。)
で表される末端不飽和基含有アルコールとをヒドロシリル化反応させることを特徴とする〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の含フッ素アルコール化合物の製造方法。
〔12〕
下記一般式(3)
[Rf1−Z1a−Q1−[H]b (3)
(式中、Q1、Rf1、Z1、a、bは前述の通りであり、[ ]で括られたa個のZ1及びb個のHはすべてそれぞれQ1構造中のケイ素原子と結合している。)
で表される含フッ素化合物と、下記一般式(5’)
CH2=CR1−Z2’−CHR2−OH (5’)
(式中、R1、R2、Z2’は前述の通りである。)
で表される末端不飽和基含有アルコールとをヒドロシリル化反応させることを特徴とする〔7〕〜〔10〕のいずれかに記載の含フッ素アルコール化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の含フッ素アルコール化合物は、加熱や経時変化による増粘が少なく、反応速度が十分速いため、熱硬化型樹脂組成物に防汚性を付与するための添加剤、あるいは紫外線硬化型樹脂へ防汚性を付与する防汚添加剤等に用いる含フッ素アクリル化合物の原料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の含フッ素アルコール化合物は、下記一般式(1)又は(2)で表されるものである。
【化5】
【0015】
上記式(1)、(2)中、Rf1は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基と酸素原子によって構成される分子量400〜20,000の1価のパーフルオロポリエーテル基であり、Rf2は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基と酸素原子によって構成される分子量400〜20,000の2価のパーフルオロポリエーテル基であり、Rf1、Rf2は特に以下の炭素数1〜3の構造を主な繰り返し単位として有するものが好適である。
−CF2O−
−CF2CF2O−
−CF(CF3)CF2O−
−CF2CF2CF2O−
これらの構造は、いずれか一つの単独重合体、あるいは複数の構造からなるランダム、ブロック重合体でもよい。
【0016】
このような構造を有するRf1の好適な例としては、例えば、以下の構造を挙げることができる。
CF3O−(CF2O)p(CF2CF2O)q−CF2
(式中、pは0〜400、好ましくは0〜200の整数、qは0〜170、好ましくは0〜100の整数、p+qは2〜400、好ましくは3〜300の整数である。)
F−[CF(CF3)CF2O]r+1−CF(CF3)−
(式中、rは0〜120、好ましくは0〜80の整数である。)
F−[CF2CF2CF2O]s+1−CF2CF2
(式中、sは0〜120、好ましくは0〜80の整数である。)
【0017】
また、Rf2の好適な例としては、例えば、以下の構造を挙げることができる。
−CF2O−(CF2O)p(CF2CF2O)q−CF2
(式中、pは0〜400、好ましくは0〜200の整数、qは0〜170、好ましくは0〜100の整数、p+qは2〜400、好ましくは3〜300の整数である。)
【化6】
(式中、t+uは2〜120、好ましくは4〜100の整数である。)
【0018】
これらのRf1、Rf2基の分子量は、該当する構造部分の数平均分子量が、それぞれ400〜20,000、好ましくは800〜10,000の範囲に含まれていればよく、その分子量分布については特に限定されるものではない。なお、本発明において、分子量は、1H−NMR及び19F−NMRに基づく末端構造と主鎖構造との比率から算出される数平均分子量である。
【0019】
上記Rf1及びRf2の結合手は、すべてZ1に結合する。Z1は炭素数1〜20、好ましくは2〜16の、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。Z1の特に好ましい構造としては、以下のものを挙げることができる。
−CH2CH2
−CH2CH2CH2
−CH2CH2CH2CH2
−CH2OCH2CH2
−CH2OCH2CH2CH2
【化7】
【0020】
上記式(1)、(2)において、a及びbはそれぞれ独立に1〜10の整数であり、好ましくは1〜8の整数であり、更に好ましくは1〜4の整数である。
【0021】
上記式(1)において、Q1は少なくとも(a+b)個のケイ素原子を含む(a+b)価の連結基であり、環状構造をなしていてもよい。このようなQ1の好ましいものとして、それぞれ(a+b)個のSi原子を有するシロキサン構造、非置換又はハロゲン置換のシルアルキレン構造、シルアリーレン構造又はこれらの2種以上の組み合せからなる(a+b)価の連結基が挙げられる。特に好ましい構造として、具体的には、下記の構造が示される。
但し、a及びbは上記式(1)のa,bと同じであり、それぞれ独立に1〜10の整数であり、好ましくは1〜8の整数であり、更に好ましくは1〜4の整数である。cは1〜5の整数であり、好ましくは3〜5の整数である。各ユニットの並びはランダムであり、(a+b)個の各ユニット等の結合手は、[ ]で括られたa個のZ1及びb個のCH2のいずれかの基と結合する。
【0022】
【化8】
【0023】
ここで、Tは(a+b)価の連結基であり、例えば以下のものが例示される。
【0024】
【化9】
【0025】
上記式(2)において、Q2は少なくとも(b+1)個のケイ素原子を含む(b+1)価の連結基であり、環状構造をなしていてもよい。このようなQ2の好ましいものとして、それぞれ(b+1)個のSi原子を有するシロキサン構造、非置換又はハロゲン置換のシルアルキレン構造、シルアリーレン構造又はこれらの2種以上の組み合せからなる(b+1)価の連結基が挙げられる。特に好ましい構造として、具体的には、下記の構造が示される。
但し、bは上記式(2)のbと同じであり、独立に1〜10の整数であり、好ましくは1〜8の整数であり、更に好ましくは1〜4の整数である。cは1〜5の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。各ユニットの並びはランダムであり、(b+1)個の各ユニット等の結合手は、Z1及び[ ]で括られたb個のCH2のいずれかの基と結合する。
【0026】
【化10】
【0027】
ここで、T’は(b+1)価の連結基であり、例えば以下のものが例示される。
【0028】
【化11】
【0029】
上記式(1)、(2)において、Z2は炭素数1〜200、好ましくは2〜80の、酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中環状構造を含んでいてもよい。Z2の好ましい構造としては、以下のものを挙げることができる。
−CH2CH2
−CH2CH2CH2
−CH2CH2CH2CH2
−CH2[OC24d[OC36e[OC48f
−CH2[OC24d[OC36e[OC48fOCH2
【0030】
ここで、dは0〜99の整数、eは0〜66の整数、fは0〜50の整数であり、合計として炭素数200以下を満たせばよい。繰り返し単位の配列は、種類にかかわらずランダムである。また各繰り返し単位は単体でなく構造異性体の混合物でもよい。
【0031】
2として、特に好ましい構造としては、以下のものが挙げられ、中でもeが1〜30であるものが好適である。
−CH2[OC36eOCH2
【0032】
上記式(1)、(2)中、R1は水素原子又は炭素数1〜8、好ましくは1〜6の1価の炭化水素基であり、R2は炭素数1〜8、好ましくは1〜6の1価の炭化水素基であり、1価の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。R1としては、水素原子及びメチル基が好適であり、R2としては、メチル基が好適である。
【0033】
また、Z2とR1及び/又はZ2とR2はそれぞれ結合してR1,R2と結合する炭素原子と共に環状構造をなしていてもよく、またR1とR2が結合してそれぞれに結合する炭素原子と共にZ2を含んだ環状構造をなしていてもよい。
2とR1又はZ2とR2が結合し、環状構造をなした例としては、以下のような構造を挙げることができる。なお、結合手は、OHとCHR1又はCHR2とCH2に結合する。
【化12】
また、R1とR2が結合してそれぞれに結合する炭素原子と共にZ2を含んだ環状構造をなした例としては、以下のような構造を挙げることができる。
【化13】
【0034】
上記式(1)、(2)中の−Z2−CHR2−OHで示される基は、下記式
−Z3−OCH2CH(CH3)−OH
で示される基であることが好ましい。
【0035】
ここで、Z3は炭素数1〜199、好ましくは1〜60の、酸素原子及び窒素原子を含んでいてもよい2価の炭化水素基であり、途中に環状構造をなしていてもよく、また隣接するR1とZ3が結合してR1と結合する炭素原子と共に環状構造をなしていてもよい。Z3の好ましい構造としては、以下のものを挙げることができる。
−CH2[OC24d[OC36e[OC48f
(式中、d、e、fは上記と同じである。繰り返し単位の配列は、種類にかかわらずランダムである。また各繰り返し単位は単体でなく構造異性体の混合物でもよい。)
3として、特に好ましい構造としては、以下のものが挙げられ、中でもeが1〜30であるものが好適である。
−CH2[OC36e
【0036】
更に、一般式(1)、(2)中の−Z2−CHR2−OHで示される基は、下記式
−CH2−[OC36n−OCH2CH(CH3)−OH
(但し、nは0〜64、好ましくは0〜40、より好ましくは1〜30の整数である。)
で示される基であることがより好ましい。
【0037】
上記式(1)、(2)で表される含フッ素アルコール化合物としては、下記一般式(8)、(9)で表されるものが好ましい。
【化14】
(但し、Rf1、Rf2、Q1、Q2、Z1、a、b、nは上記の通りである。)
【0038】
上記式(1)、(2)で表される含フッ素アルコール化合物として、より具体的には、下記に示すものが例示できる。
【化15】
(但し、gは独立に2〜100、好ましくは2〜50の整数であり、hは独立に0〜30好ましくは1〜15の整数である。)
【0039】
【化16】

Rf’:−CF2(OCF2CF2q1(OCF2p1OCF2
(q1/p1=0.8〜1.5、p1+q1=5〜80)
(式中、hは上記と同じである。)
【0040】
【化17】
Rf’:−CF2(OCF2CF2q1(OCF2p1OCF2
(q1/p1=0.8〜1.5、p1+q1=5〜80)
【0041】
【化18】
(式中、h、gは上記と同じである。)
【0042】
【化19】
(式中、gは上記と同じである。)
【0043】
このような一般式(1)又は(2)で表される含フッ素アルコール化合物は、特にその合成法を制限されるものではないが、例えば、まず下記一般式(3)又は(4)
[Rf1−Z1a−Q1−[H]b (3)
[H]b−Q2−Z1−Rf2−Z1−Q2−[H]b (4)
(式中、Rf1、Rf2、Z1、Q1、Q2、a、bは上記と同じであり、[ ]で括られたa個のZ1及びb個のHはすべてそれぞれQ1又はQ2構造中のケイ素原子と結合している。)
で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物と、下記一般式(5)
CH2=CR1−Z2−CHR2−OH (5)
(式中、R1、R2、Z2は上記と同じである。)
で表される末端不飽和基含有アルコール(分子中にアルケニル基と2級のアルコールを有する化合物)とをヒドロシリル化反応させることにより得ることができる。
【0044】
ここで、上記式(3)、(4)で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物としては、下記に示すものが例示できる。
【化20】
Rf’:−CF2(OCF2CF2q1(OCF2p1OCF2
(q1/p1=0.8〜1.5、p1+q1=5〜80)
【0045】
【化21】
【0046】
【化22】
【0047】
【化23】
(式中、gは上記と同じである。)
【0048】
また、上記式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールとしては、下記一般式(6)で表されるものが例示できる。
CH2=CR1−Z3−OCH2CH(CH3)−OH (6)
(式中、R1、Z3は上記と同じである。)
【0049】
上記式(6)で表される末端不飽和基含有アルコールとしては、下記一般式(7)で示されるものが好ましい。
CH2=CH−CH2−[OC36n−OCH2CH(CH3)−OH (7)
(式中、nは上記と同じである。)
【0050】
上記式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールとして、具体的には、下記に示すものを例示することができる。
CH2=CH−CH2−OCH2CH(CH3)−OH
CH2=CH−CH2−(OC362−OCH2CH(CH3)−OH
CH2=CH−CH2−(OC364−OCH2CH(CH3)−OH
CH2=CH−CH2−(OC369−OCH2CH(CH3)−OH
【化24】
【0051】
このヒドロシリル化(付加)反応は、式(3)又は(4)で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物と、式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールを混合し、白金族金属系の付加反応触媒存在下、反応温度50〜150℃、好ましくは60〜120℃で、1分〜48時間、特に10分〜12時間反応を行うことが望ましい。反応温度が低すぎると反応が十分に進行しないまま反応が停止してしまう場合があり、高すぎるとヒドロシリル化の反応熱による温度上昇で反応が制御できなくなり、突沸や原料の分解などが起こる場合がある。
【0052】
この場合、式(3)又は(4)で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物と、式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールとの反応割合は、式(3)又は(4)で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物の[ ]で括られたHの総モル数に対して、式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールの末端不飽和基を0.5〜5.0倍モル、特に0.9〜2.0倍モル使用して反応させることが望ましい。式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールが、これより少なすぎると本発明の目的とする高い溶解性を持つ含フッ素アルコール化合物を得ることは困難であり、これ以上多すぎると反応溶液の均一性が低下して反応速度が不安定となり、また反応後に式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールの除去を行う場合に加熱、減圧、抽出等の条件を余剰の未反応のアルコールが増える分だけ厳しくする必要が出てくる。
【0053】
付加反応触媒は、例えば、白金、ロジウム又はパラジウム等の白金族金属を含む化合物を使用することができる。中でも白金を含む化合物が好ましく、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、白金カルボニルビニルメチル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金−オクチルアルデヒド/オクタノール錯体、あるいは活性炭に担持された白金を用いることができる。
付加反応触媒の配合量は、式(3)又は(4)で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物に対し、含まれる金属量が0.1〜5,000質量ppmとなることが好ましく、より好ましくは1〜1,000質量ppmである。
【0054】
上記の付加反応は、溶剤が存在しなくても実施可能であるが、必要に応じて溶剤で希釈してもよい。このとき希釈溶剤は、トルエン、キシレン、イソオクタンなど、広く一般に用いられている有機溶剤を利用することができるが、沸点が目的とする反応温度以上でかつ反応を阻害せず、反応後に生成する式(1)又は(2)の化合物が、上記反応温度において可溶であるものが好ましい。このような溶剤としては、例えば、m−キシレンヘキサフロライド、ベンゾトリフロライド等のフッ素変性芳香族炭化水素系溶剤、メチルパーフルオロブチルエーテル等のフッ素変性エーテル系溶剤等の部分フッ素変性された溶剤が望ましく、特にm−キシレンヘキサフロライドが好ましい。
溶剤を使用する場合、その使用量は、式(3)又は(4)で表される多官能Si−H基を有するフルオロポリエーテル化合物100質量部に対して、好ましくは5〜2,000質量部であり、より好ましくは50〜500質量部である。これより少なければ溶剤による希釈の効果が薄く、多ければ希釈度が高くなりすぎて反応速度の低下を招く場合がある。
【0055】
反応終了後、未反応の式(5)で表される末端不飽和基含有アルコールや希釈溶剤を減圧留去、抽出、吸着等の公知の方法で除去することが好ましいが、これらを含んだ反応混合物のまま目的用途に使用することもできる。
【0056】
以上のようにして得られる本発明の式(1)又は(2)で表される含フッ素アルコール化合物は、熱硬化型樹脂組成物に防汚性を付与するための添加剤、あるいは紫外線硬化型樹脂へ防汚性を付与する防汚添加剤等に用いる含フッ素アクリル化合物の原料として有用である。
【実施例】
【0057】
以下、参考例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0058】
参考例1]
還流装置と攪拌装置を備えた1L四つ口フラスコに、下記式
【化25】
で表される化合物(A)200g(Si−H価0.00061mol/g)、ポリプロピレングリコールの片末端アリルエーテル(日本油脂(株)製ユニルーブMA−35、アルコールの2級含有率100%)89g(アリル基量0.0016mol/g)、m−キシレンヘキサフロライド300gを仕込み、窒素雰囲気下で90℃まで加熱攪拌した。ここに白金/1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.442g(Pt単体として1.1×10-6molを含有)を投入し、内温を90℃以上に維持したまま4時間攪拌を継続し、1H−NMRで原料のアリル基、Si−H基に由来するピークが消失したのを確認した。次いで攪拌装置を備えた5Lのフラスコにヘキサン3Lを仕込み、攪拌しながら、室温まで冷却した前記反応溶液を滴下して更に1時間攪拌した。攪拌停止後に2時間静置して、上層のヘキサン層をデカントで取り除き、得られた沈殿物から残存した溶媒をエバポレーターで除去し、半透明淡黄色高粘稠液体の下記式で示される化合物(B)272gを得た。
【化26】
【0059】
化合物(B)の1H−NMRケミカルシフトを表1に示す。
【表1】
【0060】
[実施例
ユニルーブMA−35に代えてリナロールオキシド(ピラノイド)22gを使用した以外は、参考例1と同様にして、半透明淡黄色高粘稠液体の下記式で示される化合物(C)201gを得た。
【化27】
【0061】
化合物(C)の1H−NMRケミカルシフトを表2に示す。
【表2】
【0062】
[実施例
乾燥窒素雰囲気下で、還流装置と攪拌装置を備えた2,000mL三つ口フラスコに、下記式
CH2=CH−CH2−O−CH2−Rf’−CH2−O−CH2−CH=CH2
Rf’:−CF2(OCF2CF2q(OCF2pOCF2
(q/p=0.9、p+q≒45)
で表されるパーフルオロポリエーテル500g[0.125mol]と、m−キシレンヘキサフロライド700g、及びテトラメチルシクロテトラシロキサン361g[1.50mol]を投入し、攪拌しながら90℃まで加熱した。ここに白金/1,3−ジビニル−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液0.442g(Pt単体として1.1×10-6molを含有)を投入し、内温を90℃以上に維持したまま4時間攪拌を継続した。1H−NMRで原料のアリル基が消失したのを確認した後、溶剤と過剰のテトラメチルシクロテトラシロキサンを減圧留去した。その後活性炭処理を行い、下記式で示される無色透明の液状化合物(D)498gを得た。
【化28】
Rf’:−CF2(OCF2CF2q(OCF2pOCF2
(q/p=0.9、p+q≒45)
【0063】
乾燥空気雰囲気下で、上記で得られた化合物(D)50.0g[Si−H基量0.0669mol]に対して、2級のアルコール末端を有するペンタプロピレングリコールモノアリルエーテル27.5g[0.0789mol]、m−キシレンヘキサフロライド50.0g、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.0442g(Pt単体として1.1×10-7molを含有)を混合し、100℃で4時間攪拌した。1H−NMR及びIRでSi−H基が消失したのを確認した後、反応溶液を室温まで冷却した。次いで攪拌装置を備えた2Lのフラスコにヘキサン500mLを仕込み、攪拌しながら室温まで冷却した前記反応溶液を滴下して更に1時間攪拌した。攪拌停止後に2時間静置して、上層のヘキサン層をデカントで取り除き、得られた沈殿物から残存した溶媒をエバポレーターで除去し、半透明淡黄色高粘稠液体の下記式で示される化合物(E)45.1gを得た。
【化29】
Rf’:−CF2(OCF2CF2q(OCF2pOCF2
(q/p=0.9、p+q≒45)
【0064】
化合物(E)の1H−NMRケミカルシフトを表3に示す。
【表3】
【0065】
[比較例1]
乾燥空気雰囲気下で、実施例中間体化合物(D)50.0g[Si−H基量0.0669mol]、2−アリルオキシエタノール7.05g[アリル基量0.0690mol]、m−キシレンヘキサフロライド50.0g、及び塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.0442g(Pt単体として1.1×10-7molを含有)を混合し、100℃で4時間攪拌した。1H−NMR及びIRでSi−H基が消失したのを確認した後、溶剤と過剰の2−アリルオキシエタノールを減圧留去し、活性炭処理を行い、下記式で示される淡黄色透明の液体パーフルオロポリエーテル含有化合物(F)55.2gを得た。
【化30】
Rf’:−CF2(OCF2CF2q(OCF2pOCF2
(q/p=0.9、p+q≒45)
【0066】
化合物(F)の1H−NMRケミカルシフトを表4に示す。
【表4】
【0067】
[比較例2]
ユニルーブMA−35に代えてリナロールオキシド(フラノイド)22gを使用した以外は、参考例1と同様にして、半透明淡黄色高粘稠液体の下記式で示される化合物(G)198gを得た。
【化31】
【0068】
化合物(G)の1H−NMRケミカルシフトを表5に示す。
【表5】
【0069】
[実施例、比較例3]
実施例の化合物(E)及び比較例の化合物(F)10gをそれぞれガラスシャーレに仕込み、窒素雰囲気下で100℃/3時間、130℃/3時間の加熱を行った。加熱前後の各化合物をm−キシレンヘキサフロライドで希釈して20質量%溶液とし、JIS Z 8803に準拠してキャノン・フェンスケ粘度計を用いて25℃で測定を行った。溶液粘度の比較を行った結果を表6に示す。
【0070】
【表6】
【0071】
参考2、実施例4、比較例4]
参考例の化合物(B),実施例の化合物(C)、及び比較例の化合物(G)について以下の試験を行った。上記各化合物10gとメチルエチルケトン10gをそれぞれ還流装置と攪拌機を備えた50mLナスフラスコに仕込み、更にそれぞれの水酸基量の理論値と等molのイソシアン酸ヘキシルを加え、乾燥雰囲気下で40℃に加熱した。次いで、そこにテトラオクチルチタネートの10質量%メチルエチルケトン溶液0.2gを加え、45℃で加熱を継続した。反応溶液は12時間ごとにサンプリングをして、IRスペクトルにおいて2,280cm-1のイソシアネート基の吸収が消失した時間を確認した。結果を表7に示す。
【0072】
【表7】