【実施例】
【0039】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、下記において、「部」は質量部を意味する。分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)測定により求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。粘度は、回転粘度計を用いて測定した25℃における値である。
【0040】
[1]有機シラン化合物の製造
[実施例1−1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、B−1000(日本曹達(株)製、数平均分子量1,100、上記式(2)における(f+g)/(e+f+g)=0.9)100g、トルエン200g、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金原子として1.6×10
-4モル)、および炭酸水素アンモニウム1.3g(1.6×10
-2モル)を納めた。この中に、トリエトキシシラン263g(1.6モル)を内温75〜85℃で2時間かけて滴下した後、80℃で1時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーで分析したトリエトキシシランの反応率の結果を表1に示した。
撹拌終了後、減圧濃縮および濾過し、粘度11,000mPa・s、数平均分子量3,900の褐色透明液体を得た。生成物の分子量および
1H−NMRスペクトルから求めた平均構造は、上記式(1)においてe=2、f=0、g=18で表される有機ケイ素化合物であった。
【0041】
[実施例1−2]
炭酸水素アンモニウムを酢酸1.0g(1.6×10
-2モル)に変更した以外は、実施例1−1と同様に反応および後処理を行い、粘度11,000mPa・s、数平均分子量3,900の褐色透明液体を得た。生成物の分子量および
1H−NMRスペクトルから求めた平均構造は、上記式(1)においてe=2、f=0、g=18で表される有機ケイ素化合物であった。
なお、ガスクロマトグラフィーで分析したトリエトキシシランの反応率の結果を表1に示した。
【0042】
[実施例1−3]
炭酸水素アンモニウムをアセトアミド1.0g(1.6×10
-2モル)に変更した以外は、実施例1−1と同様に反応および後処理を行い、粘度11,000mPa・s、数平均分子量3,900の褐色透明液体を得た。生成物の分子量および
1H−NMRスペクトルから求めた平均構造は、上記式(1)においてe=2、f=0、g=18で表される有機ケイ素化合物であった。
なお、ガスクロマトグラフィーで分析したトリエトキシシランの反応率の結果を表1に示した。
【0043】
[実施例1−4]
炭酸水素アンモニウムを除いた以外は、実施例1−1と同様に反応および後処理を行い、粘度9,000mPa・s、数平均分子量1,400の褐色透明液体を得た。生成物の分子量および
1H−NMRスペクトルから求めた平均構造は、上記式(1)においてe=2、f=19、g=1で表される有機ケイ素化合物であった。
なお、ガスクロマトグラフィーで分析したトリエトキシシランの反応率の結果を表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示されるように、無機酸のアンモニウム塩、カルボン酸、酸アミド化合物を助触媒として用いることで、より効率的に反応が進行していることがわかる。
【0046】
[実施例1−5]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、B−1000(日本曹達(株)製)100g、トルエン200g、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金原子として1.2×10
-4モル)、および酢酸0.75g(1.2×10
-2モル)を納めた。この中に、トリエトキシシラン197g(1.2モル)を内温75〜85℃で2時間かけて滴下した後、80℃で1時間撹拌た。
撹拌終了後、減圧濃縮および濾過し、粘度9,000mPa・s、数平均分子量3,100の褐色透明液体を得た。生成物の分子量および
1H−NMRスペクトルから求めた平均構造は、上記式(1)においてe=4、f=2、g=14で表される有機ケイ素化合物であった。
【0047】
[実施例1−6]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、B−1000(日本曹達(株)製)100g、トルエン200g、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金原子として0.8×10
-4モル)、および酢酸0.5g(0.8×10
-2モル)を納めた。この中に、トリエトキシシラン132g(0.8モル)を内温75〜85℃で2時間かけて滴下した後、80℃で1時間撹拌した。
撹拌終了後、減圧濃縮および濾過し、粘度8,000mPa・s、数平均分子量2,500の褐色透明液体を得た。生成物の分子量および
1H−NMRスペクトルから求めた平均構造は、上記式(1)においてe=9、f=2、g=9で表される有機ケイ素化合物であった。
【0048】
[実施例1−7]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、Ricon130(Cray Vally社製、数平均分子量2,500、上記式(2)における(f+g)/(e+f+g)=0.28)100g、トルエン200g、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金原子として0.52×10
-4モル)、および酢酸0.31g(0.52×10
-2モル)を納めた。この中に、トリエトキシシラン85g(0.52モル)を内温75〜85℃で2時間かけて滴下した後、80℃で1時間撹拌した。
撹拌終了後、減圧濃縮および濾過し、粘度2,000mPa・s、数平均分子量4,600の褐色透明液体を得た。生成物の分子量および
1H−NMRスペクトルから求めた平均構造は、上記式(1)においてe=33、f=0、g=13で表される有機ケイ素化合物であった。
【0049】
[実施例1−8]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、Ricon130(Cray Vally社製)100g、トルエン200g、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金原子として0.26×10
-4モル)、および酢酸0.16g(0.26×10
-2モル)を納めた。この中に、トリエトキシシラン43g(0.26モル)を内温75〜85℃で2時間かけて滴下した後、80℃で1時間撹拌した。
撹拌終了後、減圧濃縮および濾過し、粘度1,700mPa・s、数平均分子量3,600の褐色透明液体を得た。生成物の分子量および
1H−NMRスペクトルから求めた平均構造は、上記式(1)においてe=33、f=6、g=7で表される有機ケイ素化合物であった。
【0050】
[比較例1−1]
特開2005−250603号公報を参考に、以下の手法により有機ケイ素化合物を合成した。
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、R−45H(出光興産(株)製、数平均分子量2,800)100gとKBE−9007(信越化学工業(株)製、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)18g、およびジオクチルスズオキサイド触媒(東京化成工業製)0.5gを納め、内温60℃で2時間撹拌した。
撹拌終了後、減圧濃縮および濾過し、粘度8,000mPa・s、数平均分子量3,300の褐色透明液体を得た。
【0051】
[比較例1−2]
特開昭62−265301号公報を参考に、以下の手法により有機ケイ素化合物を合成した。
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、B−1000(日本曹達(株)製)100g、トルエン200gおよび3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン129g(0.8モル)を納め、内温100℃で4時間撹拌した。
撹拌終了後、減圧濃縮および濾過し、粘度5,000mPa・s、数平均分子量2,000の褐色透明液体を得た。
【0052】
[比較例1−3]
特開昭62−265301号公報を参考に、以下の手法により有機ケイ素化合物を合成した。
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、B−1000(日本曹達(株)製)100g、トルエン200gおよび3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン23g(0.1モル)を納め、内温100℃で4時間撹拌した。
撹拌終了後、減圧濃縮および濾過し、粘度900mPa・s、数平均分子量1,600の褐色透明液体を得た。
【0053】
[2]ゴム組成物の調製
[実施例2−1〜2−3]
表2に示されるように、油展エマルジョン重合SBR(JSR(株)製#1712)110部、NR(RSS#3グレード)20部、カーボンブラック(N234グレード)20部、シリカ(日本シリカ工業(株)製ニプシルAQ)50部、実施例1−2で得られた有機ケイ素化合物6.5部、またはこの有機ケイ素化合物とKBE−846(信越化学工業社製、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)との合計6.5部、ステアリン酸1部、並びに老化防止剤6C(大内新興化学工業(株)製ノクラック6C)1部を配合してマスターバッチを調製した。
これに亜鉛華3部、加硫促進剤DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)0.5部、加硫促進剤NS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)1部および硫黄1.5部を加えて混練し、ゴム組成物を得た。
【0054】
[実施例2−4〜2−7]
表2に示されるように、実施例1−2で得られた有機ケイ素化合物を、実施例1−5〜1−8で得られた有機ケイ素化合物にそれぞれ変更した以外は、実施例2−3と同様にしてゴム組成物を得た。
【0055】
[比較例2−1〜2−3]
表3に示されるように、実施例1−2で得られた有機ケイ素化合物を、比較例1−1〜1−3で得られた有機ケイ素化合物にそれぞれ変更した以外は、実施例2−3と同様にしてゴム組成物を得た。
【0056】
[比較例2−4]
表3に示されるように、実施例1−2で得られた有機ケイ素化合物を、KBE−846に変更した以外は、実施例2−1と同様にしてゴム組成物を得た。
【0057】
上記実施例2−1〜2−7および比較例2−1〜2−4で得られたゴム組成物について、未加硫および加硫物性を下記の方法で測定した。結果を表2,3に併せて示す。
〔未加硫物性〕
(1)ムーニー粘度
JIS K 6300に準拠し、温度130℃、余熱1分、測定4分にて測定し、比較例2−4を100として指数で表した。指数の値が小さいほど、ムーニー粘度が低く、加工性に優れている。
〔加硫物性〕
(2)動的粘弾性
粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、引張の動歪5%、周波数15Hz、60℃の条件にて測定した。なお、試験片は厚さ0.2cm、幅0.5cmのシートを用い、使用挟み間距離2cmとして初期荷重を160gとした。tanδの値は比較例2−4を100として指数で表した。指数値が小さいほどヒステリシスロスが小さく低発熱性である。
(3)耐磨耗性
JIS K 6264−2:2005に準拠し、ランボーン型磨耗試験機を用いて室温、スリップ率25%の条件で試験を行い、比較例2−4を100として指数表示した。指数値が大きいほど、磨耗量が少なく耐磨耗性に優れることを示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
表2および3に示されるように、実施例2−1〜2−7のゴム組成物は、比較例2−1〜2−4のゴム組成物に比べ、ムーニー粘度が低く、加工性に優れていることがわかる。
また、実施例2−1〜2−7のゴム組成物の加硫物は、比較例2−1〜2−4のゴム組成物の加硫物に比べ、動的粘弾性が低く、すなわち、ヒステリシスロスが小さく低発熱性であり、また、耐摩耗性に優れていることがわかる。
【0061】
[実施例2−8〜2−10]
表4に示されるように、NR(RSS#3グレード)100部、プロセスオイル38部、カーボンブラック(N234グレード)5部、シリカ(日本シリカ工業(株)製ニプシルAQ)105部、実施例1−2で得られた有機ケイ素化合物8.4部、またはこの有機ケイ素化合物とKBE−846(信越化学工業社製、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)との合計8.4部、ステアリン酸2部、老化防止剤6C(大内新興化学工業(株)製ノクラック6C)2部を配合してマスターバッチを調製した。
これに酸化亜鉛2部、加硫促進剤CZ(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)3部および硫黄2部を加えて混練し、ゴム組成物を得た。
【0062】
[実施例2−11〜2−14]
表4に示されるように、実施例1−2で得られた有機ケイ素化合物を、実施例1−5〜1−8で得られた有機ケイ素化合物にそれぞれ変更した以外は、実施例2−10と同様にしてゴム組成物を得た。
【0063】
[比較例2−5〜2−7]
表5に示されるように、実施例1−2で得られた有機ケイ素化合物を、比較例1−1〜1−3で得られた有機ケイ素化合物にそれぞれ変更した以外は、実施例2−10と同様にしてゴム組成物を得た。
【0064】
[比較例2−8]
表5に示されるように、実施例1−2で得られた有機ケイ素化合物を、KBE−846に変更した以外は、実施例2−8と同様にしてゴム組成物を得た。
【0065】
次に、ゴム組成物の未加硫物性(ムーニー粘度)および加硫物性(動的粘弾性、耐磨耗性)を上記と同様の方法で測定した。比較例2−8を100として指数で表した結果を表4,5に併せて示す。
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
表4および表5に示されるように、実施例2−8〜2−14のゴム組成物の加硫物は、比較例2−5〜2−8のゴム組成物の加硫物に比べ、動的粘弾性が低く、すなわち、ヒステリシスロスが小さく低発熱性であり、また、耐摩耗性に優れていることがわかる。