特許第6128911号(P6128911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6128911
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】半導体装置及びパワーダウン制御方法
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/0175 20060101AFI20170508BHJP
   G06F 1/32 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   H03K19/00 101K
   G06F1/32 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-60335(P2013-60335)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-187508(P2014-187508A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】丸山 哲史
【審査官】 白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−057316(JP,A)
【文献】 特開平10−294661(JP,A)
【文献】 特開平03−249819(JP,A)
【文献】 特開2003−124797(JP,A)
【文献】 特開2001−267906(JP,A)
【文献】 特表平11−513556(JP,A)
【文献】 特開2000−295086(JP,A)
【文献】 特開平10−173508(JP,A)
【文献】 特開2011−188257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 19/0175
G06F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部と、
抵抗体を備え、前記抵抗体を介して前記入力部と電源とを接続する接続状態、及び前記入力部と前記電源との接続を遮断した非接続状態に切り替え可能な抵抗体回路と、
前記入力部に電流を供給する供給状態、及び前記入力部への前記電流の供給を遮断する非供給状態に切り替え可能な電流供給部と、
前記入力部のインピーダンスがハイインピーダンス状態に設定された場合に、前記電流供給部を前記非供給状態、かつ前記抵抗体回路を前記接続状態に各々切り替え、前記入力部のインピーダンスに応じた電位の第1の信号を出力すると共に、前記入力部の電位が所定電位に設定された場合に、前記電流供給部を前記供給状態、かつ前記抵抗体回路を前記非接続状態に各々切り替え、前記入力部の電位に応じた電位の第2の信号を出力する信号生成部と、を含み、
前記信号生成部は、前記電流供給部の切り替えと前記抵抗体回路の切り替えとの間に時間差を設けて各々の切り換えを実行する
半導体装置。
【請求項2】
前記信号生成部は、前記入力部にドライバを介して接続されると共に、前記入力部のインピーダンスがハイインピーダンス状態に設定された場合に前記電流供給部を前記非供給状態に切り替え、前記入力部の電位が前記所定電位に設定された場合に前記電流供給部を前記供給状態に切り替える制御信号を出力するインバータ回路、及び前記入力部に前記ドライバを介して接続されると共に、前記入力部のインピーダンスがハイインピーダンス状態に設定された場合に前記抵抗体回路を前記接続状態に切り替え、前記入力部の電位が前記所定電位に設定された場合に前記抵抗体回路を非接続状態に切り替える制御信号を出力するRS型フリップフロップを具備する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記RS型フリップフロップは、前記所定電位に設定されていた前記入力部のインピーダンスがハイインピーダンス状態に設定された場合にリセット端子に第1の電位の信号が入力され、ハイインピーダンス状態に設定されていた前記入力部が前記所定電位に設定された場合に前記リセット端子に前記第1の電位より高電位である第2の電位の信号が入力される
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ドライバの出力信号は前記入力部の設定に応じた出力信号及び該出力信号を遅延回路を介して遅延させた遅延出力信号に分岐され、前記出力信号及び前記遅延出力信号の各々が前記インバータ回路及び前記RS型フリップフロップのいずれか一方に入力され、
前記信号生成部は、前記インバータ回路の出力と前記RS型フリップフロップの出力との時間差に基づき前記電流供給部の切り替えと前記抵抗体回路の切り替えとの間に時間差を設けて各々の切り換えを実行する
請求項2又は請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記電流供給部は定電流源を備え、前記定電流源の電流に比例した電流を流すカレントミラー回路を含んで構成された
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
入力部のインピーダンスがハイインピーダンス状態に設定された場合に、前記入力部に電流を供給する供給状態、及び前記入力部への前記電流の供給を遮断する非供給状態に切り替え可能な電流供給部を前記非供給状態、かつ抵抗体を備え、前記抵抗体を介して前記入力部と電源とを接続する接続状態、及び前記入力部と前記電源との接続を遮断した非接続状態に切り替え可能な抵抗体回路を前記接続状態に、前記電流供給部の切り替えと前記抵抗体回路の切り替えとの間に時間差を設けて各々切り替え、前記入力部のインピーダンスに応じた電位の第1の信号を出力すると共に、前記入力部の電位が所定電位に設定された場合に、前記電流供給部を前記供給状態、かつ前記抵抗体回路を前記非接続状態に、前記電流供給部の切り替えと前記抵抗体回路の切り替えとの間に時間差を設けて各々切り替え、前記入力部の電位に応じた電位の第2の信号を出力し、前記第1の信号及び前記第2の信号に基づいて通常の消費電力状態と該消費電力が低減された状態とを切り替えるパワーダウン制御方法。
【請求項7】
前記入力部にドライバを介して接続されたRS型フリップフロップから、前記入力部のインピーダンスがハイインピーダンス状態に設定された場合に前記抵抗体回路を前記接続状態に切り替え、前記入力部の電位が前記所定電位に設定された場合に前記抵抗体回路を非接続状態に切り替える制御信号を出力する
請求項6に記載のパワーダウン制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びパワーダウン制御方法、特に入力端子に対するプルアップ機能又はプルダウン機能を有する半導体装置及びパワーダウン制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーダウン制御とは、半導体装置を、通常の消費電力状態とその消費電力が削減された低消費電力状態(パワーダウン状態)との間で遷移させる制御をいう。また、当該遷移を制御する信号(パワーダウン制御信号)を発生させるための回路をパワーダウン制御回路という。この遷移は、半導体装置にパワーダウン制御信号を入力するための専用の端子(特定端子)を設けておき、該特定端子に入力されたパワーダウン制御信号に基づいて半導体装置の内部で実行されるようにするのが一般的である。
【0003】
上記パワーダウン制御信号を発生させるための従来技術として、主に2つの方法が知られている。1つは、半導体装置の主たる機能を実行する回路(内部回路)とは別に設けた外部回路により、高電位(Hレベル)の信号、及び低電位(Lレベル)の信号を生成し、
当該信号を特定端子に入力する方法である。
一方、他の方法は、特定端子と電源との間に抵抗を設け、当該抵抗によりHレベル又はLレベルを維持させて特定端子に入力するプルアップ、又はプルダウンによる方法である。
【0004】
特許文献1には、後者による方法の例として、入力レベルによって抵抗値の異なるプルアップ抵抗又はプルダウン抵抗を選択することが可能な入力回路が開示されている。図6に、上記特許文献1に開示されたプルアップ方式の入力回路であるプルアップ入力回路100を示す。
【0005】
同図に示すように、プルアップ入力回路100は、内部回路に接続されたインバータ106の入力端子102に一端が接続され、正電源端子104に他端が接続されたプルアップ抵抗R108を有している。そして、入力端子102に入力される入力信号がハイインピーダンスとなったとき、プルアップ抵抗R108により正レベル信号と認識される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平03−249819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、さまざまな機器において低消費電力化が求められている中、パワーダウン制御回路自体の消費電力を削減することも求められている。
特に、半導体装置として構成されたリチウムイオン電池等の電池監視用IC(Integrated Circuit)に搭載されるパワーダウン制御回路では、電池パックを電源電圧(1セル4.2Vとして、10セルの例では42V)としていることから、低消費電力化(低消費電流化)に対する要求がさらに厳しくなっている。
【0008】
従って、上記の外部回路によりパワーダウン制御信号を発生させる方式では、外部回路自体で消費される電力が低消費電力化の障害となる。結果として、電池監視用IC自体にプルアップ抵抗、又はプルダウン抵抗を設ける上記方法が選択されるが、上記特許文献1に開示された方法では、プルアップ抵抗、又はプルダウン抵抗自体で消費される電力について考慮されていないことが問題となる。
【0009】
すなわち、上記従来のプルアップ入力回路100では、入力信号が負レベルの信号となったときには、正電源端子104の電圧によってはプルアップ抵抗R108に過大な電流が流れることになる。例えば、上記電池パックの電源電圧を例にとれば、負レベルを接地とした場合プルアップ抵抗R108に42Vの電圧がかかり、プルアップ抵抗R108にはそれに応じた電流が流れることになる。その結果、プルアップ抵抗R108として、定格電力の大きな抵抗(通常、抵抗自体の大きさも大きくなる)を用いることも必要となり、コストアップの要因ともなる。
従って、半導体装置に搭載されるプルアップ回路又はプルダウン回路においても消費電力を削減することが課題となっている。
【0010】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、消費電力を低減し、かつ低コスト化が可能な半導体装置及びパワーダウン制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の半導体装置は、入力部と、抵抗体を備え、前記抵抗体を介して前記入力部と電源とを接続する接続状態、及び前記入力部と前記電源との接続を遮断した非接続状態に切り替え可能な抵抗体回路と、前記入力部に電流を供給する供給状態、及び前記入力部への前記電流の供給を遮断する非供給状態に切り替え可能な電流供給部と、前記入力部のインピーダンスがハイインピーダンス状態に設定された場合に、前記電流供給部を前記非供給状態、かつ前記抵抗体回路を前記接続状態に各々切り替え、前記入力部のインピーダンスに応じた電位の第1の信号を出力すると共に、前記入力部の電位が所定電位に設定された場合に、前記電流供給部を前記供給状態、かつ前記抵抗体回路を前記非接続状態に各々切り替え、前記入力部の電位に応じた電位の第2の信号を出力する信号生成部と、を含み、前記信号生成部は、前記電流供給部の切り替えと前記抵抗体回路の切り替えとの間に時間差を設けて各々の切り換えを実行するものである。
【0012】
一方、上記目的を達成するために、請求項6に記載のパワーダウン制御方法は、入力部のインピーダンスがハイインピーダンス状態に設定された場合に、前記入力部に電流を供給する供給状態、及び前記入力部への前記電流の供給を遮断する非供給状態に切り替え可能な電流供給部を前記非供給状態、かつ抵抗体を備え、前記抵抗体を介して前記入力部と電源とを接続する接続状態、及び前記入力部と前記電源との接続を遮断した非接続状態に切り替え可能な抵抗体回路を前記接続状態に、前記電流供給部の切り替えと前記抵抗体回路の切り替えとの間に時間差を設けて各々切り替え、前記入力部のインピーダンスに応じた電位の第1の信号を出力すると共に、前記入力部の電位が所定電位に設定された場合に、前記電流供給部を前記供給状態、かつ前記抵抗体回路を前記非接続状態に、前記電流供給部の切り替えと前記抵抗体回路の切り替えとの間に時間差を設けて各々切り替え、前記入力部の電位に応じた電位の第2の信号を出力し、前記第1の信号及び前記第2の信号に基づいて通常の消費電力状態と該消費電力が低減された状態とを切り替えるものである
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、消費電力を低減し、かつ低コスト化が可能な半導体装置及びパワーダウン制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施の形態に係る半導体装置の回路構成の一例を示す回路図である。
図2】第1の実施の形態に係る半導体装置の動作例を説明するためのタイムチャートである。
図3】第2の実施の形態に係る半導体装置の回路構成の一例を示す回路図である。
図4】第1の実施の形態に係る半導体装置の他の動作例を説明するためのタイムチャートである。
図5】第2の実施の形態に係る半導体装置の動作例を説明するためのタイムチャートである。
図6】従来技術に係る半導体装置の回路構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
以下、図1及び図2を参照して、本実施の形態に係る半導体装置としてのパワーダウン制御回路10について詳細に説明する。本パワーダウン制御回路10は、例えば、電池監視用IC等の特定の機能を有する半導体装置(以下、「内部回路」と称する。)の特定端子に接続され、本パワーダウン制御回路10の出力であるパワーダウン制御信号を内部回路の特定端子に入力する回路である。ここで、パワーダウン制御信号とは、上述したように、内部回路が、通常の消費電力状態とその消費電力が削減された低消費電力状態との間で遷移するように制御するための信号である。以下、内部回路が通常の消費電力状態となる制御信号を生成する場合のパワーダウン制御回路10の状態を「通常状態」と表記し、
また、内部回路が低消費電力状態となる制御信号を生成する場合のパワーダウン制御回路10の状態を「パワーダウン状態」と表記する。
【0016】
図1において、パワーダウン制御回路10は、パワーダウン制御回路10の内部における制御信号と、後段に接続される内部回路に向けて出力端子PDNを介して出力されるパワーダウン制御信号とを生成する信号生成回路18、通常時に動作するプルアップ回路12(図1では「通常時のプルアップ」と表記)、及びパワーダウン時に動作するプルアップ回路14(図1では「パワーダウン時のプルアップ」と表記)を含んで構成されている。
なお、同図中の符号ND0ないしND6はノード(節点)を表している。
【0017】
信号生成回路18は、入力がパワーダウン制御回路10の入力端子であるPDに接続され、出力が節点ND4に接続された入力ドライバ16、パワーダウン制御回路10内のドライバとして節点ND4と節点ND5との間に接続されたインバータINV0、節点ND5と出力端子PDNとの間に接続されたインバータINV1、及び節点ND5にセット端子Sが接続され、ラッチ回路として機能するRS型フリップフロップRS0を含んで構成されている。
【0018】
入力ドライバ16は、ゲートが入力端子PDに、ソースが節点ND2に、ドレインが節点ND4に各々接続されたPチャネルMOS(Metal Oxide Semiconductor)型FET(Field−Effect Transistor)(以下「PMOSトランジスタ」と略記。)MP4、ゲートが入力端子PDに、ソースが節点ND3に、ドレインが節点ND4に各々接続されたNチャネルMOS型FET(以下「NMOSトランジスタ」と略記。)MN0、電源VDDと節点ND2との間に接続された抵抗R1、及び節点ND3と接地(以下、「GND」と表記。)との間に接続された抵抗R2を含んで構成されている。電源VDDの電位は、例えば30から60Vとしてもよい。
なお、抵抗R1及びR2は、縦続接続されたPMOSトランジスタMP4とNMOSトランジスタMN0との間に流れる貫通電流を抑制するための抵抗である。
【0019】
一方、通常時に動作するプルアップ回路12は、ゲートが節点ND0に、ドレインが入力端子PDに、ソースが電源VDDに各々接続されたPMOSトランジスタMP0、ゲート及びドレインが節点ND0に、ソースが電源VDDに各々接続されたPMOSトランジスタMP1、ゲートが出力端子PDNに、ドレインが節点ND0に、ソースが電源VDDに各々接続されたPMOSトランジスタMP2、ゲートが出力端子PDNに、ドレインが節点ND0に、ソースが節点ND6に各々接続されたNMOSトランジスタMN1、及び一端が節点ND6に他端がGNDに接続された電流Iを流す定電流源CSを含んで構成されている。電流Iの電流値は、例えば200から600nAとしてもよい。
ここで、NMOSトランジスタMN1は、定電流源CSの接続、非接続を切り替える機能を有し、また、PMOSトランジスタMP0とPMOSトランジスタMP1とでカレントミラー回路30を構成している。
【0020】
さらに、パワーダウン時に動作するプルアップ回路14は、ゲートがRS型フリップフロップRS0のQN出力(反転出力)に設けられた端子PUPに、ドレインが節点ND1に、ソースが電源VDDに各々接続されたPMOSトランジスタMP3、及び入力端子PDと節点ND1との間に接続された抵抗R0を含んで構成されている。
【0021】
次に、図2を参照して、パワーダウン制御回路10の動作を説明する。
【0022】
図2は、パワーダウン制御回路10の動作例を説明するためのタイムチャートであり、
通常状態からパワーダウン状態へ遷移する場合のパワーダウン制御回路10の各部の波形を示している。すなわち、図2(a)は入力端子PDの電圧波形、図2(b)は節点ND4の電圧波形、図2(c)は出力端子PDNの電圧波形、図2(d)はPMOSトランジスタMP0の出力電流I1の波形、図2(e)は節点ND5の電圧波形、そして図2(f)は端子PUPの電圧波形を示している。
【0023】
ここで、本実施の形態の説明においては、パワーダウン制御回路10の論理レベルであるLレベル、Hレベルと区別して、接地電位を「電位L」、電源VDDの電位を「電位H」と表記する。
【0024】
まず、初期状態(通常状態)において、図2(a)に示すように入力端子PDは電位Lとされており、従って、図2(b)に示すように節点ND4は電位Hとなり、図2(e)に示すように節点ND5は電位Lとなり、図2(c)に示すように出力端子PDNは電位Hとなり、図2(f)に示すように端子PUPは電位Hとなっている。また、RS型フリップフロップRS0のリセット端子Rは電位Hに設定されている。
【0025】
ここで、本実施の形態では、通常状態に遷移させるために入力端子PDに設定する電位を電位Lとしているが、これに限らず、電位Hより低い電位であれば他の電位の電圧を発生する電圧発生源に短絡(ショート)させてもよい。
【0026】
一方、初期状態においては、出力端子PDNが電位Hとなっていることにより、NMOSトランジスタMN1がオン状態となっているのでカレントミラー回路30が動作し、図2(d)に示すようにPMOSトランジスタMP0のドレインから入力端子PDを介して電流Iと略等しい電流I1が流れている。なお、本実施の形態では、電流I1の電流値Ipは、カレントミラー回路30のミラー比を変えることにより電流Iの電流値に基づいて設定が可能とされているが、ここでは、一例として該ミラー比を略1:1としている。
さらに、端子PUPが電位HであることによりPMOSトランジスタMP3がオフ状態となっているので、抵抗R0は電源VDDから切り離されている。
【0027】
以上のように、初期状態においては、通常時のプルアップ回路であるプルアップ回路12が動作しており、パワーダウン時のプルアップ回路であるプルアップ回路14は動作していない状態となっている。
【0028】
次に、上記初期状態からパワーダウン状態に遷移させる場合の動作について説明する。
【0029】
パワーダウン状態に遷移させるために、入力端子PDがオープン(開放)とされる。これにより、入力端子PDの電圧が電位Hに向かって上昇し、図2(a)に示すように一旦中間電位Vm(Hレベル)となる。この際、PMOSトランジスタMP4及びNMOSトランジスタMN0のゲートには中間電位Vmに向かう電圧が入力され、図2(b)に示すように、節点ND4は電位Lに遷移する。
【0030】
また、図2(e)に示すようにインバータINV0により節点ND5は電位Hに遷移し、さらに、図2(c)に示すようにインバータINV1により出力端子PDNは電位Lに遷移する。この際、内部回路に向けて、内部回路を低消費電力状態に遷移させるための電位L(あるいは図示しないレベル変換回路で変換されたLレベル)のパワーダウン制御信号が出力される。
一方、節点ND5が電位Hに遷移することにより、RS型フリップフロップRS0のQN出力は電位Lに遷移するので、図2(f)に示すように端子PUPは電位Lに遷移する。
【0031】
さらに、端子PUPが電位Lに遷移したことによりPMOSトランジスタMP3がオン状態となり抵抗R0が電源VDDに接続されるので、図2(a)に示すように、入力端子PDの電位は、中間電位Vmから電位Hに遷移する。また、出力端子PDNが電位Lに遷移したことにより、NMOSトランジスタMN1がオフ状態となり、PMOSトランジスタMP2がオン状態となり、節点ND0が電位Hに遷移して定電流源CSが切り離されるのでカレントミラー回路30の出力が停止し、電流I1の供給が停止される。
【0032】
以上のように、パワーダウン状態においては、パワーダウン時のプルアップ回路であるプルアップ回路14が動作しており、通常時のプルアップ回路であるプルアップ回路12が動作していない状態となっている。
【0033】
次に、パワーダウン解除時、すなわちパワーダウン状態から通常状態へ遷移する場合のパワーダウン制御回路10の動作について説明する。
【0034】
パワーダウン解除時においては、入力端子PDが接地される(電位Lに設定される)(図2(a))ことにより、パワーダウン制御回路10にパワーダウン解除信号が入力される。
この際、RS型フリップフロップRS0のリセット端子Rに接続されたRT端子には電位Hが入力される。PMOSトランジスタMP4及びNMOSトランジスタMN0のゲートには電位Lが入力されるので、節点ND4は電位Hに遷移する(図2(b))。
【0035】
また、インバータINV0を介して節点ND5は電位Lに遷移し(図2(e))、インバータINV1を介して出力端子PDNには電位Hが出力される(図2(c))。従って、出力端子PDNから内部回路に向けて電位H(あるいは図示しないレベル変換回路で変換されたHレベル)のパワーダウンを解除するためのパワーダウン制御信号が出力される。
また、節点ND5が電位Lに遷移したことにより、RS型フリップフロップRS0に設けられた端子PUPからは電位Hが出力される(図2(f))。
【0036】
さらに、端子PUPが電位Hに遷移したことによりPMOSトランジスタMP3がオフ状態となり、抵抗R0は電源VDDから切り離される。
一方、出力端子PDNが電位Hに遷移したことによりNMOSトランジスタMN1がオン状態、PMOSトランジスタMP2がオフ状態となるので、節点ND0が電位Lとなりカレントミラー回路30は電流I1の供給を開始する(図2(d))。
【0037】
以上のように、パワーダウン状態が解除され通常状態に遷移すると、通常時のプルアップ回路であるプルアップ回路12が動作している状態、パワーダウン時のプルアップ回路であるプルアップ回路14は停止している状態となっている。
【0038】
ここで、RS型フリップフロップRS0のリセット端子Rへの入力信号の本実施の形態における機能について説明する。
リセット端子Rに接続されたRT端子には、パワーダウン状態時には電位L、パワーダウン状態が解除され、内部回路が正常に動作し始めた時に電位Hとなるリセット信号が入力される。
【0039】
これは、パワーダウン制御回路10がパワーダウン解除を実行する場合、すなわちパワーダウン状態から通常状態への遷移を実行する場合のパワーダウン制御回路10の過渡的な動作を考えた場合、パワーダウン時のプルアップ回路14が停止された後、通常時のプルアップ回路12、つまり、定電流源CSが未だ起動していないという両方のプルアップ回路が機能していない状態が存在する場合がある。この場合、入力端子PDの電位が不定となり、その結果、パワーダウン制御回路10の出力も不定となってしまう。
【0040】
本実施の形態に係るパワーダウン制御回路10では、上記の状態を回避するために、RT端子へ上記リセット信号を入力し、プルアップ回路14からプルアップ回路12への移行における継ぎ目を無くすようにしている。すなわち、パワーダウン状態が解除された場合にその後の一定の時間だけ端子PUPを電位Lに保持し、プルアップ回路14を動作させるようにしている。
【0041】
ここで、上記RS型フリップフロップRS0による過渡的な制御は必須のものではなく、パワーダウン制御回路10において、上記過渡的な現象が問題とならなければ、RS型フリップフロップRS0はインバータに置き換えてもよい。
【0042】
以上詳述したように、本実施の形態に係るパワーダウン制御回路10は、入力端子PDをオープンとすることによりパワーダウンに遷移させるためのLレベルのパワーダウン制御信号を出力し、また、入力端子PDをGNDにショートさせることによりパワーダウンを解除するためのHレベルのパワーダウン制御信号を出力することができる。従って、論理レベルであるHレベルあるいはLレベルを生成するための外部回路が不要となり、その分低消費電力化が可能となる。
【0043】
また、本実施の形態に係るパワーダウン制御回路10では、入力端子PDをショートさせて電位Lに保持する場合には、微小な電流を流す定電流源CSを用いている。また、入力端子PDをオープンにして電位Hに保持する場合には、PMOSトランジスタMP3により電源VDDと切り離すことが可能とされたプルアップ用の抵抗R0を用いているため、プルアップ抵抗にはほとんど電流が流れない。従って、この点においても本実施の形態に係るパワーダウン制御回路10は低消費電力化が可能となり、また、抵抗R0は定格電力の小さい抵抗ですむので、コストも低減されたものとなる。
【0044】
以上のように、本実施の形態に係るパワーダウン制御回路10は、特に、電源として電池パックのような高電圧の電源を用いる電池監視用IC等に好適なパワーダウン制御回路となっている。
【0045】
なお、本実施の形態では、入力端子PDを高電位側に設定する例として開放する(オープンにする)形態を例示して説明したが、これに限られない。すなわち、入力端子がハイインピーダンスで接続された状態に設定すればよいので、例えば、高抵抗を介してGNDに接続する等の形態でもよい。
【0046】
[第2の実施の形態]
図3ないし図5を参照して本実施の形態に係るパワーダウン制御回路20について説明する。パワーダウン制御回路20は、第1の実施の形態に係るパワーダウン制御回路10において、第1の実施の形態で説明した動作とは異なる他の動作が発生することを回避するようにしたものである。
【0047】
図3に、本実施の形態に係るパワーダウン制御回路20の回路構成を例示する回路図を示す。
図3において、パワーダウン制御回路20は、パワーダウン制御回路20の内部における制御信号と後段に接続される内部回路に向けて出力するパワーダウン制御信号を生成する信号生成回路28、通常時のプルアップ回路22、及びパワーダウン時のプルアップ回路24を含んで構成されている。
【0048】
図3に示すように、パワーダウン制御回路20の通常時のプルアップ回路22及びパワーダウン時のプルアップ回路24は、各々図1におけるパワーダウン制御回路10の通常時のプルアップ回路12及びパワーダウン時のプルアップ回路14と同じである。
【0049】
そして、パワーダウン制御回路20では、入力ドライバ26のPMOSトランジスタMP4のドレインとNMOSトランジスタMN0のドレインとの間に抵抗R3を有し、インバータINV0が節点ND4−Bに接続され、RS型フリップフロップRS0のセット端子SがインバータINV2を介して節点ND4−Aに接続されている点がパワーダウン制御回路10と異なる点である。後述するように、上記他の動作を回避するために、本実施の形態に係るパワーダウン制御回路20では、抵抗R3によって、プルアップ回路22を制御する出力端子PDNからの制御信号と、プルアップ回路24を制御する端子PUPからの制御信号との間に時間差を設けている。
【0050】
ここで、図4を参照して、上記他の動作が発生する場合について説明する。
図4は、上記他の動作が発生する場合の、パワーダウン制御回路10の各部の波形を示すタイムチャートである。
【0051】
通常状態からパワーダウン状態に遷移させるために入力端子PDをオープンにした場合、通常時のプルアップ回路22からパワーダウン時のプルアップ回路24に切り替わる際に、図4(a)に示すように入力端子PDの電位が中間電位で安定する場合がある。これは、出力端子PDNからの制御信号により通常時のプルアップ回路22を停止させる動作と、端子PUPからの制御信号によりパワーダウン時のプルアップ回路24を起動させる制御とが競合する場合があるからである。
【0052】
この入力端子PDの中間電位での安定に伴い、節点ND4の電位(図4(b))、出力端子PDNの電位(図4(c))、及び節点ND5の電位(図4(e))も中間電位で安定する。そのため、端子PUPの電位は電位Hに保たれたままとなるので、PMOSトランジスタMP3はオフ状態を維持しており、抵抗R0が電源VDDに接続されない。この際、上記のように入力端子PDの電位、すなわちPMOSトランジスタMP4とNMOSトランジスタMN0のゲートの電位が中間電位となるため入力ドライバ16には貫通電流が流れる。
【0053】
次に、図5を参照して、本実施の形態に係るパワーダウン制御回路20の動作を説明する。
図5は、パワーダウン制御回路20の動作例を説明するためのタイムチャートである。
図3において、入力端子PDをオープンにした場合に、カレントミラー回路30の電流I1により入力端子PDが電源VDDに向かって上昇すると(図5(a))、節点ND4−Aがまず電位Lとなり(図5(b))、遅れて節点ND4−Bが電位Lとなる(図5(c))。これは、NMOSトランジスタMN0を介して接地側から電位が決まっていくことによる。
そのため、端子PUPがまず電位Lとなって(図5(e))パワーダウン時のプルアップ回路24が起動し、その後出力端子PDNが電位Lとなって(図5(f))通常時のプルアップ回路22が停止する(図5(g))。
【0054】
つまり、本実施の形態に係るパワーダウン制御回路20では、パワーダウン時のプルアップ回路24が機能した後に通常時のプルアップ回路22の機能を停止させているので、
両者の制御において競合が発生することがない。従って、通常時のプルアップ回路22からパワーダウン時のプルアップ回路24へ安定して遷移させることができ、パワーダウン制御回路10で発生する場合がある上記他の動作の発生を回避させることができる。さらに、パワーダウン制御回路20の内部の電位が中間電位で安定することによる貫通電流の発生も防止することができる。
【0055】
なお、上記各実施の形態では、入力端子PDをプルアップする形態を例示して説明したが、これに限定されず、入力端子PDをプルダウンする形態に適用してもよい。この場合、通常時のプルアップ回路12(22)及びパワーダウン時のプルアップ回路14(24)に接続する電源を電源VDDから低い側の電圧(上記各実施の形態ではGND)に変更し、両プルアップ回路を構成するトランジスタを逆極性のトランジスタに(PMOSはNMOSに、NMOSはPMOSに)変更すればよい。
【0056】
また、上記各実施の形態では、MOS型FETを使用する場合を例示して説明したが、
これに限られず、他の種々のトランジスタ、例えば接合型FET、バイポーラトランジスタ等を使用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10、20 パワーダウン制御回路
12、14、22、24 プルアップ回路
16、26 入力ドライバ
18、28 信号生成回路
30 カレントミラー回路
CS 定電流源
図1
図2
図3
図4
図5
図6