特許第6129207号(P6129207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッドの特許一覧 ▶ 住友化学株式会社の特許一覧

特許6129207非対称ジアリールアミンフルオレンユニットを含むポリマー
<>
  • 特許6129207-非対称ジアリールアミンフルオレンユニットを含むポリマー 図000042
  • 特許6129207-非対称ジアリールアミンフルオレンユニットを含むポリマー 図000043
  • 特許6129207-非対称ジアリールアミンフルオレンユニットを含むポリマー 図000044
  • 特許6129207-非対称ジアリールアミンフルオレンユニットを含むポリマー 図000045
  • 特許6129207-非対称ジアリールアミンフルオレンユニットを含むポリマー 図000046
  • 特許6129207-非対称ジアリールアミンフルオレンユニットを含むポリマー 図000047
  • 特許6129207-非対称ジアリールアミンフルオレンユニットを含むポリマー 図000048
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6129207
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】非対称ジアリールアミンフルオレンユニットを含むポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20170508BHJP
   C07C 211/61 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
   C08G61/12
   C07C211/61CSP
【請求項の数】19
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2014-551681(P2014-551681)
(86)(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公表番号】特表2015-503671(P2015-503671A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】GB2013050088
(87)【国際公開番号】WO2013108022
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2016年1月14日
(31)【優先権主張番号】1200619.3
(32)【優先日】2012年1月16日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1208610.4
(32)【優先日】2012年5月16日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】597063048
【氏名又は名称】ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ペギントン,ルース
(72)【発明者】
【氏名】ハイデンハイン,ソフィー・ビー
(72)【発明者】
【氏名】マッカーナン,メアリー・ジエイ
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/146715(WO,A1)
【文献】 特表2007−534814(JP,A)
【文献】 特開2004−067970(JP,A)
【文献】 特開2004−292782(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/058368(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/093823(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/093831(WO,A1)
【文献】 特開2012−007022(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/038747(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00−61/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、各Arは独立に、置換若しくは非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基を表し;各Arは、独立に置換若しくは非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基を表し;nおよびmは、各出現において少なくとも1であり;RおよびRは、置換基であり、RとRとは異なっている)
の非置換または置換の繰り返しユニットを1つ以上含むポリマーであって、
が、sp混成炭素原子によってフルオレン環に結合し、
がsp混成炭素原子によってフルオレンユニットに結合する、ポリマー
【請求項2】
が、置換若しくは非置換の分岐、線状または環式アルキル基であり、ここで1つ以上の非隣接C原子がO、S、NR、C=Oまたは−COO−で置き換えられていてもよく、1つ以上のH原子がFまたはDで置き換えられていてもよく、RはHまたは置換基である、請求項に記載のポリマー。
【請求項3】
が、基−(Arによってフルオレンユニットに結合し、ここでArは、各出現において置換若しくは非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基であり;yは少なくとも1であり;yが2より大きい場合、−(Arは、線状または分岐鎖のAr基を形成する、請求項またはに記載のポリマー。
【請求項4】
Arが、各出現において置換または非置換フェニルである、請求項1〜のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項5】
Arは、F;CN;NO;NR;架橋性基;およびC1−20アルキルから選択される1つ以上の置換基で置換され、ここで1つ以上の非隣接C原子は、置換または非置換のアリールまたはヘテロアリール、O、S、NR、C=Oまたは−COO−で置き換えられていてもよく、1つ以上のH原子は、FまたはDで置き換えられていてもよく、RはHまたは置換基である、請求項またはに記載のポリマー。
【請求項6】
各nが独立に1〜3であり、
各mが独立に1〜3である、請求項1からのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項7】
各ArおよびArが独立に、非置換または置換フェニルである、請求項1からのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項8】
少なくとも1つのArは、F;CN;NO;NR;架橋性基;C1−20アルキル基から選択される1つ以上の置換基で置換され、ここで1つ以上の非隣接C原子は、置換または非置換のアリールまたはヘテロアリール、O、S、NR、C=Oまたは−COO−で置き換えられていてもよく、1つ以上のH原子は、FまたはDで置き換えられていてもよく、RはHまたは置換基である、請求項1からのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項9】
Ar−N結合に対してオルトである少なくとも1つの(Arの少なくとも1つの位置が置換されている、請求項1からのいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項10】
前記ポリマーが、式(IV):
【化2】
(式中、Rは、各出現において、同一または異なっており、Hまたは置換基であり、ここで2つの基Rは、連結されて環を形成していてもよい)
の共繰り返しユニットを含む、請求項1からのいずれか項に記載のポリマー。
【請求項11】
式(Ib):
【化3】
(式中、Ar、Ar、R、R、nおよびmは、請求項1に記載の通りである)の繰り返しユニットを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項12】
前記ポリマーの、式(I)の前記繰り返しユニットおよび/または1つ以上の共繰り返しユニットが、少なくとも1つの架橋性基で置換されている、請求項1から11のいずれか項に記載のポリマー。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のポリマーを含む半導体層を具備する有機電子デバイス。
【請求項14】
アノードとカソードとの間に半導体層を具備する有機発光デバイスである、請求項13に記載の有機電子デバイス。
【請求項15】
前記半導体層が、アノードと発光層との間のホール輸送層である、請求項14に記載の有機電子デバイス。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか一項に記載のポリマーと、少なくとも1つの溶媒とを含む、配合物。
【請求項17】
式(II):
【化4】
(式中、Ar、Ar、R、R、nおよびmは、請求項1から12のいずれか一項に記載の通りであり、各Lは、ハロゲン;ボロン酸およびそれらのエステル;ならびにスルホン酸エステルからなる群から選択される反応性脱離基を表す)
のモノマー。
【請求項18】
請求項17に記載のモノマーを重合する工程を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリマーを形成する方法。
【請求項19】
前記重合が、金属触媒の存在下で行われる、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー、特に電荷輸送および/または発光ポリマー;当該ポリマー製造用のモノマー;当該ポリマーの製造方法;当該ポリマーを含有する組成物;当該ポリマーを含む有機電子デバイス;および当該デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性有機材料を含有する電子デバイスは、デバイス、例えば有機発光ダイオード(OLED)、有機光応答性デバイス(特に有機光起電性デバイスおよび有機光センサ)、有機トランジスタおよびメモリーアレイデバイス等に使用するために、ますます注目を集めている。活性有機材料を含有するデバイスは、低重量、低電力消費および可撓性のような利益を提供する。さらに、可溶性の有機材料の使用は、デバイス製造において溶液加工処理、例えばインクジェット印刷またはスピンコーティングの使用を可能にする。
【0003】
OLEDは、アノードと、カソードと、当該アノードとカソードとの間の1つ以上の有機発光層とを保持する基板を含んでいてもよい。
【0004】
デバイスの作動中に、ホールはアノードを通してデバイスに注入され、電子はカソードを通して注入される。発光材料の最高被占分子軌道(HOMO)中のホールと最低空分子軌道(LUMO)中の電子とが、結合して励起子を形成し、そのエネルギーを光として放出する。
【0005】
好適な発光材料としては、小分子、ポリマー性およびデンドリマー性材料が挙げられる。例示的な発光ポリマーとしては、ポリ(アリーレンビニレン)、例えばポリ(p−フェニレンビニレン)およびポリアリーレン、例えばポリフルオレン等が挙げられる。
【0006】
特許文献1には、以下の式の繰り返しユニットを有するポリマーが開示されている:
【化1】
【0007】
式中、Arは、置換または非置換アリール基であり、Ar’’は、置換または非置換アリーレン基であり、Zは、多環式アリーレンである。1つの例において、Zはフルオレンである。
【0008】
特許文献2には、イリジウム錯体と以下式の化合物とでドープされた発光層を含むOLEDが開示されている:
【化2】
【0009】
式中、Arはアリールであり、Xはアリーレン基、例えばフェニレン、ビフェニレンおよびスピロフルオレニレンである。
【0010】
特許文献3には、以下の式を有する化合物が開示されている:
【化3】
【0011】
式中、Arはビフェニル、フルオレニルまたはテトラヒドロピレニルであり、R、RおよびRはHまたは特定の置換基であり、HetおよびHetは、置換または非置換C3−20ヘテロアリールであり、nは0〜20である。
【0012】
特許文献4は、以下の式を有する繰り返しユニットが開示されている:
【化4】
【0013】
式中、Ar1、Ar2、Ar3およびAr4はそれぞれ独立に、アリーレン基または二価ヘテロ環式基を表し;E1、E2およびE3のそれぞれは独立に、特定の置換基から選択される3つ以上の置換基を有するアリール基、または特定の置換基から選択される1つ以上の置換基を有するヘテロ環式基を表し、aおよびbは、それぞれ独立に0または1を表し、0≦a+b≦1である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2005/049546号
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0175072号明細書
【特許文献3】韓国特許出願公開第2011/057078号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/109955号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
第1の態様において、本発明は、式(I)の繰り返しユニットを1つ以上含むポリマーを提供する:
【化5】
【0016】
式中、各Arは独立に、置換若しくは非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基を表し;各Arは独立に、置換若しくは非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基を表し;nおよびmは、各出現において独立に少なくとも1であり;RおよびRは、置換基であり、RとRとが異なっている。
【0017】
は、sp混成炭素原子によってフルオレン環に結合していてもよく、Rは、sp混成炭素原子によってフルオレンユニットに結合していてもよい。
【0018】
は置換若しくは非置換の分岐、線状または環式アルキル基であってもよく、C1−20アルキル基を表してもよく、ここで1つ以上の非隣接C原子は、O、S、NR、C=Oまたは−COO−と置き換えられていてもよく、1つ以上のH原子は、FまたはDで置き換えられていてもよく、RはHまたは置換基である。
【0019】
は、基−(Arによってフルオレンユニットに結合していてもよく、ここでArは、各出現において置換若しくは非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基であり;yは少なくとも1であり、1、2または3であってもよく;yが2より大きい場合、−(Ar)yは、線状または分岐鎖のAr基を形成する。
【0020】
Ar、またはyが1より大きい場合には少なくとも1つのArが、置換若しくは非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基であってもよい。
【0021】
各出現においてArは、置換または非置換フェニルであってもよい。
【0022】
Arは、1つ以上の置換基で置換されていてもよく、1つ以上の置換基は、F;CN;NO;NR;架橋性基;およびC1−20アルキルから選択されてもよく、ここで1つ以上の非隣接C原子は、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール、O、S、NR、C=Oまたは−COO−で置き換えられていてもよく、1つ以上のH原子は、FまたはDで置き換えられていてもよく、RはHまたは置換基である。
【0023】
各nは、独立に1〜3、好ましくは1であってもよい。
【0024】
各mは、独立に1〜3、好ましくは1であってもよい。
【0025】
各ArおよびArは、独立に非置換または置換フェニルであってもよい。
【0026】
各Arは非置換であってもよい。
【0027】
少なくとも1つのArは、F;CN;NO;NR;架橋性基;C1−20アルキル基から選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、ここで1つ以上の非隣接C原子は、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール、O、S、NR、C=Oまたは−COO−で置き換えられていてもよく、1つ以上のH原子は、FまたはDで置き換えられていてもよく、RはHまたは置換基である。
【0028】
mは1であってもよく、少なくとも1つのArは、少なくとも2つの置換基(2または3つの置換基であってもよい)で置換されていてもよい。
【0029】
Ar−N結合に対してオルトである少なくとも1つの(Arの少なくとも1つの位置は、置換されていてもよい。
【0030】
ポリマーは、少なくとも1つの共繰り返しユニットを含んでいてもよい。
【0031】
ポリマーは、式(IV)の共繰り返しユニットを含んでいてもよい:
【化6】
【0032】
式中、Rは、各出現において、同一または異なっており、Hまたは置換基であり、2つの基Rは、連結されて環を形成していてもよい。
【0033】
ポリマーは、式(Ib)の繰り返しユニットを含んでいてもよい:
【化7】
【0034】
式中、Ar、Ar、R、R、nおよびmは、上記で記載される通りである。
【0035】
ポリマーは架橋性であってもよい。
【0036】
式(I)の繰り返しユニットおよび/または1つ以上の共繰り返しユニットは、少なくとも1つの架橋性基で置換されていてもよい。
【0037】
少なくとも1つの架橋性基は、独立に、各出現において二重結合基およびベンゾシクロブタン基から選択されてもよい。
【0038】
第2の態様において、本発明は、半導体層を具備する有機電子デバイスを提供し、ここで半導体層は、第1の態様に従うポリマーを含む。
【0039】
第2の態様によれば、デバイスは、アノードとカソードとの間に半導体層を含む有機発光デバイスであってもよい。
【0040】
第2の態様によれば、半導体層は発光層であってもよい。
【0041】
第2の態様によれば、半導体性層は、アノードと発光層との間のホール輸送層であってもよい。
【0042】
第3の態様において、本発明は、第1の態様に従うポリマーと少なくとも1つの溶媒とを含む配合物を提供する。
【0043】
第4の態様において、本発明は、第2の態様に従う有機電子デバイスを形成する方法を提供し、この方法は、第3の態様の配合物を堆積させ、少なくとも1つの溶媒を蒸発させることによって半導体性層を形成する工程を含む。
【0044】
第5の態様において、本発明は、式(II)のモノマーを提供する:
【化8】
【0045】
式中、Ar、Ar、R、R、nおよびmは、第1の態様に記載される通りであり、各Lは反応性脱離基を表す。
【0046】
第5の態様によれば、各Lは、金属媒介されたクロスカップリング反応に関与できる基であってもよい。
【0047】
第5の態様によれば、各Lは、独立に、ハロゲン、好ましくはBrまたはI;ボロン酸およびこれらのエステル;およびスルホン酸エステルからなる群から選択されてもよい。
【0048】
第6の態様において、本発明は、第5の態様に従うモノマーを重合する工程を含む第1の態様に従うポリマーを形成する方法を提供する。
【0049】
第6の態様に従って、重合は、金属触媒の存在下で行われてもよい。
【0050】
第6の態様に従って、金属触媒は、ニッケルおよびパラジウム触媒から選択されてもよい。
【0051】
第7の態様において、本発明は、式(III)の繰り返しユニットを含むポリマーを提供する:
【化9】
【0052】
式中、各Arは独立に、置換若しくは非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基を表し;各Arは独立に、置換若しくは非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基を表し;nおよびmは、各出現において独立に少なくとも1つであり;RおよびRは、置換基であり、ここでRおよびRの少なくとも1つは、置換または非置換アリールまたはヘテロアリール基である。
【0053】
第7の態様によれば、RおよびRの両方が、置換または非置換アリールまたはヘテロアリール基を表してもよい。
【0054】
第7の態様によれば、RおよびRの少なくとも1つは、式(Arを有していてもよく、式中Arは、各出現において非置換または置換の芳香族またはヘテロ芳香族基を表し、zは少なくとも1であり、1、2または3であってもよい。
【0055】
第7の態様によれば、Arは、非置換または置換フェニルであってもよい。
【0056】
第7の態様によれば、少なくとも1つのArは、F;CN;NO;NR;架橋性基;およびC1−20アルキルから選択される1つ以上の置換基で置換されていてもよく、1つ以上の非隣接C原子は、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール、O、S、NR、C=Oまたは−COO−で置き換えられていてもよく、ここで1つ以上のH原子は、FまたはDで置き換えられていてもよく、RはHまたは置換基である。
【0057】
式(III)の繰り返しユニットを含むポリマーは、本発明の第1から第6の態様のいずれかの部分で記載されるように構造化され、製造され、使用されてもよいこと、および式(III)の繰り返しユニットのAr、Ar、mおよびnは、式(I)の繰り返しユニットに関して記載される通りであってもよいことが理解される。
【0058】
「芳香族基」および「ヘテロ芳香族基」は、それぞれ単環式または多環式芳香族およびヘテロ芳香族基を含む。
【0059】
ここで本発明を、以下の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の実施形態に従うOLEDを図示する。
図2】本発明の実施形態に従うポリマーのホール輸送層を含有する例示的なOLED、および比較OLEDに関する、時間に対する輝度のグラフである。
図3】本発明の実施形態に従うポリマーのホール輸送層を含有する例示的なOLED、ならびに比較OLEDに関する、電圧に対する電流密度のグラフである。
図4A】本発明の実施形態に従うポリマーのホール輸送層を含有する例示的な青色蛍光OLED、ならびに比較OLEDに関する、時間に対する輝度のグラフである。
図4B図4Aのデバイスに関して、電圧に対する電流密度のグラフである。
図5A】本発明の実施形態に従うポリマーのホール輸送層を含有する例示的な緑色りん光OLED、ならびに比較OLEDに関する、時間に対する輝度のグラフである。
図5B図5Aのデバイスに関する、電圧に対する電流密度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
正確な縮尺では描かれていない図1は、本発明の実施形態に従うOLEDを図示する。OLEDは、基板1上に保持され、アノード2、カソード4およびこのアノードとカソードとの間に発光層3を含む。さらなる層(図示せず)は、アノードとカソードとの間に提供されてもよく、それらとしては、電荷輸送層、電荷ブロッキング層および電荷注入層が挙げられるが、これらに限定されない。デバイスは、複数の発光層を含有してもよい。
【0062】
1つ以上のさらなる層を含む例示的なOLED構造としては、以下が挙げられる:
アノード/ホール注入層/発光層/カソード
アノード/ホール輸送層/発光層/カソード
アノード/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/カソード
アノード/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/カソード。
【0063】
本発明のポリマーは、発光層においておよび/または1つ以上の電荷輸送層において提供されてもよい。1つの好ましい実施形態において、本発明のポリマーは、少なくともホール輸送層に提供される。好ましい実施形態において、本発明のポリマーは、少なくとも発光層に提供される。発光層に使用される場合、本発明のポリマーは、青色発光材料であってもよく、または蛍光またはりん光ドーパントのためのホストであってもよい。
【0064】
N(Ar(Arで置換されていない式(I)の繰り返しユニットの中央フルオレンの1つ以上のsp混成炭素原子は、非置換であってもよく、または1つ以上の置換基で置換されていてもよい。好適な置換基としては、F、CN、NOおよびC1−20アルキルが挙げられ、ここで1つ以上の非隣接C原子は、O、S、NHまたは置換されたN、C=Oおよび−COO−、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、フッ素、シアノおよびアリールアルキルで置き換えられていてもよい。特に好ましい置換基としては、C1−20アルキルおよび置換または非置換アリール、例えばフェニルが挙げられる。アリールのための任意の置換基としては、1つ以上のC1−20アルキル基が挙げられる。置換基が存在する場合、それらは、好ましくはフルオレン環の4および5位の少なくとも1つに提供される。
【0065】
式(I)の例示的な繰り返しユニットとしては、以下が挙げられる:
【化10】
【0066】
式中、Alkは、各出現において独立に、C1−20アルキルを表し、bは、各出現において独立に0または整数であり、0、1、2または3であってもよい。
【0067】
ポリマーは、ホモポリマーであってもよく、または式(I)の繰り返しユニットと1つ以上のさらなる共繰り返しユニットとを含むコポリマーであってもよい。コポリマーの場合、式(I)の繰り返しユニットのモルパーセンテージは、1〜99mol%の範囲であってもよい。式(I)の繰り返しユニットのモルパーセンテージは、デバイスの用途に依存し得る。例えば、式(I)の繰り返しユニットは、ホール輸送層に使用するためのポリマーの繰り返しユニットの総数の20mol%〜60mol%(30〜60mol%であってもよい)の範囲の量で提供されてもよく、または発光層において使用するためのポリマーの繰り返しユニットの総数の約1mol%〜50mol%(1mol%〜30mol%であってもよい)の範囲であってもよい。
【0068】
ポリマーは、式(I)の1つだけの繰り返しユニットを含有してもよく、または式(I)の2つ以上の異なる繰り返しユニットを含有し得る。
【0069】
ポリマーは、4.8〜5.5eV(5.1〜5.3eVであってもよい)の範囲のHOMO準位を有していてもよい。
【0070】
HOMOおよびLUMO準位は、方形波サイクリックボルタンメトリーによって測定されてもよい。
【0071】
CVによるHOMOまたはLUMOエネルギー準位を測定するための装置は、アセトニトリル中のtert−ブチルアンモニウム過塩素酸塩/またはtert−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート溶液、ガラス状炭素作用電極(ここでサンプルは、フィルムとしてコーティングされる)、白金カウンター電極(電子のドナーまたはアクセプタ―)およびノーリークAg/AgClの参照ガラス電極を含有するセルを含んでいてもよい。フェロセンは、計算目的のために実験の終了時にセルに添加される。(Ag/AgCl/フェロセンおよびサンプル/フェロセンの間の電位差の測定)。
【0072】
方法および設定:
3mm直径のガラス状炭素作用電極
Ag/AgCl/ノーリーク参照電極
Ptワイヤ補助電極
アセトニトリル中0.1Mのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート
LUMO=4.8−フェロセン(ピークツーピーク最大平均)+オンセット
サンプル:3000rpmでスピンされたトルエン中5mg/mLの1滴のLUMO(還元)測定:
良好な可逆性還元事象は、通常、200mV/sおよびスイッチング電位−2.5Vにおいて測定される厚いフィルムに関して観察される。還元事象は、10サイクルにわたって測定および比較されるべきであり、通常の測定は、3番目のサイクルで行われる。オンセットは、還元事象の最も急勾配の部分の最良適合線と基線との交点におけるものである。
【0073】
サイクリックボルタンメトリーが設定電位に到達したときに、作用電極の電位傾斜を反転させる。この反転は、単一の実験中に複数回起こり得る。作用電極での電流は、適用電圧に対してプロットし、サイクリックボルタモグラムトレースを得る。
【0074】
ポリマーは、ポリマーを架橋するための架橋性基を含んでいてもよい。架橋性基は、繰り返しユニット式(I)の置換基として提供されてもよく、および/または別個の共繰り返しユニットに提供されてもよい。例示的な架橋性基としては、反応性二重結合を含む基およびベンゾシクロブタンを含む基が挙げられる。反応性二重結合基としては、末端=CHユニットを有する基が挙げられる。架橋性基は、繰り返しユニットもしくはポリマーの末端基に直接結合してもよく、またはスペーサー基、例えばC1−10アルキルスペーサー基によってそこから間隔をあけてもよい。
【0075】
架橋性基は、式(VI)を有していてもよい:
−(Sp)−XL
(VI)
式中、Spは、スペーサー基、例えば実施例C1−10アルキルを表し;wは0または1であり;XLは、架橋性基を表し;は、架橋性基のポリマーへの結合点を表す。
【0076】
例示的な架橋性基としては、以下が挙げられる:
【化11】
【0077】
これらのそれぞれは、非置換または1つ以上の置換基、例えば1つ以上のC1−10アルキル基で置換されていてもよい。
【0078】
使用に際して、架橋性基を含むポリマーは、デバイスの層を形成するために堆積されてもよく、架橋性基は、架橋された層を溶媒に曝す際に溶解に対して実質的に耐性を有する架橋された層を形成するために、架橋されてもよい(例えば、溶液加工処理方法によって、架橋された層上にデバイスのさらなる層を堆積させる際)。ポリマーが、上部の発光層と共にOLEDのホール輸送層を形成するものである場合に、架橋性基が使用されてもよい。
【0079】
式(I)の繰り返しユニットは、1つ以上の共繰り返しユニットに共役してもよく、ポリマーは、共役コポリマーであってもよい。共役コポリマーの例示的な共繰り返しユニットとしては、例えばAdv.Mater.2000 12(23)1737−1750に開示されるような置換されていてもよい単環式および多環式アリーレン繰り返しユニットが挙げられ、J.Appl.Phys.1996,79,934に開示されるような1,2−,1,3−および1,4−フェニレン繰り返しユニット;欧州特許第0842208号明細書に開示されるような2,7−フルオレン繰り返しユニット;例えばMacromolecules2000,33(6),2016−2020に開示されるようなインデノフルオレン繰り返しユニット;および例えば欧州特許第0707020号明細書に開示されるようなスピロフルオレン繰り返しユニットが挙げられる。これらの繰り返しユニットのそれぞれは、置換されていてもよい。置換基の例としては、可溶化基、例えばC1−20アルキルまたはアルコキシ;電子吸引性基、例えばフッ素、ニトロまたはシアノ;およびポリマーのガラス転移温度(Tg)を増大させるための置換基が挙げられる。
【0080】
1つの例示的なクラスのアリーレン繰り返しユニットは、置換されていてもよいフルオレン繰り返しユニット、例えば式(IV)の繰り返しユニットである:
【化12】
【0081】
式中、Rは、各出現において同一または異なり、Hまたは置換基であり、ここで2つの基Rは、連結して環を形成してもよい。
【0082】
各Rは、好ましくは置換基であり、各Rは、独立に以下からなる群から選択されてもよい:
−置換または非置換アルキル(C1−20アルキルであってもよい)、ここで1つ以上の非隣接C原子は、置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール、O、S、置換されたN、C=Oまたは−COO−で置き換えられていてもよく、1つ以上のH原子は、Fで置き換えられていてもよい;
−置換若しくは非置換アリールまたはヘテロアリール基、或いは線状もしくは分岐鎖のアリールまたはヘテロアリール、ここでこれらの各々は、独立に置換されていてもよく、例えば式−(Arの基であり、式中、Arは、各出現において独立に、置換または非置換アリールまたはヘテロアリールであり、rは少なくとも1である(1、2または3であってもよい);
−フルオレンユニットに直接結合した、またはスペーサー基、例えば二重結合を含む基、例えばビニルまたはアクリレート基、またはベンゾシクロブタン基によってそれらから間隔をあけて配置された架橋性基、例えば上記で記載されるような式(VI)の架橋性基。
【0083】
が1つ以上のアリールまたはヘテロアリール基Arを含む場合、各Arは、独立に、以下からなる群から選択される1つ以上の置換基Rで置換されていてもよい:
アルキル、例えばC1−20アルキル、ここで、1つ以上の非隣接C原子は、O、S、置換されたN、C=Oまたは−COO−で置き換えられていてもよく、アルキル基の1つ以上のH原子は、Fで置き換えられていてもよく、または1つ以上の基Rで置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールで置き換えられていてもよい、
1つ以上の基Rで置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール、
NR、OR、SR、ならびに
フッ素、ニトロおよびシアノ;
式中、各Rは、独立に、アルキル、例えばC1−20アルキルであり、ここで1つ以上の非隣接C原子は、O、S、置換されたN、C=Oまたは−COO−で置き換えられていてもよく、アルキル基の1つ以上のH原子は、FまたはDで置き換えられていてもよく;各Rは、独立に、アルキル、例えばC1−20アルキル、および1つ以上のアルキル基で置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリール、例えば非置換または1つ以上のC1−20アルキル基で置換されるフェニルからなる群から選択される。
【0084】
式(IV)を参照して本明細書に記載されるような置換基Rはまた、本発明の第1の態様に関して記載されるような式(I)の繰り返しユニットの基NRまたはNRに適用可能である。
【0085】
置換基R以外のフルオレンユニットのための任意の置換基は、好ましくはアルキル、例えばC1−20アルキルからなる群から選択され、ここで1つ以上の非隣接C原子は、O、S、NHまたは置換されたN、C=Oまたは−COO−、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、アルコキシ、アルキルチオ、フッ素、シアノおよびアリールアルキルで置き換えられていてもよい。特に好ましい置換基としては、C1−20アルキルおよび置換または非置換アリール、例えばフェニルが挙げられる。アリールのための任意の置換基としては、1つ以上のC1−20アルキル基が挙げられる。
【0086】
存在する場合、置換されたNは、独立に各出現においてNRであってもよく、ここでRはアルキル(C1−20アルキルであってもよい)、または置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールである。アリールまたはヘテロアリールRのための任意の置換基は、RまたはRから選択されてもよい。
【0087】
好ましくは、各Rは、C1−20アルキルおよび−(Arからなる群から選択され、式中、Arは各出現において置換または非置換フェニルである。フェニルのための任意の置換基としては、1つ以上のC1−20アルキル基が挙げられる。
【0088】
式(IV)の繰り返しユニットは、式(IVa)の2,7−連結繰り返しユニットであってもよい:
【化13】
【0089】
式(IVa)の繰り返しユニットは、2または7位に隣接する位置では置換されていなくてもよい。
【0090】
隣接繰り返しユニットに対して式(IV)の繰り返しユニットの共役程度は、(a)繰り返しユニットにわたる共役程度を制限するために3および/または6位を介して繰り返しユニットを連結させることにより、および/または(b)隣接繰り返しユニットとの捻じれを創出するために、連結位置に隣接する1つ以上の位置において、1つ以上のさらなる置換基R、例えば3または6位の1つまたは両方においてC1−20アルキル置換基を保持する2,7−連結フルオレンで繰り返しユニットを置換することにより、制限されてもよい。ポリマー中に捻じれユニットを含ませることは、1つ以上のりん光発光材料を含有するデバイスにおいてポリマーを使用して、りん光の消光を回避するのに有利な場合がある。
【0091】
別の例示的なクラスのアリーレン繰り返しユニットは、フェニレン繰り返しユニット、例えば式(V)のフェニレン繰り返しユニットである:
【化14】
【0092】
式中、pは0、1、2、3または4であり(1または2であってもよい)、R10は、独立に各出現において置換基(上記で記載されるように置換基Rであってもよい)、例えばC1−20アルキル、および、非置換または1つ以上のC1−20アルキル基で置換されたフェニルであってもよい。
【0093】
式(V)の繰り返しユニットは、1,4−連結、1,2−連結または1,3−連結されていてもよい。
【0094】
式(V)の繰り返しユニットが1,4−連結である場合、およびpが0である場合、式(V)の繰り返しユニットの1つまたは両方の隣接繰り返しユニットに対する共役程度は、相対的に高くてもよい。
【0095】
pが少なくとも1である場合、および/または繰り返しユニットが1,2−または1,3連結である場合、式(V)の繰り返しユニットの1つまたは両方の隣接繰り返しユニットに対する共役程度は、相対的に低くてもよい。1つの任意の配置において、式(V)の繰り返しユニットは、1,3−連結であり、pは0、1、2または3である。別の任意の配置において、式(V)の繰り返しユニットは式(Va)を有する:
【化15】
【0096】
別の例示的なアリーレン繰り返しユニットは、式(VII)を有する:
【化16】
【0097】
式中、Rは上記式(IV)を参照して記載される通りである。R基のそれぞれは、別のR基のいずれかに連結して環を形成してもよい。
【0098】
さらにアリーレン共繰り返しユニットとしては:フェナントレン繰り返しユニット;ナフタレン繰り返しユニット;アントラセン繰り返しユニット;およびペリーレン繰り返しユニットが挙げられる。これらのアリーレン繰り返しユニットのそれぞれは、これらのユニットの芳香族炭素原子のいずれか2つを介して隣接繰り返しユニットに連結してもよい。具体的な例示連結としては、9,10−アントラセン;2,6−アントラセン;1,4−ナフタレン;2,6−ナフタレン;2,7−フェナントレン;および2,5−ペリーレンが挙げられる。
【0099】
ポリマーは、式(VIII)のアミン繰り返しユニットを含んでいてもよい:
【化17】
【0100】
式中、ArおよびArは各出現において独立に、置換若しくは非置換アリールまたはヘテロアリールから選択され、gは1以上であり、好ましくは1または2であり、R11はHまたは置換基であり、好ましくは置換基であり、cおよびdはそれぞれ独立に1、2または3であるが、ただしArは、gが2である場合にはフルオレンではない。
【0101】
g>1である場合に各出現において同一または異なっていてもよいR11は、アルキル、例えばC1−20アルキル、Ar、分岐または線状鎖のAr基、または式(VIII)のN原子に直接結合したまたはスペーサー基によって間隔をあけた架橋性ユニット(ここでArは各出現において、独立に置換されていてもよいアリールまたはヘテロアリールである)からなる群から好ましくは選択される。例示的なスペーサー基は、C1−20アルキル、フェニルおよびフェニル−C1−20アルキルである。
【0102】
式(VI)の繰り返しユニットにおいてAr、Arおよび存在する場合Arのいずれかは、直接結合または二価の連結原子もしくは基によってAr、ArおよびArのうちの別の基に連結されてもよい。好ましい二価連結原子および基としては、O、S;置換されたN;および置換されたCが挙げられる。
【0103】
いずれかのAr、Arおよび存在する場合Arは、1つ以上の置換基で置換されていてもよい。例示的な置換基は、上記で記載されるような置換基Rである。
【0104】
1つの好ましい配置において、R11はArであり、Ar、ArおよびArのそれぞれは、独立に1つ以上のC1−20アルキル基で置換されていてもよい。
【0105】
Ar、ArおよびArは、好ましくはフェニルであり、それらのそれぞれは、独立に上記で記載されるように1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0106】
別の好ましい配置において、ArおよびArはフェニルであり、これらのそれぞれは1つ以上のC1−20アルキル基で置換されていてもよく、R11は3,5−ジフェニルベンゼンであり、ここで各フェニルは、1つ以上のC1−20アルキル基で置換されていてもよい。
【0107】
別の好ましい配置において、c、dおよびgはそれぞれ1であり、ArおよびArは、フェノキサジン環を形成するために酸素原子によって連結されたフェニルである。
【0108】
ポリマー合成
上記で記載されるような式(I)の繰り返しユニットを含む共役ポリマー、例えばホモポリマーまたはコポリマーの調製の好ましい方法は、「金属挿入」を含み、ここでこの金属錯体触媒の金属原子は、アリールまたはヘテロアリール基とモノマーの脱離基との間に挿入される。例示的な金属挿入方法は、例えば国際公開第00/53656号に記載されるようなSuzuki重合、および例えばT.Yamamoto,「Electrically Conducting And Thermally Stable pi−Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes」,Progress in Polymer Science 1993,17,1153−1205に記載されるようなYamamoto重合である。Yamamoto重合の場合、ニッケル錯体触媒が使用される;Suzuki重合の場合、パラジウム錯体触媒が使用される。
【0109】
例えば、Yamamoto重合による線状ポリマーの合成において、2つの反応性ロゲン基を有するモノマーが使用される。同様に、Suzuki重合方法によれば、少なくとも1つの反応性基は、ホウ素誘導体基、例えばボロン酸またはボロン酸エステルおよびその他の反応性基はハロゲンである。好ましいハロゲンは塩素、臭素およびヨウ素であり、最も好ましくは臭素である。
【0110】
そのため、本願全体を通して示される繰り返しユニットは、好適な脱離基を保持するモノマーから誘導されてもよいことが理解される。同様に、ただ1つの反応性脱離基を保持する末端キャッピング基または側鎖基は、それぞれポリマー鎖の末端または側鎖における脱離基の反応によってポリマーに結合してもよい。
【0111】
Suzuki重合は、レジオレギュラー、ブロックおよびランダムコポリマーを調製するために使用されてもよい。特に、ホモポリマーまたはランダムコポリマーは、一方の反応性基がハロゲンであり、他方の反応性基がホウ素誘導体基である場合に調製されてもよい。あるいは、ブロックまたはレジオレギュラーコポリマーは、第1のモノマーの反応性基の両方がホウ素であり、第2のモノマーの反応性基の両方がハロゲンである場合に調製され得る。
【0112】
ハライドの代わりに、金属挿入に関与できる他の脱離基としては、スルホン酸およびスルホン酸エステル、例えばトシレート、メシレートおよびトリフレートが挙げられる。
【0113】
発光層
OLEDの発光層に使用するために好適な発光材料としては、小分子、ポリマー性およびデンドリマー性材料並びにそれらの組成物が挙げられる。好適な発光ポリマーとしては、共役ポリマー、例えば置換または非置換ポリ(アリーレンビニレン)、例えばポリ(p−フェニレンビニレン)および置換または非置換ポリアリーレン、例えば:ポリフルオレン、特に2,7−連結9,9ジアルキルポリフルオレンまたは2,7−連結9,9ジアリールポリフルオレン;ポリスピロフルオレン、特に2,7−連結ポリ−9,9−スピロフルオレン;ポリインデノフルオレン、特に2,7−連結ポリインデノフルオレン;ポリフェニレン、特にアルキルまたはアルコキシ置換ポリ−1,4−フェニレンが挙げられる。かかるポリマーは、例えばAdv.Mater.2000 12(23)1737−1750およびこの文献の参照文献に開示される。上記で記載されるような式(I)の繰り返しユニットを含むポリマーは、発光材料として、または蛍光もしくはりん光ドーパントのためのホストとして、OLEDの発光層に提供されてもよい。
【0114】
発光層は、発光材料単独からなってもよく、または1つ以上のさらなる材料と組み合わせてこの材料を含んでいてもよい。特に、発光材料は、ホールおよび/または電子輸送材料とブレンドされてもよく、または別の方法として、例えば国際公開第99/48160号に開示されるようなホールおよび/または電子輸送材料に共有結合してもよい。
【0115】
発光コポリマーは、例えば国際公開第00/55927号および米国特許第6353083号明細書に開示されるように、発光領域、ならびにホール輸送領域および電子輸送領域の少なくとも1つを含んでいてもよい。ホール輸送領域および電子輸送領域の一方だけが提供される場合、エレクトロルミネッセンス領域はまた、ホール輸送および電子輸送機能の他方を提供してもよい−例えば上記で記載されるような式(I)のアミンユニットは、ホール輸送および発光機能の両方を提供してもよい。発光繰り返しユニット、ならびにホール輸送繰り返しユニットおよび電子輸送繰り返しユニットの一方または両方を含む発光コポリマーは、米国特許第6353083号明細書の通り、ポリマー主鎖に、またはポリマー骨格からペンダントのポリマー側鎖基に前記ユニットを提供してもよい。
【0116】
蛍光発光層の場合、発光層は、発光材料によって得られる三重項励起子を受容できる三重項消光剤を含んでいてもよい。三重項消光剤は、三重項への移動を可能にする発光材料の三重項エネルギー準位よりも低い三重項エネルギー準位、ならびに蛍光の消光またはダウンコンバージョンを回避するために発光材料の一重項エネルギー準位よりも高い一重項エネルギー準位を有していてもよい。三重項消光剤は、発光ポリマーの繰り返しユニットとして提供されてもよく、または発光材料とブレンドされてもよい。
【0117】
好適な発光材料は、電磁スペクトルのUV、可視および/または赤外領域において発光してもよい。OLEDは、赤色、緑色および青色発光材料の1つ以上を含有してもよい。
【0118】
本明細書のいずれかに記載されるような青色発光材料は、480nm以下(例えば400〜480nm)の範囲のピーク波長を有するフォトルミネッセンススペクトルを有していてもよい。
【0119】
本明細書のいずれかに記載されるような緑色発光材料は、480nmを超えて560nmまでの範囲にピーク波長を有するフォトルミネッセンススペクトルを有していてもよい。
【0120】
本明細書のいずれかに記載されるような赤色発光材料は、560nmを超えて630nmまでの範囲にピーク波長を有するフォトルミネッセンススペクトルを有していてもよい。
【0121】
複数の発光材料が使用されてもよい。例えば赤色、緑色および青色の発光ドーパントが、白色発光を得るために使用されてもよい。
【0122】
発光層は、ホスト材料と、少なくとも1つの発光ドーパントとを含んでいてもよい。ホスト材料は、ドーパントの非存在下で自ら発光する上記で記載されるような材料であってもよく、上記で記載されるような式(I)の繰り返しユニットを含むポリマーであってもよい。ホスト材料およびドーパントがデバイスに使用される場合、ドーパント単独で発光してもよい。別の方法として、ホスト材料と1つ以上のドーパンとが発光してもよい。白色光は、複数の光源からの発光、例えばホストおよび1つ以上のドーパントの両方からの発光または複数のドーパントからの発光によって得られてもよい。
【0123】
蛍光発光ドーパントの場合、ホスト材料の一重項励起状態エネルギー準位(S)は、ホスト材料から蛍光発光ドーパントへ一重項励起子が移動し得るように、蛍光発光ドーパントのエネルギー準位よりも高くすべきである。同様に、りん光発光ドーパントの場合、ホスト材料の三重項励起状態のエネルギー準位(T)は、ホスト材料から蛍光発光ドーパントへ三重項励起子が移動し得るように、りん光発光ドーパントのエネルギー準位より高くすべきである。
【0124】
例示的なりん光発光ドーパントとしては、式(X)の置換または非置換錯体を含む金属錯体が挙げられる:
ML
(X)
式中、Mは金属であり;L、LおよびLのそれぞれは、配位基であり;qは整数であり;rおよびsはそれぞれ独立に0または整数であり;(a.q)+(b.r)+(c.s)の合計は、Mにおいて利用可能な配位部位の数に等しく、ここでaは、Lにおける配位部位の数であり、bはLにおける配位部位の数であり、cはLにおける配位部位の数である。
【0125】
重元素Mは、強力なスピン軌道カップリングを誘導し、三重項またはそれ以上の状態からの迅速な項間交差および発光を可能にする(りん光)。好適な重金属Mとしては、dブロック金属、特に2列および3列の金属、すなわち39から48および72から80の元素、特にルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金および金が挙げられる。イリジウムが特に好ましい。
【0126】
例示的なリガンドL、LおよびLとしては、炭素または窒素ドナー、例えばポルフィリンまたは式(XI)の二座リガンドが挙げられる:
【化18】
【0127】
式中、ArおよびArは、同一または異なっていてもよく、独立に、置換若しくは非置換アリールまたはヘテロアリールから選択され;XおよびYは、同一または異なっていてもよく、独立に、炭素または窒素から選択され;ArおよびArは、共に縮合してもよい。Xが炭素であり、Yが窒素であるリガンドが特に好ましい。
【0128】
二座リガンドの例を以下に示す:
【化19】
【0129】
ArおよびArのそれぞれは、1つ以上の置換基を保持し得る。これらの置換基のうちの2つ以上は、連結されて環、例えば芳香族環を形成してもよい。
【0130】
dブロック元素と共に使用するのに好適な他のリガンドとしては、ジケトネート、特にアセチルアセトネート(acac);トリアリールホスフィンおよびピリジンが挙げられ、それらの各々が置換されていてもよい。
【0131】
例示的な置換基としては、式(IV)を参照して上記で記載されるような基Rが挙げられる。特に好ましい置換基としては、例えば国際公開第02/45466号、同第02/44189号、米国特許出願公開第2002−117662号明細書および同第2002−182441号明細書に開示されるような錯体の発光を青色シフトさせるために使用されてもよいフッ素またはトリフルオロメチル;JP2002−324679に開示される通りであり得るアルキルまたはアルコキシ基、例えばC1−20アルキルまたはアルコキシ;例えば国際公開第02/81448号に開示されるように、発光性材料として使用される場合に錯体へのホール輸送を補助するために使用されてもよいカルバゾール;例えば国際公開第02/68435号および欧州特許第1245659号明細書に開示されるように、さらなる基の結合のためにリガンドを官能化するのに役立ち得る臭素、塩素またはヨウ素;および例えば国際公開第02/66552号に開示されるように、金属錯体の溶液加工処理性を得るまたは向上させるために使用されてもよいデンドロンが挙げられる。
【0132】
発光デンドリマーは、通常、1つ以上のデンドロンに結合する発光コアを含み、ここで各デンドロンは、分岐点および2つ以上の樹枝状分岐を含む。好ましくはデンドロンは、少なくとも部分的に共役しており、分岐点および樹枝状分岐のうちの少なくとも1つが、アリールまたはヘテロアリール基、例えばフェニル基を含む。1つの配置において、分岐点の基および分岐基は、すべてフェニルであり、各フェニルは、独立に1つ以上の置換基、例えばアルキルまたはアルコキシで置換されていてもよい。
【0133】
デンドロンは、置換されていてもよい式(XII)を有していてもよい:
【化20】
【0134】
式中、BPは、コアに結合するための分岐点を表し、Gは第1世代分岐基を表す。
【0135】
デンドロンは、第1、第2、第3またはそれ以上の世代のデンドロンであってもよい。Gは、置換されていてもよい式(XIIa)におけるように、2つ以上の第2世代分岐基Gなどで置換されていてもよい:
【化21】
【0136】
式中、uは0または1であり;uは0である場合にvは0であり、またはuは1である場合に0または1であってもよく;BPは、コアへの結合のための分岐点を表し、G、GおよびGは、第1、第2および第3世代のデンドロン分岐基を表す。
【0137】
BPおよび/またはいずれかの基Gは、1つ以上の置換基、例えば1つ以上のC1−20アルキルまたはアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0138】
使用される場合、発光ドーパントは、ホスト材料に対して約0.05mol%から約20mol%までの量(約0.1〜10mol%であってもよい)で存在してもよい。
【0139】
発光ドーパントは、ホスト材料と物理的に混合してもよく、または発光ドーパントの電荷輸送材料への結合に関して上記で記載されるのと同じ様式でホスト材料に化学的に結合してもよい。
【0140】
複数の発光層が存在してもよい。複数の発光層は共に、白色光を生じさせてもよい。
【0141】
発光層は、パターニングされても、パターニングされていなくてもよい。パターニングされていない層を含むデバイスは、例えば照明源として使用してもよい。白色発光デバイスは、この目的のために特に好適である。パターニングされた層を含むデバイスは、例えばアクティブマトリックスディスプレイまたはパッシブマトリックスディスプレイであってもよい。アクティブマトリックスディスプレイの場合、パターニングされたエレクトロルミネッセンス層は、通常、パターニングされたアノード層およびパターニングされていないカソードと組み合わせて使用される。パッシブマトリックスディスプレイの場合、アノード層は、アノード材料の平行縞模様、エレクトロルミネッセンス材料の平行縞模様、およびアノード材料に垂直に配列されたカソード材料から形成され、ここでエレクトロルミネッセンス材料およびカソード材料の縞模様は、通常、フォトリソグラフィによって形成された絶縁材料(「カソードセパレータ」)の縞模様によって分離される。
【0142】
電荷輸送および電荷ブロッキング層
ホール輸送層は、アノードと発光層との間に提供されてもよい。同様に、電子輸送層が、カソードと発光層との間に提供されてもよい。
【0143】
同様に、電子ブロッキング層は、アノードと発光層との間に提供されてもよく、ホールブロッキング層は、カソードと発光層との間に提供されてもよい。輸送およびブロッキング層は、組み合わせて使用されてもよい。そのHOMOおよびLUMO準位に依存して、単一層が、ホールおよび電子のうちの一方を輸送すると共に、ホールまたは電子のうちの他方をブロックしてもよい。
【0144】
電荷輸送層または電荷ブロッキング層は、特にその電荷輸送または電荷ブロッキング層を覆う層が溶液から堆積される場合は架橋されてもよい。この架橋に使用される架橋性基は、反応性二重結合、例えばビニル若しくはアクリレート基またはベンゾシクロブタン基を含む架橋性基であってもよい。
【0145】
存在する場合、アノードと発光層との間に位置するホール輸送層は、サイクリックボルタンメトリーによって測定される場合、好ましくは5.5eV以下、より好ましくは約4.8〜5.5eVまたは5.1〜5.3eVのHOMO準位を有する。ホール輸送層のHOMO準位は、これらの層の間においてホール輸送の小さいバリアを提供するために、隣接する層(例えば発光層)の0.2eV内(0.1eV内でもよい)であるように選択されてもよい。
【0146】
存在する場合、発光層とカソードとの間に位置する電子輸送層は、サイクリックボルタンメトリーによって測定される場合に、好ましくは約3〜3.5eVのLUMO準位を有する。例えば、一酸化ケイ素もしくは二酸化ケイ素の層または0.2〜2nmの範囲の厚さを有する他の誘電体薄層がカソードに最も近い発光層とカソードとの間に提供されてもよい。HOMOおよびLUMO準位は、サイクリックボルタンメトリーを用いて測定されてもよい。
【0147】
ホール輸送層は、上記で記載されるような式(I)の繰り返しユニットを含むホモポリマーまたはコポリマーを含有してもよい。
【0148】
電子輸送層は、フルオレン繰り返しユニットの鎖等の、置換されていてもよいアリーレン繰り返しユニットの鎖を含むポリマーを含有してもよい。
【0149】
ホール注入層
伝導性の有機または無機材料から形成されてもよい伝導性ホール注入層は、図1に示されるようなアノード2と発光層3との間に提供されて、アノードから半導体性ポリマーの層へのホール注入を補助してもよい。ドープされた有機ホール注入材料の例としては、置換されていてもよいドープされたポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)、特に欧州特許第0901176号明細書および同第0947123号明細書に開示されるような電荷平衡化ポリ酸、例えばポリスチレンスルホネート(PSS)でドープされたPEDT、ポリアクリル酸またはフッ素化スルホン酸、例えばNafion(登録商標);米国特許第5723873号明細書および米国特許第5798170号明細書に開示されるようなポリアニリン;および置換されていてもよいポリチオフェンまたはポリ(チエノチオフェン)が挙げられる。伝導性無機材料の例としては、遷移金属酸化物、例えばJournal of Physics D:Applied Physics(1996),29(11),2750−2753に開示されるようなVOx、MoOxおよびRuOxが挙げられる。
【0150】
カソード
カソードは、電子を、発光層に注入させる仕事関数を有する材料から選択される。カソードと発光材料との間の不利な相互作用の可能性のような他の要因が、カソードの選択に影響する。カソードは、アルミニウム層のような単一材料からなってもよい。別の方法としてそれは、複数の金属を含んでいてもよく、例えば低仕事関数材料および高仕事関数材料の二層、例えば国際公開第98/10621号に開示されるようなカルシウムおよびアルミニウム;国際公開第98/57381号、Appl.Phys.Lett.2002,81(4),634および国際公開第02/84759号に開示されるような元素状バリウム;または電子注入を補助するために金属化合物、特にアルカリまたはアルカリ土類金属の酸化物またはフッ化物の薄層、例えば国際公開第00/48258号に開示されるようなフッ化リチウム;Appl.Phys.Lett.2001,79(5),2001に開示されるようなフッ化バリウム;および酸化バリウムを含んでいてもよい。効率の良い電子のデバイスへの注入を得るために、カソードは、好ましくは3.5eV未満、より好ましくは3.2eV未満、最も好ましくは3eV未満の仕事関数を有する。金属の仕事関数は、例えばMichaelson,J.Appl.Phys.48(11),4729,1977に見出されることができる。
【0151】
カソードは、不透明または透明であってもよい。透明なカソードは、こうしたデバイスにおける透明アノードを介した発光が、発光性ピクセルの底部に位置する駆動電気回路によって少なくとも部分的にブロックされるので、アクティブマトリックスデバイスにとって特に有利である。透明カソードは、透明であるために十分薄い電子注入材料の層を含む。通常、この層の側部伝導度は、その厚さの結果として低い。この場合、電子注入材料の層は、透明伝導性材料、例えばインジウムスズオキシド等のより厚い層と組み合わせて使用される。
【0152】
透明なカソードデバイスは、透明なアノードを有する必要はなく(もちろん、完全に透明のデバイスが所望されない限り)、そのためボトム型発光デバイスのために使用される透明アノードは、アルミニウムの層のような反射性材料の層で置き換えられていてもよく、またはそうした層が補充されてもよいことが理解される。透明カソードデバイスの例は、例えばGB2348316に開示されている。
【0153】
封止
有機光電子デバイスは、湿分および酸素に対して感受性の傾向がある。従って、基板は、好ましくは湿分および酸素のデバイスへの侵入を防止するために良好なバリア特性を有する。基板は、一般にガラスであるが、特にデバイスの可撓性が所望される場合には代替基板が使用されてもよい。例えば、基板は、1つ以上のプラスチック層、例えば代替プラスチックおよび誘電体バリア層の基板、または薄いガラスおよびプラスチックのラミネートを含んでいてもよい。
【0154】
デバイスは、湿分および酸素の侵入を防ぐために封止材(図示せず)で封止されてもよい。好適な封止材としては、ガラスのシート、好適なバリア特性を有するフィルム、例えば二酸化ケイ素、一酸化ケイ素、窒化ケイ素またはポリマーおよび誘電体の交互スタック、または気密性容器が挙げられる。透明カソードデバイスの場合、透明封止層、例えば一酸化ケイ素または二酸化ケイ素等は、ミクロンレベルの厚さに堆積されてもよいが、1つの好ましい実施形態においてこうした層の厚さが20〜300nmの範囲にある。基板または封止材に浸透し得る大気湿分および/または酸素の吸収のためのゲッター材料は、基板と封止材との間に配設されてもよい。
【0155】
溶液加工処理
溶液加工処理のためのポリマー組成物を形成するのに好適な溶媒としては、一般的な有機溶媒が挙げられ、モノ−またはポリ−アルキルベンゼン、例えばトルエンおよびキシレン等が挙げられる。
【0156】
特に好ましい溶液堆積技術(印刷およびコーティング技術、例えばスピンコーティングおよびインクジェット印刷等を含む)。
【0157】
スピンコーティングは、例えば照明用途または単純なモノクロセグメントディスプレイのために発光層のパターニングが不必要なデバイスに特に好適である。
【0158】
インクジェット印刷は、高情報量ディスプレイ、特にフルカラーディスプレイに特に好適である。デバイスは、第1の電極にわたってパターニングされた層を提供し、1つの色(モノクロデバイスの場合)またはマルチカラー(マルチカラー、特にフルカラーデバイスの場合)の印刷のためにウェルを規定することによってインクジェット印刷されてもよい。パターニングされた層は、通常、例えば欧州特許第0880303号明細書に記載されるようなウェルを規定するためにパターニングされるフォトレジストの層である。
【0159】
ウェルの代替として、インクは、パターニングされた層内に規定されるチャンネルに印刷されてもよい。特に、フォトレジストは、チャンネルを形成するためにパターニングされてもよく、ウェルと異なり、複数のピクセルにわたって延び、チャンネル末端部で閉じていてもよいか、または開いていてもよい。
【0160】
それ以外の溶液堆積技術としては、ディップコーティング、ロール印刷およびスクリーン印刷が挙げられる。
【0161】
[実施例]
モノマー実施例1
モノマー実施例1を以下のスキームに従って調製した:
【化22】
【0162】
段階1:2,7−ジブロモ−9−(3,5−ジヘキシル−フェニル)−9−オクチル−フルオレン(125g,184mmol)およびトリメチルアニリン(54.63g,404mmol)を、機械的撹拌機、冷却器および窒素入口を備えた3Lフラスコに充填した。混合物を窒素で90分間スパージした。トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.841g,0.92mmol)およびトリ−tert−ブチル−ホスホニウムテトラフルオロボロネート(0.400g,1.38mmol)を添加し、混合物をさらに10分間スパージした。tert−ブトキシナトリウム(53g,552mmol)を滴下した。反応混合物を16時間還流加熱した。室温まで冷却後、混合物を水(400ml)でクエンチした。水相をさらにトルエンで抽出し、合わせた有機相を乾燥するまで減量し、暗褐色油を得た。これをトルエン(500ml)に溶解させ、Celite(登録商標)プラグに通した(約1.5Lトルエンで溶出し、次いでシリカプラグ(両方Φ125mm,高さ6cm)に通して溶出液を直接濾過し、トルエンですすいだ)。トルエン溶出液をロータリーエバポレーションによって乾燥するまで減量した。固体をIPAおよびジクロロメタンと共に加熱し(60℃)、ジクロロメタンを除去し、冷却する際に、ターゲット分子が淡黄色沈殿物を形成した。イソプロパノールおよびトルエン(9:1)からの再結晶の後、真空オーブンにて50℃での乾燥の後に99.8%HPLCの純度が得られた(94g,65%収率)。
【0163】
段階2:段階1材料(94g,120mmol)、ブロモベンゼン(32ml,300mmol)およびトルエン(1400ml)を機械的撹拌機、冷却器および窒素入口を備えた3Lフラスコに充填した。混合物を窒素で70分間スパージし、次いでトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(1.09g,1.2mmol)およびトリ−tert−ブチル−ホスホニウムテトラフルオロボロネート(0.69g,2.4mmol)を添加し、混合物をさらに10分間脱気した。ナトリウムtert−ブトキシド(34.4g,360mmol)を滴下し、混合物を10分間脱気した後、混合物を16時間還流加熱した。室温まで一旦冷却した後、水を添加した(300ml)。水相を分離し、有機層をさらなる水(2×200ml)で洗浄した。有機相をロータリーエバポレーションによって乾燥するまで減量し、褐色油を得た。油を60℃で加熱することによって最小量のトルエン(約200ml)中に溶解させた。それをシリカ上のCelite(登録商標)のプラグを通過させ、トルエンで溶出した(Φ100mm;高さ:10cmシリカ(頂部に3cmのCelite(登録商標)を有する))。溶出液を乾燥するまで減量し、橙色油を得た。油を65℃にてメタノールで洗浄し、メタノールをデカントした。完全に乾燥した後、生成物を次の段階に直接使用した(82g,HPLC99.60%純度,73%収率)。
【0164】
段階3:段階2材料(55.8g,59.3mmol)をクロロホルム(550ml)中に溶解し、窒素でスパージした。混合物をIPA/CO浴を用いて−15℃(内部温度)に冷却した。ジメチルホルムアミドの溶液(550ml)中のNBS(21.099g,119mmol)を、冷却した溶液に滴下した。添加が完了したら、混合物をこの温度で3時間撹拌し、次いで室温まで一晩加温した。サンプルをLCMSによるインプロセスチェックのために採取した。さらにNBSを−15℃で添加し、存在するモノブロミドの量を調整した(5mlのDMF中、0.084g)。反応をこの温度で3時間維持し、次いでメタノール(400ml)の添加によってクエンチした。水(400ml)を混合物に添加し、次いでクロロホルムをロータリーエバポレーションによって除去した。固体がこの段階で沈澱し、これを濾過し、ジクロロメタン(500ml)中に溶解させ、水、10%炭酸ナトリウム溶液、および再び水で洗浄した。水相をジクロロメタンで抽出した後、合わせた有機物を乾燥するまで減量した。固体をジクロロメタン(50ml)中に溶解させ、Celite(登録商標)およびシリカのプラグを通過させ、ヘキサン(1L)で抽出し、次いでジクロロメタン:石油エーテル(80:100)の20%混合物を用いて、生成物が完全に溶出されるまで溶出した。溶出液を乾燥するまで減量し、透明油(99%純度)を得た。イソプロパノール:トルエンおよびメタノール:n−ブチルアセテートによるさらなる再結晶化を使用して、純度を99.62%HPLC,58.8g(62.25%収率)に改善した。
【0165】
モノマー実施例2
以下に示すモノマー実施例2をモノマー実施例1について記載される方法と同じ方法を用いて調製した。
【化23】
【0166】
モノマー実施例3
以下に示すモノマー実施例3をモノマー実施例1について記載される方法と同じ方法を用いて調製した。
【化24】
【0167】
ポリマー実施例1
ポリマー実施例1を、以下のモノマーの国際公開第00/53656号に記載されるSuzuki重合によって調製した:
【化25】
【0168】
ポリマー実施例1は、370,000の重量平均分子量(Mw)および96,000の数平均分子量(Mn)を有していた。
【0169】
比較ポリマー1
モノマー実施例1を以下に示される比較モノマー1で置き換えること以外、ポリマー実施例1に関して記載される通りに、比較ポリマー1を調製した:
【化26】
【0170】
比較ポリマー1は、187,000の重量平均分子量(Mw)および57,000の数平均分子量(Mn)を有していた。
【0171】
ポリマー実施例2
ポリマー実施例2を、以下のモノマーの国際公開第00/53656号に記載されるSuzuki重合によって調製した:
【化27】
【0172】
ポリマー実施例2は、313,000の重量平均分子量(Mw)および74,000の数平均分子量(Mn)を有していた。
【0173】
比較ポリマー2
モノマー実施例2を以下に示される比較モノマー2で置き換えた以外は、ポリマー実施例2に関して記載される通りに、比較ポリマー2を調製した:
【化28】
【0174】
比較ポリマー2は、240,000の重量平均分子量(Mw)および66,000の数平均分子量(Mn)を有していた。
【0175】
ポリマー実施例3
国際公開第00/53656号に記載される通りに、以下のモノマーのSuzuki重合によってポリマー実施例3を調製した:
【化29】
【0176】
ポリマーは、210,000の重量平均分子量Mw、168,000のピーク平均分子量、37,000の数平均分子量および5.7の多分散性を有していた。
【0177】
比較ポリマー3A
比較モノマー1をモノマー実施例1の代わりに使用した以外、ポリマー実施例3に記載される通りに、ポリマーを調製した。
【0178】
比較ポリマー3B
比較モノマー2をモノマー実施例1の代わりに使用した以外、ポリマー実施例3に記載される通りに、ポリマーを調製した。
【0179】
ポリマー実施例4
国際公開第00/53656号に記載される通りに、以下のモノマーのSuzuki重合によってポリマー実施例4を調製した:
【化30】
【0180】
一般的なデバイスの製作プロセス
以下の構造を有するデバイスを形成した:
ITO/HIL/HTL/EL/カソード
ここで、ITOはインジウムスズオキシドアノードであり、HILはホール注入層であり、HTLはホール輸送層であり、ELは発光層である。
【0181】
ITOを保持する基板を、UV/オゾンを用いて清浄にした。ホール注入層を、Plextronics,Inc.から入手可能なホール注入材料の水性配合物をスピンコーティングすることによって形成した。ホール輸送層は、ホール輸送ポリマーをスピンコーティングし、ホール輸送ポリマーを加熱により架橋することによって20nm厚さに形成した。発光層は、o−キシレン溶液からのスピンコーティングによって、発光ポリマーおよび添加剤ポリマーの発光配合物(90:10重量比)を堆積させることによって75nmの厚さまで形成した。カソードは、フッ化金属の第1の層を約2nm厚さまで、アルミニウムの第2の層を約200nmの厚さまで、および、任意の第3の銀層を蒸発させることによって形成された。
【0182】
発光ポリマーを、国際公開第00/53656号に記載されるようにSuzuki重合によって、以下のモノマーの重合によって形成した:
【化31】
【0183】
添加剤ポリマーを、国際公開第00/53656号に記載されるようにSuzuki重合によって以下のモノマーの重合により形成した:
【化32】
【0184】
デバイス実施例1
デバイスを一般的なデバイス製作プロセスに従って作製したが、ここでこのホール輸送層は、ポリマー実施例1をスピンコーティングし、且つ、架橋することによって形成した。
【0185】
比較デバイス1
デバイスを、一般的なデバイス製作プロセスに従って作製したが、ここでこのホール輸送層は、比較ポリマー1をスピンコーティングし、且つ、架橋することによって形成した。
【0186】
デバイス実施例2
デバイスを、一般的なデバイス製作プロセスに従って作製したが、ここでこのホール輸送層は、ポリマー実施例2をスピンコーティングし、且つ、架橋することによって形成した。
【0187】
比較デバイス2
デバイスを、一般的なデバイス製作プロセスに従って作製したが、ここでこのホール輸送層は、比較ポリマー2をスピンコーティングし、且つ、架橋することによって形成した。
【0188】
図2を参照して、デバイス実施例1および2は、驚くべきことに両方が、比較デバイス1および比較デバイス2よりも長い半減期を有している(本明細書で使用される場合「半減期」は、輝度が一定電流において出発輝度から50%降下するのにかかる時間を意味する)。
【0189】
ホールのみデバイス実施例
発光層が存在せず、カソードが上記デバイス実施例に比べて電子の注入が低下したアルミニウムである以外、ポリマー実施例1およびポリマー実施例2を用いる一般的なデバイス製作プロセスにおいて記載されるようにデバイスを作製した。
【0190】
比較の目的で、同じデバイスを、比較ポリマー1を用いて作製した。
【0191】
図3に示すように、ポリマー実施例1および2のホールのみデバイスは、驚くべきことに、比較ポリマー2から形成されたデバイスよりも高いホール電流を有する。
【0192】
デバイス実施例3
デバイスは、一般的なデバイス製作プロセスに従って作製したが、ここでこのホール輸送層は、ポリマー実施例3をスピンコーティングし、且つ、架橋することによって形成した。
【0193】
比較デバイス3A
比較ポリマー3Aをポリマー実施例3の代わりに使用した以外、デバイス実施例3に記載される通りにデバイスを作製した。
【0194】
比較デバイス3B
比較ポリマー3Bをポリマー実施例3の代わりに使用した以外、デバイス実施例3に記載されるようにデバイスを作製した。
【0195】
図4Aを参照して、デバイス実施例3の半減期は、比較デバイス3Aまたは3Bのいずれよりも長い。図4Bを参照して、デバイス実施例3の伝導度は、比較デバイス3Aおよび3Bの伝導度と同一または同様である。
【0196】
デバイス実施例4
デバイスは、一般的なデバイス製作プロセスに従って作製したが、ここでこのホール輸送層は、発光層が、30重量%の緑色りん光エミッタ1と混合したポリマーホストシステムのスピンコーティングによって形成された以外は、ポリマー実施例3をスピンコーティングし、且つ、架橋することによって形成した:
【化33】
【0197】
比較デバイス4A
比較ポリマー3Aをポリマー実施例3の代わりに使用した以外、デバイス実施例4に記載される通りに、デバイスを作製した。
【0198】
比較デバイス4B
比較ポリマー3Bをポリマー実施例3の代わりに使用した以外、デバイス実施例4に記載される通りに、デバイスを作製した。
【0199】
図5Aを参照して、デバイス実施例4の半減期は、比較デバイス4Aまたは4Bのいずれかよりも長い。図5Bを参照して、デバイス実施例4の伝導度は、比較デバイス4Aおよび4Bの場合と同一または同様である。
【0200】
デバイス実施例5
以下の構造を有するデバイスを形成した:
ITO/HIL/HTL/EL/カソード
ここでITOはインジウムスズオキシドアノードであり、HILはホール注入層であり、HTLはホール輸送層であり、ELは発光層である。
【0201】
ITOを保持する基板を、UV/オゾンを用いて清浄にした。35nm厚さのホール注入層を、Plextronics,Inc.から入手可能なホール注入材料の水性配合物をスピンコーティングすることによって形成した。ホール輸送層は、ホール輸送ポリマーHTL1をスピンコーティングし、ホール輸送ポリマーを加熱により架橋することによって22nm厚さに形成した。発光層は、o−キシレン溶液からのスピンコーティングによって70nmの厚さまで、ポリマー実施例4および一般的なデバイス製作プロセスに記載される添加剤ポリマーの発光配合物(90:10重量比)を堆積させることによって形成した。カソードは、フッ化金属の第1の層を約2nm厚さまで、アルミニウムの第2の層を約200nmの厚さまで、および、第3の任意の銀層を蒸発させることによって形成された。
【0202】
ホール輸送ポリマーHTL1は、国際公開第00/53656号に記載されるようにSuzuki重合によって以下のモノマーの重合により形成した:
【化34】
【0203】
デバイスは、ポリマー実施例4からの発光によって青色光を生じた。
【0204】
本発明は、式(I)の繰り返しユニットを含むポリマーを参照して記載されている。式(III)の繰り返しユニットを含むホモポリマーまたはコポリマーは、式(I)の繰り返しユニットを含むポリマーに関して本明細書で記載されるように、製造され、デバイスに使用されてもよく、式(III)の繰り返しユニットのAr、Ar、nおよびmは、式(I)の繰り返しユニットを参照して本明細書のいずれかにおいて記載される通りであってもよい。
【0205】
式(III)の例示的な繰り返しユニットとしては、以下が挙げられる:
【化35】
【0206】
式(III)の繰り返しユニットを形成するために使用されてもよいモノマーのための例示的な合成は以下の通りである:
【化36】
【0207】
特定の例示的な実施形態の観点で本発明が記載されているが、本明細書に開示される特徴の種々の変更、代替および/または組み合わせは、以下の特許請求の範囲に示されるように、本発明の範囲から逸脱することなく当業者に明らかになることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B