(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記研削ステップでは、板状物を保持する前記保持テーブルの前記保持面と前記研削砥石の研削面とを相対的に傾け非平行とした状態で該研削砥石を該保持テーブルで保持された板状物に当接させつつ研削を遂行することで、板状物を非平坦形状に形成することを特徴とする請求項1に記載の板状物の加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は、一実施形態の加工方法を好適に実施可能な研削装置の要部を示している。この研削装置は、円板状の板状物1を上面に保持する保持テーブル20と、保持テーブル20上に配設され、保持テーブル20に保持された板状物1を研削する研削手段10とを備えている。
【0014】
板状物1は、表面に多数のデバイスが形成された半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等の厚さが例えば数百μm程度の基板材であり、デバイスが形成されていない裏面が研削されて所定厚さに薄化される。研削後の板状物1は、研削によって生じた研削歪みを除去するために被研削面1cに所定の方法でエッチングを施す必要がある。
【0015】
[1]研削装置
図1に示すように、研削手段10は、鉛直方向に延び、図示せぬモータによって回転駆動されるスピンドル11の先端に、フランジ12を介して研削ホイール13が固定されたもので、保持テーブル20の上方に上下動可能に配設されている。研削ホイール13の下面外周部には、多数の研削砥石14が環状に配列されて固着されている。研削砥石14は板状物1の材質に応じたものが用いられ、例えば、ダイヤモンドの砥粒をメタルボンドやレジンボンド等の結合剤で固めて成形したダイヤモンド研削砥石等が用いられる。
【0016】
保持テーブル20は、
図2に示すように、ステンレス等の金属からなる円板状の枠体21の上面21aに多孔質体からなる円板状の保持部22が嵌合されて構成されたもので、保持部22の上面の保持面22aに空気吸引による負圧作用で板状物1を吸引保持する真空チャックである。
【0017】
保持部22の保持面22aは、中心を頂点とし、外周縁に向かうにしたがって微少角度(例えば0.0001〜0.001°)で下り傾斜となる略傘状に形成されている。保持面22aの周囲の枠体21の上面21aは保持面22aと面一となるよう傾斜している。板状物1は、
図1に示すように必要に応じて表面側に保護部材5が貼着され、被研削面1cを上方に露出させて保持面22aに保護部材5を介して同心状に載置され、吸引保持されると保持面22aに倣って傘状に変形し保持面22aに密着した状態となる。なお、
図1以外の図面では保護部材5の図示を省略している。
【0018】
保持テーブル20は、円筒台23上に回転可能に支持された回転板24上に固定されている。保持テーブル20の枠体21と回転板24は外径が同一であり、円筒台23に対して同心状に設けられている。円筒台23内には、回転板24を回転させるモータを含む駆動機構が収納されており(図示略)、この駆動機構が作動することにより保持テーブル20は回転板24とともに回転する。円筒台23の外周面には、保持テーブル20および回転板24と外径が同一の鍔部25が形成されている。
【0019】
図3は、研削ホイール13と保持テーブル20に保持される板状物1との位置関係を示している。回転する研削ホイール13の研削砥石14の下面による研削面14aは水平な環状を形成し、この水平な環状の研削面14aの外径は板状物1の外径と同等もしくはやや大径となっている。そして研削砥石14の研削面14aの外径は、保持テーブル20の回転軸心20aすなわち板状物1の回転中心1aを通過するように設定されている。これにより保持面22aに保持された板状物1に研削砥石14が接触して研削する領域は、回転中心1aから板状物1の外周縁までの円弧状の加工領域15(
図1で太線、
図3で斜線で示す)に限られる。
【0020】
図2および
図3に示すように、上記鍔部25には、1つの固定支持部25aと、2つの可動支持部25b,25cが設定されている。これら支持部25a〜25cは、周方向等分箇所に配設されている。
図2に示すように、固定支持部25aには、装置台29上に固定された固定軸31が貫通している。この固定軸31は、ボルト止め等により鍔部25に締結されている。各可動支持部25b,25cは、傾き角度調整手段30により、固定支持部25aを支点として上下動させられ、これによって円筒台23とともに保持テーブル20が傾動するようになっている。すなわち円筒台23は装置台29上に傾き角度調整手段30を介して、その中心軸の角度が傾動可能に支持されている。円筒台23の中心軸は保持テーブル20の回転軸心20aと一致しており、したがって保持テーブル20の回転軸心20aの角度は、傾き角度調整手段30によって任意の角度に調整可能となっている。
【0021】
図2の傾き角度調整手段30は、可動支持部25c側のものを示している。可動支持部25b側の傾き角度調整手段30も同一構成であって、
図3に示す保持テーブル20の回転軸心20a(板状物1の回転中心1a)と固定支持部25aを通る線Lを対称線として、可動支持部25b,25c双方の傾き角度調整手段30は、互いに対称的に構成されている。
【0022】
傾き角度調整手段30は、
図2に示すように、装置台29の下面に固定されたモータ32と、装置台29に螺合して貫通しておりモータ32によって回転駆動される駆動ボルト33と、装置台29上に支点ブロック34を介して揺動可能に支持され、揺動先端部が駆動ボルト33の上端部に支持されている調整梃子35と、調整梃子35に支持され、鍔部25に貫通固定された調整ブロック36とを具備している(特開2008−264913号公報参照)。
【0023】
調整梃子35は、基端である支点部35aが支持ブロック34に固定されており、揺動先端部である力点部35cが駆動ボルト33の上端部に支持されている。そして、支点部35aと力点部35cとの間の作用点部35b上に調整ブロック36が支持されている。調整梃子35の支点部35a側の端部には、上方に凸の半円弧状の弾性首部33dが形成されている。駆動ボルト33はモータ32の作動によって上方に進出したり下方に退避したりし、その上下動が、力点部35cに伝わると弾性首部33dが歪み、これによって調整梃子35は上下方向に揺動するようになっている。
【0024】
このようにして調整梃子35が揺動すると、作用点部35b上に支持されている調整ブロック36が上下動する。これにより鍔部25の各可動支持部25b、25cは上下動し、その結果、保持テーブル20の回転軸心20aは固定支持部25aを支点として傾き、それに伴って保持テーブル20が傾動する。保持テーブル20の回転軸心20aは、固定支持部25aおよび各可動支持部25b、25cの3点の高さ位置が同じときに、
図4(a)に示すように研削ホイール13の鉛直方向に延びる回転軸心13aと平行になる。
【0025】
図3に示すように、研削砥石14による板状物1に対する加工領域15は、板状物1の回転中心1aから固定支持部25aにわたっている。この加工領域15において、
図4(b)に示すように、研削砥石14と、研削砥石14に対向する部分の保持面22aが平行になるように保持テーブル20の傾斜角度を調整し、その状態で板状物1を研削すると、板状物1は厚さが均一な平坦に研削される。
【0026】
[2]加工方法
次に、上記研削装置を用いて板状物1を平坦に加工する加工方法を説明する。
[2−1]エッチング後形状確認ステップ
上述したように、板状物1は被研削面1cを研削後、研削によって生じた研削歪みを除去するために被研削面1cに所定の方法でエッチングが施されるが、板状物1のエッチング面は、エッチングレートのばらつきによって平坦にならない場合がある。そこで、本実施形態では、まず、平坦な板状物1の被研削面1cにエッチングを施し、エッチング後の板状物1の形状を確認するエッチング後形状確認ステップを行っておく。
【0027】
エッチング後形状確認ステップでは、
図4(b)に示したように板状物1を平坦に研削して平坦な板状物1を得てから、その板状物1の被研削面1cに所定の方法でエッチングを施す。板状物1は平坦な形状からエッチングレートに応じた形状に変化するため、エッチング面の高さ位置を複数のポイントで測定し、断面形状を確認する。高さ位置の測定ポイントは直径に沿った等分複数箇所とされる。なお、エッチング面の高さ位置を確認する方法の具体例としては、保持テーブル20の側方に配設した非接触式の厚さ検出計を、板状物1の中央を通過するようにして板状物1の中心から外周部までの片側の半径領域で円弧状に移動させ、その移動軌跡の3ポイントで高さ位置を測定し、反対側の半径領域は対称形状とみなして全体の断面形状を算出するといった方法が挙げられる。
【0028】
図5に、(a)〜(d)のエッチング方法の違いによる板状物1のエッチング後の断面形状の4つのパターンを示しており、その形状は次の通りである。
【0029】
(a)中心が最も薄く、外周縁に向かってってしだいに厚さが厚くなる中凹形状。
(b)中心が最も厚く、外周縁に向かってしだいに厚さが薄くなる中凸形状。
(c)中心の周囲が凹状の双凹形状。
(d)中心の周囲が凸状の双凸形状。
【0030】
このようなエッチングレートの違いは、エッチング液の種類や方法等によって生じる。例えば板状物1を自転させながら板状物1の中心にエッチング液を滴下するスピンコートによってエッチングした場合、エッチング反応速度が速い場合には中心からエッチングが始まることにより中凹形状になり、エッチング反応速度が遅い場合にはエッチング液の供給量が相対的に多くなる外周部の方がエッチングされて中凸状になりやすい。
【0031】
[2−2]研削仕上げ形状算出ステップ
次に、エッチング後形状確認ステップで確認されたエッチング後の板状物1の形状に基づき、板状物1がエッチングステップ後に平坦となる研削仕上げ形状を算出する研削仕上げ形状算出ステップを行う。この研削仕上げ形状算出ステップでは、エッチング後形状確認ステップで得られたエッチング後の形状を逆形状に反転させた形状にエッチング除去量を加味して仕上げ研削形状として算出する。したがって
図5に示したエッチング後形状(a)〜(d)に対しては、同図の右側に示す研削仕上げ形状が算出される。すなわちエッチング後形状(a)〜(d)に対する研削仕上げ形状は次の通りである。
【0032】
(a)中心が最も厚く、外周縁に向かってってしだいに厚さが薄くなる中凸形状。
(b)中心が最も薄く、外周縁に向かってしだいに厚さが厚くなる中凹形状。
(c)中心の周囲が凸状の双凸形状。
(d)中心の周囲が凹状の双凹形状。
【0033】
[2−3]研削ステップ
次に、板状物1の被研削面1cを
図1の研削装置で研削し、所定の厚さへの薄化加工する。研削ステップは、まず、
図4(b)に示したように加工領域15において保持面22aが研削砥石14に対し平行となるように保持テーブル20の傾斜角度を平行設定の状態に調整する。そして、保持テーブル20の保持面22aに保持部材5を介して板状物1を吸引保持し、平行設定の状態から、所定のエッチング方法に対応して、研削仕上げ形状算出ステップで算出した研削仕上げ形状になるよう保持テーブル20を適宜に傾斜させ、加工領域15における研削砥石14の研削面14aと板状物1とを非平行とした状態で、研削砥石14を板状物1に当接させつつ研削を遂行し、板状物1を非平坦形状に形成する。以下、研削仕上げ形状が上記(a)〜(d)の場合の研削方法について説明する。
【0034】
研削仕上げ形状算出ステップで算出した研削仕上げ形状が、
図5(a)の「中心が最も厚く、外周縁に向かってしだいに厚さが薄くなる中凸形状」である場合には、上記平行設定の状態から、
図1に示す上記線Lと保持テーブル20の回転軸心20aで形成される面内に沿って矢印(a)方向に保持テーブル20を傾動させる。例えば板状物1を中心が外周縁に比べて2μm高い中凸形状に形成するには、
図3において、板状物1の回転中心1aであるC点が固定支持部25aに近接する外周縁A点に比べて2μm低くなるように2つの可動支持部25b、25cを均等に下降させる。
図6(a)はそのように保持テーブル20を傾斜させて板状物1を研削している状態を示し、これにより板状物1は中凸形状に研削される。
【0035】
また、研削仕上げ形状算出ステップで算出した研削仕上げ形状が、
図5(b)の「中心が最も薄く、外周縁に向かってしだいに厚さが厚くなる中凹形状」である場合には、上記平行設定の状態から、
図1に示す上記線Lと保持テーブル20の回転軸線20aで形成される面内に沿って矢印(b)方向に保持テーブル20を傾動させる。例えば板状物1を中心が外周縁に比べて2μm低い中凹形状に形成するには、
図3において、板状物1の回転中心C点がA点に比べて2μm高くなるように2つの可動支持部25b、25cを均等に上昇させる。
図6(b)はそのように保持テーブル20を傾斜させて板状物1を研削している状態を示し、これにより板状物1は中凹形状に研削される。
【0036】
また、研削仕上げ形状算出ステップで算出した研削仕上げ形状が、
図5(c)の「中心の周囲が凸状の双凸形状」である場合には、上記平行設定の状態から、
図1に示す上記線Lと保持テーブル20の回転軸線20aで形成される面内に直交する面内に沿った矢印(c)方向に保持テーブル20を傾動させる。すなわち、
図3において、A点とC点に比べて、加工領域15における中間付近であるB点が低くなるように調整する。
図6(c)はそのように保持テーブル20を傾斜させて板状物1を研削している状態を示し、板状物1は中心の周囲が研削砥石14の研削面14aの内周側のエッジによって研削され、これにより板状物1は双凸形状に研削される。
【0037】
また、研削仕上げ形状算出ステップで算出した研削仕上げ形状が、
図5(d)の「中心の周囲が凹状の双凹形状」である場合には、上記平行設定の状態から、
図1に示す上記線Lと保持テーブル20の回転軸線20aで形成される面内に直交する面内に沿った矢印(d)方向に保持テーブル20を傾動させる。すなわち、
図3において、A点とC点に比べて、加工領域15における中間付近であるB点が高くなるように調整する。
図6(d)はそのように保持テーブル20を傾斜させて板状物1を研削している状態を示し、板状物1は中心の周囲が研削砥石14の研削面14aの外周側のエッジによって研削され、これにより板状物1は双凹形状に研削される。
【0038】
なお、
図6(c)、(d)は被研削面1cに対して当接する研削砥石14の傾斜状態を示すため、研削砥石14を相対的に傾斜させた図としている。
【0039】
[2−4]エッチングステップ
上記のように所定のエッチング方法に対応する研削仕上げ形状に研削する研削ステップを終えたら、板状物1の被研削面1cを該所定のエッチング方法でエッチングする。エッチングは、例えば上記のようなスピンコートによるウェットエッチング、プラズマエッチング等のドライエッチング、CMPエッチング等が挙げられる。CMPエッチングを行う場合、可能であれば、
図7に示すように研削装置の保持テーブル20を流用し、この保持テーブル20上に所定の研削仕上げ形状に研削した板状物1を保持して回転させ、被研削面1cに回転する研磨手段40の研磨材41を押し当てながらCMPエッチングを行う。
【0040】
[3]実施形態の作用効果
上記実施形態によれば、エッチング後形状確認ステップを行うことで、所定のエッチング方法でエッチングされた後の板状物1の形状を予め把握し、研削ステップの際には、その形状とは逆形状に反転させた非平坦形状である仕上げ研削形状に研削することで、エッチングステップ後の板状物1を均一厚さの平坦形状に形成することができる。