(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6130672
(24)【登録日】2017年4月21日
(45)【発行日】2017年5月17日
(54)【発明の名称】ホール素子及びその製造方法、並びに、磁気センサー
(51)【国際特許分類】
H01L 43/06 20060101AFI20170508BHJP
G01R 33/07 20060101ALI20170508BHJP
【FI】
H01L43/06 H
H01L43/06 S
G01R33/06 H
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-3267(P2013-3267)
(22)【出願日】2013年1月11日
(65)【公開番号】特開2013-168640(P2013-168640A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-8041(P2012-8041)
(32)【優先日】2012年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】松野 俊輔
【審査官】
加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−245432(JP,A)
【文献】
特開平05−182988(JP,A)
【文献】
特開2001−036162(JP,A)
【文献】
特開2008−214677(JP,A)
【文献】
特開2010−238982(JP,A)
【文献】
特表2008−522405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 43/06
G01R 33/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、
該基板上に形成された半導体層であって、InSb、InAs、GaAs、または、InaAlbGa(1−a−b)AsxSb(1−x)(0≦a+b≦1、0≦x≦1)からなり、感磁部を構成する半導体層、及び、
該半導体層上に形成された保護膜であって、膜応力が、面方向の引っ張り応力として作用している保護膜を備え、
前記膜応力の大きさが30MPa以上、450MPa以下であることを特徴とするホール素子。
【請求項2】
前記半導体層のシート抵抗が600〜2000Ω/□であることを特徴とする請求項1に記載のホール素子。
【請求項3】
前記保護膜の膜厚が100nm以上、400nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のホール素子。
【請求項4】
前記半導体層に不純物がドープされており、該不純物は、Si、Sn、S、Se、Te、Ge、Cの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のホール素子。
【請求項5】
前記半導体層がGaAsからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のホール素子。
【請求項6】
前記保護膜が窒化シリコンからなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のホール素子。
【請求項7】
前記保護膜が窒化シリコンからなり、シリコンに対する窒素の組成比が0.7以上、1.1以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のホール素子。
【請求項8】
前記保護膜が窒化シリコンからなり、2〜2.3の屈折率を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のホール素子。
【請求項9】
前記保護膜の断面形状が、所定の曲率半径を持った凹形状であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のホール素子。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のホール素子を含んで構成される磁気センサーであって、
前記感磁部の形状がメサ形状であることを特徴とする磁気センサー。
【請求項11】
ホール素子の製造方法であって、
基板上に感磁部を構成する半導体層を形成するステップ、及び、該半導体層上に、高周波プラズマCVD法により保護膜を形成するステップを有し、
該保護膜を形成するステップにおいて、13.56MHz以上、2.45GHz以下の高周波を使用し、原料ガスにおける、NH3に対するSiH4の比率が1〜2.5であり、
前記保護膜の膜応力が、面方向の引っ張り応力であり、前記膜応力の大きさが30MPa以上、450MPa以下であることを特徴とするホール素子の製造方法。
【請求項12】
前記半導体層を、InSb、InAs、GaAs、または、InaAlbGa(1−a−b)AsxSb(1−x)(0≦a+b≦1、0≦x≦1)から形成することを特徴とする請求項11に記載のホール素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
ホール素子及びその製造方法並びに磁気センサーに関し、より詳細には、半導体
層上にプラズマ形成の保護膜を有する
ホール素子及びその製造方法、並びに、該
ホール素子を有する磁気センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンバイポーラICとGaAsホール素子を1チップに集積化した半導体装置ではGaAsホール素子部の電気的絶縁をとるために、プラズマSiN膜を用いており、そのプラズマSiN膜の成膜後にGaAs素子とシリコントランジスタをアルミ配線にて結線している。
【0003】
プラズマSiN膜成膜後のアルミシンターの際に、プラズマSiN膜に引張応力が発生し、GaAsホール素子の金属極端にクラックが発生する問題があった。これに対し、プラズマSiN膜の膜応力を引張応力ではなく、圧縮応力とすることで、膜応力に起因する不具合を回避する構造が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−029222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように圧縮応力のプラズマSiN膜を使用した構成では、膜応力によりキャリアが変化し、半導体素子の特性ばらつきが大きくなるという問題があった。例えば半導体素子によるON、OFFの検出など、半導体素子の特性ばらつきが影響しない場合にはわずかな特性変動がセンサー性能に与える影響は小さい。一方、例えば電流センサー用途など、アナログ的な使用方法においては、わずかな特性変動もセンサーの出力ばらつきに影響する。このため、特性変動のばらつきを小さくすることが半導体素子に要求されてきている。例えば、抵抗ばらつきは7%以内、オフセット電圧ばらつきは6V印加で3.0mV以内、オフセット電圧の温度による変動のバラツキは6V印加で1.0mV以内が期待されている。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、抵抗や、抵抗変化にともなうオフセット電圧ばらつきといった特性ばらつきを小さくでき、更には、オフセット電圧の温度特性ばらつきが小さい
ホール素子及びその製造方法、並びに、該
ホール素子を有する磁気センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
出願人が上記目的を達成するために鋭意検討した結果、案出した本発明に係る
ホール素子は、基板、該基板上に形成された半導体層であって、InSb、InAs、GaAs、または、InaAlbGa(1−a−b)AsxSb(1−x)(0≦a+b≦1、0≦x≦1)からな
り、感磁部を構成する半導体層、及び、該半導体層上に形成された保護膜であって、膜応力が、面方向(基板面に平行な方向)の引っ張り応力として作用している保護膜を備え
、前記膜応力の大きさが30MPa以上、450MPa以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明の別の態様は、上記
ホール素子を含んで構成される磁気センサーであって、前
記感磁部の断面形状がメサ形状であり、該感磁部の平面形状が十字形状であることを特徴とする。
【0009】
本発明の更に別の態様は、
ホール素子の製造方法であって、基板上に
感磁部を構成する半導体層を形成するステップ、及び、該半導体層上に、高周波プラズマCVD法により保護膜を形成するステップを有し、該保護膜を形成するステップにおいて、13.56MHz以上、2.45GHz以下の高周波を使用し、原料ガスにおけるNH
3に対するSiH
4の比率が1〜2.5であ
り、前記保護膜の膜応力が、面方向の引っ張り応力であり、前記膜応力の大きさが30MPa以上、450MPa以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、引っ張り応力の保護膜を半導体
層上に形成することにより、膜応力によるキャリアの変動を抑制し、抵抗やオフセット電圧ばらつきといった
ホール素子の特性ばらつきを小さくし、更には、各温度間のキャリア変化を小さくすることで、オフセット電圧の温度特性ばらつきが小さい
ホール素子及び磁気センサーを提供すること、並びに、上記
ホール素子を製造することのできる製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る半導体素子を示す平面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に関わる半導体素子を示し、
図1(A)は平面図、
図1(B)は
図1(A)におけるB−B’線での断面矢視図である。
【0013】
半導体素子は、基板4上に形成された半導体層1上に、外部端子と接続するための電極2と、膜応力が引っ張り応力として作用する保護膜3を備える。本発明は、構成元素やドープの種類、半導体素子のシート抵抗の値に限定されないが、半導体素子の感磁部を構成する半導体層1としては、例えばInSb、InAs、Si、やGaAsのバルク、または、InSb、InAs、GaAs、やInaAlbGa(1−a−b)AsxSb(1−x)(0≦a+b≦1、0≦x≦1)の薄膜等が好ましく、Siや、Sn、S、Se、Te、Ge、またはCなどの不純物を半導体層1にドープしても良い。より好ましいのは、生産効率の面からGaAs半導体層にSiを打ち込み、加熱による活性化を行った半導体素子である。また、電流感度が高くなることから、より好ましいのはシート抵抗が600〜2000Ω/□の感磁部を用いた半導体素子である。半導体素子として、例えばGaAs基板上に形成された、磁気センサーであるホール素子等の磁電変換素子が考えられる。
【0014】
図1に示した形状を得るためには種々の手法が考えられるが、半導体素子として磁電変換素子を考えた場合の製造方法の一例を説明する。
【0015】
まず、基板4上に化合物半導体からなる半導体層1を形成する。そして、化合物半導体に感磁部のパターンを例えば十文字形状に露光・現像した後に、化合物半導体を塩酸・過酸化水素系やリン酸・過酸化水素系のエッチング液で所望の形状にメサエッチングして、磁電変換素子を形成する。該形状は、パターニングによって平面形状を例えば
図1(A)に示したように十字形状とすることができ、メサエッチングによって断面形状をメサ形状とすることができる。感磁部のパターンの形成方法は、ドライ方式であっても良く、他のエッチング液を用いてもよい。
【0016】
その後、半導体層1上に、膜応力が引っ張り応力である窒化シリコン膜からなる保護膜3を、高周波プラズマCVD法により感磁部上に形成する。ここで、引っ張り応力とは基板4を面方向(基板面に平行な方向)に引っ張る方向に作用する力を云う。すなわち、基板4上に保護膜3を形成した場合、保護膜3の上面中央がへこんだ、凹の状態となる。この凹形状を実現するためのプロセス条件については後述する。
【0017】
保護膜3に作用する膜応力が圧縮応力であれば、応力によって半導体層1の表面に欠陥を生じ、キャリアトラップされて抵抗が変化してしまう。本発明に係る半導体素子では、保護膜3に作用する膜応力を引っ張り応力とすることで、半導体層1におけるキャリアの変化をより小さく抑制することができ、キャリアばらつきによる抵抗ばらつき、及び抵抗ばらつきに起因したオフセット電圧ばらつきを小さくすることができる。更には、欠陥起因のキャリアの変化は温度に依存するため、膜応力が圧縮応力の際には半導体表面の欠陥起因でオフセット電圧の温度特性ばらつきが大きくなっていたが、膜応力を引っ張り応力とすることで、キャリアの温度による変化を抑制でき、この結果、オフセット電圧の温度特性ばらつきを小さくすることができる。保護膜3の種類は窒化シリコンが好ましいが、本発明を実施するためには保護膜3に作用する膜応力が引っ張り応力であれば良く、保護膜3の種類は限定されない。また、保護膜3の膜厚は、薄いと例えば透水性が悪化する傾向となり、厚いと保護膜3が剥離しやすい傾向となるため、100nm以上、400nm以下が好ましいが、本発明は保護膜3の膜厚に限定されない。また、本発明は膜応力の大きさには限定されないが、引っ張り応力が強いと剥離等を生じる可能性があり、引っ張り応力が小さいと欠陥抑制効果が低くなることから、膜応力の範囲は、30MPa以上、450MPa以下が好ましい。より好ましい保護膜3の膜応力は、30MPa以上、300MPa以下である。結晶にかかる応力とラマンシフトの関係を利用して比較的小さなエリアの応力を測定する手法として、顕微ラマン分光法が知られている。この手法は、顕微ラマン装置を使用し、ラマンスペクトルにおいて観測されるGaAs基板のLOフォノンの(ストークスシフト)ラマンピークの位置を測定することで行う。例えば、測定条件として、入射角0°波長532nm光励起、後方散乱配置、入射偏光の電気ベクトルはGaAs[110]方向、散乱光は偏光子無し、とすることができる。モールド樹脂で封止された4端子の磁電変換素子を保護膜上までモールド樹脂を溶かしてパッケージ開封し、ホール素子感磁部をこの測定条件で測定したGaAs基板のLOフォノンのストークスシフトラマンピークの位置は、293.68cm
-1から293.86cm
-1が好ましく、より好ましくは293.68cm
-1から293.84cm
-1である。
【0018】
ここで、基板4上に半導体層1を形成し、半導体層1上にたとえば窒化シリコン膜からなる保護膜3を形成したときに、基板4側を下、保護膜3側を上にすると、上面が凹の状態となる。本発明は凹形状の曲率半径には限定されないが、好ましくは曲率半径870〜60m、より好ましくは、曲率半径870〜90mである。引っ張り応力が作用してこのような凹形状を呈するように保護膜3を形成するための条件は、高周波プラズマCVD法において、13.56MHz以上、2.45GHz以下の高周波を用いること、及び、原料ガスに用いるNH
3に対するSiH
4の流量比率を1〜2.5とすることである。より好ましくは、13.56MHzの高周波を用いること、及び、原料ガスに用いるNH
3に対するSiH
4の流量比率を1.5から2.5とすることである。本発明は保護膜3の屈折率には限定されないが、好ましくは屈折率が2〜2.3であり、より好ましくは、2.05〜2.25である。これは、屈折率が大きいと膜の組成が本来の窒化シリコン膜からずれる方向となり、屈折率が小さいと保護膜3の応力が圧縮応力側となるためである。
【0019】
感磁部パターンの形成方法は、オフセット電圧ばらつきの観点から感磁部以外を除去する方法がより好ましいが、例えば酸化シリコンや酸化シリコンなどの、引っ張り応力の保護膜3を先に形成し、感磁部パターンの形状にシリコンなどの不純物をインプラントし、加熱により活性化する方法でも良い。
【0020】
保護膜形成工程に続く工程では、保護膜3の電極を形成する部分の窒化シリコン膜を、電極を形成する部分よりも狭い範囲で反応性イオンエッチング装置を用いて除去した後、電極2を形成する。最後に、磁電変換素子の感磁部面上に、軟樹脂層(図示せず)を形成する。得られた磁電変換素子の基板1底面を、Cuなどのリードフレーム6上に、Agペーストなどの接着剤を用いて接着する。リードフレーム6と感磁部上に形成した電極部との接合は、Auなどの金属線7またはバンプを介して行う。本発明は、リードフレーム6や接着剤の種類、リードフレーム6との接合方法に限定されない。最後に、モールド樹脂5で半導体チップを封止することで、リードフレーム6の端子電極を4個有する磁電変換素子すなわち磁気センサーが作製される。
【0021】
なお、4端子の磁電変換素子で説明を行ったが、本発明においては、端子数を規定するものではなく、パッケージの種類を限定するものでもない。また窒化シリコン膜除去の方法は、反応性イオンエッチングではなく他のドライエッチングやウエットエッチング方式であっても良い。また、電極の形成は、保護膜の前に電極を形成し、その後保護膜を形成して金属線と接合する部分の保護膜を除去する方法でもよく、さらに、続いて開口した電極上に新たに金属線と接続するための電極を形成する方法であっても良い。
【0022】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の説明のための幾つかの例にすぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではないことに留意されたい。
【0023】
[実施例1]
厚さ0.63mmの半絶縁性GaAs単結晶基板に、加速電圧250keVでSiイオン注入を行って導電層となる部分を形成した。このときのドーズ量は3.5E12ion/cm
2であった。注入したイオンの活性化のためのアニールを行った。このときのシート抵抗は1600Ω/□であった。
【0024】
次に、レジストパターンを形成した後に、リン酸・過酸化水素系のエッチング液で所望の形状にメサエッチングした。続いて、電極形成のためのレジストパターンを形成した後、電極金属として基板側からAuGe200nm、Ni50nm、Au300nmを順次蒸着し、その後リフトオフを行った。続いて、アニール処理による合金化を行い、導電層部分とオーミック接合をとった。保護膜としてウエハ全面に窒化シリコン薄膜をプラズマCVD法(使用原料ガス:NH
3,SiH
4)で300nm厚に形成した。13.56MHzの高周波を用い、NH3に対するSiH4の比率を2.2とした。このときの窒化シリコンの膜応力は220MPaとなり、引っ張り応力となった。また、このときの屈折率は、2.2となった。また、このときのシリコンに対する窒素の組成比が1.0であった。その後、再度フォトレジストを塗布した後に、電極を形成する部分の窒化シリコンを反応性イオンエッチングで除去した。続いてフォトレジストを塗布して、電極を形成するための露光・現像を行い、真空蒸着法で電極を蒸着し、リフトオフ法で電極構造を形成した。次に、モールド樹脂による圧力や面内応力を緩和するために、磁電変換素子の感磁部面上に、ゴム系樹脂を形成した。このようにして、半導体薄膜を感磁部とする磁電変換素子を多数作製した。続いて、裏面研削によってGaAs基板を所定の厚さに研磨した後、ダイシングにより個別の磁電変換素子に切離した。Cu製リードフレーム上に接着剤で接着した後に、モールド樹脂で封止し、4端子の磁電変換素子を作成した。この時の抵抗は平均が2600Ωであり、そのばらつきは2σで4.7%と小さかった。また入力端子に6V印加した際のオフセット電圧のバラツキは2σで2.1mVと小さかった。温度特性を測定したところ、6V印加した場合の25℃から−50℃におけるオフセット電圧の変動量は2σで0.6mVと非常に小さな値が得られた。
【0025】
[実施例2]
ドーズ量を2E12ion/cm
2とした以外は、実施例1と同一のプロセス及び同一のプロセス条件で磁電変換素子を作成した。活性化アニール後のシート抵抗は1200Ω/□であった。作成した4端子の磁電変換素子の抵抗は平均が2050Ωであり、そのばらつきは2σで5.8%と小さかった。また入力端子に6V印加した際のオフセット電圧のバラツキは2σで2.0mVと小さかった。温度特性を測定したところ、25℃から−50℃において6V印加した場合のオフセット電圧の変動は2σで0.2mVと非常に小さな値が得られた。
【0026】
[実施例3]
ドーズ量を1.35E12ion/cm
2とした以外は、実施例1と同一のプロセス及び同一のプロセス条件で磁電変換素子を作成した。活性化アニール後のシート抵抗は750Ωとなった。作成した4端子の磁電変換素子の抵抗は1200Ωであり、そのばらつきは2σで4.2%と小さかった。また入力端子に6V印加した際のオフセット電圧のバラツキは2σで1.8mVと小さかった。温度特性を測定したところ、25℃から−50℃において6V印加した場合のオフセット電圧の変動は2σで0.6mVと非常に小さな値が得られた。
【0027】
[実施例4]
ドーズ量を1.15E12ion/cm
2とした以外は、実施例1と同一のプロセス及び同一のプロセス条件で磁電変換素子を作成した。活性化アニール後のシート抵抗は400Ωとなった。作成した4端子の磁電変換素子の抵抗は620Ωであり、そのばらつきは2σで1.9%と小さかった。また入力端子に6V印加した際のオフセット電圧のバラツキは2σで1.7mVと小さかった。温度特性を測定したところ、25℃から−50℃において6V印加した場合のオフセット電圧の変動は2σで0.2mVと非常に小さな値が得られた。
【0028】
[実施例5]
実施例1で得られたモールド樹脂で封止された4端子の磁電変換素子を、保護膜上までモールド樹脂を溶かしてパッケージ開封し、顕微ラマン装置で測定したところ、GaAs基板のLOフォノンのストークスシフトラマンピークの位置は293.75cm−1という値となった。このときの測定条件は、入射角0°、波長532nmとし、光励起、後方散乱配置、入射偏光の電気ベクトルはGaAs[110]方向、散乱光は偏光子無しとした。このピーク位置から、膜応力は190MPaと求められた。膜応力は、膜応力が既知のGaAs基板上に形成したSiN膜のラマン散乱ピーク位置から求めた。
【0029】
[実施例6]
実施例2で得られたモールド樹脂で封止された4端子の磁電変換素子を、保護膜上までモールド樹脂を溶かしてパッケージ開封し、実施例5と同様の方法で顕微ラマン装置で測定したところ、GaAs基板のLOフォノンのストークスシフトラマンピークの位置は293.75cm
-1、膜応力は190MPaと求められた。
【0030】
[実施例7]
実施例3で得られたモールド樹脂で封止された4端子の磁電変換素子を、保護膜上までモールド樹脂を溶かしてパッケージ開封し、実施例5と同様の方法で顕微ラマン装置で測定したところ、GaAs基板のLOフォノンのストークスシフトラマンピークの位置は293.75cm
-1、膜応力は190MPaと求められた。
【0031】
[実施例8]
実施例4で得られたモールド樹脂で封止された4端子の磁電変換素子を、保護膜上までモールド樹脂を溶かしてパッケージ開封し、実施例5と同様の方法で顕微ラマン装置で測定したところ、GaAs基板のLOフォノンのストークスシフトラマンピークの位置は293.74cm
-1、膜応力は166MPaと求められた。
【0032】
[比較例1]
プラズマCVD法により、400kHzを用い、原料ガスにおけるNH
3に対するSiH
4の流量比率を0.8の条件で、膜応力を圧縮応力とした窒化シリコンを形成したこと以外は、実施例1と同様の条件で磁電変換素子を作成した。このときの窒化シリコンの膜応力は、−750MPaであった。このときの屈折率は、1.9となった。また、このときのシリコンに対する窒素の組成比が1.5であった。作成した4端子の磁電変換素子の抵抗は2800Ωであり、そのばらつきは2σで10%と大きかった。また入力端子に6V印加した際のオフセット電圧のバラツキは2σで3.6mVと大きかった。温度特性を測定したところ、25℃から−50℃において6V印加した場合のオフセット電圧の変動は2σで2.2mVと大きな値であった。
【0033】
[比較例2]
比較例1で得られたモールド樹脂に封止された4端子の磁電変換素子を保護膜上までモールド樹脂を溶かしてパッケージ開封し、顕微ラマン装置で測定したところ、GaAs基板のLOフォノンのストークスシフトラマンピークの位置は293.36cm
-1、膜応力は−760MPaであった。
【符号の説明】
【0034】
1 半導体層
2 電極
3 保護膜
4 基板
5 パッケージ
6 リードフレーム
7 金属線